Coolier - 新生・東方創想話

スプリングファーム参 vol4 ~蘇る天才~

2006/05/06 14:23:27
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 ~五月末

ドンドンドンドンドンドンドンドン・・・

やや夏の臭いが満ち始めてきた頃、ファームの一角にある孵卵室で
なにやらドアを叩いているような音が鳴り響く

「出してぇぇ~」
「は、春~」
「どうする春ー?」
「てゐ様も鈴仙様もいない春よー」

孵卵室の一角、もこりーの寝床と小さな看板が掲げられているそこに
でーんと居座るは謎の赤い色をした大きな物体、一見すると卵に見えるが、実は繭
その中からは、どこかの蓬莱人によく似た声が聞こえてくる

「うー、何でこんなに硬いの・・・出られない」
「もこりーどうする春ー?」
「私達じゃどうにも出来ない春よー」
「うーん、てゐ達が帰ってくるまでしばらくこのままかなー?」
「コレ・・・ツカエ・・・HAL」
「あ、リカリー、また遊びに来た春かー?」

こっそり大小様々なリリー達の中に、ひっそりと紛れている鉄色のリリー、名はリカリー
その体中に纏った機具は、四月の大会でもこりーと戦った時よりさらにメカ度がアップしている
そんなリカリーが繭の前で困っているリリーにこっそりと手渡した物は、黒く輝く金槌

ガァンガァンガンガンガンガンガガンガガン!!

「ぎゃあああ! なんかこんな拷問受けた事があったようなーっ!!」
「HALッ!?」
「や、やめる春っ!」
「もこりーが苦しがってる春ー!」
「やっぱりてゐ様の一撃じゃないと割れない春ねー」

実は繭があまりにも硬くて出られないというのはさほど珍しい事ではない
ビッグファームであれば年に二、三回は見られる光景である
ただし問題は、その繭を叩き割って中からリリーを取り出せるものが少ないという事だ

「てゐ様は何時頃に帰ってくる春ー?」
「多分夕方回ってからじゃない春か?」
「うへー・・・あと何時間このままなんだー!」

ちなみにてゐ達は現在コンテストの真っ最中である
大会で優勝したとはいえ家計はまだまだ火の車なのだ

「うー、出たい~」
「茹でれば割れる春か・・・?」
「いや、ここは皆で一斉に弾幕をぶつける春ー」
「それよりも一気に高温で熱して超低温で冷やせば脆くなる春よー」
「ちょっと待って! なんか物騒な事言ってない!?」
『気のせい春』

ウィーン、ガシャコーン、ギギギギギギギ

「どう考えても気のせいじゃないって! 何その外から聞こえてくる恐怖そのままのような音は!」
「超振動粉砕装置・・・HAL」
「なんかどう考えても中身ごと吹っ飛ばせそうな恐ろしい兵器の名称が聞こえるっ!」
「大丈夫春、痛いのは一瞬だけ春よ」
「一瞬でも嫌だーっ! 誰か助けてぇー!!」

ガタガタガタと繭を揺らしながら必死に抵抗しようとする妹紅、もちろん何の意味も無い
じわじわと各自様々な武器?を持ち繭へと近寄るリリー達、しかし救世主は突然現れるもの

「申し訳ない、ここに妹紅が居ると聞いてきたのだが・・・」
「その声は・・・・・・慧音!?」
「おお、そこに居・・・」

必死に動き続ける赤い繭、その繭に対して各自物騒な物を持って取り囲むリリー達
少なくとも慧音にはそれが非常に危険な状態だという事は一目で理解できた

ドスンバタン! ベシベシベシベシ! ドスンドスン! パンパン!

「まったく、物騒な物を持ち出すんじゃない!」
『春ぅ~・・・』

全身様々な所を焦がしながらも一部の暴走したリリー達に説教をする慧音

「いいか、そもそもリリーにとって繭に篭っている時期とは・・・」
「慧音ー」
「そんな時に外圧的ショックを与えてもし万が一の事が・・・」
「慧音ー!」

そして気づかれない妹紅であった



「すまない、つい説教に夢中になってしまって・・・」
「もうそれについてはいいから、早く出してくれない?」
「わ、わかった、ちょっと待っててくれ」

そう返答して慧音は帽子に手を突っ込み、何やら黄色っぽくて四角い物を取り出した、というか油揚げである

「テンコーレスキュー!!」
「はい、八雲リリーレスキュー隊隊長、八雲藍です」

慧音が一声を上げた瞬間、どこからともなく現れる八雲藍
警備主任にレスキュー隊、他にもぐーたらなご主人様のお世話など、その苦労は計り知れない
一説には、幻想郷に何十匹も存在するとまで噂されるほどの多忙っぷりである

「もぐもぐ・・・ふむ・・・もぐもぐ・・・繭から出られもぐもぐ・・・無いと」
「ああ、満月の日なら私の角で何とかなるのだが・・・」
「もぐもぐ・・・ふぅ・・・承知した、直ちに救助する」
「とにかく早く出してぇー」

・・・・・・キュィィィィィィィィィィィン!!

「・・・えーと、また何か嫌な音が聞こえるんだけど?」
「ただの金剛石カッターだ、動くなよ?」
「結局ソレかー!!」
「いくぞオーディーン! この強固な繭を切り裂けぇぇぇ!」
「オーディーンって何だーっ!?」
「愛称だ!」

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!!

「・・・・・・あれ?」
「み、耳がぐわんぐわんって・・・ん?」

間違いなく金剛石カッターは繭に振り下ろされたはずなのだが
その表面には一切の傷がついておらず、逆にカッターの刃がボロボロに欠けていた
もはや繭というより殻である、もしくは卵型要塞と言ってもいいかもしれない

「わ・・・私のオーディーンが悲惨な姿に・・・高かったのにーっ!!」
「え?え? この繭、金剛石でも切れないの?」
「おのれっ! オーディーンの仇!」

ブシュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

「うわぁぁぁ! なんか今までの比じゃないほどの恐ろしい音が聞こえる!」
「コーンコンコンコンッ!! 王水の前にこの程度の繭など無力っ!!」

シュゥゥゥゥゥゥゥ・・・・・・テカーン!

「・・・溶けないねぇ」
「・・・溶けていないな」
「・・・溶けなくてよかった」

うそーんと言う表情で立ちつくす藍と繭の中で一安心の妹紅
妹紅を包む繭は逆に何らかの刺激を受けるほど光沢を増していく様にも見える

「おおおお! 最終兵器! アクア・ウィタエェェェ!!」
「何でも溶かす命の水っ!?」

さすがに溶けました



「ふぅー、狭かったー・・・」

無残に溶けた繭からよいしょっと立ち上がった妹紅
そのもんぺに長い髪、大きなリボンは変わらずのままだった
ただし、やはり背は人間の時よりはまだ低く、背中には羽がついたままではあるが

「妹紅・・・」
「あ、慧音」

ふと妹紅の頭にあの時の様子が浮かび上がる
かつての大会で、凄まじいオーラを発しながら数多もの犠牲者を出した慧音
今、目の前に居るのはいつもの慧音なのか、それとも・・・

「妹紅ー!!」
「わぶっ!」

だがその考えも杞憂に終わった、目の前に居たのは、頑固で真面目で
お節介焼きでちょっと涙脆かったりする、里の守護者、上白沢慧音だったのだから

「妹紅・・・グスッ・・・良かった・・・」
「あうう、苦しい・・・」


「・・・ごほん、救助もすんだし、それじゃ、私はこの辺で」
「あ、藍殿・・・」
「む?」

救助が終わり、立ち去ろうとした藍を慧音が呼び止める

「そ、その・・・すまない、私は藍殿に対してその・・・」
「・・・・・・」

やや俯き気味にしどろもどろとした状態で話し続ける慧音
すると藍は笑ってぽすっと慧音の帽子を軽くはたいた

「もう過ぎた事だ、橙の件は歴史を食べてなかった事になった、現に後遺症も無い、全ては終わったんだ」
「だ、だがそれでも・・・」
「何も気にする事は無いよ、私だって昔は・・・いや、これはいいか、まぁ、また何か合ったらいつでも呼ぶといい」
「藍殿・・・」
「今度は自分を見失わないように・・・私が言うのもなんだけどね、それでは」

そう言ってフッと姿を消した藍
後にはほんのりと油揚げのにおいだけが残っていた

「・・・なあ妹紅、私もいつかああいう器の大きな者になれると思うか?」
「ん~・・・服を脱『ガッ!』あいたぁっ!」
「妹紅、物事は言って良い時と悪い時があると常日頃からあれ頃・・・」
「わかってるわかってるって、も~、そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「む、むぅ・・・本当にわかってればいいのだがな・・・」

半分涙目の妹紅の姿にやや顔を赤らめながらぷいっと顔を向ける慧音
普段より小さく、幼さの残るその姿にまだまだ免疫は無いようだ
ふとその時、妹紅のもんぺが引っ張られる

「ア、アノ・・・モコリー・・・」
「あれ? リカリーまた来てたんだ」

くいっくいっともんぺを引っ張っていたのはリカリー
何故かおどおどしながら妹紅を見上げるその顔は、やや赤みがかっている

「アノ・・・ソノ・・・」
「ん? どしたの?」
「・・・・・・オ、オ姉サマッテ呼ンデモイイHALカ?」
「お姉さま・・・?」

妹紅は気づいていなかった、何故か周り中のリリーが物凄くキラキラした目でこっちを見ている事に
ここで云十年前に森近 霖之助が唱えたある公式を書いておこう

ビッグファーム=女学院

『お姉さまーーー!!』
「んのぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・」

リリー達の視線に気づくのが後五秒早ければ・・・今更後悔しても遅いのだが

「ほらほら、離れて離れて」
「ぜーはーぜーはー・・・」

とりあえず慧音がリリー達を慣れた手つきで引っぺがし、妹紅を救出して事無きを得る

「それじゃ妹紅、私はこの辺で帰るとするよ」
「あれ? もう帰っちゃうの?」
「ああ、あの兎達が帰ってくる前には去っておかないとな・・・顔を合わせ辛い」
「ふーん・・・またいつでも来てよ、やっぱり慧音と話してるのが一番楽しいし」
「んぐっ! ・・・ま、まぁ時間があればな・・・それと妹紅」
「ん? 何?」
「もし大会で戦う事があれば・・・手加減はしないぞ」
「・・・うん、私も手加減しないからね」





「ウッサウッサウッササー♪」
「はっるはっるはっるるー♪」

永遠亭へと続く竹林の中、ご機嫌な表情で帰路を歩む兎達と同じくご機嫌なリリー

「しかし圧勝だったね~」
「当然ウサ、Bランク程度の大会でこの因幡の白調教師様が負けてられないウサよー」
「そーだねー、テイリーもお疲れ様」
「春~♪」
「次は鈴仙が頑張る番ウサよー」
「う、うん・・・何とか勝って借金の利子代ぐらいは稼いでみせるよ!」
「・・・ま、まぁ頑張るウサ・・・」

現れた妹紅、大会の優勝、順風満帆に進む因幡ファーム
しかし、神の悪戯か、その因幡ファームに不幸は突然訪れた

「・・・眠い・・・春・・・」
「あれ? どうしたウサか?」

ドサッ!

「・・・テ、テイリーッ!?」










「・・・・・・脈拍も、異常なし」

やや古びた木のベッドの上に寝かせられているリリー
そのリリーの首筋に手の平を当てて触診しているのは
赤黒の独特な衣服の上に白衣を羽織った薬師、八意永琳

「間違いないわね、これは春眠よ」
「やはり・・・そうですウサか・・・」

永琳の出した答えに、がっくりとうなだれるてゐ
S級ブリーダーでもある彼女にとって予測は出来ていたものの、それでもショックは大きかった

「目が覚めるときまでゆっくり寝かせてあげなさい、わかりきってる事だとは思うけど」
「・・・はいウサ」



「ええっ!? テイリーが春眠!?」

静かで重苦しい雰囲気に包まれている事務室
てゐからの報告に、おもわず鈴仙の耳がまっすぐに伸びる

「春眠って?」
「は・・・春眠・・・テイリーが・・・春眠・・・あはははははあはあははは」
「れ、鈴仙!?」
「もう駄目だー! 因幡ファームはお仕舞いだー!」
「鈴仙が壊れたー!!」

春眠とは、リリーの今だ知られざる生態のようなものである
春が終わると同時に眠気に襲われ、そのまま目覚めることなく眠り続ける
そして翌年、冬が終わり始める頃に突如目を覚ますのだ、もしかしたら何らかの外的要因があるのかと
名を馳せたブリーダー達が原因解明に努めているが、未だにその答えは見つかっていない

そしてこの春眠の最も恐ろしい所は、どのリリーにでも発生してしまう可能性があるという事

「どうしよう、鈴仙がパーになっちゃった」
「それは後で永琳様に精神安定剤でも作ってもらうウサ、それよりも・・・」
「それよりも?」
「まずはどうやってファームを存続させていくかを考える方が先決ウサね」

自分の愛リリーが春眠に陥っても冷静さを失わないてゐと混乱し続ける鈴仙
これがS級とC級の間にある壁なのかもしれない

兎も角、因幡ファームの現状は非常に危険な事になっている
大きな収入源が無くなった為、かなり金銭的に危なくなるのだ
実はコンテストとLWGPでは一つの大会での賞金の額が倍以上違う
さらにその違う中で勝利を計算できるテイリーの離脱は余りにも痛かった

「コンテストリリー用の設備は余ったウサけど・・・今からコンテスト用にコンバートするのは間に合わないウサ」
「それだと大会で稼ぐしか無いってこと?」
「そうウサね、コンテストと違って大会が多いから、出るのには困らないウサけど・・・」

喋りながらゴソゴソと胸元から取り出したるは、大会の日程表
机の上にバット広げると、日にちごとに事細かに大会の予定が書いてあった

「テイリーと同じぐらい稼ぐには・・・大体一週間に五大会のペースウサね」
「五つも!?」

ちなみに今までは一週間に一つか二つ程度である、なのにいきなり二倍、三倍
それがテイリーの存在がどれだけ大きいかを知らしめる

「・・・と、とにかく頑張ってみる」
「私もテイリーの分の時間が空いたウサから、素質のありそうなリリーを何匹か担当して鍛え上げるウサ」
「フゥハハハ、因幡ファームは破滅だぁ・・・」
「アレはどうするの?」
「一応、鈴仙のスズリーは中途半端に強いから、私も訓練を手伝えば少しは稼いでくれるウサよ」
「そっちじゃなくてブリーダーの方・・・」
「・・・いつもの事ウサ」









 ~六月上旬

「梅雨杯取ってきたウサよっ!」
「はい、これトロフィー!」
「もこりーもてゐもお疲れー」
「この後もう一大会あるウサ、早く向かうウサよもこりー!」
「オッケー!」
「え、せっかくお茶とお菓子用意したのにー!」


 ~六月中旬

「鈴仙はまだ帰ってきてないウサか?!」
「今大会が終わったところらしいですうさ!」
「帰ってきたらもこりーと一緒に紅魔館ドームに向かわせてウサ!」
「て、てゐちゃん少しは休んだ方がいいうさよー?」
「大丈夫ウサ、それよりもミコリーとイコリーの準備は出来てるウサか!?」
「う、うん、出来てるけど・・・」
「わかったウサ、それじゃもう一試合行ってくるウサよー!」
「あ・・・てゐちゃん」


