「うぅ、お腹すいたよー」
「姉さんがすぐに食べちゃうからでしょ」
二人が歩いているのは人里から少し離れた雑木林の中。
先ほどもらった食料を姉である紫苑がすべて食べてしまったことが原因だ。
「姉さんは本当のバカね。こんな姉を持って人前歩けないわ」
「そんなぁ。でも、そうなのかな…」
しょんぼりとした姉を無視して妹である女苑は歩き始める。
時は夕暮れ、子供がお家に帰る時間だ。
「しかたないわね。ほら、姉さん。里へ行くわよ」
「うん。次は頑張る」
二人は里へ出稼ぎに行く。方法は様々だが目的は一つ、金を稼ぐこと。
「姉さんあっち行ってよ。私の稼ぎの邪魔しないで!」
「うぅごめんね。で、でもさ一緒にいた方がいっぱい稼げるかもしれないし、たくさん声かけてくれるかもしれないし、安全だし…」
「はーうっさい。姉さんが近くにいると貧乏が移るのよ!どっかいってて!」
追い出されてしまった。
わたしはある程度離れた小道の脇で空き缶を並べる。お金が入るのを待つのだ。前に入ったのは半年くらい前だったかな。女苑はどうやってお金を稼ぐのか前から気になっていた。毎日抱えきれないくらいのキラキラした品物とお金を担いで帰ってくる。
「よし、わたしも稼いでやるんだ!それから、女苑を見返してやるんだ!」
町の中心部へと向かったわたしはその雰囲気に飲まれた。
「なにこれ。世界にこんなに人っているの?」
見たこともない服に包まれた赤子や烏よけくらい光るドレスが所せましと並んでいる。皆どこを目指して行進しているのかわからない。
「女苑…女苑どこにいるの?」
大声で叫んでみたところでさっき食べたおにぎりが4日ぶりの食事のわたしの出せる声なんて、カゲロウの羽ばたきに等しい。
「うぅ、どこにいるの?どこなの?」
果てしない孤独感がわたしを取り囲む。
「よお、姉ちゃん。ここは初めてかい?」
突然話しかけられた。男は胸筋をちらりとさらけ出している陽気な人だ。
「いや、なんでもないです。はは」
誤魔化して離れようとしたが、人の波がそれを許さなかった。
「いいや、あんたは何かを探しに来てるな。他人かそれとも自分か。どちらにせよここは俺の庭なんだよ。よかったら案内するけど」
「ええと、実は妹を探してて。どこでなにしてるか知りたいんです」
「ほー。妹探しね。あい分かったそいつの特徴を教えてくれ。どこかで見たかもしれねぇ」
「まず、髪は茶。服は豪華。サングラスをしてて…」
「だめだめ。この町では見た目なんて何の意味も持たない。もっとこう妹自身の特徴を教えてくれ」
「…言葉はちょっと強いよ。でも、優しいんだ。あと他人に暴力を振るっちゃうことがあるんだ。それでも!そのあとにはいっつも後悔してる」
「うーん。なるほどね。大方検討はついた。すぐに会わせてやるから付いてきな」
「ありがとうございます!」
わたしはウキウキで後を追った。これほど楽しみな時間は他にない。
―「後ろの女は何です?頭」
―「新しい上玉だ。仕込めば宝石にもなるだろ。今は石ころだがな」
「さぁ、付いたぞ。おそらくここにあんたの妹はいるんじゃないか」
「やった!ありがとうございます。この御恩は何かで」
と思ったがない袖は振れない。言ったそばから何もできない自分が悔しい。
「礼なんていらねぇよ。ただ…ちょっとだけ手伝いをしてくれ」
渡されたのは薄いワンピースだった。なんでもここはちゃんとしたお店だから、どれすこーどなるものがあるらしい。初めて知った。
「じゃあそれを着たら呼んでくれ」
更衣室へ通された後着替えて男を呼んだ。
「あの、着替え終わりました」
「おお、想像してたより似合ってるじゃないか。じゃあ一旦目隠しをしてくれ。ここはあまり知って欲しくないことが多いからな」
素直に目隠しをしたわたしは連れられるがまま、横たわった。
「あの、なんで横になるんですか?」
「それはな、お前を喰らうためさ!」
豹変した男たちは益荒男を振りかざして突進してきた。
本当に驚いた時というのは、一片の息もできないものなのだ。
手籠めとなりかけたとき、勢いよく扉が開いた。
「姉さん!」
入ってきて何かしたと思ったら男どもが一同にうずくまっている。
早すぎる手刀。わたしだから見逃しちゃうね。
「女苑、女苑なんだね。」
「そうだよ、姉さん!なんでこんなところにいるの!おかしいとは思わなかったの!」
「うぅごめんよ。そんな母親みたいに怒らないでよ」
「そんなことより早くここからでるよ。姉さん」
「うん」
急いで建物を出たわたし達は駆け足で町から離れた。
2度とあんな思いをするもんか。
「あっ。そうだ」
「何…姉さん…」
息も整っていない女苑に向かってこれを言うのは失礼になるのか。
「ありがとう。助けてくれて、ありがとう」
「は?今?なんで今?姉さんは本当に…わからないよ。でも、その気持ちはありがたく受け取ります」
ぽろぽろと涙を流しながらわたしは女苑に抱き着いていた。
「女苑~!大好き!大好きだよぉ~」
「うわ、キモ。そんな状態で抱き着いてこないでよ」
足蹴にされてしまったが、妹に抱き着いたのは果てしなく久しい。懐かしい温もりが冷めやらぬうちにもう一度、もう一度と繰り返す。この暖かさが永遠に続けばいいのに。
…
「ところで、女苑はなんでわたしがあそこにいるのがわかったの?」
「ん?何、簡単なことよ。体売ってた相手が急にどっか行っちゃったから、尾行してったら姉さんがその仲間に襲われかけてたのよ」
女苑のお金の出どころと事件の真相を理解したところで、今夜の空を見上げる。
今夜は新月だ。
「…今度いいお給金の店教えてよ。頑張るからさ」
「姉さんは果実の育ちが悪すぎるわ。山のキノコで満足したら」
やっぱり今夜は新月だ。
「姉さんがすぐに食べちゃうからでしょ」
二人が歩いているのは人里から少し離れた雑木林の中。
先ほどもらった食料を姉である紫苑がすべて食べてしまったことが原因だ。
「姉さんは本当のバカね。こんな姉を持って人前歩けないわ」
「そんなぁ。でも、そうなのかな…」
しょんぼりとした姉を無視して妹である女苑は歩き始める。
時は夕暮れ、子供がお家に帰る時間だ。
「しかたないわね。ほら、姉さん。里へ行くわよ」
「うん。次は頑張る」
二人は里へ出稼ぎに行く。方法は様々だが目的は一つ、金を稼ぐこと。
「姉さんあっち行ってよ。私の稼ぎの邪魔しないで!」
「うぅごめんね。で、でもさ一緒にいた方がいっぱい稼げるかもしれないし、たくさん声かけてくれるかもしれないし、安全だし…」
「はーうっさい。姉さんが近くにいると貧乏が移るのよ!どっかいってて!」
追い出されてしまった。
わたしはある程度離れた小道の脇で空き缶を並べる。お金が入るのを待つのだ。前に入ったのは半年くらい前だったかな。女苑はどうやってお金を稼ぐのか前から気になっていた。毎日抱えきれないくらいのキラキラした品物とお金を担いで帰ってくる。
「よし、わたしも稼いでやるんだ!それから、女苑を見返してやるんだ!」
町の中心部へと向かったわたしはその雰囲気に飲まれた。
「なにこれ。世界にこんなに人っているの?」
見たこともない服に包まれた赤子や烏よけくらい光るドレスが所せましと並んでいる。皆どこを目指して行進しているのかわからない。
「女苑…女苑どこにいるの?」
大声で叫んでみたところでさっき食べたおにぎりが4日ぶりの食事のわたしの出せる声なんて、カゲロウの羽ばたきに等しい。
「うぅ、どこにいるの?どこなの?」
果てしない孤独感がわたしを取り囲む。
「よお、姉ちゃん。ここは初めてかい?」
突然話しかけられた。男は胸筋をちらりとさらけ出している陽気な人だ。
「いや、なんでもないです。はは」
誤魔化して離れようとしたが、人の波がそれを許さなかった。
「いいや、あんたは何かを探しに来てるな。他人かそれとも自分か。どちらにせよここは俺の庭なんだよ。よかったら案内するけど」
「ええと、実は妹を探してて。どこでなにしてるか知りたいんです」
「ほー。妹探しね。あい分かったそいつの特徴を教えてくれ。どこかで見たかもしれねぇ」
「まず、髪は茶。服は豪華。サングラスをしてて…」
「だめだめ。この町では見た目なんて何の意味も持たない。もっとこう妹自身の特徴を教えてくれ」
「…言葉はちょっと強いよ。でも、優しいんだ。あと他人に暴力を振るっちゃうことがあるんだ。それでも!そのあとにはいっつも後悔してる」
「うーん。なるほどね。大方検討はついた。すぐに会わせてやるから付いてきな」
「ありがとうございます!」
わたしはウキウキで後を追った。これほど楽しみな時間は他にない。
―「後ろの女は何です?頭」
―「新しい上玉だ。仕込めば宝石にもなるだろ。今は石ころだがな」
「さぁ、付いたぞ。おそらくここにあんたの妹はいるんじゃないか」
「やった!ありがとうございます。この御恩は何かで」
と思ったがない袖は振れない。言ったそばから何もできない自分が悔しい。
「礼なんていらねぇよ。ただ…ちょっとだけ手伝いをしてくれ」
渡されたのは薄いワンピースだった。なんでもここはちゃんとしたお店だから、どれすこーどなるものがあるらしい。初めて知った。
「じゃあそれを着たら呼んでくれ」
更衣室へ通された後着替えて男を呼んだ。
「あの、着替え終わりました」
「おお、想像してたより似合ってるじゃないか。じゃあ一旦目隠しをしてくれ。ここはあまり知って欲しくないことが多いからな」
素直に目隠しをしたわたしは連れられるがまま、横たわった。
「あの、なんで横になるんですか?」
「それはな、お前を喰らうためさ!」
豹変した男たちは益荒男を振りかざして突進してきた。
本当に驚いた時というのは、一片の息もできないものなのだ。
手籠めとなりかけたとき、勢いよく扉が開いた。
「姉さん!」
入ってきて何かしたと思ったら男どもが一同にうずくまっている。
早すぎる手刀。わたしだから見逃しちゃうね。
「女苑、女苑なんだね。」
「そうだよ、姉さん!なんでこんなところにいるの!おかしいとは思わなかったの!」
「うぅごめんよ。そんな母親みたいに怒らないでよ」
「そんなことより早くここからでるよ。姉さん」
「うん」
急いで建物を出たわたし達は駆け足で町から離れた。
2度とあんな思いをするもんか。
「あっ。そうだ」
「何…姉さん…」
息も整っていない女苑に向かってこれを言うのは失礼になるのか。
「ありがとう。助けてくれて、ありがとう」
「は?今?なんで今?姉さんは本当に…わからないよ。でも、その気持ちはありがたく受け取ります」
ぽろぽろと涙を流しながらわたしは女苑に抱き着いていた。
「女苑~!大好き!大好きだよぉ~」
「うわ、キモ。そんな状態で抱き着いてこないでよ」
足蹴にされてしまったが、妹に抱き着いたのは果てしなく久しい。懐かしい温もりが冷めやらぬうちにもう一度、もう一度と繰り返す。この暖かさが永遠に続けばいいのに。
…
「ところで、女苑はなんでわたしがあそこにいるのがわかったの?」
「ん?何、簡単なことよ。体売ってた相手が急にどっか行っちゃったから、尾行してったら姉さんがその仲間に襲われかけてたのよ」
女苑のお金の出どころと事件の真相を理解したところで、今夜の空を見上げる。
今夜は新月だ。
「…今度いいお給金の店教えてよ。頑張るからさ」
「姉さんは果実の育ちが悪すぎるわ。山のキノコで満足したら」
やっぱり今夜は新月だ。