Coolier - 新生・東方創想話

Keine Kamishirasawa & Mokou Huziwara -不器用な手で紡がれた、優しい“歴史”に想いを馳せて-

2006/03/08 04:05:30
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姿見の前に立ち、自分の姿を眺める。

仄かに輝く、銀の髪。

理性と知識を宿した瞳。

一糸纏わぬ体には、ただ一つの染みも無く。

初雪のような白い肌の下、流れる命の紅が瑞々しい輝きを添える。


されど。
鏡に映る姿は虚。
その実は、人と妖の狭間を移ろう半獣。

人であり妖であり――そのどちらでもない私。
果たして、この身は何処このように生れ落ちたのか。
万物に通暁する筈の歴史は黙して語らず。

そして。
……私は――


そこでふと我に返り、苦笑する。
姿見の前、裸で考えるような事ではない。
一度思考に耽ってしまうと、つい深く考え込むのは私の悪癖だ。



衣装棚へと手を伸ばす。


肌を滑る、ひんやりとした感触。
いつもの帽子を頭に載せて、もう一度眺めた姿見。

きゅっと締まった腰に膨らんだ両袖。
ふんだんに生地を使い、柔らかく広がったロングスカート。
デザインとしては多少古いが、あまり女性らしさ無い私でも、これに袖を通せば少しはそれらしく見える。
お気に入りの、いつものドレス。


ただし。

その、色は――黒。




「……よし」




帽子の位置を整えて。

荷物を片手、靴を揃え――玄関の戸に、手を掛ける。


肌が引き締まるような寒気。

一度だけ、家の方を振り返って。



鉛色の空の下を、私は真っ直ぐに歩き始めた――









人妖弾幕幻夜 東方永夜抄 ~ Imperishable Night.

Keine Kamishirasawa & Mokou Huziwara -不器用な手で紡がれた、優しい“歴史”に想いを馳せて-








春はゆっくりと近づいてきていた。

身を切るような寒さは薄れ、降り積もる雪も減ってきている。
まだ幻想郷を覆う雪は厚く、一面に銀世界は広がっているけれど。
ふと頭上を見上げれば、枝先を伸ばして雪を背負った桜の木にも幾つかの蕾。
硬い皮に包まって春を待つ姿は、まるで明日の遠足を心待ちにする布団の中の子供達のようで。

春の足音が聞こえてくるような微笑ましい光景の中を歩く。
手に握っているのは、山の中で生っていたずっしり重い林檎の実。
幻想郷の厳しい寒さに旬がずれたらしく、食べ頃の状態だったものを一つ拝借したのだ。
仄かに香る甘い香りに誘われ歯を突き立てれば、広がる至福に頬が緩む。

美味しい。
ちょっとした運動の後だったから、尚更甘みが嬉しく感じる。
生きる事に食べ物を必要としなくなってから随分と経ったけれど。
食べ物を『美味しい』と感じる事が嬉しいのは、あの頃から何も変わらない。


ふと視線を、横手へと向ける。
真っ白雪の中に咲いた、小さな小さな紅い花。
けれど、目を凝らしてよく見てみれば――それは花なんかじゃなく。
雪の上に垂れ落ちた血が、まるで花の様に鮮やかに眼に写ったということ。

左腕の骨を貫き、深々と突き刺さった一本の氷杭。
血はその氷杭を伝って垂れ落ち、生きている証とばかりに銀世界へと花を咲かせる。
つい先刻まで氷精とやりあっていたのだけれど――確かその時、一本突き刺さったのをそのままにしていたっけ。
なまじ痛覚に危機感が伴わないものだから、負ってしまった傷には寛容的というか、鈍くなりがちなのが悪い癖だと思う。

私は命を狙われている。
……言葉に悲壮感が漂わないから今ひとつ説得力に欠けるけれど。
幻想郷の人妖達は、とある女の依頼を受けて――丁度いい退屈凌ぎに私の命を狙いに来る。
その刺客達を、ぐうの音も出ないほど叩いてのめし、四折りにしてから熨斗をつけて返すのが私の日常。

刺客達を差し向ける元凶を叩いてしまえば、死に脅かされる日常から解放されると思うかもしれない。
けれど、この一件に関してだけは話は全く違ってくる。
何故なら、私も――私の命を狙う女も。


『死』を、忘れてしまったから。


音も無く、左腕を炎が包む。
伴うべき肉の焦げる悪臭はそこに漂わず、炎は杭だけを溶かして。
炎の中で癒える傷口――時間にして数秒と経たず、綺麗に塞がった左腕。
雪に咲いた紅い花の存在だけが、ただ先刻までの痛みを現実のものであったと訴えている。


色素の薄い髪。
箸より重いものなど持った事の無いような、華奢な手足。
一見、ただの少女にしか見えないこの体は――『死』を忘れてしまっている。
傷を負えば痛みを感じ、何も食べなければ空腹を感じても。
その感覚に伴うはずの『死の危険』が私には欠落している。

世界の輪廻の輪から外れて、自身の内にそれを秘めた不老不死の具現『蓬莱人』。
それが私を示す言葉で――同時に、相憎むあの女を示す言葉。

蓬莱山 輝夜。
私に刺客を差し向ける女の名前であり、互いに互いを殺したくて仕方の無い相手。
けれど、彼女の右腕的存在の永琳を含めて――私達の関係には『死』という終焉が無い。

縁〈えにし〉は色褪せる事も無く、永遠に。

幻想郷の少女達が、『弾幕ごっこ』という遊びに興じるように。
死という危機を失った私達にとっては、命の奪い合いでさえ――遊びの一つでしかないのかも知れない。


……と。
そこで私は頭を振って、不毛な思考を頭から追いやる。
輝夜との因縁に思考を巡らせる事より、想いを馳せることは他にある。

冬空の下、私の目の前に真っ直ぐ伸びるこの道は。
一時間も歩き続ければ、やがて人の集落へ至る。
人を止めた私にとって、人の生活には何の関心も無いのだけれど。

そこには、永遠を生きる私がわざわざ足を運ぶだけの――『理由』が。
もう随分と付き合いも長い、一人の古い友人がいる。

つい先刻、刺客に襲われたのは僥倖だったかもしれない。
輝夜が刺客を差し向けるのは定期的だから、暫くの間は襲われる心配は無いだろう。
私自身はどんな相手だろうと返り討ちにするだけだから構わないが、人の集落で殺し合いなどすれば『彼女』が悲しむ。
私は、彼女に悲しい思いをさせるために会いに行くわけじゃないから。

人でも妖でも無いというのに、自ら人を護ろうとする変わり者。
不老不死の私にさえ、気を配り心を配ろうとする筋金っぷり。
そのくせ、自分の事は棚に上げるんだから……たまに会いにいって、ガス抜きをしてやらないと。
そう考えると、彼女に会いに行くまでのこの道程さえも楽しいものに思えてくる。

最初に姿を見かけたら、何と声をかけてみよう?
そんな事を考えながら歩く、冬と春の境界。
そう遠くない先へと想いを馳せ、上機嫌な私は鼻歌など歌っ――




「随分と、機嫌がよさそうだな」




……心臓が。
口から、飛び出るかと思った。

危うく出掛かった悲鳴を呑み込み、私は目の前に向き直る。
不老不死の蓬莱人をショックで殺しかけるなんていう偉業を達したその声は。
あと一時間は聞くことも無いと思っていた――『彼女』の、ものだったから。

「久しぶりだな、妹紅。元気そうで何よりだ」

歴史と知識の半獣、上白沢 慧音。
私が集落に足を向けた理由であり、掛替えのない古い友人。
彼女の姿を見た瞬間、思わず頬は緩み、自然と笑顔が浮かんでいる。
現金な事だなと心の中で苦笑しながらも、悪い気分じゃなかった。

