Coolier - 新生・東方創想話

夢船旅  改

2006/02/23 23:41:28
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※こちらのSSは月姫x東方のクロスです。

※クロス物とかが嫌いな方は読まないほうが精神的に宜しいと思いますので、引き返してください。
















ここは、幻想郷の片隅にある香霖堂。
 私はお嬢様からの言伝で、いつものように月に行く道具を探しに香霖堂に探しに行きました。
 そうして、香霖堂に到着。ゆっくりと扉を開くと柔らかい声がかかります。
「おはようございます、咲夜さん。今日はどういったご用件でしょうか?」
「また月に行くための道具を探しているんです。――と言っても今回はほんのおまけで、珍しくて面白そうな物を探しているんですけれど……」
 私が説明をすると、香霖は少し考えながら奥の倉庫に向かいました。
 倉庫の方で何かごそごそと探し物をはじめた香霖。
 彼は数分後にゆっくり戻ってくると、両手に謎の和紙を抱えて私の前に置きます。
「なんでしょう? ただの和紙のようですけど」
 疑問点を口に出す私。
「こちらの和紙には魔力が篭っていまして、枕元に置くといい夢が見られるそうです」
 その疑問に、眼鏡をちょっと上げて楽しそうに答えた彼は、残りの説明をはじめます。
「紙の表面に呪文といいますか、まじないといいますか『長き世のとおのねふりの皆めさめ波のりふねの音のよきかな』 と書いて、帆掛け舟を作って枕元に置くらしいんですが」
 もちろんそんな事を言われても、私には制作方法なんてわかる訳がありません。
 大体、和紙自体が紅魔館にはほとんど縁がない物。せいぜいが妖夢と一緒にいる時に見せてもらうのが関の山です。
 そこで、意を決して聞いてみます。
「帆掛け舟の作り方とかを書いたものはありませんか?」
 すると、彼は前もって準備しておいたのか、奥の方から古書を取り出してきました。
「こちらの本に載っています」
 香霖は答えながら本をめくり、説明をはじめます。
「この古い紙には夢を多少コントロールする力がありまして、見たい夢の絵を紙に描いておくと良いんです」
 確かにお嬢様の見たがっている夢は現実的なものではなく、夢の世界のような楽しい物かもしれません。
 何より簡単に月にいけるくらいなら幻想郷中で月旅行がはやっていそうなものです。
 ぼんやりそんな事を考えていますと、
「今の咲夜さんにはぴったりだと思います」
 香霖はダメ押しとばかりに強く推して来ました。
 ここまで言われては、頂いて帰らないわけにもいきません。
 私はにっこり笑っている香霖の前で、懐からお金を取り出し、古書と紙の束をセットで買って帰りました。


 私は紅魔館に帰還し、レミリアお嬢様の寝室まで歩いてノックをします。
「おかえり、咲夜」
 すると、戻った事を声で出迎えてくれたので、そっと扉を開け、お嬢様の部屋に入りました。
「お嬢様、今日はこの道具を買ってきました」
 いつものように部屋でのんびりとしていたお嬢様。
 私はその前に、先ほどの品々を置きました。
 お嬢様は品々を置くと、興味が湧いたのか興味深そうに品々をながめはじめます。
 そうして、彼女はゆっくりと見回して、首をかしげながら質問をぶつけてきました。
「なかなか楽しそうね。ところで咲夜、魔力のこもった紙と言うのはそれなりに危険だと言うことはご存知?」
 確かに魔力のこもった物をむやみやたらに使うわけにはいかないですし、万が一が無いようにお嬢様を守るのも私の勤めです。
「ええ、多分。最初に自分で確かめてから実際にお嬢様に使っていただこうと思います」
 私が答えると満足したのかウンウンと頷き、ゆったりと就寝の挨拶をしたので、
「そう、いい夢が見られるように。おやすみなさい」
「お嬢様も良い夢を」
 私も挨拶を返すと、自分の部屋に戻りました。
 部屋に着いた私は古書を取り出し、本をパラパラとめくって作りはじめます。
 いい夢が見れますようにと願をかけ、紙を折っていく私。
――数分後、帆掛け舟は完成。私は舟を自分の部屋の枕元に敷き、眠りにつきました。