 ~六月下旬

「マリー今だっ! ぶっ放せー!!」
「いく春ー! マスタースプリングスパーーーーーーク!!」
「ふぎゃぁぁぁぁ・・・」
「もこりぃーーーー!!」

『勝者! 霧雨ファーム、マリィィィ!!』

「いよっし、これでCクラスだぜ!」
「・・・っくしょ~・・・負けた・・・」
「仕方ないよもこりー、この三日で七試合目なんだから・・・」
「二人とも、早く次の大会に向かうウサよ!」
「「鬼!」」


 ~七月上旬

今日一日の試合が終わり、月がやんわりと照らす生い茂った芝生の上に
半分青ざめたような表情で寝転がる鈴仙ともこりー

「・・・五日連続八試合の地獄ロード・・・終わったねもこりー・・・」
「うん・・・てゐはまだ帰ってきてないの・・・?」
「確かこの後まだ大会があるって・・・」
「・・・大丈夫かなてゐ・・・」
「あの細身のどこにあんな体力があるんだろうね・・・」

クマだらけの目で月を見上げながら二人して溜息を付く
我関せずと只ひたすらに輝き続ける月、これを見て二人は何を感じているのだろうか

「鈴仙様ーーー! もこりーちゃーーん!」
「うひゃっ! 借金の返済はもう少しだけ待ってください!」
「違うよ! 大変だよ! てゐちゃんが、てゐちゃんがっ!!」
「てゐがどうかしたのっ!?」

ドタドタドタドタ・・・バタン!

「てゐ!」

心配そうな顔の兎達が集まる部屋に、鈴仙が駆け込んでくる
その赤い目に真っ先に映ったのは、布団に包まれながら、唸っているてゐの姿

「てゐ大丈夫!?」
「うう・・・・・・」

鈴仙が呼びかけてもただただてゐは唸るのみ
その異様な光景に顔からは血の気が引き、手が震え始める

「どどどうしよう、何とか何とかしないと・・・!」
「落ち着きなさい鈴仙」
「し、師匠!」

突如現れたのは、赤黒の服に身を包んだ薬師、永琳
彼女はてゐの横に座り込むと、素早くてゐの触診を始めた

「(脈拍正常・・・病的要因は・・・無いわね・・・)」
「師匠、てゐは大丈夫なんですか・・・?」

一通りの検診を終え、一息付く永琳に恐る恐る尋ねる

「ただの過労ね・・・大丈夫よ、薬を飲ませておいたから一週間ほど休めば元気になるわ」
「そ、そうですか・・・」
「無茶をしすぎね、しばらくはゆっくり・・・鈴仙!?」

大丈夫という一言で鈴仙の顔から緊張の色が抜ける
しかし、表情が和らぐと共に鈴仙の身体も崩れ落ちた





「は、早く次の大会に・・・」
「うう~ん・・・あと三日待ってください・・・」
「はぁ・・・・・・一体どうすればいいのかしら」

布団で並んで唸っている二人
その二人をボーっと見つめながら深い深い溜息をつく永琳
ふとその時、背後の障子の戸がシャッと開けられた

「二人ともー、大丈夫ー?」
「あら?」
「・・・・・・あ」

勢いよく障子を開けたため、上から下まで全身を見事に永琳の視界に映してしまった妹紅
やばーい・・・という表情を誰が見ても分かるぐらい浮かべながら、その場に硬直し続ける

「ずっと立っていないで、こっちに来たらどう?」

だが何一つ驚かずに、逆に軽く微笑みながら永琳がクイックイッと手で招いた

「あー、その・・・失礼しました春!」
「待ちなさい」

むんずっ・・・ズルズルズルズル・・・

「離して春ー、私は妹紅じゃない春よー・・・」
「どう見ても妹紅にしか見えないわよ?」

結局引っ張り込まれ、一緒に寝込んだ二人を見続ける事に

「あなたが因幡ファームに居た事は卵から生まれた日から知っていたわよ」
「ええっ・・・ならなんで輝夜に言わなかったの?」
「別に言わなければいけないという訳でも無いわ」
「・・・・・・」
「それに因幡ファームの救世主を潰すわけにもいかないもの」
「うー、なーんか納得が行かないなぁ・・・」
「・・・・・・寝言が可愛いかったし」
「うわ、なんか今さらっと凄い事言わなかった?」
「言ってないわよ」
「うう・・・」

何とか隣の永琳から視線をそらそうとして鈴仙達の方を見る
どうやら薬が効いてきたのかさっきまでのような苦しそうな表情は無く、スヤスヤと眠っていた

「聞いてみれば、この一ヶ月ずーっと働き詰めだったらしいわね」
「休んでる時間よりも大会に出てる時間の方が多かったかな~」
「・・・まったく、せめて私にも一言相談してくれれば・・・」
「ん? 永琳もブリーダーなの?」
「昔はね、今も続けているけど、コンテストとかには出ていないわ」
「ふぅん・・・」
「・・・でも、もう座しているわけにはいかないわね」
「え?」

ふと永琳が立ち上がった

「ああ、二人に伝えて頂戴、もう無理はしないように、と」
「あ・・・うん・・・わかった」

立ち去っていく様子をただ見送るだけの妹紅
その永琳の背には、ただならぬ気迫のようなものが漂っていた





カチャリ、カチャリ・・・

部屋中に薬品の臭いが充満する研究室に、一人壁を弄っている永琳の姿

「暗号入力・・・零、千、三一五零・・・と」

ボワァンと結界が解かれ、そこに空間から隔離されていた通路が姿を現す
その通路にひたすら続く階段を、コツリコツリ、一段ずつ降りてゆく

「(鈴仙があれほど頑張っているのに・・・私は何をやっていたのかしら)」

階段を降りきった先に一際異彩を放つ白色の扉
その取っ手に手をかけ、ゆっくりと回す

「(屈辱を味わい、その事実から目を背け、ただ逃げ続けた・・・)」

扉が開かれた先には、上下左右、どこを見ても真っ白な空間
その部屋の真ん中に、ただ虚空を見つめ続ける一匹のリリー

「マスター?」
「エイリー・・・時が来たわ、私も、あなたも立ち上がる時が」
「・・・・・・」
「・・・戻りましょう、あの舞台へ・・・戦いの坩堝へ!」
「イエス、マスター!」





 ~七月下旬

「「えええええええええええええええええええええええええええっっ!?」」

早朝一番、事務室にすっかり元気になった二人の叫び声が木霊した

「な、何、どうしたの二人とも!?」
「これ見てこれ!」

鈴仙がバッと広げた新聞には、今日のコンテストのマッチアップ表が書かれていた


  四天王戦(夏)トライアル決勝

 八意ファーム      アリスファーム
 永琳ブリーダー  対  アリスブリーダー
 エイリー        シャンリー


「これがどうかしたの?」
「どうかしたのって、師匠が、師匠が復帰してるんですよ! それもトライアルに!」
「私達に無理をしないように行ったのはこういう事だったからウサか・・・」

