「本当に次回タイトルが反撃の狼煙だと思っていた人は人生の負け犬ウサー」
「ご主人様ー、いきなり何を言ってるんです春かー?」
「それとオリジナルキャラクターが大活躍するウサよー」
「ご、ご主人様ー?」
~三月下旬
春がもう知らせる必要も無いほどそこかしこに見え始めた時期
因幡ファームの大牧場に、和気藹々と群れるリリー達と二匹の兎の姿があった
「はーい、それじゃ重りを持つウサー!」
『春ー!』
集まったりリーたちの足元には、メロンほどの大きさの重りが有った
てゐの号令で、リリー達が足元に聳える重りを一斉に掴んで持ち上げる
しかしそこは非力なリリー、重さに耐え切れずによろけたりする物もいた
「それじゃ号令をかけるウサー!」
「いくよー! ピーーー!!」
鈴仙の笛の音で一斉にリリー達が羽ばたき始める
重りを持って飛び続ける事で空中での移動力を鍛える基本的な訓練だ、だが・・・
「春ぅぅぅ~・・・!」
「春っ・・・!」
「重い春~・・・!」
産まれてまもないリリー達ではそう簡単には飛ぶ事など出来ない
背中の羽だけではなく、全身で浮力を作り上げてバランスを取る
そうしてようやくこの重りを持ち上げる事が出来るのだ
「んー、結構重いね・・・よっと!」
勿論、妹紅は人間の時から飛び慣れているのでこんなのは朝飯前だ
「すごいすごい! もう飛ぶなんて!」
「わー春ー!」
「すごい春ー!」
その光景に鈴仙だけではなく周りのリリー達からも感嘆の声があがった
「こんなの楽勝だって・・・それっ!」
「春っ!?」
「春ー!」
重りを持ったまま空中でくるくると回ったりとんぼ捻りをしたり
もこりーがその一動作一動作を行うたびにリリー達から歓声が上がる
そしてもこりーに感化されてか、段々と飛び始めるリリー達が現れはじめた
「わー! 今日が今年初めての訓練なのにもう十匹も飛び上がったよ・・・あ、もう一匹」
「去年は四月に入っても中々飛べなかったのに、これは思いがけない効果ウサね」
二人が見上げる真っ青な空にリリー達が一匹、また一匹と飛び上がる
赤い羽根を煌かせる妹紅に誘われる様に
「ほら、上じゃなくて斜め後ろに引っ張りあげるように飛ぶの」
「はい春ぅ~!」
妹紅も他のリリー達にアドバイスをし、飛びあがったリリー達がまた他のリリー達へとアドバイスをしてゆく
すると一刻もたたぬうちに全てのリリーが空へ舞い上がり、白い模様が空に映えた
「綺麗だね・・・」
「そうウサね・・・」
青いキャンバスに撒かれた白い絵の具
その中心で一つの赤がまるで太陽のように燦々と輝いていた
「ふふふ・・・これは中々いいネタが見つかりましたね」
その時、遠い竹林の影に、その様子をこっそりと覗く不気味な者の姿があった
「さー、お昼ごはんだよー!」
訓練も一通り終えて休憩している所に、鈴仙や他の兎達がバケツを手にリリー達の元へと駆け寄る
そのバケツの中には沢山の・・・
「・・・・・・リリーのご飯もニンジンなんだ」
「う、うん、自分達で作れるし、買っても安いから・・・」
「たしか慧音の所じゃ、いつもはブドウとかリンゴだったっけ」
「リ、リンゴにブドウ!?」
「わっ!? ど・・・どうしたの?」
「リンゴ・・・一口かじれば口中に広がるさわやかな甘み・・・!」
「・・・れ、鈴仙?」
「それどころか高級食材のブドウまで! うう・・・私がもっとしっかりしてれば皆にリンゴぐらいは・・・ふぇぇぇん」
「泣かないで鈴仙! もこりーがきっと私達を救ってくれるウサ! それまでの辛抱ウサ!」
