Coolier - 新生・東方創想話

スプリングファーム弐 ~掴み取れ 慧音米~

2006/03/12 22:19:09
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  ※この作品は前作とは方向ががらりと変わって壊れまくってます
   なお、一部に少量の危ない表現成分が含まれていますので
   お読みになる際は気をつけてください、責任は取れません、むしろ逃げてやるフゥハハハー















       コンテストで勝つ方法は簡単だ

       審査員を「堕」とせばいい


          「全知 is 眼鏡」森近 霖之助の手記より――。















「はぁ・・・今日の晩御飯を探すのも楽じゃないわ・・・」

春、自然の恵みに溢れない森の中、溜息混じりにいたいけな紅白少女がとぼとぼと歩んでいた

「これは食えない・・・これは食える・・・これは魔理沙に食わせる・・・」

木の実やキノコを拾い上げ、じーっと厳しい眼で品定め
魔理沙用が食べれるかどうかはあなたの霊夢像にお任せします



「ぴぇ~ん・・・!」
「ん?」

ふと近くでも遠くでも無いような距離から、悲鳴のような泣き声のようなものが響いた

「はぁ・・・」

人間を襲う妖怪を調伏するのも博麗の巫女の仕事である
霊夢は手に抱えていた食料を腋にしまい、またか・・・と言う溜息をつきながら、声の元へと向かった



「あー、遅かったか・・・」

すでに声の元と思われた場所には腹を満腹にした異形の妖怪が一匹
かるーくお札を投げつけると勿論妖怪は一瞬で吹き飛んだ

「・・・閻魔様によろしくね」

助ける間もなく、食われた人はもう死んでいるだろう、そう思い背を向けた時

「ふぇぇ~ん・・・」
「え?」

振り返ってみると、吹き飛んだ妖怪の中から、小さな幼女がぽろり、とすん
ぱっと見は9.10歳、レミリアよりさらに一回り小さく、外見はどう見てもリリーホワイトっぽかった










「で、コイツがそのときに助けたリリーか」
「そうよ、あの後勝手に付いてきたリリーよ」
「春~・・・」

縁側でお茶をすする霊夢と、庭で箒片手に棒立ちの魔理沙
そんな魔理沙を霊夢の陰に隠れてじーっと覗くリリー
なんともいつもの様でいつもではない風景

「んー・・・どれ?」
「春っ!?」

ちょっと魔理沙がリリーに近づこうとすると、リリーはぴゃいっと霊夢の陰に隠れてガタガタと震えだした

「あー、こりゃ完全にフルレンジ恐怖症だな」
「やけにかっこいい恐怖症なのね」
「春ぅ~・・・」

ぽりぽりと頭をかく魔理沙をおずおずと覗き見るリリー
しかし目と目が合うだけでまた霊夢の後ろに引っ込んでしまう

「まあ、子供のリリーにはよくある恐怖症だからな、大人になる頃には治ってると思うぜ」
「・・・それは大人になるまでこれの面倒を見ろって事?」
「春?」

今度は霊夢と目が合う、するとリリーは満面の笑みで微笑んだ

「・・・えい」
「春ぅ~?!」

何が霊夢を刺激したのかはわからなかったが、とにかく次の瞬間にはリリーのほっぺが左右にびーん

「あら、結構伸びるのね」
「とにかく・・・霊夢!」
「ん? 何よ」

いきなりまじめな顔つきで魔理沙が霊夢へと視線を向けた



「今日からお前も、リリーブリーダーだぜ!!」
「・・・は?」

魔理沙がグッと右手の親指を立てて奇妙な事を口走る
虚をついた一言に、一瞬、霊夢の反応が遅れた

「おめでとうー!」
「おめでとう霊夢」
「ふふ、あなたもついに・・・おめでとう」
「おめでとう、そしてようこそ素晴らしきリリーの世界へ」
「霊夢、おめでとう」
『おめでとー!』

「え? え? えええええ!?」

ふと気づけばレミリアや幽々子、紫どころか、魅魔&幽香、こーりん、名無しーズetc...
幻想郷の知り合いのほとんどが霊夢の周りに集い、祝福の声を送る

「え、え、何? 何なのよ!?」
「ああ・・・ついに霊夢もリリーブリーダーになる日が来たんだな・・・グスッ」
「な、何泣いてるのよ魔理沙!?」
「霊夢、リリーの育成設備がほしかったら好きなだけ協力するわよ」
「紫!? だ、だから私は・・・」
「今日は霊夢を祝う宴会ね・・・咲夜!」
「お嬢様、すでに準備は整っております」
「いつの間にバイキングセットが!?」
「妖夢、食料は持ってきた?」
「勿論です、霊夢さんがブリーダーになると聞いた時から準備はしておきました」
「ちょっとちょっとあんた達! 鳥居を埋め尽くすほどの食料持って来てどうする!」
「よし! 今日は博麗の祟り神のこの魅魔様が音頭をとるよ! みんな杯を取りな!」
「酒だー! 酒がのめるぞー!」
「だぁぁぁ、魅魔も・・・萃香まで・・・」
「それじゃ皆ー! 霊夢のブリーダーデビューを祝って・・・・・・飲ま飲まー?」


『イェイッ!!』


「もう・・・勝手にして・・・」
「春ー?」

唯一霊夢の事を心配してくれたのがリリーだったのは、皮肉な話だ

その後、無駄に豪華なE級ライセンス贈呈式、人や妖怪入り混じりの百鬼夜行パレードなど
夜を徹してドンちゃん騒ぎが繰り広げられ、しばらくの間、博麗神社の信用は地に没する事となる















人と妖怪が入り混じる大宴会から約一週間
騒ぎも収まり、静けさが戻った博霊神社に二人の魔法使いが降り立った

「D級ブリーダー 「黒い宝石」 霧雨魔理沙参上!」
「B級ブリーダー 「人形調教師」 アリス「以下省略だぜ」





ガッ! バキッ! ベキッ! ボコッ! ゴスッ! メキッ!