新聞を見て唸り続ける二人に、イマイチ付いていけない妹紅

「永琳が復帰するのがそんなに大したことなの?」
「大したどころじゃないよっ!」
「わっ!?」
「まぁまぁ落ち着くウサ」

いきなり声を張り上げた鈴仙をなんとか抑え
事務室の黒板になにやら書き始めたてゐ

「D~A級最速昇格記録、四天王戦最速出場記録、新人最多得点記録・・・」

ずらずらずらっと黒板に書かれていく文字の羅列
その内容は、あまりこの世界の知識が無い妹紅でも一目で凄いと理解できる内容だった

「・・・・・・新人最多連勝記録・・・ウサね」
「この記録ってもしかして」
「もしかしなくても、全部師匠の記録なんだから」

声を張り、エヘンと胸を張って自慢する鈴仙

「なのに弟子はこの体たらくウサ・・・」
「うわぁぁぁん!!」
「ふーん・・・でも何でコンテストに出てなかったの?」
「う・・・それはその・・・」


八意永琳、突如としてリリーコンテスト界に現れた新星
初出場のコンテストで新人最多得点記録を塗り替え、その名を一躍幻想郷全土に知らしめた

彼女は初めて育てたリリーを希少なリリーに育て上げ、直後にトライアルへの出場権を獲得すると
あっさりと優勝し、名人戦に史上最速の速度で出場、ついに頂点へと手を届く位置まで辿り着く

しかしブリーダーとしてはまだ一年目の彼女に、その壁はあまりにも高かった
夏の四天王戦、相手は紅魔館の主「春命を操る紅魔」レミリア・スカーレット

結果は768点と271点、圧倒的な差であった

初めて味わう挫折、だが彼女も天才と呼ばれし者、すぐに敗因を割り出し
次の名人戦を取るために、再度エイリーと共に秋の名人戦のトライアルへと挑んだ

・・・・・・だが、彼女はトライアルの決勝で敗退した
皮肉にもその時の相手は「因幡の白調教師」因幡てゐ

後日彼女は知る、自分を打ち破ったてゐが秋の四天王、紫の前になす術なく敗れた事に
上は果てしなく高く、そして遠かった

次の年以降、彼女はリリーブリーダーとしてコンテストに出る事はなかった
その理由は誰も知る由も無い


「と、まぁ色々な事があったらしいウサ」
「ふーん・・・それって出なくなった原因はてゐじゃないの?」
「あ! 早く行かないともうコンテストが始まっているウサよー!」
「誤魔化したね」
「誤魔化したよね」
「い、急ぐウサよー!!」





紅魔館庭特設会場、紅魔館で最もコンテストや大会の開かれる会場である
本日ここで行われる試合は四天王戦(夏)トライアル決勝戦
夏の四天王、レミリア・スカーレットへの挑戦者を決めるコンテストである
その会場の入り口に、呆然とした表情を浮かべる因幡達の姿があった

「ええっ? もうコンテスト終わったんですか?」
「はい、ただいま後処理の真っ最中です」

モップを片手に淡々と説明するメイドの後ろには
所々赤く染まった芝生が見えていた

「あら、遅かったわね」
「え・・・師匠!」

突如の越えに振り向いた先には、何故か白衣を身に纏った永琳の姿
その背中には、リリー輸送用プチコンテナを背負っていた

「師匠、勝ったんですか!? それとも・・・」
「勿論勝ったに決まっているでしょう?」
「そ、そうですよね・・・師匠が負けるなんて事・・・」
「私に負けたウサけど(ボソ」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「あ、師匠!? ししょーーー!!」

てゐの痛烈な一言で泣きながら走り去っていく永琳
子は親に、ペットは飼い主に、弟子は師匠に似るものか

「ししょーーーー! 待ってくださーーーい!」
「どうせ私なんてどう考えても相当年増なのに幼女のフリしてる妖兎に負ける程度のお姉さんなのよー!」
「幻想郷で一番の年増が何ぬかすウサかー!!」
「お黙りエセ幼女! 私は永遠の十七歳よ!」
「どっかの隙間も同じ事言ってたような気がするんですけどー! いい加減に待『バシャン』うばっ!」
「邪魔ウサー! 湖の上も走る事が出来ないなんて修行不足ウサよ鈴仙!」
「けふっ・・・なんで二人は走れるんですか・・・やっぱり二人とも年季が『メキッ』おぶっ!」
「ええい、そのコンテナの中身を見せるウサー!」
「ヒョーッホッホ! これは四天王戦まで楽しみに待ってなさーい!」

湖上を追いかけっこしている二人を頭に杵が刺さったまま虚ろな目で見つめる月兎

「鈴仙大丈夫? 生きてる?」

心配する妹紅の言葉がやけに鈴仙の心に染みた

「あらもこりーちゃん、久しぶりね」

いつの間にか後ろに立っているメイド長の言葉も妹紅の心に突き刺さった



「・・・そうね、あれは一言で言えば・・・凄かった、ね」
「凄かった・・・?」

紅魔館のメイド長のお部屋♪に、テーブルを囲む三人
ファンシーでプリティーな部屋の中、神妙な顔つきで咲夜が口を開いた

「ええ、凄かった・・・そうとしかいえないわ、私自身、あれは夢だったのではないかと思うぐらい・・・」

紅茶を口に運び、ほぅっと一息
ゆらゆらと揺れる紅茶の波を見つめながら、目を細める

「いえ、あれは夢だったのよ・・・そう、一時の夢」
「夢・・・ですか」
「あなた達も気をつけなさい、永琳のリリーは恐らく・・・いえ、確実に禁断の領域に踏み込んでいるわ」
「禁断の領域?」
「き、禁断の領域だってー!?」
「知ってるの鈴仙?」

ガタンと机を揺らして鈴仙が立ち上がる
身体はワナワナと震え、その表情は一つに定まらない

「・・・禁断の領域、それは四天王のリリーしか到達し得ないといわれたL(Luna)難度の特技の事」
「四天王が四天王である理由、そして未だに四天王が無敗でもある理由よ」
「まさか事実上引退していたはずの師匠が、その領域に到達しているなんてっ」
「私も驚いたわ、未だ未完成なれど、完成してしまえば・・・四天王の一角が崩れる可能性も」
「もし・・・四天王の一角が崩れる事があれば・・・」
「とんでもない事になるわね、数百年変わらずにあり続けた形がついに塗り替えられる」
「そうなれば微妙なバランスで保たれていたリリーコンテスト界は・・・崩壊する!」
「白玉楼、紅魔館、マヨヒガ、香霖堂・・・その絶対四陣が崩壊すれば、待つのは春で春を洗う戦春時代」
「そして「絶対平等完全閻魔」四季映姫、「オリエンタルブリーダー」風見 幽香もその隙を逃すはずも無い」
「彼女達だけでは無いわ、永遠亭に新しい名人とS級が揃えば、パチュリー様も重い腰を上げるはずよ」
「白玉楼も「一刀全断」魂魄妖忌が復活する可能性だって・・・」
「面白い話をしてるわね、私も混ぜなさい!」
「パチュリー様!?」

「(話についていけない・・・)」

何故かとてつもなく盛り上がる部屋の中で、妹紅は一人ぽつーんと肩を狭めるのであった





 ~八月下旬

「とうとうこの日が来たウサね・・・」
「うん・・・いよいよだね」

紅魔館メインホール、五十万人は収容できるのではないかというぐらい
咲夜の能力を駆使して広げられたこの会場
その観客席も全ての席が熱狂的な観客によって埋められ
何度も何度も地響きのような歓声が誰もいない舞台へと注がれる

「結局あれから一度も師匠のリリーを見る事が出来なかったけど・・・大丈夫だよね?」
「多分・・・大丈夫ウサよ」

ステージのすぐ脇に作られた関係者のみ立ち入り可能の特別観戦席にて
心配そうに見つめ続ける二人の兎達
その逆側の特別観戦席には紅魔館の面々も鎮座していた

「もこりー・・・あなたが大人になっても私の愛は変わらないわっ!」
「ふ~ん・・・これが人の魂を注入したリリー・・・興味深いわね」
「やめてやめて、やめてってばー、やーめーてーよー! うひゃーん!」
「あの、二人ともその辺にしてあげた方が・・・」
「「お黙り」」

