「あんのスキマ……、覚えてなさいよ……」
「紫は本当にろくなこと考えねぇな……」
「何の意味があるの、今の……?」
ブツブツ文句を言いながらスタートラインに戻る選手一同。
「では、改めまして、第一レースを始めます!!」
一同気を取り直して藍の持つ信号機に注目する。
ぴっぴっぴー!!
「ふふ、やっぱりあれはお約束よねぇ」
「いや、まったくだ。良い物を見せて頂いた」
「みんなが走り出してから、最大速度に乗るまでの刹那のタイミング……。なんて芸術的……」
「そうよ、この日のために藍には特訓させたんだから」
「実に素晴らしい。やはり君こそスポンサーの鏡と言うべきだ!」
「まぁ、紫の仕掛けた罠といい、わたしの仕掛けた難題といい、霖之助さんのコースセンスといいまだまだ面白いのはこれからだけど」
「あんたら……、やっぱりとんでもないわ……」
VIP用の観戦席でぼやいたのは、開幕編でまったく出番のなかった博麗霊夢だった。
一応提供(何を提供したのかは後々分かる)で名が出ていたのでこの特等席に座って観戦している。
「こんなんで何が幻想郷最速なのよ。罠やら難題やらとんでもコースで競ったって真の最速とは言わないんじゃないの?」
「分かってないわね霊夢。幻想郷最速を競うからこそこんな風に勝負するんじゃない」
「どういうことよ、意味分からないわよ」
頬杖付いている霊夢に、紫は真剣な表情で話す。
「この幻想郷において、優劣を競うもっとも単純明快にしてもっとも浸透している勝負方法は何でしょう?」
「……美しき弾幕ごっこかしら……?」
「また弾幕馬鹿みたいな言い方ねぇ。でも大正解、弾幕ごっこ。あくまでもごっこはごっこ、わたし達は遊びの延長で優劣を決めている……いや優劣という言葉すら、この幻想郷では意味のないもの」
「あぁ……、何となく言いたいことは分かるわ……」
「でしょ? 幻想郷最速とはいっても結局の所はこういう勝負方法こそ最も幻想郷の気質に合うの。これはもはや真理と言っても過言じゃないわ」
霊夢はふんふんと頷く。
そしてこんな言葉を、
「成る程ねぇ……。…………で、本音は?」
「もっちろん、面白いからに決まっているでしょう!? こんな面白そうなこと、一大イベントにしないで何にするというの?」
「やっぱりね……、紫はしょせん紫か……」
「本当 そうね」
「輝夜、人のセリフをとらないの」
「あらあなたこそ」
「あ~、優雅なる言葉遊びはそのへんにしといてください。っていうかそろそろ解説をしてください」
苦労人な司会者が横から口を挟む。
「あぁ、そうだったわね。今のわたし達は解説者っと」
「あ、速くも第1アイテムカードエリアに近づいているようですわ」
「ふむ、なかなか素敵なレアアイテムも存在しているからな。期待していてくれたまえ」
「期待の方向性がちがくない、霖之助さん?」
「ふふっ、まずまずのスタートといったところですか」
レースの先頭を切っているのは、大方の予想通り文だった。
天狗ならではの出足でいきなりの独走状態である。
カーブの多さはそのまま風の進路の障害になるものの、それを全く感じさせないハンドル(?)のテクニックでギュンギュン突き進んでいる。
一方その後方はほぼ集団となっている。
魔理沙が二位につけているのはさすがだが、三位にチルノがいるのはなかなかに面白い。
もっとも、これは長距離レースであり、いきなり最初からとばしていると後々きつくなってくるのだが、おそらくチルノはそういうことを全く考えていないのだろう。
他のメンツはそのことを理解しているので、呆れる反面、「チルノは問題外」という認識を早くも持ったようだ。
「おっと、アイテム発見です!」
文の眼前に、虹色の網目模様の光に包まれたスペルカードが見えてきた。
ちなみにこの箱はアリスの制作である。
本当に器用なことをする魔法使いだ。
文は器用に姿勢制御をしながら第一ヘアピンカーブを曲がりつつ、アイテムカードを取得する。
「さてさて、どんなカードでしょうねぇ? っと、「ひがんるつーる」?」
これは何だろうか?
おそらく、某死神のスペルカードがオリジナルなんだろうけど、一体どんな効果があるのだろう? と文が首を捻っていると、後ろから
「きゃっほぅーーーっ!!!!」
「なっ!?」
輝かしい魔光と共に突っこんできたのは、文にしてみれば全然問題にもならないハズの相手だった。
「あははははっ! 何これ、すっごい速いよーっ!」
「ま、まさか!? なんであなたがそれを使えるんですかっ、チルノさん!?」
チルノがその身に纏っていた光、それは文にも見覚えがある。
本家のそれに比べればはるかに出力で劣っているのだろうけど、それはこの大会にも参加している魔法使いのとっておきともいえる技であるはず。
断じてこの氷精が使えるハズなどない。
大体、ルール的にスペルカードは使えないのだ。
ということは、チルノがさっきのアイテムエリアで拾ったカードこそそれなのだ。
チルノが拾ったカードには、こう書かれていた。
「ぶれいじんぐすたー」
「あ、あんの氷精……、わたしの技をパクりやがって……」
「あんたが言うか、それを」
あっさりチルノに抜かれた魔理沙と、それに並行して飛翔するレミリア。
二人の視線の先ではもの凄いスピードで文に肉薄するチルノの姿。
そして、
どもごっ!!
