藤原妹紅は何時もそれを見ると疑問に思っていた。
「どういう仕組みなんだろ・・・・」
「ん?どうしたんだ妹紅?」
友人の慧音が振り向き問う。
今、二人は慧音が以前見つけた釣の穴場スポットへ向かっている最中で慧音先導の下、歩を進めている。
「ああ、いや、慧音には関係あるようで関係ないから」
「・・・それは微妙に矛盾してないか?」
「大丈夫、気にしてるのは私だけだと思うし」
「いや、ますます分からないんだが」
怪訝そうに表情を変える慧音。
不味い、と思いそれとは別に気になっていたことを聞く。
「そう言えば慧音ってEX化すると緑になるよね?正確には薄緑。あれなんで?」
「いや、それは・・・・・」
渋い顔になりそれは避けたい、という言葉が表情に表れる。しかし追求する。
「ハクタクが草食性のため?」
「なんでそうなる」
「ぶっちゃけ牛っぽいから。地味に胸も大きくなるし」
「・・・・・妹紅、お前が何時も何処を見ているのか少し分かった。というか集中的に感じていた視線はお前か」
「だって羨ましいし。で、なんで薄緑になるのさ?」
「わ、私はよく知らん」
そっぽを向きズカズカと前を歩いていく慧音。その後をニヤニヤと笑いながら妹紅がついていく。
「なーんーでー?」
「知らんといったら知らん!」
何時の間にか歩調が随分と変わり小走りからダッシュへ、挙句は全速力の飛行となった。
「慧音、ちょっとムキになりすぎ」
「お前がしつこいんだよ!」
だからって弾幕張らなくてもいいじゃん。そんなことを思いながらもふと妹紅は全速力で先行する慧音を見てまた疑問に思った。
「やっぱ変だって・・・・」
「何がっ!?」
相当イラついているのか口調がトゲトゲしい。当人は気付いていないようだ。
「べっつに~」
が、これはこれで慣れているので妹紅なりに何時もの口調で返す。と、
「おぶっ!」
正面を向いていなかったのか頭から何かに激突する。が、痛みは特に無く激突した物体は随分と柔らかいものでそれと同時に嗅ぎ慣れた匂いが妹紅の鼻に入る。
「ちょ、慧音ってば。いきなり止まるなんてどうしたのさ」
先ほどまで全速力で逃げるような形で飛んでいた友人の背中に激突した妹紅は何事かと友人に尋ねた。
「・・・・・・・・・・・・迷った」
「・・・・・・・・・・え?」
友人の答えは分かりやすく簡潔で、妹紅自身も周囲を見渡すと全然知らない森の中に居た。
「大体、妹紅が悪い」
「いや、慧音が悪いね」
その場に留まるのはどうかと言うことで取り合えず来た道を戻ってみるがどうも知らない森。
行けども行けども同じところをぐるぐると回っているようにも感じる。
「けどまぁここどこなんだろうね」
「さてな。私の記憶している限りでは全く見知らぬ植物ばかりだな」
1時間近く続いた悪口合戦はドローにして一度地面に降りて休憩することにした。
手ごろな木の根元に腰掛け、周囲を見渡す。
妹紅が抱いた感想は
「ぶっちゃけ気持ち悪いね」
「・・・・・それは率直過ぎるぞ。否定はしないが」
妹紅の感想どおり、周囲の木々にはよく見ると人面のようなものがあったり、そこら辺の雑草っぽい草なんて葉がまるで手のように見える。
更に言っちゃえばアレってラフレシアって言う名前じゃなかったけ?と考えながら異常に大きい中心がぽっかりとあいた形容しがたい植物なんてあったりもする。そりゃ気持ち悪いので慧音は嫌だなぁと思いながら観察を続ける。と
「なぁ妹紅・・・・・?」
観察し続けてたらなんか動いたような気がしたので気のせいだと思いたい一心で友人の顔を見ようと隣を見るが居ない。
「妹紅?」
立ち上がり周囲をきょろきょろと探す慧音。一瞬、怪物ラフレシアの根元から触手のようなものがちらりと見えたが絶対気のせいだと思いながら友人を探す。
「・・・・・・・・・・・もこたーん」
ぼそりと友人が嫌っているあだ名で呼んでみる。が反応が無い。と思ったら上から何かが落ちてきた。
「これは・・・・・」
見慣れた妹紅の靴だった。どうしてだろう、と思い上を見ると・・・・
「・・・・・・・・・え?」
随分と見慣れた色の妹紅の下半身があった。
