Coolier - 新生・東方創想話

-紅(くれない)の笑顔-

2006/02/06 00:31:09
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どっ!がっ!
とある山の中腹、少し開けた場所で打撃音が響いていた。
「たあぁっ!」
「くっ…てりゃあぁっ!」
2人…どちらも髪の長い女がそこにいた。
1人は真っ白い髪。かたやもう1人は真っ赤な髪だ。
お互いに打撃による対戦をしているようだ。
「くはっ!」どむっ!
「うぐっ!」どふっ!
両者はお互いに腹を撃ち抜いて相打ちし、吹っ飛ばされてほぼ同時に倒れこんだ。
「お疲れ様だな…2人とも。」
少し離れてみていた人、半妖で近くにある村を守っている上白沢 慧音が倒れている2人に話しかける。
「あー…また相打ちかぁ。」
「はぁはぁ…本当に人なんですか…?」
「ふー…蓬莱人だから人とは少し違う…と思うよ?基本的なところは人だけどね。痛いものはやっぱり痛いし。」
倒れている2人の服はぼろぼろで、どちらも息が上がっている。
「それでも強いですよ…。」
「まぁ妹紅は長く生きているからな、いろいろ武術なんかも覚えているんだろう?」
そう、倒れている1人は蓬莱人である藤原 妹紅である。
「そだねー。日本全国はもとより不死鳥を手に入れてからは暇つぶしに外国とかも行ったりしてたしね。」
「不法侵入じゃないのか…。」
「それだったらわたしもそうなりますよ…もともと大陸のほうにいましたから。」
そして倒れているもう1人は、紅魔館の門番である紅 美鈴である。





-紅(くれない)の笑顔-





「しかしあれだな…2人とも格闘は強すぎるな。」
「そかな?」
「そうですか?」
「強いと思うぞ?武器なし弾幕なしの戦闘なら間違いなく幻想郷でトップクラスじゃないのか。」
「あー…武器持ってたら妖夢ちゃんとか強いよね。」
「咲夜さんも強いですよ。」
「そもそもあの従者は時を止められるじゃないか。」
「それもありますけど、ナイフの扱いは得意ですからね。近接での戦闘も得意なんですよ。」
3人とも木陰に座り雑談をしている。

ちなみに美鈴は今日は休み。
門番に休みなんてあるのかと思いの方もいるであろうから説明しよう。
少し前までは魔理沙が無理矢理攻め入って図書館に行っていたのだが、さすがに修理費(特に門と玄関の)がかさみ過ぎて頭の痛くなった咲夜がレミリアとパチュリーの2人に、魔理沙に通行許可を出すようにと打診したのがそもそもの始まり。
美鈴はマスタースパークを受けれるくらい頑丈なのだが、マスタースパークを全て受けきることはさすがに無理である(何せ瞬間の攻撃力は幻想郷随一の上、範囲がでかいので)。そのため美鈴の後ろにある門と玄関付近にかなりの被害がでるのだ。ちなみに美鈴自身はというと、いつも吹っ飛ばされて爆心地で気絶している。
パチュリーは最初反対したのだが、合計修理費用を聞いてすぐさま許可を出した。修理費はどれくらいになっていたのかは分からないが…紅魔館の収入が少ないのもあったため(実際に収入は何処から来るのかは分かっていないが)レミリアがすぐに賛成したのが大きかったようだ。…その裏で、もし許可しないなら本を売りさばいて修理費にします、と咲夜が言ったのもあったようだが。
その上、幻想郷トップクラスの霊夢や魔理沙が出入りしていることもあり(それを記事にしていた文の新聞のおかげでもあるのだが)紅魔館に攻め入ってくるという妖怪も激減していた。前は頻繁に妖怪が攻めてきたため無休に近かったのだが、仕事が楽になったのと門番隊がいつも先頭に立っている美鈴を休ませて上げたいとの言葉もあり、週1~2日ほどの休みがもらえるようになったのである。
といっても咲夜と休みが重なることも無いために紅魔館にいても暇なので、修行も兼ねて古い知り合いである妹紅のところにいつも来ているのだ。

「そだ、今度妖夢ちゃんともやりたいなぁ。」
「刀での戦闘は出来るのか?」
「出来るよー。剣術とかも習ったことあるし。」
「わたしも槍とかは出来なくはないですけど…やっぱり格闘のほうがいいかなぁ。」
「美鈴殿の場合は、気を打ち出すよりそのまま纏って攻撃するほうが得意だからな。そういうのに関しては美鈴殿はずばぬけているだろう。」
「そうですね…さすがに弾幕でのやりあいも不得意ではないんですが…。」
「まぁ周りにいるのがあれだからねぇ…仕方ないって感じ?」
「うぅ…それはそうですけど。」