「ごめんねごめんね・・・皆だってもっと良い物食べたいよねぇ・・・ぐすっ」
「泣かないで春ー! 私達皆ニンジンが大好き春よ!」
「そう春ー!」
「ニンジンおかわり春ー!」
「うう・・・皆ー!!」
「鈴仙様ー!」
抱きしめあい慰めあう鈴仙とリリー達、これぞまさしくリリーと兎の心通じた姿であった
「・・・とまあ、これが因幡ファームの現状ウサ」
「大変だね・・・」
~翌日
『因幡ファームに希少なリリーが誕生!?』
昨日正午、幻想郷を駆け回る華麗なる乙女記者こと、射命丸文は因幡ファームにて
なんとも珍しいリリーホワイトを発見、その姿を撮影する事に成功した
警備が厳重だったためはっきりとは写すことは出来なかったが
上記の写真からでもこのリリーの特徴である炎のような羽が確認出来る
さらに訓練の様子を観察していた所――
「しまった! あの馬鹿記者にスッパ抜かれたウサー!!」
ファームの事務室に叫び声が響く
中を覗けば、きぃぃー!という顔をしながらてゐが新聞を机に叩きつけていた
隣では鈴仙もオロオロとした顔で小刻みに動き回っている
「何! スッパはどこだ!?」
「わっ!? 狐は隙間に帰ってください!」
「テ・・・テンコ~・・・」
「まずいウサね・・・あのファームがこれをガセと取ってくれれば・・・」
なにやら大変だ・・・という顔でてゐが悩んでいる時、事務所に一匹の兎が駆け込んできた
「てゐちゃん大変だよっ! あの人がファームにー!」
「あああ! やっぱり来たウサか!」
聞くと同時に事務所を飛び出してファームへと向かうてゐ
その先には、リリーの群れを柵の外から観察している女性がいた
頭に載せたカチューシャ、場に似合わないエプロンドレス、つまりはメイド
「遅いわね、二分も時間を無駄にしたわ」
「こ、こんな早朝から因幡ファームに何の用ウサ?」
「決まっているわ、例のリリーを見せてもらいに来たのよ」
会うや否や睨み合いながら対峙する二人のブリーダー
片や因幡ファームの大黒柱、因幡てゐ、片やメイドファームの長、十六夜咲夜
その二人の威圧感の前に近寄れず、一人遠くから見守る鈴仙
「・・・さて、何の事ウサかねぇ」
「しらばっくれても無駄よ、赤い羽のリリーとやらはどこにいるの?」
「し、知らないウサね、あの新聞記者のガセネタにでも釣られたウサか?」
「GLAの規則では、個人ファーム以外では公開制限をかけてはならないとあるわ、案内しないのならこちらから・・・」
「う・・・わ、わかったウサ、今案内するウサよ、盗まれてはたまらないウサ」
「そんな面倒な事するぐらいなら、あなたを殺して奪ったほうが早いわね」
「うう・・・」
やはり相手があのメイド長ではごまかす事叶わず、諦めて渋々と案内を始めるてゐ
そのまま五分ほど歩いて、到着したのはリリー達の遊び場である
「もこりー! 居るウサかー?」
「あー? 呼んだー?」
竹で作られた遊戯具の中から赤い翼のリリーがにょっこりと出てくる
そのままパタパタと羽ばたいて二人の前へすとんと着地
「これが例のもこりーウサ」
「ん? 悪魔の館のメイド・・・だったっけ?」
「・・・・・・・・・・・・」
二人して咲夜を見上げるが反応が無い、むしろもこりーを見てプルプルと震えだした
「聞いてるウサかー?」
「おーい、どうした?」
バブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー!!!!
「ぎゃあああ!! 鼻血ぃぃぃぃ!?」
「か!か!か!かわゆぃいいいいいい!!」
「うひゃあぁぁぁ!!離せぇぇぇぇぇ!!」
「頂戴! この子頂戴ぃぃ!! 相場の五倍、いや十倍払うからっ!!」
「ちょちょちょっと落ち着くウサー!!」
「離せってばぁぁぁぁ! お前はかわいい幼女なら何でもいいのかぁぁ!!」
「そんなの当たり前よ!! さぁお着替えしましょうお風呂に入りましょうベッドで楽しみましょう!!」
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」
その後もこりーにすべすべ頬擦りぺたり胸さわさわ柔らかお尻揉み揉みする事二十分
「ふぅ、落ち着いたわ」
「ハァハァ・・・・・・なら鼻血を止めてよ・・・」
「無理よ、こんなにかわいい幼女を前にして体温の上昇による出血行動をどうやって抑えればいいの!?」
「まぁまぁ、逆切れはやめて欲しいウサー」
「というわけで本題に入るけど相場の五十倍出すから売って今すぐ売って今すぐプリイイイイイイイズ!!」
「ぎゃあああ離せぇぇ!! 全然落ち着いてなーーい!!」
「あーもう離れるウサッ! いくら積まれてもモコリーは売れないウサよー!!」
「どうしてっ!? 私はっ! こんなにもっ! 彼女を愛しているのよっ!?」
「「お前もう帰れ!!」」
「嫌よ! うんかYESかOKかアイウォンチューってあなたが言ってくれるまで帰らない! 帰るわけにはいかない!」
「・・・そうウサか、なら強硬手段に出るウサよ?」
「ふん、やってみなさい・・・私の愛は何者にも負けない!」
「じゃ、もこりー、ちょっと耳を貸すウサ」
「え?」
ヒソヒソボソボソ・・・ええっ!?・・・ボソボソ・・・そ、そんな事私が・・・ヒソヒソ・・・うう・・・ヒソヒソ・・・
「さあ行くウサ! もこりー!」
「わ、わかった・・・さ、咲夜・・・」
「ハァハァハァハァなぁにぃ? もこりーちゃ~ん(はぁと」
「うう・・・・・・あ、あの・・・」
「咲夜おねーたまは私をいじめりゅの・・・?」
・・・・・・ばぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!!!
「私の血潮が! 体を脈打つ鼓動が! 熱く熱く煮えたぎってオオオバアアヒイイトォォォォォォォ・・・・・・」
○もこりー(藤原妹紅) (11秒 鼻血噴出による場外KO) (十六夜咲夜)変態メイド×
「初勝利おめでとうウサ!」
「あんまり嬉しくない・・・あー恥ずかし」
二人とも身体を鼻血で真っ赤に染めながら、咲夜が飛んでいった空を見上げる
その視線の先からはキラーンと輝く光と共にスパシーボー・・・とかいう声が響いた気がした
「ねえ、あの変態は結局何しに来たの?」
「もこりーを、つまり有力なリリーを買いに来たウサよ、紅魔館はお金があるウサからねー」
「・・・売ってくれなくてありがとう」
「もこりーには因幡ファームの未来がかかってるウサ、売るわけ無いウサよー」
「そうだよねー、アハハハハハ」
「そうウサよー、ウササササー(百倍積まれたらさすがに売ってたウサけど・・・)」
~四月上旬
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
「頑張って、あと二周!」
暖かい日差しに照らされる中、牧場に作られたトラックを鈴仙と共にふよふよと飛び続けるもこりー
これは飛行の持久力を鍛える訓練で、基礎的かつ必要不可欠な物だ
何故ならスタミナ切れ=被弾、つまり敗北を意味するためである
「おかしいな・・・この程度の距離で疲れるような事なんて無かったのに」
「んー、体がリリーになっちゃったんだからしょうがないよ」
「あーもぅ・・・炎もちょっとしか出せないし、不便ったらありゃしない・・・ふぅ・・・」
何だかんだ言いながらも真面目にトラックを回り続ける妹紅
残り一周に差し掛かった所で、二人の先にはてゐと共にトラックを飛び続けるリリーの群れが現れる
「やっぱり凄いウサね、これで三周後れウサよー」
「疲れた春~」
「乗せてって春~」
「うわ、重い、重いって!」
「こらこら! もこりーに捕まらないの」
「もう限界春よ~」
「もうだめ春~」
「もーーーこーーーりーーーー!!」
「はっ! この声は!」
のどかなようで実は結構修羅場的な状況ではあるが
突如響いた黄色の声がリリーらの鼓膜を劈いた
「アイラブユゥゥゥゥゥ!!」
「うわぁっ! また来たっ!」
声の主はやっぱりどこかの紅い館のメイド長であった
半径十里に響きそうなほど大きな声をあげながら妹紅へと突進していく様は色んな意味で恐ろしい
「あなたの為に沢山のリンゴ持ってきたわよぉぉー!!」
「持ってきましたー!」
「さぁたんと召し上がれー!!」
本日飛来したメイド長の後ろには、なんとダンボールを背負ったメイドの姿が