ついでにもこりーも弄くられていた


《ウォオオオオオオオオオオオオオ!!》

そして時が満ち、一際歓声が大きく響き渡る
北側にそびえる巨大な扉から姿を現したのは、進行と司会を担任する半人半霊、魂魄妖夢
その歓声を一身に受けながら、会場のど真ん中まで歩を進めると、マイクを構え、一言

『これより・・・四天王戦、夏の開催を宣言いたしますっ!!』

もはや歓声だけではない、観客達の足踏みが地を揺らし、会場その物が一つの打楽器へと昇華していく
その音色を操作せんとプリズムリバー三姉妹が盛大に音楽を奏で、興奮の坩堝へと誘う

『それではっ! 審査員の入場です!!」

妖夢の声と共に暗転し、カラフルなライトが会場を駆け巡る
南側の扉が開き、三姉妹が奏でる壮大な音色と共に、審査員達がゆっくりと姿を現した

『春の四天王! 西行寺 幽々子様!』

最初に歩みだしたのは冥界の亡霊嬢
その周りに死へと誘う蝶を纏わせながら、ほんわりとした表情で審査員席へと向かった
この時点でうっかり冥界へと昇天させられた観客の数、およそ2700名

『秋の四天王! 八雲 紫様!』

次に歩みだしたのはマヨヒガの主にして幻想郷の妖怪の頂点に立つ大妖
その顔に鼻ちょうちんを浮かべながら、式に引き摺られて審査員席へと向かう
この時点でゆかりんファンクラブに入ろうと決心した観客の数およそ7名、脱退希望者1200名

『冬の四天王! 森近 霖之助様!』

最後に歩みだしたのが、香霖堂店主にして最強といわれる変態、以下省略
そして審査員席に三人の名人が集い、必然とそこに異空間が形成される

「妖夢・・・サングラスが似合ってるわ・・・」
「Zzz...」
「(紫様、起きてください! そろそろ始まりますよってか始まってますよ!)」
「む、藍さん、また胸が大きくなったんじゃないかい?」
「いや、大きくなっては・・・って触るな!」

はずもない



『挑戦者の入場です・・・』

観客の歓声がぴたりと鳴り止み、その視線が東門へと一斉に注がれる
奏でられるは千年幻想郷、そのリズムと観客の足踏みが自然と揃い、壮大な重奏となる

『東 A級ブリーダー「月の幻想卿」八意 永琳!!』

そういい終えると共に爆音が響き、東門がはじけ飛ぶ
巻き上がった噴煙の中から、八意永琳が、不敵な笑みを浮かべながら静かに舞台へと姿を現した

「(戻ってきたわ・・・この舞台に・・・)」

かつて挑戦し、完膚なきまでに叩き潰されたこの舞台
天才は何を見、何を思い、何を感じたのか

そして再度舞台が静寂に包まれる

『それでは、四天王の入場です!!』

途端会場が揺れる、否、会場だけではない、紅魔館が、周りを囲う湖が、幻想郷全土が揺れ動く

『西 夏の四天王「春命を操る紅魔」レミリア・スカーーーレットーーーーー!!』

紅い光が会場を包み、その光の中心から幼き悪魔が姿を現した
全ての観客を見下すような表情を浮かべながら、緩やかに舞台へと舞い降り、永琳と対峙する

「久しぶりねレミリア・・・あの日の屈辱を忘れた事は無かったわ・・・」
「はて、あなたと競ったことなんてあったかしら? 挑戦者の事なんてあまり記憶に無いわね」
「言ってくれるわね、あの時と永夜の屈辱、合わせて返させて頂くわ」
「そんな事もあったわね・・・ま、年寄りは大人しくもう一度地にひれ伏しなさい」
「ふん、ガキの癖に・・・あなたの歴史を私の年齢で割ればゼロ、知識の差を思い知りなさい!」

お前らこれから弾幕勝負でもやるつもりかといわんばかりに殺気をぶつけ合い
その周りに絶対進入不可領域を展開する二人
そしていよいよ、コンテストの名を借りた戦いの幕が上がった

『先手は四天王、レミリア選手のレミリーからです! それでは審査を開始します!』

「さぁ、今回も華麗に素敵にワンダフォーよ!」

レミリアの合図で豪快に舞台に紅い煙が噴出し、煙に紛れて一つの影が中空へと舞い上がる
同時に会場全体がカラフルな光で覆われ、三姉妹が音楽を奏で始めた

「来るわよ幽々子、香霖、二人とも防御体勢は取れてる?」
「勿論よ紫、今年こそ乗り切って見せるわ」
「・・・スマン、僕はもう駄目みたいだ」
『早っ!』

徐々に煙が晴れ、レミリーの姿が明らかになってゆく
そしてその全身が露わになる瞬間、大量の星が会場中にばら撒かれた


「まじかる☆リリーちゃん! 参上ですぅ~!!」

《オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!》


 まじかるリリー 属性「魔法少女」 ☆☆☆☆☆
 発見者 レミリア・スカーレット
 際どい衣装とつぶらな笑顔がみんなの心を引き付ける!
 少しでも気を抜けばあっちの世界に連れて行かれるぞ!


「来るわよ! レミリアお得意の観客エネルギーによる全方位殲滅技が!」
「紫様、私の後ろに!」
「妖夢! 幻想郷一硬い盾の意地を見せなさい!」
「はいっ!」
「くっ、あの大人の心をくすぶる声、ちらりと見え隠れする程度に見事に操ったスカート捌き・・・完璧だ!」

審査員達を飲み込まんと迫り来るは、まるで大津波の様な観客達の熱気
まじかるリリーちゃんによって先導された熱気の全てが審査員へと向けられるのだ
これこそがレミリーの特技にしてレミリアの名人の座を揺るがないものにしている「春波」である
無論、この特技を扱うには、観客達を引き付ける魅力と熱中させる何かが必要だ

《萌えええええええええええええええええ》
《パンチラキターーーーーーーーーー!!》

「くぬぅぅぅ! 私には橙が! 橙がいるんだぁぁぁぁ!!」
「この程度の熱気で! この冥界一硬い盾は破れぬっ!!」
「・・・お・・・おお・・・!」
「こーりん!?」
「駄目よ香霖! 意識をしっかり保って!」
「おおおお! まじかる☆リリー! まじかる☆リリー!」
「香ー霖ー!!」
「離れて紫! 近づいたらあなたまで巻き込まれるわっ!」
「でも香霖が! 香霖がーー!」


「今日も悪人を退治するですぅ~! リリーマジカルジェノサイドスター☆!!」


「くっ・・・紫様・・・私はここまでのようです・・・!」
「藍!?」
「せめて奴の世界に飲み込まれるぐらいなら・・・この身を石と化してでもっ!」
「やめて藍! あなたがいなくなれば私はどうすればいいの!?」
「紫様・・・強く生きてください・・・私はいつもあなたの側にっ!!」
「らぁぁぁぁぁぁぁん!!」


「さ~皆! 今日も一緒にエンディングテーマで張り切る春よ~!」


「あは・・・あははは・・・藍が・・・藍の居ない世界なんて・・・・・・」
「ゆ、紫! 藍の後ろを離れては駄目よ! 彼女の思いを無駄にする気なの!?」
「・・・私も行くわ・・・あなたの側へ・・・」
「ゆかりぃー!!」
「駄目です幽々子様! 私の後ろを離れてはいけません! 幽々子様ぁぁぁ!!」