何故この3人の仲がいいのかというと、話はかなり前に遡るわけだが。




[およそ100年前]
「んー…こんなところもあるんだなぁ。」
美鈴は空をふよふよと飛んでいた。
「スキマがあって入れたけど…ここはどんなところなんだろう?」

もともと美鈴は妖怪でありながらかなり人間に近いところがあり、人里に住んでいた。
しかし妖怪であるために見た目が何年たっても変わらない。妖怪にとっては短い時間であろうが、人にとっては長い時間である。
そのため大陸を転々としながら渡り歩いていたのだが、ある事件がきっかけで妖怪として有名になってしまい日本に渡ってきたのだ。
その事件というのは…とあることで妖怪だとばれてしまい、大陸全土に賞金首として手配されてしまった。
まぁそんなこんなで大陸にいられなくなったので、日本に渡った美鈴は大結界があることを発見しその中に入った、ということである。

「妖怪もいるけど人里もあるみたいだし…何とか共存してた頃の世界に迷い込んだみたい…。」
とりあえずいろいろ回ってみようと飛び回っていたのだが…。
「ん…燃えてる?」
森…というかその奥にある竹林が燃えていた。
「何か気になるなぁ…行ってみよう。」
飛んで行ってみると…ぼあっ!
「わぁっ!?」
竹林の中から火弾が飛んできた。
何とかその火弾を避けて竹林の中を見てみると…。
「また刺客…今日は珍しく2体か。」
そこには…炎の鳥を纏った女がいた。
その女がやったのか、その女の周りだけかなり激しく燃えたような跡がある。
「えと…?」
「ふん…喰らえっ!」ごおぉっ!
「えっ…くぅっ!」ひゅおんっ!
美鈴は避ける。
が、次々に火弾は飛んできた。
「ちょっ…待って話を聞いてっ!」
「この期に及んで…。」どぅっ!どぅっ!
避けながら叫ぶが全然聞いていないようだ。
「やるしか…ないか。」ぐぐっ!
「覚悟を決めたか…?」
火炎を纏っている女は、間合いを詰めようと飛んできた。
「ここでは弾幕が基本戦闘手段みたいだけど…近接に持ち込めばっ!」びゅおっ!
美鈴は一瞬で女の懐に飛び込んだ。
「なっ!?」
「たあぁっ!!」どしゅぅっ!
と、女の腹を一気に貫いた。
「ぐはあぁっ!!」ぶしゅぅっ!
赤い血が口から吐き出される。
そして美鈴の手は、肘くらいまで女の腹を貫通していた。
美鈴は返り血を浴びながら、びっくりして目を見開いた。
「ぇ…人間だったのっ!?」
それもそのはず、普通の人ならこんな火炎を纏っていられるはずもない。
そのため美鈴は火の妖怪だと思い、迷いもなく本気で気を纏った一撃を繰り出したのだ。
「ぐぁ…。」ずりゅぅ
と腹から美鈴の腕が抜けた女は、そのまま竹林に落ちていった。
「あ…くっ!」ひゅんっ!
美鈴はすぐに追いついて女を抱きかかえると、竹林の中に降りて行った。
「どうしよう…こんな人もいるのね…。」
と、美鈴は女を抱きかかえながらおろおろしていた。
すると…。
「ふふ…やるわ、ねっ!」ひゅがっ!
「え…あああっ!」どっ!
死んだと思っていた女が急に腹に一撃を放ってきたため、美鈴は何メートルか吹っ飛んでしまう。
「くうぅ…死んだと思ってたのに…。」
「へぇ、中々頑丈ね…。」
と、立ち上がり美鈴に向く。
腹にあいているはずの穴は…塞がっていた。
「え…お腹の傷が治って…。」
「ふぅん…あいつから聞いてないのか、わたしは蓬莱人…不死人、だっ!」ごおぉっ!
女はさらに強い火を纏って戦闘態勢をとり始めた。
「不死人!?それで…。」
美鈴は純粋に驚いていた。
不死人…大陸では不老不死の伝説はいろいろあるが、実際に見たのは始めてであったしいるとも思っていなかった。
「貴女は格闘がお得意なようね…なら久しぶりにやりあいましょうっ!」どぅっ!
女は火炎の威力を使い、打ち上げ花火のようにして美鈴に向かって飛んできた。
「(速いっ!)くぅっ!」がっ!
それからお互いに打撃による戦闘が始まった。
どっ!がっ!びしぃっ!ごっ!
結構派手な打撃音が竹林に響いていた…。



