Coolier - 新生・東方創想話

秋めく二人

2026/09/07 21:46:53
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 「もうだめ、今年で紅葉の神は引退だわ……」
「今年もそんな季節かー。……がんばって、お姉ちゃん!」
 夏の終わり。気温も少しずつ涼しくなって、秋が近づいてくるのを感じられるようになる頃。
 作物たちの収穫時期が近づき、その準備に穣子は忙しくしていた。
 それと同じく、静葉も自分の役割を果たすべく苦しみ、悩み、考えに考え抜いた末、挫けて自宅の縁側に倒れ込んでいた。
「もう無理よ……。毎年、毎年、紅葉の色合いを考えてきたけどネタ切れ。赤だけで二百以上は考えた気がするわ……」
「そんなこと言わないで! 毎年綺麗な紅葉だって、みんな喜んでるよ!」
 紅葉の色鮮やかな赤、それは紅葉の神である静葉が、産みの苦しみの中、一枚ずつ塗っていることを知る人は、ほぼいない。
 毎年の紅葉の色を決めるこの時期。
 収穫の準備の傍ら、挫ける静葉を応援することが、穣子にとって毎年恒例の行事になっていた。
「どうせ私なんて、誰も信仰しないし、引退したって何も変わらないわ……」
「何言ってるの! 人にできない、必要なことをするのが神様なんだから。お姉ちゃんのおかげで、綺麗な景観と一緒に立派な腐葉土ができるのよ? 私もみんなも感謝してる!」
「……本当に?」
「本当だよ! だからがんばってお姉ちゃん!」
 立派な自然薯を傷つけず丁寧に掘り起こすように、穣子は静葉を褒め称える。
 頭が出てきた。もう少しで外に出てくる。
 穣子がそう思ったとき、静葉は突然何かに気づいてハッとする。
「でも、腐葉土に色は関係ない。やっぱり私は必要ない……」
「あっ、また沈んだ! 今年は根っこが深いな……」
「あの枯れ葉が散ると共に、消えてしまいたい……」
「しっかりして! あれ塗るのも役目でしょ!」
 再び縁側に寝そべる静葉を、穣子は必死に揺すりながら褒める言葉をかけ続けた。

 そうしているうちに、気づけば高かった日は山の向こうに沈みかけていた。
 真っ赤に染まった夕日が、姉を応援するのに疲れた穣子と、縁側に寝そべったままの静葉を照らす。
「もうこんな時間か……。お姉ちゃん応援してたら終わっちゃった」
 何の進展もなく落胆する穣子をよそに、静葉は未だうつ伏せのまま、顔だけを夕日に向けたまま茫然としていた。
「お姉ちゃん。さすがに立ち直らなくても、起きないとご飯も食べられないよ」
 穣子が自分の声に反応しない静葉の顔を見る。
 静葉はただ茫然と夕日を見つめていた。
 けれど産みの苦しみから来る無気力に支配された目でははなく、尊いものに見とれているときの輝きが目に宿っていた。
 穣子も静葉の見とれている夕日を眺めてみた。
 真っ赤な夕日が、空から少しずつ緑の山々の方へ降りていく。
 まだまだ夏の日差しに負けないような、青々とした山が夕日に照らされて、ほんの少し赤く染まっている。
 これから秋を迎えて、あの夕日に劣らないほど美しい、光とは違う自然の赤を見せてくれる。そんな期待を抱かせてくれる景観だった。
「綺麗な夕日だなぁ……」
 素直な気持ちが穣子の口から漏れ出す。
 この夕日に負けないほど真っ赤に彩られた山々を見てみたいと穣子は思った。
「……ねえ、穣子」
 これまでほとんど自分から喋らなかった静葉が、突然話しかけてきた。
 驚いた穣子だが、この場の静かな空気と、姉の穏やかな声が、落ち着いて返事をさせてくれた。
「どうしたの? 少しは落ち着いた?」
「あの山、もっと濃いめの赤色に染まったら、この夕日がもっと綺麗に映えると思わない?」
 夕日から目を離さず、ゆっくりと静葉が起き上がって、縁側に座り直した。
「うーん、色合いの深いところはわかんないけど、紅葉が始まったらもっと綺麗な景色になると思う!」
「そうよね。きっと綺麗だわ。もっと、あの山の葉っぱたちは、綺麗な赤色になれる。でも、所々に黄色と茶色も欲しいかな……」
 穣子は静葉の話を聞きながら、姉の横顔を眺めていた。
 先程のように惚けてはいないが、あの美しい景色を静かに見つめていた。
 ただ、もう心配は必要ないと穣子は確信した。
「芸術の秋、実りそうだね」
「うん。収穫の準備、忙しくなりそうだわ」
 静葉が立ち上がって、家の中へ戻っていく。
 ――と、思ったらすぐに戻ってきた。
「明日、畑の方の収穫準備するときは教えて。今日のお詫びに手伝うわ」
「大丈夫、こっちは私に任せて。芸術は私さっぱりなんだから、紅葉の神様にがんばってもらわないと」
「そうね。秋と言えば、芸術の秋だから」
「実りの秋よ。そこは譲らないからね。じゃ、明日に備えてお夕飯でも作りますか」
 夕日も沈み、二人揃って家の中へ入っていく。
 その日の夜、どんな秋を迎えるかを語る、楽しそうな話し声が鳴き始めた鈴虫の音に重なっていた。
 
お久しぶりです。初めましての方は初めまして
折り畳み傘です
私史上初、2作品投稿です。ちょっとがんばりました
好きなキャラだと作品書くの苦手だったんですが、今回それを克服すべく挑戦してみました
可愛いですよねこの二柱。早くお社建ててほしい

最近は創作の熱が不思議と高く、動けているので今のうちにSS書いたり、次の個人誌にも挑戦したいと思います
折り畳み傘
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コメント



0.簡易評価なし
1.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです