「いっぺん死んでみたいわねー」
西行寺幽々子の呑気な口調で口を開く。
隣で従者が何か音を立てたような気がしたが、茶をすする。
「妖夢、おかわりよろしく〜」
覚束ない足取りで妖夢は台所へと去っていく。その背中を首を捻って見届ける。
自分はすでに死んでいるのだから、何事も一定とすれば命を散らせない。願っても叶えられないことへの渇望に問題があるのだろうか。
「死ぬってどういうことかしらね〜」
今が冬でなければ、横からスキマが広がって親友が教えてくれる。最近、気温の乱高下が激しいが、ちゃんと休めているのだろうか。
白玉楼にも炬燵を取り入れてみたが、これは危険だ。
「もうずっとここにいたいわね〜」
茶のおかわりを持ってきた妖夢が壊れた人形のように何度も大きく頷いている。先程とは話が変わっているのに繋がっていると思っているに違いない。
可愛いのでついでに「じゃあずっと炬燵から出ないわね〜」と言うと白い顔が真っ赤になって「早く出てください! 暖まりすぎもお体に障りますよ!」とお怒りになった。恥ずかしさとどれぐらいの比率か気になるが、そこまで聞くのは可哀想なのでやめておく。
「そろそろ私も何かしようかしら〜」
妖夢はいないため、返事は誰からも返ってこない。無為に時間を潰しているが、亡霊生活が長くなると退屈さえも退屈でなくなってくる。ものは試しに異変でも起こせば巫女や魔法使いがすっ飛んでくるだろうが、幽々子は平和主義者であり、堕落者である。
「さっきお昼食べたばかりだし……」
死生活の中で喜びを抱ける数少ない日常だが、さすがに妖夢に怒られそうなのでやめておく。
睡眠をするにも夜から朝までしっかり寝る幽々子にとって昼寝はあまり気の進むものではない。
久々に剣を持つことも考えたが、炬燵が体を離してくれないので遠慮しておく。
「何をしようかしらね〜」
炬燵の中でできる楽しいこと。蜜柑を食べるのも飽きたし、気付いたら無くなっている。
体を意味もなく左右に揺らしてみるが、何も変わらない。妖夢が帰ってくる気配がしたので動きを止めて御礼を言う。彼女は買い出しに行くと言って、出ていった。暇潰しの相手がいなくなったため、再び体を左右に揺らす。
「何を考えていたんだったかしら〜」
思考を巡らせるが、結局何をすれば良いのか分からない。ただ、炬燵が暖かく、ここから出たくないという強い意志だけは覚えている。
机に右頬をつけて脳を回転させても思い出せない。
今度は左の頬を机につけると白い雪景色が映る。初めて見るなら気分が高揚するかもしれないが、見飽きた。
「どうしようかしらね〜」
答えもないまま目を瞑る。少し考えればまたやりたいことが思いつくだろう。
肩を叩かれる感触を受けて、目を開ける。顔を上げて後ろを見ると妖夢が心配そうな目で見てくる。
外を見るとすでに日が傾いている。眠っていたらしい。だが、今日中にやらないといけないものがあるわけではないので、別に構わない。
両手を大きく、天井に向けて伸ばし、固まった首を左右へ動かす。首が鳴って少し体が軽くなったような気がするが、勘違いだろう。
「明日はやりたいこと、見つられると良いわね〜」
自分に言い聞かせるように呟くと熱くなった下半身を冷ますために立ち上がると低い体温と外からの寒い風で一気に冷えていき、心臓が跳ね上がる。
生きているという感覚があって心地良ささえも感じられる。
「妖夢〜、おゆはんの準備よろしくね〜」
遠くから妖夢の返事が聞こえた。言われるまでもなく、台所へ向かっているのだろう。
さすがに寒くなってきたので、襖を閉じて、炬燵に入る。
明日もまた同じような日々が続くのだろう。
もうしばらくこんな日が続いても良いかもしれない。
西行寺幽々子の呑気な口調で口を開く。
隣で従者が何か音を立てたような気がしたが、茶をすする。
「妖夢、おかわりよろしく〜」
覚束ない足取りで妖夢は台所へと去っていく。その背中を首を捻って見届ける。
自分はすでに死んでいるのだから、何事も一定とすれば命を散らせない。願っても叶えられないことへの渇望に問題があるのだろうか。
「死ぬってどういうことかしらね〜」
今が冬でなければ、横からスキマが広がって親友が教えてくれる。最近、気温の乱高下が激しいが、ちゃんと休めているのだろうか。
白玉楼にも炬燵を取り入れてみたが、これは危険だ。
「もうずっとここにいたいわね〜」
茶のおかわりを持ってきた妖夢が壊れた人形のように何度も大きく頷いている。先程とは話が変わっているのに繋がっていると思っているに違いない。
可愛いのでついでに「じゃあずっと炬燵から出ないわね〜」と言うと白い顔が真っ赤になって「早く出てください! 暖まりすぎもお体に障りますよ!」とお怒りになった。恥ずかしさとどれぐらいの比率か気になるが、そこまで聞くのは可哀想なのでやめておく。
「そろそろ私も何かしようかしら〜」
妖夢はいないため、返事は誰からも返ってこない。無為に時間を潰しているが、亡霊生活が長くなると退屈さえも退屈でなくなってくる。ものは試しに異変でも起こせば巫女や魔法使いがすっ飛んでくるだろうが、幽々子は平和主義者であり、堕落者である。
「さっきお昼食べたばかりだし……」
死生活の中で喜びを抱ける数少ない日常だが、さすがに妖夢に怒られそうなのでやめておく。
睡眠をするにも夜から朝までしっかり寝る幽々子にとって昼寝はあまり気の進むものではない。
久々に剣を持つことも考えたが、炬燵が体を離してくれないので遠慮しておく。
「何をしようかしらね〜」
炬燵の中でできる楽しいこと。蜜柑を食べるのも飽きたし、気付いたら無くなっている。
体を意味もなく左右に揺らしてみるが、何も変わらない。妖夢が帰ってくる気配がしたので動きを止めて御礼を言う。彼女は買い出しに行くと言って、出ていった。暇潰しの相手がいなくなったため、再び体を左右に揺らす。
「何を考えていたんだったかしら〜」
思考を巡らせるが、結局何をすれば良いのか分からない。ただ、炬燵が暖かく、ここから出たくないという強い意志だけは覚えている。
机に右頬をつけて脳を回転させても思い出せない。
今度は左の頬を机につけると白い雪景色が映る。初めて見るなら気分が高揚するかもしれないが、見飽きた。
「どうしようかしらね〜」
答えもないまま目を瞑る。少し考えればまたやりたいことが思いつくだろう。
肩を叩かれる感触を受けて、目を開ける。顔を上げて後ろを見ると妖夢が心配そうな目で見てくる。
外を見るとすでに日が傾いている。眠っていたらしい。だが、今日中にやらないといけないものがあるわけではないので、別に構わない。
両手を大きく、天井に向けて伸ばし、固まった首を左右へ動かす。首が鳴って少し体が軽くなったような気がするが、勘違いだろう。
「明日はやりたいこと、見つられると良いわね〜」
自分に言い聞かせるように呟くと熱くなった下半身を冷ますために立ち上がると低い体温と外からの寒い風で一気に冷えていき、心臓が跳ね上がる。
生きているという感覚があって心地良ささえも感じられる。
「妖夢〜、おゆはんの準備よろしくね〜」
遠くから妖夢の返事が聞こえた。言われるまでもなく、台所へ向かっているのだろう。
さすがに寒くなってきたので、襖を閉じて、炬燵に入る。
明日もまた同じような日々が続くのだろう。
もうしばらくこんな日が続いても良いかもしれない。