「お、落ち着けアリス、今は殴り合ってる時じゃない」
「ひぐっ・・・折角の・・・自己紹介の場面が・・・ぐすっ・・・」
「泣くなよ、私が悪かったって・・・ほら、もう一度レッツトライ!」
「うん・・・(ぐしぐし)・・・・・・よし!」

「B級ブリーダー 「人形調教「あなた達、そこで何をしてるの?」
「あ、霊夢」



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーん!!」
「ア、アリス!? アリスー! カムバーーーーーック!!」
「だから何をしてるのよ・・・」



人形遣いが飛び去っていた空を見上げながら
縁側でほのぼのとお茶をすする二人の少女達

「で、色々とリリーの育て方を教えに来たわけなんだが・・・」
「余計なお世話よ、私はブリーダーになる気なんて無いわ」
「そういうなって・・・あれ? 霊夢のリリーはどこいったんだ?」

ふと魔理沙は周りを見回したが、いつも霊夢に引っ付いていたリリーの姿が無い

「レイリーなら神社の周りで食料を集めさせてるわ、近くなら馬鹿な妖怪もいないし」
「まだ生まれて年まもないリリーに食料集めをさせるなんて、いきなりスパルタだな」
「自分の食い扶持は自分で確保する、これが博麗神社の掟よ」
「そんな育て方をするとグレてリリーブラックになっちまうぜ?」
「だーかーらー、私はあの子を育ててる気なんて・・・」

ふとその時、階段をよいしょよいしょと上ってくるレイリーの姿が二人の目に映る
その背には網かごを背負っており、中には色々な食べ物がつまっていた

「れーむー、ご飯とって来た春ー」
「早かったわね」

レイリーが二人の前にドスンと網かごを置く、その中には山菜とかキノコとか色々詰まっていた

「これだけあれば三日は持つわね、今お昼ご飯作るから魔理沙と遊んでなさい」
「私の分も頼むぜ」
「却下」

ひょいと網かごを持ち上げ、とことこと台所へ向かう霊夢
後に残されたのは魔理沙とレイリー

「んー、どれどれ? ・・・すっかり霊夢色に染まってるな」
「春ー?」

ペタペタと触りながらレイリーを鑑定する魔理沙、どうやら恐怖症も治ってるようだ

「間違いない、霊夢がやってるのは日常風育成法!」
「わっ!? ・・・アリス、いつの間にそこに?」
「で、色々と――の辺りから」
「最初からかよ」

よっせとアリスも縁側に座り、勝手にお茶をすすりはじめた

「・・・それで、日常風育成法ってのは何なんだ?」
「知らないの? あなたって一応「あの」魅魔の弟子でしょう?」
「知らないものは知らないぜ」
「まったく・・・いい? 日常風育成法ってのは」


  魅魔ブリーダーの解説コーナー(ドンドンパフパフー)

   えーと、日常風育成方だっけ? 確かリリーに属性を付加させるような設備を一切使わずに
   その土地柄をリリーに色濃く反映させる育成方だったかな?
   無論設備を使わないわけだから、普通に暮らすのと変わらないわけで日常風と・・・名づけたのは誰だ?
   ま、色々と育成用設備の種類が整った今では誰もやらなくなった手法さね、じゃ、私はこの辺で


「以上、S級ブリーダー、魅魔様の解説でした」
「でした春ー!」
「魔理沙の馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ア、アリス!? アリスー! ドントカムバーーーーーーック!」





そして謎の運命にかき回されながらも、共に暮らす事となった巫女とリリー

「ほら、石段の隙間もキチンと掃く」
「はい春ー」

一緒に暮らすその姿はまるで姉妹のようで

「次は夢想封印の練習よ、魔理沙、頑張って逃げなさーい」
「霊夢の鬼ー!!」
「夢想封印・春~」
「助けて魅魔様ー!!」

それはそれは、微笑ましい物であった

「今日はおかずをとってこれなかったから、ご飯だけね」
「春ぅ~・・・」


しかし、彼女達の生活を脅かす最大の敵が現れた


「大変よレイリー、このままではまずい事になるわ」
「ど、どうしたんです春!?」



その名は、貧困



「・・・いただきます」
「いただき春」

今彼女達の目の前にはちゃぶ台の上に乗ったご飯と焼き魚

「レイリー、もしかしたらこれが最後のお米になるかもしれないから、丁寧に味わいなさい」
「は、はい春・・・」

かちゃかちゃと、箸の音だけが神社に響く
この日の朝食はこれまででもっとも長い朝食となった・・・。










「おーい、霊夢ー・・・って、うわっ!?」

とある日、日も暮れた頃に空より飛来した黒き魔法使い、彼女の目に映るは生気なく横たわる巫女とリリー

「どうした!? しっかりしろ!!」

霊夢に呼びかけてみるが応答が無い、それはリリーも同じだった

「まさか・・・米か!? 米がなくなったのか!?」

魔理沙は度々神社に訪れる、よってこういう場面も過去に何度か見たことはあった
しかし今回ほど酷い状況は初めてだった

なぜこういう事になるのか、まず、米が無くなる
勿論、お賽銭が入らないので米を買う事が出来ない
すると今度は米の分まで食料を探しに出かけなければならない
数日はそれでも何とかなるが、もし食料が見つからなければ大変だ
食料探索によっていつもより消耗した体力、空腹による虚脱感
それにより食料を探せる時間もどんどんと圧迫され、最後は動けなくなる

後は運良く参拝客に発見されるか、死ぬかだ
代々の博麗の巫女達もこれが原因で若くして死んでいったといわれている
当代霊夢が今も生きていられるのは、それが妖怪であろうとも発見してくれる参拝客が多いからである



「うう・・・キノコおいしいよキノコ・・・」
「おいしいです春ぅ~」

ムシャムシャと、火もいれずにキノコにかぶりつく一人と一匹

「私がたまたまキノコの採集帰りに神社によってなかったら今頃・・・」
「そうね(ムシャムシャ)感謝(ムシャムシャ)してゴホッ! ゲホッ!」
「いいから落ち着いて食え」