「……起きて……起きてください」
 聞きなれない声を体で感じつつ、少し薄目を開けて部屋の中を見渡します。
 そこは見慣れない部屋で、赤い髪のメイドさんが私を起こそうと頑張っていました。
「あの……ここは……私はどうしたんでしょう?」
 全く覚えが無い部屋と全く覚えの無い少女を前に、質問を投げかける私。
 すると、赤い髪の少女は顔色一つ変えずに説明をはじめます。
「昨日、お屋敷の玄関の前で倒れていたあなたを見つけて、秋葉様にこちらに運ぶように命じられました」
「体の調子は大丈夫ですか?」
「ええ、問題ないわ」
「そうですか、秋葉様が下で待っています。準備が出来ましたら部屋の外へ」
 口調は丁寧ながら有無を言わせない迫力をたたえて、赤い髪の少女は部屋の外へ出て行きます。
 まったくどこかわからない場所で、少し前後関係が無い記憶……。こんな状態で出来ることなんかほとんどありません。
 私は一度深呼吸をして、気分を落ち着かせると部屋の外に出ました。
「お部屋をお連れします」
 私は赤い髪の少女と共に下へ下りていきます。
 お嬢様の館と同じ、もしくはそれ以上に豪華な屋敷の中を案内されていくと、豪勢な装飾が部屋中に施された部屋に通されました。
「初めまして、十六夜咲夜です」
 私が挨拶をすると、正面のテーブルに座っていた、長い黒髪の少女が挨拶を返します。
「初めまして、私は遠野秋葉。あなたの隣にいるのが翡翠、私の隣にいるのが琥珀です」
 秋葉の隣に静かに立っていた赤い髪の少女が挨拶、先ほど私を迎えに来た少女が秋葉の隣に並んで、一旦会釈。
「さて、挨拶はこれまでにして食事をはじめましょう。咲夜さんと言いましたね。あなたは私の向かいに席を用意してあります」
 私は先ほど挨拶した翡翠が、私の座るテーブルの椅子を引いたので、そちらの席に着きました。
 私が席に着くと、三人の少女はそれぞれの席に向かい、穏やかに朝食を始めました。
「さて、簡単な説明は翡翠に聞いていると思うのですが、私としてはあなた自身の口から説明してもらいたいと思います」
 朝食をゆっくりと食べている最中、秋葉は私に説明を求めました。
 優雅ながら強い口調、綺麗ながら強い視線で問い掛けてくる秋葉の前で私は説明をはじめます。
「こちらに倒れていた理由と、その前後の事は全く覚えていません。昨日の夜部屋で寝ていて。――目がさめたらこちらのお屋敷で起こされていました……」
「そう、嘘を言っているようにも見えないですわね」
「仕方がありません。記憶が戻るまではこちらに泊まってもらう事になりそうですけど。……よろしいかしら?」
「滞在許可ありがとうございます、私からもよろしくお願いします」
 私は状況が全くわからないまま、秋葉と言う少女の住む屋敷に逗留することになりました。


――それから二日。
 屋敷にもなじんできた私は、最初に通された部屋で少々退屈をもてあましていました。
 すると、お屋敷に住んでいる琥珀がやってきて世間話をはじめます。
「……そう言えば、咲夜さんは昔何をやっていたんですか?」
「貴方達二人と同じような事をやっていました。毎日きちんとお嬢様をお迎えして、雑用をキチンとこなす。貴方達と同じメイドです」
「♪♪♪~~~」
 その話を聞いて琥珀は楽しそうに語りかけてきました。
「それじゃあ提案です。咲夜さん♪」
「なんでしょう?」
「あなたも私達といっしょに働きませんか? お嬢様は下で紅茶とケーキのティータイムをくつろいでますし、あなたの働いている姿を私もみせてもらいたいな~~~なんて」
 丁度体を動かしたいと思っていた矢先、何よりただ厄介になっているのは私としても性に合わないので、琥珀からの申し出を受け取ると、そのまま二人で下で待っている秋葉の所へ出向きました。
 私が秋葉に先程の件を伝えると、彼女は紅茶を一杯飲みなおします。
「そう? 今の所メイドは足りているのだけれど……」
 彼女は少し考えた後、にっこりと笑って私が働く事を許してくれました。
「けれど、あなたが働きたいと言うんでしたら私としても嬉しいわ。これからよろしくお願いしますわね」
「ハイ! これから精一杯働かせてもらいます!!」
 私はこうして、こちらのお屋敷でもメイドとして働かせてもらうことになりました。

――更に数日。
 この屋敷の構造にも大体慣れ、今日一日頑張っていこうと気合を入れなおし起床すると、翡翠が扉をノックして入ってきました。
「どうしたんです? 朝からこちらに来るなんて珍しいですね」
「秋葉様がお呼びになってます。――少し話したいことがあるそうです」
 一体何事だろうと思い、下におりていくと、秋葉と琥珀がテーブルについて私が来るのを待っていました。
「おはようございます、咲夜」
「おはようございます。今日は一体何事でしょうか?」
「咲夜、あなたにはメイドとして翡翠&琥珀と勝負をしてもらうことになりました」
「えっと……。それはどういった状態なんでしょう??」
 突然の事態に混乱して疑問を口にすると、琥珀が続きの説明をはじめました。
「実はですね~。昨日のティータイムの時間に秋葉様と咲夜さんの事について話していたんです」
「秋葉様が『主への気配り、料理洗濯等の技能、礼儀作法ともに優れていて優秀な娘』と評していたのを聞いていました。そうしたら、脳内でキュピーンと閃きまして、私達と咲夜さんでメイド対決をしたら楽しいかな~って♪」
「わかりました。ところでメイド対決と言うのはどういった事をするんです?」
「メイドとして必要なスキルについて咲夜と翡翠&琥珀で対決をしてもらいます」
「こちらの二人は場合によって交代で一人ずつ出てもらいます。二人で全体になるようにしつけてありますから」
「そして、私は一人……少し条件的にきついですね。ですがこんな所で逃げるのも嫌です。当日は容赦しませんからそのつもりで」
 メイドとしての格付けというのにはそれほど興味は無かったが、紅魔館のメイド長としてはこんな所で負けるわけには行かない。
 なにしろ私は完全で瀟洒なメイドなのですから。
 闘志を燃やす私と、あくまでも楽しそうに状況を見ている三人。その前でメイド対決の準備はゆっくりと進行していきました。

――そして、メイド対決当日。
 私が上から広間におりていくと、下で秋葉、翡翠、琥珀の3人が待っていました。
 よくみると広間の壁は『メイド格付け勝負! 紅魔館VS遠野家! 真のメイドは誰だ!』 とか誰が考えたんだかわからない横断幕がかかっていたり、紙で作った飾りなどで装飾され、いつにも増して賑やかになっていました。
 ここら辺は幻想郷の連中と同じだな……と、思っていますと勝負の内容を告げられました。
「翡翠、琥珀、咲夜。今日は遠野家と紅魔館のメイドとしての格付け勝負です。精一杯悔いの無いように頑張りなさい」
 秋葉の声が広間の中に響きます。
「さて、第一回戦の内容ですが、メイドとしての基本『料理』、そして我が家の代表として琥珀が出ます」
「審査についてですが、私だけでは不公平なので私の友人である浅上女学院の方達も呼ぶことになっているのでそのつもりでいてください」
「ふふふ~、負けませんよー♪」
「こちらも手は抜きませんからそのつもりで」
 私と琥珀は互いに睨み合い、言葉をかけあいます。
 私達が心の準備を整えたその時、会場内に開始の声が響きました。
「それでは料理対決! スタート!」
 台所をあさって料理できそうな物を適当に見繕い、今日のメニューを考える私。
 今日はハンバーグステーキと野菜の盛り合わせにしよう。私は意を決してさくさくと料理を作り始めたのです。