「きゃああああああっ!!!」
「ばいばーい!!」
エセ彗星に轢かれて地面にたたき落とされる文の姿だった。
「……っだが、これで文に差をつけられるぜ!!」
土煙を上げつつスピードを上げる魔理沙とレミリア。
そして、あっという間に文を抜き去っていく。
「あぐっ! おぶっ!!」
何やらすぐ後ろから珍妙な声がしてくる。
「あれ? 今何か踏んだような……?」
「わ、わたしも……。でも今は、レースに集中よ!!」
「そうね!!」
自前の足で疾走する鈴仙と妖夢が後からついてくる。
「……お前ら、さりげにひどいことするな……」
「ま、何にしろ、これであの天狗はしばらくは無視しても問題ないわ。このレース、悪いけどわたしが勝たせてもらうわね」
「言ったな、虚弱体質のお嬢様に不覚をとるわたしだと思うならかかってくるがいい!」
「あなたこそ、平民と貴族の格の違いを教えてあげるわよ!!」
まだまだ、レースは一周目、これからである。
一方、天狗さんはというと……。
「ううう……こ、ここはアイテムで一気に……盛り返しましょう……」
と、アイテムカードを発動する。
ちゃりりーん♪
「……は?」
コイン二枚まいど。
「只今の順位はですね……
トップ チルノ
二位 魔理沙
三位 レミリア
四位 鈴仙
五位 妖夢
六位 橙
七位 ミスティア
ドベ 文
となってます。」
「あらあら、いきなりダークホースのお出ましね」
「これだよ、これこそこのレースの醍醐味と言える」
「ライバルを追い散らし我が道を行く……。なんと素晴らしい事かしら……」
「追い散らすっていうか撥ね飛ばすっていうか……」
盛り上がる解説陣とは裏腹に、なかなか過激なレース展開にリアクションをとれない霊夢。
「っていうか、あのスペカは誰制作なの?」
「あら、わたしたちに決まっているでしょう?」
「魔理沙にはノンディレクショナルレーザーをとられた借りを返しておいたわ」
「……あ、そうなの」
本当にこの魔法使い達は器用だな。
っていうか、魔法って本当は模倣じゃないのか……? とか思う霊夢だった。
「で、わたしも一応「あれ」を提供したんだけど……、良かったの、「あれ」で?」
「もちろんだよ霊夢。むしろ、このレースに「あれ」は不可欠とも言える」
「霖之助さん……、それってやっぱりお約束っていうこと?」
「無論だよ」
「さぁさぁ、まだまだ序の口。目を離している暇などないのですよ皆さん」
「おっと、そうだな。お、何やらレアアイテムをひいた選手が出たらしい」
「……本当、どうなるのかしらねぇ……」
ここは第2アイテムエリアを過ぎたところ。
妖夢は先行する鈴仙の後ろ姿を見ながら疾走する。
順位は芳しくないものの、まだ一周目なのだ、焦ることはない。
「それに、これは期待できるかもしれない……」
妖夢のひいたアイテムはこれだ。
「むそーふーいん しゅう」
おそらくこれは、霊符「夢想封印・集」のことに相違ない。
長い冬の異変のとき、霊夢に敗北を喫したとき、霊夢はこのカードを使っていた。
よもや、自分が使うとは思わなかったけれど、これはチャンスだ。
このカードなら、鈴仙を確実に狙うことが出来るはず。
そうすれば、順位は確実に上がるだろう。
「早速だけど……、使わせて貰う!」
高らかに宣言しようとしたまさにその時、
「霊符……」
「テンコー!!」
元気のいい声に妖夢は思わず振り返る。
「な、何!? って、あ!?」
妖夢は手にそれまであった感触がないことに気づき、愕然とした。
先程の声、あれはおそらく橙だ。
セリフの内容に何だかみょんなものを感じるが、おそらくアイテムを使ったのだろう。
「そ、そんな! アイテムを奪うアイテムなんて!?」
『はっはっは! さすが橙! わたしの愛が届いたんだな!!』
スピーカーから響いてくる藍の親馬鹿な―っていうか式馬鹿なセリフを聞くまでもない。
橙が引いたカードはこれ。
「ぷりんせすてんこ いりゅーじょん」
まごう事なきレアカードだった。
「待って……、ってことはまさか……」
妖夢は後ろを向いて愕然とする。
「妖夢見っけ!!」
虹色の弾を従えてクルクル回りながら飛んでくる橙の姿がぼぅっと浮かび上がってくる。
「ちょっ……、そんな……」
「いっくよー!! 霊符「夢想封印・集」!!」
「いやあああ……!!!」
ズガンっ!!