「はぁ…はぁ…。」
「くぅ…なかなか…ぜーぜー…やるわね…。」
もうすでに数時間も殴り合いをしていた2人だが…この戦闘はある人物の介入で終わりを告げる。
「そこまでだ。」
と、竹林の奥から人が出てきた。
「あ、けーね。」
今まで険しかった女の顔が、急ににこやかになった。
「…は?」
その急な変わりようを見て、美鈴は完全に?顔に。
「妹紅…またこんなに竹林を燃やしてどうするつもりだ?」
「だってー…刺客がくるんだから仕方ないでしょ?」
「それならここ以外の広いところでやるんだ。」
「それも仕方ないって、たけのこ取りに来てたら刺客が来たんだから。」
と、2人は言い合っていた。
「あのー…。」
「っとけーね、こいつを片付けてから話は聞くよ。」
妹紅は構えるが。
「ってちょっと待って!」
「何よ?」
「まてまて…話くらい…。」
美鈴は手を前に出して一言。
「えーととりあえず…ここってどういうところなの?」
「へ?」
「…妹紅?」


「あはは!なーんだ、そう言ってくれれば良かったのに。」ばんばんっ!
美鈴の背中を叩きつつ妹紅はしゃべっていた。
「うぅ…話を聞かなかったのは貴女でしょう…。」
「まぁ気が高ぶっていたというのもあるだろうが…話を聞かない妹紅が悪いな。」
「ぅー…仕方なかったんだよぉ。」
あのあと慧音が美鈴にここのことを話し(同時に自己紹介もし)、歩きながら話し合っていた。
「…てことはここは幻想郷と言われる場所で、妖怪も人間も暮らしていると。」
「そういうことだな。」
話をしつつ慧音の村に向かっていた。
「ところでどうやって入ってきたの?博麗大結界があるのに。」
「えーっと…結界の周りを入れないかなーと飛んでたら偶然スキマがあったんですよ。そこを抜けてきたんだけど…。」
「スキマか…スキマ妖怪は気まぐれだからな。」
「スキマ妖怪?」
「そうだ。ここ幻想郷の結界を作った妖怪だ。まだ姿は見たことがないがあらゆる境界を操ると聞く。」
「へぇー…。」
「かなり長生きしているみたいだからな…そのうち会えるかも知れんな。」
そのうちというか約100年後に会うことになるのだが、それは置いといて。
そんなこんなで慧音の家に到着。
「とりあえず入ってくれ。」
「お邪魔します…。」
「お邪魔するねー。」
「うむ、いらっしゃい。」
見た感じは結構豪華な家なのだが、中は質素な感じな家である。
「とりあえず服は…血が染み付いてるな。仕方が無い…明日は満月だから明日直すとしよう。」
「へ?」
「あぁ…わたしは半妖なんだ。まぁ少し特殊な能力だが、満月なら扱えるからな。」
「でも人間のことが好きだからこうやって一緒に暮らしてるんだよね。」
「そうなんですか。」
「まぁそういうことだな…とりあえず2人とも、体を洗ってきたほうがいいな。」
慧音は2人の体のあざやべっとりとついている血糊を見てそう言った。
「えーっと…。」
「あー、わたしもお風呂入りたいから案内するよ~。」
「そうだな…一緒に入ってくるといい。」
「じゃぁお言葉に甘えて…。」
「こっちだよー。」
と妹紅に案内されてお風呂場へ。