――一方その頃の琥珀。
 昨日は和食でその前の晩が洋食、浅上の秋葉様のお友達に合わせると……。と、各員の好みや昨日、今日のデータを元に台所の中を動き回ります。

 私と琥珀が料理を作り終えた頃、3人の女の子が遠野家にやってきました。
「おまえさんがあたしを呼ぶなんて珍しいな。料理対決って言ってたけど一体何を食わせてくれんだい?」
 短く青い髪をおろしたボーイッシュな雰囲気の女の子と
「あー、秋葉ちゃんだ~。こんにちわ~」
 ボケボケした雰囲気の茶色い髪の女の子。 
「遠野先輩、私を呼んでいただいてありがとうございます」
 それに、丁寧な言葉遣いの紫髪の女の子が遠野家に入ります。
 そうして、同じ学校の制服を着て、部屋に入ってきた3人が広間のテーブルに着くと、私と琥珀の料理が配られました。
「わ~、この料理食べやすくていいですね~」
「ああ、ちょっと辛めな所が最高だな」 
「そうですか? 私のはそんなに辛くないですけど、肉の火のとおりが絶妙で食べごたえがあります」
 3人で料理をつつきあいながら、口々に琥珀の料理を褒める3人。
 そう、ここは遠野の家、琥珀にとっては庭も同然のこの場所、地の利に優勢な琥珀には負ける要素などありません。
 料理の技能だけなら互角な琥珀と私。
 しかし、毎日ここで料理をしている彼女と、こちらに来て数日間しかいない私。
 レストランのメニューとしてならともかく、振る舞いの料理としては琥珀の方が上だったのです。

――結果。
「勝者、琥珀!」
 私は苦い一敗を刻みました。

――第二回戦――

 第一回戦の熱気覚めやらぬ中、第二回戦目の試合内容が告げられます。
「メイドたる物、主の危機に察し自ら率先して戦う能力が必須。そこで、第二回戦は格闘勝負をしてもらいます」
「なお、今回の遠野陣営の出場者も琥珀とさせてもらいます」
 その第二回戦の掛け声とともに、相手方の琥珀がこちらに指をビシイッ! と向け、高らかに勝利宣言を始めました。
「さて……。咲夜さんには悪いですけど、ここで二本目も先取して完全勝利と行きますよ~」
 勿論、格闘技術においては魔力、体術ともに最強と言われた私が後れを取ることなどありえません。
 まずは相手に対する牽制の意を込め、ベルトから数本のナイフを取り出すと、琥珀に向かって投げつけます。
 しかし、琥珀はそのナイフを余裕の表情でよけていきます。
「ふふん、甘いですよ~、それじゃあ今度はこちらから行きますね~」
 そうして、てやや~と掛け声よろしく手に持った箒で殴ってきました。
 私は箒を片手で受け止めると、箒から重さと勢いが伝わってきます。
 どうやら言葉だけではなく、実力も相応にあるようです。
 そこで、もう一度ベルトからナイフを取り出すと、地面に向かって投げつけました。
「どこ狙ってるんですか~? そんな所に投げても意味ないです……って痛い……痛いですよ~」
 先ほどのナイフと違い、地面に投げると跳ね返るよう、魔力を組んだナイフを投げた私。
 流石にそういった攻撃をよけるのは難しいのか、ナイフは琥珀の体に当たっていきます。
 そうして、もうそろそろ相手を倒せるかと思ったその時。
 琥珀はなにやら特殊な構えをしたかと思うと、体当たりをしてきました。
 牽制のためにナイフを投げますが、その攻撃はとまらず……。
「トゥ、タァ……テヤヤ~」
 私の体力を一気に削ります。
 こうして、戦いは五分と五分にまで持ち込まれていきました。
「咲夜さん、やりますね~。最終奥義まで決めて倒れなかったのはアルクエイドさんたちを除けばあなたが初めてですよ~」 
「あなたこそ、どこでそんな拳法を覚えてきたのか、是非とも後で教えてもらいたいですね」
「私に勝てたら考えてもいいかな~。なんて♪」
「そう。あなたに奥義があるように、私にも奥の手があります」
 そして、懐から一枚の符を取り出し、魔力を蓄えると一気に技を開放しました。
「傷魂――ソウルスカルプチュア」
 魔を解き放つかのように容赦なく部屋中を飛び跳ねるナイフの斬撃、それは防ごうにも防げるような物ではない暴風のような物。
 いかな琥珀とてその斬激から逃れる術はなく……。

