ある日ある時その場所で、妖精として生を受けた。
それから楽しく遊ぶ日々を過ごした。
それから悪戯をしては人や妖怪をからかって過ごした。
それから自分は強いのだと言って過ごした。
それから。
――数えるのが面倒なぐらいに季節が過ぎた。
どうしてあんなに楽しかったのだろうと思ってしまう。
だからそれがわからない今は空を見て暮らしている。
何にもしたいことがなくて、何かをするのも億劫で。
独り、静かに空を見上げていた。
いつからこうしているのかよく覚えていない。
『時間を無駄遣いしないようにね』
前はよく遊んだ――というより遊んでくれていた冬の妖怪はそんな言葉を置いてどこかへ行ってしまった。それがいつだったのかも覚えていない。
それは妖精としては当然のはずなのだけど。
本来、妖精が意識するのは今日という刹那の時間だけ。
『今』に全てを費やして過ごすのが自然の営みというもの。
昨日なんて過去に必要なのは少々の思い出だけであり、明日という未来なんて所詮は放っておけば『今』になる程度の価値しかない。
無駄なことを覚える暇があれば楽しい悪戯の一つも考えるのが正しい。
けれど。
人と暮らす妖怪がいるように、妖精の中にも変わり者が存在する。
過去の思い出を大切にするもの、明日にした約束を待ちわびるもの。
時間の流れに現在よりも価値を置いたとき、その変わり者達は自らを意識する。
――不自然な自然たちは生まれてくる。
彼女はそんな妖精であり、自らつけた【チルノ】という名前さえ持っていた。
もう一つ【大妖精】という少しだけ特別な名前もいつの間にか持たされていたりしたけど。
まぁ、こっちはあまり使う機会も無いけれど。一応自分の呼び名の一つ。
お気に入りの名前と貰っただけの呼び名があっても、妖精らしい日々を生きることに不満を持っていたわけじゃない。ただ、今を刹那に楽しむには自然から外れすぎていた。
ある日、自分がこれから何をしたいのかという疑問を持ってしまったとき、おそらく不特定多数の妖精ではいられなくなってしまったのだろう。
進むべき未来には希望を持てず、過去の思い出は今思えば恥ずかしいことばかり。
大人になったのだと、誰かが言った。
無意味な証明を受け入れることも否定することも出来ずいつしか空虚になって。
――今は湖上を漂うだけ。
今という時間を楽しむ妖精たちが騒ぐ空を見上げながら。
羨む心を押しつぶし、見えない未来に目をこらす。
だけど。
何を想えば良いのか、何をすればいいのか。
形の見えない焦燥から目を逸らすことしか出来ない自分。
処理できない気持ちを抱え宙に漂いながら空を見上げる。
頬に冷たい雫が落ちてきた。
ゆっくりと静かに舞い落ちる――雪。
いつのまにか冬が来ていた。
冬は妖精たちの季節と言ってもいい。
人間は寒さに弱いし、妖怪たちも一部を除いて寒さを好むものはいない。
この時期だけは妖怪たちの無言で定めたナワバリも消えてしまう。
あとには風の向くまま雪の降るまま遊び呆ける妖精たちが残るのみ。
この時期、湖ではまた新たな妖精たちが生まれていた。
多くは季節に合わせた氷精たち。思いの向くまま雪遊びに呆ける生まれたての少女達。
少しだけ賑やかになった名前の無い湖。
明るくなったはずの場所で、【チルノ】と名乗る妖精は今日も空を見上げていた。
凍りついた湖に寝転がって落ちてくる雪を数えてみたりして。
無駄なことに今を費やしながら、見上げる空から舞い落ちる雪を見ていた。
ふと、その雪が落ちてこなくなる。
雪を遮るように服も髪の色もあって、青の印象が強い妖精が浮かんでいた。
目に映るもの全てに興味を抱いている瞳は、まだ生まれたての妖精らしい光がある。