かぽーん。
「久しぶりにお風呂に入った気がします…。」
「向こうから渡ってきたならそうかもね~。」
「結構大変でしたけど…何とか渡ってこれたんですよ。」
「結界の外はあんまり妖怪とかいないからね。」
「大陸でももう奥地に入ったりしない限りいませんから。封印されてるのも多いですし。」
「こっちでも祭られてるのもいたなぁ…大体の妖怪はこの結界の中に避難して入ってきてるみたいだけど。」
ごしごしと体を洗いつつ会話をし、結構大きめなお風呂に2人で入った。
「広いですねぇ…。」
「子供なら必ず泳ぐくらいの広さだよね。」
「あはは。そうですね。」
「2人とも湯加減はどうだー。」
と、窓の外から声が。
「ぬるくてもわたしの能力あるし大丈夫だよー。」
「あー…そうだったな。」
「そういえば気になったんですが…2人とも何の能力持ってるんです?」
「わたしはこいつ。」
妹紅はペンダントを見せる。
真っ黒い石なのだが、何か中で燃えている感じがする。
「…かなり強力な感じがするんですが。」
「そいつはとあるところに封印されていた不死鳥、洋風に言うとフェニックスとか言うやつだな。」
「だから不死なんですか?」
「んー…違うよ。ちょっとその薬を飲んじゃってね…。」
「不死の薬なんて作れる人がいるんですかっ!?」ざばっ
「いや…それが地球の人じゃないんだなぁ。」
「…は?」
美鈴は目を丸くした。
「月に住んでいた薬師が作ったものだそうだ。すでに約1000年も前の話だがな。」
「は~…約1000年ですか。ん?ということは妹紅さんはかなり年上なんですか。」
「あはは、まぁそうだね~。ちなみにけーねよりも年上だね。」
「まぁ性格的にはわたしのほうが年上に見えるだろうが。実際はそうだな。」
「慧音さんの能力は?」
「あー…わたしの能力は、歴史を食べるのと歴史を創る程度の能力だ。」
「歴史…ハクタクという妖怪ですか?」
「よく知っているな。そしてわたしは半妖なんだ。ワーハクタクというやつだな。」
「ただ強力だから、満月時にしか操れないんだっけ?」
「重い歴史な場合、だ。軽い歴史ならやれなくもないが、かなり疲れるからな。」
「なるほど…満月なら力が上がりますしね。」
「そうだな。それにその時は妖怪としての様相になってしまうからな。今日明日明後日…満月の前後は誰もここには来ないよ。」
「前はそのときだけ意識飛んでたんだっけ?」
「あぁ…そのために人を何人か殺めてしまったな…。」
「今は大丈夫なんですか?」
「意識を保っていられるように、村のみんなからの贈り物としてこのリボンをもらったからな。」
窓の外にいる慧音を見てみると、頭には可愛いリボンが付けられていた。
「それがあるから意識を保っていられるんだよね。」
「まぁそうだな。しかしあまり人に見られたくないからな。それに満月時は妖怪も活性化するから、ここには来ないように、あまり外に出ないように言いつけてある。」
「ところで美鈴さんの能力は?」
「わたしのはさっきの通りですよ。気を操る程度の能力です。」
「だから格闘が得意なんだね。」
「そうですね。遠距離はあんまり得意ではないですけど、それなりに出来ますよ。」
「ならここでの戦闘でも大丈夫だな。」
「そろそろ上がろうかー。」
「そうですね。」


「えーっと…そういえば。」
出された着物に着替えた2人は、座敷に座りつつお菓子やらお茶を飲みながら雑談していた。
「何処か住める場所はありませんかね?」
「うん?」
「住めるところ?」
「はい、野宿するにも限界がありますし…それにこっちでは季節の変わり目が分かりやすいといいますから。」
「といわれても…。」
「そだねぇ…。」
「わたしの家は広いことは広いが、普段は学校として開放しているからな。それ用の部屋がある以外には客間とかもないからな。」
「わたしも一応家あるけど…狭いし。」
「そうですか…。そうですね…とりあえずいろいろと幻想郷内を回ってみます。」
「まぁそれが一番いいだろう。ここがいいと思うところがあるかもしれないからな。まぁそれでもなかったらわたしの家に来るといい。」
「ありがとうございます。」
「しかし今日明日くらいはここに泊まっていくといい。幸い人は来ないし、それにどうやらかなり疲れているようだからな。」
「分かります?」
「大陸から渡ってきてから野宿とかばかりだったでしょ?」
「その上こっちに来てから本気で妹紅と戦闘していたからな。」
「うー…それは謝ったよー。」
「あはは…ではお言葉に甘えさせてもらいますね。」


少したってから。
「さてと…今日も行ってくるね。」
妹紅は立ち上がり準備体操をし始めた。
「あー…やはり今日も行くのか、お客が来てるからよせばいいのに。」
「まぁ仕方ないよ、向こうも待ってるだろうし。」
「周りにも気を配るようにな。」
「はーい。じゃぁまたね。」
と、手を振りながら妹紅が出て行った。
「妹紅さんは何処に?」
「あぁ…殺し合いにいったんだ。」
「…ぇ?」
「妹紅はもともと貴族の生まれでな。」