「集落へ向かう途中か?」
「まあ、そんなとこね――久々に慧音の顔、見たくなったから」
「嬉しい事を言ってくれる」
「あら、これでも結構本音だけど?」

鎖もしがらみも無く、風光明媚な幻想郷をあてもなく渡り歩く。
そんな今の生活に不満は無いけど、たまには私も、こうして誰かと言葉遊びに興じてみたい時もある。
確かに私の体は、他の何者にも依存せずとも生き続けられる――けれど、心は違ってくる。
特に、時を経れば経る程に見知った知人が減っていくことになる私にしてみれば。
白沢を半身に持つためか、長い寿命を誇る慧音は――過去を懐かしみ杯を酌み交わせる、唯一の相手。

時折、ふらりと訪れては――数日間、慧音の家に厄介になりながら緩やかに時間を過ごす。
そんな事をするようになってからも相当に長い私達だけれど。

何故だか今日は、その様子が違っていた。

「ふむ……ということは妹紅、今日は他に何か予定があるわけではないのだな?」
「え? え、ええ……まあ、そういう事になるけど」

慧音の言葉に素直に答えながらも、改まってそんな事を聞くなんて初めての事。
一体どうしたのだろうと思った時――私はようやく、普段と今の彼女の『違い』に気付く。


「……喪服……?」


ふわりと膨らんだスカートは普段着ているものと似通っているけれど、良く見れば細部のデザインは幾分か控えめに。
そしてその色は、ただ一点の曇りも無い、夜闇の様な黒。
慧音のこの格好――喪服姿そのものは、今までにも何度か見たことがある。
集落に住まう人間達と交流の親しい彼女は、冠婚葬祭の度、通える限りは積極的に足を運ぶ。
それは『葬』も例外ではなく――実際、以前に彼女と出会った時も葬儀の真っ只中だった。

だから、慧音が喪服に袖を通す事自体はそう珍しい事じゃない。
けれど今、目の前に立っている彼女に感じる――妙な違和感が、心に引っかかって。
その違和感の正体に気付くまでは、そう時間を必要とはしなかった。

「何で……そんな格好で、こっちに歩いてきてたの?」

幻想郷の外と違い、ここでの人間の絶対数は妖怪よりも少ないため、集落自体がそう大きなものではない。
だから歩いて一時間とはいえ――今私達がいる場所に、弔問すべき人家は一軒も無いのである。
人里から離れて暮らす変わり者もいないわけじゃないけれど、妖怪達の生活圏が近いこの方角にいない事だけは確か。

集落の只中ならともかく、こんな姿の慧音と――こんな場所で出会う事は『ありえない』。

その疑問を、私は表情の下に隠そうとはしなかった。
だからはっきりと伝わった疑問符に、慧音は私の瞳を見つめ返すと。

「ここで出会う事が出来たのも……意味の有る事なのかもしれない」
「え……?」

久しぶりに見た、慧音の瞳。
沈着で深い瞳の奥にあったのは。

「私も妹紅に用があった。急いていたわけではなかったが……出会えたのなら丁度いい」

長い付き合いの中でも、滅多に見たことが無いほど――真摯な決意と、意思の輝き。


「来て欲しい場所がある。……出来れば、付き合ってくれないか?」









まさか。
こんなにも早く、妹紅と出会う事になるとは想定していなかった。
けれど結果的に考えれば、早すぎた邂逅は逆に助かったのかもしれない。

出会うのが、もっと遅かったなら。
私を突き動かすこの決意も、揺らいでしまっていたかもしれないから。


踏みしめた雪のくぐもった音。
感覚が、普段よりも短い――逸る気持ちに足が急いてしまっている。
あまり良くない傾向だと判ってはいるのだが、衝動にも似た深い箇所の感情は、なかなかに制御する事が難――

「…………音……慧音!」

その声にはっと我に返る。
か細く、そして何故か遠い――必死に絞った掠れ声。
慌てて振り返ってみれば、晴れ間の見えた寒空から注ぐ光を鏡のように反射する銀世界の中。
へばった体を両膝で支え、肩で息をしながら――遥か後方、一人佇んでいる妹紅の姿があった。


「ちょ……足、速……す、ぎ……!!」

息も絶え絶え、焦点もどこかおぼろげで一点に定まらない。
積もった雪に服が濡れる事も厭わず、手近にあった岩の上にどっかと腰を下ろし、喘ぐ呼気を整える。
差し出した水筒は、まるで親の仇のようにひったくるなり、一気にその中身を口に含んで暫くの後――

「……ぷぁ……っ!! い、生き返った……」
「いくらなんでも、それは大げさすぎると思うのだが……」
「そんな事ない。死なないはずの私が、危うく彼岸を見ることになりそうだったんだから」

ぶすっと口を尖らせながら、こちらを半眼で睨む妹紅。
対応にそれだけの余裕があるのなら、そう深刻な事態ではないと判断する。
それに私自身、気の急いた今はあまり健全な精神状態ともいえないだろう――
休息を取るには丁度いい機会と、拗ねる彼女をなだめるための言葉を私は捜し始めた。




「にしても……本当、苦も無くすいすいと歩いていくわよね……これだけ視界も足場も悪いのに。
 しかもあれだけ歩き詰めて息一つ乱さないし。ここまで活動的だったなんて知らなかったわよ……」
「まあ、この道は随分と歩きなれているし……もともと、昔は山に住んでいたからな。
 この体自体も幸い、多少は見た目より頑丈に出来ているし……」
「そうねぇ。この体のどこから、あんな力が出てくるのやら……ねぇ?」

人はおろか、妖の気配すらない山の空気は静寂で――肌を引き締めるように冷たい。
その空気を貫いた妹紅の視線は、そのまま私の体の上を這い上がるようにして上っていく。
その中には、若干の羨望の刺々しさが混じっているように思うのは……気のせいではないのだろうが……。
確かにその気持ちも判らないわけではないし、私自身もこの体は嫌っていない。
だが、これはこれで苦労も多いのだ……特に辛いのが、慢性的に悩まされる肩凝りなのだが。
……何故かその事を口にしたが最後――血を見る事態になると歴史が告げているため、ここは黙秘を選択しておく。

「永遠に老いも死も無いっていうのも、なってみると案外不便ね……」

まるで箸より重いものなど持った事の無いような自身の掌を眺め、妹紅は嘆くように呟く。
日の光など浴びた事も無い白い肌、僅かに力を加えるだけでぽきりと折れてしまいそうな細腕。
漂わせる雰囲気から普段はあまり意識しないが、妹紅の体は繊細な硝子細工を思わせるほど華奢なもの。
そして、私などとは違い――蓬莱人となった肉体の素体が人間であった妹紅の基礎体力は、その外見を忠実に反映している。

蓬莱の薬が齎す恩恵の一つ、不老。
それは言い換えれば、時間の経過に伴うべき器の『成長』の一切を、肉体側が拒絶するということでもある。
逞しく鍛え上げた肉体の持ち主であれば、最高の状態を崩す事の無い事実に喜べたのかもしれないが――
同世代の少女のそれと比較しても細々とした妹紅の体の様な場合、その特性が裏目に出ている。
いくら時を重ね、鍛錬を積み重ねて肉体に反映しようと願っても――鍛えることが出来ないのだ。

それでも、普段の刺客との応酬で――妖怪を相手にしても、そう簡単に遅れを取らないのは。
蓬莱の薬で副次的に開花した、人を超える異能もさることながら――
限られた力を効率よく扱う、後天的な戦闘技能に惜しみの無い研鑽を重ねてきたためだ。
山登りなどのような純粋に持久力を問われる分野は、ある程度は誤魔化せても自ずと限界が訪れる。

その事を知っていながら、失念し――急いた自身を、今更ながらに反省する。

「いいのよ、別にそんな事。それこそ――『命に関わる』わけでも無いんだから」

頭を下げた私に、妹紅は口元に手を当てて笑ってみせる。

「もう少し体を鍛えてれば良かったかなとは思うのは常だけどね。
 でも、そもそも、こんな活動的な生き方するなんて昔は思ってもみなかったわけだし。
 あの頃の私を知ってる人が今の私を見ても、きっと同一人物とは気付かないわよ? 凄かったんだから」