「沢山のアンコールありがとう春~! もう一度いく春よー!」


「まじかる☆リリー!」
「まじかる☆リリー!」
「ああ・・・そ、そんな・・・幽々子様も、紫様も飲み込まれてしまった・・・」
「まじかるまじかる!」
「まじかる☆リリー!」
「こ、こうなれば私も共に! まじかる☆リリー!」

そして会場は春一色、審査員、観客、はてもは警備員達まで一緒に騒ぎ続け
偶々紅魔館の近くを飛んでいたチルノが何事かっ!? と頭のいいフリをしてしまうほどであった

「はいはーい! こちらがまじかる☆リリーちゃんのグッズ売り場ですよー!」
「他にもまじかる☆咲夜ちゃんのグッズも売ってるわよ~」

何故かこの騒ぎに便乗して山積みのグッズを雪崩れ込む観客達へと売りさばくパチュリー達

「・・・パチェ、これは何かしら?」
「ああっ!? それはプラチナ会員用のまじかる☆レミィちゃんグッズでは無いわよ決して!」
「パチェェェェ!! 咲夜と美鈴はどうなってもいいから私だけはソレに巻き込まないでとあれほどっ!」
「お嬢様ご安心ください、対抗策としてまじかる☆パチュりんグッズを用意しました」
「いやぁーー! それだけは勘弁してーー!」
「ふはははは! こうなったらパチェ! あなたも道連れよっ!」
「それとまじかる☆リトりんグッズも用意しております」
「わ、私までですかっ!?」

レアグッズが一気に開放されたせいか売り場はより熱気を増し
レミリアが直々に手渡し販売を行っている状況(主にパチェグッズ)であったが
その様子を遠くからさびしそうな目で見つめる一人の門番の姿があった

「いいなぁ・・・私もグッズ作ってもらえないかなぁ・・・」

だが彼女は知らない、まじかる☆めーりんグッズは紅魔館内で壮絶な奪い合いが起きるため
決して外に出回ることが無いということを、彼女は知らない・・・





『えー、それでは後手、八意 永琳選手のエイリーの審査を始めます!』

アレから約六時間ほどの復旧作業が終了し、ようやく進行されるコンテスト
どでんと舞台の上に置かれるは、前後上下左右全て真っ白な箱

「ふふ・・・一度挫折した天才がどのように蘇ったか・・・気になるわね」
「そうねぇ、だけどお腹空いたわ~」
「二人とも余裕だね、僕の仕入れた情報では、それはもうとてつもないリリーを育ててきたとか」

そして今、ゆっくりと箱が開かれてゆく

「活目して見なさい! これこそが天才のみが成し遂げられる偉業!」

「おはようござい春~」

そのあまりにもありえない光景に、しばしの静寂が会場を包み込んだ
しかしその静寂も、審査員の悲鳴のような叫び声で切り裂かれ、終焉する

「・・・なんですってっ!?」
「そ、そんなことがっ!?」
「馬鹿な、これが月の頭脳とまで呼ばれた者の力なのかっ!!」

いよいよ開かれた箱の中から姿を現したのは、上から下まで白い衣服に包まれたリリー

「これこそが全ての祖にして全てのブリーダーが追い求める究極の形、リリーホワイトよ!」


 リリーホワイト 属性「?」 測定不能
 発見者 不明
 リリーホワイト、それは春の妖精にして春の伝達者
 春の到来を華麗なる弾幕で知らせる可愛い妖精である


「ありえないーーっ! リリーホワイトを自ら作り出すなんて不可能!」
「一体! 一体どうすればそんな事ができるのっ!?」
「くっ・・・色、物、人、その他全ての影響を除外しなければ成し遂げられないその姿、一体どうやって!?」

今、審査員達の目の間にいるのは奇跡、その奇跡を具現化した存在
これまでに数千の名うてのブリーダーが挑み、ひれ伏してきた究極の難題
それこそがリリーホワイトの人工育成、その奇跡が今ここに降臨したのだ

「くくっ・・・A4用紙に換算すれば、三途の川の方程式のおよそ数千倍の量にも及ぶ究極の理論の果てに
 ついに辿り着いたリリーの頂点・・・崇めなさい! ひれ伏しなさい! そして・・・・・・死ぬがよい!!」
『なっ!?』
「春ーーーー!!」

永琳が右手を突き出すと共に、エイリーから大量の桜色の霧が審査員達へと放たれた

「な、何これ!?」
「一体何をする気なの・・・」
「これは・・・霧状化した春かっ!?」

幽々子、紫、香霖の周りを霧が包み込み、もはや互いに姿が視認できなくなるほどその霧は濃くなった――。



「妖夢、妖夢はどこなのっ!?」
「幽々子様ー」
「妖夢っ・・・・・・?」
「幽々子様? お食事中にどうかなされましたか?」
「え・・・あら・・・?」

チュンチュン、チチチチチチ・・・と小鳥の鳴き声が幽々子の頭へと響く
気づけば、回りはいつもの白玉楼、朝日がやんわりと部屋を照らす中
ふと目の前にはいつもの朝食、そして机の向かい側にはいつものきょとんとした顔の妖夢がいた

「ああ・・・そういえばお食事中だったわね、妖夢~、おかわり」
「はいはい、あまり食べ過ぎないでくださいね」

すっと差し出されたお碗を妖夢が受け取り、慣れた手つきでご飯を盛っていく
返されたお椀を受け取ると、とてつもない勢いで口の中へとかき込む

「も~、幽々子様、もう少し控えめに食べないとこの後デザートがあるんですよ?」
「だってぇ、食べ盛りなんですもの~」

わいわいと談笑を交わしながら食事を終え、二人同時に熱いお茶を喉へと流し込む
溜息の後、視線が合わさる・・・と、妖夢がふいっと下に顔をそらした

「それでは・・・その・・・そろそろデザートになさいますか?」
「そうね~、ところでデザートは何かしら~?」
「あうう・・・言わせないでくださいよ・・・」
「・・・妖夢っ?!」

ふと妖夢が立ち上がったかと思うと、はらりと畳の上に上着が脱げ落ちる
そして下着一つになった妖夢が、すぐさま幽々子へとしな垂れかかった

「・・・は・・・はい、デザート・・・です・・・お好きなところから・・・ご賞味くださぃ・・・」


ボォンッ!!


「あああああああああ! その言葉をずっとずっと待っていたのよ妖夢ぅぅぅぅぅーーーーー!!」

「ゆ、幽々子様ーっ!?」

謎の爆音と共に、突如霧の中から吹き飛び、飛来する亡霊嬢
彼女はそのまま軽やかに、そして緩やかに地面へと落下した

「し、しっかりしてください幽々子様!」
「妖・・・夢・・・これだけは・・・あなたに伝えておくわ・・・」
「幽々子様!」
「・・・・・・凄く・・・良かったわ・・・・・・がくっ」
「幽々子様!? 幽々子様ー!! さっぱりワケが分かりませぇぇん!!」

鼻から紅い紅い液体を垂れ流し、天へと召された亡霊嬢
大粒の涙を流し困惑した表情を浮かべながら別れを惜しむ半霊の従者
その光景を、月の薬師はただ冷酷なまなざしで見つめていた