 かくして、私の勝利で二回戦目は終了したのです。

――第三回戦――

 先ほどの戦いで気を失った琥珀が目覚めるのを待って、三回戦を始めます。
「第三回戦は掃除です。メイドたる物掃除のひとつも出来なくては困ります。ですが、そこに居る琥珀が掃除をすると物が壊れまくると言う恐ろしいことになります」
「よって、第三回戦目は翡翠が出場することととします」
 秋葉の隣で思いっきり横断幕を振りながら翡翠を応援する琥珀。
「翡翠ちゃ~ん、勝ったら姉さんが翡翠ちゃんのためにもう何だってしちゃいますよ~♪♪」
 応援を聞きつつ顔を赤らめて講義する翡翠。
 私は一向に事態が進まないので意を決して
「掃除のルールはどうなってます?」
 と聞くと、当主の秋葉自ら掃除する部屋に連れて行ってくれることになりました。
「もともと掃除をしている区間は毎日のあなた方の掃除で綺麗になっています。ですから、地下のフロアを掃除することにしましょう」
「この屋敷にはそのようなフロアがあったのですか?」
 秋葉が掃除のフロアに連れていく最中の説明。私がその説明に疑問に感じて聞き返すと、秋葉から答えが返ってきました。
「もともとは牢屋になっていた空間の一部を琥珀が改造して数個部屋として使っているんです。基本的には琥珀の管轄下なので、琥珀以外には掃除をしませんから」
「なるほど、掃除をしない琥珀さんの部屋なら掃除をした後の見栄えでわかると言う事ですね」
「そう言う事。さあ、着きましたよ」
 到着した先は二つの倉庫。大きさも形も大体同じくらい。
 中は物が詰まっていて良くはわからないですが、先に私が選ばせてもらえるのだから文句は言えません。
 少し考えた後、右側の倉庫を選び、中の掃除を始めました。
――掃除をはじめて一時間。私がそれなりに分類をし終わった頃。
 いきなり扉を蹴り倒すと、見ていたはずの琥珀が部屋の中に乱入しました。
「あの? いきなり何事でしょう?」
 乱入してきた琥珀に驚いて声をかけると、
「いいですか~、今回の勝利条件はどちらの部屋がより綺麗にかたずいているか勝負。ならば、勝利のためには相手の部屋を徹底的に散らかすのもまたひとつの方法。勝利の為にはどんな手でも使う。これ最強の策」
 などととんでもない事を言って部屋の中を荒らし始めました。
 折角かたずけはじめた部屋に、破壊されたビーカーやら、どっからでてきたかわからない盾、妙なしゃべり方をする招き猫、翡翠人形やら陰陽球といったものがごろごろと散らばりまくり、とても掃除にはなりません。

 かくして、第三回戦目は翡翠の勝利に――。
――と思ったのですが。

「第三回戦目の審査の前に見せたい物があります」
 そう言って、秋葉は皆の前で魔力が篭っているのか、不思議な糸を取り出してきました。
「これは咲夜の部屋の一部に設置しておきました」
「琥珀、この意味がわかりますか?」 
 その問いに、ちょっと顔を強張らせた琥珀へ、止めの一言が付け加えられます。
「人の思考を読むこのエーテライトの前で嘘をつくのは意味がありません。観念して不正を認めますか?」
「うう……認めます」
 こうして三回戦目は私の勝ち。
 紅魔館vs遠野家のメイド対決は2対1で紅魔館の勝ちとなりました。

