Coolier - 新生・東方創想話

チョキチョキ

2026/07/14 00:29:18
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夜の博麗神社。

縁側に座る霊夢は、湯呑みを片手に空を見上げていた。

「ねえ、紫。」

「何かしら。」

「人が死ぬって、いつなの?」

紫は扇子を閉じる。

「珍しいことを聞くのね。」

「例えば、一光年先で誰かが死んだとして。」

霊夢は夜空の星を指差した。

「その光がここに届くのは一年後よね。」

「ええ。」

「じゃあ、その人は一年間、生きてるの?」

紫は少し笑った。

「地球では死んでいる。でも、私たちが見ている星空には、その人の『生きていた姿』がまだ残っている。」

「変な話。」

「宇宙はそういうものよ。」

しばらく沈黙が流れる。

霊夢はぽつりと言った。

「じゃあ、誰かを思い出すってどうなの。」

「どう、とは?」

「人を思い出すと、脳が動くでしょ。神経も、血も、全部動く。その人はもう死んでるのに。」

紫は空を見上げる。

「ええ。亡くなった人は、今も誰かの中で化学反応を起こしている。」

「じゃあ、生きてるじゃない。」

「それは『本人』ではないわ。」

「でも作用してる。」

「ええ、作用している。」

霊夢は腕を組んだ。

「ガラスを押せば少しへこむ。何かが動けば、必ず何かが変わる。」

「その通り。」

「だったら、一度でも世界に触れたものは、永遠に世界を少しずつ変え続ける。」

紫は少しだけ目を細めた。

「あなたは、『生きる』を生命ではなく、因果で定義するのね。」

霊夢は肩をすくめる。

「人間が勝手に決めた定義なんて、幻想みたいなものでしょ。」

風が吹いた。

鈴が鳴る。

誰もいないはずの境内で、木の葉が一枚だけ舞い上がる。

紫はその葉を見つめ、小さく笑う。

「なるほど。それなら、幻想郷は死者でいっぱいね。」

霊夢も笑った。

「だって、忘れられてないんだから。」

夜空の星は、何百年も前の光を静かに降らせ続けていた。
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