~四月一日~
さて今日は何の日か?
午前八時頃、竹林の上空を一人の魔法使いが飛んでいた、いわずともがな霧雨魔理沙である。
魔理沙は永遠亭を目指していた。飛んでいる最中もせわしなく下を見てまるで人を捜しているように見えた。まあ、探していたのだが。
「お、いたいた」
魔理沙が見つめる方向には一匹の桃色の服を着た兎が歩いていた。永遠亭の兎、因幡 てゐである。
見つけると同時に魔理沙はクンッと高度を下げ、てゐの前に着陸した。
「よう」
魔理沙は箒から降りて軽く会釈する。
「おはよう魔理沙」
てゐも特に警戒せずに挨拶をする。
「なあ、お前・・・今日が何の日か知ってるか?」
魔理沙から本題が告げられる。
「当たり前でしょう、こんな特別な日」
ふんっ、知らない奴の方がおかしいと言うてゐ。
「だよな」
「そうよ」
「くくく・・」
「ふふふ・・」
『エイプリルフール!!』
「流石だな」
「魔理沙もね」
そうだ今日は一年で嘘をついても良い日、エイプリルフール。どんなに嘘をついても許される日、まさに嘘吐き達の祭典である。ちなみに過去、魔理沙が『実はメイド長はパットを着用している』と言い幻想郷騒然となり。
また、てゐが『八雲紫の靴下は臭い』と言って幻想郷を壊滅状態に追いやった。他にも『神は歩いて帰る』とか『森近 霖之助は女だ』等の本当なのか嘘なのかボーダー不明な事を言って周囲の人間を困惑させた。
「今回もやるのか?」
「あたりまえよ」
てゐはやる気満々のようだ、今日もまた幻想郷が壊滅に陥られるのだろうか。
「で、それを聞くためにわざわざここまで来たの?」
確かに、わざわざ来てまで確かめる程の事ではない。
「ああ・・・実はな、一つ提案があるんだ・・・」
「何?」
「今回、私と勝負しないか?」
魔理沙がここまで来たのは決闘を申し込むためであった。
「勝負?」
「ああ、『どちらが一日でより多くの人を騙せるか』・・・前々からお前とは勝負してみたかったんだ」
「なるほどね・・・最強は二人もいらない、ナンバーワンよりオンリーワンなんてつまらない、ナンバーワンかつオンリーワンと言う事ね」
「その通りだ・・・のるか?」
「当たり前よ。人をだませて、なおかつ一位の称号を得る、これほど名誉な事はないよ」
「ククク、吠えるぜ兎の癖して」
「嘘吐き対決で私に喧嘩売るなんて、魔理沙もいい度胸してるよ」
ふふふとお互い不適に笑いあう。
「で、ルールは?」
「簡単だ、今日の十時からスタートして夜の十時までにどれだけ人をだませるかカウントする、騙した人の数であって陥れた人はカウントしない事にする。多い方が勝ちだ、インチキは無しだぜ。十時になったら私の家に来てくれ」
「分かった」
「それじゃあ幸運を祈る」
「グットラック」
そう言うと、てゐは竹林の奧に消えて行き、魔理沙も上空高く飛び上がった。
午前十一時過ぎ
魔理沙は博麗神社から帰る所だった。
実は昨日の晩、魔理沙は博麗神社にはある仕掛けをしておいた。
「おっと一つ忠告しておくがインチキなんてしてないぜ。昨日から準備していただけの事だ」
ちなみに仕掛けというのは札束を賽銭箱にぶち込んだという簡単なものだ、ちなみに無論偽札だ。表面とすかしの部分には霖之助の神々しい姿が画かれている。あと、忘れ去られた500○ォン硬貨もぶち込んであげた。
「しっかし、驚いた霊夢の顔って言ったら凄かったぜ、魂出てたし。これだから人を騙すのは止められない」