まるで、何でもない事のように言う妹紅だが。
現実には、当時は――決してそんな楽観的に捉えられるものではなかっただろう。

彼女の『妹紅』という名は、蓬莱人と化した後に彼女自らで名乗る様になったもの。
その名を名乗るより以前、彼女がまだ藤原家直系の者として在った時代。
帝の家系に密となることでその政治的な地位を独占しようと、数多くの女性達が権力者達に嫁いだ頃だ。
そんな時代に生れ落ちながら、彼女はその存在をどの史書にも書き記される事が無かった。
陽の当たる場所があれば、反面、影を刻まれる場所があるように――記されたことだけが歴史ではない。
存在を望まれず、日陰の者として名を記されなかった女性は……名を残したそれより、ずっと多い。

生れ落ちた時から、陽の当たる場所に立つことは許されず。
蓬莱の薬を舐め、人からも妖からも『弾かれた』器。
思えば、最初に出会った頃。
妹紅は、今の様な笑顔を浮かべることは決して無かった。

ただ。
それでも、今の彼女は笑っている。
例え過去に、その辛い記憶を背負い切る事が出来なかったのだとしても。
今、笑って語り草の一つにする事の出来る彼女は……『強い』。

どれほど弱く、儚く。
その双眸から血の涙を零すような、辛い記憶を胸に刻まれたとしても。
例えその時、打ちのめされ……膝を屈しても、やがては自分の足で立ち上がり。
その記憶、関わってきた人々の全てを己の糧へ変え、再び歩き始める。
最後には、こうして笑ってしまう事の出来る――人間らしい、心の強さ。

私では、こうはいかない。

ただ、他の妖怪と違って……私は人の心が惰弱なものである事と同時、とても強いものである事も知っている。
その強さが愛しく、憧れさえ感じ――そして救われた自分がいたからこそ。
私自身もまた、そう在りたいと願ってきた。

そんな私が、今の妹紅に――暖かく強い灯火を灯したのだと。
いつの日か彼女は、そう告げてくれた。


嬉しかった事が、今も忘れられない。


「……そろそろ、行こうか?」


静かに呟いた妹紅に、私の意識が現実へ引き戻される。
岩の上に座る彼女は既に顔色も戻り、呼吸の乱れも感じられない。
それに、あまりゆっくりしていては――今日中に集落へと戻れるか判らなくなる。

だから、私は黙って頷き。
妹紅の足音を背後に感じながら、再び山中を歩き始めた。

心にあった焦燥は、いつの間にか消え。


そこから先の私の歩みに、迷いが生じることは二度と無かった。








贔屓目に見ても『道』とは呼べない、僅かに開いた木々の合間。
幻想郷を歩き回って随分な年月を重ねた私でさえ、一度も踏み込んだ事の無いような場所。
それを、まるで自分の庭の様な軽やかな足取りですいすいと歩く慧音。
彼女の足を引っ張らないよう、雪の上に残った足跡を辿るようにして何とかその後を着いて行く。

真上から見下ろしていたはずの太陽も、頬杖をついたように傾いた光を投げかけて。
それでもまだ足を止めない慧音に、一体どこまで歩けばいいのか尋ねようと――見上げたその時。

ぎゅっと、掌を握り締める感触。
振り返った慧音の突然の行動に、誰何の声を上げるより早く。
見た目よりずっと力強い腕が――私をぐい、と引っ張って。

そして彼女に導かれるまま、勢いで数歩よろめいた次の瞬間。

細かい針で肌を突くようだった、冬山の厳しい冷たさが――嘘のように、消え去っていた。

「……え……?」

変化はそれだけじゃなかった。
周囲の景色も、山の中である事には変わりない――けれど。
あれだけ降り積もっては、枝々に重く頭を垂れさせていた雪がどこにも見当たらない。

舞い散る紅葉は色鮮やかに、夕陽の輝きを受けて燃える。
澄み渡った空の高さ――肌をそっと撫でる風に、乾いた木々の香り。

見渡す限りの白銀の世界が、今はまるで――紅と黄金に、色鮮やかに燃えるかのよう――

「時節でいえば、十月の中旬から下旬というところだろう。そこで歴史を止めた。
 だからここには移ろうべき四季も、従うべき時の流れもない」
「ちょっ……慧音!?」
「大丈夫だ。結界で隔絶しているから、誰かに気付かれることはないぞ?」

ちょっとした悪戯に成功した様に微笑む姿に、思わず言葉を失う私。

「来て欲しかった場所は……もう、目と鼻の先だ」

そして、彩り鮮やかな秋の世界へと――彼女は足を踏み入れていく。
黄金の輝きの中へと消えてしまいそうな黒い背中を、慌てて追いかけながら。

彼女が纏う喪服の意味。
深山に知れず築かれた、閉ざされている秋の世界。
それを作り出した、慧音の真意――普段の彼女から考えられないほどの大規模な歴史改変。

全ての疑問の答えはきっと、彼女が私を連れていこうとする――その場所に。

惜しみなく投げかけられた斜陽、二色に切り裂かれた世界。
茂みを掻き分け、木々の合間を抜け――道なき道を進む。
踏んだ枯れ枝は乾いた音を立て、初めての来訪者を世界の最奥へと誘って。


やがて視界が開けた時――歴史に閉ざされた世界の奥で、私が目にした光景。


見渡す限りに広がる黄金。
世界の果てまで続くような広大なすすきの原。
斜陽を浴びて輝きながら、風を受けて泰然と揺らぐ様は――まるで大海原のようで。


慧音が、私を連れてこようとした場所。
言葉を交わすこともなく――ここなのだと理解した。




「……そこまで驚いてくれると、紹介した甲斐もある」

言葉を失い立ち尽くした私に向って、慧音はふわりと笑顔を浮かべる。
彼女の長い銀髪も、目の前のすすきと同じように――夕陽を浴び、きらきらと輝いて。
綺麗だと思った。
たった二文字で表すことが、酷く拙い様に感じるほど。
目の前の光景も――そして、この光景を前にした慧音の姿も。

「……ここは……?」

光景に圧倒された衝撃が抜けきっていないのか、上手く言葉が出てこない。
呟いた言葉は掠れて、そのまますすき達の奏でる潮騒にも似たざわめきに呑み込まれていく。
けれど言葉が消されようとも、この心にある様々な疑問を消すことは出来そうに無かった。

辺り一帯の歴史を、思いのままに作り変えた慧音の真意。
目の前の光景が答えだとしても、自分のためだけにこんな事が出来る子じゃない。
それに――もし、ただこの光景を私と一緒に眺めるためだけに、ここを訪れたというのなら。

鴉の羽よりも真っ黒な、喪服を纏う必要は無い――

慧音は言葉じゃなく、行動でその疑問に応えた。
私に向けていた視線を、つい、と――目の前に広がる広大なすすきの原へ移したのだ。
釣られるような形となって私の視線も横手へと滑り、風に揺れるすすきの合間に何か立っている事に気付いた。
すすきの原へと踏み込んだ慧音を追いかけ、腰ほどの高さもあるすすきの穂を押し分けてそれに近付く。
近付いていくうちに、輪郭も段々と判る様になって――やがて目の前に相対した時。

そこにあったのは、一本の石柱。
黄金の世界と対極を為すような黒だというのに――調和を、為すのは。
帯びた光沢が滑らかで、優しいものだったからかもしれない。

その大きさ、その形――その雰囲気。
自然と浮かんだ感想が口をついて出た。

「お墓……?」

何処にも名前は刻まれていない。
土台も供物代も無く、ただ直方体の石柱が地面に突き刺さっているだけ。
それでも『墓』だと感じたのは、見下ろす慧音の瞳の奥に――故人を偲ぶ感情の輝きがあったからなのかもしれない。

「慧音……ひょっとしてこれ、自分で?」
「……ああ。本物と比べて、随分と拙いものだが……」
「そんなことないわよ。確かに作りは簡素なものだけど……。
 別にお墓の豪華さと、故人を偲ぶ気持ちは比例するわけじゃないでしょう?」