そして五分足らずで魔理沙の持ってきた一山のキノコが消失した

「ふぅー、これで何とか明日は食料を探しにいけるわね」
「なあ霊夢」
「ん、何?」
「そんなに困ってるなら・・・レイリーをコンテストに出したらどうだ?」
「・・・・・・・・・・・・」

ふと、二人の視線がレイリーへと注がれる

「リリーって・・・おいしいのかしら?」
「まてまてまてまて! 人の話を聞け!!」

魔理沙は目をキュピーンと光らせる霊夢を阻止しながら、帽子から何やら紙の束を取り出した

「夏でも冬でも春新聞・・・・・・何よこれ?」
「知らないのか? リリーブリーダーなら必須の新聞だぜ!」
「だから私はリリー・・・・・・」

ふと、霊夢の目が新聞の一面に止まる



   『四天王戦 春の白玉楼コンテスト 亡霊の姫が641点の高得点で挑戦者を圧倒!!』

    四天王戦の一つ、西行妖コンテストは前評判どおりに西行寺 幽々子ブリーダーの
    ユリーが歴代三位タイの641点(基本点満点 特技点満点 特殊点441点)で
    挑戦者 紅 美鈴ブリーダーのミリーに322ポイントの大差をつけ圧勝
    四天王の名に恥じぬ戦いをまざまざと見せつけた。
    幽々子嬢には賞品の慧音米150kgが送られたが
    その場で食べつくすという豪快っぷりを披露、観客を大いに驚かる一面も。



「慧音米150kgですって!?」
「そっちかよ」



  幻想郷雑学 <慧音米>

   慧音米とは、上白沢 慧音が一から作り上げた米のことである
   米に少しでも悪い影響が出ると歴史を食べてなかった事にされるため
   一切の悪影響なく育てられた米はまさしく究極の一品
   元来、彼女の住む里の物だけが食していたのだが、とある月の異変事件の日
   亡霊嬢が里からこっそりと持ち帰って食した所、パァフェクトと太鼓判を押した事で人気が急騰
   今ではkg/数十万円以上で取引され、幻想郷至高米の座はゆるぎない物となっている

   ちなみに毎年収穫の時期を迎えると、里を中心に半径一里の範囲で幻想郷大妖怪連盟による
   それはもう物凄い防衛網がしかれ、毎夜毎夜米泥棒師団と血で血を洗う大激戦が
   繰り広げられているのだが、この事を知らないのは里の人間と慧音だけとか



「レイリー! 今すぐコンテストに出るわよ!!」
「春ー!!」
「落ち着け霊夢! 霊夢のレイリーじゃ、出れるのが決まってるぜ!」
「そんなのどうでもいいわ! 今すぐ幽々子に勝負を挑んで慧音米を――」
「だからルールとか決まりとかあるんだって! 落ち着いてくれー!!」

しばしごたごた騒ぎ

「はぁ・・・はぁ・・・そ、それで、どうすれば慧音米が手に入るのよ?」
「ゼェ・・・ぜぇ・・・ちょっと待ってくれ、今調べるぜ・・・」

息を切らしながら新聞をめくり、新聞の丁度中辺りにある表のようなところで手を止めた
そのページの上部には、コンテスト日程表とある

「えーと、レイリーはまだ子供だからな・・・新春C、新春Cと・・・」

すすーっと表の横線にそって指を動かし、次は縦に指を動かしてゆく

「出れるのは・・・あー、あった」
「どこどこ!?」

見つけ出すや否や、身を乗り出して新聞を覗き込む霊夢

「新春C 会場はプリズムリバー亭 日付は・・・明日か」
「これで慧音米が・・・」
「いや、このコンテストでは慧音米はもらえない」
「・・・え?」
「それにこの新春CはD階級だ、霊夢だと格上挑戦になるぜ」
「何よそのD階級とか格上挑戦って、慧音米はどうなるのよ?」
「本当に何も知らないんだな・・・んじゃ、霧雨魔理沙様の解説コーナーといくぜ」


  階級について

   まず階級についてだが、EからSまで階級が分けられてるんだ
   階級を分けないと、どいつもこいつも賞品の豪華なコンテストに出ようとするからな
   今霊夢はE級だからE級のコンテストにしか出れないが
   アリスのようにB級だとB級のコンテストにリリーを初戦から出す事が出来る
   それと、B級以下のコンテストでは三位以内に入ると、リリーの階級が一つ上がるぜ
   E級で三位以内に入ると次はD級に出れるし、B級で入れば次はA級って具合にな
   ただしS級のコンテスト(四天王戦)に出るにはA級のトライアルで優勝しなきゃならないぜ


  格上挑戦について

   これはよくある例外だな、自分のリリーの階級の一つ上までのコンテストになら挑戦できるってことだ
   多いのはB級がA級に挑戦するパターンだけど、師匠曰く予選を勝つことすらほとんど無理だとか
   勿論、E級のリリーが格上挑戦してD級で勝てば、次はC級に出る事が出来るぜ


  新春Cについて

   新春Cってのは、子供のリリーだけが出る事の出来るコンテストだ
   リリーは早ければ一ヶ月、遅ければ夏頃には大人になるぜ


  S級のコンテスト(四天王戦)について

   四天王戦は年に四回しか開かれないS級のコンテストの事だ
   春の白玉楼、夏の紅魔館、秋のマヨヒガ、そして冬の香霖堂だな
   それぞれトライアルコンテスト(全部A級だぜ)があって、そこで優勝すると出る事が出来る
   コンテストの内容は四天王が育てたリリーとの一騎打ちだ
   春は幽々子、夏はレミリア、秋は紫、冬は香霖ってな


「まあ、こんな所だ」
「つまり、慧音米を手に入れるためには四天王を倒せばいいのね」
「いや、四天王戦ほどの量じゃないが、他にも副賞として出るコンテストはあるはずだ」
「なら早速レミリアに勝負を挑んでくるわ!」
「人の話聞いてないだろ!?」















「はぁー、でも慧音米が手に入るまでに餓死しちゃうわ・・・」
「コンテストに出るだけで参加料がいくらかもらえるから、それで食いつなぐといいぜ」
「ふーん、やけに気前がいいのね」
「ほとんどのコンテストのスポンサーが紅魔館とマヨヒガだからな」

昼真っ盛りの幻想郷の空をプリズムリバー亭へと飛ぶ二人の影
少し強くなってきた日差しが、夏の到来が近い事を告げていた

「でも私のレイリーで勝てる? 何も鍛えて無いわよ?」
「春ー?」
「多分大丈夫だぜ、E級もD級も大差ないしな、それに今日出る予定のコンテストは裏開催だ」
「裏開催?」
「紅魔館でC級の大きなコンテストが開かれるんだ、だから日程が重なる私達のは参加者が少ない」
「ああ、だから裏開催なのね」

そして視界の果てに見えてくるプリズムリバー亭
高度を徐々に下げ、地に降り立つ

「よし、今日が霊夢とレイリーのデビュー戦だぜ!」
「レイリー、負けたらあなたが晩御飯ね」
「春っ!?」










 『本日行われる予定の新春Cは参加者が一名しかいなかったため、下記の者の優勝とします』

     優勝:レイリー (ブリーダー:博麗 霊夢)



「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「春ー?」

プリズムリバー亭の玄関の扉に張られていた紙を見て、微妙な顔を浮かべる霊夢と魔理沙

「結果オーライ?」
「イエス! ザッツライッ!」
「春ー!」

まあとにかく喜んでいた時、もう一つ扉に紙が貼ってあることに気づく



 『なお本日夜六時より博麗神社にて、祝!博麗霊夢初勝利!大宴会を行います』



「謀ったわね魔理沙ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「わ、私は何も知らゲフゥッ!!」















「伊吹 萃香、一気飲みいきまーす!」
「お前いつも飲んでるだろ!」
「・・・でさー、私のリリーが・・・」
「よーむー、ご飯ー」
「もう食べつくしたんですかっ!?」
「美鈴ー! 私の酒が飲めないって言うのー!?」
「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ」


「はぁ・・・・・・」

宴会で大騒ぎの庭をぼーっと見つめ続ける巫女
こいつらはただ宴会のネタが欲しいだけか?と思いながらも
結局はどうでもいいという結論に達してほけ~っと月を見上げる
ふと背中へのささやかな重みと共に、二本の細白い腕が首を囲うように伸びてきた

「レミリア、あなたも宴会に参加してきたら?」
「もう・・・つれないわね」

そのまま腕にほんの少し力を込めて顔を摺り寄せる
月明かりに映える牙をむき出しにし、その首筋へと・・・

「こら」
「あ痛っ!」

が、やはり何時もどおり、ぷすりと針が脳天へ
吸血嬢はやや涙目になりながらも霊夢から離れると、背を向けて横顔でふふんと微笑んだ

「いいのかしら? 私にそんな事して・・・」
「あら、また痛い目に逢ってみる?」
「そう・・・じゃあ、これはいらないのね」

レミリアはその胸元から一つの封筒を取り出して、背中伝いにヒラヒラと見せ付ける

「何よそれ?」
「新春Cの優勝賞金10万円とD級ブリーダーの証よ」
「ご無礼を働いてしまい申し訳ございませんレミリア様、どうか平にご容赦くださいませ」
「くっ・・・あなたに三つ指をつかせてそんな事を軽々と言わせるこの賞金の強さが恨めしい・・・!」

こうしてまたレミリアが霊夢に夜這いをかけたり紫が霊夢に夜這いをかけたり
魔理沙が霊夢に夜這いをかけたりフランが霊夢の布団の中で魔理沙を待ち構えたりしながら
博麗神社の夜はふけていく――。















季節は夏真っ盛り、日光があまりの日差しの強さで宵闇の妖怪を被弾、墜落させるような日

「C級ブリーダー「黒の流星」 霧雨魔理沙参上!」

豪快な粉塵をあげながら神社に魔法使いが降り立つ
・・・が、その後約三分、何のリアクションも無いまま時間だけが過ぎていく

「霊夢ー・・・?」

返事は、無い

「どっか行ってるのかー?」

やはり、返事は無い

「・・・チャンス!!」

それからの動きはもう俊敏である
縁側に向かって駆け出したかと思うと一瞬で靴を脱ぎ帽子をスカートにしまいこみ
サングラスとマスクをかけ、手袋をつけて箪笥を開け始める、それはまさしくプロだった

「一段目はずれ、二段目はずれ、三段目はずれ・・・四段目っと」

箪笥を上から順々に開け、物色に10秒もかけずにまた元通りにしまう
一体こんな技術はどこの誰から学んだのか、魅魔は知らないと言うが・・・

「五段目~♪」

ガラッ

「・・・うう・・・・・・お腹空いた・・・・・・」

ピシャッ!