「これこそがリリーホワイトのみが使う事の出来る究極の奥義・・・春の楽園」


春の四天王、西行寺 幽々子 堕つ――



「あふ・・・・・・ここは・・・?」

ふと目を覚ますと、目の前に移ったのは木の天井
身を起こして周りを見渡せば、そこはマヨヒガであった

「あら? 確か私は・・・えーと・・・・・・思い出せないわね」

さっきまで自分が何をしていたのか、さっぱり思い出せない
結局寝ていたのだろうか、きっとそうだろう

「・・・眠いわ」

そうして紫はもう一度布団を被る、ふとその時、自分の真横になにやら暖かい感触が

「・・・誰?」
「あ、あの・・・紫様・・・」
「・・・・・・藍?」

よくよく見れば、頭に映えた二つの耳、ふかふかとした金色の尻尾
それは紛れもなく自らの式であった、だが一つ違う点があるとすれば・・・

「小さい・・・わね?」

そう、小さい、橙程ではないがそれでも小さい、しかも可愛い
いつもの怒りんぼでガミガミしてて、でも本当はちょびっと甘えんぼな藍ではなかったのだ

「紫様」
「え、えーと・・・」

ふと紫に過去の記憶が蘇る、藍を式にしてまだ月日がそれほど過ぎてない頃の記憶が
紫様、紫様と後をついてきて、たまに姿を隠せば大泣きして私を探していた頃の事が

ちゅっ

「!?!?!??!」

途端、唇に何かが触れる、それは紛れもなく、目の前にいる藍の唇
そして藍は顔を離したかと思うと、薄く纏った寝巻きをしずしずと脱ぎ始めた

「ら、ららららら藍らら藍藍っ!」
「紫様・・・お慕い申し上げております・・・」
「そそそそのそんそそののそのっっ!」
「今宵も、紫様の深い愛を・・・この私めに注いでくださいませ・・・」


ボブンッ!!


「コンコンパラダイスゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーー!!!」

『あーっと! 霧の中から今度は八雲紫審査員が飛び出してきたー!!』

「紫様ぁっ!!」
「ああ・・・藍・・・・・・今のあなたも・・・最高よ・・・・・・ガクッ」
「私もワケが分かりませんよ紫様ーーーっ!!」


秋の四天王 八雲 紫 堕つ――



「まったく、この霧は一体何なんだ・・・」

霧に包まれてから約二分、未だに香霖には何の異変も無い

「これは一体どういう特技・・・んん?」

ふと気づけば、ゆっくりと霧が引いていく
次第に露わになってゆく風景は、いつも見ていた光景、香霖堂の店内であった

「空間転移・・・かな?」

何か仕掛けられているのかと思い身構えてみるが、何も起こる気配は無い
とその時、ガサガサゴソゴソと、何かを漁っているような音が聞こえる

「そこに誰かいるのかい?」
「わわっ!! 香霖!?」
「魔理沙・・・?」

ズッデーンと豪快な音がしたかと思えば、目の前で尻餅を突いているのは
いつもいつもツケツケといいながら売り物をかっぱらっていく黒い少女であった

「なな、なんで香霖がお店にいるんだ!? 今はコンテストのはずだろ!?」
「・・・そうかい、最近よく品物が減ってると思ったら、魔理沙の仕業だったんだね?」
「うう・・・だ、だって・・・」
「だっても何も無い、今までの分はきっちり払ってもらうよ!」

きつい眼光で魔理沙を睨みつけ、叱り付けるように言い放つ

「そ、その・・・ツケって事で・・・な、いいだろ?」
「よくないっ!」
「ひっ!」
「そもそもそのツケがどれだけ溜まってると思ってるんだ・・・いい加減払ってくれないか?」
「だ、だって・・・それは香霖・・・が・・・」
「僕がなんだって?」

もう一度魔理沙を厳しい目で睨みつける、すると今度は魔理沙が涙を流しながら見つめ返してきた

「だって・・・香霖が悪いんじゃないか・・・!」
「責任転嫁もいいとこ・・・ま、魔理沙?」
「私はずっと待ってるのに・・・香霖が言ってくれるのを待ってるのに・・・!」
「ちょ、ちょっと魔理沙!? なんで服を脱ぎ始めらるるら!?」
「一体後どれぐらいツケを貯めれば・・・私の体で払えって言ってくれるんだよ・・・」
「えっ?あ?え?え?えええ!?」

上も下も脱ぎ捨てた魔理沙が、ぎゅっと香霖へと抱きつく
惜しい事にこのカメラからは香霖が邪魔になって魔理沙の姿が映らない

「もう・・・我慢できない・・・全部払うから・・・受け止めてくれ! 香霖!」


ズドォンッ!! ブシャァァァァァァァ!!


「ありえないと分かっていてもその一時の夢に身体を委ねたいぃぃぃぃぃ-!!!!」

『あーっと! 今度は森近霖之助さんが飛び出してきたー! あの爆音の正体は鼻血だったのかー!!』


冬の四天王 森近 霖之助 堕つ――



そして嵐は過ぎた、後に残ったものは三つの骸
皆、満面の笑みで倒れていた、恐らくその魂は楽園へと捧げられただろう

「何と言う恐ろしい技だ・・・一体、一体何が起きたっ!」
「ヒョーホホホ! よくやったわエイリー、会心の出来よ!」

地に倒れ伏した審査員達を睨みつけるレミリアと、高笑いを上げる永琳

「くっ・・・貴様がここまでやるとは・・・」
「ヒョホホ、これでどちらが勝つかはまったく分からなくなったわね」

そう、共に審査員を自らの世界へと飲み込み、完全に掌中に包み込んだ
後は審査員達が幾つの点をつけるかに結果が委ねられる

「だけど、今はそれ以上に気をつけなければいけないことがあるの」
「これ以上に?」
「実は・・・」

永琳が神妙な顔つきで未だに春を巻き続けるエイリーを見つめる
レミリアも自然と顔が引き締まり、永琳が放つ言葉を待ち続けた

「この技、まだ未完成なのよ」
「・・・未完成だと! この威力で!?」
「いえ、威力的には完成しているわ・・・でもね」

といいながら、スチャリと言う音と共に装着したはガスマスク

「シュコー・・・実はこの技は・・・シュコー・・・止める事が出来ないのよ!シュコー・・・」
「それはどういう・・・なっ!?」

途端、レミリアの周囲を桜色の霧が覆い始める

「そのため対象者が・・・シュコー・・・倒れてしまえばその矛先は・・・シュコー・・・周りの者達に・・・シュコー・・・」
「そ、それを早く言いなさいよ!」
「完全に扱えるようになってから・・・シュコー・・・コンテストに出る予定だったのだけれど・・・シュコー・・・」
「シュコーシュコー五月蝿いわボケェ!」
「へぶっ!」

レミリアの怒りのバットレディスクランブルが永琳へと直撃し揉み合いながら転げまわる二人
ふと気づけば、永琳のガスマスクは遠くへと吹き飛んでいる

「ああっ! ガスマスクが!」
「こうなればババァ! お前も道連れだ!」
「誰がババァよこのガキ!」
「黙れ牛乳!」
「何よこのまな板胸!」

どこかで聞いたようなやり取りをしながら、二人はあっさりと霧に包まれたのであった



「う・・・結局何なのよこの霧は・・・って、あら?」

ふと気づけば足元は畳、外は夜、そして遠くに見える赤い鳥居

「博麗神社・・・?」
「・・・レミリア・・・」
「ひゃぅっ!?」

ふと背後から響く甘い声、恐る恐る振り返ってみればそこには

「れ、霊夢?」
「レミリア・・・早くぅ・・・」
「れれれれれれ霊夢っ!?」

布団を被り、その隙間隙間から穢れなき身体をちらちらと除かせる霊夢の姿

「ここここれはどどどどういうことことことこ・・・わぶっ!」
「駄目ぇ・・・もう我慢できないぃ・・・」
「ああそんな・・・こんな夢のような事が・・・」

突如飛びつかれた霊夢に押し倒され、ゆっくりと被さってきた布団に二人とも包まれる
密閉された空間の中、甘い甘い顔で見つめてくる霊夢にレミリアのハートはもはやハイテンション

「今夜だけは・・・私の運命はあなただけのものよ・・・レミリア・・・」

ドカァンッ!!



