ある晴れた日の昼下がり。プリズムリバー邸の一室で、ルナサはいつものようにバイオリンの練習をしていた。
窓から差し込む光が彼女の金髪に反射して、太陽の粒を振りまく。目を閉じ、演奏に集中している様はとても美しかった。
そして曲も中盤に差し掛かり、最も盛り上がる部分を迎える。しかし大げさな表現をしては台無しになってしまうので、ルナサは細心の注意を払いつつ弓を運んだ。
と、その時である。静かに扉を開いて誰かがこの部屋に入ってきた。
そしてそのまま侵入者は、自分に背を向けているルナサにそろりそろりと近づいて。
はぁ、はぁ。
獣のように荒い息を吐きながら、演奏を続ける彼女に近づく。
はぁ、はぁ。
ぺろりと舌なめずりをして、獲物を見つめる。背中から下半身へのラインが扇情的で堪らない。
はぁ、はぁ。
もう少し、もう少しで。この女をめちゃめちゃに撫で回して――
侵入者はルナサの真後ろに立つと、その右手を触手の様に伸ばした。
さわりっ。
「ひゃんっ!」
突然に下半身へと与えられた刺激に、思わず演奏が止まる。
そしてすばやく後ろを振り向くと。
そこには、
「どうしたの、姉さん。そんなにえっちな声出しちゃって。」
彼女の妹である、メルランがいた。
しかも、姉の尻を撫で回しながら。
「あぁ、本当に姉さんのお尻はいいわ、想像以上よ。スカート越しじゃなくて、直に触ってみたいかも」
うっとりとした口調で、倫理的に危ない事を言う。もちろん、未だに尻を撫で回しながら。
今のメルランは只の変態である。
そんな妹の右手を振り払うと、ルナサは自分の背を壁につける様にして変態と距離をとった。
「ちょ、ちょっとメルラン。どうしたの! また躁病の発作でも出たの!?」
怒りなのか、それとも驚きのせいなのか。少し頬を染めながら怒鳴った。バイオリンは既に、近くにあったテーブルに置いている。
「ううん、別に私は普通」
姉の言葉を受けて、妹は事も無げに返した。
確かに、その様子は躁状態になった時のものとは違って、落ち着いている。
「はぁ。そうじゃないなら、変な悪戯しないでよね」
呆れて溜息をつく。そしてルナサは演奏を再開するために、壁から背を離してバイオリンの場所へと歩き出した。
すると、もう一度。
さわさわっ。
「ひゃぅっ!」
素早く後ろに回りこんでいたメルランが、尻を撫で回したのであった。
「もうっ、やめてって言ったでしょ!」
先ほどよりも赤い顔でルナサが言う。
そして自らを守るために、再び壁に背をつけた。まるでさっきの巻き戻しのように。
「もう、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。減るもんじゃ無いんだし」
「減らないけど減るのっ! 本当に、急に触ったりしないでよ。吃驚するじゃない」
全くどうしたものか。普段から変な妹だが、今日は頓に変だ。ルナサは何度目になるか分からない溜息をつく。やっぱり躁になっているのではなかろうか、と思い妹を見る。
するとメルランは手を顎に当てて、何やら考えているようだった。
そして2、3秒そんな風にした後、とてもいい笑顔でこう言う。
「急に触らないんだったらいいの? だったら『今から姉さんのお尻を触ります』って宣誓して、合意を得られたのなら問題は無いのね」
「いや、そういう問題じゃない」
「でも急に触るよりもずっといいと思うわ。そうよね、お互いに心の準備ってのが必要だもの」
「まぁ、確かに心の準備が有ると無いでは大違いだけど……」
妹の強引な論理に、知らず知らずに流されていく姉。もはや『尻を触る』という行為自体を、拒否する事ができなくなっていた。
そして声高に宣誓が行われる。
「メルラン・プリズムリバーは姉さんのお尻を触ります! って訳で、いいでしょ? お願い、これで最後にするから触らせて」
両手を合わせて懇願する様子に、とうとうルナサも折れた。
メルランは意外と頑固なので、これを拒否すると日常がセクハラまみれになるかもしれない。だったら一時の恥で、これからの安全が保障できるのなら我慢しようではないか。ルナサはそう思って、妹に背を向けると目を閉じた。
「いいけど、恥ずかしいんだから短めにしてよ。それと、本当に最後だからね」
変な緊張から、体に力が入る。処刑を前にした罪人は、きっとこんな感じなのだろう。
