「・・・・遅い」
指をテーブルにタンタンとリズムよく打ちつける。
場所は学校から比較的近いお気に入りのカフェテリア。
私、マエリベリー・ハーンは友人である宇佐見 蓮子を待っていた。
「さて、記録更新かしら?」
ふと時計に目をやる、もうかれこれ三十分ほど奴は遅刻だ。
既にこの店に来たときに頼んだタルトは食べ終え、紅茶も既に空だ。
いままで奴の遅刻最高記録は33分42秒、これも今日には打ち破られるだろう。
今日の蓮子の遅さは並ではない。
「残り十秒」
小さな声でカウントダウンする。
「5 4 3 2 1 0・・・・おめでとう蓮子 死ねばいいのに」
祝福の言葉とともに、この言葉を送りたい。
長丁場になりそうなので、追加注文するためにと店員を呼ぼうとした。
カラン カラン
どうやら奴が来たようだ。
ぱたぱたと靴音を立てて、その憎いあんちくしょうはこちらのテーブルに近づいてきた。
「遅れてご「遅い・・・」
蓮子を睨めつける。
「まあまあ、落ち着いて」
そんな事は気にしてないかのように椅子に座る。
「すみませ~ん、コーヒー下さい」
そして何事も無かったようにオーダーを頼む。
はぁ、ため息がでる。
「まあ、いいわ、いつものことだし・・・。で?所で今日は何の為にここに呼んだというの?」
だいたい見当はついている、ここに呼び出すということは秘封倶楽部の活動であることは明白だ。秘封倶楽部とは私と蓮子が作ったサークルなのだが、もっとも、まともな活動をしない不良サークルで主な活動は、カフェでお茶したり、ティーしたり、おしゃべりとか、おしゃべりとか、おしゃべりとかだ。 しかし、まれに蓮子から急な呼び出しをくらうことがある、その時は大概、『結界暴き』という活動を行う。まあ、墓荒らしとか肝試しと同じと考えて貰っていい、やることは大体同じだ。
「もちろん、今日もいつも通りサークル活動よ」
「えっと、湯煙道中食べ歩きツアーだっけ?」
「いつから、この部活はそんな素敵な部に変更になったのかしら?」
「冗談よ」
「で、どこに行くというの?」
私はさっさと本題を切り出そうとした。
「まあ、焦らないでよ、まずは話の発端を話してから」
「何なの?」
「Nホテルの連続失踪事件って知ってる?」
「知らない」
そんなゲームのような名前の素敵事件は身に覚えがない。
「まあ、知る分けないか」
ちょっとムッとした。
「実はね、あるホテルで連続して人が消える事件が起こってるの」
「それは、さっきの『ホテルの連続失踪事件』からで連想できるわ」
「まあまあ、落ち着いて。それでね、その事件、実は表に出ていないの」
「なんで?」
「ちょっとした大人の事情ってやつよ」
「なにそれ、そんなことあるの?っていうかなんでそんなこと知ってるのよ?」
「まあ、大人の世界は汚いって事、事件のことは世界の裏側で分かったわ」
どうせ、ネットのアンダーグラウンドという所だろうと私は解釈した、蓮子の活動範囲のネットワークは意外と広いらしい。
「で、その事件の内容は?」
「そのホテルに泊まった人、総勢6人が忽然と消えてしまったらしいわ、消息は不明、犯人も分かってないわ」
「神隠しってやつね・・・」
「ええ、事件はもみ消されてマスコミは動いていないし、警察もさっさと追い払われたらしいわ、まあ、たとえ動いたとしても犯人は分からないだろうけど・・・」
「どういう事?」
「ちょっと待って」
そう言って蓮子は鞄を漁りだした。
「あった」
蓮子が手にしていたのは一冊のファイルだった、表紙には怪奇事件NO3と書かれてある。
ペラ ペラ
目的のページを探す。
「これよ」
蓮子が開いたページには蓮子が書いただろう文章と、数枚の写真が貼られていた。
『Nホテル連続失踪事件』
・Nホテルでは最近、宿泊客が連続して失踪するという事件が起きている。
・犯人は不明
・現在で男性3名、女性3名が失踪、行方は不明
・マスコミによって取りあげられていないのは□□組が関与していると思われる
・最後に消えた男性が撮った写真以外手がかり無し
以下略
そして、ある一枚の写真に目を向けた、そこには・・・・・。
「なによこれ・・・」
ある男性と女性が写った写真、一見普通の写真だと思われる。
が、問題は男性の方の肩、そこにはどこから伸びているのだろうか白い手が・・・。
「なんだ、普通によくある写真じゃないの」
まったく子供騙しもいい所だ、今時こんな物、バラエティー番組で飽きるほど見れる。
「そうね」
「こういう写真って、よく悪戯でやるじゃない?ほら、集合写真とかで」
「でもね・・・」
「この二人も姿を消したのよ、この写真を撮った日に・・」
「・・・この写真が合成って事は?」
「さっきも言ったけど合成である確率は捨てきれないわ・・・、でも掲示板で語られるには合成にしては自然過ぎるって」
「この写真は本物?」
「たぶん・・・このカメラもこの男性の持ち物だったらしい」
「日付をいじくった物では?」
「誰がわざわざ、そんな面倒な事をやるの?」
たしかにその通りだ。
わざわざそんな大がかりなことをする奴はいないだろう、わざわざ自分が消えてまで。
「それに、この男性は他にも写真を撮ってたの、ほらこの写真とか、この写真はホテルの近くでとられた物よ」
「それで?」
「その写真には星が写ってたから時間が分かったわ、確かにその時間よ」
蓮子は人とは違った能力を持っている、その能力とは『星を見ただけで今の時間が分かり、月を見ただけで今居る場所が分かる程度の能力』という物だ、まったく長ったらしい。
「で、なんで、この事件を取り上げたの?」
こんな危ない事件正直まっぴらだ、意外と人為的な物かも知れないし。大人の事情でマスコミや警察すらも黙らせるような所だ、案外、裏の人がらみの人身販売や臓器売買、殺人かも知れない。
「たしかにね、こんな危ない事、普通は取りあげないわ」
「じゃあ、なんで?」
「ここをよく見て」
蓮子が指を指す所、そうだちょうど手の置かれた男性の肩の左上に。
「これって・・・」
「そう、結界よ・・・」
たしかにそこにはうっすらとだが結界が発生していた、現代で言うと時空の歪み、磁場の乱れとか言われている。それが写真に写されている、まるで断層が起こっているかのような世界のズレ、それを見逃さなかった。
「そうか・・・わかったわ、蓮子」
「そういうことよ、メリー」
何を隠そう私、マエリベリー・ハーンは『結界が見える程度の能力』を持っている。
私はこの能力で、この世にある結界を見ることができる、つまり、この写真に写った結界の場所に行って結界を暴こうというのだ。
「つまりはここに行って、この事件を暴こうっていうことね」
「正解!」
「じゃあ、私はここら辺で・・・」
がしっ
「逃がすか~」
がっしりと腕を捕まれていた。
「離して!こんな危ないことやってらんないわよ!」
「何!?メリーにはこの事件に立ち向かう正義と冒険心は無いの!?」
「無いわよ!そんなの!」
「だめよ、運命の歯車はもう動き出してるわ、拒否したら未来の人達の運命が大きく変わって――」
「いやだ~帰る~」
「じゃあ、今度の日曜日に駅に集合ね」
「絶対、行かないんだから!!!!」
日曜日、●●駅前
「なんで私はここにいるんだろう・・・」
はぁ、とため息をつく。
なんで、こんな所にいるかというと、ぶっちゃけ脅された。
毎日、毎日、非通知で電話がかかってきて、何かと思ったら、
「現在、○時○分○秒」
という知りたくもない時報がかかってくるのだ、向こうから。
またあるときは「次に消えるのはお前だ!」とか「お前の恥ずかしい写真をばらまくぞ!」とかあからさまな脅迫電話がかかってきたりした。
正直、失踪事件なんかよりも、そっちの方が怖かった。
「それにして、人に脅迫電話かけたりして連れて来らした割には当事者はまた遅刻か・・・」
相変わらず蓮子は遅刻だ、あとでジュースおごってもらおう。
数分後―――
「あれ?珍しいわね、メリーが来てないなんて」
~♪~♪
携帯電話が鳴った、番号は非通知。
「誰だろう・・もしもし?」
「私、メリー、今駅にいるの ガチャ」
ツーツーツー
~♪~♪
再び携帯電話が鳴る。
「もしもし?」
「私、メリー、今あなたの後ろにいるの、振り向いたら首を落とされるわ、だから後ろを振り向かず今すぐ家に帰りなさい」
ピッ 携帯を切る。
と、同時に華麗なる後ろ回し蹴り。
「ぐはっ!!!」
後ろにいたメリーの横腹にクリーンヒット、崩れ落ちるメリー。
○宇佐見 蓮子VSマエリベリー・ハーン●
T・K・O(テクニカルノックアウト)。
「なに、遊んでるの?早く行くわよ」
「わ、わかったわよ(いつか絶対泣かす!)」
「で、目的の場所はどこなの?遠いの?」
「遠くないわ、隣の△県よ」
なんだ、意外と近いじゃないか、隣の県までなら正味20分くらいで着く。
「じゃあ、行くわよ」
「お~」
超棒読みで自分の気合いを見せてやった。
△県▲町
「で、そのホテルっていうのは、そんな事件が有ったのにまだ営業してるの?」
「ええ、よく分からないけど」
「営業してるのなら、忍び込むことはできそうにないわね・・」
基本的には私達の活動は無許可でやっている。
「大丈夫、お金はけっこう持ってきたから」
「頼もしい限りね」
「着いたわ・・・」
Nホテルそこは少し大通りからはずれた所にあった。
「ここか・・・」
連続失踪が起こった場所、そのホテルは私達に無言の圧力を見せた。
「って、ここ・・・・」
「ラブホテルじゃん!!!」
目の前にそびえるホテル、どう考えてもあれなホテルだ。そう言えば『失踪者は男3名、女性3名』って書いてあった、なるほど納得がいく。
「そうよ、言ってなかったっけ?」
「言ってないわよ!」
「まあ、いいじゃない、行こう」
「ちょっと待てえぇ!!」
「何?」
「なんで、あんたと一緒にこんな所入らなくちゃならないの!?」
「知らないの?メリー。こういう所は空気がよどんで磁場が狂いやすいから、意外と心霊スポットになりやすいのよ」
「だからっていやよ!」
グスッ
「え?」
「あんなに仲良かったのに、私との仲は遊びだったのね!」
ヤバイ、何を言い出すんだこの娘は。
「きっと、メリーにとって私はゲームの中の攻略キャラの一人にしか過ぎないんだわ!」
「な、なに言ってるのよ!(・・って歩く人がみんな注目してる!)」
ラブホテルの前で年頃の娘二人が言い争いをする姿は道行く人達には大層目立っていた。
「い、行くわよ!蓮子!」
蓮子の腕を引いて中に入る。
「分かればいいのよ」
さっきの泣き出しそうな顔は何処へやらだった。
「嘘泣きかよ!だましたな!」
「ああ、時間はフリータイムで」
「話を聞けぇぇぇぇ!!」
「うう、店員に絶対に誤解された・・・」
「へぇ~中は思ったより広いのね」
すでに蓮子は我が物顔で散策している。
「ああ、初めてのラブホがまさか女と・・・」
「いつまでうじうじしてるの?早く探そう」
「あ~、で、部屋はここであってるの?」
「分からないわ」
ちょっと待て。
「何!?部屋も分からないで来たの!?」
「だって、部屋までは分からなかったんだから仕方ないでしょう」
つまり、あれだわざわざそんな事のためにこんなに恥ずかしい思いをしたわけだ。
「つ~、この蓮子のアホ!まぬけ!ウサミミ!」
「うるさいわね!」
―――――――少女口喧嘩中――――――――
「その帽子もハゲを隠してるからでしょ!このハゲ!」
プチーン
「ハゲと申したか」
「は?」
よく見ると顔つきがいつもと違う、あと目も据わってるし・・・ヤバイ、これは犯罪者の目だ、まあ、犯罪者は見たこと無かったが、いたとしたら、きっと、こんな目をしているだろう。
「・・・・・蓮子?」
「ククククク・・・」
これはヤバイ、本能がそう叫んでいる。既に脳内のサイレン警報は大音量で鳴り響いてる。
「ねえ、メリー・・・・メリーさんの羊って歌知ってるでしょ・・・?」
「ええ・・だけど、それが何?」
一歩一歩後退する。
「あの、歌の終わりってね・・・」
「な、何?」
「メリーは嘘ばかりついていたせいで、羊もろともオオカミに食べられちゃうの」
「ちょ!それ話違う!」
もちろん、メリーさんの羊はそんな殺伐とした歌ではないし、蓮子が言ってるのは童話の『オオカミ少年』であって全然関係ない。
「ああ、かわいそうなメリーさん」
一歩一歩こちらに蓮子が近寄って来る。
「助けを呼んでも誰も来ない」
ああ、やめなさい、その手をゴキゴキさせるのは。
「かわいそうなメリーさん、逃げても無駄・・・ああ、オオカミに捕まってしまった・・」
「(に、逃げ!)」
ガツッ
いつのまにやら、壁に追いやられてしまった、何と言うことだろう自分は逃げているつもりだったが結局自分を追いつめる結果になってしまったとは・・・・。
自分の危機回避能力の無さがふがいない。
「まずは足、そして指、腕、内蔵、首、そして頭・・・」
失踪事件を追って、なんでこのような事態に陥った理由が分からない、っていうか目の前の人物の方が圧倒的に怖い。
「かわいそうなメリーさん、かわいそうなメリーさん、かわいそうなメリーさん、かわいそうなメリーさん、かわいそうなメリーさん、かわいそうなメリーさん、かわいそうなメリーさん、かわいそうなメリーさん、かわいそう、かわいそう、かわいそウ、かわいソウ、かわイソウ、かワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ、カワイソウ―――――」
ヤバイ、どう考えてもヤバイ、っていうか泣きそう。
正直今まで墓荒らし結界破り、夢の中で怪物に出会ったことは有ったが、こんなに怖いと思ったことは今まで、いや生涯無いだろうと思う。
今や私は目の前のオオカミに捕食されるだけの哀れな羊にしか過ぎない。
食べられる動物の心がよく分かった、今度からベジタリアンになってるかもしれない、今度があればの話だが。
「(こ、殺される!!)」
覚悟して目をつぶった。
ふみょん
「え!?」
目を開けてよく見ると蓮子は私の胸を掴んでいた。
「胸がでかいからって、いい気になってんじゃねえぇ!!!!」
力の限りひねり潰す。
「痛い!痛い!痛い!」
「ええのんか!ここがええのんか!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
ヤバイ、このままでは※される、何とかしないと・・・。
「れ、蓮子!ごめんなさい!謝るから!謝るから、許して!」
もう、謝るしかない、それしかもう私にはできない。
ピタリ
蓮子の手が止まった。
「その表情、私を誘ってるのね!?そうなのね!?」
薮蛇だった、しかも、ベットに押し倒された。
「きゃあぁぁぁぁっ!」
「あらあら、お暑いわね」
「そ、そんなこと言ってないで助けなさいよ!」
どこから湧いたか分からない女がヒラヒラと手を振っている。
「出たあぁぁっっーーーーーーーー!!!!!!!」
「え、何!?」
どうやら蓮子には見えてないようだ。
「あら、あなた私が見えるの?」
「バッチリ見えてるわよ!」
「ねえ、メリー?何が見えてるの?」
「ええ、なんか紫色のどこの国のか分からない様な民族衣装を着てるおばさ 痛い!」
持っている傘で殴られた。
「お姉さんが、でしょ?」
笑顔で、かつ威圧的な雰囲気で脅された。
「でも、この状態でお話しするのもね・・・」
パチン その女は指を鳴らした
「んあ?うわぁ!」
「初めまして」
「変な服着たおば 痛い!痛い!」
「まったく最近の子は礼儀を知らないようね」
その女は蓮子の首に腕を回し、見事なるチョークスリーパーをかました。
「で、あなたは誰なの?」
「私は八雲紫、妖怪よ」
さらっと自分が妖怪って事をカミングアウトしやがった。
「じゃあ、あなた達の番よ」
「ええ、私はマエリベリー・ハーン、人間よ」
「私は宇佐見 蓮子」
「で、あなた達はなぜこんな所にいるの?しかも女同士で」
「好きでいる訳じゃないわよ!」
「実は最近、ここのホテルで連続して人がいなくなる事件が起こっているんです」
「それで?」
「だから、私達が調査に来たってわけよ!」
「ふ~ん」
さも興味の無いことの様に聞く。
「で?確証もないのにわざわざ調べにに来たの?」
「確証は有ったわ」
「・・・詳しく聞かせて貰えるかしら?」
「このネットに流れていた写真を見て、ここです、歪みが見えたので調べに来たんです」
「ついでに言うと私は結界が見えるの、だからココに来たらなにか分かるかと思って・・。」
その言葉を聞いて一瞬、その妖怪は驚いた表情をした。
「・・・・なるほどね、で、あなた達は探偵?」
「いえ、私達は『秘封倶楽部』というサークルをやってます」
「へえ、あなたも不思議な能力を持っているのね?」
「!」
「ふふ、図星って所ね、分かりやすいわ」
「そうです、私は星や月を見たら時間や今居る場所が分かることができます」
その妖怪は笑みを浮かべた。
「あなたたち、あと千年くらい生きたらスゴイ妖怪になれるもしれないわ」
「ならないわよ!っていうか千年も生きられないから!」
「そう?残念ね」
「じゃあ、本題に入るわ」
「あら、何かしら?」
「しらばっくれないで!この事件を起こしたのはあなたなんでしょう!」
「私って言ったらどうするの?」
急に、その妖怪からえも知れぬ威圧感が出る。
「ここに、いるのは二人だけ、消えてもおかしくない状況よ」
ニヤリとその妖怪は笑った、言おうとしていることは分かる、この女は私達も消すつもりだ。
「蓮子!逃げるわよ」
「うん!」
電光石火、すぐさまドアを蹴って廊下に出る。
しかし
「おかえりなさい」
『な!』
そこは何故か先ほどの部屋の中だった。
「言い忘れてたわ、私の能力は『境界を操る程度の能力』」
「この部屋の境界を弄らせて貰ったわ、だから、あなた達はもうこの部屋から逃げられない」
「くそっ!もう一回よ!」
再びドアの外に出る、ドアを開いた瞬間の景色は確かに廊下だ。
「おかえりなさい」
「くっ!・・・・」
やはり、もとの部屋に戻ってきてしまう、確かにこの女の言ってることは間違いない、この部屋と廊下の間に境界が見えている、これを越えるとこの部屋に戻ってきてしまうらしい。
今や目の前の妖怪の笑顔が憎たらしい。
「さっきの『メリーさんの羊』の話だけど、さらに続きがあるの」
「な、何?」
「その食べたオオカミはね、猟師に石を詰められて井戸に捨てられるの」
サラリと恐ろしいことを言う、それにそれは童話の『赤ずきん』だ、無理矢理過ぎる。
もう、お手上げか・・と私は膝を地面に着けた。
「あなたは何故、このような事件を起こしたのですか!?」
「れ、蓮子!!」
「さぁ?当てて見てご覧なさい、そうね・・・当たったらここから逃がしてあげてもいいわ」
これは絶好のチャンスだ、というかこのチャンスを逃すことイコール死に繋がる。
「ああ、クレジットは一人一回まで、キチンと考えて頂戴ね」
一人一回とは厳しすぎる。だが、だいたい検討はついている。
「じゃあ、私から言うわ、ずばり人を食べるためでしょう!」
私が答える。
妖怪は人を捕らえて、食べるものだと昔から言われている、きっと、この妖怪も食べるために人をさらったんだろうと私は考えた。
「ハズレよ」
「え!?」
「確かに私達は人間を食べる、だけど、わざわざ人がいなくなる度に報道されると私達も困るのよ」
「?だからこのホテルを選んだんじゃないの?」
「それはヒントよ」
わからない、正直ヒントにしては難しい、そもそも、ヒントはもっと早めに言って欲しい物だ。
「わかる?蓮子?」
「多分ね・・・」
「本当に?これで正解しなかったら私達やばいわよ」
「う~ん、どうなのかしらね・・・」
「? はっきり言いなさいよ」
「多分・・この事件、そこの目の前の妖怪が黒幕じゃないと思う・・・」
「どういうこと?」
「だって一言も『私がやった』なんて言ってないもの」
「そんなトンチで・・・・」
「ピンポンピンポン!正解よ」
「マジですか!?」
「だって、確かに私がこの事件を起こしたわけでもないし、『私がやった』なんて一言も言って無いじゃない」
「じゃあ、あなたは何をしに来たの?」
「それを語るには長くなるわ、何か飲み物をとって貰えるかしら?」
そう言うと、その女は椅子に腰掛けた、私達もそれを見て緊張が解けた。
「いいわよ、なにがいい?」
「なんでもいいわよ、できればお酒がいいんだけど・・・・ああ、そこの飲み物、珍しい物ね・・・ついでに何本か持って帰るわ」
「はいはい、コーラね」
私は瓶のコーラを手渡した。
「じゃあ、本題に入りましょう、実はね私達が住んでる所、幻想郷って言うんだけど、そこで、ある異変が起こったの」
「何?」
「それはね、いくら経っても春にならない異変、もう春になってもおかしくないのに、まったく春になる兆しが見えないの、まあ、私は寝てたから知らなかったんだけどね。で、実は、それは私の友人が起こした事だったのね、で、その異変に気付いた何人かの人間が解決しに行ったの」
「それで?」
「・・・異変は解決したわ、だけど、その戦いでその場所に張られていた結界が綻んでしまったの」
「で、その結界の影響ががココに現れたってこと?」
「ええ、ちなみに消えた人達はこちらで保護したわ、ショックから立ち直ったら、そこにいた記憶を消してこっちの世界に戻すつもりよ」
「じゃあ、あなたは何もしてないのね?」
「その通りよ、私は頼まれてその結界を修復してるだけ」
「なんだ、そうならそうと早く言ってくれれば良かったのに・・」
「いえ、いえ、やっぱり妖怪は人を脅かしてなんぼよ」
くすくすと笑う。
それに・・・・こんな危険な遊びをするあなた達にお灸を据えるって意味もあったんだけどね。
今日は私だったから良かったものの、凶悪な妖怪だったらどうなっていたか分からないわ。
まったく、いつの時代、どの世界も若者は無茶するものね、おっと、年寄りくさかったかしら?
「ああ、もっとこっちを満喫したかったんだけど~」
「いいから、帰った帰った。あと、ちゃんと結界も閉じとくうようにね」
「はい、はい」
その妖怪は結界に入って消えていった、と同時に結界が閉じる。
と思ったら、また開いて手が出てきた。
「じゃあね~」
それだけを言うためにまた開いたらしい。
「じゃあね」
「さようなら」
再び、結界は閉じた。
「妖怪って初めて見たけど、みんなあんなのかしら?」
「知らないわよ」
「まあ、これで一件落着って所ね」
「お疲れさま、って殆どなんにもしてないけどね」
「まったくだわ」
アハハと二人して笑った。
「じゃあ・・・・」
「さっきの続きをしよっか」
忘れてた・・・妖怪よりも恐ろしい人物が目の前にいたことを・・・。
「ちょっ!ちょっと待って!その話は無かったことになったんじゃないの!?」
「何言ってるの?そんな筈無いじゃない、お楽しみはこれからよ」
「いやだあぁぁぁぁぁっ!!!!!」
「そうよね、いきなりって言うのもね」
「そうよ!蓮子!落ち着いて考えて頂戴!」
「まずはシャワーよね」
「もう、お家帰らせてえぇぇっ!!!!」
「しっぽり、しっぽり♪」
「あんたは早く帰れぇ!!」
かくして、連続失踪事件は二人の学生によって解決された。
しかし、この後、この二人がさまざまな事件を解決していくこ
「絶対にやらない!」
<終劇>
躊躇ってた領域に易々と踏み込んだwwwうぇwwwwうはっwww
笑わせていただきましたー。
で、このあとゆかりんを交えて3Pになるわけですか?
可愛い女の子を食べるためにこの事件をでっちあげたんだ!
しっぽり
腹に石詰められて井戸に落とされるんでしたっけ。
化学世紀のテキストを読む限りだと蓮子は自分の欲望に忠実な人という
イメージが強いです。頑張れ狼さん。その獲物(メリー)は手強いぞ。
れんこんかわいいよれんこん
ゆかりんピーピングの下、蓮子攻めでしっぽりしっぽり。
メリーがぐったりしてきたところでおもむろにゆかりん参戦、もちろんゆあ攻め。
しばらくして起きたメリーがゆかりんに加勢、蓮子がぐったりするまでしっぽりしっぽり。
そして夜は更けていくのでした。めでたしめでたし。
誰か書いてくだたい。
>「もう、お家帰らせてえぇぇっ!!!!」
>「しっぽり、しっぽり♪」
>「あんたは早く帰れぇ!!」
このやり取り大好きw