お互い、喰らったことがあるだけに威力は身をもって知っている。
妖夢はホーミング弾の直撃を喰らって大きく吹っ飛ばされた。
「あははっ、ミスティちゃんの言うとおりだったね。結構気持ちいいよ、これ」
「だから言ったでしょ、大回りしてでもアイテム取った方がいいって」
橙と、仲良く併走するミスティアが妖夢を抜き去っていった。
「ううう……、一発で良かった……」
妖夢は何とか体勢を立て直し、慌てて後を追い始める。
一方、先頭では。
「無駄無駄ぁ!! 効かないねぇ!!」
「ちっくしょう、あの氷精め……!!」
「なんて運なのよ……」
またしても「ぶれいじんぐすたー」をひいたチルノは、後ろからのアイテム攻撃をもろともせずに高速飛行を続け、ついに二周目に突入した。
その後ろから魔理沙、レミリア、そして鈴仙、続々とラインを跨いでいく。
遅ればせながら橙、ミスティア、妖夢も二周目。
そして、一同からもうかなり引き離された上に、早くも疲労の色濃い文が二周目にはいるのは、もう少し先だった……。
「二周目に入って現在の順位はこうです。
トップ チルノ
二位 魔理沙
三位 レミリア
四位 鈴仙
五位 橙
六位 ミスティア
七位 妖夢
ドベ 文
となってます」
「う~ん、チルノちゃんは意外と強運なのかしら?」
「流れをモノにしているんだよ。そこをいくと魔理沙やあのお嬢様は完全にペースが乱れている。あれではとても追いつけないだろう」
「弾幕もレースも流れが大事。序盤で流れを掴んだ者は強いわ」
「どうでもいいけど、あっちこっちで夢想封印とびまくるのは複雑だわ……」
苦笑いする霊夢を、スペカ制作者である二人がなだめる。
「まぁまぁ霊夢。あれは一応レプリカだから」
「そうそう、コピーというのもおこがましい模造品に過ぎないわ」
自分で言ってどうする、と思ったけど、まぁこういう舞台にはピッタリだろう思い直す霊夢だった。
「そういえば輝夜、難題をしかけたとか言ってたけど、どこにそんなものが……」
「あぁ、それは見ていれば分かるわよ。正に難題だから……」
「そうそう、わたしの罠もね……」
「……何仕掛けたのよあんたら……」
正直、参加しなくて本当に良かった、と霊夢は思うのだった。
二周目は、細かいアイテムの応酬こそあったものの、これといった動きはなく終盤に入っていた。
相変わらずトップを走るチルノと、それを追う魔理沙とレミリア。
しかし、ここへ来て若干の変化が起きる。
チルノに少し疲労の色が見えてきたのだ。
「うぐぅ……、少し息苦しい……」
「当たり前だろっ、お前飛ばしすぎたんだよ」
「一時はひやっとしたけど、所詮は妖精ね」
「こっ、このくらいどってことなぁいっ!! 見てなさいよ、逃げ切ってやるから!」
「出来もしないことを言うもんじゃねぇぜ」
「むきいいいっ!! って、あれ? あれは一体……」
三周目に入ったチルノの目に飛び込んできたのは、
「こっちが近道よ♪」
と書かれた立て札だった。
……何て言うか、もの凄く胡散臭い。
「怪しいなぁ……」
そう、チルノでもそう思うくらい……。
「スタートのこともあるし、多分罠だよね、あれ……。普通に行こう」
チルノは無視してコースを普通に進んだ。
するとその先に……
難題「ターゲットを破壊せよ」
と書かれた看板が……。
「げぇ……、もしかしてこっちが罠かぁ……?」
アーチェリーみたいな的が無数に―数えてみると20個ある。
そして、足下にはアイテムカードが。
「むそーふーいん さび」
「これで狙えってことかな……? めんどくさー……」
「ふっふっふ、あの馬鹿やっぱり無視したぜ」
「そうね、あのスキマの性格からして、ここで裏の裏をかくってことは充分ありうるわ」
「本当にろくな事考えないスキマだが……、今回ばかりは失敗したな!」
「そうね……って、あれは……」
近道を迷わず選択した魔理沙&レミリアが見つけたのはこんな看板……。
難題「謎のザコ敵軍団(30体)」
「「はぁ……?」」
「ふっふっふ……よくぞ来たな……」
どこからともなく響く謎の声、その正体とは!?
「なんだ酔香か」
「ちっがーうっ! 酔香じゃなくて萃香よ!!」
伊吹萃香は木から飛び降りて地団駄を踏む。
「今のよく分かったな」
「魔理沙がやりそうなことよ。それに、あのときはよくも鰯の頭で脅してくれたわね!」
「あ~? そんなことあったか?」
「なによ、あなたそんなことしたの?」
「したようなしないような……」
「どっちよ?」
「あぁ、そういえば宴会騒ぎの後でこいつひっつかまえて色々と実験したなぁ……、って今はそんなことしてる場合じゃねぇだろ!!」
「そうよ!! っていうかそこの鬼は何しに来たのよ」
萃香は腕を組んで尊大そうなポーズをするけど、はっきり言って似合っていない。
同時に萃香の足下に萃香(小)が出現する。
「勿論、難題よ。さぁ、このわたしの分身30体を倒して向こうに行けるかしら?」
「はぁ? お前自身ならともかく分身じゃ相手にならねぇぜ?」
「あなたこそルールを覚えてる? スペルカードはおろか弾幕も使えないよ?」
「ぐっ…………オイ、これって……」
「難題っていうからには輝夜の仕業ね……。ま、わたしにとってはさしたる障害でもないけど……」
人間とは身体能力が違うレミリアは、自信満々で嘯く。
けど、世の中そんなには甘くなかった。
「あぁ、あんたには666体押しつけろって輝夜が言ってた」
「ちょっ!? そんなのありなの!?」
「ありだな。でなきゃあまりにも不公平だ」
「そんじゃ、心の準備はいい?」
「よくない」
「よくないっ!!」
「すりーつーわんーGO!!」
そして、大乱闘が始まった。
「……何あれ?」
「見ての通り、難題よ」
「あれって結構難易度差があるように見えるけど?」
「人生楽あれば苦ありよ」
「あんたが人生語るな」
「まぁ、何事も無意味に楽しようと思っちゃダメってことねぇ」
「う~ん、どうやら近道を通ったのはあの二人だけのようだね」
「真面目だもんねぇ、あの月兎も橙も妖夢も」
「ミスティアは?」
「あの子はそういう風に教育してあげたの」
「……近頃やけにミスティアが賢いと思ったら、そういうことだったわけ……?」
「そういうことだったのよ」
「あ~遅れましたが現在の順位表です。
トップ チルノ
二位 鈴仙
三位 魔理沙
四位 橙
五位 ミスティア
六位 妖夢
七位 レミリア
ドベ 文
となってます」
「全然近道じゃないじゃない」
「距離で言うなら近道なんだけどねぇ」
「っていうか、文は未だに追いつけないのね……」
「まぁ、あれだけ痛い目にあっても、リタイアしてないだけまだマシというところだろうね」
「ですね、しかしわたしが今気になることは、解説に霊夢を加えるべきか否かということなのですが」
「あら藍、それは大問題ねぇ」
「誰がやるか!」
「ようし、このままゴールインだ! っと、あそこに最後のアイテムエリアはっけぇん!!」
「そうはいかない。ここでラストスパートよ!」
三周目、第2アイテムエリア前。
「ぶれいじんぐすたー」連発に加え、的確(?)な道選びでここまで来たチルノと、堅実に順位を上げてここまで来た鈴仙の、今や一騎打ちとなっている。
魔理沙、橙、ミスティアの三位争い勢は、お互いにアイテムカードで一歩も退かない激戦を繰り広げているが、そのせいでこの二人からは少し離れてしまい、ここまで来るともはや逆転の道は遠い。
妖夢やレミリア、文も頑張ってはいるが、レース中のダメージとかが響いて、タイムも伸び悩む。
体力的に結構きついチルノはアイテムに全てを賭ける。
対して、スパートを仕掛ける鈴仙。
両者の差は徐々に縮まっていき、アイテムエリアに達する時には約10メートルといったところまで縮まっていた。
「やったー!! 「むそーふーいん さび」! バリアーだー!」
チルノは即座にカードを展開し、自らの周囲に虹色の弾を3つ設置する。
「甘いわよ! こっちは「ひしょーいだてん」! ターボアイテム×3よ!!」
鈴仙はここへ来てありがたいターボを発動し(自前の足なのになんでターボなのかというつっこみはナシで)、すぐさまチルノの横に並ぶ。
「あ、こらー!! この兎! 落ちろ!!」
チルノは三発ある直球弾を鈴仙めがけてぶっ放す。
「ふふっ、レース中にまともな狙いがつけられると思ってるの?」
しかし、何事もないように鈴仙は的確に直球弾をかわす。
かわされたと知ったチルノも羽をちぎれんばかりに動かして前へと進む。
「ぜえったい負けない!!」
「わたしだって!!」
お互い死力を振り絞り、目の前のゴールに足を踏み出す!
「ゴオオオオオルッ!!!」
白黒のフラッグを振り回して、藍が大声で迎えてきた。
「「どっちっ!!?」」
チルノと鈴仙、両者ともにぜぇぜぇ息をつきながら、けど熱いものを双眼に宿して藍を見据える。
「一位は……」
「「一位は!?」」
「…………鈴仙・優曇華院・イナバ!」
「や、やったぁーっ!! わたし、やりましたよ師匠、姫~!!」
「そ、そんな……何でよぉ!!」
VIP席と救急室方面に向かって手を振る鈴仙と、藍に詰め寄るチルノ。
「いやあ、惜しかったがね……。何て言うか……」
「何て言うかって何なのよ」
「……ぶっちゃけ殆どタイミング同じなんだ。
ただ、……耳の差がね」
「はっ……」
チルノは思わず鈴仙を見て、自分の頭を触る。
「…………。むっきゃあああ!!! くーやーしーいぃっ!!」
「ま、あと4レースもあるんだ。次も頑張れ」
「次はわたしも耳着けてやる!!」
「いや、そうじゃなくてだな……」
チルノはしょせんチルノだ。
解説席、VIP席全員そう思ったという。
第一コース マリササーキット
結果
トップ 鈴仙 +10
二位 チルノ +8
三位 魔理沙 +6
四位 橙 +4
五位 ミスティア +3
六位 妖夢 +2
七位 レミリア +1
ドベ 文 +0
残り4レース
まだ続きます
「紫は本当にろくなこと考えねぇな……」
「何の意味があるの、今の……?」
ブツブツ文句を言いながらスタートラインに戻る選手一同。
「では、改めまして、第一レースを始めます!!」
一同気を取り直して藍の持つ信号機に注目する。
ぴっぴっぴー!!