こういった事は形式に拘るより、気持ちの方が重要だと思う。
私が口にするには、ちょっと可愛らしすぎる言葉だけれど――慧音なら良く似合う。
その辺りが、変わり者だらけの幻想郷の中でも『変わり者』だと思わせる要因なんだけど。

「ま、死なない私が言ったところで説得力無いかもしれないけどね」
「そんな事は無いさ……ありがとう」

慧音は微笑みながら、首を横に振る。
身に纏う喪服の裾が、吹き抜ける風にふわりと――揺れて。


「ここにいる人間達も、同じように感じてくれていれば――嬉しいのだがな」


その時、何の前触れもなく――微風は殴りつけるような突風に変わった。
勢い良く薙ぎ払われた黄金の海に、遮られていた世界が明らかになる。

そうして、気付いた。
『墓』が―― 一つじゃなかったことに。

背の高いすすきの合間に隠れていた、石柱の行列。

等間隔に、地平の果てまで続くそれは――十や百では、桁が足りない。

「……今まで……沢山の人間達の最後を看取った。
 不思議なものだな……確かついこの間、私は彼らが生まれた瞬間に立ち会っていた筈だというのに」

死者達の眠る黄金の世界。
永遠に続くような黒の行列と、同じ色を纏った少女。

彼女にかける、言葉が。
何も――浮かばない。

「沢山の親族や知人に見送られ、天寿を全うする事が出来た者達は……最期も、眠るように安らかだったよ。
 死は避けられないものとはいえ、きっとあれならば幸せに最期を迎えられたのだと思う。
 皆が皆、そうした最期を迎えられればいいと思うが……なかなかそうは上手く行かない。
 誰にも看取られる事無く、ひっそりと息を引き取った者達も……私は沢山知っている。
 存在さえ忘れ去られてしまったかの様に死んだ彼らに、せめて、墓でも建ててやれないかと思ってな」

傍らの石柱へと、そっと手を伸ばす。
材料を調達したのも、磨き上げたのも彼女自身なんだろう。
名前が刻まれていなくても、どの柱が誰のものか――多分、全部判ってる。

「墓参りに来るものがいないのだとしても、寂しさを感じないように。
 景色の綺麗な場所に、どうせなら建ててやりたいと思った。
 おかげでここを見つけるまでで、随分と苦労したが――」

右手へ視線を滑らせる。
すすきの原は途中で途切れて、その先に広がるのは山下の景観。
山の頂上に近い場所であるために、見下ろした幻想郷の景色はなかなかに見ごたえがあった。
博麗の大結界まで見渡せそうな澄み渡る緋の秋空から、ゆっくりと山の麓へ視線を降ろしていく中――

「……あれって……人の集落?」
「ああ。だからこの場所に決めたんだ」

視線の先に広がる集落の様子は、私が知ってるものとは随分と違っていた。
今のものより、建物も雰囲気も随分と古い――結界を挟んで見ているからなんだろうか。

それでも、今もあの辺りに人間達の集落があることに変わりは無い。

「すすきも後から自分で植えた。こうすると、まるで夕陽に包み込まれているみたいだろう?」

先刻まで感じていた、言葉の喪失感はいつの間にか消えていた。
それはきっとこの場所が――『死』に付き纏う陰鬱なイメージが漂うはずの墓地が。
作り手がどんな人格なのか判ってしまうくらい、呆れるほど……優しい雰囲気に満ちていたから。
嬉しそうな様子とその心配りが、あまりに慧音らしく――微笑ましくて。
自然と唇に微笑を載せた時、秋の乾いた風がすすきの穂を揺らしていった。

「何というか……本当、慧音は優しいわね」
「そうだろうか?」
「そうよ。まあ、それと同じぐらい変人だとも思ってるけど」
「むぅ……そこまで身も蓋も無い言い方をするか?」
「充分よ。だってこれは、褒め言葉なんだから」

つくづく、思う。
幻想郷には一癖も二癖もある変わり者が多いけれど、慧音の様な変わり者がいてくれて本当に良かった。
人間にとって良かったことなのは間違いないけど――私にとっても、本当に。

人の汚点、弱さ……何度でも繰り返される過ちに、歴史。
全部知っているのに、そういった弱さに傷つけられたこともあるのだろうに。
それでも人を愛し、常に彼らの為に何か出来ないか考えている慧音。
彼女がいなかったなら、私はもっと『乾いて』しまっていただろう。

蓬莱の薬は、肉体に永遠を与えてくれるけれど。
魂魄を成す精神に、永遠の安定をもたらしてくれる事は無い。
感情も記憶といった、形の無いものは……時と共に、少しづつ磨耗していく。
幸か不幸か、私には輝夜がいるおかげで――殺意や憎悪といった感じの、衝動的な感情は消える事が無いけれど。
けれど、例えば……『優しさ』なんていうものは、こんな生き方をしていれば真っ先に磨り減る。

一度、全てそれを擦り減らした過去があるから判る。
別に蓬莱の薬を舐める前は仏様みたいに優しかったわけじゃない。
けれど、そういった感情もある程度は持っていないと――心は『乾く』。
あの頃の私を見て、輝夜が『蓬莱の人型』と呼んだことの意味も判る。
乾いた心はまともに動きもしないで、死ぬことだけは無い肉体に引きずられて存在し続ける。
そんなのは『生きている』とは言わない――肉体に隷属して、ただ死んでいないだけの人型。

そんな、過ちみたいな昔を経て――今の私が『生きている』のは。
擦り減らし、排斥し、蔑み、嫉妬さえ覚えた……奇麗事みたいな感情の存在価値を、慧音が教えてくれたから。
私と同じか、それくらい心が磨耗するような出来事と年月を経ていて――なお、微笑ましいくらい優しい。

この『変わり者』に救われたのは、私だけじゃない。
ここに葬られた人間達も、きっと――そのはず。

「変に買い被りすぎだ……お前の方が、心根はずっと優しいだろうさ。
 私はこう見えても、存外に要領が良くて小ずるい……口にしたことは真実であっても全てではない。
 優しく思える行動にも、案外別の理由が隠されているかも知れん」
「あのねぇ……自己申告してる時点でどうかと思うけど。
 じゃあ聞くけど、このすすきの原を開いたのに――何か別の理由でも?」

そんな事を聞きながら――同時に、私は。
何で慧音が、私をこの場所へ連れてきたのかをぼんやりと考えはじめる。
けれど、その事への自分なりの回答を導くよりも早く――私の言葉に頷き、慧音は夕陽へと振り返った。
自然、私の方から彼女の顔は見えなくなる――それでも僅かな仕草から、苦笑めいた微笑みを浮かべた事は判って。

そして。

「私がこの世を去った後も、何かの形で残したかった――彼らがこの世に生きた“証”を」

爆弾みたいな一言を、さらりと私に放り投げた。








「多分、今日明日の事では無い……とは思うが、正直言えばその確証も無い。
 知らないんだ、私は。この身の寿命が、果たしてどれほどのものなのか」

私は両親の顔を知らない。
両親が存在したのかどうかさえ知らない。
どの様にしてこの身が生れ落ちたのかを知らない。
我が身の根源が、果たして何処に在るのかを知らない私は。

同じように、我が身の終焉がいつの事になるのかを知らない。

あと百年、千年を重ねられる身なのか――あるいは、明日にも潰えるのか。
『人間と白沢の半獣』の寿命など、調べようにも手段が無かった。
――私以外に前例が無いのに、想像するための指針、検討するための材料をどこから得るというのか。

「もっとも、畳の上で死ねるとは限らない……。
 事故か何かで命を絶たれる可能性もあるのだし――
 『いつ死ぬか』など、考えても仕方の無いことだというのは判っている。
 だが……先の事と楽観するには、この身は齢を重ねすぎた」