それから…かぐや姫の話を含めつつ、妹紅の昔話をした。

「…ということは。」
「こっちに流れてきたかぐや姫、蓬莱山 輝夜とそのお付きの薬師、八意 永琳を見つけて、それからずーっと殺し合いをしているんだ。」
「…ずっとですか。」
「わたしが妹紅に会ったのはそんなに昔じゃないが…前はもっと殺伐としていたよ。最初会ったときは美鈴殿のときと同じように殴りかかってきたからな。」
お茶を入れつつ慧音は話を続ける。
「ただまぁ…あの恨みや怒りがあるからこそ、妹紅は心を保っていられると思うんだ。」
「心を保つ?」
「普通の人間は大体80年もたたずに死んでしまう。だが妹紅はそれを遥かに越える時間を生きていられる。普通の人ならば耐えられずに心が崩壊するだろう。」
「…。」
「だが何か1つでも強く思う心があれば、心を保っていられるんだ。そして妹紅の場合は…。」
「…その強い思いが恨みと、父親への思いだったということですか。」
「そうだ。その思いはかなり強い。だからこそ1人でもこれだけ長い時間壊れずにいられたんだろう。」
ずずーっとお茶を飲みつつ、さらに話は続けられる。
「だからわたしは妹紅の心の安らぎの1つになりたいんだ。」
「安らぎ…。」
「そう…わたしは人間が好きだから、というのもあるが…妹紅が1人の人間として好きなんだろうな。」
はははと慧音は笑いながら話していた。
「っと、こんな話を長々としてすまなかったな。」
「謝らなくていいですよ。素敵なことですし。」
「そうか?」
「わたしもそうですから。」
「美鈴殿も?」
「わたしも人が好きですから。だから今まで人を殺したことはありませんし。」
「…なるほどな。」
「大切な人を守りたいって気持ちは良く分かりますよ。」
「ありがとう。」
「お礼もいいですよ。」
笑いながら美鈴は答えていた。
「さて…そろそろ帰ってくる頃かな?」
「結構時間たっちゃいましたね。」
「そうだな…一刻くらいは話してたか?」
「そうですね。」
と、そのとき。
「た、ただいまぁ…。」がたんっ!
血だらけの服を着た妹紅が帰ってきた。
「っと…大丈夫か?」
慧音は妹紅を抱きかかえる。
「あはは…今日は引き分け…って感じかな。」
「あー…向こうも大変なことになってるだろうな。」
「そうだねー…。」
「大丈夫なんですか?」
と、美鈴は妹紅に近寄る。
「うん、大丈夫。」
「とりあえず座ろうか。」
「ん。」
囲炉裏のところに妹紅を座らせ、慧音も隣に座る。
「ちょっといいですか?」
「ん?」
「少し弱ってるみたいですから、気を使ってみます。」
「軟気孔が出来るのか。」
「えぇ…簡単な傷くらいなら自分のも治せますし。」
美鈴は座っている妹紅の後ろに立ち、手をかざした。
「…。」
「…どうだ?」
「これは…。」
「え?どうしたの?」
美鈴はちょっと驚いた顔をしつつ、妹紅の横に座った。
「なるほど…ちょっと不死の理由が分かった感じがします。」
「へ?」
「どういうことだ?」
「今気の流れを見ようとしたんですが…普通の人なら気の流れがあるんですよ、血液と同じみたいに。」
「妖怪にもあるのか?」
「ありますよ。でもそれは人によって魔力とか霊力とか言うんですけどね。まぁ性質が違うと思ってください。」
「なるほど。」
「でも妹紅さんは…その流れがないんです。」
「は?」
「でも人としての機能は働いてますから、怪我もしますし怪我をしても治ります。」
「ということは?」
「気の流れがないので、現在の状態をずっと維持してる感じなんですよ。だけど各器官は動いているからお腹も減るんです。」
「すごい矛盾している気がするが…。」
「だからすごいんですよ。この薬を作った人は。」
「そうなんだ…。」
「妹紅さんは気を放ったり出来ませんよね?」
「うん。自分じゃ無理だから不死鳥に頼ってるんだ。」
「でも輝夜やあの薬師は弾幕を放てるぞ?」
「それは元々持っている能力なんでしょう。気が流れていなくてもその人に気自体はありますから。」
「色々とすごいんだな…。」
「えーとじゃぁ…筋肉を付けることは?」
「出来なくはないですけど…気の流れで抑えるってことが出来ませんから、一気に鍛えるってことは無理でしょうし。」
「でも蓬莱の薬を飲んだときの状態以下にはなることがないと…。」
「多分そうだと思います。でも餓死はしちゃうと思いますよ。」
「あー…昔それで一回死んじゃったときあったなぁ。大飢饉とかあったんだよねー。」
あはは、と妹紅は笑っていた。
「…美鈴殿の気の力で元に戻すことは出来ないのか?」
「出来なくはないと思いますけど…完全には無理だと思いますし…。」
美鈴は考え込むと。
「その部分だけ動かしたとしても、周りが止まってますから拒絶反応を起こしてその気を送り込んだ部分だけ傷がついちゃいますよ。」
「そうなのか?」
「例えば腕にかけたら最悪腕が取れるかも…。」
「うわぁ…。」
「慧音さんの能力では無理なんですか?」
「さすがにもう1000年近くたってるからな…下手をするとわたしが死ぬ。」
「ぅ…そうなんですか。」
「それに重すぎて、わたしが死んでも元に戻らないということも考えられるからな。」
「絶対にしないでよね?」
「分かってるさ。さすがに死ぬのは勘弁だし、今の時間を大切にしたいからな。」
「ん、ありがとね。」
妹紅は慧音に向かってにっこりと笑った。
「にしてもその薬師さんはすごいですね…。」
「まぁ妹紅と弾幕しあってるところを見たくらいだからな…実際に話したことはないし、わたしのことも知ってるかも分からん。」
「わたしは何回か話したことあるけど…完全な従者って感じだったからなぁ。」
「うーん…。」
と、みんなは考え出したが。
「まぁ今日はこれくらいにしよう、もう遅いからな。」
「そうですね…ってわたしは何処に寝れば?」
「あー…たまに妹紅が来る時用の布団しかなかったな…。」
「それならわたしは座って寝るよ。」
「いえいえ…わたしが座って寝ますよ。」
「…まぁとりあえず布団はあそこに置いてあるからな。わたしはもう眠いからお先に寝させてもらおう。」
「あ、うん、おやすみー。」
「え?あ、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
慧音はあくびをしつつ自分の部屋に入っていった。
「…結構疲れているようでしたけど?」
「いつも満月の前は眠そうだよ。前聞いたんだけど、妖怪の姿になるのに結構気力を使うみたいで前日は疲れるみたい。」
「そうなんですか…。」
「で、とりあえずどうしよっか?」
「どうしましょう…。」
「まぁ布団引くね。」
妹紅は布団を出して、床に引いた。
「…ねぇ?」
「はい?」
「一緒に寝ない?」
「…はいぃっ!?」
「いやさ…この布団1人だと大きいからさ。」
「まぁ見た感じそうですけど…。」
見た感じ結構大きめの布団である。
「慧音が用意してくれたんだけど…村の人に頼んだらこんなのしかなかったみたいなんだよね。」
「…(完全に狙ったとしか思えないような2人用の大きさなんですけどっ!?)」
まぁたぶん慧音に誰か気になる人でも出来たと村人は思ったのだろうが。
「この時期でも夜は寒いからさ。ね?」
「それはそうですけど…。」
「んじゃ決まりね~。」
「ぅ…分かりました。」