「ふふ、やっぱりあれはお約束よねぇ」
「いや、まったくだ。良い物を見せて頂いた」
「みんなが走り出してから、最大速度に乗るまでの刹那のタイミング……。なんて芸術的……」
「そうよ、この日のために藍には特訓させたんだから」
「実に素晴らしい。やはり君こそスポンサーの鏡と言うべきだ!」
「まぁ、紫の仕掛けた罠といい、わたしの仕掛けた難題といい、霖之助さんのコースセンスといいまだまだ面白いのはこれからだけど」
「あんたら……、やっぱりとんでもないわ……」
VIP用の観戦席でぼやいたのは、開幕編でまったく出番のなかった博麗霊夢だった。
一応提供(何を提供したのかは後々分かる)で名が出ていたのでこの特等席に座って観戦している。
「こんなんで何が幻想郷最速なのよ。罠やら難題やらとんでもコースで競ったって真の最速とは言わないんじゃないの?」
「分かってないわね霊夢。幻想郷最速を競うからこそこんな風に勝負するんじゃない」
「どういうことよ、意味分からないわよ」
頬杖付いている霊夢に、紫は真剣な表情で話す。
「この幻想郷において、優劣を競うもっとも単純明快にしてもっとも浸透している勝負方法は何でしょう?」
「……美しき弾幕ごっこかしら……?」
「また弾幕馬鹿みたいな言い方ねぇ。でも大正解、弾幕ごっこ。あくまでもごっこはごっこ、わたし達は遊びの延長で優劣を決めている……いや優劣という言葉すら、この幻想郷では意味のないもの」
「あぁ……、何となく言いたいことは分かるわ……」
「でしょ? 幻想郷最速とはいっても結局の所はこういう勝負方法こそ最も幻想郷の気質に合うの。これはもはや真理と言っても過言じゃないわ」
霊夢はふんふんと頷く。
そしてこんな言葉を、
「成る程ねぇ……。…………で、本音は?」
「もっちろん、面白いからに決まっているでしょう!? こんな面白そうなこと、一大イベントにしないで何にするというの?」
「やっぱりね……、紫はしょせん紫か……」
「本当 そうね」
「輝夜、人のセリフをとらないの」
「あらあなたこそ」
「あ~、優雅なる言葉遊びはそのへんにしといてください。っていうかそろそろ解説をしてください」
苦労人な司会者が横から口を挟む。
「あぁ、そうだったわね。今のわたし達は解説者っと」
「あ、速くも第1アイテムカードエリアに近づいているようですわ」
「ふむ、なかなか素敵なレアアイテムも存在しているからな。期待していてくれたまえ」
「期待の方向性がちがくない、霖之助さん?」
「ふふっ、まずまずのスタートといったところですか」
レースの先頭を切っているのは、大方の予想通り文だった。
天狗ならではの出足でいきなりの独走状態である。
カーブの多さはそのまま風の進路の障害になるものの、それを全く感じさせないハンドル(?)のテクニックでギュンギュン突き進んでいる。
一方その後方はほぼ集団となっている。
魔理沙が二位につけているのはさすがだが、三位にチルノがいるのはなかなかに面白い。
もっとも、これは長距離レースであり、いきなり最初からとばしていると後々きつくなってくるのだが、おそらくチルノはそういうことを全く考えていないのだろう。
他のメンツはそのことを理解しているので、呆れる反面、「チルノは問題外」という認識を早くも持ったようだ。
「おっと、アイテム発見です!」
文の眼前に、虹色の網目模様の光に包まれたスペルカードが見えてきた。
ちなみにこの箱はアリスの制作である。
本当に器用なことをする魔法使いだ。
文は器用に姿勢制御をしながら第一ヘアピンカーブを曲がりつつ、アイテムカードを取得する。
「さてさて、どんなカードでしょうねぇ? っと、「ひがんるつーる」?」
これは何だろうか?
おそらく、某死神のスペルカードがオリジナルなんだろうけど、一体どんな効果があるのだろう? と文が首を捻っていると、後ろから
「きゃっほぅーーーっ!!!!」
「なっ!?」
輝かしい魔光と共に突っこんできたのは、文にしてみれば全然問題にもならないハズの相手だった。
「あははははっ! 何これ、すっごい速いよーっ!」
「ま、まさか!? なんであなたがそれを使えるんですかっ、チルノさん!?」
チルノがその身に纏っていた光、それは文にも見覚えがある。
本家のそれに比べればはるかに出力で劣っているのだろうけど、それはこの大会にも参加している魔法使いのとっておきともいえる技であるはず。
断じてこの氷精が使えるハズなどない。
大体、ルール的にスペルカードは使えないのだ。
ということは、チルノがさっきのアイテムエリアで拾ったカードこそそれなのだ。
チルノが拾ったカードには、こう書かれていた。
「ぶれいじんぐすたー」
「あ、あんの氷精……、わたしの技をパクりやがって……」
「あんたが言うか、それを」
あっさりチルノに抜かれた魔理沙と、それに並行して飛翔するレミリア。
二人の視線の先ではもの凄いスピードで文に肉薄するチルノの姿。
そして、
どもごっ!!