「待て待て待て待て、落ち着け私、落ち着いて冷静に対処するんだ」

一旦目を瞑り意識を集中、そして滞りなく全身へと魔力をめぐらし、ふぅぅ~っと深呼吸

「よしっ!」

ガラッ

「た・・・たべも『ピシャッ!』





「で、また米が無くなったのか」
「ひょーふぉ、ふぃノコに免ふぃて今回のふぉとは不問ふぃしてふぁげるからふぁんふぁしなふぁい」
「ふぁる~」
「へいへい・・・」

今回はキノコにキチンと火を通しているので大丈夫だ

「そういや賞金はどうしたんだ? 10万はもらえたはずだぜ?」
「奮発して美鈴米を買ったわ」
「アホだろ」


  幻想郷雑学 <美鈴米>

   美鈴米とは、紅美鈴と愉快な門番達が作り上げた米のことである
   洗練された土に清められた水そして美鈴の気功と、完璧な環境で育まれた米は美味の一言
   本来は紅魔館の門番達の大事な食料だったのだが、メイド長の策略によって幻想郷中に広められた
   その結果、米と引き換えにいろんな食べ物が手に入るようになり、門番達もホクホク顔である
   今ではkg/数万円以上で取引され、紅魔館の財政を底から支えている

   無論、紅魔館に米泥棒に入ろうなどという不埒な輩など存在できるはずも無い


「えー、今のレイリーで出れるコンテストは・・・あれ?」
「どうしたの?」

また前回と同じような展開が繰り広げられ
コンテスト表を調べていた魔理沙だが、その表情にやや陰りが浮かぶ

「えーと、おかしいな・・・・・・あれれ?」
「一体何がどうしたのよ?」

指でなぞりながらコンテスト表を調べるが、何度も何度も同じところを往復して止まる事が無い

「・・・無いぜ」
「?」
「出れるコンテストが無い、さーっぱり無い、どこにも無い」
「えええ!?」

予想外の返答に霊夢も新聞を睨みつけて捜してみるが、やっぱり無い

「ど、どういうことなの!?」
「私に聞かれても・・・ヘ、ヘルプミー! アリース!!」



キラーン!!

天が呼ぶ、地が呼ぶ、魔理沙が呼ぶ! 太陽の輝きと魔界のアホ毛の力を受けて、今ここに!

「B級ブリ「そりゃ、この時期になったらもう新春Cなんか開かれるわけないじゃないか」

ズッシャァァァァァァァァァァァァァ!!

「魅、魅魔様!?」
「あれ? 今外で誰か盛大に転んでなかった?」
「気のせいだよ」
「気のせいだぜ」

そのまま新聞を挟んで向かい側に祟り神がとすりと座る
庭のほうでは何か歯軋りのような音が聞こえてくるが、勿論聞こえないフリだ

「リリーは夏の半ばまでには大人になるからね、子供用の新春Cは夏が始まる頃には全て終わっちまうのさ」
「なるほど、さすが魅魔様」
「ならどうしてレイリーは大人にならないのかしら?」

ふと、三人の目がレイリーへと注がれる

「・・・晩成型としか言えないね」
「まあ、気長に待とうぜ、いつか大人になるって」
「・・・・・・・・・・・・」

少し沈黙が場を支配した頃、ゆっくりと巫女が立ち上がり、レイリーの元へと歩み寄る

「レイリー」
「春?」

神妙な顔つきでレイリーを見、一呼吸、そして・・・

「今すぐ大人になるか、晩御飯になるか、選びなさい」
「春っ!?」
「お、落ち着け! せめてあと一週間は待ってやれ!」
「そうだよ霊夢! あんたの可愛いリリーじゃないか!」
「シャラーップ!! こっちは生活がかかってんのよ!!」

そしてそのまま場が修羅場へと突入しかけた瞬間

「春ーーーーーーーーー!!!!」

叫び声と共に、レイリーの体から目が眩むほどの閃光が発せられ
その光は一里先のリグルの心に一生消えないほどの敗北感と絶望感を刻み込んだりした

「目がー! 目がぁぁぁぁぁぁ!」
「ムスカーーーー!!」
「バーーールーーーースーーーーーーー!!!」

あと至近距離で太陽拳をうけた三人は網膜を火傷したりした





「陰陽玉ね」
「陰陽玉だな」
「間違いなく陰陽玉だね」

閃光の後、何とか失明の危機を乗り越えた三人の前には
でーんという効果音と共にでっかい陰陽玉があったとさ

「繭だね」
「繭だな」
「真由って誰?」

ペシペシーン!「アイタッ」

「まあ良かったじゃないか、明後日の夜かその翌日の朝には大人になってるだろうよ」
「後はコンテストさえ勝てば慧音米までもう少し・・・・・・危ない霊夢!」
「えっ!?」

何かに気づいた魔理沙が霊夢を押し倒した瞬間
風切り音と共に、何か銀色の物体が彼女らの真横を掠めていった

「な、なんだ今のは・・・?」

バタッ!

「魅魔!?」
「魅魔様!?」

謎の飛来物に虚を突かれていたそのとき
目の前に座っていた魅魔が力なく床へと倒れる

「これは・・・」

ふと見れば、魅魔の額にぶすりと刺さった巨大な投擲用ナイフ
よくよく見ると、そのナイフの柄には手紙がくくりつけられてあった

「・・・矢文?」
「投刃文」

魔理沙の些細なボケにしっかりツッコミをいれながら、恐る恐る括り付けられた手紙を取り外す
でもナイフを頭から抜いてあげないのは少女のたしなみ


   招待状 博麗 霊夢 ブリーダー 様

    リリーのご成長、まことにおめでとうございます
    この度、博麗 霊夢ブリーダーのレイリーのご成長を祝いまして
    紅魔館にて博麗杯をお開き・・えーと、あーもう、めんどくさいわ
    とりあえず記念という名目でコンテストを開くから来て頂戴
    勿論賞品としてあなたの欲しがっていた慧音米を大量に用意したから
    来るわよね? 来ないと布団の中でバットレディスクランブルよ?
    では、三日後の夜、紅魔館特設会場であなたを待っているわ。

                     愛しのレミリア・スカーレットより


「・・・・・・あいつめ、咲夜に見張らせてやがったな」
「慧音米、慧音米、慧音米・・・うふふふふふふふ」
「れ、霊夢?」





そして場面は急転直下、いきなり三日後の紅魔館特設会場控え室へと移る





コン!コン!