それから。
「…あの。」
「ん?」
「何で抱きついてるんですか。」
「えー、いいでしょ?」
妹紅は美鈴に抱きついていた。
「…いやまぁいいんですけど。」
「抱き心地いいし~。」ぎゅー
と、妹紅は美鈴の胸に顔を押し付けた。
「あのっ!胸に顔を押し付けないでくださいよぉっ。」
「んー…大きくていいなぁ。慧音より大きいんじゃない?」
「ぅぅ…恥ずかしいんですけど。」
「ん…。」
妹紅はぎゅーっと美鈴に抱きついている。
「…どうしました?」
「ん…何でもないよ。」
「誰かのことでも思い出してます?」
「っ!」
顔を上げて美鈴の顔を見た。
美鈴は微笑んでいた。
「やっぱり…お母さんとかですか?」
「…何で分かったの?」
「何となくですよ。」
「あはは…すごいね。美鈴さんは。」
そういいながら妹紅はぎゅっと美鈴に抱きついた。
「昔…こうやって抱きついてたんだ。」
「…。」
「子供の頃に死んじゃったんだけどね。」
「そうなんですか。」
「嫌だったら止めるね。」
「…。」ぎゅ
離れようとした妹紅を、逆に美鈴が抱きしめた。
「んふっ。…えと?」
「これくらいはいいですよ。慧音さんにしてもらったほうがいいみたいですけど。」
「はぅ…。」
「今回は友達のわたしがしてあげますね。」
「…っ!」
「どうしました?」
「…何でもない。」
「では、おやすみなさい。」
「…おやすみなさい。」


すーすーと寝息をたてている美鈴を見ながら、妹紅は呟いた。
「友達って言ってくれたのは慧音に次いで2人目だよ…ありがと、美鈴さん。」
妹紅は少し涙目になっていたが、美鈴の寝顔を見てにっこりと笑い、またぎゅっと抱きつくとそのまま眠りに落ちた。