人間は無論のこと――純粋な妖怪達と比べてさえ、私が重ねた年月は長い。
肉体に衰えを感じたことは無いが、死を前に何らかの予兆が現れると決っているわけでもない。

この身が、不老などではないこと。
最初からそんなことは、判りきっているというのに。
いざ――こうして向き合った時、心を占めた一番の想いは。

「……悔しいな」

――この身が、悔しい。

「人間達が、精一杯に生きた“証”に……もう、なってやれない事が」

産声を上げてから、終焉を迎えるその時まで。
精一杯に生き、思い、悩み――時に幸せに笑い、時に悲しみに心痛めて。
そんな人間達一人一人との記憶……それは生きた事の“証”となって、消えず私の胸に残っている。

だが……それも、この身が失われることで。

「彼らに、二度目の『死』を与えてしまうこととなるのが……悔しい」

沢山の『死』を看取る中――『死』は二度訪れるものだと知った。

一度目の死は、人生の幕引きに訪れる。
等しく誰にも訪れる、逃れることの叶わぬ『肉体の死』。
どれほど抗おうと、受け入れるしかない……一つの終焉。

二度目の死が訪れるのは、肉体が死を迎えた後の事。
誰からも思い出されることが無くなった時に迎える『存在の死』。
想いを託すことが出来ず、何も残すことが出来ず……かつてこの世に生きたことさえ、その『死』の前に否定される。

それはあまりにも――辛く、悲しい事。
私は人間達に、そんな悲しみを感じさせたくはなかった。

「だが……如何に悔しくとも、私も死からは逃れられない」

一つだけ、方法がないわけではない。
すぐ傍にいる親友は、正にその『死』から逃れた存在だけれど。
私は『永遠』は望めない。
――望むわけには、いかない。

長く生きていたいと願っていても、『不死』になってしまった瞬間。
今まで死を看取ってきた人間達全てに――会わせる顔を無くすから。


「――今日、妹紅をここに連れて来たのは」

呆気に取られたように、眼を見開いた今の妹紅に。
私の抱えるこの想いを、どうやって伝えればいいのだろう。
明日のことかも知れず、あるいは遥か遠い未来の事。
まだ話すには早すぎたのかもしれないし、最早手遅れなのかもしれない。

それでも、この選択に。
彼女をここに連れてきたことに。

「お前に見て欲しかったから」

――衝動に似たこの想いに、迷いは不思議と感じない。

「私に代わってここの事を任せたいとも、彼らに想いを馳せてくれと言うつもりはない。
 妹紅にとっては、顔も名前も知らない相手だ……いくらなんでも、その頼みは度が過ぎている。
 ただ、お前には見て欲しかった――私の築いたこの場所を」

私なりに考え、形として残す……彼らが生きたことの“証”。

「ただの自己満足の産物かもしれない。全く無意味なものだったのかもしれない。
 もしそうなのだとすれば、また新しく……私が失われる前に、何かの形を世界に成そう。
 ただ……妹紅に見て欲しかった。知っていて欲しかった。
 人間達の事を想い、彼らの為に悩みながら……手探りで為した様々なことを」

きっと、知って欲しかったのは。

私にとっての――


「――私が世界に生きた“証”を。妹紅に知って貰いたかった」




伝えるべきこと。
伝えたいこと。
全て伝えた。

言葉は、無い。

今の私の心の中に、言葉は何も浮かばない。
妹紅は私を見つめ返して、そのまま口を開こうとしない。

二人を包み込む様に、すすきの原がざわめく。
その音はかえって、私達の合間に漂う静寂を強めている。

そうして、長い。
長い沈黙の後に――


「……馬鹿」

肩の力を抜くように。
妹紅は、ふわりと笑っていた。

「忘れないわよ、誰一人。――二度目の『死』なんてやってこない。
 慧音の心の中にある、色んな人間達との記憶は……慧音にとっても欠かせないでしょ?
 なら、慧音との記憶を通じて。慧音を通して――人間達の心の中に、その“証”はしっかり残る。
 慧音がくれる優しさを、人間達が忘れない限り――慧音と関わった全てのものは、二度目の死なんて迎えない」

黄金の輝きの中、優しい笑顔を浮かべながら。

「それに……もし、人間達が恩知らずにも――慧音の事を忘れたって。
 私はずっと覚えてる――死ぬことの無いこの私が、慧音の事を覚えてる」

私が一番、欲しかった言葉を。


「私がここにいる事が――慧音の生きた“証”になる」


まっすぐ、届けてくれる――




「……妹紅」

彼女をここに連れてきて。

「私はやっぱり、卑怯だよ」

彼女がここにいてくれて――よかった。


「その言葉が聞きたくて――お前をここに呼んだのだから」


笑顔を浮かべたその瞳から、大粒の雫が零れ落ちる。

今の私の気持ちみたいに、透明な涙の粒は。


秋空の黄昏、風にさらわれ――どこまでも高く、輝いて溶けた――








どんな記憶、どんな想いも。
積み重ねる時の中に、少しづつ薄れていく。

けれど、あの冬の日の記憶。
黄金の空の下で感じた、想いの全ては。

思い返すたび――この胸に。


恋心の様に色鮮やかに、何度でも蘇る――




「――ぇ、ねぇってば」

そこで肩を揺さぶられ、私の意識は過去から現実へと引き戻された。
ここは冬の山中ではなく――人間の集落、小さな公園にあるベンチの一つ。
辺りには雪なんて影も形も見当たらなく、空から差す日の光は仄かに熱を帯びていている。
来月になれば、公園に植えられた桜の木も立派に花を咲かせるだろう。

あの頃より、今は随分と春に近い。

背後に振り返ると、そこに立っていたのは唇を尖らせた男の子。
くりっとした目が印象的で、やんちゃ盛りの年頃だけど――心根は優しい子だ。

「慧音お姉ちゃん、やっぱり聞いてなかったんだね……」
「だねー」

男の子の言葉尻を、幼い声が復唱する。
一昨年生まれた小さな弟――小さい紅葉みたいな手をしっかりと握った男の子。
そういった何気ないところでの『お兄ちゃん』らしい行動が微笑ましく、この二人を気に入っている。

「ごめんごめん……それで、何か用?」
「うん。あのね――集落の東で、妖怪に鶏が齧られたんだ」
「たんだー」


なるほど――と納得する寸前、男の子の妙な言い回しが引っかかる。

「……『齧られた』? 『喰われた』じゃなくて?」
「うん。ちらっと見ただけだったけど、こう、がじがじーって。金髪に紅いリボンの――」

軽く手を上げ、やんわりと男の子の言葉を遮る。
皆まで言わずとも、その特徴だけで犯人を特定するのは簡単だ。
妖怪が現れたという割には、どこか緊張感に欠ける態度も理解出来る。

凶暴な性格というわけでも、人間を憎んでるわけでもない。
まあ、人間にありありと敵意をむき出しにしている妖怪の方が珍しい――という話は置いておくとしても。
さほど力のある妖怪ではないとはいえ、普通の人間が相手をするには少々荷が重い。
そして多くの妖怪達の例に漏れず、彼女は人間を食う――放っておくわけにもいかない。

「慧音お姉ちゃん、空を飛んでくの?」
「くのー?」
「ああ。――危ないから、少し下がって」

素直に頷き、しっかりと弟の手を握って――公園の隅に避難する男の子。
幼い兄弟は邪魔にならないところから、きらきらと目を輝かせて私を見ている。
その眼差しが、少しこそばゆい。
この兄弟に限らず――このぐらいの年の子の前で飛ぶ時は、大概この視線を感じている。

まあ、でも。
その期待に応えてあげるのも――悪くないと思うから。

だから私はいつもより丁寧にドレスの裾を直し、帽子の位置を正して。
そのまま、軽く瞳を伏せて――背中へと意識を集中する。

空気が、軽く熱を帯びる。
難しいことじゃない。
人が手足を自在に扱って見せるように。

延長線上へと――感覚を、伸ばす。


私の背に浮かび上がった――不死鳥の紋様。
それは巨大な炎を孕み、まるで鳥が翼を広げるように天を衝いて。


私の根幹をよく現した――再生と不死の、炎の翼――


「――頑張って、慧音お姉ちゃん!!」
「がんばってー!!」


子供達の声援に、軽く手を振って応えながら。
軽く地を蹴り、力強く。

空へ向って、羽ばたいた――






「……あれは……」
「慧音様、じゃな、相変わらず……青空によく映える翼よ」
「あの方は変わりませんね……懐かしいなぁ。
 私も小さな頃は、毎日のように空を見上げていました」
「そんなものはわしも同じさ。いや……集落の者達全てがそうだろうよ。
 誰も彼も例外なく、あの炎の翼を見上げていた――目を、きらきらさせてな」
「慧音様は……妖怪では、無いのですよね……?」
「伝え聞く限りはな……不死鳥の翼を背に負った、不老不死の蓬莱人。
 我々には及びもつかんような、遥か昔から――ずっと集落を護って下さっているのじゃよ」






