Coolier - 新生・東方創想話

幻想一弾幕遊戯(3)

2006/04/26 08:42:42
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文々。新聞


第三試合、夢の魔法少女対決が実現した。
自称普通の魔法使いの霧雨 魔理沙(人間)と組むのは、
自称七色の魔法使いのアリス・マーガトロイド(魔法使い)
対して、紅魔館より参戦したパチュリー・ノーレッジ(魔女)と組むのは、
紅魔館当主の妹、フランドール・スカーレット(吸血鬼)である。
四人が四人とも魔法を得意とするので、派手な弾幕勝負が期待された。
しかし、試合開始直前パチュリーの提案により、急遽試合内容は変更。
勝った者が二回戦で魔理沙とペアを組めると言う変則試合となった。

この勝負を制したのは、フランドール。
なんと、アリスとパチュリーが争っているうちに魔理沙とペアを組んでいたのである。
このことに対して二人は、私の取材に対してこう語ってくれた。

「妹様も魔理沙と仲が良いのを忘れていたわ。
 それより、あの七色の魔法使い……なかなかやるわね。
 今度二人でゆっくりと話し合いをしてみたいものだわ。
 主に、魔理沙の事について」
                          (パチュリー)

「皆、いつだってそう。私の事はほったらかしなのよ。
 魔理沙のこと信じてたのに気付いたらあの吸血鬼と組んでいるなんて…!
 いえ、いいのよ。過ぎた事だもの。魔理沙を無視してあんな提案を呑んだ私も悪いの。
 だから魔理沙、今度は私のスペルカードぱくってくれないかしら。
 え?だって嬉しいじゃない。同じスペルを一緒に発動できるなんて」
                          (アリス)

尚、魔法組は二回戦よりチーム名を紅夢組に変えて試合に臨む模様。



『波乱必至!?月の頭脳敗れる』



第四試合、優勝が期待された月人組がまさかの一回戦敗退となった。
打ち破ったのは藤原 妹紅(人間)と上白沢 慧音(ワーハクタク)のお二人。
試合開始直後の妹紅の一撃が勝敗を分けたとも言われている。
これに対し、

「そんなことより、新薬を早急に完成させないと。
 姫様がこのままではダメになってしまうのよ。あれは絶対病気の一種だわ。どうみても。
 でも、もしかしたら私の頭脳を持ってしても特効薬を作ることは出来ないかもしれない。
 本当に困ったものよ。せめて、姫様が何処で何を拾い食いしたのか分かれば…」

と、永琳氏(人間)は慌しく語った。
当の輝夜氏(人間)はというと、

「妹紅ってあれだけの火を纏ってるのにどうして服が燃えないのかしら。
 ……!そうか、分かったわ!妹紅の服は実は燃えてなくなってるのよ!
 でも、一緒に居るあの慧音がその事実を隠してるに違いないわ!
 そうよ、そうでなきゃ私がこんなに熱い思いして」

と、支離滅裂なことを語った。
矢張り永琳氏の言うように何かの病気に感染してるのではなかろうか。
これから季節の変わり目と言う事もあって、皆様も風邪には十分注意を。

以降の試合の結果については明後日発行予定の文々。新聞をご覧頂きたい。
                           (射命丸 文)














「え、何?二回戦って明日なの?」

素っ頓狂な声を上げて霊夢が文と紫に聞いた。

「そうです。一回戦の疲労、霊力魔力の回復、二回戦の作戦。
 試合の公平を期す為に二回戦は明日行うのですよ」
「そんな疲弊する程の試合あったっけ……?
 あ、って事は何?決勝戦に至っては明後日なわけ?」
「決勝戦は明々後日よ」
「え、だって明日は実質準決勝でしょ?何?明後日は何もしないの?」
「いえ、明後日は準決勝です」

頭の中が春色小径。
どんどん話がこんがらがって行く。
もっと、大きな道が欲しいよ。

「えーと、つまり何?今残ってる四組から明日二組を決めるわけよね?」
「はい」
「で、明日はその二組から一組を決める、と」
「はい」
「じゃぁ決勝戦はその一組と誰が戦うのよ?」
「当日のお楽しみです」

諦めたように溜息を吐いた。

「まぁいいわ。でも、正直この勝負をそこまで長引かせる理由が分からないんだけど」
「分かってませんねぇ。長引かせればそれだけネタのストックも出来るというものです。
 それに、これが終わればほとんど妖怪達はまた普段の様に退屈な日々を持て余すようになる。
 そう、今の幻想郷に足りないのは『えんたーてゐめんと』なんですよ!」
「エンターテイメントね」