[そして現代]
「あのあとは大変だったなぁ。」
「あの吸血鬼に呼ばれて門番になったんだっけ?」
「呼ばれたというか引き寄せられたというか…お嬢様に言わせたら運命ってことなんでしょうけど。」
「まぁ見えていたんだろうな、そういう運命が。」
今は慧音の家、囲炉裏の周りで3人が話し合っていた。
「でも酷いなぁ…。」
「へ?」
「だってさぁ…号外!紅魔館に門番が!って新聞で知って会いに行くまで、結局こっちには挨拶すらしに来なかったんだから。」
「ぅ。」
紅魔館には昔から門だけはあったが、美鈴が指名されるまでは門番はいなかったようである。
「仕方なかろう、あのレミリアとの戦いで数日寝込んでいたみたいだからな。」
「しかも起きた後すぐに門番に指名されて、出かけることも出来なくなっていたんですから仕方ないですよ。」

美鈴はレミリアにやられたのだが…そのときレミリアも結構力を使ってしまい、寝込んでいたのを美鈴は知らない。
美鈴が思った以上に頑丈な上、接近戦に持ち込もうとしたら逆に倒されそうになった。結局遠距離まで瞬時に移動し、神槍「スピア・ザ・グングニル」で仕留めたのだが、撃った瞬間レミリアはしまったと思った。かっとなって本気で打ち込んでしまったため、運命操作をするのを忘れていたからだ。しかし美鈴は瞬時に急所を外し、死に至るまでには行かずに済んだ。
その後美鈴の応急処置をメイドたちに任せ、レミリアは数日間回復のため眠りについていたのだ。
そしてレミリアが起きた後、少し遅れて起きた美鈴を門番に指名した、というわけである。
ちなみに美鈴は、衣食住の保障と、レミリアの僕として働いてもいいという思いから断りはしなかった。

「ま、そのあとこっそり遊びに行ったりしたしいいけど。」
「そうですね。こっちにもやっと休みが出来たから遊びに来れるようになりましたし。」
「それに練習相手も出来るようになったからいいか~。」
「まぁ2人ともほどほどにな…。」
「わかってるよー。」
「あはは…気をつけますね。」
そのとき、外から声が聞こえた。
「楽しそうね。」
「こんなところに遊びに来てたのね…美鈴。」
と、玄関の戸を開け入ってきた影が2人。
「さ、咲夜さんっ!?」
「って何であんたまでここにいるのよ?」
「珍しいな、永琳殿。それに咲夜殿。」
入ってきたのは紅魔館メイド長の十六夜 咲夜と、元月の薬師で今は輝夜の護衛の八意 永琳だった。
「えと…何でここにいるんですか?」
「たまに買い物でこの里を利用させてもらってるのよ。今日はちょうどその日だったんだけど、出かけるときにお嬢様がこれを届けてくれと言われて着てみれば…。」
咲夜の手には何かの包みがあった。
「わたしは薬のお届け物よ。てゐやうどんげに任せても良かったけど、ちょっと他に用もあったから。」
「すまないな。」
と、永琳は慧音に薬が入ってるであろう箱を渡した。
「これはお酒よ。美鈴がお世話になってる礼らしいわ。」
「あやつからお礼とは…まぁ頂いておこう。」
咲夜は慧音に包みを渡した。
「あはは…。」
レミリアは美鈴がここに来ていることを知っていたようだ。
「…3人とも古い知り合いなの?」
「かれこれ100年くらいはたってるな。」
「そうだねー。」
「そうですね…ここに来て始めて会ったのが妹紅さんでしたし。」
「へー…そうだったの。」
「そういえば妹紅…姫が駄々をこねているんだけど一緒に来てくれないかしら?」
咲夜の横に立っていた永琳が思い出したように言った。
しかし…。
「今日はダメって言ったじゃん。」
妹紅は即答。
「手に負えないからこうして薬の届けをちょっと早めたのよ?」
「今日は美鈴さんと遊ぶから絶対ダメ、行かないよ?」
「…ほんとに仲がいいのね。」じろり
「うぅ…。」
「はっはっは。」
それから…美鈴に咲夜がナイフを投げつけたり、結局我慢が出来なくなった輝夜が「もこたーん!」と乱入してきた以外は普通の天気のいい日であった。