私にとって、『名前』というものは。
雨の日の傘を差し、祝いの席で正装に身を包むように。
そのときの自分に応じて、自在に変えていくものなのだと思う。

だから、種を明かしてしまえば。
それほど複雑な話でも、大した事というわけでもなく。

生まれた時につけられた名を、人を止めた時に棄てたように。
この手を紅に染める決意に――『妹紅』という名を名乗ったように。

今は違う名を名乗っている。
ただ、それだけのこと。

あの冬の日から、指折り数えるのも馬鹿馬鹿しいほどの年月が過ぎて。
慧音が息を引き取ってから、私は『慧音』と名乗りはじめて――
その名前が示す通りに、今は人間を護りながら日々を過ごしているという、ただそれだけの話。


輝夜とは。
あれから、殺し合っていない。






「――姫様は何故、妹紅を殺すことを止められたのですか?」
「永琳? どうしたの、突然そんな事聞くなんて」
「あの時は何かお考えあっての事と思い、理由を尋ねませんでしたが……。
 屋敷の中を整理していたら、色々と昔のものが見つかりましてね……それで思い出しまして」
「ん……そうねぇ……明確に『これこれこうだから』とは言えないけど。
 強いて言うなら、私が殺したいのは『妹紅』だから――かしら?」
「名を変えたことが原因……と?」
「ええ。私が殺したいと思ってるのは――紅に染まった蓬莱の人型。
 永遠に口の減りそうにない、あの生意気で暑苦しい妹紅だけ。
 人間でも無い癖に、人間を護る変わり者なんて――別に興味も湧かないわ」
「……姫様は。それで……宜しかったのですか?」
「――ねぇ、永琳。万物は常に変化を繰り返し形を変えるけれど、私達にはそれが無いわ。
 どれだけ変わったように振舞おうと、別人を装うと……最後は『不変』に帰結する。
 魂魄があっての器である私達は――結局どこまでいこうとも、ありのままの自分にしかなれない」
「彼女も……そうだと?」
「それを信じるぐらいには、永い付き合いと思ってるいるわ」

「……随分と、信用しておいでなのですね……彼女の事を」
「あら……ひょっとして永琳、嫉妬してる?」
「ええ。少し、妬けてしまいそうです」
「ふふ……ごめんなさい。でも、この想いだけは譲れないわ。
 私はあの子を待ち続けるの。それが私の特権だから」


「私はあの子を愛してる。殺したいほど、愛してる。
 焦がれるような想いを抱いて、想い人の事を信じて。
 永遠にも等しい時間を――待ち続けることが出来るなんて」



「これって、素敵な関係と――思わない?」






「……はぁ……本当、物の覚えが悪いったら」

ぼやきみたいな呟きが、青空の中に溶けていく。
男の子が報告してくれた妖怪を撃退する事に、苦労は殆どしなかった。
大体にして、相手にして骨が折れるような実力の持ち主は、集落を襲うなんて無粋な真似をしない。
やってくるのは、弾幕ごっこの延長線上ぐらいの意識で相手をして丁度いいぐらいの相手ばかりだ。
だから苦労はしていない。
苦労は、していないのだけれど――思わず、溜息が出そうになる。

あの妖怪を追い返したのは、今日が初めてというわけじゃない。
というよりまるでもぐら叩きの様に、撃退しても撃退しても懲りずにまたやってくるのだ。
こんな時、慧音なら――集落の歴史を喰らうことで存在を隠し、戦わずしてやり過ごすのだろうけれど。
そんな便利な能力の無い私の場合、出没する度に追い払わないといけないわけで――

「あんまり悩むと禿げ上がるぞー」
「余計なお世話よ、大体蓬莱人の私が禿げるわけ――って、まだいたのか!?」

愕然と振り返った先、景色にぽっかりと穴を開けたような宵闇が、ふらふらと蛇行しつつ離れていく。
思わず頭を抱えたくなるけど、思い返せば――私が幻想郷に来た頃から、ずっとあんな調子だった気がする。
実際にはあの頃の彼女と今の彼女は、世代を跨いだ別の存在なのだけれど。
自然から発生する歪みから生まれる彼女たちは、子供と言うよりは同一の存在に近しい。

母体となってるものが自然である以上は、発生源から断ち切ると言う事もまず出来ないし……。
長い目で見てみれば、これもある意味『不死の存在』なのかもしれない。
……同一に置かれるのは、正直勘弁して欲しいところだけれど。


軽く頭を振って、不毛な思考を外へ追いやる。
気分転換とばかりに体を傾け、緩やかに滑空しながら――見下ろした集落の風景。
呆れてしまいそうなほど穏やかで平和で、地味な人間達の日常。


今日も相変わらず、幻想郷は幻想郷のままだ。




如何なる力を持っていても、時の流れは強く――無慈悲に。
あの頃の人妖達の殆どを、思い出の中だけの存在へと追いやってしまった。

けれど。
例えば、閑静な湖の畔に佇む紅の洋館。
閑古鳥が住み着いたような、辛気臭い森の古道具屋。
昨今の博麗神社はすっかり妖怪達に乗っ取られたという嘆きを、集落の人間達から何度か聞いた。

魂は輪廻し、何度でも転生する。
煮出せば灰汁でも出てくるような個性的なものなら尚更。
『不変』とまではいかなくても――繰り返される因と縁の宴。

胡散臭い笑顔で微笑む、マヨヒガのすきま妖怪。
能天気なまでに何にも縛られない、生を忘れた亡霊の姫君。
かたや地上へと目を向けた時、竹林に潜むは死を忘れた姫君――もっとも、それは私も同じ。


あの頃と変わったもの。
あの頃から変わらないもの。


織り成す者達は変わっても――変わらない不思議な調和。



幻想郷が幻想郷たる所以は、この調和にこそあるのかもしれない。




空からざっと見渡す限り、特に問題が起こりそうな気配は見て取れなかった。
この様子なら、今日はもう集落が厄介事に巻き込まれることも無いだろう。
そう判断して、私は力強く羽ばたく。
ぐん、と体が持ち上がり――瞬く間に地上は遠く、眼下の集落は小さくなる――

幻想郷中をあてもなく歩き回っていた昔と違い、今は集落から離れる事が殆どない。
私が今、目指している場所も――実のところ、集落からそう離れた場所じゃなかった。
ただ、あまり他人にはこの場所を知られたくないため、いつも少しだけ遠回りをしていく。

集落に接した、小高い山。
ゆっくりと高度を落し、翼を折り畳みながら――張られた結界を擦り抜ける。
結界の存在を『知っている』私に、排斥の為の力は働かず。

長いトンネルを抜けた後のように、結界の内側で世界は姿を変えていた。


透き通るような青空は、燃え盛るような黄昏に輝き。
鼻先をくすぐる風に、仄かに枯れた木々達の香りが漂う。
腰ほどまでの高さもある、すすきの穂の中へ――ゆっくりと着地した時。

包み込むように一面に広がる――黄金の世界――


この場所もまた、あの頃から変わらない。
訪れる私の名と姿は、随分と変わってしまったけれど。




歴史の止まったこの場所は、あの頃から何も変わっていない――




慧音の『代わり』が勤められると思うほど、私は傲慢に出来ていない。
そんな事は誰にも出来ない――何よりあの子が、そんな事を喜びはしない。
そして私は人間に対して、自分を犠牲にするほどの愛情も恩も――感じたことは一度も無かった。