よく見ると下半身の上にあるはずの上半身がこれまた形容しがたい赤紫の斑模様をした蕾のようなものの中に入っている。
食われているのだろうか、それとも消化中?いやいや、普通なら妹紅はすでに反撃しているはずなのに何もしないのはありえない。
と考えたら足に何かが絡まった。
「へ?」
そのまま勢いよく上へと釣り上げられ、やっぱ動いていた怪物ラフレシアの真上まで触手で持ってこられた。
無論、相乗効果というか自然の法則のお陰で逆万歳姿勢のためスカートが捲れあがる。まだ寒さが残るから鈴仙から貰ったスパッツを穿いているためある意味本体には影響ないのだが恥ずかしいことには変わりないので慌てて前後を手で押さえる。
「うわぁー!このまま直行!?」
勿論、ネチョ。だが怪物は意外と素直がお好きなようでぽっかりと丸く開いた穴から異臭が漂ってきた。
「あ、頭からは勘弁してー!足からもイヤー!」
パニック状態&両手が塞がっているため弾幕も張れない。と、いうか妹紅は!?と思いそちらの方へ視線を向けると。
「あ」
足だけになってた。やっぱ消化中だったんだ。リザレクションの効果範囲外なのかなぁーと考えていたら足が飲み込まれた。
援軍は期待できないと思い視線を戻すと異臭が近くなってた。
「あー!結構ピンチー!」
否応無しに穴の中でグツグツと地獄の釜のように煮えているように見える濁った泥のような液体が目に入る。
ああ、私の人生はここで終わりなのかー思えば妹紅とやった『ドキッ!ニート姫との地獄駆けっこ。師匠のたゆんとうどんげのちらりもあるよ』が懐かしく思えた。あの時は楽しかったなぁと考えているがそれよりも液体の異臭が激しかった。
例えるなら隙間の靴下の弱体化バージョン。そうでなかったら師匠が開発しちゃった異臭のする惚れ薬みたいな感じ。飲んだら近付こうにも近付きたくない感じの妙なもの。あれは厳しかったな。どれだけ枕を濡らしたことだか。鈴仙が。
「って変な走馬灯ばかりー!」
植物には生き物の走馬灯なんか腹が膨れない想像上の副産物なので関係なしに怪物ラフレシアが慧音を飲み込む―――――
「あんた・・・こんなところで何やってんの?」
しかし、植物に無いはずの苦悶の叫び声と共に救いの主が現れた。
「・・・・・・・・アリスか?」
「そうよ」
飲み込まれる寸前で上海人形が口からレーザーを放射し、怪物ラフレシアの一部をごっそりとドロリ抉ったお陰で先の苦悶の叫び声を上げながら怪物ラフレシアが茎(胴体)から生やしていた触手をパージして一目散に森の奥へと逃げていった。
そのお陰で慧音は食われる寸前で意外に力持ちな人形たちに足を掴まれてさかさまのまま助かった。
その後、ドロドロに溶かされた妹紅が液体の状態からリザレクションをした時には思わずアリスと同時に思わずラストワードをぶちかましたのはご愛嬌でアリス曰く
『あんな液体から固体へのシチュエーションなんて液体金属の化け物だけで十分だわ』
などと言っていたがよく分からなかった。
ともあれ妹紅は服までも溶かされてしまったのでアリスの家までスッパ移動となってしまった。幸い、ブン屋は撃ち落してそこら辺につるして来たのでいい栄養にはなるだろう。
アリスの家に着く頃にはすでに日は沈み、仕方無しにアリスの家に泊まることにした。
噂に聞くコレクターとしてごちゃごちゃしているものと思っていたが意外に小ざっぱりしたもので綺麗に整頓されていた。
『ごちゃごちゃしてるのは魔理沙の家ぐらいで十分よ』
などと顔に出ていたのか少し恥ずかしい思いをした。
それとは別に家の所々に飾られている人形たちが異様に不気味で堪らなかったが妹紅は素直過ぎたために外で貼り付けにされた。今回は表情に出なかったのが幸いだったがうっすらと笑っていたアリスは怖いものがあった。そりゃもう黒い影が見えたほどに。
何はともあれとんだ災難にあったわけでまだすることがあるから、と家主よりに先にベッドに入ってしまった。何時もの布団の感覚とは違ったが入るとたちまち眠気が襲ってきた。相当疲れているのだろうと思いながら私はそのまま眠りに入った。
明日になったらアリスに礼を言おうと思いながら先に寝ていた妹紅におやすみ、と言った。
慧音が寝て暫く経った後。