控え室にノックの音が響き、がちゃりと扉が開く



「霊夢、準備はいいか? いよいよだぜ」
「そうね・・・レミリアが何を企んでるはわからないけど、もはや何が来ても大丈夫よ」

霊夢は椅子に座って俯いたまま、自信たっぷりの言葉を返した

「うーん・・・結局昼間はレイリーに何をしてたんだ?」

今日の昼ごろ、魔理沙は大人になったレイリーを確かめようと博麗神社へ足を運んだのだが
その周辺一帯に渡って強固な結界が張られており、結局見るどころか近づく事すら叶わなかった

「色々と仕込んでたのよ・・・色々とね・・・ふふふふ」
「・・・・・・・・・・・・!」

ぞくりと魔理沙の背中に冷たいものが走る
目の前に居るのは霊夢であって霊夢ではない、慧音米はここまで人を変えてしまうものなのか
それとも、貧困という追い詰められた状況が彼女を変えたのか・・・

「じゃ、じゃあ私は観客席で見守ってるぜ」
「・・・・・・魔理沙」
「!」

振り返って扉に手をかけた瞬間、霊夢の呼び声で全身が金縛りにあったように動けなくなる

「時間が無かったからまだレイリーの特技を誰にも試してないのよ、だから・・・ね」
「・・・う・・・ああ・・・」
「まあ、特技と呼べるかどうかわからないけど・・・出なさい、レイリー」

キィィ・・・と、控え室にリリー用の箱が開く音が響く
そしてその中から出てきた何かは、ゆっくりと魔理沙の元へと歩いてゆく

「あ・・・ああ・・・」

魔理沙はドアノブに手をかけ、すぐにでも部屋を飛び出すことが出来たはずだった
だが、恐怖という誘惑に勝つことは出来なかった



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





コン!コン!

「霊夢さーん、お時間です! そろそろ会場の方へどうぞ!」

扉を開けて入ってきたメイドに案内され、会場へと赴く霊夢
もしその時、メイドがロッカーから微かに流れ出る赤い血に気づけば
これから起きる大惨事は、恐らく防げていたかもしれない・・・。















『レディーース! アーーーンド! レディイイイイイス!!』

スポットライトに照らされた中、今日も元気に妖夢が叫ぶ

『会場の皆様、お待たせいたしました・・・これよりB級コンテスト、博麗杯を開催いたします!!』

観客が立ち上がり、爆音のようにも聞こえる大歓声が会場を揺らす

『それでは、先に審査員の方々からご紹介させていただきます』

カッカッカッ! と色とりどりのライトが審査員席にあてられる

『S級審査員 レミリア・スカーレット様』
「(ククク・・・この八百長で霊夢に恩を売れば・・・晴れて私とゴールイン!)」

『S級審査員 八雲 紫様』
「霊夢が育てたリリー・・・興味あるわぁ(ジュルリ)」

『S級審査員 魅魔様』
「ナイフ刺された上に審査員までやらされるたーねえ・・・」

『以上の変態三名です』
「「「ゴラァ!!」」」

審査員席にずらっと揃ったS級の審査員達
本来なら四天王戦でしか揃う事の無い超豪華っぷりが
このただのB級コンテストの熱気をさらに盛り上げていく

『それでは、選手紹介です』


『西 D級ブリーダー「素敵な巫女」博麗霊夢!』

西側の巨大な扉がゆっくりと開き、紅白の衣装がライトに照らされる
誰が作ったか知らないテーマ曲に乗りながら大歓声の中ステージの中央へと進んでいく
その表情には一切の変化がなく、ただその目は前を見据えるだけ


『東 B級ブリーダー「人形調教師」アリス・マーガトロイド!』
「・・・・・・なんですって?!」

満員の観客の声援に包まれながら、お供の人形を引きつれて人形遣いが姿を現した
ただ一人、彼女の出現を望まぬ悪魔嬢の鋭い眼光を受けながら

そして、審査員席の前に二人のブリーダーが並び立った


「どうして・・・あなたが招待されているのかしら?」

魔力を帯びた声とより一層鋭さを増した紅い眼光が人形遣いを射抜く

「さて、なんでかしら? でも招待状はここにあるわよ・・・しっかりとねウフフフフフ」
「くっ・・・(咲夜は一体何をしていたの!?)」


その頃咲夜さんは――

「ふ、ふふふ、ファーッファッファッファ!! この手触り! このフィット感! このボリューム!
 これが・・・これが魔界の胸パッド! 笑いが! 止まらない! ファーファファファファファ!!」

なぜこうなったか経緯は説明するまでも無かった


「ふふ・・・私の愛を踏みにじったあなたが悪いのよ・・・霊夢!」
「あーはいはいそーですかそーですか」
「(わ、私と霊夢のウェディングチャペル合体計画がぁぁ・・・!!)」

こうして三者三様の思いを描きながら、戦いの幕が開けた


『では、博麗霊夢選手のリリーの審査を始めます』

途端、会場が暗闇に包まれて誰もいないステージだけがライトに包まれる
ゆっくりと床がせりあがり、可愛くデコレーションされた箱が観客達の前へ・・・

「霊夢、あなたを信じてるわ」
「博麗の巫女が育てたリリー・・・どんなものかしら」
「いい加減、ナイフは抜いてもいいかい?」

キィィ・・・・・・パタン





『な、なんだってーーーーーーー!?』





審査員達の驚嘆の声が上がる、観客がとんでもない現実にわが目を疑う
箱の中から現れたのは・・・紅白の衣装に腋出しルック、黒い髪に紅いリボン!

「これが、私のリリー・・・リリーハクレイよ!」


 リリーハクレイ 属性「博麗」 ☆☆☆☆☆
 発見者 博麗 霊夢
 貧困の力を受けて、楽園の巫女がリリーに舞い降りた!
 腋は勿論丸出しだぁ! ついでに胸も貧乳だぁ!


