博麗神社にお参りする人はいない。今さらわかりきったことだがわずかながらの期待を胸に賽銭を確認するのが巫女としての毎朝のルーティンだ。
「肌寒い…」
玄関から出ると刺すような冷気が全身を襲う。時期的に春なはずなのに外は寒かった。両腕で自分を抱きしめて賽銭箱の前まで行くと、見慣れない正方形の箱が賽銭箱の上に置かれていた。茶色の箱は風に揺れてカタカタと音を立てている。
「なにこれ」
上から覗くと手を入れられそうな穴が空いてあった。箱を振ってみるが何も起きない。気味が悪いが神社に置かれたものだ。調べる必要があるだろう。手を突っ込んで中を探ると、ぐるぐる巻きの紙切れが出てきた。縦に広げてみる。
大吉 あなたは年上のお姉さんと相性がいいです。
白い紙に筆で力強く文字が書かれている。内容から察するに恋みくじだろう。博麗の巫女として良くないことだが、私は恋みくじというものを信用していない。極めて主観的なことである恋愛感情を運要素を含んだ「恋みくじ」で当てられるわけがないのである。だが他に何が書かれているのか気になるので、しょうがないが引く。
大凶 あなたは年下と恋をすると死にます。
「物騒すぎるわよ!」
勢いよくおみくじを地面に叩きつけた。宴会のとき、魔理沙の頭をハリセンで叩いたときのような音が鳴った。この恋みくじはやたら年上を推してくる。私が関わっている年上の女性を思い浮かべるが多すぎてわからない。それに全員お姉さんと呼べるほど若くないので絞り込むのは不可能だ。他のものも引いてみる。
大吉 あなたは金髪のお姉さんと一生を添い遂げるでしょう。
「金髪も幻想郷にまぁまぁいるわよ」
末吉 あなたは人間と相性が悪いです。
「1番言われたくない言葉」
中吉 ラッキーアイテムはおみくじ。
「もう投げやりじゃん」
大吉 包容力のある女性と相性抜群
「……」
中腰の姿勢で地面に恋みくじを並べてみたが恥ずかしくなってきた。大体この条件、誰が当てはまるんだ。目をつむり運命の人を妄想してみた。寝室で寝ている私……
「霊夢、朝よ!」
鉄砲を撃ったみたいな破裂音とともに襖が勢いよくあいた。エプロン姿のアリスが部屋に入ってくる。
「起きなさい!」
綱引きでもしてるのかって勢いで布団を引っ張ってくる。布団を引っ張り返し抵抗していると、耳に生温かい息がかかった。隣を見てみるとパジャマ姿のフランが寝ている。
「ん……うるさいなぁ。まだ寝足りない」
目を擦って不機嫌そうだ。見た目は幼いがフランは何百歳も年上である。
「霊夢起きろ」
魔理沙も襖を開け部屋に入ってくる。六畳一間の和室に金髪が密集している異常空間。人が集まってるせいで部屋が蒸し暑い。
「霊夢」
「霊夢〜」
「霊夢!」
私、気が多すぎる。運命の人を想像したら普通一人でしょ。金髪って条件で妄想してもこれって。第一、恋みくじが曖昧なことしか言わないのが良くない。誰が正解なのか全然わからないじゃないの。天井を見上げていると、突然空間からスキマが現れた。
「霊夢おはよう」
視界が紫の顔で埋め尽くされた。紫の髪の毛が私の顔に当たって邪魔でしょうがない。彼女は口角を上げ、余裕の笑みを浮かべている。
「朝起きられない霊夢にとっておきの方法があるの」
紫は目をつぶり、唇をわざとらしくペロッと舐める。唇を舐める響きがあまりにも官能的で目は完全に覚めた。
「目覚めのキス、してあげる」
心臓が大ジャンプした。身体が硬直して全く動かない。紫はどんどん顔を近づけてくる。
「紫だけずるい!私もする!」
隣を見ると目を覚ましたフランが腕に抱きついてきた。彼女の心臓の鼓動が腕越しに伝わってくる。とても速い。
「最初に起こしに来たのは私なんだから邪魔しないで!」
アリスは私の頭の横で正座をすると、髪をかきあげながら顔を近づけてくる。
「私のこと忘れてもらっちゃ困る!」
魔理沙がもう片方の腕に抱きついてきた。もう何が何だかわからない。
「私が一番最初にキスしようとしたんだから譲りなさい!」
「一緒に寝てた私でしょ」
「いやいや最初に起こしに来た私よ」
「もう早い者勝ちにしよう!」
彼女たちは我先にと私にキスを迫ってくる。4つの唇が近づいてきた。4人の荒い鼻息が顔に当たる。これはキスをするべきだけど、誰か選べば確実に修羅場だ。でも選ばないと全員一斉にキスすることになる。選べ。選べ。選べ。選べ!
「やっぱり選べない!うわああああ!」
視界がブラックアウトした。
目を開けると、紫が目の前に立っていた。紫はパラソルを空に向けて広げ、首を傾ける。
「恋みくじは楽しんでくれた?霊夢のために用意したんだけど」
「全然。ずっと振り回されたわ」
思わずため息がでる。恋みくじなんて誰にでも当てはまることしか書いてない。何でこんなものを作ったのだろうか。
「霊夢、恋みくじはくだらないものって思ってるでしょ。」
「そうでしょ。実際誰が運命の人かわからなかったし」
私がそう言うと彼女は口元を手で隠し、クスクスと笑い出した。
「ふふふ。恋みくじって当たるかどうかは重要じゃないのよ」
「は?」
紫は地面に置かれた恋みくじを拾うとスキマに投げ入れた。
「書かれていたことが当たるかどうかよりも、恋みくじの内容を見て自分がどういう人が好きなのか考えるためのものなの」
「……」
紫の言う通りだ。実際引いているうちに誰が好きか考えていた。頬に汗が流れる。気づいてしまうと恥ずかしくなってきた。温泉に入ったあとのような熱さが身体中にある。顔も赤くなっているだろう。
「それで霊夢は私のこと考えてくれた?」
紫は吐息が顔にかかる距離まで近づいてきた。彼女の両目は夜空の星を思わせるほどの輝きを放っている。雪みたいに白い肌、太陽の光で輝いている金髪との見事な調和は一つの芸術作品と呼べるだろう。髪から放たれるほのかなローズの香りが鼻腔に広がる。
「……考えなかった」
「なんで嘘つくのよ!」
右足を思いっきり踏まれた。数秒遅れてヒリヒリと内側から痛んでくる。冗談の代償がでかい。反省して紫の目を見つめるが緊張してすぐ目を逸らしてしまう。
「でも、その、今かなり紫のこと気になってる、かも」
ささやくように呟くと、彼女は満開の桜を見たときのような笑顔で私の手を両手で掴んだ。紫の手は春を感じさせる暖かさだった。
「うんうん霊夢。今からデートに行きましょ」
そう言うと私に優しく口づけをした。え?え?キス、今キスしてる。紫、唐突すぎるし慣れすぎでしょ!紫の唇はマシュマロみたいに柔らかい。突然のことでどうすればいいのか全くわからないので、そのままじっとしていた。しばらく楽しんだあと、彼女はそっと離れて人差し指で私の口をふさいだ。
「ん!ん!」
「恋愛は積極的に行くタイプなの。さぁ、行きましょう」
恋人つなぎで、境内の外へ連れて行こうとする。デートってどこ行くのかしら、まぁ散歩してるだけでも楽しいけどね。新しい恋に胸を弾ませ、彼女に合わせるように並んで歩きだした。
「肌寒い…」
玄関から出ると刺すような冷気が全身を襲う。時期的に春なはずなのに外は寒かった。両腕で自分を抱きしめて賽銭箱の前まで行くと、見慣れない正方形の箱が賽銭箱の上に置かれていた。茶色の箱は風に揺れてカタカタと音を立てている。
「なにこれ」
上から覗くと手を入れられそうな穴が空いてあった。箱を振ってみるが何も起きない。気味が悪いが神社に置かれたものだ。調べる必要があるだろう。手を突っ込んで中を探ると、ぐるぐる巻きの紙切れが出てきた。縦に広げてみる。
大吉 あなたは年上のお姉さんと相性がいいです。
白い紙に筆で力強く文字が書かれている。内容から察するに恋みくじだろう。博麗の巫女として良くないことだが、私は恋みくじというものを信用していない。極めて主観的なことである恋愛感情を運要素を含んだ「恋みくじ」で当てられるわけがないのである。だが他に何が書かれているのか気になるので、しょうがないが引く。
大凶 あなたは年下と恋をすると死にます。
「物騒すぎるわよ!」
勢いよくおみくじを地面に叩きつけた。宴会のとき、魔理沙の頭をハリセンで叩いたときのような音が鳴った。この恋みくじはやたら年上を推してくる。私が関わっている年上の女性を思い浮かべるが多すぎてわからない。それに全員お姉さんと呼べるほど若くないので絞り込むのは不可能だ。他のものも引いてみる。
大吉 あなたは金髪のお姉さんと一生を添い遂げるでしょう。
「金髪も幻想郷にまぁまぁいるわよ」
末吉 あなたは人間と相性が悪いです。
「1番言われたくない言葉」
中吉 ラッキーアイテムはおみくじ。
「もう投げやりじゃん」
大吉 包容力のある女性と相性抜群
「……」
中腰の姿勢で地面に恋みくじを並べてみたが恥ずかしくなってきた。大体この条件、誰が当てはまるんだ。目をつむり運命の人を妄想してみた。寝室で寝ている私……
「霊夢、朝よ!」
鉄砲を撃ったみたいな破裂音とともに襖が勢いよくあいた。エプロン姿のアリスが部屋に入ってくる。
「起きなさい!」
綱引きでもしてるのかって勢いで布団を引っ張ってくる。布団を引っ張り返し抵抗していると、耳に生温かい息がかかった。隣を見てみるとパジャマ姿のフランが寝ている。
「ん……うるさいなぁ。まだ寝足りない」
目を擦って不機嫌そうだ。見た目は幼いがフランは何百歳も年上である。
「霊夢起きろ」
魔理沙も襖を開け部屋に入ってくる。六畳一間の和室に金髪が密集している異常空間。人が集まってるせいで部屋が蒸し暑い。
「霊夢」
「霊夢〜」
「霊夢!」
私、気が多すぎる。運命の人を想像したら普通一人でしょ。金髪って条件で妄想してもこれって。第一、恋みくじが曖昧なことしか言わないのが良くない。誰が正解なのか全然わからないじゃないの。天井を見上げていると、突然空間からスキマが現れた。
「霊夢おはよう」
視界が紫の顔で埋め尽くされた。紫の髪の毛が私の顔に当たって邪魔でしょうがない。彼女は口角を上げ、余裕の笑みを浮かべている。
「朝起きられない霊夢にとっておきの方法があるの」
紫は目をつぶり、唇をわざとらしくペロッと舐める。唇を舐める響きがあまりにも官能的で目は完全に覚めた。
「目覚めのキス、してあげる」
心臓が大ジャンプした。身体が硬直して全く動かない。紫はどんどん顔を近づけてくる。
「紫だけずるい!私もする!」
隣を見ると目を覚ましたフランが腕に抱きついてきた。彼女の心臓の鼓動が腕越しに伝わってくる。とても速い。
「最初に起こしに来たのは私なんだから邪魔しないで!」
アリスは私の頭の横で正座をすると、髪をかきあげながら顔を近づけてくる。
「私のこと忘れてもらっちゃ困る!」
魔理沙がもう片方の腕に抱きついてきた。もう何が何だかわからない。
「私が一番最初にキスしようとしたんだから譲りなさい!」
「一緒に寝てた私でしょ」
「いやいや最初に起こしに来た私よ」
「もう早い者勝ちにしよう!」
彼女たちは我先にと私にキスを迫ってくる。4つの唇が近づいてきた。4人の荒い鼻息が顔に当たる。これはキスをするべきだけど、誰か選べば確実に修羅場だ。でも選ばないと全員一斉にキスすることになる。選べ。選べ。選べ。選べ!
「やっぱり選べない!うわああああ!」
視界がブラックアウトした。
目を開けると、紫が目の前に立っていた。紫はパラソルを空に向けて広げ、首を傾ける。
「恋みくじは楽しんでくれた?霊夢のために用意したんだけど」
「全然。ずっと振り回されたわ」
思わずため息がでる。恋みくじなんて誰にでも当てはまることしか書いてない。何でこんなものを作ったのだろうか。
「霊夢、恋みくじはくだらないものって思ってるでしょ。」
「そうでしょ。実際誰が運命の人かわからなかったし」
私がそう言うと彼女は口元を手で隠し、クスクスと笑い出した。
「ふふふ。恋みくじって当たるかどうかは重要じゃないのよ」
「は?」
紫は地面に置かれた恋みくじを拾うとスキマに投げ入れた。
「書かれていたことが当たるかどうかよりも、恋みくじの内容を見て自分がどういう人が好きなのか考えるためのものなの」
「……」
紫の言う通りだ。実際引いているうちに誰が好きか考えていた。頬に汗が流れる。気づいてしまうと恥ずかしくなってきた。温泉に入ったあとのような熱さが身体中にある。顔も赤くなっているだろう。
「それで霊夢は私のこと考えてくれた?」
紫は吐息が顔にかかる距離まで近づいてきた。彼女の両目は夜空の星を思わせるほどの輝きを放っている。雪みたいに白い肌、太陽の光で輝いている金髪との見事な調和は一つの芸術作品と呼べるだろう。髪から放たれるほのかなローズの香りが鼻腔に広がる。
「……考えなかった」
「なんで嘘つくのよ!」
右足を思いっきり踏まれた。数秒遅れてヒリヒリと内側から痛んでくる。冗談の代償がでかい。反省して紫の目を見つめるが緊張してすぐ目を逸らしてしまう。
「でも、その、今かなり紫のこと気になってる、かも」
ささやくように呟くと、彼女は満開の桜を見たときのような笑顔で私の手を両手で掴んだ。紫の手は春を感じさせる暖かさだった。
「うんうん霊夢。今からデートに行きましょ」
そう言うと私に優しく口づけをした。え?え?キス、今キスしてる。紫、唐突すぎるし慣れすぎでしょ!紫の唇はマシュマロみたいに柔らかい。突然のことでどうすればいいのか全くわからないので、そのままじっとしていた。しばらく楽しんだあと、彼女はそっと離れて人差し指で私の口をふさいだ。
「ん!ん!」
「恋愛は積極的に行くタイプなの。さぁ、行きましょう」
恋人つなぎで、境内の外へ連れて行こうとする。デートってどこ行くのかしら、まぁ散歩してるだけでも楽しいけどね。新しい恋に胸を弾ませ、彼女に合わせるように並んで歩きだした。
良かったです