*続きです
んー・・・
うーん・・・
あー、もう!!駄目ですね、ボツボツ、ボツ!!
原稿をクシャクシャにして丸める事数十回。頭を掻き毟りながらベッドに倒れこむ事十数回。そのまま苦い思いで天井を睨みつけるものの、いつの間にか眠りこけていた事数回。早い話が原稿に詰まっているのだ。
うー、久しぶりにピンチですね。今回入手できたネタが余りにもショボすぎたと言うべきなのか、写真が非常に情けないものと言うべきなのか、私がスランプに陥ったと言うべきなのか。はあ、原稿を書き始めてから一体どれだけ時間が経ったのでしょうか。朝の光が非常に眩しいです。溶けそう・・・
眠いのか眠くないのかはっきりしない頭で再び原稿用紙と睨み合う。恐らく頭はボサボサ、目の下には濃厚なクマ、顔色は悪く目は血走っているだろう。完全に死人一歩手前の形相である。
あうー、やっぱりこのネタで記事を書くのは無理があったのでしょうか。しかし、ここのところ平和と言いますか暇だったと言いますか、久しぶりに手に入れれたネタがこれくらいな物ですし。ああ、インスピレーションの神様よ、どうか今だけ私のこの右手に降臨してください・・・
新聞を出したいが記事が出来てない。記事を書きたいがネタが無い。ネタが無いが幻想郷ではネタになりそうな事は何も起きない。実に新聞記者殺しの状況である。しかし、このままでは新聞大会に負けることは確定である。発行部数を競い合うこの行事に勝つ為にはいくら不定期発行の新聞とは言え、ある程度定期的に発行しなければならない。
やっぱり、このネタは放棄して新しいネタ探しの旅にでも出た方がいいのでしょうか。しかし、ここで諦めるのもなんか嫌ですし。でも、今日ここでこうしている間に何か起きるかもしれないですし。だけど、やっぱり何も起こりそうに無いような気もしますし。妖怪、諦めが肝心だってどこかのお偉い人が言ってたような気も。でもこの程度で諦めていたら新聞記者失格だとも思いますし。あ、今ビビビっと気分転換にネタを探しに行けとの天からの啓示が来ました。ああ、でも自分で決めた締め切りが・・・
しばらく目線を虚空の空間に向けて何度目かのメビウスの輪的思考ループに囚われた後、気を取り直して原稿と向き合った。新聞記者にとって、例え自分で決めたものだとしても締め切りは絶対なのである。
~~~ シーン 四 ~~~
「皆さんお揃いで何をしてるんですか、輝夜さん?」
「鈴仙に穴を掘らせているのよ。家庭菜園を始めようと思うのだけど、土に栄養分が少ないといけないから。」
はあ、家庭菜園ですか。輝夜さんが暇潰しに何かを始めるのは今に始まった事じゃないですが、永遠亭の庭先で人参畑でも作る気でしょうか。今度も何日保つことやら。
「それで何を埋める気ですか。土の栄養なら永琳さんに栄養剤を作ってもらえばいいのでは?」
「分かってないわね、月の家庭菜園は土を耕す事から始めるのよ。だから生ゴミとかを埋めて耕さないといけないのよ。」
「師匠ー、このぐらいで良いですかー?」
「まだよ、もっと深く掘りなさい。何のために伊達兎耳をつけているの?」
少なくとも穴掘りの為ではないと思いますが。それと、土を耕す為とは言え、垂直に掘っても意味が無いのでは。それに、自分でやると言っているそばから鈴仙さんに穴を掘らしていますし。
「はあ、色々と納得がいかないところが多々ありますが、月式家庭菜園とやらが成功するといいですね。それで、あちらに置いてあるのが埋める生ゴミですか。でも、何故あの箱だけガタゴトと動いているんですか?何やら呻き声のようなものも聞こえますし。」
「さあ、何ででしょうね。生ゴミなのに動いているなんて、本当に不思議だわー」
「師匠ー、もうこれぐらいで良いですかー?って言うか、疲れてきたのでこれぐらいで勘弁してくださいよー」
「軟弱者ね。私は貴方をこんな風に鍛えた覚えは無いわ。何の為に薬を学んでいたの?」
少なくとも肉体改造の為ではないと思いますが。それにしても非常に怪しいですね、あの箱は。大体中身は見当がついてはいますが。
「どれどれ中身はっと。ああ、やっぱり妹紅さんでしたか。」
「ね、生ゴミでしょう?」
「師匠ー・・・、疲れてもう掘れませんー・・・」
「駄目よ。泣き言を言っている暇があったら、後二倍は掘りなさい。何の為の座薬なの?」
色々と突っ込みたいところがありますが、もういいです。縄でグルグル巻きにされて猿轡された妹紅さんを発見した時点で、ほとんど理解できましたから。結局、妹紅さんを埋めたかったんですね。
「うーん、このぐらいの深さでいいかしら。鈴仙、掘るのを止めて上がってきてもいいわ。姫、準備ができました。」
「そう、ありがとう。さあ妹紅、覚悟は良いかしら?よくもこの前は私を簀巻きにして川に投げ入れてくれたわね。一緒に重りが括り付けられていたけど、あの時ほど石が憎いと思った事は無いわ。心置きなく土の養分になりなさい!」
「あーうー、ようやく地上に戻れる・・・、って、ああ、師匠、大変ですー。あまりにも深すぎて上れません!!」
「・・・ベタな話ね。このまま一緒に埋めてしまおうかしら。」
「ベタな話ですけど、深く掘れって言ったのは永琳さんじゃないですか。鈴仙さんが飛んで上って来れなくなるなんて、一体どれだけ深く掘らせたんですか?」
「あああ、師匠、大変ですー!!なんか変な音が・・・わー、何か出てきたー!!」
『 永遠亭に温泉が湧く
○月×日、突如永遠亭の庭先に温泉が噴出した(中央の写真参照)。あまりに突然の事だったので、現場に居合わせた者は唖然。しかし、すぐに現場は歓喜に包まれた。温泉を掘り当てた鈴仙・優曇華院・イナバさん(月の兎)は目を白黒させながらこう語ってくれた。
「いやあー、本当に驚いたわよ。別の用事で穴を掘るように言われていたんだけど、まさか温泉が出るとは思ってもいなかったわ。でも、お陰で穴から出ることが出来たから助かったんだけどね。ああ、太陽の光が恋しかったです。」
また、永遠亭の主である蓬莱山 輝夜さん(月人)は、こう語ってくれた。
「ふうん、まさか温泉が湧くとはね。せっかく家庭菜園を始めよと思ったのに、これじゃあ無理ね。生きのいい生ゴミまで用意したのになあ。まあでも温泉が湧いたんだし、良しとしましょう。」
温泉には元々効能があるのだが、今ではこの温泉に特殊な薬を混ぜて更に様々な効能を付け加えたと聞く。疲れはもちろんの事、肩こり腰痛、便秘、引きこもり癖など合わせて数十種類の効能があるという話だ。しかし、永遠亭関係者以外お断りとの事で、一般人が利用出来ないのが現状である。 (射命丸 文) 』
~~~ シーン 伍 ~~~
「うわ」
「なんですか、そのあからさまに嫌そうな顔は。何か私に知られると不味い事でもしたのですか?」
そうじゃないんですけど、できれば今ここで映姫さんには会いたくなかったものでしたので。せっかく萃香さんと楽しく屋台でお酒を飲んでいたんですけど、一気に冷めてしまったじゃないですか。
「天下に名高い閻魔様こそ、わざわざ下々の者が安い酒を飲むような場所に何の御用ですか?」
「・・・貴方のその皮肉については後ほど言及をさせて貰うとして、皆が私の言いつけを守っているかどうか見回りをしているのです。夜雀が歌で人を惑わしていないか、鴉天狗が新聞などという物を書いていないかと。」
「へえぇ、あんたがあの閻魔様ねぇ~。こんな夜遅くまで仕事だなんて、お仕事熱心な事だねぇ~。どうだい、仕事なんか忘れト私達と一緒に飲まないかぁ~?」
うわ、何を言い出すんですかこの酔っ払いは。そんな事を言えば説教をされるいい口実だという事が分からないんですか!?