ただ。
人間達には無くても、慧音に対しては感じていた。
あの子に返してあげたかった、沢山の感謝の気持ちを。

納得がいくまで、私は――彼女に返してあげられなかった。

だから私は、この胸に残った感謝の気持ちを。
あの子から貰った優しい気持ちを。


何よりも大事にしていた人間達へ、返してやることに決めた。


人間達に囲まれ、彼らを護りながら過ごす日常。
まったくもって私の柄じゃないけれど、そんな生き方を選んでもう随分になる。
長年続けていくうちに、それなりに心も体も環境への適応を試みてくれたらしく。
手と手を取って助け合い、感謝されながら生きてみるのも――悪くはないと思えるようになった。

ただ……誰かに優しくあろうとするには。
紅に染まる、復讐者の『妹紅』のままでは――少しだけ、気恥ずかしかったから。
あの子の名前を、私は借りて。
人を愛した変わり者の――『慧音』という名を借りることとして。


私は今、ここにいる――




「……さて、と。そろそろ――集落に戻ろうかな?」




慧音が、二度目の死を迎えることは無いだろう。

何故なら、あの子の優しさを通じて。
あの子に優しい想いをくれた、全ての人間達の姿が在るように。


慧音から貰った優しさを――私が人間達へと伝え、返し続ける限り。
その想いを通じて、人間達の心の中に。

あの子の姿は――在り続ける。


この暖かい気持ちが、きっと彼女の生きた“証”。




……私の柄じゃない。
柄じゃない、けれど――


彼女の想いを伝えていける、今の私は上出来だ。






――此処の名は幻想郷。
妖怪と人間――少女達の飛び交う、幻想と弾幕の世界。


蓬莱の時の中、友の心を伝えながら……私は今日も生きて――








その時。


「……え……?」




すすき達の、ざわめきの中に。

違うものが聞こえた。


結界で閉ざされたこの世界には、私しかいないはずなのに。


確かに聞こえる。

―― 子供の、すすり泣く声――




黄金の海を掻き分けて、その声へと近づいていく。




泣いていたのは、一人の少女。

妖怪の気配は感じないけど、集落の中でも見た覚えが無い。

事情は判らないものの。

零れる涙を手で拭う姿に、芝居をしている様子は見えなかった。


『外』の世界の人間が、神隠しにでもあったのだろうか。

瞼の裏に浮かんだのは、厄介事を押し付ける――すきま妖怪の胡散臭い笑顔。


その辺りは後で追求するとして。

ひとまずなだめ、落ち着かせようと――少女の頭をそっと撫でる。




手のひらに感じた、硬い突起の存在。




驚き、眼を見開いた私は。

顔を上げた少女の瞳と、真っ直ぐに向かい合う。




大粒の涙を溜めたまま、見開かれた瞳。

涙の跡を真っ赤に残した、雪の様に白い肌。

夕陽に透き通るように輝く、月の光を束ねた銀髪。

驚いた様子で、きょとんと私を見つめ返す――その、顔立ちは。




知っている。

初めてであったにも拘らず。

きっと私は、誰よりも――この子のことを、知っている――






輪廻転生。
死を迎え、そして新しく生まれ変わる『輪』。

誰も彼もが、等しく死を迎えるように。
魂を持つものに、等しく『輪』は与えられているのなら。



嗚呼。

まるで、冗談みたいだけれど。



『輪』は。

『彼女』にも、与えられて――






「……ここ……どこ…………?」






「……此処の名は――幻想郷」


あの頃と、変わったもの。


「妖怪と人間……少女達の飛び交う」


あの頃から、変わらないもの。


「幻想と、弾幕の世界」


織り成す者達は変わっても。


変わらない、不思議な調和。






――そんな、不思議な調和の中で――






「――おかえりなさい」







私達は、今日も――生きている。










ここまでお読みいただいた殆どの方が、『初めまして』だと思われます。
『第2回東方最萌トーナメント』時、慧音の支援SSを書いていた朱(Aka)と申します。

この作品は最萌時、自分の最後の支援作品予定として製作していたSSで、
創作話その12及び13に掲載されているSS

Keine Kamishirasawa -歴史喰いの“歴史”-
Eirin Yagokoro -“永”き罪を、紅に刻んで-
Keine Kamishirasawa & Mokou Huziwara -お前“も紅”色に染まれ-
Keine Kamishirasawa & Mokou Huziwara -その“証”を記す、歴史喰い-

と、設定や世界観の解釈を同じくしています。

ですが、この作品を書き上げるまでに開いた時間は一年。
まさか一年も前の作品を差して、
「これを読まなきゃ話を楽しむ事は出来ないよ」
などと言う訳には参りませんので……。
このSS一本で『一つの作品』として読めるように書き上げてあります。


実は、この作品――筆が全く進まなくなり、一度執筆を断念しています。
原稿が存在している事すら、記憶の片隅に忘れ去っていました。
思い出したのは今年の一月、父が突然にこの世を去ったのがきっかけです。

死ぬ事、生きる事。生きている事。
父という身内の『死』に際して、そういったものを題材にした話の存在を思い出す。
何かの縁を感じ、もう一度筆を握るに至りました。

これで、伝えたい事の全てが伝えられたのかは……判りませんが。
朱(Aka)として書きたかったこと、全てをつぎ込んだ――恐らくは最後の作品です。

ここまでお読みいただいた貴方に、最大の感謝を。
本当に――ありがとうございました。

※ 2009/02/26追記
久々に覗かせて頂いたところ、創想話の仕様が変更されたようですね。
項目:分類 部分を付け加えさせて頂きました。
そして拙作に評価・得点・感想を下さった全ての皆様へ、ありがとうございました。
朱(Aka)
[email protected]
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コメント



0.8560簡易評価
1.100削除
神・・・・・_|\○_
ありがとう、このような幻想を私に見せてくれて・・・

あんたは最高だ!100点!ヾ(゜∀゜)ゝ
気持ち的には200点!
13.100CODEX削除
もこたんハッピーエンド・・・
だけに留まらず、詩的かつ幻想的でありながら、ありありと瞼の裏に映る金色の波・・・紅い翼・・・

最高の笑顔を浮かべた二人を幻想しつつ、読ませていただきました。
23.100双海削除
形見の弁当箱帽子を被ってるもこたんの幻覚が・・・。

しかし本当によく描けている。
詩に近い文体でこれだけの文章量、テンポ良くまとまった内容、予想だにしなかった美しいオチ。何よりも目に浮かぶ風景描写が素晴らしい。自分的に今までどうでもいい位置の二人だったが、どうも随分と順位が上がってしまった。やられた。最高ですね。

自分が文章を書くとどうしても詩的なものになってしまうが、これだけのクオリティが詩文で出せるなら、これを目標にしてこのまま頑張ろうかな、と思う。
26.80A削除
シリーズ、大好きでした。
文章の景色が目に浮かぶようで…感動しました。
ありがとうございました。
28.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい作品に満腔の感謝を!