そして、後ろから近づいてくる足音。
かつ、かつ。かつ、かつ。かつ、かつ。
ぴたり。
妹が真後ろに立ったのが分かった。だって、ぶつぶつと呟く声が彼女に耳に届いたのだから。
「ふぅふぅ。そ、それじゃ。さ、はぁはぁ。触りま、はぁはぁ。触ります」
「やっぱり嫌――――!!!!!!」
右手がその臀部に触れる寸前で、ルナサは脱兎の如く飛んだ。
「嫌、絶対に嫌! さっきのメルラン、異様に怖かったもの。何だか息も荒かったし!!」
凄まじい恐怖を感じたのか、その目には涙が溜まっている。
「何言ってるのよ姉さん、はぁはぁ。大人しくしてればすぐに終わるんだから、はぁはぁ。」
「嘘よ。語尾に変なの付いてるし、涎たぷたぷ出てるじゃない」
「おっと、いけないいけない」
じゅるりと音をさせて、口元を拭う様子は完璧に捕食者のものである。それを見たルナサは、一層の危険を感じた。しかしこのままではいけないと思い、精一杯の虚勢を張って言う。
「そもそも何でそんなに触りたがるのよ。今までこういう事しなかったじゃない」
きっ、と妹を睨んで問い詰めた。すると、メルランは子供のように純粋な目で答える。
「あのね、姉さん。私は常日頃から、もっと演奏の質を高めたいと考えていたの」
あまりに予想外の言葉に、ルナサは固まった。そんな姉を余所に、説明は続く。
「でも姉さんって、あんまり私達に心を開いてくれていないというか、長女としての責任を感じ過ぎているせいかな? しっかりしていようとするばっかりで、自分の考えとかをちゃんと話してくれないじゃない。だからスキンシップを通じて、少しでも心の距離を縮めたいなって」
「メルラン……」
自分の事と音楽の事を真剣に考えていた妹。そんな彼女の心の内を聞かされて、ルナサは嬉しくなった。
しかし、
「そんな風に考えていたわ、ついさっきまでは」
その一言で、ルナサは再び固まる。
「この部屋に入った時、分かったの。小振りだけど引き締まっていて、つんと上を向いたそのお尻。それが描く絶対的な美を持った曲線から発されるα波的な何かが、私に悟らせたのよ。これだけの美尻を目の前にしては、どんな論理も無力。ただ衝動に突き動かされるだけの獣になるの。『撫で回したい!』という欲望の権化にね」
ぐっ、と両拳を握り締めて力説するメルラン。
そんな妹を、遠くの世界にいる人物のように見ている姉。
そうしてメルランの演説と化した言葉は、次のように締めくくられた。
「だから、私は求めるの。尻を! 尻を! もっと美尻を!!」
「尻、尻うるさいっ!!」
もはや冷静さを失ったルナサには、叫ぶ事しかできない。
「そもそも、触られるのがどれくらい気持ち悪い事か分かってるの? あなたも一回触られてその感じを体験してみれば、きっとそんなふざけた事は言えなくなるわよ」
怒り心頭。そんな言葉がぴったりと来るような語気で言い放った。興奮の余り、両肩で息をしている。
これだけ言えば、きっとメルランも反省するだろう。そう思ったルナサだった。
だが神は無情にして非情なもので――
「姉さんが、姉さんが私のお尻を触るの?」
この事態をよりややこしくしただけだった。
「そう、姉さんも触りたかったんだ。恥ずかしいけれど、私、姉さんになら、あげても、いい……」
ふい、と真っ赤にした顔を伏せるメルラン。
「いやいやいやいや。ちょっと勘違いしてるわよ、あなた」
ルナサはそう言って、この状況の打開を試みた。
しかし、助走の付いた列車を止めるのは容易な事ではない。彼女は姉の言葉など無かったかのように、行動に移っていた。
「さぁ、触って! さぁ、さぁ、さぁっ!!」
メルランは両手を両膝に付いて、臀部を突き出している。それは撫でられるのを、今か今かと待ちわびていた。
……
…………
………………
凍った様な時間が少し続いた後、ルナサはおずおずと聞いた。
「やっぱり、触らなきゃダメ?」
「ダメ! 絶対!!」
尻越しに即答するメルラン。しかも首を180°ほど回転しながらだ。見ていて心臓に悪い事この上ない。
「やられたらやり返せ。撫でられたら撫で返せ。汝、右の尻を撫でられたら左の尻を差し出せ。って、偉い人も言ってたし」
「いや、言ってないと思う」
心底疲れたような声を出すルナサ。その顔には、諦めが浮かんでいた。
