Coolier - 新生・東方創想話

幽香の災難

2006/02/15 07:07:17
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 その日、何時ものように向日葵の軍団もとい大群の中で”それ”をしていたフラワーマスターこと風見幽香はふと上を見上げると奴を発見した。そして奴がゆっくりとこちらに降りてくる。ムカつくことに満面の笑みで。
 奴が幽香の側に立つ。手には幻想郷でも珍しいカメラ、頭にはちょこんと角ばった帽子らしきもの、その上に真っ黒な鴉。
 幽香はある意味で奴が幻想郷一危険な存在だということは知り合いの隙間妖怪から聞いていた。話だけを聞くとそれほど脅威として感じられなかったがいざこうして前にすると脅威の言葉意外浮かばない。正直、最強の妖怪を自称する幽香は侮っていた。奴の脅威というものを。
「・・・・・朝からブンヤさんは何の用かしら?」
「えへへー」
 自分なりに冷静に、しかし動揺は僅かに出てしまう幽香。
 それに対し奴、射命丸文は余裕とも見える笑みを浮かべている。





       ~幽香の災難~




 その日、文は何気なしに向日葵の大群が咲き乱れるその場所を飛んでいた。
「確かこの辺りは風見さんの・・・・・」
 自分で言って今更のように気付く。


 曰く、向日葵の大群に近寄るな。


 妖怪たちの間では一つの定説というか掟の様なものだった。事実、妖怪ではないがとある妖精がその向日葵の大群を発見し、凍らせてみようと思い立ち凍らせようとしたが気付いたら大地と接吻していたらしい。当人は何が起こったか理解出来なかったが妙に腹が立ち、リベンジを敢行するが凍らせようとした向日葵そのものが反撃してきたことに逆に興奮、スペルカードを発動しようとしたが向日葵の主が現れ、あっさり敗北。
 それ以来、流石の氷精も向日葵の大群に近付くことはなくなった。
 つまりはフラワーマスターの領地であるが故に近付けない。近付いたら遠慮無しに向日葵による迎撃が行われるということで妖怪たちの間では禁忌の一つに数えられている。まぁ他にも多すぎて妖怪たちは肩身の狭い思いをしているが当人たちには関係の無い話だった。
 そんな話があるにもかかわらず自分は何故こうも近付いているのだろうかと思う。だがこのようなことは前にもあった。
 前回、ふと用も無いのに紅魔館へと足を運ぶとメイド長が不審な動きをしているのに気付き、高高度から観察を続けていると裏庭で何やらこそこそしているので何時も連れ添っている鴉に偵察をしに行ってもらった所、何とそこにはビニール袋に詰められた大量の下着があった。
 よく調べてみるとどれもこれもメイド長のサイズに合わない。どちらかというとまだ子供サイズ。と言うことはと文は考えると全部お嬢様のものではないかと言う結論に辿り着いた。こうしちゃ居られないと流石幻想郷一の最速、早々に自宅へ帰り原稿を仕上げて夕刊として発行。
 その日はミスティアの屋台で一杯やれたそうな。一方、メイド長はお嬢様のお叱りを受け、泣く泣くマル秘コレクションを全部処分したそうな。
 つまりは文にとってはこのような突発的な行動は第六感らしきものが働いてネタの現場へと体が動いているのだろうと文自身、そう考えている。今日はフラワーマスターらしい。と、考えているとぽっかりとクレーターのような開けた場所があり、その中心に目的の人物であるフラワーマスターこと風見幽香が居た。その場所を見るだけでもどうやら向日葵の大群の中心部らしく、地上からだと辿り着くのが困難だった。
「なんでしょうか?」
 自分の弾んだ声に余計に興奮する。急いでカメラを構え、ファインダー越しにぶれないように幽香を収める。丁度幽香だと判別出来るぐらいの絵になるとシャッターを押す。
「よし、カンペキです!」
 満足の行く撮影が出来て笑みになる文。と、下を向いていたはずの幽香がこちらを見上げているようにも見えた。
 気付かれちゃいましたか。と思うがどうせだから取材もしちゃいましょう、と物怖じせず笑みのまま降りていった。




 幽香は文の笑みが喜であるという事を確認するとある程度だが安堵した。恐らくだが現場は見られていないだろうと。
 しかし、何かをしているということは気付かれた。降りてきたのは取材のためだろう、厄介だ。これほどまでに小天狗程度に恐れをなしたのは最強を自称するだけあって長い経験の中では無論、無かった。
 厄介な。正直な話、わざわざこの場所を作ったのはそのためだけあって、他意はない。以前、生意気な妖精が現れたときは自分はここに居り、向日葵を動かして取り合えず一難去ったがもう一難来た時には流石に危機感を感じ、来たら怒った顔でスペルカードを発動しようとしていた。無論、幽香は遠慮無しに久し振りの本気で叩きのめした。あれ以来あの妖精の姿は見ていない。
 しかし、この大群にも致命的な弱点はある。それはもうお分かりの通り対空への対処が出来ないことだ。基本、花という植物は地に根を張らねば存在できないもので、空に咲く花などフラワーマスターの幽香言えども作ることは不可能だった。まぁ背を高くすればいいのだがそれでは高度に対処出来るというわけではないので追々考えておいた結果がこれだ。
 厄介な、と再び幽香思った。幾らなんでもあれは卑怯よ、と思ったがそこで今更のように気付いた。
「あ」
「?どうかしたましたかー?」
「い、いえ、なんでもないわ」
 間抜けな声が思わず漏れていたことに反応する文、それに慌てて対応する幽香。
 なんてことは無い。単純に背を高くしてこの場所を隠せば良かったのだ。何てことだと後悔するが後の祭り。今はこの場を切り抜けなければならない。どうする私。と焦る。
 一方、文も表情は笑みだが内心焦っていた。
 不味いですよ、ヒジョーに。理由は幽香は静かに、しかし堂々と周りの向日葵たちを動かし、クレーターの上部を隠し、更には隙間と言う隙間を向日葵を密着させることで無くしたこの行動に後先考えずに来てしまった文は焦った。
 正直、何かされれば逃げれば言いだけの話で、幻想郷一の最速の名は伊達ではないと自負出来るがこうも逃げ道を無くされると無理無茶無謀の3Mが完成するし、更にはここは相手のまさしく庭。現実として文は自ら籠の中に入ったも同然だった。
 どうしましょう、とあくまで表面は余裕を見せることにした文。どれだけ持つだろうと思いながら策を考える。



「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 どらぐらいの時間が経ったのだろうか。季節としてはまだ夏にも入っていないがこの場は密室も同然の状態で隙間からは風など入らない。更に向日葵は上天の太陽から熱を貰い、暖かくなっている。その影響からかこの場所もサウナ状態になりつつある。
 汗が頬を伝い、地面に落ち、だがすぐに吸われる。全身からも体を冷やそうと発汗する。お互い、汗のお陰で服が濡れ始め気持ち悪いと思ってきた。
 はぁはぁはぁ。
 ふぅふぅふぅ。
 お互いの息が荒い。このぎっちりとした空間のお陰か酸素が薄くなってきた。好い加減、行動に移さなければ危険なのだがお互いがお互いの行動を危険視しているため動けない。つまり、堂々巡りなのだ。
 幽香はぼんやりとした頭の中で思考が別の方向に向かっていた。それもある意味危険な方向に。
「(ああ、可愛らしいわねぇ。なんかこう、元気いっぱいという感じと少女という感じがいい感じに滲み出ているわぁ)」
 顔がにやけて来ているが気にしない。目の前には汗だくの文、汗のお陰で服が透けてきている少女が居るのだから。
 一方文も似たような状態だった。
「(いいですねぇ、あの大きさは羨ましいです。紫さんぐらいでしょうか?それとも美鈴さんぐらい?ああ、ホントあれぐらい欲しいなぁ)」
 能面のように張り付いた笑みのまま文は思う。ピッチリと肌に張り付き、その大きさを更に誇張している幽香の胸を直に見たいと。
 鴉は思っていた。このまま乱れろと、俺の期待を裏切るなと。


 事態が動いたのは本当に急だった。
 鴉の期待通りに二人が脱がしてしまえと熱さで危険思考が行動に出ようとしたとき、
「ねぇねぇ幽香ぁって熱ぅ!」
「!!!」
「!?」
 予想外の珍客が現れた。隙間妖怪、八雲紫だ。
 幽香は今更のように本来の目的を思い出し、しまったと思った。
 文は呆然とした表情で紫の登場に驚きながらも指は自然とシャッターを切っていた。
「もう、何よこの暑さは。我慢大会?幽香は苦手なくせによくやるわねぇ。あ、そうだこの前貸した物、返してもらうからねー」
「ま、待って!」
 幽香はここに来て紫が現れることを想定していなかったため、”あれ”を今ここで掘り出されると危険だと本能的に感じ、待機させていた向日葵をコンマの速度で活動させ紫の行動を阻止すると同時に文も潰そうと考え差し向ける。
「うわっ!」
 背後から飛んできた大蛇の如き巨大な向日葵が突っ込んできて、慌てて空へ飛ぶことで回避。先ほどまで立っていた場所は向日葵の花が激突し小さいクレーターが出来上がった。それに焦りを覚えると四方八方から更なる向日葵たちが襲ってきた。
「ひぃ!」
 向日葵ってこんなに危険だっけ?と思いながら予想外に速い向日葵を更に上を行く速度でかわす。だが忘れてはならない。ここはフラワーマスターの庭なのだ。生きては返さん、殺意を感じるほどに向日葵の攻撃が激しくなる。と文は僅かな隙間から別の戦いが見えた。


「もう、幽香。いきなりなんなのよ」
「うるさーい!アンタのお陰でこっちは色々危険なんだー!」
 普段の優雅さが嘘のように荒れる幽香。一方、紫は向日葵の突撃に物怖じせず隙間から標識やら石造やらと何処で拾ってきたのかと疑わしいものを吐き出して向日葵の進路を邪魔する。しかし、多勢に無勢、対処しきれず紫に迫る向日葵は
「邪魔よ」
 隙間から取り出した一本の傘。何処にでもありそうなごく普通のフリルのついた白い傘で向日葵を叩く。
 ただそれだけ。ただそれだけで向日葵が折れて吹き飛ぶ。しかし向日葵はまだ居る。植物の大蛇が紫に迫る。だが、
「だから」
 叩く。折れる。吹き飛ぶ。
「少しは」
 叩く。折れる。吹き飛ぶ。
「大人しく」
 叩。折れ、吹き飛ぶ。
「していなさい」
 叩。折。吹飛。
 愕然とした。
 自然な動きで向日葵相手に踊るような動作で全てをねじ伏せていく。それを見るだけでもただ優雅。文は自身に迫り来る向日葵をかわしながらもシャッターを切ることを止めない。それだけに見とれる姿だった。
「ぬあーーーーー!」
 一方、幽香はすでに気が触れたとしか言いようが無いほどに荒れていた。そしてただ悠然と全力で差し向ける向日葵たちを遊び相手のように楽しみながら相手をしている紫に嫉妬と憎悪を抱く。
「叩き潰せぇ!」
 紫を指差し一つの命令を下す。すると向日葵たちが一つの束となり見る見る巨大化していく。その姿は竜のようにも見えた。
「あらら」
 と紫は驚いたと顔に出しながらも楽しそうに笑う。
「ちょっと返しに来てもらっただけなのに熱烈な歓迎ね。丁度良い暇潰しが出来るとは思わなかった」
 文はもう呆然とするしかなかった。自分の方に来ている向日葵も向こうに回されているようですでにあの激しい猛攻はなかった。しかしそれよりも紫の発言は信じられないものだった。あんな植物の蛇竜を眼にしても熱烈な歓迎だとか暇潰しとか今の自分にはとうてい言えない台詞だった。
 あそこまで辿り着くのはどれぐらいかかるんだろうなぁ。
「まぁ頑張れば来れると思うけど無理は禁物ね」
 顔に出ていたのか大先輩から有り難いお言葉が聞けたのでまぁいいかなと思う文。
「もう死ねぇーーーーーーーーー!」
 約一名暴走中だったのを思い出したときには向日葵の蛇竜が目前に迫っていた。
「ゆ、紫さん!」
 幾ら紫でもあれをねじ伏せるのは無理だろうと思った文は紫に退避を促す。だが紫は
「いやいやブンヤ。見てなさい」
 余裕の笑みで返す隙間妖怪。
「これで終わりだぁ!」
 もう眼がイっちゃってるフラワーマスター。
 すでに蛇竜は目の前、紫は隙間を開いていない。だが代わりにと口を開いた。



「どうでも良いけどこのままだと埋まってるのが出てくるわよ?」




「・・・・・・・・・・・・あー!」
 フラワーマスターが気付いた時にはすでに遅かった。紫は悠然と隙間の中に入り逃げているし、向日葵の蛇竜は地面との接触は確定している。すでに無理だと分かっているのに慌てて止めに入ろうとする幽香。だが、
 直撃。



 まず起きたのは静寂。その後に大震。
 直撃地点を中心に周囲へ大きな揺れが起き、遠く離れた竹林の屋敷や湖の紅い館、果ては神社まで響いた。幻想郷の住人たちは何が起きたか分からぬまま揺れに巻き込まれた。



「っく!」
 一方、震源地の目の前に居た文も直撃により発生した風の津波の直撃を受け、吹き飛ばされそうになるがそこは天狗の子。伊達に風を操る力は持っておらず強引に発生させた台風が起きてもおかしくないほどの風を目の前の風に叩きつける。
 それによる事態は風爆。威力のある程度の軽減にはなったが決して生易しいものではなく体の所々を真空波によって切られていく。と、視界の隅に何かが移った。それはこの風の中にあってもゆらゆらと揺れており、まるでクラゲのようだった。
 何だろうと思い強引に近付く。すると
「さぁせるかぁ!」
 左より幽香が現れた。
 彼女の姿はすでにボロボロで、髪も乱れている。無理も無い。彼女は自ら震源地の方へと近付いて行ったのだ。しかしそれにも関わらずなおも体を休めようとはしない。それほどまでに知られたくないことなのだろう。ならばと
「是が非でも記事にさせて頂きます!」
 こうなればブン屋根性が黙っていられない。
 未だ吹き荒れる風の中、二人の妖怪と天狗が根性の二文字を持ってゆらゆらと揺れている”それ”を目指す。
 と、急に風が止んだ。
「好機!」
 秘密の漏洩を防ぐため、並々ならぬ根性を持って文よりも”それ”に近付いていた幽香がラストスパートを懸ける。距離にして僅か3m。
 幽香は己の勝利を確信した。だが、右手より迫り来るプレッシャーは何なのだろうかと、焦りを覚える。相手との距離を考えると奴は10m以上も差を付けている筈。だが、何だこのプレッシャーはと否定したい気持ちでそちらを見る。するとそこには



「好機!」
 幽香の言葉が随分と遠くに感じられる。あれだけの風の中を一心不乱に突き進んでいたというのに全く進んでいなかった。
 天狗のはずなのに。自分の種族を考えると同属に申し訳ない気持ちと大きな敗北感が背中に圧し掛かったような気がした。
 情けない。これでは幻想郷一の最速でもなんでもないではないかと諦めの気持ちが現れた。
「あらあら、貴女のブン屋としての気持ちはその程度かしら」
 耳元でそう囁かれた。その言葉を聞くと文は驚いた顔を作る。
「この程度で諦めるなんてね」
 隙間はクスクスと笑う。
 あなたのせいでしょうが。と言いたくなるが言うべきことはそれではないとすでに分かっている。
 そうだ、この程度の距離がどうしたと。この程度で諦めるのかと自分自身を叱咤する。
「まさか」
 と笑う。さぁと自分の心の中で言う。
「私がこの程度で諦めるとでも?」
 この気持ちは、自分がブン屋という存在に対する気持ちは全く持って偽りでもないしこの程度で諦めれるものではないのだ。
「そう、その意気よ」
 全く、この人は分かってて言うのだから敵わない。だからこそ憧れる。何時か鞍馬の長になれるだろうかと思う。
 いや、なれるかではない。この人ならばこういうだろう、なるんでしょう?と。
 ああそうだ。なれるはただ憧れるだけ。なるは望むこと。
 それならばと、この程度の距離がなんだと。
「幻想郷一最速は伊達ではないということを証明してあげましょう」
 それこそ自信たっぷりに言う。
「そ、ならば見せてちょうだいな」
「勿論」
 さぁ、スタート地点に立った。あとはただゴールまで翔るだけだ。
 行こう、ただ其処へ。
「行きます」
 そして天狗が空を翔る。




「!?」
 幽香が見たのは天狗の少女ではなかった。
 全身に風を纏い、ひたすらに空を翔る天狗だった。
 馬鹿なと駆けながらも驚愕する。
 その天狗は全身傷だらけだった。どれも無視出来るものではない。だが天狗は正面、ゴールを目指している。
「っく!」
 ただの一瞥だというのに迫り来る敗北と天狗に更なる焦りを覚える幽香。
 腕を振るい、天狗の正面に残存している向日葵を差し向け、壁を作る。だが、
「そんな・・・」
 幽香が呆然とそれを見てしまった。壁が出来る頃にすでに天狗は更に前を進んでいた。
 残り2m。その距離が酷く長く感じられる中、天狗は更なる加速を続けていた。もはや彼女を止めることは不可能になっていた。



「・・・・・!」
 轟、と文は一瞬にしてその速度に到達した。
 自分が持ちえる知識と経験を駆使して自らを弾丸とすることで得られる加速による未体験の領域。
 不安を覚えるが今とはなっては瑣末なこと。今は目の前のゴールを目指す。視界に幽香の驚愕の顔が入るが気にも留めない。
 ただ辿り着く。それだけ。それだけを目的に更に加速を続ける。
 自分の足元に風の爆弾を作り、それを爆発させることで衝撃による加速を繰り返す。
「っ!」
 傷が痛み始めた。だがすぐに些細なこととなる。最早到達のみを目的とするこの天狗は止まるところを知らない。
 周囲から向日葵が迫る。だが連続して行われる風爆によりどれもこれも掠りもしない。逆にその身を弾けさせるだけの結果に終わる。
 残り2m。まだかと、まだ着かないのかと風となった少女は思う。だが、必ず辿り着けると少女は思っていた。




「全く末恐ろしいわね」
 余興だったはずがどうだろうか。
 あの天狗の少女を成長させることになるとは例え運命を操る紅い悪魔であろう想像しえなかったことだろう。
 先ほどまで文が居た場所を見る。そこにはぽっかりと綺麗な丸の窪みが出来ていた。
 最初から全速力なんて。
 自分が知りうる限り、あの現代の鞍馬の天狗でさえ思いつかないであろう加速の方法。まだ無謀を知らない幼いからこそ可能な発想。
「全く、本当に末恐ろしいわ」
 近いうち、彼女が鞍馬天狗の座に座るのはそう遠くないだろうと思う。それはそれで気長に待たせてもらおうか。
 残り1m。隙間はクスクスと笑いながら花の妖怪と天狗の少女の競争を見守る。さぁもうじきゴールだ。




 そして幽香は天狗が並んだことを悟る。
 ほんの一瞬、瞬きの間に彼女が並んだことを畏敬の念を覚える。
 速い。僅かな距離を自分はここまで時間をかけたのにもかかわらずこの天狗は一瞬だ。あれだけの距離を離していたにも関わらず、だ。
 あの隙間のことを考えると自分はまだ最強の名を名乗ることが馬鹿らしく思えてくる。
「だがそれでも」
 私は最強なのだ。例え上が居ようとも自分が名乗り、実現すればそれは最強と成る。故に私は最強なのだと幽香は駆けながら思う。
 そして側面に風神となった少女を視認する。ここが勝負の決め所だと判断する。
 左拳を握る。ここまで接近となれば単純な一撃を狙う。幽香にとって賭けとなるが文が僅かに前に出た瞬間、無防備となった側頭部に最大限まで力を溜めた一撃を放つ。
 その一撃は簡単にその頭蓋を粉砕するだろう。だが、と思う。
 これをかわせるのであれば私は貴女を認めよう。
 そして文が僅かに前に出る。
「せぇい!」
 放つ。
 気合の声と共に放たれる一撃は高速に達し、一直線に文を狙う。
 さぁ、貴女は最強か。幽香は問うた。
 その返答は突然として返された。
「!?」
 直弾したと思われた一撃は止まっていた。
 何故、と思ったが幽香は同時に吹き飛ばされていた。そしてその理由に気付く。
 少女の周りに幾重にも風が衣のように吹き荒れていた。
 そうか、と幽香は飛ばされながら自らの敗北を悟る。彼女は文字通りに風神と化していたのだ。
 自らの敗北は必定だったのか。
 ク、と喉を鳴らす。
 貴女の勝ちよ、と笑みを浮かべながら幽香は意識を失った。



 そして少女はゴールに辿り着いた。








 それから数日経ち、『文々。新聞』が発行された。
 その内容を簡潔に説明すると今日までの休刊の謝罪と記事の内容についての説明だった。
 見出しは『フラワーマスターは腐女子!?』で内容はフラワーマスター幽香が幻想郷全域に大地震を引き起こしてまで隠したかった八雲紫から借りていたいわゆるそっち系の本の発見を皮切りに本人の独占インタビューが書き綴られていた。
 その内容に巫女や魔法使い、紅魔館、西行寺、永遠亭の各自が驚愕し、本人に各々個人的に詰問を行おうとしたが当人は行方不明で唯一反応が無かったマヨヒガにも尋ねに言ったが匿われた痕跡は無く、ブン屋も知らぬの一点張りで結果、フラワーマスターに懸賞金がかかったそうな。


『最初はただの興味本位でした。だけど読んでいくうちに段々とはまって行って・・・・・・』



 教訓
 私としても是非とも正確な真偽を問いたいので私としては貴女が私の前に来ることが善行でしょう。ってけーねも言ってた。

何故だ!?元々はただのギャグだったのに!?
今回もまた絵版にあった喜栄座氏の絵を見て勢いで書いたのが何故か終盤でエミヤにあう文が出来てしまった。
更に言ってしまえば途中から頭が煮えてしまって訳が分からない状態になってしまいました。
ふふふ、ヤベー。頭が沸騰してるー。
なお、作者は未だに製品版を手に入れられず3ボス以降と対戦したことがありません。
(つД`)
後悔はするが反省はしない。多分。
と、言うか終盤がタイトルに合ってねー。
煌庫
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コメント



0.1390簡易評価
7.70削除
(;´∀`)ゆうかりん……

( ゚∀゚) けど、嫌いじゃないぜ。こういうの。
9.80削除
薔薇と書いてアニキと読む!
いや、絵板のしっとコーリン見たもんでつい。

けどおにーさんは百合の花のほうが好きだなぁ。ハァハァ。
17.70ま~れお削除
さりげに感想をいただいていたので、私も読ませていただきましたw
別人とか私の見間違いでは…ないですよね?(何
幽香が腐女子に…ですが、たとえ腐っても私は幽香をうわなにをするやめr
…反省orz
えー、こんな書き方もあるんだなぁと勉強させていただきました。
ではでは、感想ありがとうございました。
お互い頑張っていきましょう。
36.100名前が無い程度の能力削除
ゆうかりんなら、腐っててもいいやw