その数二人、合わせて三人、破壊力も三倍だ
「ふ、増えてるー!!」
「さあ!さあ!さあ! 甘い甘いリンゴを食べて頑張るのよぉー!」
『・・・春?』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』『春ー!』「ちょ、ちょっと待」『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』「ああ、幼女に囲ま」『春ー!』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』「ハァハァ・・もっと触っ」『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』『春ー!』
オーケー、私に言えることは唯一つ、たった一つだけの事実だ
メイド達がリンゴを取り出した瞬間、白い群れが彼女らを覆い尽くした、それだけだ
「ふぅ・・・春の幼女に囲まれるのもいいけれど、私の本命はあなただけよ」
「うわっ! いつの間に横に!」
メイド達が白い波に飲み込まれていく光景を、いつの間にか一緒に横で見ていたメイド長
「って、その妙に不自然な胸のふくらみは何?」
「心外ね、あなたの為にリンゴを確保しておいたのよ」
咲夜は頬を赤らめながら胸元からリンゴを取り出し、妹紅へと手渡した
「・・・・・・えいっ」
「ああっ! 私の胸で今日の朝から暖め続けた愛のリンゴが大地の養分に!」
「うう・・・鈴仙、こいつ何とかしてよ・・・」
「ま、まぁ・・・熱烈なファンだと思って我慢我慢」
「熱烈すぎるってば・・・」
一方その頃、紅魔館では
「あれー? 美鈴隊長、今日のリリー達のご飯が無いですよー?」
「えー?」
「美鈴隊長ー! メイドの糞ったれ共がリリー達の餌を私達が盗んだといいがかりを!」
「えええっ!?」
門番ファーム 食料状況DOWN
メイドファーム 食料状況DOWN
因幡ファーム 食料状況UP!!
~四月中旬
「全員集まったウサかー!!」
『春ー!!』
「点呼ー!!」
『スッパー!』『スッパー!』『スッパー!』『テンコー!』『スッパー!』『スッ・・・・・・
牧場に整列したあどけなき少女達が、その口々からあられもない言葉を空に響かせる
列を作り整列するは春の妖精リリーホワイト、彼女らを取り仕切るは因幡てゐ
無論、こっそり紛れて叫んでいる九尾の狐らしき者が叩き出されるのは確かである
「リリー達もわかってると思うウサけど、もうすぐ『春恒例ビッグファームだよ全員弾幕!』が開かれるウサ!
よって今日から集団弾幕訓練を開始するウサー! 気合を入れるウサよー!!」
『春ーーーー!!』
因幡の白兎が身を翻して空中へと飛び上がり、妖精達も雄たけびにも似た声を上げながら続く
やがてその白き流れは様々の形へ姿を変え、陣を作り上げた
「パターン『包み込む春』両翼から逃げ道を封じるように放てウサー!!」
『春ーっ!!』
号令と共にパラララララララララ!という発射音が大空へと木霊する
まだまだ若い故に、個々のリリーからは少量の弾しか放たれないが
それも膨大な数と見事な陣形によって華麗な弾幕となり、空を覆い尽くした
「うは~・・・凄い、あんなにビシッと揃ってる・・・」
「ふふ、てゐ曰く、代々因幡ファームと共に過ごしてきたリリー達は、例え記憶は受け継がれなくても
その身体に経験と知識が染み込んでいるんだって、だから初めての訓練でもあんなに揃うとか」
白い妖精達と赤青の弾幕が空を彩る風景をまるで純粋な子供のように見上げる妹紅と
その隣でふふんといった表情を浮かべ、笑みを浮かべる鈴仙
「ふーん・・・これだけ揃ってれば、普通に大会とか勝てるんじゃない?」
「はううっ!!」
「れ、鈴仙? 鈴仙ー?」
妹紅の冷静な指摘で突如地に伏する鈴仙
「ごめんねごめんねぇ・・・もっと一杯ご飯が食べれたら体力切れなんかしなくて負けないのにね・・・」
「ああ、また鈴仙が落ち込みモードに!!」
「ブリーダーとして体を売ってでも食事代を作るべきなんだよね・・・ふぇぇぇぇん!」
「鈴仙元気出して! そうだ、こんな時はてゐから貰ったあれを・・・」
ピコーン! と豆電球が浮かび、もんぺへと手を突っ込んで取り出したものは・・・赤黒の人形
「ほら鈴仙! 三頭身永琳人形だよ! ほらほらー」
「あ・・・ああ・・・師匠! 私、まだ生きていてもいいんですよね・・・? 頑張ってもいいんですよね・・・?」
「その通りよ、前を向いて歩きなさい鈴仙!(裏声」
「師匠・・・師匠ーー!!」
「あ、ちょっと待はぶっ!・・・鈴仙苦しい・・・腕を緩めて・・・!」
「師匠! 私もう負けませんからーっ!!」
「ぐぎゅぅぅぅぅぅ・・・」
取り合えず口からなんか色々と出た、魂魄とか
「ハッ・・・・・・あ・・・も、もこりー大丈夫?」
「リ・・・リザレクション・・・」
キュピーン! シュパーン!