「どう思う?」
「不思議としか言いようが無いわ」
「だろ?正直私自身付き合いは長いんだけど未だに分からないことなんだ」
「これはこれで随分と興味あるけど真正面から聞いてみたら?」
「いや、妙に大切にしているからな。どうも聞こうに聞けない」
「逆に付き合いが長いと苦労するものね」
「まぁね」
「だからこうやってくすねてみる訳ね」
「そういうこと。今、慧音ぐっすり寝てるし」
「好機と言ったら好機だけど・・・・・」
「なに、心配事?」
「別に。ただ、ちょっとね」
「今更ビビッたわけ?」
「そういうんじゃないわ。ただ見れば見るほど不思議に感じてくるから逆に触れない方が言いと思えてきたのよ」
「それ、あまり変わらないと思うんだけど?」
「ともあれやるんだったら一人でやって。私は人形たちの整備に忙しいの」
「なんだよ・・・ったく、最初は乗り気だったくせに。まぁいっか」
アリスが居間から地下へと下りていくのを見送ると妹紅はテーブルの上にある”それ”に手を伸ばす。
「しっかしまぁよくこんなの見つけたよなぁ。やっぱあの変な店か?けど、二人とも初対面らしかったらしいし」
ぶつぶつと呟きながら”それ”を手に取りながら多方面から見る。
「けどいざ調べてみるとなんらヘンなところは無いよなぁ。形はヘンなのに」
と、後ろの方から足音が聞こえた。
「なんだやっぱ、気になってきたのかよ。悪いけどこれはやっぱ」
「見たな?」
「え?」
瞬間、暗転した。
ぱちりと目が覚めたら見慣れない天井があった。
「あれ?」
何処だここは?と思っていると
「おや?妹紅、なんてところで寝てるんだ?」
「・・・・・・けーね?」
まだ少し寝ぼけているのか口が僅かにおぼつかない。だが、視線の先には見慣れた友人が居た。
「全く、だらしがないな。ベッドに居ないから先に起きているのかと来てみたらこれだ」
やれやれだな、と両手を腰に当ててため息をつく妹紅。
「・・・・・そっか、アリスの家に泊まったんだっけ」
「・・・・・それ、今になって思い出したのか?」
だいじょうぶかー?と居間の床で寝ている妹紅の顔の前に手を向けてひらひらと振る。それにより意識が完全に戻った。
「誰だって見慣れない天井みればそう思うでしょうが。慧音だって初めて私んちに泊まったときも似たようなこと言った記憶あるけど?」
「う・・・前言は撤回しよう」
その時のことを思い出したのか顔を赤らめてそっぽを向く慧音。
やれやれだなと思いながらふと妹紅は”それ”に目がいった。
何か妙なデジャヴュを覚えた。
「どういう仕組みなんだろ?」
ぽつり呟いた言葉に慧音が反応する。
「ん?どうした妹紅?」
「え?ああ、なんでもない」
「そうか」
けど何だろう、アレには触れてはならないような気がしてきた。
奥のほうからアリスが
「朝ごはんできたわよー」
「ああ、分かった。今行く」
キッチンの方からいい匂いがする。これは何時も作る料理とは違う匂い。洋風と言うんだろうか?まぁ普通に考えればアリスの食生活とこちらの食生活は違うんだし。などと考えていたら先に向かっていた慧音が振り向いた。
「どうしたんだ?早く行こう」
「分かってるってば」
と口に出しながら妹紅はずっと考えていた。
慧音の頭に乗っている帽子らしきものはなんだろうと。
教訓
・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?私は何を言おうとしていたんでしょうか?
怪物ラフレシア怖ぇ。というか、幻想郷に咲いているのか…。
しかし、スパッツより黒ストを履かせて欲しかった(ぇ
しかしあの帽子の秘密は明かされませんでしたか。
自分は風の噂であの帽子は実は………あれ? なんだっけ?
しかし、けーねのスカートの下はスパッツとはw
こういう笑える作品は大好物です。
消化なんてグロいようで、全然グロさを感じない。
なんといいますか、クオリティ?(謎
ではでは、次回も頑張ってください。
構想と展開は非常に面白かったので、もう少し「句点」を増やしてくれると、読みやすくなったかと思います。
しかし、ラフレシアの悪臭より臭い靴下って…
GJです