――さらに数日。
「咲夜さん、玄関に綺麗な女の方が迎えにきてますよ」
 その声を聞いて、急いで玄関先に下りていくとレミリア様と紫様が待っていました。
「レミリア様、それに紫様まで来ていただけるなんて……」
 数日振りの再会で、急に胸の辺りが締め付けられるような感覚を覚えた私。
 レミリア様も同じような感じだったのか、二人でしばらく抱き合って、再開を確かめ合います。
 再会を確かめ合って数分。紫様から説明が入りました。
「咲夜、あなたが魔道具を使って夢の世界に入った事は覚えてる?」
「ええ……そしておきたらこちらの屋敷の前で倒れていたそうです」
「あなたが寝てから私たちがここに来るまでの間、幻想郷では約1ヶ月ほど経っててね。レミリアが心配になったんで、私と一緒にこちらの世界に飛び込むことにしたのよ」
 なんでも、私が魔道具を使って寝た後、一向に私が姿を見せないので、心配になって私の部屋に向かうとずっと寝ている様子。
 心配になって香霖堂に赴き、詳細を聞いたのだが、解決策がわからない。色々回っていくうち、紫様の力で夢の隙間に潜り込み、レミリア様の縁で私を探す事にしたと言うのです。
「まぁ、貴方がいないとゆゆこや妖夢も張り合いがないのよ」
 説明が終わった後、そう付け足した紫様も心配してくれた様子でした。
「さて……これから帰るわけだけど、何か心残りはある?」
 すぐに帰りたい気持ちは勿論、しかしここで過ごした期間は何か夢の中とも思えない感覚だったのもまた事実。
 そこで紫様に、
「夢の中とは言え、ここにいた琥珀や翡翠たちにも挨拶をしておきたいんです。よろしいでしょうか? 紫様」
 と報告して、秋葉たちの元に向かったのです。
「良かったじゃないですか、咲夜さん」
 純粋に喜んでくれる琥珀と
「貴方がいなくなってしまうのは寂しいのですけれど、仕方ありませんわね」
 少し寂しそうにしつつも送り出してくれる秋葉。
「おめでとうございます、少しだけ残念ですが」
 いつものように事務的に、でもほんの少し残念そうに送り出してくれる翡翠。
――そうして、3人に別れの挨拶を済ませた後、紫様達と共に幻想郷に戻りました。

「咲夜さん、咲夜さんが起きました♪」
 目の前で小躍りしつつ、本当に嬉しそうに迎えてくれた美鈴。
「……ブツブツ……咲夜がいないと困る……」
 本で顔を隠しながら出迎えてくれたパチュリー様。
「咲夜~……咲夜~……」
 いきなり起きた瞬間に胸に飛び込んできて泣きまくっているフランドール様の3人の姿をみて、戻ってきたんだと実感。
 それから、数時間の質問攻めでどんな夢を見たいたのかをあらかた説明すると、今日の所はひとまず就寝。
 眠りすぎていて逆に寝れなくなりましたけど、紅魔館のメイドとして再スタートしたのです。

――次の日
 夜に宴会をする事が決まり、霊夢がいつもどうりブツブツ言いながら、宴会の準備をしている最中。レミリアお嬢様に呼ばれました。
「咲夜、あの和紙はいい夢を見る道具だといっていたわね」
「はい」
「それで、いい夢は見れた?」
「ええ、悪くはない夢が見れました。でもあれは最良の夢ではなかったみたいです」
「どうして? 咲夜」
「私にとって、一番望んでいる世界はお嬢様がいて、妹様がいて、パチュリー様や美鈴……霊夢や魔理沙がいるこの世界。そんな、いつも暮らしているこの場所だって、気づいたんです。だから、どんなに良い世界でも、私にとってはここが一番。お嬢様達がいる世界と比べる訳には行かないですから」
「そう……」
 私の話に驚き、
「何かとても嬉しい事を聞いた気がするわ」
 ちょっと照れた様に言葉をつなぐお嬢様。
「なら、今日のあなたのための宴会は盛大に盛り上げないと」
 彼女は照れ隠しでもするように小悪魔を呼びます。
「小悪魔、居るわね」
「今、家にある酒蔵から一番良いワインを持ってきなさい」
 彼女が用事を言いつけると、小悪魔が酒蔵に飛んでいきます。
 そうして、本当に一番良いワインをお嬢様の元に持ってきました。
「お嬢様、その……本当にいいんですか?」
「良いのよ、酒なんていうのは飲むためにあるんだから」
 持ってきたワインの封を切り、優しく小言を言う彼女。
「あなたが居ない一ヶ月は退屈でしょうがなかった。だから、もう勝手な行動は謹んで頂戴」
 私はその言葉を頂いて今日の宴会を楽しみに待ちました。