透き通るような情景で綴られる妹紅と慧音の二人も然る事ながら、輝夜の在り方にも個人的にぐっとくるものがありました。
本当に良いものを読ませていただきました。
30.80近藤削除
人は二度死ぬ。
ならばせめて、自分だけになったとしても最期の時まで。
私も親友と呼べる友人を亡くした時に同じ事を想ったものです。
そんな事を想わなくとも、私は彼を忘れないでしょう。
この想いが作中の妹紅と同じものだとしたのならば、
それは大変嬉しい事であり、しかし大変哀しい事でもあります。

ただ、輝夜と永琳の項は少し蛇足気味かな? と思いました。
とことんまで二人にスポットを当てた上で、
それで尚且つ輝夜を出す事も出来たと思います。

ともあれ、現在似たテーマで一作書いている身としては、
いい意味でショックを受けました。
素晴らしい作品をありがとうございます。
33.90床間たろひ削除
あぁ……これは良い。

慧音と妹紅の心をそれぞれに描き、そしてそれを引き継いでいく決意を描く。
最後の赤子の下りは、マジで涙腺が緩みました。

これが最後との事ですが、できればこれからも貴方の世界を見せて欲しい。
ただの我儘に過ぎませんが、心からそう思います。
37.90名前が無い程度の能力削除
感動しました。しばらく余韻にひたってます…
40.100煌庫削除
終わりとは始まり、始まりは終わりへ。
故に『輪』となって『廻』す。そんな風に思える作品と思いました。
ただ在り続けることがそのまま意味を持っていると考えましたね。
良いものを読ませていただきました。
43.100名前が無い程度の能力削除
大切な人と時間を超えてめぐり合えた、紅い翼の守人に幸あれ。


ぐっじょぶ。
45.無評価加勢旅人削除
美しい、芸術のような作品に出会えたことを感謝します。
すすき野がまさに目に浮かびました。
いやー、心が洗われましたよ。
文句なしの100点です。
強いて言えば100点しかつけられないのが不満です。
46.100名前が無い程度の能力削除
これは、期待以上だ。
この作品を読んで感じた想いを、上手く伝えられないのがもどかしいっす。
49.100名前が無い程度の能力削除
寒気が来るほどに美しい話でした。
これだけのものを読ませてくださったことに感謝いたします。
51.100名前が無い程度の能力削除
どの場面でも情景描写がうまく、小説を読んでいるというよりも
映画を見ているといった感じになりました。
死は妖怪にも人間にも等しく訪れるもの(妹紅はその輪から外れてますが
しかしまた、輪廻を回った先の新しい生も等しく訪れるもの。
願わくば、新たな生を受けた慧音と変わらぬ妹紅に幸あらんことを・・・
57.100片倉削除
読み終わるのがもったいないくらいの美しい幻想、
ゆっくりと読ませて頂きました。
この物語と朱さんに心からの感謝を。
58.100OMI削除
…全てが黄金に、輝いてるぜ…
60.100へっぽこ削除
黄金色のすすきの原のイメージが本当に幻視できました。
これは凄いや……。

あと、何気にルーミア(?)も良い味出してますね。
輪廻や転生といった言葉を使うと大仰なものに思えますけど、
実際はこれくらい日常的でありふれたものなんだよなあ。
63.100祈織削除
あなたを待っていました。
64.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい!
65.100ほろろ削除
ん~トゥルーエンドな感じ・・たまりません。
人間と妖怪が共存する幻想郷の姿が見えてくるようでした。
73.100むみょー削除
優しさと暖かさに満ちたこの作品に、
そしてそれを紡いだ朱(Aka)氏に感謝を。
・・・
「あの頃と、変わったもの あの頃から、変わらないもの
織り成す者達は変わっても 変わらない、不思議な調和」

多分、それが「東方Project」の原点なのだろうな、と
この作品を読んでふと思いました。
78.100月影蓮哉削除
真っ白に燃え尽きたぜ……。
84.100名前が無い程度の能力削除
最萌支援の作品、見て感動したのを覚えてます。
なんと言っていいのかまとまらないのでコレだけは言わせてください。

GJ!!!!
88.100名前が無い程度の能力削除
最後の最後で涙がこう・・・ほろりとね・・・

深い・・・深いですね・・・一言一言が
89.100名前が無い程度の能力削除
穏やかに成りました
90.100ナマエナーシ削除
自分の涙腺の脆さに恨めしくなり
このような物語を与えてくれた朱さんも恨めしいです
(もちろん前者は正しい意味で、後者は間違った意味で。)
本当に声を出して泣いて泣いてしまいました。
先日、私の父も亡くなったばかりで…
と、ここに書く事ではないですね。
もう一度読んで、ゆっくり泣いてきます。
ご馳走様でした。
91.90蒼月削除
貴方の作品でひとつの幻想郷の「カタチ」を見ることができました。ありがとうございます。
100.100削除
ああああああ、あったかいぃ………!
参りました。ストライクです。ど真ん中です。
過去作品全部見直してきますっ
101.100名無し毛玉削除
夕日が照らす優しい情景。
それが思い浮かんだ時点で他に言うことはありません。
102.100名前を喰われた人削除
嗚呼………、
あなたの作品は、何故、こうも、読み終わったあとに心が暖かく成り、泣きたい気分に成ってしまうのだろうか…。

………あんまし頭の中身がよろしく無いので(オ、これ以上長くは書きません。つか、書けませんから(マテ。
そんな訳で(ドンナワケダ
様々な想いを込めたこの一言を持って、この場を締め括ろうと思います。
『本当に、有り難う、御座いました』
それでは…。
105.100名前が無い程度の能力削除
GJ!!!!!!!!!!
106.100熾彦削除
なんて心根の暖かい話なんだ…。うん、美味しかった。
物語に息吹があって、生きている。心の栄養になったよ、ありがとう。
119.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい・・・・
心が温かくなりました
128.100名前が無い程度の能力削除
やべ、背筋が震えた……
130.100名前が無い程度の能力削除
あああ、涙で前が見えない~!!
138.100名乗るNahanasi削除
初めに見たのはヒートアップする最萌で。過去の流れの中でも異色と言えるほどの長文レス。
その文量に戸惑いを覚えたものの目を通していくうちいつしか物語に吸い込まれており、トーナメント終了後に創想話であなたの作品を見つけることが出来たときは躍り上がったものです。
あれから一年。
世界は一周して何かが変わり、朱(Aka)さんを取り巻く状況にも変化が訪れたことと察します。
忙中、この作品を執筆し公開していただいたことへ先ず感謝します。
噛みしめるように読ませていただきましたが、これほどの人を惹きつけ、やわらかく包み込むような表現力は見事としか言いようがありません。
書き手が伝えたかったもの、読み手が感じたもの、そこに様々な相違はあるでしょうが、決して負のものではないことは確かかと思います。
そして朱(Aka)さんの作品から受け取ったものは私たちの意欲へと繋がり、心に残るそれは、作中の表現を借りればあなたが残したものの証になるのでしょう。朱(Aka)さんの作品に出会えたことを誇りにすら思って・・。
本当にありがとうございました!
149.100名前が無い程度の能力削除
涙が出そうになりました。
実を言うと東方の事はあまり知らなくて、友人の御陰でキャラクターの設定と性格ぐらいしかわかりません。
その中で一番気に入ったのは上白沢慧音でした。
そのあり方や性格がとても綺麗に見えたんでしょうね。
そんな彼女と一緒にいる妹紅もすぐに気に入りました。
この作品で私はもっとこの二人が好きになりました。
163.100名前が無い程度の能力削除
鳥肌なんてもんじゃねえ、俺は鳥になった
165.100bobu削除
えがった;;
166.100名前が無い程度の能力削除
あんたは最高だ!最高じゃ足りない最高だ!
169.100自転車で流鏑馬削除
夕日の中に再会した二人は、慧音と妹紅では有るけれど、何時かの慧音と妹紅とは違う、また新しい慧音と妹紅なんでしょうね。
阿礼の子でなくとも、命は廻る。
閻魔の導きか、神の慈悲か、妹紅の喜び様が目に浮かびます。
世界の終わりをも超越する、不老不死さえ受け止める。幻想郷の懐の大きさを改めて感じました。
ありがとうございました。
180.100名前が無い程度の能力削除
よい!
185.100名前が無い程度の能力削除
何回見ても涙が・・・
ホントすばらしい作品です。
194.100名前が無い程度の能力削除
言葉が思いつかん。点数で察してくれ。
200.100名前が無い程度の能力削除
ああ、万点クオリティ。
黄金色の風景に佇む二人が綺麗に幻視できました。

過去作読んで参ります。
219.100名前が無い程度の能力削除
非常に惜しいのが、最初の過去作から見ないと慧音と妹紅に感情移入しにくい事ですかね。
(慧音は過去、外の人間に殺されかけたとか)
幸運にも私はHPで頭から読めましたが。

続きと言う形で過去作全てにこのタイトルで統一してもいいと思いますが
他のタイトル名も非常に気に入っています。

埋もれてると言っては大変失礼ですが、最初から読めば歴代SSで最高峰の作品です。