生に輝かせている瞳を生に濁った目に合わせてくる。
「なにしてるの?」
――何もしてない。
「なんで遊ばないの?」
――飽きちゃったの。
「どうしてあきちゃったの?」
――新しいことをする気がおきなくなったの。
「なんで――」
――………
いつまでも続く質問に投げやりに答えを返していく。
そのうち頂点にあった太陽はもう遠くの山に隠れようとしていた。
いい加減、答えるのも口を動かすことさえも面倒になってきた。
「なんで雪って白いの?」
もう答えない。
「ねぇ」
もう、答えない。
質問に口を閉ざすと氷の翼を持つ妖精も口を閉じた。
我慢比べの時間はしばし続いて、じれたのは向こうが先だった。
ねぇ、と何度も繰り返し言っている。
まだ生まれたてだけあって諦めるということを知らないのかもしれない。
ねぇねぇを繰り返されると自分が彼女の姉だと錯覚してしまいそうだ。
久方ぶりにため息などついてしまった。
「また今度」
「いつよそれぇ」
「今度よ」
「だからぁ」
「……今日じゃなければいいから、約束するわ」
身を起こして、一番投げやりに答える。
しばらくすると何度も『約束』の念を押してから仕方無さそうに飛んでいった。
どうせ妖精が今日よりあとなんて覚えているはずないのだけど。
ずいぶんと久しぶりに自分に興味を持ってくれた氷精のことを考えて、また空を見上げた。
日の落ちた冬の夜。
賑やかな氷精がいたせいか、いつも以上に冷たく感じた。
意外なことに。
その少女は約束を忘れなかった。
些細なことでも、目に付いたものを片っ端から聞いてくる質問の嵐に、閉口し何度も居場所を移す羽目になった。
出会う回数が減っても、遊びの最中に出くわせばまた疑問の山をぶつけてくるのだけど。
いつの間にか雪は降らなくなっていた。
春の空気は少しだけ感じたがどうでもよかった。
今日もまた、空を見上げる。
夏が近づく頃、彼女の隣にいつもあの氷精がいるようになった。
もう冬のように遊びまわってはいない。
初めて体験する春の陽気に慣れないのか気だるげに氷のベットで寝転んでいた。
「なんか……気持ちわるぅ」
「暑いんじゃないの?」
「あつい……んーと、なにそれ?」
「今みたいに何だか動きたくないなーとか、面倒くさいなぁーって思っちゃう時のこと」
空を見上げながら思いついた答えを返すと、あついあついとリズムよく口ずさみながら氷のベットをごろごろと転がる。なにやら気に入ったらしい。
「じゃあねぇあれは!?」
「あれは――」
さっきまでダルそうにしていたのが嘘のように冬の頃のような元気を取り戻してしまったらしい。
春もまた、この質問攻めにつき合わされそうだった。
最早逃げ回ることさえ面倒で、やっぱり投げやりに答えを返す。
ため息が癖になってしまいそう。
「あ、そうだ」
「………?」
「あっちに何だかヘンな物落ちてたのよ」
「へんなの?」
「とがってたり、丸かったり……それと穴も開いてたような」
要領を得ない説明で何を示しているのかがよくわからない。
表現しようと氷で形を作ろうとしたり、絵を描こうとするが上手くいっていない。
「もうっ自分で見ればいいのよっ!」
「え……?」
疑問の声を上げるのは遅かった。
見上げていた春の空はあっという間に流れていって――
「ま、って………わぷっ」
「こっちっ!!」
冷たい掌に捕まれたまま小さな氷精とは思えないほどの力で全身を引きずられた。
自分で飛ぶなどと告げる暇など無く。
時折湖に顔を付けてしまいながら、運ばれていく羽目になった。
目的地に着いたとき全身ずぶ濡れだったのは言うまでも無い。
服を乾かしてからその原因となった少女は目的のものを指差す。