あと、萃香にチョコ○リスピーと偽ってコーヒー豆をくれてやった、これもリアクションが楽しみだったが、さすがに危険なので逃げておいた。
「さて・・・次は紅魔館だな、ああ、ついでにチルノも騙しとくか、四月馬鹿という文字はあいつには最適だぜ」
そう言うと魔理沙は全速力で紅魔館へ飛んだ。
その頃てゐは
「さてどうするか・・・とりあえず鈴仙ちゃんネタはデフォルトだとして、他は誰にしようかな」
哀れ鈴仙、ちなみにこの後『鈴仙はパンツはいてないよ』と言う嘘を烏天狗に話して、烏天狗が「真実を解明する!」と言って、鈴仙をやけにローアングルで写真を取りに来たりしたのはまた別の話。
「まあ、ここら辺にいる奴らを騙して、後で冥界でも行ってこよう」
そう言うとてゐは永遠亭に向かった。
――――数時間後―――――
「こんばんは」
てゐは魔理沙宅のドアをノックした。
「お、来たかどうだった?」
「まあ、ぼちぼちってところよ」
魔理沙はてゐを家に招き入れた。
「そうは見えないぜ、勝つ気満々って感じだぜ」
「そう言う魔理沙も余裕そうじゃない?」
「まあ、それはお楽しみって所だ」
「そうだね」
「それじゃあ『せ~の!』で言うぜ。後出しは無しだ」
「わかった」
二人の間に緊張が走る。
『せ~の!』
「十人!」
「十人!」
結果は同点だった。
「なんだ、引き分けか」
「ちっ」
「ルーミアもカウントに入れれば良かった」
「ああ、お前もあいつ騙したのか?私も行ったが何を言っても『そ~なのか~』しか言わなかったから騙した気にならなかったんで私もカウントに入れてないぜ」
「あら、なかなか紳士じゃない」
「スポーツマンシップにのっとって清く正しく誇らしく人を騙すのが本物の嘘吐きというもんだぜ」
人を騙している時点で紳士やスポーツマンシップもクソも無いような気がするわけだが、この二人にはそんな事は関係なかった。
「だが、なかなかやるなお前も。正直ここまでやるとは思わなかったぜ」
「私も絶対勝ったって思ったし。魔理沙もやるね」
「お前は誰を騙したんだ?」
「私は永遠亭と冥界、マヨイガやらそこら辺ね」
「マジかよ!結構移動したな。私は博麗神社とか紅魔館やらその辺だぜ」
「それじゃあ、幻想郷の有名人は殆ど制覇しちゃったことになるね」
「全くだ、私達が組んだら本気で幻想郷潰せるんじゃないか?」
「あはは、そうかもね」
「ちなみに、みんなリアクションが面白すぎたぜ、霊夢も面白かったが、個人的にはチルノを押す。あいつに『レティホワイトロックは太ってるように見えるが実はあれ全部筋肉なんだぜ』って言ったら本気で怖がってた。こりゃトラウマになるかもしれん」
「魔理沙もえげつない事するね、私は冥界の姫に『実は妖夢の半霊は非常食』とか言ったらさ、『いやいや、そんなことは・・・いや本当か?・・・試してみる価値はある!』とか言って扇展開してた」
「お前もひどいな、明日妖夢見てこい、絶対半霊いないから」
「それは楽しみ」
「とりあえず、同率一位を祝って乾杯でもするか?つまみは今日の戦歴だ」
「それもいいね、私も永琳様の所から持ってきたよ」
どこから出したかは謎だが一本の瓶を出した。
「おっ!気が利くな!ってこれメチルアルコールじゃねえか!私を騙そうとするなんてタチが悪いぜ」
「ちっ、騙されなかったか。本物はこっち」
がっかりした様子で、もう一本瓶を出した。
「よ~し、今日は祝杯だ!飲むぞ!」
「お~!」
バギャア!バリバリ!
