Coolier - 新生・東方創想話

永遠亭の日常

2006/04/14 09:50:34
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 その日も永遠亭は平穏につつまれていた・・・・・・・・・・・・と思う。















 空はまだ青さを残し、僅かに赤を現し始めた曙。
 地には青い竹林が並び立ち、葉の上に僅かに朝露がある。
 その竹林の中に突如として旅館を思わせる館が姿を見せた。
 永遠亭だ。
 まだ周囲の色に同調するかのようにただひっそりと静かに存在していた。
 その中にある一室。
 随分と正面玄関から近い位置に存在するその部屋には手製と思われる木彫りの札が掛けられていた。
 『ウドンゲの部屋』と掲げられたその部屋の主は周囲と同じくただ静かに布団の中に包まっていた。
 部屋の中は思いのほか質素で目立つところといえば壁側に立てられているぎっしりと詰まった本棚が目に映る。
 どれもこれも分厚く、薬学や医学に関するものばかりであった。
 その隣にある申し訳程度に置かれている机の上にも読みかけであろう栞が幾つか挟まった本があった。これも薬学の本だ。
「ん・・・・」
 と、机の横に敷かれている中央が盛り上がった布団の中から音、声がした。
 枕の上には二つの白い毛で覆われた長いそれとともに同じぐらいの長さの薄紫色の髪が出ていた。
「ん・・・・むぅ」
 くぐもった声で布団の隙間から白い手が伸びて布団の端を掴み前面封鎖を行った。
 封鎖を行ったことで安息を得たのか布団のふくらみが幾分か小さくなり、中から寝息が静かに聞こえ始めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・む?」
 だが、何か重要なことに気がついたような声が中から聞こえのっそりと封鎖を解除して張って薄紫色の長髪と頭から生えている耳の主、鈴仙がワイシャツのみという格好のまま出てきた。
「・・・・さむ」
 ボソリと素直な感想を言うが鈴仙は布団の横に丁寧に畳まれたブレザーとスカートを見てまだ眠そうな顔をしながらも着衣し始めた。
 と、スカートを穿いている途中で鈴仙は奇妙なものに気がついた。
「?」
 くるりと後ろを振り返ると先ほどまで寝ていた布団がある。
 捲れた前面はまだ起きるときではない、と誘っているかのようにもみえ僅かに心が傾くがそれ以上に奇妙な発見をした。
 本来なら布団の中身であった鈴仙が居なくなったことで随分とふくらみが無いはずなのだが
「・・・・・・うわ」
 スカートをさっさと穿いて鈴仙は引いた。
 ふくらみがまだ随分と盛り上がっており、大きさにして人一人分ぐらいあった。
「・・・・いやな予感がする」
 うわぁ、やだなぁ。と言いながらも恐る恐る布団の近付き、こっそりと覗き見るようにして薄暗い布団の中を覗く。
 するとそこには
「おはようウドンゲ」
 何故か黒のきわどいネグリジェ姿の彼女の師匠である八意永琳が爽やかな笑みで迎えた。
「いい朝ね。今日は良い天気のようね」
 そして布団に包まりながら立ち上がり雑談を始めた永琳。
 鈴仙は未だ硬直状態にあり、動けないでいる。
 と、弟子の状態に気付かぬまま永琳は机の上に置いてある本を発見する。
「おや?これは昨日課題として出した本ね。ふむ、随分と入念に勉強しているのね。だけど徹夜は厳禁よ。折角の綺麗な肌が損なわれてしまうわ」
 いい?と師匠が振り向き、弟子に有り難い言葉をかける。
 其処で鈴仙が硬直から解き放たれた。
「うわーーーーーーーーーーーーー!師匠何やってるんですかーーーーーーーーーーーー!」
 驚愕を声と表情で表現する鈴仙に対し永琳は不思議そうな表情で答えた。
「何って・・・・・私は布団に包まっているだけよ?」
 何を言っているの?と言いながらも鈴仙の言いたいことに気付いていない永琳。
「違いますって!師匠は何時から布団の中に入っていたんですかっ!?というか不法侵入ー!」
「おやおや、酷いことを言うわね。良い?師匠である私が弟子を心配して様子を見に来て何か都合の悪い事でもあるのかしら?」
「ぅ・・・・べ、別にありませんけど・・・・・ですがそれとこれとは違います」
「どう違うのかしら?」
「様子を見に来てくれるのは正直な話有り難いです。ですがわざわざ布団の中に入らなくても良いじゃないですか。更に言えばかなりきわどいネグリジェ姿で」
 弟子にそう指摘され包まっている布団の中身を覗き見る永琳。
「これは私が寝るときのパジャマと呼ばれる寝巻きに分類されているものよ?何か問題でもあるのかしら?」
 至極全うな表情な真顔で堂々と言い放つ永琳。
「それがパジャマなんですか・・・・・」
 その言い分に呆れ果てる鈴仙。と、ここに来て永琳が始めて問いかけを行った。
「そう言えばなんだけどウドンゲ。貴女は寝るときはワイシャツだけなのかしら?」
「み、見たんですか!?」
 赤面し両手で体を隠すような動作をし、永琳と距離を取る鈴仙。
「当然見たわ。隅か隅までばっちりと」
 うわぁと更に赤面の比率が上昇し永琳に背を向けてしゃがむこむ鈴仙。
「それでどうなの?」
 妙に冷静に問いかけてくる永琳の言葉に幾分か落ち着けなくなる鈴仙だが律儀に答える。
「え、えっとですね。一応、パジャマとかあるんですが、昨日は遅くまで課題をやっていたんで面倒くさくなってその・・・」
「ほぅ。だけど押入れの中にあるパジャマは一切手付かずのようにも見えたけど?」
「そんなとこまで見たんですか師匠は!?」
「弟子の健康管理として生活を覗き見るというのは大切なことよ」
 私にはプライベートは無いんですか?と言いたくなったが余計なことになりそうなので止めた。
「だけどウドンゲ。ワイシャツだけというのは頂けないわ。そのままじゃあ体を冷やすわよ」