「それに私だって触られたら、姉さんのを触らなくなるかもしれないわよ」
ふりふりと尻を少し揺すりながら、姉の説得を試みる妹。その顔には、何故か興奮のようなものが浮かんでいた。
「はぁ、分かった。触ればいいんでしょ、触れば」
もう考える事を放棄したのだろう。大人しく説得に応じた。
そして、右手を伸ばす。
さわりっ。
「あうっ」
今まで経験した事の無い感覚に、メルランは体をぶるりと振るわせる。
「触ったわよ、これでいいんでしょ」
「ちょっと待って。姉さんもう一回お願い。今度はもっとゆっくりで」
「はいはい」
さわさわ。
「これでいいかしら?」
「ダメ、もっとパッションと愛を込めて」
すりすり、ふにふに。
「どう?」
「違ぁぁぁぁぁうっ! もっと産毛の一本一本まで確かめるようにじっくりと、更に粘液が伝うみたいにねっとりと。それでいて力強くっ!」
「いい加減にしなさいよ、メルラン!!!!!」
窓ガラスが震えるほどの今日一番の絶叫が、プリズムリバー邸から放たれた。
●月×日発行。文々。新聞
『騒霊の屋敷に招かれざる客!?』
音楽姉妹として有名なプリズムリバー邸に、先月から自縛霊が住み着いたという情報を入手した。
主に長女である、ルナサ・プリズムリバーさんがその被害に遭っているようだ。
その姿を見た事はないが、背後から局所的に刺すような視線を感じるという。
特に脱衣所や浴場ではその霊に遭遇する事が多い、との事だ。
インタビューでルナサさんは
『きっと霊は一人じゃなくて、二人いるんです。だってこの家には私と二人の妹がいるんですから……』
と、悲しそうに顔を伏せて答えた。しかしこのコメントの真意は理解しがたく、霊の正体は謎のままだった。
恐らく被害者は監視されている事のストレスによって、正常な受け答えができないほど錯乱していると思われる。
皆様も、正体不明の霊には注意されたし。(文・射命丸文)
<終幕>
窓から差し込む光が彼女の金髪に反射して、太陽の粒を振りまく。目を閉じ、演奏に集中している様はとても美しかった。
そして曲も中盤に差し掛かり、最も盛り上がる部分を迎える。しかし大げさな表現をしては台無しになってしまうので、ルナサは細心の注意を払いつつ弓を運んだ。
と、その時である。静かに扉を開いて誰かがこの部屋に入ってきた。
そしてそのまま侵入者は、自分に背を向けているルナサにそろりそろりと近づいて。
はぁ、はぁ。
獣のように荒い息を吐きながら、演奏を続ける彼女に近づく。
はぁ、はぁ。
ぺろりと舌なめずりをして、獲物を見つめる。背中から下半身へのラインが扇情的で堪らない。
はぁ、はぁ。
もう少し、もう少しで。この女をめちゃめちゃに撫で回して――
侵入者はルナサの真後ろに立つと、その右手を触手の様に伸ばした。
さわりっ。
「ひゃんっ!」
突然に下半身へと与えられた刺激に、思わず演奏が止まる。
そしてすばやく後ろを振り向くと。
そこには、
「どうしたの、姉さん。そんなにえっちな声出しちゃって。」
彼女の妹である、メルランがいた。
しかも、姉の尻を撫で回しながら。
「あぁ、本当に姉さんのお尻はいいわ、想像以上よ。スカート越しじゃなくて、直に触ってみたいかも」
うっとりとした口調で、倫理的に危ない事を言う。もちろん、未だに尻を撫で回しながら。
今のメルランは只の変態である。
そんな妹の右手を振り払うと、ルナサは自分の背を壁につける様にして変態と距離をとった。
「ちょ、ちょっとメルラン。どうしたの! また躁病の発作でも出たの!?」
怒りなのか、それとも驚きのせいなのか。少し頬を染めながら怒鳴った。バイオリンは既に、近くにあったテーブルに置いている。
「ううん、別に私は普通」
姉の言葉を受けて、妹は事も無げに返した。
確かに、その様子は躁状態になった時のものとは違って、落ち着いている。
「はぁ。そうじゃないなら、変な悪戯しないでよね」
呆れて溜息をつく。そしてルナサは演奏を再開するために、壁から背を離してバイオリンの場所へと歩き出した。
すると、もう一度。
さわさわっ。
「ひゃぅっ!」
素早く後ろに回りこんでいたメルランが、尻を撫で回したのであった。
「もうっ、やめてって言ったでしょ!」
先ほどよりも赤い顔でルナサが言う。
そして自らを守るために、再び壁に背をつけた。まるでさっきの巻き戻しのように。
「もう、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない。減るもんじゃ無いんだし」
「減らないけど減るのっ! 本当に、急に触ったりしないでよ。吃驚するじゃない」
全くどうしたものか。普段から変な妹だが、今日は頓に変だ。ルナサは何度目になるか分からない溜息をつく。やっぱり躁になっているのではなかろうか、と思い妹を見る。
するとメルランは手を顎に当てて、何やら考えているようだった。
そして2、3秒そんな風にした後、とてもいい笑顔でこう言う。
「急に触らないんだったらいいの? だったら『今から姉さんのお尻を触ります』って宣誓して、合意を得られたのなら問題は無いのね」
「いや、そういう問題じゃない」
「でも急に触るよりもずっといいと思うわ。そうよね、お互いに心の準備ってのが必要だもの」
「まぁ、確かに心の準備が有ると無いでは大違いだけど……」
妹の強引な論理に、知らず知らずに流されていく姉。もはや『尻を触る』という行為自体を、拒否する事ができなくなっていた。
そして声高に宣誓が行われる。
「メルラン・プリズムリバーは姉さんのお尻を触ります! って訳で、いいでしょ? お願い、これで最後にするから触らせて」
両手を合わせて懇願する様子に、とうとうルナサも折れた。
メルランは意外と頑固なので、これを拒否すると日常がセクハラまみれになるかもしれない。だったら一時の恥で、これからの安全が保障できるのなら我慢しようではないか。ルナサはそう思って、妹に背を向けると目を閉じた。
「いいけど、恥ずかしいんだから短めにしてよ。それと、本当に最後だからね」
変な緊張から、体に力が入る。処刑を前にした罪人は、きっとこんな感じなのだろう。
そして、後ろから近づいてくる足音。
かつ、かつ。かつ、かつ。かつ、かつ。
ぴたり。
妹が真後ろに立ったのが分かった。だって、ぶつぶつと呟く声が彼女に耳に届いたのだから。
「ふぅふぅ。そ、それじゃ。さ、はぁはぁ。触りま、はぁはぁ。触ります」
「やっぱり嫌――――!!!!!!」
右手がその臀部に触れる寸前で、ルナサは脱兎の如く飛んだ。
「嫌、絶対に嫌! さっきのメルラン、異様に怖かったもの。何だか息も荒かったし!!」
凄まじい恐怖を感じたのか、その目には涙が溜まっている。
「何言ってるのよ姉さん、はぁはぁ。大人しくしてればすぐに終わるんだから、はぁはぁ。」
「嘘よ。語尾に変なの付いてるし、涎たぷたぷ出てるじゃない」
「おっと、いけないいけない」
じゅるりと音をさせて、口元を拭う様子は完璧に捕食者のものである。それを見たルナサは、一層の危険を感じた。しかしこのままではいけないと思い、精一杯の虚勢を張って言う。
「そもそも何でそんなに触りたがるのよ。今までこういう事しなかったじゃない」
きっ、と妹を睨んで問い詰めた。すると、メルランは子供のように純粋な目で答える。
「あのね、姉さん。私は常日頃から、もっと演奏の質を高めたいと考えていたの」
あまりに予想外の言葉に、ルナサは固まった。そんな姉を余所に、説明は続く。
「でも姉さんって、あんまり私達に心を開いてくれていないというか、長女としての責任を感じ過ぎているせいかな? しっかりしていようとするばっかりで、自分の考えとかをちゃんと話してくれないじゃない。だからスキンシップを通じて、少しでも心の距離を縮めたいなって」
「メルラン……」
自分の事と音楽の事を真剣に考えていた妹。そんな彼女の心の内を聞かされて、ルナサは嬉しくなった。
しかし、
「そんな風に考えていたわ、ついさっきまでは」
その一言で、ルナサは再び固まる。
「この部屋に入った時、分かったの。小振りだけど引き締まっていて、つんと上を向いたそのお尻。それが描く絶対的な美を持った曲線から発されるα波的な何かが、私に悟らせたのよ。これだけの美尻を目の前にしては、どんな論理も無力。ただ衝動に突き動かされるだけの獣になるの。『撫で回したい!』という欲望の権化にね」
ぐっ、と両拳を握り締めて力説するメルラン。
そんな妹を、遠くの世界にいる人物のように見ている姉。
そうしてメルランの演説と化した言葉は、次のように締めくくられた。
「だから、私は求めるの。尻を! 尻を! もっと美尻を!!」
「尻、尻うるさいっ!!」
もはや冷静さを失ったルナサには、叫ぶ事しかできない。
「そもそも、触られるのがどれくらい気持ち悪い事か分かってるの? あなたも一回触られてその感じを体験してみれば、きっとそんなふざけた事は言えなくなるわよ」
怒り心頭。そんな言葉がぴったりと来るような語気で言い放った。興奮の余り、両肩で息をしている。
これだけ言えば、きっとメルランも反省するだろう。そう思ったルナサだった。
だが神は無情にして非情なもので――
「姉さんが、姉さんが私のお尻を触るの?」
この事態をよりややこしくしただけだった。
「そう、姉さんも触りたかったんだ。恥ずかしいけれど、私、姉さんになら、あげても、いい……」
ふい、と真っ赤にした顔を伏せるメルラン。
「いやいやいやいや。ちょっと勘違いしてるわよ、あなた」
ルナサはそう言って、この状況の打開を試みた。
しかし、助走の付いた列車を止めるのは容易な事ではない。彼女は姉の言葉など無かったかのように、行動に移っていた。
「さぁ、触って! さぁ、さぁ、さぁっ!!」
メルランは両手を両膝に付いて、臀部を突き出している。それは撫でられるのを、今か今かと待ちわびていた。
……
…………
………………
凍った様な時間が少し続いた後、ルナサはおずおずと聞いた。
「やっぱり、触らなきゃダメ?」
「ダメ! 絶対!!」
尻越しに即答するメルラン。しかも首を180°ほど回転しながらだ。見ていて心臓に悪い事この上ない。
「やられたらやり返せ。撫でられたら撫で返せ。汝、右の尻を撫でられたら左の尻を差し出せ。って、偉い人も言ってたし」
「いや、言ってないと思う」
心底疲れたような声を出すルナサ。その顔には、諦めが浮かんでいた。
「それに私だって触られたら、姉さんのを触らなくなるかもしれないわよ」
ふりふりと尻を少し揺すりながら、姉の説得を試みる妹。その顔には、何故か興奮のようなものが浮かんでいた。
「はぁ、分かった。触ればいいんでしょ、触れば」
もう考える事を放棄したのだろう。大人しく説得に応じた。
そして、右手を伸ばす。
さわりっ。
「あうっ」
今まで経験した事の無い感覚に、メルランは体をぶるりと振るわせる。
「触ったわよ、これでいいんでしょ」
「ちょっと待って。姉さんもう一回お願い。今度はもっとゆっくりで」
「はいはい」
さわさわ。
「これでいいかしら?」
「ダメ、もっとパッションと愛を込めて」
すりすり、ふにふに。
「どう?」
「違ぁぁぁぁぁうっ! もっと産毛の一本一本まで確かめるようにじっくりと、更に粘液が伝うみたいにねっとりと。それでいて力強くっ!」
「いい加減にしなさいよ、メルラン!!!!!」
窓ガラスが震えるほどの今日一番の絶叫が、プリズムリバー邸から放たれた。
●月×日発行。文々。新聞
『騒霊の屋敷に招かれざる客!?』
音楽姉妹として有名なプリズムリバー邸に、先月から自縛霊が住み着いたという情報を入手した。
主に長女である、ルナサ・プリズムリバーさんがその被害に遭っているようだ。
その姿を見た事はないが、背後から局所的に刺すような視線を感じるという。
特に脱衣所や浴場ではその霊に遭遇する事が多い、との事だ。
インタビューでルナサさんは
『きっと霊は一人じゃなくて、二人いるんです。だってこの家には私と二人の妹がいるんですから……』
と、悲しそうに顔を伏せて答えた。しかしこのコメントの真意は理解しがたく、霊の正体は謎のままだった。
恐らく被害者は監視されている事のストレスによって、正常な受け答えができないほど錯乱していると思われる。
皆様も、正体不明の霊には注意されたし。(文・射命丸文)
<終幕>
ルナサ姉さんに対する見方がすこしだけ変わった気がします。具体的には位置
ちなみにメルランはエロすと言う事で(何
これは是非とも聖女陵辱ごっこをさせてk(スードストラディヴァリウス
メルランだけじゃなくリリカからもセクハラを受けるお姉ちゃんが大好きです。
でもしょうがないんです。
ルナ姉の花映塚2Pカラーはどうしようもなく劣情を催すんです。
あぁ触りたい。
読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
この作品のように、自分の欲望に任せた物をまた書きたいものです