「馬鹿なっ! リリーブリーダーになりたての霊夢が! それも初めてのリリーで新種を発見するなんてぇ!」
「いやぁぁぁ! 霊夢が二人っ!! どっちか私に頂戴ぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「というか、もう霊夢の勝利でいいんじゃないかい?」

「「・・・・・・そうね!」」
「待ちなさいよコラァ!!」

~少女抗議中~

「あー、じゃ、ぱっぱと特技とかの方行っちゃって」
「(変態悪魔め・・・私がここに出場するまでにどれだけの苦労をしたと思ってるのよ・・・!)」

ちなみに魔界ではアリスの胸パッド疑惑が拡大中だ

「特技・・・ね、えー、巫女の衣装を着る際の一つの特徴として・・・」
「(どうせ霊夢の勝利は確定・・・・・・)」

ふとその時、悪魔の直感が脳髄を駆け巡った
ヤバイ! と

「下着をつけないというのがありまして・・・」

と言うと同時に霊夢の手がレイリーの上着へとかかる
それを見たレミリアがすぐさま立ち上がり号令をかけた!

「総員!! 対ショック体勢を取れええええええええええええええ!!」



 脱ぎっ



ズキュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!!!

「ツインミサイルゥゥゥゥゥ!!!」
「・・・・・・ああ・・・なんて・・・・・・綺麗・・・・・・」
「紫?! 逝くな! 逝っちゃ駄目だ!! 紫ぃぃぃぃぃぃ!!」

幻想郷の隙間に潜む大妖、八雲紫、彼女の目には一体どのように映ったのだろうか
今それを知る術はどこにも無い、彼女の心は天国へと召されたのだから

「起きろ! 起きるんだ紫! 起きろぉぉぉぉ!!」
「そんな、紫・・・誓ったじゃないか・・・私とレミリアとお前とで・・・共に博麗神社を見守っていこうって!」

二人の必死の呼びかけでも何の反応も帰ってくることは無い
ただ背もたれに体を預け、満面の笑みで天を仰ぐ、美しき一人の女がそこにいた・・・

「くっ・・・妖夢! 状況を報告しろ!」
『は・・・はい、観客損傷率・・・100%オーバー・・・ゴフッ!』
「一撃で全滅・・・化け物め! 妖夢、しっかりと意識を保つんだ! 呑まれるんじゃないよ!」

すでにボロボロとなった心身に力を込め、再度立ち上がる戦士達
だが巫女の攻撃はそこで終わったわけではなかった

「あー、だから・・・勿論下の方も」
「なっ・・・! 時間差攻撃だとっ!?」
「間に合うか!? AR(アンチ霊夢)フィールド展開っ!!」


「はいてません」



 ぴらりっ










SMAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAASH!!!!!!

「コスモオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「そ、そんな・・・フィールドが・・・侵食される! うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

その圧倒的な破壊力の前に、レミリアの体が宙を舞いフェンスへと叩きつけられる
誰も見てはいけない破壊の光、見たものを狂わす魔性の光

「・・・わが人生に・・・・・・一片の・・・悔い無し・・・」

そしてまた一人、その意思が天へと召された
久遠の夢に運命を任せる精神、魅魔
彼女の目から生気は失われ、その鼻からは紅き水が垂れ落ちる
そして、ドサリ・・・と力なく机上へ崩れ堕ち、魔光に映える緑の髪も、夜に溶け込む青き服も、紅に消えた



「・・・・・・ふう、こんなものね」

紅魔館特設会場、その観客席からあふれ出した紅き水が会場を染めて湖となる
膝元まで到達した紅き水を見て、彼女は全てが終わった事を確信し、ステージへ背を向ける

「まだよ・・・!」
「・・・レミリア?」

だが、会場に満ちた紅き水の中から、一人の悪魔が立ち上がった

「危なかったわ、わざと吹き飛ばされて衝撃を受け流さなかったら・・・私と言えども・・・!」
「そう、だけど・・・そのまま寝ていれば・・・逝かなくてすんだのに」
「霊夢・・・?」

霊夢は表情を一切変えずに、御祓い棒をレミリアへと向けた

「行きなさいレイリー、あなたの必殺技で・・・とどめよ」
「仰せの春に」
「一体・・・何を!」

赤き水の上を、すべるようにレミリアへと近づいてゆくレイリー
そしてレミリアの前でぱしゃりと降り立ち、その目を見つめる

「行きます春」
「あ・・・いや・・・やめて! 私の体は霊夢だけの・・・んむっ!?」

自らの唇で恐怖に喘ぐ悪魔の口を塞ぐ
右腕は背中へ回され、その左腕は腰へと、そして・・・・・・





「猫がワンダフルでハイブリッドオブスパシーボ on the 助けて咲夜ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」





その頃咲夜さんは――

「ああ、凄い、凄いわ・・・これなら美鈴にも、永遠亭の薬師にも、三途の川の案内人にすら負けない!」

何か妙な自信をつけていた





「紫・・・魅魔・・・・・・私も・・・共に・・・・・・」

紅の悪魔の体が崩れ落ちる
その体は糸の切れた人形のように、力なく紅き水の中へと沈んでいった
その顔には心の底からの微笑を浮かべながら・・・



会場に、ただ立ち尽くす巫女とリリー、だが、まだ立ち上がる者がいた

『この戦いが終わるまで・・・! 私は・・・倒れないっ!』

全てのコンテストを取り仕切り、全てのコンテストの進行を務める、魂魄妖夢
彼女がここに立っているのは、決して一人の力ではない
二百数十年前より、延々と戦い続けてきた彼女の祖父、魂魄妖忌
絶対的な存在としてあり続けた彼の仕事を受け継いだという誇りが、彼女を支えていた