 宴会まであと一時間あまり……。今日の宴会はいつもより長くなりそうだと思いながら。

――END――
はじめまして、ホームページで結構書いているんですが感想とかこないんで思いきって投稿してみました。

途中まで書いたのですが、残りの文も見たいという方がいらっしゃいましたのでこちらの訂正をさせてもらいます。

月x東方のクロスなので、そう言うのが嫌いな方はすみません。
策謀琥珀
[email protected]
http://cookmake.hp.infoseek.co.jp/index.htm
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コメント



0.360簡易評価
4.無評価MIM.E削除
僕はいつも作者様は何を思って作品を書いたのか知りたいと思って読んでいます。
僕自身もいつもそうなんですがwレスが欲しいという作者様の気持ちがよく伝わってまいりましたので、一バカの感想ですがお納めくださいませ。
ほのぼのしててよいと思いました。
ですが、おそらくこのお話の一番の見せ所はこの先だと思いましたので
続編を期待しつつ、評価はそのときがあればさせていただきます。
6.無評価名無し削除
折り返しを消してしまっているので非常に読みにくい、というのが第一印象。
台詞で話を転がしているのだろうけど、
台詞の中に動きがなく、描写も少なすぎて情景が浮かばない。
また、描写自体も香霖視点なのか咲夜視点なのかがわかりにくく、戸惑った。
今の段階で感想といわれると「次に期待しています」だけど、
香霖を中心に不思議な謂れをもつ道具とゆったりとした雰囲気は非常によいと思う。

「次に期待しています」
8.無評価策謀琥珀削除
名無しさん>自分の欠点を見つけに来るためにこちらに来たので、率直な意見、非常にありがたく受け取らせてもらいます。

MIM.Eさん>続編は世界が月姫に変わってるので投稿するのは止めておいたところです。

書いてはいるんですが、こちらで上げるかどうかはちょっと不明という事で。
11.無評価策謀琥珀削除
書き直して、全文公開にしました。
12.無評価MIM.E削除
メイド勝負か…主への忠誠という点では咲夜さんに一票入れたいけふこのごろ。
13.30名前が無い程度の能力削除
 気になった点を羅列させていただきますが……。

・霖之助の口調が少し丁寧すぎる。
・地の文が、一人称だったり三人称だったり変化している。
・「香霖」というのは「魔理沙が霖之助をよぶ時の言い方」なので、三人称にしろ咲夜視点にしろ、
 地の文には合わない。
・咲夜はレミリアのことを、基本的に「お嬢様」と呼ぶ。もっともこれは、紅魔郷において最終面まで
 ラスボスの名前を隠しておくための仕様が元だったらしく(妖々夢でも妖夢は幽々子のことを「お嬢様」、
 永夜抄ではレイセンや永琳は輝夜のことを「姫」と言っているが、妖夢は後の作品では「幽々子さま」
 と言うようになっている)、そういう意味では「レミリア様でもよいのかも。
・文頭にスペースのある時と無い時がある。
・咲夜が琥珀の事を、呼び捨てにしたり「琥珀さん」と呼んだりで統一されていない。
 内心、あるいは琥珀と一対一の時は呼び捨て、と、そういう風に分けているのだとしても、
 それがわかりにくい。
・ですます調の文とそうでない文が混ざっている。
・咲夜は「紫様」とは言わない。「紫」あるいは「貴方」。
・「ゆゆこ」は漢字で書いてほしい。
・一人のキャラの一つのセリフを、複数の「」で区切っている所がある。そういうのも一つの演出方法では
 あるが、うまく使わないと誰のセリフだかわからなくなる危険がある。

 偉そうなことを言ってしまってすみません……。
 ただ、話の内容自体は、夢の持つ非現実的な空気をうまく使って、なかなか上手なクロス物になっていると思います。地の文の薄さも、つかみ所のない「夢の中」という雰囲気を出すには合っていると感じました。