Coolier - 新生・東方創想話

嫌われ者の楽園

2026/07/29 20:59:24
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 朝っぱらから酒盛りとは、まったく妬ましい話だ。

 橋の欄干にもたれて見下ろせば、旧地獄街道商店街はもう祭りの支度で浮かれきっていた。地底の天井から吊るされた提灯が、赤や黄の光を岩肌ににじませている。幟がはためく音。木槌で杭を打つ音。店の奥から焦げた醤油の匂い。
 鬼どもは日も高くならないうちから酒瓶を片手に、もう千鳥足だ。

 あたしは橋姫。地底の橋を守るのが仕事であって、酒を飲んで転げ回るのが仕事ではない。それなのに、なぜあいつらは朝からあんなに笑っていられるのか。妬ましい。妬ましいったらない。

 ――と、そこまで考えたところで、地上の方角からふらりと降りてくる気配があった。
 白地に黒と赤のワンピース。やたら自信満々な足取り。地底特有のじめついた空気にも、硫黄混じりの匂いにも、まるで動じた様子がない。橋の上からこっちが見ていることにも気付かず、まるで自分の庭みたいな顔で商店街の中心へ歩いていく。

 ――ああ、こいつはアレだ。地上で散々暴れて、今ちょうど手配書が出回っている例のお尋ね者だ。
 あたしは橋番なので、この手の情報にはそこそこ聡い。噂の絵姿と目の前の女を見比べて、答え合わせは一瞬で終わった。けれど、今日は祭りだ。ここで橋姫が「お前は指名手配犯だな」なんて騒ぎ立てたら、全部台無しになる。
 こんな奴の為に祭りを台無しにするのは、妬ましい。
 だから、黙っていることにした。別に情けをかけたわけじゃない。祭りが潰れるのが妬ましいだけだ。


 黙って見送るつもりが、気づけばあたしも同じ射的屋の前に立っていた。祭りだから当然だ。誰も彼もどこか浮かれていて仕事に身が入らないのだ。橋姫だって的くらい撃つ。

 棚の一番奥、目立つように据えられた台の上に、地底女子の間で密かなブームになっている『古明地ちゃん人形』がちょこんと座らされている。他の景品より一回り大きい、明らかにこの屋台の目玉だ。あの薄気味悪くて人の心を読む嫌われ者がデフォルメされるとこんなにも可愛いのだ。妬ましいったらありゃしない。――水橋ちゃん人形だって作ったら人気になるはずだ。

 女の視線が、それにぴたりと吸い寄せられているのが分かった。
 もちろん私の狙いも、当然そこに定まった。二丁の銃口が、示し合わせたわけでもないのに同じ的へ向く。
「……悪いけど、それはあたしが狙ってるんだけど」
「知るか。先に構えたのはこっちだ」と、女が銃を構え直しながら、こっちを睨みつける。あたしも負けじと銃口を『古明地ちゃん人形』から離さなかった。

 引き金を引いたのはほぼ同時。コルクの弾は二発ともきれいに命中し、『古明地ちゃん人形』はゆっくりと台から転げ落ちた。

「あたしのだ」
「は? あたしが倒したんだけど」
 女が身を乗り出して、『古明地ちゃん人形』を先に掴もうと手を伸ばす。あたしもほとんど反射でその手を払いのけた。
 ――睨み合う。
 どちらの弾が先に当たったかなんて、この距離じゃ店主にもわかりゃしないだろう。それでも互いに一歩も引かず、銃を握ったまま睨み合いが続いた。
「おいおい姐さん方、喧嘩なら他所でやってくれよ。うちの屋台の前でやるってんなら……星熊の親分呼ぶぞ!」
 射的屋の親父――鬼にしては小柄で、愛想笑いばかりが達者な男だ――が腕を組む。が、あからさまに及び腰になりながらそう言った。声だけは大きいが、足は半歩後ろに下がっている。

「は? 星熊が誰かは知らねえが、強者の名前出せば引くと思ってんのか!」
 女が声を荒らげて親父に食ってかかった。銃を放り出さんばかりの勢いで身を乗り出し、頬まで紅潮させている。地上でそれなりに修羅場をくぐってきたのだろう、この手の脅し文句には人一倍過敏に反応するらしい。

 あたしはその剣幕を横目に見ながら、ひとり冷静だった。
「あのねぇ。屋台のちょっとした揉め事程度で、アイツが出てくるわけないでしょう」
「は?」
「アイツはね、地上から侵略者が来たとか、旧都存亡の危機とか、飲み比べ大会とか、その程度の騒ぎでなければ腰を上げないような大物なのよ。簡単にその名を口にしない方が良い」
 女の勢いが、すっと止まった。眉間に皺を寄せたまま、こっちの顔をじっと見ている。

 親父の脅し文句なんて、要するにただのはったりだ。だが地底の力関係をよく知らないコイツには、それが判断できない。あたしは内心で少し得をした気分になった。

 ――なるほど、この女、地底のことを知らないらしい。

「ま、まあ姐さんの言う通りだ。悪かったよ、今日は祭りだ細かいことは言いっこなしといこう」
 親父がほっとした顔で『古明地ちゃん人形』を摘み上げ、その場を丸く収めにかかった。祭りだ祭りだと繰り返されると、こっちも毒気が抜ける。仕方ない、と鼻を鳴らして手を引いた。
「……ほら」
「あんたが引くのかよ」
「別に。人形ごときで揉めるのは妬ましいだけ」
 女は意外そうな顔で『古明地ちゃん人形』を受け取ると、それを一度くるりと手の中で回してから、値踏みするようにあたしを見た。

「見ない顔ね。最近住み着いた?」と、わたしが聞くと女は急に目を逸らした。
「そんなところだ」
 ――ほら、やっぱり。あたしの目に狂いはない。この女、間違いなくあの手配書の女――鬼人正邪だ。
 でも、まあいい。今日は祭りなんだから。


 なぜだか知らないが、正邪はあたしの隣を離れなかった。
 正確に言えば、あたしが離れなかったのかもしれない。橋番という商売柄、地底の連中にはそこそこ顔が利く。射的の親父との揉め事を上手く避けたのを見て、隠れ蓑にするには丁度良いと向こうも計算したのだろう。あたしはあたしで、こいつがどこで何をやらかすか見張っておかないと後で妬ましい思いをするのはこっちだ、という理屈で納得することにした。

 理屈さえつけば、隣を歩くくらい別にどうということもない。
 商店街の通りは両側にびっしり屋台が並んで、普段の何倍も狭く見えた。土蜘蛛の子供らが群れになって走り回り、鬼の女将が威勢よく客を呼び込んでいる。正邪はといえば、両手を懐に突っ込んだまま、物珍しそうにきょろきょろと屋台の看板を見比べていた。土地勘のなさが、後ろ姿にまで出ている。


「りんご飴食いてぇなあ。やっぱり祭りと言えばりんご飴だよな」
 唐突にそう言って、正邪はもう列に並んでいた。目当ての屋台は列の一番奥、おでん屋と焼きそば屋に挟まれて肩身が狭そうに立っている。それでも店頭に並んだ飴は艶やかで、提灯の灯りを吸ってひとつひとつが宝石みたいに赤く光っていた。

 列の少し外れたところに、品の良さそうな鬼の親子が立っていた。母親の方は着物も帯もどこか他所行きで、地底の祭りにはいささか不釣り合いなほど整っている。
「お母さま、私もあのりんご飴、食べてみたいです」
「まあ、はしたない。こんな人混みの中で売られている飴なんて埃まみれですよ。そんなに食べたいなら、家に帰ってから料理人に作らせればいいでしょう?」
 ――地獄のお役人、それなりの位にある男の奥方だ。あたしはその横顔に見覚えがあった。人の集まる場所にわざわざ顔を出しては、あちこちで皮肉を言って涼しい顔で帰っていく、それはそれで有名な嫌われ者だ。

 子鬼は俯いて、それ以上は何も言わなかった。
 その一部始終を、正邪はりんご飴を頬張りながら、じっと横目で眺めていた。
「口は悪いのに可愛い食べ物欲しがるのね」
「大きなお世話だ、好きなんだよ」
「可愛い食べ物を食べても可愛くなれないわよ?」
「うるせぇな、可愛さなんて求めちゃいねぇわ」
 正邪は行儀悪くかぶりつきながら答えた。棒を持つ手つきだけは妙に様になっている。それから何を思ったのか、店の親父にもう一本、りんご飴を買い足した。
 そのまま二本目を手に、正邪はさっきの子鬼のところへずかずかと歩いていく。
「おい、嬢ちゃん。間違えて二個買っちまったからやるよ」
「い、いけません。そんな」
 子鬼が母親の顔色を窺いながら、身を縮めて後ずさる。正邪はにやりと口の端を持ち上げた。
「人からの親切は快く受けないとなぁ、お母さま。素直で良い子ならみんなそうするもんなぁ?」
 母親の顔が一瞬でこわばった。自分がいつも子に言い聞かせているだろう理屈を、そのまま真正面から投げ返された格好だ。反論しようにも、自分の躾を否定することになる。
 母親は何も言えないまま、唇だけを震わせていた。子鬼は嬉しそうに飴を受け取り、正邪はそれを見届けると、興味を失ったようにさっさと背を向けて戻ってきた。

「趣味悪いわね」
「別に。ああいう手合いは、ちょっとひっくり返してやると面白いんだよ」
「ま、あの女は昔っから妬ましい奴だったからいい気味だわ」
「ははは、妬むくらいなら痛い目合わせてやりゃあ良いのに」
「私は平和主義なの」
 情けないだとか、みっともないだとか色々言われたけど別に妬ましくはなかった。こんな事で妬んでいたら、あたしの心はいくつあっても足りない。


「次はあれだ」
 金魚すくいの屋台を指差して、正邪が急に勝負を持ちかけてきた。
「どっちが多くすくえるか、勝負しよう」
「別に構わないけど、後悔するわよ?」
 売られた喧嘩は買う主義でもないが、断る理由もなかったので、二人並んでポイを構えた。すぐ隣の台では、羽振りの良さそうな鬼の若旦那が連れの取り巻きを侍らせて、何匹もすいすいすくい上げては得意げな声を上げていた。

 結果から言おう。地底の金魚は地上のそれと違って気性が荒い。すくおうとした瞬間に体当たりでポイを破ってくる個体までいて、正邪は開始三秒で「うおっ」と声を上げてのけぞり、そのままポイを破られて撃沈した。
 あたしはといえば、そもそも金魚すくいという繊細さと大胆さが必要とされる競技自体があたしに向いていなかったらしく、普通に下手だった。一匹もすくえなかった。
「……」
「……」
 
 二人とも無言で屋台を後にしかけたところで、正邪が隣の若旦那の水槽をちらりと振り返った。
「上手いこと群れの弱そうなやつばっか狙いやがって。ああいうのが一番タチ悪いんだよな」
「弱そうなあんたに言われたくないでしょうね」
 これについては何も語ることがない。妬む気力すら湧かなかった。


 かき氷の屋台には、涼しげな氷の削れる音が響いていた。氷塊を回す度にしゃりしゃりと粉雪みたいな飛沫が飛ぶ。
 あたしは迷わず一番人気のイチゴを選んだ。店頭に並んでいるシロップボトルの減り具合がそのまま人気と美味さの証明だと思っている。
 正邪はといえば、じろじろ品定めしたあげく、シロップの減りが少ないという理由だけでブドウを選んでいた。
「減りの少ない味を選べばシロップ多めにかけてもらえるからな」
「シロップの量で選ぶとか、発想が貧乏くさいわね」
「うるせぇ、コスパってやつだよ。だいたい、一番人気だからって選ぶ連中の気が知れねぇ。他人と同じなりゃ安心なのかよ」
 正邪はスプーンを氷に突き立てながら、得意げに胸を張ってみせる。

 ――それはそれで妬ましい理屈だ、と思ったが、口には出さなかった。図星を指されたようで癪だったし、何よりかけられたシロップの量が少なかった事を気にしているあたしとしては、あまり強く言い返せる立場でもなかった。


 綿飴の屋台の前で、正邪は受け取った袋を矯めつ眇めつしてから、店の親父にじろりと目をやった。
「思ったより量少ねぇな。祭りの値段だからってちゃっかり儲けてんじゃねぇだろうな」
「お、お代はちゃんと相場通りで……」
 親父がしどろもどろに答えるのを見て、正邪はふん、と鼻を鳴らしただけでそれ以上は追及しなかった。本気で咎めるつもりもなかったらしい。

 それにしてもりんご飴にかき氷に綿飴とコイツは甘いものばかり選んで屋台の列に並んでいる。もっとこう、祭りっぽい焼きそばとかたこ焼きとかあるでしょうに。
「悪党なのに甘いもの好きなのね」
「悪党の前に甘党なんだ」
 ――今のは、たぶんボケだったのだろう。だが、あたしは綿飴の色味を吟味するのに忙しくて、綺麗に無視してしまった。
「人のボケ無視してんじゃねぇ!」
 正邪が綿飴の袋でこっちの肩をぽかぽか叩いてくる。痛くはないが、うるさい。
「ふん、哀れね」
「そこは妬めよ!」

 言われてみれば、確かに妬んでもよかった案件だ。うまいことを言おうとして誰にも拾われない、というのは十分に妬ましい状況だと思う。でも今更拾うのも癪なので、知らんぷりを続けた。


 屋台を一通り巡り終える頃には、提灯の灯りが弱まり、天井の岩肌が心なしか青黒く沈んで見え始めていた。それを合図に、祭りの喧騒はぞろぞろと坂道を登り、花火が上がる高台へと流れていく。あたしたちもその流れに乗った。
 坂道は思いのほか急で、両側の屋台の明かりが遠ざかるにつれ、代わりに虫の声が近づいてくる。地底の虫は、地上のものより幾分低く濁った声で鳴く。

 正邪はワンピースの袖をまくりながら、息も切らさずに登っていく。時折り足元の石ころを蹴り飛ばしては、こっちを振り返って「まだ登るのか」という顔をする。
「地底なのに花火なんか上げるのか」
 坂道の途中、正邪が珍しく素直な疑問を口にした。
「脳筋な上に頭まで酒が回った鬼の連中が考えたことよ。地底に空なんかないのに、花火だけは上げたいんだって。度し難い発想でしょう」
「そこは妬まないんだな」
 一瞬、足が止まりかけた。
「鬼の考えなしなところに、いちいち付き合ってられないもの」
 我ながら苦しい返しだと思ったが、正邪はそれ以上突っ込んでこなかった。かわりに、少し愉快そうに口の端を上げて、また坂を登り始める。

 高台に着く頃には、すでに大勢が思い思いの場所に陣取っていた。鬼の親子連れ、酒瓶片手の妖怪たち、地面に敷物を広げて寝転がる怨霊のなり損ない。
「あそこ空いてるぞ」
 正邪が指差した先、人の少ない岩の縁を見つけて、二人でそこに腰を下ろした。

 腰を下ろして間もなく、最初の一発が夜空(のようなものを模した地底の天井付近)に咲いた。
 ドン、という腹に響く音。赤い光の粒が四方に散って、暗闇に溶けて消える。続けて緑、金と色を変えながら、次々に花が開いては消えた。
「おお」
 正邪が短く声を漏らして、身を乗り出す。膝を抱えていた腕を解いて、両手を岩につきながら空を見上げる横顔は、さっきまでの憎まれ口が嘘みたいに素直だった。
「……あんた、本当に嫌われ者ね」
「ああ?」
 正邪が空を見上げたまま、片眉を跳ね上げる。
「お尋ね者。厄介者。性格も最悪で、髪型も変だし服のセンスも壊滅的」
「途中からただの悪口だろ!」
 花火の音を突き破る大声に、あたしは鼻で笑ってやった。
「……ねえ。ちょっと下を見てみなさいよ」
「あ?」
 正邪が鬱陶しそうに視線を下げ、あたしの指さす方――岩の眼下に広がる群衆を見た。
 ちょうど一発、大きな青い花火が打ち上がり、高台の下を明るく照らし出す。
 酒を飲んで大暴れする鬼。泥に塗れてはしゃぐ土蜘蛛。地面を這い回る怨霊ども。地上じゃ忌み嫌われ、暗闇に追いやられた化物どもが、揃いも揃ってバカみたいに口を開けて天井を見上げていた。
 正邪はそれらをしばし見下ろしたあと、ふん、と鼻を鳴らした。
「……どいつもこいつも、ろくでもねぇ面してやがる」
「本当に、妬ましいくらい楽しそう」
 正邪は何も言い返さず、膝を抱え直すと、また天井の光へ視線を戻した。
 あたしも隣で膝に顎を乗せ、消えていく火花を追う。
 会話はそこで途切れたけれど、もう言葉を重ねる必要はなかった。

 花火が終わると、高台に集まっていた連中は潮が引くように坂を下りていった。あたしたちもその流れに紛れて、来た道を戻る。屋台はもう片付けにかかっていて、提灯の灯りもいくつか消え始めていた。
 正邪はさっきまでの神妙な顔はどこへやら、また両手を懐に突っ込んで、鼻歌まで漏らしながら坂を下っていく。切り替えの早さだけは妙に潔い。
 
 そうして歩くうち、橋のたもとまで戻ってきていた。ここから先は、あたしの持ち場だ。
「そういや」
 正邪が足を止めて振り返る。
「最初から監視してたんだろ、あたしのこと」
「気付いてたの?」
「お前みたいな根暗そうな奴が、初対面のやつをわざわざ案内するかよ」
 図星だった。図星だったが、素直に認めるのも癪だったので、あたしはがっくりと肩を落として見せた。しゅん、と項垂れる演技には、我ながら自信がある。
「……監視だなんて、ただの親切のつもりだったのに……」
「お、おい? 意外と打たれ弱い?」

 正邪が慌てて一歩詰め寄ってくる。両手を宙で泳がせながら、明らかに動揺した顔をしていた。
 その様子がおかしくて、思わず笑いそうになるのをこらえた。橋の欄干にもたれかかって、ゆっくりと顔を上げる。
「嘘よ。根暗と言われたけど全っ然気にしてないから。根暗じゃないし」
「……悪かったよ」
 正邪はばつが悪そうに視線を逸らしながら、それでも案外あっさりと謝った。あたしはつい「へへへ」と声を漏らしてしまった。

 愉快だ。妬ましいと思っていたことが、ひっくり返された気分だ。射的の人形も、金魚すくいの惨敗も、あの偉そうな奥方の鼻をへし折ったりんご飴も、地底の花火も全部ひっくるめて、悪くない一日だった。

「また来なさいよ」
 正邪は足を止めて、少しだけ振り返った。石段に片足をかけたまま、こっちを見下ろす目つきが、さっきまでとは少し違って見えた。
「来ねぇよ。私は嫌われたまま、地上の勢力図をひっくり返して頂点に君臨してやるんだからな。こんな惨めな場所には、二度と来ねぇ」
 そう言い捨てる横顔に、気負いも強がりも見当たらなかった。ただ、その先にあるものを、もう見据えている目だった。

 ――ある意味あんた、一番素直だわ。妬ましいくらいに。
 そう思ったが、口には出さなかった。出す必要もなかった。
 正邪はひらひらと手を振って、地上へ続く崩れかけた石段を上っていった。振り返りもしない後ろ姿が、灯りの少なくなった坂の向こうに小さくなっていく。
 あたしはそれを、橋の上からいつまでも見送った。
——妬ましくは、なかった。
酉河つくねです。
夏ですね、夏といえばお祭りですね。
毎年地元の夏祭りで神輿を担ぐために帰省してます。
神輿担ぐと毎年思うのですが、普段見かけないイカつい人が集まる現象に名前ってあるんですかね?
酉河つくね
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