「きゃああああああっ!!!」
「ばいばーい!!」
エセ彗星に轢かれて地面にたたき落とされる文の姿だった。
「……っだが、これで文に差をつけられるぜ!!」
土煙を上げつつスピードを上げる魔理沙とレミリア。
そして、あっという間に文を抜き去っていく。
「あぐっ! おぶっ!!」
何やらすぐ後ろから珍妙な声がしてくる。
「あれ? 今何か踏んだような……?」
「わ、わたしも……。でも今は、レースに集中よ!!」
「そうね!!」
自前の足で疾走する鈴仙と妖夢が後からついてくる。
「……お前ら、さりげにひどいことするな……」
「ま、何にしろ、これであの天狗はしばらくは無視しても問題ないわ。このレース、悪いけどわたしが勝たせてもらうわね」
「言ったな、虚弱体質のお嬢様に不覚をとるわたしだと思うならかかってくるがいい!」
「あなたこそ、平民と貴族の格の違いを教えてあげるわよ!!」
まだまだ、レースは一周目、これからである。
一方、天狗さんはというと……。
「ううう……こ、ここはアイテムで一気に……盛り返しましょう……」
と、アイテムカードを発動する。
ちゃりりーん♪
「……は?」
コイン二枚まいど。
「只今の順位はですね……
トップ チルノ
二位 魔理沙
三位 レミリア
四位 鈴仙
五位 妖夢
六位 橙
七位 ミスティア
ドベ 文
となってます。」
「あらあら、いきなりダークホースのお出ましね」
「これだよ、これこそこのレースの醍醐味と言える」
「ライバルを追い散らし我が道を行く……。なんと素晴らしい事かしら……」
「追い散らすっていうか撥ね飛ばすっていうか……」
盛り上がる解説陣とは裏腹に、なかなか過激なレース展開にリアクションをとれない霊夢。
「っていうか、あのスペカは誰制作なの?」
「あら、わたしたちに決まっているでしょう?」
「魔理沙にはノンディレクショナルレーザーをとられた借りを返しておいたわ」
「……あ、そうなの」
本当にこの魔法使い達は器用だな。
っていうか、魔法って本当は模倣じゃないのか……? とか思う霊夢だった。
「で、わたしも一応「あれ」を提供したんだけど……、良かったの、「あれ」で?」
「もちろんだよ霊夢。むしろ、このレースに「あれ」は不可欠とも言える」
「霖之助さん……、それってやっぱりお約束っていうこと?」
「無論だよ」
「さぁさぁ、まだまだ序の口。目を離している暇などないのですよ皆さん」
「おっと、そうだな。お、何やらレアアイテムをひいた選手が出たらしい」
「……本当、どうなるのかしらねぇ……」
ここは第2アイテムエリアを過ぎたところ。
妖夢は先行する鈴仙の後ろ姿を見ながら疾走する。
順位は芳しくないものの、まだ一周目なのだ、焦ることはない。
「それに、これは期待できるかもしれない……」
妖夢のひいたアイテムはこれだ。
「むそーふーいん しゅう」
おそらくこれは、霊符「夢想封印・集」のことに相違ない。
長い冬の異変のとき、霊夢に敗北を喫したとき、霊夢はこのカードを使っていた。
よもや、自分が使うとは思わなかったけれど、これはチャンスだ。
このカードなら、鈴仙を確実に狙うことが出来るはず。
そうすれば、順位は確実に上がるだろう。
「早速だけど……、使わせて貰う!」
高らかに宣言しようとしたまさにその時、
「霊符……」
「テンコー!!」
元気のいい声に妖夢は思わず振り返る。
「な、何!? って、あ!?」
妖夢は手にそれまであった感触がないことに気づき、愕然とした。
先程の声、あれはおそらく橙だ。
セリフの内容に何だかみょんなものを感じるが、おそらくアイテムを使ったのだろう。
「そ、そんな! アイテムを奪うアイテムなんて!?」
『はっはっは! さすが橙! わたしの愛が届いたんだな!!』
スピーカーから響いてくる藍の親馬鹿な―っていうか式馬鹿なセリフを聞くまでもない。
橙が引いたカードはこれ。
「ぷりんせすてんこ いりゅーじょん」
まごう事なきレアカードだった。
「待って……、ってことはまさか……」
妖夢は後ろを向いて愕然とする。
「妖夢見っけ!!」
虹色の弾を従えてクルクル回りながら飛んでくる橙の姿がぼぅっと浮かび上がってくる。
「ちょっ……、そんな……」
「いっくよー!! 霊符「夢想封印・集」!!」
「いやあああ……!!!」
ズガンっ!!