「うっ・・・で、ですが布団を被って寝ていれば・・・・」
「確かにそうね。だけど冬場でもそうは行かないわ。案外隙間風と言うのは怖いものよ?」
「う~」
「と言うことで素直に今後はパジャマを着なさい。良いわね?」
「・・・・・」
「返事は?」
 はぁ、とため息を付いて鈴仙は言った。
「分かりました」
「よろしい」
 と言い、満足げな表情のまま永琳は鈴仙の部屋を出て行く――――――
「ってちょっと待ったぁーーーーーーーーーー!」
 さり気無く論点をずらされていたことに鈴仙が気がつくとすでに永琳は部屋の外に出ておりほぼ全力疾走で自分の部屋に直行していた。
「ははははははは!まだまだ甘いわねウドンゲ!」
 高らかに笑いながら永琳は追跡してくる弟子に言い放った。
「待ってください師匠!と、言うか私の布団返せーーーー!」
 鈴仙も幾分か眠気がありながらも全力で永琳の後を追いかける。
 だが布団を羽織っているにも係わらず永琳の速度は僅かも緩まず、恐ろしいことに鈴仙との距離を更に離していく。
「っく!褒めたくないけど流石師匠っ!」
 悔しそうな表情をする鈴仙。それに気がついたらしい永琳はかなり前方から高らかに言い放つ。
「はははは!貴女では私に追いつけないわよウドンゲ。この布団は私が貰うわ!」
「そんなことされたら私寝れません!」
「なら私部屋で寝なさい!大歓迎よ!」
「それが狙いかぁー!」
「ははははははははははははは!」
 端から見ると布団を羽織った永琳を全力で追跡する鈴仙の構図は奇妙なものだが当人同士はかなり真面目なためそれに気がつかない。
「ふむ。これ位離すと流石のウドンゲも諦め」
 チュン。
「おや?」
 永琳の頬を何かが掠めた。何事かと思い後ろを振り向くと
「最後の手段ーーーーーーーーー!」
 そう良いながら指を拳銃の形を作り、人差し指と中指の銃口を永琳に向けていた。
「ま、待ちなさいウドンゲ!今の私の状態じゃあ打ち返せないわ!」
「問答無用ーーーーーー!」
 これはいかん。折角のウドンゲの匂いが染み付いた布団が台無しになってしまう。
 そう思いながら永琳は必死にどうにかして反撃にではなけれはならないと思ったのだが片手で反撃を行おうとすれば今のウドンゲの状態では接戦になりかねず、下手をすれば布団に傷がついてしまうかもしれない。だからと言って布団を破棄してしまえば折角の思いで確保したウドンゲの布団とこの匂いは何者にも変えがたい。
 万事休すかっ!
 そう思ったときだ。
「お?」
「あ」
 いきなり足がもつれ停止してしまった永琳に後方から全力疾走で追跡してきた鈴仙が激突し、そのまま廊下を転がった。
「痛・・・・」
 派手な転倒の割には随分と無事だった鈴仙がぶつけたであろう頭や腰を摩りながら起き上がる。と
「無事?ウドンゲ」
「師匠・・・・?」
 下から声がかかり、下を向くと永琳が廊下の上に仰向けに寝ており鈴仙とじっと見ていた。
「一見しただけだと無事のようね。痛いところは無いかしら?」
「え?ええ、取り敢えずは・・・・・」
「そう、良かったわ。だけど念のために後で私の部屋に来なさい。見てあげるから」
「はい・・・・分かりました」
 随分と優しい永琳の声色で鈴仙は段々と意識がハッキリしてきて、状況をようやく確認できた。
「師匠が・・・・庇ってくれたんですか?」
「弟子を痛めつけるわけには行かないらね」
 真顔で返してくる永琳に小さなの不安を覚えた鈴仙は尋ねた。
「師匠は・・・・大丈夫ですか?」
「私は伊達に不死身ではないわ。更に言えばこの程度は苦痛の内にも入らないわよ」
「で、でも・・・・」
「ウドンゲ。私は大丈夫と言ったわ。私の言葉は信じられないかしら?」
「あ」
 そっと、鈴仙の頬に永琳の手が添えられ永琳は鈴仙に向かって微笑みかける。
 少し戸惑った鈴仙が頬に当てられた永琳の手を取り言った。
「・・・・師匠の言うこと、信じます」
「良い子ね」
 弟子からの返答に満足したのか永琳は頬に当てた手をそのまま鈴仙の頭の上に置きそのまま撫でる。
「や、師匠、くすぐったいです・・・・・」
「ふふふ、とても可愛いわよウドンゲ」
 永琳がそういうと赤面し俯く鈴仙。だが、抵抗はせず、そのまま身を委ねている。と、そんな時。
「もう、うるさいな~少しは静かに出来ないの?」
 と横の戸が開き×マークの口の形が特徴的な厳つい顔のキャラクターがプリントされたパジャマを着て出てきた因幡てゐが現れた。
「え?」
 突然のてゐの登場に驚く鈴仙。とここに来て自分の格好に気が付く。
 鈴仙は今現在、何時もの服装のままで黒のきわどいネグリジェ姿の永琳の上に跨っており、更に言えば何時の間にか鈴仙の背中には永琳が持っていたはずの布団が掛けられていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・あらあらまぁまぁ!」
 端から見ると鈴仙が永琳を押し倒しているようにしか見えない状況を理解したてゐが満面の笑みで口元に手を当てて戸を閉じた。
「うわああああああああああああああああああああ!」
 慌てててゐの後を追おうとするが不自然な状態だったために一歩目から転倒し永琳の隣に落ちる。
 その間にもてゐがキッチリとパジャマから普段着である白のワンピース姿に着替えてまだ眠りについている永遠亭を叫びながら駆けていた。
「師匠と弟子がこんなことをっ・・・・・・・・・・・・!」
 そしてすでにてゐの姿は視覚外にあり、ただ永遠亭の中を叫びながら走り回っていることしか分からない。
 一瞬の沈黙。
 鈴仙と永琳が一度顔を見合わせ、永琳が頷く。
「これで公認ね、ウドンゲぐおっ!」
「こんな公認いやですよっ!」
 鈴仙が永琳に肘をぶち込み、黙らせた。
