「・・・ここは永遠亭・・・?」

レミリアが夢の霊夢によって昇天させられた頃
同じく永琳も春の霧によって作られた空間へと飛ばされていた

「(意識をはっきりさせなければ飲み込まれる・・・! こういう時は鈴仙が一匹、鈴仙が二匹・・・)」
「師匠ー?」
「れ、鈴仙!?」

可愛い弟子の声が響き、閉じていた目を恐る恐る開ける、するとそこには・・

「師匠、師匠からもらったこの水着、私にぴったりです!」
「す、スクゥル水着ーっ!」

青いあの伝説の水着を身に纏い、フリフリと尻尾を見せ付ける鈴仙
すでに永琳の頭は限界点が近づいてきているぞ!

「師匠ー!」
「え・・・ええっ!?」

そして後ろからの声に振り向けば、そこにはバニースーツに身を包んだ鈴仙が!

「師匠ー!」
「師匠ー!」
「師匠ー!」
「ひゃぁぁぁ?!」

右も、左も鈴仙、それぞれボディラインをくっきりさせる魅力的な服に身を包んで
次々と現れ、次々と永琳を取り囲んでいく

「(だ、駄目よ永琳! ここで耐えなければ、耐えなければ・・・!)」

目を瞑り、耳を塞いで必死にこらえる永琳、その様子はさながらカゴメカゴメか

『師匠・・・師匠・・・ししょ・・・し・・・・・・・・・』
「(・・・・・・・・・終わった・・・の?」

頭に中に響く声が徐々に薄れ、次第に何も聞こえなくなってゆく
そして恐る恐る耳を塞いでいた手を離し、ゆっくりと目を開けた

「師匠?」
「ひゃひっ!?」

しかしそれは罠だった、目を開けば目の前にいたのは
純白のドレスに身を包んだ・・・そう、つまりウェディングドレス姿の鈴仙

「師匠・・・幸せになりましょうねっ!」

ズキューーン!!


「駄目よ霊夢私達はそんな一晩限りの関係だけじゃ物足りないあの日の甘い運命ぃぃぃ!!」
「鈴仙あなたを拾ったあの日からずっとずっとあなたの事がフォーリンラァァァァブゥゥゥゥ!!」

夏の四天王 レミリア・スカーレット 月の頭脳 八意 永琳 堕つ――


そして次々とエイリーの春の楽園に猛者たちは飲み込まれてゆく

「ごめんなさい・・・藍様が・・・喜んでくれると思ったから・・・スッパしてみたの・・・・・・」

ボブゥン!

「もう図書館でほしいものはあらかた盗んだからな・・・最後にお前を盗んでいくぜ、いいよな、パチュリー?」

ズドォン!

「咲夜、私の気持ちにはもう気付いているんでしょう? さぁ、はやくいらっしゃい・・・愛を育みましょう・・・」

チュドォン!

「妖夢君! さあこの僕の裸体をまじまじと見つめるがいい! そして好きにするがいい!」

バゴォン!



・・・後に残ったのは、まるで花火のように地を彩る赤い鮮血と倒れ伏した猛者達だけであった・・・。










 『四天王戦 夏の紅魔館コンテスト レミリア卿が三点差で苦しみながらも挑戦者を撃破!!』

  四天王戦の一つ、紅魔館コンテストは史上稀に見る大激戦となった
  レミリアブリーダーのレミリーが歴代単独三位となる721点(基本、特技点満点、特殊点521点)
  八意永琳ブリーダーのエイリーが歴代単独四位となる718点(基本点141点、特技点満点、特殊点527点)
  という凄まじいハイレベルの戦いを展開、四天王であるレミリアブリーダーが
  まさに意地ともいえる点差で苦しみながらも挑戦者を撃破し、四天王の座を守りきった
  最後には両者が満面の笑みで握手をするという素晴らしい締めで、夏の死闘は幕を降ろした(写真下)



「はぁ・・・惜しかったですね師匠・・・」
「そうね、完全にリリーその物を鍛えていれば・・・今更言っても仕方が無いわね」
「そうそう、次があるって」
「でも・・・よかったウサよね、あれ」
「うんうん、良かった・・・はうっ」
「良かったわ・・・ウェディングドレス姿の・・・はっ!」
「え、一体何があったの?」
『何でもない』

実は妹紅だけは身体がリリーのため、被害を受けていなかったりした
結局優勝は出来なかったものの、それでも多額の賞金が入り多少は潤った因幡ファーム

しかし幸せのど真ん中にいた彼女達に、突如不幸は訪れる、それは神が敵に回ったかのように

「永琳ー、因幡ー、お昼ご飯まだー?」
「ん、輝夜?」
「あら、妹紅?」





   『あ』




やっぱりこのノリで書いてるとお肌がテカテカしてきます
本来なら実はこれ第二話の予定だったのですが・・・なんでここまで伸びたのだろうか

~過去作読み直し中~

慧音のせいかっ!?

<おまけ>
リリーホワイトの育て方
まず、密閉空間を用意します、ブリーダーがリリーに会うときは魔法で姿を消してください
次に他干渉阻害結界(六万五千五百三十六重相互干渉増幅固定式)をリリーの周りに張ります
この時リリーの視界を塞がないように注意してください、閉じ込めないようにもしてください
後は何も置かず、食事は変わりに点滴を与え続けます、針で痛がらせないように注意
リリーが大人になったらもう直接干渉しても構いません、きっちりといいリリーに育てましょう。
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.3210簡易評価
1.100猫井はかま削除
香霖の叫びに漢を見ました
つーか大爆笑しかできないですよこれ!!

あ、まじかる☆めーりんグッズ一通り十年ローンでください
7.90秘密の名無し削除
もうね、もうね。本当にご馳走様でした!
11.80名前が無い程度の能力削除
妖夢……お前の深層心理ってやつあ……
こーりんは横島ですか
14.70変身D削除
色々ツッコミどころはあるのですが、取りあえず妖夢の妄想に吹きました(w
15.90名前が無い程度の能力削除
コンコンパラダイス吹いたw
16.90どっかの牛っぽいの削除
審査員がすごい速さで堕ちて逝く
まさに春殺
19.90名前が無い程度の能力削除
やはり幻想郷には変態しかいないのか・・・
20.100名無し参拝客削除
レーセン!何を想像したんだ!
22.70名前が無い程度の能力削除
霊夢は何時でるのだろうか、また出るのが楽しみだ♪
24.80名前が無い程度の能力削除
レイリーは鈴仙のと霊夢のと被るのですが、この辺は仕様ですか?
25.無評価幻想と空想の混ぜ人削除
他に永琳と映姫も被るんですよね・・・
単純に間違えたデスorzスンマソン
26.80アティラリ削除
今回のレイリーはテイリーの誤字かと
ところでリリーブラックを育てたいのですが卵はどこで売ってますか?
27.80てきさすまっく参拾弐型削除
慧音あっさりすぎ。
でもまぁ、このノリの方がいいかな。
長期ロードの過酷さはあんまり伝わらなかったです。
阪神死のロードで脳内補完しました。
輝夜は味方であってほしいなぁ。
28.無評価名前が無い程度の能力削除
これはいいサードインパクトですね
29.80はむすた削除
最後にお前を盗んでいく魔理沙テラカッコイイ。
46.100名前が無い程度の能力削除
>「それとまじかる☆リトりんグッズも用意しております」
買いました!次にも期待しています!(違

新作まってましたっwあいかわらず素晴らしい春。
次にも期待してます!
47.100名前が無い程度の能力削除
春ですよー!ほわほわと純粋100%な春ですよー!!
76.100名前が無い程度の能力削除
映姫様はシキリーでいいと思った!
82.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい。全体的に
83.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい