人間のふりをして里に住む妖怪、赤蛮奇には密かな趣味がある。
ある意味とても妖怪らしい趣味。
本人は自嘲気味に弱小妖怪らしい趣味というけれど。
今日もまた、趣味を堪能するために赤蛮奇は外出する。
一見、ただの散歩。
しかし、赤蛮奇の目は鋭く獲物を探している。
見つけた!
赤蛮奇は狙いをつけた獲物の後をつける。気付かれない程度に適当な距離を取っているが、見失う心配はない。なにしろ、赤ん坊を連れた母親なのだ。急いで動く道理がない。
ちなみに赤蛮奇が見つけた獲物とは、赤ん坊を胸元に抱いた母親ではない。
獲物とは、母親に抱かれた赤ん坊のほうである。
そう、赤蛮奇の獲物とは、赤ん坊なのだ!
赤蛮奇は慌てない。ゆっくりと、ゆっくりと赤ん坊との距離を縮めていく。けっして悟られぬように。母親に不審がられないように。
そして、周囲から人の流れが消える瞬間を待つ。誰もがこちらに顔を向けてない瞬間を待つ。
そのとき、赤蛮奇は赤ん坊を見た。赤ん坊も赤蛮奇を見た。
視線が合う。無垢な赤ん坊は、不思議そうに赤蛮奇を見ている。
赤蛮奇に背を向けている母親は気付いていない。
今だ!
赤蛮奇は、頭をほんの少し浮かせた。
赤ん坊の視線は、浮いた頭に向けられている。
頭が浮かぶと、赤ん坊の視線は上へ。
頭が戻ると、赤ん坊の視線も下へ。
頭の上下に合わせて赤ん坊の視線も上下する。
ニッコリ笑う赤蛮奇。
赤ん坊もニッコリ笑う。
母親が赤ん坊の視線に気付いて振り向いた。
そこには、見ず知らずの女性が微笑んでいる。
その微笑みが我が子に向けられていると知った母親も自然に微笑んだ。
「あらあら、お姉ちゃんに遊んでもらったの、いいねぇ」
赤ん坊にそう言いながら、赤蛮奇に向かって頭を下げる母親。
赤蛮奇も頭を下げると満足そうに母親を追い越し、歩き去るのだった。
そんなことを十日に一度はやっている。
里の赤ん坊の数も有限なので、二度三度と同じ赤ん坊に当たるときもある。
母親とも顔見知りのようになり、「通りすがると赤ん坊をあやしてくれる優しいお姉ちゃん」と覚えられるようになった。
もちろん、全ての赤ん坊がそうなるわけではない。中には、浮いた頭を見て泣き出す赤ん坊もいる。
そんなとき赤蛮奇は、「おー、ワタシ何も知らないね」という顔をして通り過ぎるのだ。
浮いた頭を母親に、そして他の通行人に見られないように赤蛮奇は最高の注意を払っていた。バレてしまっては里を追い出されるどころか退治されるかも知れない。赤蛮奇レベルの妖怪には、里の退治屋でも重大な脅威なのだ。
そのスリルがまた楽しいのだと赤蛮奇は言う。
今日もまた、赤蛮奇は新たな獲物を求めて通りを徘徊していた。
いる!
チラリと見えた赤ん坊だが、赤蛮奇は確信した。
あれは、泣くタイプではない。無闇に妖怪を怖がらない赤ん坊だと。
長年の経験により赤蛮奇には、赤ん坊のタイプが何となくわかるようになっていたのだ。
いつものように、ゆっくりと近づく。ゆっくりと、ゆっくりと。
いつものように、視線を合わせる。
いつものように、首を飛ばす!
やはり、赤ん坊は怖れない。泣かない。
しかし、笑わない。
おや? と思った赤蛮奇は見た。赤ん坊の手が妙な形に動くのを。
あれは。
あれは、退治屋が結ぶ印のようなもの。
おや?
赤ん坊の手が光ったような気がした。
ギャース!
赤蛮奇は全身に電撃を受けたかのように震えつつ、這々の体でその場を後にする。
「なにあれ、何、あの赤ん坊、怖い! 退治される!」
その日から赤蛮奇は趣味を封印した。
後日、赤蛮奇はその赤ん坊が巫女になったことを知るのだった。
名前は、博麗霊夢だとか。
ある意味とても妖怪らしい趣味。
本人は自嘲気味に弱小妖怪らしい趣味というけれど。
今日もまた、趣味を堪能するために赤蛮奇は外出する。
一見、ただの散歩。
しかし、赤蛮奇の目は鋭く獲物を探している。
見つけた!
赤蛮奇は狙いをつけた獲物の後をつける。気付かれない程度に適当な距離を取っているが、見失う心配はない。なにしろ、赤ん坊を連れた母親なのだ。急いで動く道理がない。
ちなみに赤蛮奇が見つけた獲物とは、赤ん坊を胸元に抱いた母親ではない。
獲物とは、母親に抱かれた赤ん坊のほうである。
そう、赤蛮奇の獲物とは、赤ん坊なのだ!
赤蛮奇は慌てない。ゆっくりと、ゆっくりと赤ん坊との距離を縮めていく。けっして悟られぬように。母親に不審がられないように。
そして、周囲から人の流れが消える瞬間を待つ。誰もがこちらに顔を向けてない瞬間を待つ。
そのとき、赤蛮奇は赤ん坊を見た。赤ん坊も赤蛮奇を見た。
視線が合う。無垢な赤ん坊は、不思議そうに赤蛮奇を見ている。
赤蛮奇に背を向けている母親は気付いていない。
今だ!
赤蛮奇は、頭をほんの少し浮かせた。
赤ん坊の視線は、浮いた頭に向けられている。
頭が浮かぶと、赤ん坊の視線は上へ。
頭が戻ると、赤ん坊の視線も下へ。
頭の上下に合わせて赤ん坊の視線も上下する。
ニッコリ笑う赤蛮奇。
赤ん坊もニッコリ笑う。
母親が赤ん坊の視線に気付いて振り向いた。
そこには、見ず知らずの女性が微笑んでいる。
その微笑みが我が子に向けられていると知った母親も自然に微笑んだ。
「あらあら、お姉ちゃんに遊んでもらったの、いいねぇ」
赤ん坊にそう言いながら、赤蛮奇に向かって頭を下げる母親。
赤蛮奇も頭を下げると満足そうに母親を追い越し、歩き去るのだった。
そんなことを十日に一度はやっている。
里の赤ん坊の数も有限なので、二度三度と同じ赤ん坊に当たるときもある。
母親とも顔見知りのようになり、「通りすがると赤ん坊をあやしてくれる優しいお姉ちゃん」と覚えられるようになった。
もちろん、全ての赤ん坊がそうなるわけではない。中には、浮いた頭を見て泣き出す赤ん坊もいる。
そんなとき赤蛮奇は、「おー、ワタシ何も知らないね」という顔をして通り過ぎるのだ。
浮いた頭を母親に、そして他の通行人に見られないように赤蛮奇は最高の注意を払っていた。バレてしまっては里を追い出されるどころか退治されるかも知れない。赤蛮奇レベルの妖怪には、里の退治屋でも重大な脅威なのだ。
そのスリルがまた楽しいのだと赤蛮奇は言う。
今日もまた、赤蛮奇は新たな獲物を求めて通りを徘徊していた。
いる!
チラリと見えた赤ん坊だが、赤蛮奇は確信した。
あれは、泣くタイプではない。無闇に妖怪を怖がらない赤ん坊だと。
長年の経験により赤蛮奇には、赤ん坊のタイプが何となくわかるようになっていたのだ。
いつものように、ゆっくりと近づく。ゆっくりと、ゆっくりと。
いつものように、視線を合わせる。
いつものように、首を飛ばす!
やはり、赤ん坊は怖れない。泣かない。
しかし、笑わない。
おや? と思った赤蛮奇は見た。赤ん坊の手が妙な形に動くのを。
あれは。
あれは、退治屋が結ぶ印のようなもの。
おや?
赤ん坊の手が光ったような気がした。
ギャース!
赤蛮奇は全身に電撃を受けたかのように震えつつ、這々の体でその場を後にする。
「なにあれ、何、あの赤ん坊、怖い! 退治される!」
その日から赤蛮奇は趣味を封印した。
後日、赤蛮奇はその赤ん坊が巫女になったことを知るのだった。
名前は、博麗霊夢だとか。
後の輝針城異変で再会するまで初対面でのことしっかり覚えてるのとても好きです。
封印するとは、よほど霊夢の攻撃が痛かった·怖かったんでしょうね…
赤蛮奇、ふぁいと!
そっちの赤できたかと
スリルに溺れて痛い目を見ている赤蛮奇がかわいらしかったです