─願わくば 今日の御飯は 鳥が良い。
                         幽々子







夜の紅魔館。灯火が消えることは無い。
何しろ、当主は吸血鬼なのである。
まさに、紅い不夜城。

「こんばんは、美鈴さん」
「あれ?こんな時間に新聞ですか?」
「はい。今日の試合の分をお届けに」
「へぇ、早いですねぇ」

それだけ交わすと、美鈴にも一部渡して紅魔館の方へと飛んでいく。
勿論、試合に参加したレミリア、フラン、パチュリー、咲夜に新聞を渡す為に。



「こんばんはー」
「あら、どうしたのかしら。こんな時間に」

館に入るとすぐに咲夜が出迎えた。
二言三言交わすと新聞を一部手渡す。

「それで、新聞を配りながら選手の様子も見ておこうと思いまして」
「なるほどねぇ、随分と献身的だわ。でも、フラン様は今居ないわよ?」
「あれ?留守なんですか?」
「えぇ。館に居るとお嬢様に狙われかねないって言って黒白の所に行きましたが」

危険な芽は早めに摘んでおこうというレミリアの策略。
っていうか、妹を試合前に潰すってどういうことだ。

「それで、レミリアさんは?」
「もう寝ましたわ。
 本来ならこれからが活動時間なのだけれど、万全の体調で挑みたいそうで」
「でも、悪魔の類って一日二日寝なくても平気って聞きましたけど」
「気持ちの問題でしょう。多分」

はぁ、とよく分からない返事をする文。
その後また二言三言交わして紅魔館を後にした。








─誰か助けてぇ~!
             ろーれらい。







夜の霧雨邸。
森深くにひっそりと建っているだけあって、少し不気味だ。

「こんばんはー」

扉を叩く。
暫くして、魔理沙が出てきた。

「なんだ、天狗か。どうしたんだこんな時間に」
「新聞を配りつつ選手の様子を見ておこうと思いまして」
「へぇ、ご苦労様だぜ。でも私なら心配はないぜ」
「フランドールさんがこちらにいると聞きましたが」
「あぁ、フランか?一通り明日の打ち合わせしたあと寝たぜ。
 私も今から寝るところだ」

言われてみると確かに寝巻き姿である。

「分かりました。では、明日は頑張ってくださいー」
「おう、必ず優勝するぜ」

それだけ交わすと、新聞を一部手渡して次の場所へ向かった。








─幽雅に食せ、白米と夜雀








月の光に照らされて竹林は妖精やらの群れでざわめく。
人が眠る時間になると魑魅魍魎の類が跋扈する時間だ。

「えぇと、確かこの辺り……あぁ、ありました」

竹林の奥。こぢんまりとした一軒家。
妹紅の家である。

「あれ、こんな時間に天狗か?」

庭に居た。

「新聞を配りながら」
「選手の様子見?」
「よく分かりましたね」
「何となくよ。それで無ければ、取材」

ある意味両方当たっている。

「慧音さんは居るんですか?」
「慧音?ちょうど今帰ったよ。
 私は見送りに外に出てただけ」
「あら、入れ違いでしたか。
 明日は頑張ってくださいね。私はこれから白玉楼の方へ行って来ます」
「はいはい、適度に頑張るよ」

新聞を渡してさっさと竹林から去っていく。








─ちょ、幽々子様!
 それはわらび餅じゃなくて私のはんしいたたたた!
                                 妖夢







白玉楼。生者が何事も無く入ってくる辺り本当に境界が無くなってる。
皆忘れているのではなかろうか、此処は冥界だ。

「こんばんはー、ってあれ?どうかしたのですか?」
「え、いえ。ちょっとお腹を空かせた野犬みたいなものに噛み付かれまして」

半身がぐったりしている。
言われてみれば確かに噛み傷みたいな痕が。

「そ、それより、こんな時間にどうしたのですか?」
「いえ、新聞を配りながら選手の様子見を~」
「それはそれは。御苦労様です。
 あ、良ければお茶でも飲んでいきます?」
「いえ、折角ですけど私にはまだやることがあるので」

というより、本当はお茶を飲みたい。
飲んで行きたいのだが、幽々子が怖い。
もしかして食べられやしないか。烏が。

「では、明日の試合頑張ってください」

新聞を一部手渡して、白玉楼を後にする。








─それから数時間。








「さぁ、二日目となりました幻想一弾幕遊戯!
 この中で誰が勝利の栄光を手にするのかっ!」
「どうでも良いけど私別に選手じゃないんだから来なくても良かったのね。
 あぁ……でも賞品にされた以上誰が勝つのかは見届けたいわ。
 出来れば、交渉出来る相手が良いけど」

世の中そんなに上手く出来ていない。

「それで、まず最初に残念なお知らせが」
「何よ?何かあったの?」
「映姫さんが来れないようです。何でも裁判で忙しいとか」

働き者の小町にも困ったものである。

「まぁ、心配しなくてもこれが終わったらあの部下の境界も弄りなおすけどね」
「紫、あんたも中々良い根性してるじゃない。今更だけど」

本当に今更だ。

「で?あの閻魔に変わる審判って誰なのよ」
「選手宣誓したミスティアさんに頼もうと思ったのですが、何処にも居なかったので美鈴さんに頼みました。
 公平を期すために出来れば参加選手とはあまり繋がりの無いの人物を選びたかったのですが」
「幽香は?」
「却下されました」
「そう。プリズムリバーの三人は?」
「今日はライブがあるそうで」
「霖之介さん」
「新しい品物を手に入れたとかで今使い方を調べてました」
「何だかんだ言って結構暇じゃない人多いじゃない」
「多いですね」

暇人というのは重要な時に限って忙しいものである。
それが、世の中の真理である。

「チルノは?」
「彼女に審判が出来ると思いますか?」
「無理ね」

⑨だからか。
⑨だからなのか。

「では早速。二回戦第一試合の対戦カード、これも何かの巡り合わせか!
 かたや紅魔のお嬢様と従者!かたや冥界のお嬢様と従者!紅魔組対冥界組!」
「結局私にはもう何も言わせてくれないのね。
 まぁ、別に言いたいわけじゃないけど。面倒だし」

紫よりはマシである。
なんてったってスキマからぶら下がる様に寝てるのだから。

いや、今此処で。さっきまで起きてなかったか。








─八雲印の快眠スキ枕絶賛発売中。おもとめは








「えー、では不肖ながらこの紅魔館の鉄壁の門番『紅 美鈴』が審判をやらせていただきます」
「そんなことより早くしなさい中国」
「あんまりです咲夜さん!」

確かにあんまりである。

「うぅ……じゃぁ、二回戦第一試合、紅魔組vs冥界組始め!」

戦いの火蓋が切って落とされる。

「折角の機会だもの。どちらが強い従者かはっきりさせましょう」
「悪いが咲夜、あなたに負けるつもりは無い!」

刀を抜く妖夢。
それを見てナイフを取り出す。

と、ナイフが消えた。

「…投げた!?」
「いったぁっ!!?」

美鈴が叫んだ。
思いっきりナイフが刺さっている。

「あら、ごめんなさい。いつもの癖で間違えたわ」
「ヒドイです咲夜さん!」

確かにひどい。

「こういう事態が起こり得るから無関係の人物を審判にしたかったのですけど。
 咲夜さんがナイフ無駄に使用しましたし」
「あんたの場合それを素で言ってそうなところが怖いわ」

怖いというよりひどい。

「腹ペコ亡霊が私の前に立ちはだかろうとはね。随分愚かなものだわ」
「従者にまかせっきりの小山の大将に何言われても気にならないわよ」
「まかせっきりなのはあなたも一緒じゃない。いくら立派な庭もっててもねぇ…」
「あなたと私じゃカリスマ度が違うのよ。あなたのカリスマは既に地に落ちた」
「落ちたのはあなたでしょ」
「わたしは違うわ」