「ふっかーつ!」
「あーやっぱり不死身なんだね」
「アーンド怒りのモココアナッコー!!」
「あいたた! 大して痛くないけど痛いー」
「(一体、下の二人は何をやってるウサか・・・)」
「はぁはぁ・・・・・・で、私はあれに混じらなくていいの?」
「う、うん、もこりーぐらいになると単独で戦況を変えられるから、陣に組み込むとバランスが崩れちゃうし」
「そっかー」
「それに相手にも単独で強いリリーがいるから、それの相手をするのがもこりーの役目かな?」
「成る程、結局は一対一に行き着くわけね」
「・・・それがそうでもないの」
「?」
「他のファームはもこりー程じゃなくても単独で戦える強さのリリーが十匹ぐらいいるから・・・」
「わー・・・そりゃ大変だ」
「というわけで」
突如響く『ゴトン!』という音と共に、鈴仙がどこからともなく取り出した謎の物体
太陽光の元で映える鉄の光沢、ついでにシャリンシャリンとバネの音
「このリリーファイター養成ギブスで、もこりーを今からビシバシ鍛えるからね!」
「あ、私ちょっと行かなきゃならない所が・・・」
ガシッ!
「ひぃ!」
「さぁ、いい子だから大人しくギブスをつけようね~」
「い、いやだ!」
「こらー!待ちなさーい!」
「そんなもの着たくなわわっ!?」
鈴仙の手を振り切って逃げる妹紅、しかし突如彼女の進路に謎のメイドが!
「拘束される幼女・・・いいわぁ」
「またお前か変態メイド!!」
「ふふ、もう逃げ場は無いよ」
「あわわ、鈴仙目が怖いって!」」
「ギブスにあえぐ幼女もよさそうね」
「うひゃっ! 離して! だ、誰か助けてぇぇぇぇぇ・・・・・・」
「はっ! 今どこかで妹紅の声が!」
「け、慧音様! そんなお体でどこへいくつもりですか!?」
「ええい離せ! 妹紅が! 妹紅が助けを呼んでいるんだぁぁ!!」
「落ち着いてください慧音様! 妹紅さんは今もそこで眠っているではないですかー!!」
「ああっ! 田吾作の馬鹿! その言葉は禁句だ!」
「はっ! しまった!」
「妹紅ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「け、慧音様! 妹紅人形ですぞ! ほらほらー!」
「ああ・・・妹紅・・・妹紅ー・・・」
「よし、太郎が人形で引き付けている今の内に早く村の娘にもんぺを着せてつれてくるんだ!」
「駄目だ! もはや里の全ての娘がcavedされてしまって一人も残っていない!」
「なんだと! ・・・くっ、ならばこの俺が女装してでも!」
「やめろ! やめるんだ喜助! お前がそこまでする必要は無い!」
「ええい止めるな! これは村の若頭である俺の役目だー!!」
「妹紅・・・妹紅ぉ・・・」
「さあ慧音よ! 妹紅はここだ! お前の後ろにいるぞ!」
「妹紅!? 妹紅ぉぉぉーーー!!」
caaaaaaaaved!!!
「ぐはぁぁぁぁぁぁ!」
『喜助ぇーーーーーーー!! ・・・スケーーー・・・ケーー・・・(エコー)』
「なあ田吾作、わしらいつまでこんな事してればいいのかのー?」
「それはわからんな、だが太郎よ、慧音様無しではこの里は成り立たんのだよ」
「ハァハァ・・・慧音様の太くて硬いアレは・・・おいしゅうございました・・・」
「それよりも、今は喜助を急いで病院に連れて行くほうが先の用だ」
「肛門科? それとも精神科?」
「両方だ」
「んだな」
・・・ギシッ・・・ギシッ・・・ギシッ・・・
里の事件にも関係なく、時がすぎていく因幡ファーム
辺りが闇に包まれて月が辺りを照らす頃、鉄のすれる音が静かにファームへと響き渡る
「くう・・・重い・・・」
全身をギブスで縛られながらも、必死で身体を引きずっていく妹紅
歩き向かう先は安息の場所、つまりは寝床、あれから行われた訓練によって身体はもはやボロボロの状態である
そしてその右腕が寝床へと続く戸へ手がかかった時、疲労と睡魔により妹紅の意識はそこで途絶えた
「(まったく、無茶をさせすぎね・・・過度な期待は毒でしかないのに)」
地に伏した妹紅の側に、いつの間にか佇んでいた一人の女性
彼女は屈みこみ、妹紅を纏うギブスになにやら手を加えると、ゆっくりと抱き上げる
「(これでよし・・・)」
そのまま寝床へと運び、毛玉毛の敷き詰められたベッドに妹紅を寝かせて、ふぁさりと毛布をかける
何も知らずにただぐっすりと眠る妹紅、女性はそのすやすやと眠る顔が可愛くて、つい頬を突いてみた
「んん・・・お母・・・様・・・むにゅ・・・」
ふと、鼻から何かが吹き出る音がした
――決戦前日
「もこりー! もっと早くもっと鋭く! 抉る様に弾幕を放って!」
「こ、こう!?」
「そう! そしてそこで決め技!」
「オッケー! いけー! ハルヤマヴォルケイノーーー!!」
「リリー達! もこりーが敵陣を崩したら『鋭陣の春』で敵を突き崩すウサ!」
『春ーー!!」
――今年こそ勝利を、そして幸せを掴むために動き出す兎達
「門番長ー・・・メイド達に設備と食事を抑えられてリリー達が大変ですよ~・・・」
「大丈夫よ、元々私達は自給自足で一から頑張ってきたんじゃない、あの頃に戻っただけよ」
「でも・・・」
「それに私達は王者なのよ、いかなる時も弱音は吐かない、ただ挑戦者を叩き潰す、それが使命!」
「し、使命・・・!」
「だから、なんとしても今度の大会は優勝を目指しましょう、リリー達の為に、私達の誇りの為に!」
「はい! あのメイド達に目に物見せてやりましょう!」
――そして意外なる妨害者によって、孤立無援となった王者
「メイド長、門番隊の設備の押収、終了いたしました」
「そう、ならばその設備を裏庭に廃棄しておきなさい」
「廃棄・・・ですか? まだまだ使える物ばかりですよ?」
「命令よ、二度は言わないわ」
「は、はいっ!」
「(ふふふふふ・・・待っててねもこりーちゃん・・・)」
――自らの幸せの為に全てを裏切り、利用せんとたくらむメイドの長
「田吾作ー、明日のリリーの大会どうすんべー」
「どうするも何も、わしらがやるしか無いだろう・・・慧音様があの調子じゃな・・・」
「あら? 二人ともこの私のことをお忘れ?」
『あ、あなたはっ!?」
――精神的支柱を失った人里に、突如現れし救世主
「ああ、ちなみに魂魄は冥界から出ちゃいけない決まりだから、白玉ファームは出ないわよ?」
「幽々子様、誰と話しているのですか?」
「電波」
「電波!?」
――それぞれの思いが、ついに激突する――
なにはともあれ村の若者に幸あれ…
リリーに覆い尽くされたメイドの内の一人だった俺は勝ち組だ!
メイド長・・・あんた何やってんだよ・・・
ただ中国だけが健気だ
てか慧音のは何リー?
それはともかく、変態どもよ永遠に。
ただ一人、健気に頑張る美鈴にエールを
腹が捩れるかと思いました
待ってました笑わせてもらいました美味しくいただけました!
次回にも期待っ!!
そして
>「ああ、ちなみに魂魄は冥界から出ちゃいけない決まりだから、白玉ファームは出ないわよ?」
超・残念!ガクーン
もこりーの語尾がもとに戻ってしまったのがびみょんに残念。
コンカー好きな俺。スカッドストーム大好き
とりあえず相場の二百倍積むのでもこりー売ってくださ(ハルヤマヴォルケイノ
喜助……あんた漢だぜ……!
アンタは最高だぁーーーーーーーッ!!!!
メイドォーーーーーーッ!!!
アンタはダメダメだぁーーーーーーーーッ!!!!
いや、マジ面白いのと話の作り方がうまいので早く次が読みたくてしょうがありません。
さっきゅんの暴走はともかく、何気にウドンゲも壊れてますね……
次回も楽しみにしてます~
気のせいだよなアハハ・・・