お互い、喰らったことがあるだけに威力は身をもって知っている。
妖夢はホーミング弾の直撃を喰らって大きく吹っ飛ばされた。
「あははっ、ミスティちゃんの言うとおりだったね。結構気持ちいいよ、これ」
「だから言ったでしょ、大回りしてでもアイテム取った方がいいって」
橙と、仲良く併走するミスティアが妖夢を抜き去っていった。
「ううう……、一発で良かった……」
妖夢は何とか体勢を立て直し、慌てて後を追い始める。
一方、先頭では。
「無駄無駄ぁ!! 効かないねぇ!!」
「ちっくしょう、あの氷精め……!!」
「なんて運なのよ……」
またしても「ぶれいじんぐすたー」をひいたチルノは、後ろからのアイテム攻撃をもろともせずに高速飛行を続け、ついに二周目に突入した。
その後ろから魔理沙、レミリア、そして鈴仙、続々とラインを跨いでいく。
遅ればせながら橙、ミスティア、妖夢も二周目。
そして、一同からもうかなり引き離された上に、早くも疲労の色濃い文が二周目にはいるのは、もう少し先だった……。
「二周目に入って現在の順位はこうです。
トップ チルノ
二位 魔理沙
三位 レミリア
四位 鈴仙
五位 橙
六位 ミスティア
七位 妖夢
ドベ 文
となってます」
「う~ん、チルノちゃんは意外と強運なのかしら?」
「流れをモノにしているんだよ。そこをいくと魔理沙やあのお嬢様は完全にペースが乱れている。あれではとても追いつけないだろう」
「弾幕もレースも流れが大事。序盤で流れを掴んだ者は強いわ」
「どうでもいいけど、あっちこっちで夢想封印とびまくるのは複雑だわ……」
苦笑いする霊夢を、スペカ制作者である二人がなだめる。
「まぁまぁ霊夢。あれは一応レプリカだから」
「そうそう、コピーというのもおこがましい模造品に過ぎないわ」
自分で言ってどうする、と思ったけど、まぁこういう舞台にはピッタリだろう思い直す霊夢だった。
「そういえば輝夜、難題をしかけたとか言ってたけど、どこにそんなものが……」
「あぁ、それは見ていれば分かるわよ。正に難題だから……」
「そうそう、わたしの罠もね……」
「……何仕掛けたのよあんたら……」
正直、参加しなくて本当に良かった、と霊夢は思うのだった。
二周目は、細かいアイテムの応酬こそあったものの、これといった動きはなく終盤に入っていた。
相変わらずトップを走るチルノと、それを追う魔理沙とレミリア。
しかし、ここへ来て若干の変化が起きる。
チルノに少し疲労の色が見えてきたのだ。
「うぐぅ……、少し息苦しい……」
「当たり前だろっ、お前飛ばしすぎたんだよ」
「一時はひやっとしたけど、所詮は妖精ね」
「こっ、このくらいどってことなぁいっ!! 見てなさいよ、逃げ切ってやるから!」
「出来もしないことを言うもんじゃねぇぜ」
「むきいいいっ!! って、あれ? あれは一体……」
三周目に入ったチルノの目に飛び込んできたのは、
「こっちが近道よ♪」
と書かれた立て札だった。
……何て言うか、もの凄く胡散臭い。
「怪しいなぁ……」
そう、チルノでもそう思うくらい……。
「スタートのこともあるし、多分罠だよね、あれ……。普通に行こう」
チルノは無視してコースを普通に進んだ。
するとその先に……
難題「ターゲットを破壊せよ」
と書かれた看板が……。
「げぇ……、もしかしてこっちが罠かぁ……?」
アーチェリーみたいな的が無数に―数えてみると20個ある。
そして、足下にはアイテムカードが。
「むそーふーいん さび」
「これで狙えってことかな……? めんどくさー……」
「ふっふっふ、あの馬鹿やっぱり無視したぜ」
「そうね、あのスキマの性格からして、ここで裏の裏をかくってことは充分ありうるわ」
「本当にろくな事考えないスキマだが……、今回ばかりは失敗したな!」
「そうね……って、あれは……」
近道を迷わず選択した魔理沙&レミリアが見つけたのはこんな看板……。
難題「謎のザコ敵軍団(30体)」
「「はぁ……?」」
「ふっふっふ……よくぞ来たな……」
どこからともなく響く謎の声、その正体とは!?
「なんだ酔香か」
「ちっがーうっ! 酔香じゃなくて萃香よ!!」
伊吹萃香は木から飛び降りて地団駄を踏む。
「今のよく分かったな」
「魔理沙がやりそうなことよ。それに、あのときはよくも鰯の頭で脅してくれたわね!」
「あ~? そんなことあったか?」
「なによ、あなたそんなことしたの?」
「したようなしないような……」
「どっちよ?」
「あぁ、そういえば宴会騒ぎの後でこいつひっつかまえて色々と実験したなぁ……、って今はそんなことしてる場合じゃねぇだろ!!」
「そうよ!! っていうかそこの鬼は何しに来たのよ」
萃香は腕を組んで尊大そうなポーズをするけど、はっきり言って似合っていない。
同時に萃香の足下に萃香(小)が出現する。
「勿論、難題よ。さぁ、このわたしの分身30体を倒して向こうに行けるかしら?」
「はぁ? お前自身ならともかく分身じゃ相手にならねぇぜ?」
「あなたこそルールを覚えてる? スペルカードはおろか弾幕も使えないよ?」
「ぐっ…………オイ、これって……」
「難題っていうからには輝夜の仕業ね……。ま、わたしにとってはさしたる障害でもないけど……」
人間とは身体能力が違うレミリアは、自信満々で嘯く。
けど、世の中そんなには甘くなかった。
「あぁ、あんたには666体押しつけろって輝夜が言ってた」
「ちょっ!? そんなのありなの!?」
「ありだな。でなきゃあまりにも不公平だ」
「そんじゃ、心の準備はいい?」
「よくない」
「よくないっ!!」
「すりーつーわんーGO!!」
そして、大乱闘が始まった。
「……何あれ?」
「見ての通り、難題よ」
「あれって結構難易度差があるように見えるけど?」
「人生楽あれば苦ありよ」
「あんたが人生語るな」
「まぁ、何事も無意味に楽しようと思っちゃダメってことねぇ」
「う~ん、どうやら近道を通ったのはあの二人だけのようだね」
「真面目だもんねぇ、あの月兎も橙も妖夢も」
「ミスティアは?」
「あの子はそういう風に教育してあげたの」
「……近頃やけにミスティアが賢いと思ったら、そういうことだったわけ……?」
「そういうことだったのよ」
「あ~遅れましたが現在の順位表です。
トップ チルノ
二位 鈴仙
三位 魔理沙
四位 橙
五位 ミスティア
六位 妖夢
七位 レミリア
ドベ 文
となってます」
「全然近道じゃないじゃない」
「距離で言うなら近道なんだけどねぇ」
「っていうか、文は未だに追いつけないのね……」
「まぁ、あれだけ痛い目にあっても、リタイアしてないだけまだマシというところだろうね」
「ですね、しかしわたしが今気になることは、解説に霊夢を加えるべきか否かということなのですが」
「あら藍、それは大問題ねぇ」
「誰がやるか!」
「ようし、このままゴールインだ! っと、あそこに最後のアイテムエリアはっけぇん!!」
「そうはいかない。ここでラストスパートよ!」
三周目、第2アイテムエリア前。
「ぶれいじんぐすたー」連発に加え、的確(?)な道選びでここまで来たチルノと、堅実に順位を上げてここまで来た鈴仙の、今や一騎打ちとなっている。
魔理沙、橙、ミスティアの三位争い勢は、お互いにアイテムカードで一歩も退かない激戦を繰り広げているが、そのせいでこの二人からは少し離れてしまい、ここまで来るともはや逆転の道は遠い。
妖夢やレミリア、文も頑張ってはいるが、レース中のダメージとかが響いて、タイムも伸び悩む。
体力的に結構きついチルノはアイテムに全てを賭ける。
対して、スパートを仕掛ける鈴仙。
両者の差は徐々に縮まっていき、アイテムエリアに達する時には約10メートルといったところまで縮まっていた。
「やったー!! 「むそーふーいん さび」! バリアーだー!」
チルノは即座にカードを展開し、自らの周囲に虹色の弾を3つ設置する。
「甘いわよ! こっちは「ひしょーいだてん」! ターボアイテム×3よ!!」
鈴仙はここへ来てありがたいターボを発動し(自前の足なのになんでターボなのかというつっこみはナシで)、すぐさまチルノの横に並ぶ。
「あ、こらー!! この兎! 落ちろ!!」
チルノは三発ある直球弾を鈴仙めがけてぶっ放す。
「ふふっ、レース中にまともな狙いがつけられると思ってるの?」
しかし、何事もないように鈴仙は的確に直球弾をかわす。
かわされたと知ったチルノも羽をちぎれんばかりに動かして前へと進む。
「ぜえったい負けない!!」
「わたしだって!!」
お互い死力を振り絞り、目の前のゴールに足を踏み出す!
「ゴオオオオオルッ!!!」
白黒のフラッグを振り回して、藍が大声で迎えてきた。
「「どっちっ!!?」」
チルノと鈴仙、両者ともにぜぇぜぇ息をつきながら、けど熱いものを双眼に宿して藍を見据える。
「一位は……」
「「一位は!?」」
「…………鈴仙・優曇華院・イナバ!」
「や、やったぁーっ!! わたし、やりましたよ師匠、姫~!!」
「そ、そんな……何でよぉ!!」
VIP席と救急室方面に向かって手を振る鈴仙と、藍に詰め寄るチルノ。
「いやあ、惜しかったがね……。何て言うか……」
「何て言うかって何なのよ」
「……ぶっちゃけ殆どタイミング同じなんだ。
ただ、……耳の差がね」
「はっ……」
チルノは思わず鈴仙を見て、自分の頭を触る。
「…………。むっきゃあああ!!! くーやーしーいぃっ!!」
「ま、あと4レースもあるんだ。次も頑張れ」
「次はわたしも耳着けてやる!!」
「いや、そうじゃなくてだな……」
チルノはしょせんチルノだ。
解説席、VIP席全員そう思ったという。
第一コース マリササーキット
結果
トップ 鈴仙 +10
二位 チルノ +8
三位 魔理沙 +6
四位 橙 +4
五位 ミスティア +3
六位 妖夢 +2
七位 レミリア +1
ドベ 文 +0
残り4レース
まだ続きます
マ○カーしよ、SFCの。
文がんばれw
いいなぁ。アイテムも絶妙にマッチしている所が良いですね。
なるほど、「集」が赤で、「寂」が緑ですな。青くてトゲが付いたヤツもあるんだろうかw
アイテムを奪うアイテムはテ○サなので、幽々子のスペカでも良いんじゃないかと思いました。すみません、欲張りです。
って、マ○カーなのに、スマ○ラですかw さりげなく「大乱闘」って書いてるのが良かったです。
カミナリと無敵のスターはどれに当たるんだろうwwwwwwww
ちょーどゲームセンターでマ○カーやってきたばかりだから、めっさ親近感がww
スペルカードの選択・効果共にマッチしていて最高ですww
ゲームセンター版のキノコは無いのかな…?あ、あれつかったらネチョにn…(ボソ
SFC版しかやったことありませんが、これ読んでたらゲーセンのマ○カーもやりたくなってきました。
スピードUP+跳ね飛ばしってことはやっぱり「ぶれいじんぐすたー」が某無敵な星ですか?
にしても文哀れ(w
満面の笑顔でテンコー宣言する橙がらぶりー。
今後のレースに期待しつつ、「ひがんるとぅーる」♪(ちゃりーん