「貴方は私の仕事を何だと思っているのですか。いいですか、年がら年中お酒を飲んでいる貴方には分からないと思いますがって、ちゃんと聞きなさい!!」
「いいじゃないか、硬い事は抜きでさぁ~。屋台まで来て酒を飲まないなんて、酒に対して冒涜だよ。ほら、酒と食べ物と人の好意を粗末にする奴は罰が当たるっていうじゃないか。だから、せっかく来たんだからあんたも酒を飲んでいきなよ~」
ほらほらっと半ば強引に鬼の娘が閻魔様を席に座らせる。閻魔様の方は何やら言いたげだったが、とりあえず席に着くことを了承した。ひょっとして、罰という言葉に弱かったのかもしれない。
「ああ、もう。何を考えているのですか、貴方は。私は多忙の身だと言ったはずです。少しだけですからね。」
「まあまあ、酒の席でそう硬い事いわずにさ、もっと肩の力を抜いた抜いた~」
「はあ、酔っ払い恐るべしと言ったところですか。強引に酒の相手を増やしましたよ。まあそう言う訳で迷惑でしょうけど、ミスティアさんお酒と串揚げ頼みますね。」
まったく、萃香さんは何を考えているのでしょう。映姫さんを引き止めても百害あって一利無しだと言うのに。もれなく弾幕までついてきますし。ああミスティアさん、そんな顔をしないでください。皆まで言わなくても気持ちは分かりますから。
「う、何ですか、その貴方の息のアルコール臭さは。四六時中お酒を飲んでいるとは言え、これはいくらなんでも限度を超えています。そもそも貴方はですね・・・」
「堅苦しい話は酒の席じゃ無し。ほらほら、コップが空いてるよ?」
「萃香さん、映姫さんはまだお仕事の途中だそうですから、あまり飲まさないようにしましょうよ。映姫さんも早く次の目的地まで行きたいでしょうし。」
「まだ酒は始まったばかりよ~。この程度じゃあ閻魔様がどれくらい酒が飲めるか分からないじゃないかぁ~」
そんな事知ってどうする気ですか。まさか宴会に閻魔様も集める気ですか。止めておいた方がいいと思いますよ、皆と仲良く盛り上がっている映姫さんの姿を想像する事が出来ませんし。
「ああ、もう。貴方のお酒の飲み方は乱暴すぎます。ちゃんと味わって飲まなくては、せっかくのお酒が勿体無いでしょう。そもそも貴方の・・・」
「ほらほら、仕事を忘れれないのは酒が足りてない証拠さぁ。もっと飲んだ飲んだ~」
「映姫さんの説教は、仕事と言うよりも性格だと思いますが。それにしても注がれたお酒をちゃんと飲むなんて、映姫さんって意外と律儀なんですね。」
「当たり前です。食べ物や飲み物を粗末にする事は良くない事なのです。」
だからと言って、そこまで付き合わなくてもいいと思いますが。ああ、このまま帰ってしまいたい気分ですけど、萃香さんを連れてきたのは私ですからね。いい加減腹を括りますか。ミスティアさんを一人にしておくのも可哀想ですし。
「いいですか、貴方という・・・」
「まあ、飲めぇ~」
「だいたいですね・・・」
「いいから飲めぇ~」
「そもそも・・・」
「もっと飲めぇ~」
『 閻魔様が遭難!?
○月○日深夜、四季映姫・ヤマザナドゥさん(閻魔様)が山奥の森で動けなくなっていたところを保護されるという騒動が起きた。発見された当時の映姫さんは酷く酔っていて、意識も朦朧としていた。
今回の騒動の経緯はこうである。ミスティア・ローレライさん(妖怪)が経営する屋台で遅くまで飲んでいた映姫さんだが、見回りの続きをしなければならないと言い出し、私を含めて一緒に飲んでいたお客や店主の制止を聞かずにどこかへと飛んで行った。しばらくした後、映姫さんの帰りが遅い事に心配をした小野塚 小町さん(死神)が屋台にやって来た事によって映姫さんがまだ戻っていない事が発覚。小町さんの要請を受けて映姫さんを探す事になったのだが、無事博麗神社周辺の山奥の森で発見した。ちょうど同じ屋台で一緒にお酒を飲んでいた伊吹 萃香さん(鬼)は、
「びっくりしたねぇ~、べろんべろんに酔わせていたらいきなり立ち上がってどっか行っちゃうんだからさぁ~。見回りの途中だったって言っていたけど、こんな時間に行けばもう就寝しているって事ぐらい分からなかったのかなぁ~。まあ何にせよ、私の敵じゃあないって事が分かったから良いんだけどねぇ~。」
と語ってくれた。また、映姫さんを探しに来た小町さんは、
「いやぁ、面倒かけさせちゃってすまんねぇ。いくら四季様でもここまで酔うと流石に正常な判断は無理だから。まあ職務に忠実な方だから、見回りに行かなきゃならないって事が頭を離れなかったんだろうねぇ。」
と語り、安堵の表情で眠そうながらもまだ見回りを続けると言い張る映姫さんを背負って戻っていった。
いくら春だからといっても、まだ夜は寒い。外で眠ろうものなら風を引く事間違い無しだろう。外でお酒を飲む場合は、くれぐれも家に戻れなくなるまで飲むのは控えるべきであろう。 (射命丸 文) 』