少女が疑問を抱いていた物体を【チルノ】は知っていた。
たしか『みさいる』という名前だった。
それがどういうものかは体験から知っていたので近づかないように教えた。
そのことをまるっきり無視して蹴っ飛ばした挙句に、大爆発を起こしてくれたけど。
周囲の桜が全て散るほどの爆発があっても、春は確実に過ぎていく。
けれど少女は懲りるという単語を知らないのか、それからも何度もそこいらの妖精が起こす問題なんて目じゃないぐらいの騒ぎを起こして周囲に迷惑を振りまいている。
騒動に巻き込まれたり、どういうわけか後始末の手伝いや迷惑をかけた相手への謝罪をしているうちに、夏が来た。
冬も春もあれだけ騒がしかった少女も種族的にこの季節は苦手らしい。
氷のベットを作る気力も無いのか、水に軽い体を浮かばせている。
でも大人しいということだけは無いようだ。
「あついぃ~」
「夏だからね」
「動きたいけど動けないぃぃ」
「暑いからね」
「うぅぅぅ」
湖上に消える小さなうめき声。
四季に慣れている氷精なら夏用の避暑地を確保しているものだが、初めての夏を迎えた彼女にはそんな用意など当然無く、一向に陰る様子のない太陽に怨嗟の声を上げている。
「あついのよぉ~~」
「夏だから仕方ないのよ」
「夏なんてきらいよぉ!!」
叫んだところで力を使い果たしたのか、ぐったりと水に浮かぶ。
少女が静かになったのは見るのは初めてのような気がした。
空を見上げるのを止め、放っておけばそのまま底まで沈んでしまいそうなぐらい弱っている氷精を腕に抱える。木陰で風でも起こしてやれば多少は過ごしやすくなるだろうと思って。
長い間ここの湖に暮らしているから、湖の周辺で一番涼しい場所も知っている。
木陰に連れて行くと、しかめっ面が元の能天気な表情に戻った。
少し寝苦しそうだったので自分の膝を枕代わりにしてあげる。
周囲の温度より少しだけひんやりとした重み。
「何してるんだろ」
呟いても答えは出なくて、泥遊びのたびに洗ってやる羽目になるため手に馴染んだ青い髪を指で梳く。枝に隠されて空を見上げることは出来ない。
他に見るものもなくて少女の寝顔をぼんやりと眺める。
うなされるように、あついあついと繰り返す声に頬が緩むのを感じていた。
その子に出会って初めて静かに過ごせた短い季節だった。
温度が下がると共に少しづつ氷精は元の元気を取り戻す。
厳しい残暑が欠片も残らなくなったころ、虫たちがオーケストラを奏で始めたころ。
秋が来た。
「あかっ! すご~~~~~く赤いっ!! なんでっ?」
「紅葉っていってね……」
あれだけ弱りきっていた夏が嘘の様にまた質問攻めが復活。
どんどん解らないことを聞いてくる。そろそろ自分の知識範囲を超えそうなぐらいに。
「なんで?」
「えっと……そこまでは」
「えぇ~~」
「……うぅごめんね」
仕方ないわねぇと大物っぽく頷いてみせてくれる。
どこで覚えてきたのか聞いてみたい衝動に駆られたがロクでもないことを聞かされそうで黙っておく。
そんな【チルノ】の思いなんて慮る気は無いのか、また新たな疑問を見つけると蜜を見つけた蜂のように全速力で飛んでいってしまう。
「ねぇあれはっ?」
「それは銀杏……ああっ触っちゃダメっ」
「なんでよー……うわっくさーっ」
「だから言ったのに」
「遅いのよっ」
なんで怒られてるんだろうと理不尽に思いながら、ごめんねーと軽く謝りながら匂いの付いてしまった服を洗濯してあげるべく、手を引いて水辺に連れて行くことにした。
くさいくさいとわかっているのに何度も匂っては顔をしかめ続けてる様は……
「くすっ」
「あ、今笑ったーーーーっ!」
「え……わたし笑ってた?」
「バカにして!!」
「ご、ごめんね!?」
……あなたが可愛いから思わず。
怒る少女を宥めながら自然とそんな言葉が浮かんでいた。
いつの間にか空を見上げて過ごすことが減ってしまった。
なぜなら、目を離すと何をしでかすかわからない子だから。
それにそばにいることが楽しくてしょうがないから。
冬が来た。
この子と出会って季節は一巡りしてしまった。
寒い寒いと白い世界に嬉しそうに反応しながら早速飛び出してしまった。
あっという間に見えなくなってしまった少女を苦笑しながら追いかける。
勢いに任せて飛び回っていたのか、探し出すのに苦労してしまった。
小さな氷の羽を見つけると翼をはためかせて追いつく。
珍しくなにやら考え込んでいる。ホント、珍しい光景。
「どうしたの?」
「うん……あのさぁ」
「なぁに?」
「さっき、レティとかいうヤツに会ったのよ」
「ああ起きてたんだ、冬だから当然といえば当然だけど」
しばらく会っていない妖怪が懐かしい。
この子を紹介するついでに久しぶりに遊んでみてもいいかもしれない。
「でね、そいつに『あなた誰って』聞かれたんだけど……」
「あ」
思い当たる。
もしそう聞かれたのなら。
名前の無い少女は――
「何ていえばよかったのかな?」
「そうだね……」
一つ忘れていたこと、むしろ気にも留めていなかったこと。
少女には名前が無い。いや、そもそも妖精に名前なんて必要ない。
けれど、それを必要としている。
彼女はおそらく自然から少しづつズレ始めている。
それが幸せなことなのか、もう判断が出来ない。
いつの間にかそのことに虚しさを感じたのは、自分で。
だけど、外れたからこそこの少女といられたことも事実で。
「あなたはどうしたいの」
「名前があればもう聞かれても大丈夫だよね……わかんないって言ったらものすごくバカにしてきたのよアイツっ」
「……そうだね」
そういやそんな妖怪だったと思い返す。
「アイツをぎゃふんって言わせてやるからっ! むぅ、何がいいかな~」
「そうだね……」
「すーぱーとか、ぐれーととか入れないと……」
この子センスとか無いんだなぁとしみじみ実感する。
本当にどこから覚えてきたんだろう。
生涯バカにされ続けるだろう名前を名乗らせるのは忍びなくて、頭を捻る。
「……うーん」
「ちょうごうきん、もいいかもねあとは……」
2人で顔を付き合わせているうちに。
一つだけ思いついた。色々な願いが篭る名前を。
願いを込めるのはここにいる自分。
かつて【チルノ】と未来を夢見て決めた名前。
それから少しだけの思い出と夢見る未来を抱えて生きてきた。
もう思い出は軽くなり、未来には希望を抱けなくなってしまった。
だけど。
胸を支配した空虚な想いはまだ名も無い少女が吹き飛ばしてくれた。
だから今ある願いは一つ。
「ねぇ」
「うるとらとか、いれて……ん、なによぉ」
「あのね、あなたの名前を考えたの」
「ん、なになに」
身を乗り出す見慣れた、これからも見ていたい少女の顔。
期待に氷の羽と手を上下にパタパタ動かしている。
「わたしが考えたのは」
あなたと紡ぐ思い出を失くさないように。
あなたが嬉しいことも悲しいこともちゃんと覚えていられるように。
「えっと気に入ってくれるからわからないんだけど……」
「いいから早く言いなさいよっ」
「ご、ごめんね」
あなた生きる今を共に過ごせるように。
「じゃあ、ね。わたしが考えた名前は――」
君が見る未来を一緒に見られるように。
ずっと昔に夢見る未来を目指してつけた名前を。
そしてあなたがそのこと忘れず今を過ごせるように。
「【チルノ】なんてどうかな」
――わたしの名前をもらってくれる?