一体何の言い合いなのか。

「行け、サーヴァントフライヤー!」
「飛べ、死蝶霊!」

紅い悪魔の蝙蝠と亡霊の死蝶のぶつかり合い。
派手というより、優雅である。
見るものを魅了する何かがあるのは確かだ。

「獄界剣・二百由旬の一閃!!」

風の如くスピードで間合いを詰め、斬撃を繰り出す。
一瞬の出来事を、咲夜はナイフを交差させて受け止めた。

「やるな…!だが、刀とナイフでは勝負が見えているぞ!」
「分かっているわよ。ただの目眩ましになれば十分だわ」

呟くと、力を抜いて弾き飛ばされた。
そこでようやく、咲夜本人が囮である事に気付く。

無数のナイフが背後に浮かんでいた。

「……ッ!?」
「幻符・殺人ドール!」

合図とともにナイフが一斉に妖夢目掛けて動き出した。
気付けなかったのもあるが、何より至近距離でこれだけのナイフを捌けるのか。

「幽明求聞持聡明の法!」

導き出した答えは、半身とともに捌く。
多少の傷は覚悟の上である。

一方幽々子とレミリア。

「ギャストリドリーム!」

無数の死蝶がレミリア目掛けて取り囲むように羽ばたく。
然して気にした様子も無く

「本当に蟲遊びが好きなようね」

挑発した。

「そんなに羨ましいならあなたにも差し上げるわ」

幽々子のそれを合図に、旋回していた蝶の群れが一気に接近した。
それを見て…いや、見ることも無く、スペルカードを放つ。

「不夜城レッド!!」

迫る死蝶の群れを焼き払う。
紅い炎は、そのままレミリアの弾となり、幽々子に放たれる。
すぐさま巨大な扇を展開して振るい、生じた風で捻じ伏せた。

「西行寺、あなたと私の決定的な違いを教えてあげるわ」

直後、レミリアが姿を消した。
正確には高速で移動しているのだが。

「くっ……!」
「こっちよ」

左側に現れ、低くした姿勢から急激に突き上げる。
辛うじて避けるが、狙い済まされたかのように紅弾が放たれている。

「!!」

避けきれずに被弾して、その軽い体は吹き飛ばされた。
亡霊とはいえ、元は多少特異ではあるが人間。

「そう、悪いけどあなたと私じゃ身体的な能力が全く違うのよ」

根本的な身体能力では吸血鬼であるレミリアが圧倒する。
純粋な弾幕勝負なら分からないが、そこに動きを混ぜられると幽々子が押し負ける。

恐らくは、それがこの勝負の勝敗の鍵だったのだろう。





「やっぱりお嬢様の勝ちね」

器用に妖夢と半身の刀をナイフで止めている咲夜が呟いた。

「ならば、私がその分頑張れば良いだけ!」

自分に渇を入れる様に叫び、二人分の刀を振るう。
ただ、咲夜もその差を感じさせないように淡々と太刀筋を捌く。

「次はそう簡単に防げるとは思わないことね」
「どういう意味ですか」
「直ぐに分かるわよ」

それだけ言うと、咲夜の姿が消えた。
今の今まで斬り合っていたのに、だ。
すぐに理解する。これは時を止めて移動したのだと。

「デフレーションワールド」

先とは比べ物にならない大量のナイフ。
何とかしなくては、間違いなくやられる。
どうやって?決まってる。

「未来─!」
「これで終わりよ!」
「永劫斬!!」

迫る無数のナイフの中を駆け抜ける。
頬を掠めたり、腕を掠めたり、血が流れ出る。
それでも、突進は止まらない。

「苦し紛れね!」

ナイフの道を駆け抜けて出てきた妖夢。
が、それも予想していたのだろう。
咲夜の手には既に数本のナイフが。

「チェックメイトよ!」

動けない程度の傷を負わせるつもりで投げた。
勿論、真正面からではない。
屈折した、隙をつく軌道で。

狙い通りにそれは突き刺さった筈だった。
だが、手応えが無い。

「……!半身!?」

着弾する瞬間、ナイフの道を駆け抜けてきた妖夢の姿がぼやける。
つまり、それは半身。妖夢本体ではない。

そして、その隙をつく様に半身が作った道を妖夢が駆け抜けた。

「あああぁぁぁぁ!!」
「──しまっ」








─それから。








いくら半身とは言え傷付けば妖夢自身にも影響する。
力任せに咲夜を場外へと持っていったが、結局気を失ってそのまま自分も場外。
簡単に言えば痛みわけである。
ただ、咲夜ならば時を止めて抜け出すことも出来ただろう。

救護室で目が覚めた妖夢は、華を持たせてくれたと思うことにした。
もしかしたらもう力尽きるのを知っていてあえて避けなかったのかもしれないが。

それより幽々子が心配だったが、目が覚めたら既に食事しながらのんびりしてたので安堵した。








─みょん。








「二回戦第二試合!大番狂わせの魔法少女コンビ!
 霧雨 魔理沙とフランドール・スカーレット!」
「私も魔法少女なのか」
「続いて、一回戦にて優勝候補の月人組を打ち破った蓬莱組!
 藤原 妹紅と上白沢 慧音!」