いざ乾杯をしようとした所で壮絶な音を立てて家のドアが吹き飛んだ。
「何!?」
「な、なんだ!?」
そしてすっ飛ばされたドアの向こう側から、わらわらと人が部屋に入ってきた。
「ま~り~さ~」
「て~ゐ~」
霊夢や萃香等の騙された、もしくは陥れられた人達であった。共通点としては皆顔が修羅のように怒っているか、青筋が立った笑顔を向けてくる者達ばかりだったと言う事だ。つまり、みんな相当お冠の様子である。
「ど、どうしたんだ?みんなそんな顔して・・・」
「そ、そうよ」
「よくも騙してくれたわね!」
「魔理沙!口が大変なことになったちゃったじゃない!」
「鈴仙さんちゃんとはいてましたよ!まあ、これはこれでいいですが・・」
「誰がふとましくて、筋肉馬鹿ですって?」
「半身が怯えちゃって、部屋から出てこないんです!どうしてくれるんですか!?」
怒り心頭で二人に詰め寄る騙された人達。
「ほ、ほら今日はエイプリルフール・・・」
「そ、そうそう!ドッキリよ、ドッキリ!」
押され気味だがちゃんと概念は伝える、きっとこれを言えば『な~んだ』と言ってみんなの顔には笑顔が戻ってくるはずだ。
「エイプリルフール?何それ?知らないわ」
信じられない言葉が霊夢の口から出た。
『え?』
「いや、確かに今日は四月一日よね?」
「ああ。今日はエイプリルフールの筈だ・・・」
「霊夢、知らないようだから二人に言ってあげて」
「分かったわ」
から言われた言葉にコクリと霊夢がうなずく。
「今日はね『不条理の日』よ」
「なんだそりゃ?」
霊夢の口より出た言葉は、まったく身に覚えがない言葉だった。
「『不条理の日』とはね。普段、付き合いや義理を欠いている失礼をわびる日と言う意味ね」
「ちょ、ちょっと待て。そんなの私は知らないぞそれこそ嘘だろ!今日はエイプリルフールだ!」
「そうそう」
「そんな歴史は半獣に食べて貰ったわ。エイプリルフールなんて行事存在しないよ」
『そ、そんな!?』
「だから今日は『不条理の日』の日だって言ってるでしょう。だからその精神に乗っ取って付き合いや義理を欠いているそこの二人に失礼をわびて貰おうと言う訳よ」
『そ、そんな~』
「で、どうする?この二人」
「そうね、かつて因幡の白ウサギと言う話があってね。それでは嘘ついた兎は鮫に皮を剥がされてしまうの」
「!!か、勘弁してくれ・・」
二人ともこれには恐怖を感じた、皮を剥がれるなんて狂気の沙汰じゃない。
「でも私はそこまで鬼じゃないわ」
「流石、霊夢だぜ!話が分かる!」
ほっと胸をなで下ろす。
「そのかわり・・・皮の変わりに服を剥ぐ!」
『え!?』
「そ れ だ」
「流石霊夢ね」
「まったく優しいわね霊夢は」
「これはスクープになりますよ!」
「ちょ、ちょっと待て!」
「そうそう、みんな考え直した方がいいよ!実はこれを計画したのは全部魔理沙なの!私は魔理沙に脅されて仕方なく・・・」
「こ、このやろ~!おい!みんなこいつが言ってるのは嘘だ!本当は私がこいつに脅されて・・」
「嘘つかないでよ!」
「お前もな!」
「まあ、いいわ。二人ともお仕置きすれば。どちらか当たるでしょう」
「ひどっ!」
そして、じりじりと二人に近寄る面々、そして後退して行く魔理沙とてゐ。
「蛍狩とは蛍を捕まえる事であって、やっつける事じゃないけど、兎狩りはやっつける事よね、性的な意味で」
「安心してみんな優しいから」
「そうそう、すぐに良くなる」
「や、やめろ・・・」
「あ、あやまるからさっ、勘弁して」
既に逃げ場を無くしてしまった二人。
「じゃあ、みんな。かかれえぇっ!!」
『ぎゃああぁぁぁっ!!!』
夜空に悲鳴が響き渡った。
今日は嘘吐きの祭典
皆さん嘘は程々に。
フランスでは新年を4月1日として祭りを開催していたが、1564年にフランス国王シャルル9世によって、1月1日を新年とするグレゴリオ暦が採用され、それに反発した人々が4月1日を「嘘の新年」として馬鹿騒ぎをするようになり、エイプリルフールの風習になったという説もあるそうです。
お見事でございます。……慧音先生はすごいなぁ(笑)
では今年から今日は「不条理の日」で!!!
ウドンゲの写真ほs(座薬
……それでも良し!!むしろそれが良し!!(爆)
……何で十はt(ry)専門の場所は無いんでしょう(再爆)
年齢制限が必要なものはネチョロダへ。
</コマーシャル>
慧音先生は本当にすごいなぁ。もちろん、性的な意味で。