名前を受け止めた少女の唇が動く。
「ち、る、の」
一つ一つの発音を確かめるようにゆっくりと。
口ずさむたびに、頷くたびにその顔に無邪気な笑顔が広がっていく。
「気に入ってくれた……?」
「うんいい感じよっ」
「そっかぁ」
きっと抱いた思いが伝わることは無いけど、でも喜んでもらえるならそれだけで嬉しい。
上機嫌に空をくるくる飛びまわり、無闇に氷を生み出して全身で表現してくれる。
「これで今度あいつに聞かれてもって、ああっ!!」
「ど、どうしたのぉ?」
笑顔なのに喜んでいるのか怒っているのかわかりづらい顔。
「みーーっけ!!」
指差す先にはふわふわと漂う冬の妖怪の姿。
さっそく目的の相手が見つかったらしい。
となるとこの後の展開は。
「そこのアンタ待てぇーーーーーーーーっ!!」
呼び止める暇も無く一直線に飛んでいく。
ため息を一つ、苦笑を浮かべながら。
やっぱり癖になってしまった。
と。
飛んでいったはずの少女が戻ってくる。
「ねぇ!」
「どうしたの忘れ物でもした?」
目の前に立つと真っ直ぐな青い瞳と目が合う。
生に輝かせている瞳を生を見つめる目に合わせてくる。
「あんたさぁ……なんて名前なのよ?」
「……あ」
そういえば自分は、名無しになってしまった。
もしここで無い何て言えば少女――チルノは喜び勇んで付けてくれるだろう。
ぼそぼそ呟いていた贔屓目に見てもセンスのない名前を。
「それは……すごく嫌かも」
「ぶつぶつ言ってないで教えてよ」
「う、うん」
知り合いの名前でも借りてしまおうかと考えて、それは違う気もする。
名前にこだわるチルノに名乗るにはそれではダメだ。
ちゃんと自分を表す、存在を証明できる名前でないと。
だから、思いついたのはずいぶん昔に名づけられた呼び名。
特別気に入っているわけじゃないけど、でも自分の名前だから。
大きく一つ深呼吸して、待ち構えるチルノへ。
「大妖精」
名前じゃないような、だけど自分をたしかに表現する『名前』を告げる。
「だい、ようせい?」
「うん」
咀嚼するように何度も口の中で呟いてから、最後に大きく頷いた。
「変な名前」
「そんなはっきり……」
深い思い入れがあるわけじゃないけど、これから名乗り続ける名前にきっぱりとダメだしされるとぐさりと心に突き刺さる。
「ま、いいや」
こっちの凹み具合とかどうでもいいんだろうなぁと不思議と静かに思う。
きっとチルノが笑っているだけで、少々の理不尽は受け入れてしまいそうだ。
その通りに。
チルノは顔一杯に自信たっぷりの笑顔を浮かべたから。
「じゃ、これからもよろしくね大妖精」
「うん、チルノ……ちゃん」
「でも呼びにくいから、あとでテキトーな呼び方にするから」
「えぇええええええ!?」
こっちのことなどお構い無しに冬の空に小さな羽で飛び立っていく。
レティはもう移動してしまったのか、周囲には見えない。
「もう……チルノちゃんったら」
自分のものだったはずの名前は元気な少女に似合っていて、口に出しても違和感が無い。
湖上に寝転がって、空を見上げる
冬の空は雪雲に覆われて太陽が見えない。
そんな雪雲の下、今年も生まれたての妖精たちが今という時間を楽しんでいる。
混ざることは出来ないけど、眺めていることは決して不幸じゃない。
その時間を懐かしむことが出来るのは、少しだけ大人になった子供の特権だから。
「なにぃぃぃいいいいいぃいいいいいっ!!!!!」
遠くチルノの大声が響いてきた。
あのレティにとってあんなに『遊びがい』のある子は他にいないだろうから。
昔の自分がされたみたいに、楽しくからかわれているのだろう。
「さて」
寝転がるのはもうおしまい。
助けてあげられるほどの強さなんて無いけど、一緒に遊ばれることぐらいはできるから。
青が見えない空なんて見上げるのをやめて、青い少女の元へ行こう。
「楽しみだなぁ」
翼を広げて、大妖精は見上げるのを止めた空に向かって飛び立った。
出来ることなら、何時までも子供の心は忘れずにしまっておきたいものです。
少ししんみりした良いお話でした。
もしかしたらチルノの近くにいたあの大妖精も、この『チルノ』の近くにいる大妖精と同じような経験をしていたのかも知れないですね。
子供心は……自分何処においてきてしまったのでしょう(汗
「?」という疑問を持ってしまった時点で、名もなき妖精が名前を持つようになったのは必然。さて、それは自然であった彼女にとって、幸せなのかどうか……
幸せみたいです。
今日も【チルノ】は元気に笑ってますから。
いつか、チルノがまたそこに気がついた時、想いはまた引き継がれていくのですね。
伝える言葉が思いつかないのが残念ですが、
それでも一言、この作品、大好きです。