『気を操る』程度の能力を持つ美鈴は、『気を使う』ことにも長けていた。
そういうところがみんなから好かれる理由でもあるのだが…。

「…そういえば昨日は何処に泊まったのよ?ここに泊まったのかしら?」
「いや…わたしの家には今日来たんだが?」
2人は美鈴を見る。
「え?あっと…妹紅さんのとこに泊まりましたけど。」
「…ほほぅ。いつもはわたしのところに泊まりに来るのに、昨日はあの狭い妹紅のところに泊まったのか。」
「へ?たまにそうしてますけど…?」
ここでそんな様子を見ていた妹紅が爆弾発言を。
「昨日は激しかったねー、美鈴さん。」にっこり
「ええぇっ!?ちょっ…何もしてませんよっ!?」
「一緒に寝たんだよねー。」
「それはそうですけど…って咲夜…さ、ん…。」だらだら
美鈴は咲夜のほうを見て…嫌な汗を流し始めた。
「…へえぇ~。」ぴく
見ると咲夜のこめかみに青筋が。
「えっ!?」
輝夜は驚いて妹紅を見る。
「あんなことやこんなことをしたのに…忘れるなんて酷いなぁ~。」
くねくねと体をくねらせて、顔を真っ赤にしながら妹紅はそう言った。
それと対照的に美鈴の顔は真っ青である。
「め・い・り・ん?」ぴきき
「さ、咲夜さんっ!?誤解ですってばっ!だからそれはやめてくださいぃっ!!」
咲夜はにっこりと笑うと(美鈴には悪魔に見えただろうが)、何処からともなく符を取り出し。
「問答無用よっ!『メイド秘技「殺人ドール」 』っ!!!」びゅおぉっ!
「うきゃあぁっ!!!」
そしてほぼ同時に、輝夜は顔を怒りで真っ赤にしつつ。
「もこたん酷いっ!わたしというものがありながらっ!『神宝「蓬莱の玉の枝」』っ!!!」ごおぉっ!
「誰がいつあんたのものになったのよっ!それともこたんはやめれーっ!!」
と4人は弾幕を張りながら、開いていた戸から空へと飛び出していった。
「おーい…せめてもうちょっと遠いところでやってくれー。」
「貴女も大変ね…。」

美鈴はみんなから好かれていても、天性の苛められキャラは健在であった。
それはそれで、美鈴の魅力の1つである。

慧音の家の上空にて。
「あうぅーーーっ!」
かなりの高速で泣きながら逃げる美鈴に。
「だからもこたんは止めろ~!」
笑いながら美鈴と並んで飛んでいる妹紅。
「美鈴っ!待ちなさいっ!昨日のこと詳しく話してもらうわよっ!!」
2人をナイフを投げながら追いかける、何故か真っ赤な顔をした咲夜と。
「もこたんっ、わたしの愛を受け取って~っ!!」
同じく弾幕を張りつつ追いかける、いつも通りの輝夜。
「村のほうにはいくなよー!」
地上から少し心配そうに叫ぶ慧音に。
「…4人とも楽しそうね。わたしも混ざろうかしら。」
かなりお気楽な永琳。

結局4人の派手な弾幕は、あまりの騒ぎに霊夢やら魔理沙をも呼び寄せることになるのだが、それはまた別のお話。



美鈴の周りには、いつも笑顔があった。

美鈴は時折真剣な顔もするが、大抵いつも笑顔だった。

それが美鈴のいいところであり、美鈴の性格なのだ。

これからも美鈴はいろいろな人に笑顔を届けることであろう。


だからこそ妹紅は笑う。

例え今と言う時が過ぎ、1人になっても笑顔でいよう。

そう思わせてくれたのは2人の友達のおかげ。

永遠ともいえる時間の果てに手に入れたモノ。

いつまでも大切にしていこうと、心に強く誓っている。


「美鈴さん。」
「はい?何ですか?」
「ありがとね。」
「ほぇ?」
「ん、何でもないよっ!」


2人の運命は決まっているかもしれない。

でもそれもまた、幻想郷の物語の1つなのだ。
始めましてっ!雷神と言う者です。

美鈴の格闘相手に誰かいないかなと思い、当てはまったのが妹紅だったのです。
妖夢にしようかとも思ったんですが、妖夢はやはり拳より刀なので妹紅にしました。
能力や薬の効果は自分で考えたところもあるので間違ってるかもしれませんが…。
いかがでしたでしょうか?

それでは、最後まで読んでくださってありがとうございました><
2/7誤字修正
雷神
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コメント



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18.100SETH削除
おそらく誤字です、慧音のセリフのどっかの
簡便 は多分 勘弁 だと思う~

で、それはおいといていいお話でした
500点ぐらい本当はいれたいw
23.80削除
誤字>「だっさぁ…号外!紅魔館に門番が!って:だっさぁ→だってさぁ

門番胸枕一丁! (*゚∀゚)=3
48.100時空や空間を翔る程度の能力削除
仲良きことは美しき事かな・・・・・

良い話でした。
50.100bobu削除
良い話でした。
59.80名前が無い程度の能力削除
めーもこってところか。

何かくどい文章だが楽しめました。