 永遠亭は今日も平和・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・らしい。













 教訓
 麗しい師弟愛・・・・・・・・なの?ってけーねも思ったらしい。

 まずは先に謝罪から。
 前々作である『置き換え』に置いて読者の皆様方の気分を害するような物として作ってしまい大変申し訳ございませんでした。
 以前も同様のことを起こしたにも関わらず調子に乗り掲載してしまったことを深くお詫び申し上げます。
 余談としてですが自分で評価点数を入れておりませんので100点を入れたのは私ではありません。
 其処までやるほど考えは向きません。自作自演ではありません。








 さて、後書きと行きたい所なのですがただ一言だけ。
 師匠は佐山で、ウドンゲは新庄っていうのは絶対に譲れない。
煌庫
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コメント



0.1370簡易評価
6.70名前が無い程度の能力削除
普通に面白かった
GJ!
9.60名前が無い程度の能力削除
……見直しました。
残るは文章上の作法。
それが整ってないと正統な評価を受けれず作品が泣きますよ。
今後に躍進に益々期待します。
21.80名前を喰われた人削除
うむ、良いウドンゲと師匠ですな。

てか、師匠の際どいネグリジェ姿……普通に見てぇな~…
はっ∑( ̄口 ̄;)、しっ師匠、何時の間ni(天文密葬法