既にリングには四人の姿がある。
やる気は十分のようだ。

「よっし、フラン。これ勝てばレミリアと咲夜だけだ」
「お姉様と咲夜かぁ。でも、魔理沙と一緒だから大丈夫だよね!」

複数名鼻血を噴出したかもしれない。
フランのその眩しい笑顔に。

それより、よく考えたらこれを勝てば決勝ではなく準決勝だと知ってるのは司会軍だけなのか。

「では、二回戦第二試合、紅夢組vs蓬莱組始め!」

何か手当てされた後のある美鈴が試合開始を合図する。
開始合図と同時に、フランは一枚のスペルカードを取り出した。
速攻を決めるつもりなのか、それとも。

「来るぞ、妹紅!」
「分かってるよ、慧音。大丈夫」

警戒の態勢になる妹紅と慧音。

「禁忌・フォーオブアカインド!」

スペルの発動。
同時に、フランの姿が増える。

「なっ、そんなのありか!」

勿論、妹紅達にとって交えた事の無いフランのスペルは未知の物ばかり。
多少の対策はしてきたのだろうが、流石にこれは予想していなかったのだろう。

「いくよー!」

四人のフランが散らばり、覆い囲む様に弾幕を展開する。

「妹紅、出来るだけ私から離れるなよ」
「う、うん。分かった」

ぴったりくっついた。
もう少し離れるべきじゃないのか。

「光符・アマテラス!」

全方位にレーザーを展開する。
弾幕を掻き消す為、と言うよりはフランを狙う為、の様にも見える。
実際、四人のフランが撒いた弾幕はレーザーに貫かれてはいるが数が減っているわけではない。

が、やはりフランも吸血鬼。
そう簡単に当たるはずも無い。

「あはは、そんなのじゃ私は倒せないよ!」

レーザーを縫うように、四人のフランの弾が止む事は無い。
恐らく、このままでは時間の問題だ。

「妹紅!」
「分かった!」

予め二人で決めていたのかもしれない。
慧音の合図を機に、妹紅がスペルカードを取り出した。

「蓬莱・凱風快晴、フジヤマヴォルケイノ!」

体を捻り、砲丸投げの要領でフラン目掛けて炎の塊を放つ。
普段のフランならば、易々と避けれたかもしれない。
が、今は慧音のレーザーにより動きが制限されている。

「あっ」

まず一人。

「妹紅、これならいけるぞ」
「あぁ、もう一発!」

再び、妹紅が炎の塊を放とうとした。

ただ、二人は失念していたわけではない。
フランに気を裂きすぎた。
本当にただ、それだけのこと。

「誰か忘れてはいないか?」

上空。箒にまたがった魔理沙。
まるで、充電完了と言わんばかりに八卦炉をリングに向けている。

「フラン、よくやってくれた。もう十分だぜ」
「えへへ、これで作戦通りだね!」

フォーオブアカインドを解いて全力で離脱する。
そこで、慧音と妹紅も魔理沙が意図する攻撃に気付いた。

「今更気付いても遅いぜ!
 魔砲・ファイナルマスタースパアァァク!!」

八卦炉から、最大出力のレーザーが放たれた。
恐らくはリングを覆い尽すほどの。

「──慧音!」

一瞬、慧音よりも早く気付いた妹紅。
動ける力の全てを使い、慧音を突き飛ばした。

「も」

その時の慧音には全てがスローモーションで見えていたのかもしれない。
突き飛ばされてリングから離れる自分の体。
空から降ってくる最大出力のレーザー。
自分を突き飛ばした、妹紅の姿。

「妹紅ーーー!!」








─フェニックス再誕。








結果、リングは吹き飛び、慧音は場外。
少しの間泣きじゃくっていたが妹紅が死なない事を思い出して赤面した。
暫くして砂埃と瓦礫の山の中から妹紅が這い出てきた。
その後はもう、慧音は妹紅に感謝しっ放しだったとか。

リングは跡形も無くなってしまったが、恐らく明日には元通りだろう。
それが、スポンサー八雲 紫の凄いところである。
美鈴も明日には元気になっているだろう。
これくらい、きっと彼女は慣れっこだ。
全身、包帯だらけでも。
ちょっと真面目に弾幕遊戯?
少し、ネタ的要素が少なかった気もします。
咲夜さんが居る場合ギャグに持って行きにくいです…。
もっと、もっと精進しなくては。

何はともあれ読んでくれている方には感謝です。



よく見たら(3)をつけるのを忘れてました(汗
コーエン
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