~~~ シーン 六 ~~~
「こんにちは、また取材に来ました。」
「ああ、文さんじゃないですか。お久しぶりです。」
「こんにちは、どうぞごゆっくり。」
私が挨拶をすると門番と小悪魔が作業を中断してこちらを振り向く。門番は洗濯物を干していて、その向こうで小悪魔が本を並べていたのだが、どうやら私の取材に応じてくれそうだ。
「あの、何故美鈴さんは洗濯物を干しているんですか。確か美鈴さんは門番のはずでしたよね。」
「私は今も昔も門番です。ただ、たまに館の方で人手が足りなくなると力仕事が私に回ってくるんです。特にこの時期は新人のメイドがまだ仕事を覚えきれていませんからね。」
「はあ、要するに暇をしているんだったら他の場所で働けって事ですね。」
「ううう、別に暇をしている訳じゃないんですけどね・・・」
まあ、確かにこれだけの量を干すとなると力仕事になりますね。門番という仕事が暇である事も事実ですが。紅魔館を訪れる物好きなんてそういませんからね。
「それで、その本の山は一体なんですか。なんか某魔法使いに盗んでくださいと言わんばかりに並べられていますが。」
「これはですね、図書館の本を虫干ししているんです。貴重な本が虫に食われると大変ですからね。ですから、季節も良くなってきた事ですので毎日ちょっとずつですがこうして本に風に当てているんです。」
「大変じゃないんですか、小悪魔さん一人で毎日これだけの量の本を運ぶのは?」
「大変ですけど、パチュリー様に手伝っていただく訳にはいきませんから。それに、素人が構うと危険な本もありますから、こればかりはどうしようもありません。」
確かにパチュリーさんに肉体労働を強いるのは無理ですね。あの人は力が無さそうですから。でも、逆に毎日本を運んでいたら健康な体を手に入れれるかもしれませんが。
「あまり大変だったら、ここに普段暇そうにしている人を使ってみたらどうです。本人も力仕事には自信があるって言っていることですし。」
「だから、私は暇じゃないですって。私には門番というちゃんとした仕事があるんですからね。侵入者を一番初めに排除する役目も私なのですから。」
「そうですよ、美鈴さんだってちゃんと仕事をしていますよ。ほら、あの庭のお花畑をご覧になりましたか。ちゃんと管理が行き届いていて、私はいい仕事をしているなあってよく思いますよ。」
「あーうー、それも一応私の仕事ですけど、門番としての仕事じゃないです・・・」
まあ、お花畑の管理が行き届いているのは認めますけどね。庭仕事が上手い門番って言うのはどうかとって、おや、あそこに見えるのはひょっとして魔理沙さんでは。
「おおお、こんな所に貴重そうな本が。へへっ、さっそく頂いて行くぜ!」
「あー、魔理沙さん、いつの間に!!あああ、お願いですから本を持っていかないでー!!」
「それは出来ない相談だぜ。おーい、文、そこをどけー!」
「あー、もう、取材中に何をしているんですか、魔理沙さんは。これからだって言う時にって、こっちに来ないでくだ、きゃぁ!!」
「待ちなさい、って文さん大丈夫ですか!あああ、洗濯物が倒されている!!」
『 紅魔館に春が訪れる
幻想郷が春の陽気に包まれている中、紅魔館も春を迎えた。新たに入った新人メイドが馴れぬ様子で紅魔館中を走り回っていたり、花壇の花が見事に咲き乱れたりしている。また、冬の間に溜まった洗濯物が春の風に一斉に靡く光景や、図書館から出してきた本を春の陽光に当てている光景なども春の訪れを感じさせるものであった。
膨大な量の洗濯物を干していた門番の紅 美鈴さん(妖怪)は、
「いやあ、この時期は本当に大変ですよ。冬物は全部洗濯をしなければいけないんですけど、新人さんがらみで皆さんドタバタしていますからね。でも、毎年春恒例のイベントのようなものですし、手が空いている者としてはこれくらい手伝う事はなんともありませんよ。ある魔法使いさんさえ現れなければ。」
と何か疲れた表情で語ってくれた。また、本の虫干しをしていた小悪魔さん(?)はこう語ってくれた。
「本当に最近温かくなりましたね。こして本を並べていても眠くなってしまいます。こういう日はお庭の日当たりのいい場所でお昼寝などできたら、さぞかし気持ちが良いのでしょうね。本さえ盗まれなければ。」
紅魔館の春の陽気さに誘われたのか、取材中に空き巣事件が起きるというちょっとしたハプニングも起きたが、ちょうど現場に幻想郷一の速度を誇る私がいた事で事無を得た。春の到来に浮かれるのもいいが、浮かれすぎて注意を怠らないように心がけるべきである。 (射命丸 文) 』
んー・・・
うーん・・・
あー、もう!!駄目ですね、ボツボツ、ボツ!!
原稿をクシャクシャにして丸める事数十回。頭を掻き毟りながらベッドに倒れこむ事十数回。そのまま苦い思いで天井を睨みつけるものの、いつの間にか眠りこけていた事数回。早い話が原稿に詰まっているのだ。
うー、久しぶりにピンチですね。今回入手できたネタが余りにもショボすぎたと言うべきなのか、写真が非常に情けないものと言うべきなのか、私がスランプに陥ったと言うべきなのか。はあ、原稿を書き始めてから一体どれだけ時間が経ったのでしょうか。朝の光が非常に眩しいです。溶けそう・・・
眠いのか眠くないのかはっきりしない頭で再び原稿用紙と睨み合う。恐らく頭はボサボサ、目の下には濃厚なクマ、顔色は悪く目は血走っているだろう。完全に死人一歩手前の形相である。
あうー、やっぱりこのネタで記事を書くのは無理があったのでしょうか。しかし、ここのところ平和と言いますか暇だったと言いますか、久しぶりに手に入れれたネタがこれくらいな物ですし。ああ、インスピレーションの神様よ、どうか今だけ私のこの右手に降臨してください・・・
新聞を出したいが記事が出来てない。記事を書きたいがネタが無い。ネタが無いが幻想郷ではネタになりそうな事は何も起きない。実に新聞記者殺しの状況である。しかし、このままでは新聞大会に負けることは確定である。発行部数を競い合うこの行事に勝つ為にはいくら不定期発行の新聞とは言え、ある程度定期的に発行しなければならない。
やっぱり、このネタは放棄して新しいネタ探しの旅にでも出た方がいいのでしょうか。しかし、ここで諦めるのもなんか嫌ですし。でも、今日ここでこうしている間に何か起きるかもしれないですし。だけど、やっぱり何も起こりそうに無いような気もしますし。妖怪、諦めが肝心だってどこかのお偉い人が言ってたような気も。でもこの程度で諦めていたら新聞記者失格だとも思いますし。あ、今ビビビっと気分転換にネタを探しに行けとの天からの啓示が来ました。ああ、でも自分で決めた締め切りが・・・
しばらく目線を虚空の空間に向けて何度目かのメビウスの輪的思考ループに囚われた後、気を取り直して原稿と向き合った。新聞記者にとって、例え自分で決めたものだとしても締め切りは絶対なのである。
~~~ シーン 四 ~~~
「皆さんお揃いで何をしてるんですか、輝夜さん?」
「鈴仙に穴を掘らせているのよ。家庭菜園を始めようと思うのだけど、土に栄養分が少ないといけないから。」
はあ、家庭菜園ですか。輝夜さんが暇潰しに何かを始めるのは今に始まった事じゃないですが、永遠亭の庭先で人参畑でも作る気でしょうか。今度も何日保つことやら。
「それで何を埋める気ですか。土の栄養なら永琳さんに栄養剤を作ってもらえばいいのでは?」
「分かってないわね、月の家庭菜園は土を耕す事から始めるのよ。だから生ゴミとかを埋めて耕さないといけないのよ。」
「師匠ー、このぐらいで良いですかー?」
「まだよ、もっと深く掘りなさい。何のために伊達兎耳をつけているの?」
少なくとも穴掘りの為ではないと思いますが。それと、土を耕す為とは言え、垂直に掘っても意味が無いのでは。それに、自分でやると言っているそばから鈴仙さんに穴を掘らしていますし。
「はあ、色々と納得がいかないところが多々ありますが、月式家庭菜園とやらが成功するといいですね。それで、あちらに置いてあるのが埋める生ゴミですか。でも、何故あの箱だけガタゴトと動いているんですか?何やら呻き声のようなものも聞こえますし。」
「さあ、何ででしょうね。生ゴミなのに動いているなんて、本当に不思議だわー」
「師匠ー、もうこれぐらいで良いですかー?って言うか、疲れてきたのでこれぐらいで勘弁してくださいよー」
「軟弱者ね。私は貴方をこんな風に鍛えた覚えは無いわ。何の為に薬を学んでいたの?」
少なくとも肉体改造の為ではないと思いますが。それにしても非常に怪しいですね、あの箱は。大体中身は見当がついてはいますが。
「どれどれ中身はっと。ああ、やっぱり妹紅さんでしたか。」
「ね、生ゴミでしょう?」
「師匠ー・・・、疲れてもう掘れませんー・・・」
「駄目よ。泣き言を言っている暇があったら、後二倍は掘りなさい。何の為の座薬なの?」
色々と突っ込みたいところがありますが、もういいです。縄でグルグル巻きにされて猿轡された妹紅さんを発見した時点で、ほとんど理解できましたから。結局、妹紅さんを埋めたかったんですね。
「うーん、このぐらいの深さでいいかしら。鈴仙、掘るのを止めて上がってきてもいいわ。姫、準備ができました。」
「そう、ありがとう。さあ妹紅、覚悟は良いかしら?よくもこの前は私を簀巻きにして川に投げ入れてくれたわね。一緒に重りが括り付けられていたけど、あの時ほど石が憎いと思った事は無いわ。心置きなく土の養分になりなさい!」
「あーうー、ようやく地上に戻れる・・・、って、ああ、師匠、大変ですー。あまりにも深すぎて上れません!!」
「・・・ベタな話ね。このまま一緒に埋めてしまおうかしら。」
「ベタな話ですけど、深く掘れって言ったのは永琳さんじゃないですか。鈴仙さんが飛んで上って来れなくなるなんて、一体どれだけ深く掘らせたんですか?」
「あああ、師匠、大変ですー!!なんか変な音が・・・わー、何か出てきたー!!」
『 永遠亭に温泉が湧く
○月×日、突如永遠亭の庭先に温泉が噴出した(中央の写真参照)。あまりに突然の事だったので、現場に居合わせた者は唖然。しかし、すぐに現場は歓喜に包まれた。温泉を掘り当てた鈴仙・優曇華院・イナバさん(月の兎)は目を白黒させながらこう語ってくれた。
「いやあー、本当に驚いたわよ。別の用事で穴を掘るように言われていたんだけど、まさか温泉が出るとは思ってもいなかったわ。でも、お陰で穴から出ることが出来たから助かったんだけどね。ああ、太陽の光が恋しかったです。」
また、永遠亭の主である蓬莱山 輝夜さん(月人)は、こう語ってくれた。
「ふうん、まさか温泉が湧くとはね。せっかく家庭菜園を始めよと思ったのに、これじゃあ無理ね。生きのいい生ゴミまで用意したのになあ。まあでも温泉が湧いたんだし、良しとしましょう。」
温泉には元々効能があるのだが、今ではこの温泉に特殊な薬を混ぜて更に様々な効能を付け加えたと聞く。疲れはもちろんの事、肩こり腰痛、便秘、引きこもり癖など合わせて数十種類の効能があるという話だ。しかし、永遠亭関係者以外お断りとの事で、一般人が利用出来ないのが現状である。 (射命丸 文) 』
~~~ シーン 伍 ~~~
「うわ」
「なんですか、そのあからさまに嫌そうな顔は。何か私に知られると不味い事でもしたのですか?」
そうじゃないんですけど、できれば今ここで映姫さんには会いたくなかったものでしたので。せっかく萃香さんと楽しく屋台でお酒を飲んでいたんですけど、一気に冷めてしまったじゃないですか。
「天下に名高い閻魔様こそ、わざわざ下々の者が安い酒を飲むような場所に何の御用ですか?」
「・・・貴方のその皮肉については後ほど言及をさせて貰うとして、皆が私の言いつけを守っているかどうか見回りをしているのです。夜雀が歌で人を惑わしていないか、鴉天狗が新聞などという物を書いていないかと。」
「へえぇ、あんたがあの閻魔様ねぇ~。こんな夜遅くまで仕事だなんて、お仕事熱心な事だねぇ~。どうだい、仕事なんか忘れト私達と一緒に飲まないかぁ~?」
うわ、何を言い出すんですかこの酔っ払いは。そんな事を言えば説教をされるいい口実だという事が分からないんですか!?
「貴方は私の仕事を何だと思っているのですか。いいですか、年がら年中お酒を飲んでいる貴方には分からないと思いますがって、ちゃんと聞きなさい!!」
「いいじゃないか、硬い事は抜きでさぁ~。屋台まで来て酒を飲まないなんて、酒に対して冒涜だよ。ほら、酒と食べ物と人の好意を粗末にする奴は罰が当たるっていうじゃないか。だから、せっかく来たんだからあんたも酒を飲んでいきなよ~」
ほらほらっと半ば強引に鬼の娘が閻魔様を席に座らせる。閻魔様の方は何やら言いたげだったが、とりあえず席に着くことを了承した。ひょっとして、罰という言葉に弱かったのかもしれない。
「ああ、もう。何を考えているのですか、貴方は。私は多忙の身だと言ったはずです。少しだけですからね。」
「まあまあ、酒の席でそう硬い事いわずにさ、もっと肩の力を抜いた抜いた~」
「はあ、酔っ払い恐るべしと言ったところですか。強引に酒の相手を増やしましたよ。まあそう言う訳で迷惑でしょうけど、ミスティアさんお酒と串揚げ頼みますね。」
まったく、萃香さんは何を考えているのでしょう。映姫さんを引き止めても百害あって一利無しだと言うのに。もれなく弾幕までついてきますし。ああミスティアさん、そんな顔をしないでください。皆まで言わなくても気持ちは分かりますから。
「う、何ですか、その貴方の息のアルコール臭さは。四六時中お酒を飲んでいるとは言え、これはいくらなんでも限度を超えています。そもそも貴方はですね・・・」
「堅苦しい話は酒の席じゃ無し。ほらほら、コップが空いてるよ?」
「萃香さん、映姫さんはまだお仕事の途中だそうですから、あまり飲まさないようにしましょうよ。映姫さんも早く次の目的地まで行きたいでしょうし。」
「まだ酒は始まったばかりよ~。この程度じゃあ閻魔様がどれくらい酒が飲めるか分からないじゃないかぁ~」
そんな事知ってどうする気ですか。まさか宴会に閻魔様も集める気ですか。止めておいた方がいいと思いますよ、皆と仲良く盛り上がっている映姫さんの姿を想像する事が出来ませんし。
「ああ、もう。貴方のお酒の飲み方は乱暴すぎます。ちゃんと味わって飲まなくては、せっかくのお酒が勿体無いでしょう。そもそも貴方の・・・」
「ほらほら、仕事を忘れれないのは酒が足りてない証拠さぁ。もっと飲んだ飲んだ~」
「映姫さんの説教は、仕事と言うよりも性格だと思いますが。それにしても注がれたお酒をちゃんと飲むなんて、映姫さんって意外と律儀なんですね。」
「当たり前です。食べ物や飲み物を粗末にする事は良くない事なのです。」
だからと言って、そこまで付き合わなくてもいいと思いますが。ああ、このまま帰ってしまいたい気分ですけど、萃香さんを連れてきたのは私ですからね。いい加減腹を括りますか。ミスティアさんを一人にしておくのも可哀想ですし。
「いいですか、貴方という・・・」
「まあ、飲めぇ~」
「だいたいですね・・・」
「いいから飲めぇ~」
「そもそも・・・」
「もっと飲めぇ~」
『 閻魔様が遭難!?
○月○日深夜、四季映姫・ヤマザナドゥさん(閻魔様)が山奥の森で動けなくなっていたところを保護されるという騒動が起きた。発見された当時の映姫さんは酷く酔っていて、意識も朦朧としていた。
今回の騒動の経緯はこうである。ミスティア・ローレライさん(妖怪)が経営する屋台で遅くまで飲んでいた映姫さんだが、見回りの続きをしなければならないと言い出し、私を含めて一緒に飲んでいたお客や店主の制止を聞かずにどこかへと飛んで行った。しばらくした後、映姫さんの帰りが遅い事に心配をした小野塚 小町さん(死神)が屋台にやって来た事によって映姫さんがまだ戻っていない事が発覚。小町さんの要請を受けて映姫さんを探す事になったのだが、無事博麗神社周辺の山奥の森で発見した。ちょうど同じ屋台で一緒にお酒を飲んでいた伊吹 萃香さん(鬼)は、
「びっくりしたねぇ~、べろんべろんに酔わせていたらいきなり立ち上がってどっか行っちゃうんだからさぁ~。見回りの途中だったって言っていたけど、こんな時間に行けばもう就寝しているって事ぐらい分からなかったのかなぁ~。まあ何にせよ、私の敵じゃあないって事が分かったから良いんだけどねぇ~。」
と語ってくれた。また、映姫さんを探しに来た小町さんは、
「いやぁ、面倒かけさせちゃってすまんねぇ。いくら四季様でもここまで酔うと流石に正常な判断は無理だから。まあ職務に忠実な方だから、見回りに行かなきゃならないって事が頭を離れなかったんだろうねぇ。」
と語り、安堵の表情で眠そうながらもまだ見回りを続けると言い張る映姫さんを背負って戻っていった。
いくら春だからといっても、まだ夜は寒い。外で眠ろうものなら風を引く事間違い無しだろう。外でお酒を飲む場合は、くれぐれも家に戻れなくなるまで飲むのは控えるべきであろう。 (射命丸 文) 』
~~~ シーン 六 ~~~
「こんにちは、また取材に来ました。」
「ああ、文さんじゃないですか。お久しぶりです。」
「こんにちは、どうぞごゆっくり。」
私が挨拶をすると門番と小悪魔が作業を中断してこちらを振り向く。門番は洗濯物を干していて、その向こうで小悪魔が本を並べていたのだが、どうやら私の取材に応じてくれそうだ。
「あの、何故美鈴さんは洗濯物を干しているんですか。確か美鈴さんは門番のはずでしたよね。」
「私は今も昔も門番です。ただ、たまに館の方で人手が足りなくなると力仕事が私に回ってくるんです。特にこの時期は新人のメイドがまだ仕事を覚えきれていませんからね。」
「はあ、要するに暇をしているんだったら他の場所で働けって事ですね。」
「ううう、別に暇をしている訳じゃないんですけどね・・・」
まあ、確かにこれだけの量を干すとなると力仕事になりますね。門番という仕事が暇である事も事実ですが。紅魔館を訪れる物好きなんてそういませんからね。
「それで、その本の山は一体なんですか。なんか某魔法使いに盗んでくださいと言わんばかりに並べられていますが。」
「これはですね、図書館の本を虫干ししているんです。貴重な本が虫に食われると大変ですからね。ですから、季節も良くなってきた事ですので毎日ちょっとずつですがこうして本に風に当てているんです。」
「大変じゃないんですか、小悪魔さん一人で毎日これだけの量の本を運ぶのは?」
「大変ですけど、パチュリー様に手伝っていただく訳にはいきませんから。それに、素人が構うと危険な本もありますから、こればかりはどうしようもありません。」
確かにパチュリーさんに肉体労働を強いるのは無理ですね。あの人は力が無さそうですから。でも、逆に毎日本を運んでいたら健康な体を手に入れれるかもしれませんが。
「あまり大変だったら、ここに普段暇そうにしている人を使ってみたらどうです。本人も力仕事には自信があるって言っていることですし。」
「だから、私は暇じゃないですって。私には門番というちゃんとした仕事があるんですからね。侵入者を一番初めに排除する役目も私なのですから。」
「そうですよ、美鈴さんだってちゃんと仕事をしていますよ。ほら、あの庭のお花畑をご覧になりましたか。ちゃんと管理が行き届いていて、私はいい仕事をしているなあってよく思いますよ。」
「あーうー、それも一応私の仕事ですけど、門番としての仕事じゃないです・・・」
まあ、お花畑の管理が行き届いているのは認めますけどね。庭仕事が上手い門番って言うのはどうかとって、おや、あそこに見えるのはひょっとして魔理沙さんでは。
「おおお、こんな所に貴重そうな本が。へへっ、さっそく頂いて行くぜ!」
「あー、魔理沙さん、いつの間に!!あああ、お願いですから本を持っていかないでー!!」
「それは出来ない相談だぜ。おーい、文、そこをどけー!」
「あー、もう、取材中に何をしているんですか、魔理沙さんは。これからだって言う時にって、こっちに来ないでくだ、きゃぁ!!」
「待ちなさい、って文さん大丈夫ですか!あああ、洗濯物が倒されている!!」
『 紅魔館に春が訪れる
幻想郷が春の陽気に包まれている中、紅魔館も春を迎えた。新たに入った新人メイドが馴れぬ様子で紅魔館中を走り回っていたり、花壇の花が見事に咲き乱れたりしている。また、冬の間に溜まった洗濯物が春の風に一斉に靡く光景や、図書館から出してきた本を春の陽光に当てている光景なども春の訪れを感じさせるものであった。
膨大な量の洗濯物を干していた門番の紅 美鈴さん(妖怪)は、
「いやあ、この時期は本当に大変ですよ。冬物は全部洗濯をしなければいけないんですけど、新人さんがらみで皆さんドタバタしていますからね。でも、毎年春恒例のイベントのようなものですし、手が空いている者としてはこれくらい手伝う事はなんともありませんよ。ある魔法使いさんさえ現れなければ。」
と何か疲れた表情で語ってくれた。また、本の虫干しをしていた小悪魔さん(?)はこう語ってくれた。
「本当に最近温かくなりましたね。こして本を並べていても眠くなってしまいます。こういう日はお庭の日当たりのいい場所でお昼寝などできたら、さぞかし気持ちが良いのでしょうね。本さえ盗まれなければ。」
紅魔館の春の陽気さに誘われたのか、取材中に空き巣事件が起きるというちょっとしたハプニングも起きたが、ちょうど現場に幻想郷一の速度を誇る私がいた事で事無を得た。春の到来に浮かれるのもいいが、浮かれすぎて注意を怠らないように心がけるべきである。 (射命丸 文) 』
>本の虫干しをしていた小悪魔さん(妖怪)
妖怪・・・、なのでしょうか?