『続きまして・・・ゴホッ・・・はぁはぁ・・・アリス・マーガトロイド選手の・・・リリーの審査を・・・始めます』

そしてもう一人、倒れずに立ち続ける者
霊夢と対峙する位置に立つ、七色の魔法使い

『アリス・・・さん?』

だが、彼女は動かなかった・・・目を閉じ、笑みを浮かべ、血を流しながら・・・彼女は立っていた

『し・・・死んでる・・・!』

妖夢は悟った、もう決着はついていたのだと、もう自分のやるべき事は終わったのだと
全ての役目を果たした彼女も、満面の笑みと共に紅き水の中へと消えていった

























「それじゃ、霊夢のB級への昇格を祝ってー!」
『カンパーーーーイ!!」

後に紅の湖事件と呼ばれる大惨事から約三時間後
やはり博麗神社では人、妖怪入り混じりの大宴会が開かれていた

「慧音米~慧音米~300kg~♪」
「お米春~♪」
「凄い・・・霊夢があんなに幸せそうな顔してるのはじめて見たよ」
「まったくだぜ」

米俵の山に頬擦りする霊夢とレイリーを肴に、萃香と魔理沙が酒を一杯

「まったく・・・コンテストを開くのは構いませんが、鼻血塗れの生霊の群れが
 毎度毎度無縁塚へと押し寄せてくるのはどうにかならないんですかっ!!」
「んもー、相変わらず閻魔様は五月蝿いわね~、霊夢が悪いのよ? あんなに可愛いリリーを育てるから~」
「そうそう、しっかし参ったねえ、もう死んでるのにまた死ぬかと思ったよ」

こちらでは閻魔と隙間と幽霊が愚痴りあい

「霊夢・・・私、あなたに一生ついていくわ・・・見てて、お母様!」
「師匠、私は最後までやり遂げましたーーー!!」
「ファーファファファ! ファーッファッファッファッファッファ!!」

またその反対側では夏なのに春満開狂い咲き絶好調
結局はまたこのどんちゃん騒ぎで幸せ満開な神社の夜は更けていくのだった・・・。










「咲夜、随分と楽しそうね?」
「ファッ!?」


極一部を除いては、だが
おかしいな・・・確か75%程度まで書き上げた時は
感動のラストの予定だったのに・・・慧音米ウマー

そういえばようやくコーリン堂通販でリリーの卵をゲットしました
ああ、緑色の鱗とかぎょろりとした目とか可愛いなぁ・・・



どうみてもワニリリーでしたけど
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.4780簡易評価
2.100サブ削除
すげえぇぇ!この展開最高だ!後半とか噴きに噴きまくりました!

ちょwwwワニリリーwww

5.80名前が無い程度の能力削除
なにこの素敵空間
7.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい!!すばらしすぎる!!
前作を遙かに超える展開は読む者を圧倒せんばかりです。
もし、氏が続編を書かれるなら楽しみに待っています。
9.90名前が無い程度の能力削除
なにこれ、超好き。(*´Д`)
13.100名前を喰われた人削除
スパシーボ!!!!!!(何か色々吹き上げながら)
あんた凄すぎステキ杉だよ~!!
もうね読んだ初っ端から色々噴出しまくったわイ!
これからも色々ブッ壊しまくってくれぃ!(ホドホドニナー
頼むぜ?マスター?(ニヤリ
14.90名前が無い程度の能力削除
格上……あの十字キーを応用したアレか
18.100nanasi削除
…あほくさい…あほくさすぎて大好きです
19.100Flyer削除
香霖堂の電話番号を教えてください。
俺も注文します。
21.90通りすがりA削除
うちで育てたら何に染まるだろう


判ったヲt(弾幕の嵐
22.100名前が無い程度の能力削除
私も…一片の…悔いなし!…(ガク!
25.100通りすがりですが削除
このはっちゃけ振りに感動を禁じえません。
リリーかぁいいよかぁいいよリリー!!
29.100名前が無い程度の能力削除
いただき春
仰せの春に
なんだ、この造語!?w
34.90名前が無い程度の能力削除
咲夜さんがエクスデスにしか見えねぇw
36.100名前が無い程度の能力削除
な、なんて春だ…ッ!

パァァァ(天に召される
40.100CCCC削除
四天王…リアクションもS級だぜ……!!
て言うか俺もリリー欲しいですアニキッッ!!幻想卿にはどうやって行けば!!??
41.100名前が無い程度の能力削除
慧音米ウマーw
43.100名前は忘れた削除
ピンポーン スキマ運送ですー。
あ、はいー。えーと領収書は秘封倶楽部あてで。
バタン ガチャ

ねんがんのリリーのたまごをてにいれたz(ドゴーン

(その後、彼の姿を見たものはない
49.80名前が以下略削除
なんだこれ。
すごい好き。
50.70変身D削除
咲夜さん……(涙
それは置いといて、この後霊夢が何処まで成り上がれるか興味が有り過ぎです(w
次回はいよいよ美鈴vs霊夢
55.100名前が無い程度の能力削除
やべえ、何がやべえって主に全部が。
どこを取ってもツッコミどこロマンサイダー
62.100名前が無い程度の能力削除
おおぅ、こいつはパーフェクトだぜ!
ああもうキャラの壊れっぷりが素晴らしすぎるwww
63.100削除
これは・・・いいものだ。
74.100名前が無い程度の能力削除
>うちで育てたら何に染まるだろう
>
>
>判ったヲt(弾幕の嵐
うちはきっと色々と目も当てられないリリー・・・
そう、「エリート」ができるに違いない!
(成分:ニー○30%・エ○ゲー60%・ぺたんk(幻想の洗濯板同盟による概念武装ペタンk(終わってしまえ
75.100煌庫削除
なんかもう、染まった。うん、色々なものに
78.90あふぅぁ削除
幻想と空想の混ぜ人さんの想像力に乾杯。
作者さん自身書いてる時、楽しかったんじゃないですかー?
79.100名前が無い程度の能力削除
魔界のパッド技術力は世界一ィィィ
94.90名前なんか無い程度の能力削除
>『以上の変態三名です』
>「「「ゴラァ!!」」」
噴いたwww
102.90名前が無い程度の能力削除
後半のノリがすごすぎるwwwww
たっぷりと笑わせてもらいましたw
105.100名前が無い程度の能力削除
>>猫がワンダフルでハイブリッドオブスパシーボ on the 助けて咲夜ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
その前も吹かされっぱなしだったがここで最大にフイタ
自分の中では創想話屈指の迷言に認定!
133.90名前が無い程度の能力削除
ファッ!?うーん・・・