人間の里で開かれた夏祭り。人形劇の後、サービスなのか魔法使いのアリスは、里の子供にキラキラ光る魔法の芸をしている。そこには小さな金髪の女の子、魔理沙も訪れていた。
パチパチパチ。ジリリジリリ。
これは緋色。あっちで輝いているのは金色。光の届かない夜空の下、虹を散らしたように目の前だけが輝く。
瞬きが止まる。鼓動が速くなる。
「綺麗。」
暗い夜空を彩る光の小爆発は、私の目を釘付けにする。鋭く冷たい夜風が私の袖に吹きつけた。袖は揺れた。体は冷える。けれど目の前のキラキラが私を温めてくれる。
「キラキラしてて、暖かい。」
光を逃さない野生の夜空の中で、目の前のキラキラだけが私の瞳に映る。キラキラと私。その瞬間、世界はそれだけだった。
「触りたい、あのキラキラに。」
道具屋の娘としての好奇心が私の腕を動かした。目の前で爆ぜるキラキラを捕まえようと。青緑色に散る光を右手で閉じ込める。瞬間、大きな音ともに光が霧散した。衝撃が私の方まで伝う。
美しく儚い芸は中断。芸をしてくれていたお姉さんは私の元へ駆けてくる。
「そこの金髪のお嬢様。大丈夫?」
私の高さに膝をたたんで視線を合わせてくれたお姉さんは顔を引き攣らせている。必死に周りをキョロキョロしている。
私と同じ金髪。人形のような容姿。
「大丈夫。でもどうしてキラキラ光るの?どうやったの?」
私は彼女に尋ねる。彼女は無事を知ったのか、ほっと息を吐いてから答えた。
「魔法をちょっと使っただけよ。でも、どうしてそんなこと聞くの?人間の子供なんかキラキラに喜ぶだけで方法なんか興味ないのに。」
彼女は私の目の奥を見るように言う。注意深く、観察するように。
「魔法。」
その言葉が私の胸にトクンと落ちる。さっきの魔法を知りたい、さっきの綺麗なキラキラ、もっと見たい。ちょっとびっくりしたけど死ぬ訳じゃない。彼女に聞いた。
「私でもできる?魔法。」
彼女は首を傾げた私の頭を撫でた。けれど彼女は私の目の奥を見ている。目の奥だけを。私ではない私の奥の何かとだけ会話しているように。
「不可能は努力でしか壊せないのよ。あなたが努力さえすれば、ね。」
彼女の声が私の耳を反芻した
「努力、魔法、キラキラ。」
その三音は闇夜に届くことはなく私の口元に籠ったまま。
古くて汚い道具ばかり扱う道具屋の娘として生まれた私は初めて知った。魔法という綺麗な、綺麗なものを。今の私が知り得ないもの。未来の私を示してくれそうな魔法という存在を、私は初めて知った。
「私、いつか魔法できるようになる。だからまた見たい。」
「もちろんよ。私はアリス。あなた、名前は?」
「私は、霧雨魔理沙だよ。」
「そう、あなたが魔理沙ね。よろしく、人間の娘。」
人形みたいに可愛らしい年上のお姉さん、アリス。彼女の瞳はそれこそ人形のように、いや人形らしく感情を閉じ込めたまま音を失った笑い声を立てていた。
パチパチパチ。ジリリジリリ。
これは緋色。あっちで輝いているのは金色。光の届かない夜空の下、虹を散らしたように目の前だけが輝く。
瞬きが止まる。鼓動が速くなる。
「綺麗。」
暗い夜空を彩る光の小爆発は、私の目を釘付けにする。鋭く冷たい夜風が私の袖に吹きつけた。袖は揺れた。体は冷える。けれど目の前のキラキラが私を温めてくれる。
「キラキラしてて、暖かい。」
光を逃さない野生の夜空の中で、目の前のキラキラだけが私の瞳に映る。キラキラと私。その瞬間、世界はそれだけだった。
「触りたい、あのキラキラに。」
道具屋の娘としての好奇心が私の腕を動かした。目の前で爆ぜるキラキラを捕まえようと。青緑色に散る光を右手で閉じ込める。瞬間、大きな音ともに光が霧散した。衝撃が私の方まで伝う。
美しく儚い芸は中断。芸をしてくれていたお姉さんは私の元へ駆けてくる。
「そこの金髪のお嬢様。大丈夫?」
私の高さに膝をたたんで視線を合わせてくれたお姉さんは顔を引き攣らせている。必死に周りをキョロキョロしている。
私と同じ金髪。人形のような容姿。
「大丈夫。でもどうしてキラキラ光るの?どうやったの?」
私は彼女に尋ねる。彼女は無事を知ったのか、ほっと息を吐いてから答えた。
「魔法をちょっと使っただけよ。でも、どうしてそんなこと聞くの?人間の子供なんかキラキラに喜ぶだけで方法なんか興味ないのに。」
彼女は私の目の奥を見るように言う。注意深く、観察するように。
「魔法。」
その言葉が私の胸にトクンと落ちる。さっきの魔法を知りたい、さっきの綺麗なキラキラ、もっと見たい。ちょっとびっくりしたけど死ぬ訳じゃない。彼女に聞いた。
「私でもできる?魔法。」
彼女は首を傾げた私の頭を撫でた。けれど彼女は私の目の奥を見ている。目の奥だけを。私ではない私の奥の何かとだけ会話しているように。
「不可能は努力でしか壊せないのよ。あなたが努力さえすれば、ね。」
彼女の声が私の耳を反芻した
「努力、魔法、キラキラ。」
その三音は闇夜に届くことはなく私の口元に籠ったまま。
古くて汚い道具ばかり扱う道具屋の娘として生まれた私は初めて知った。魔法という綺麗な、綺麗なものを。今の私が知り得ないもの。未来の私を示してくれそうな魔法という存在を、私は初めて知った。
「私、いつか魔法できるようになる。だからまた見たい。」
「もちろんよ。私はアリス。あなた、名前は?」
「私は、霧雨魔理沙だよ。」
「そう、あなたが魔理沙ね。よろしく、人間の娘。」
人形みたいに可愛らしい年上のお姉さん、アリス。彼女の瞳はそれこそ人形のように、いや人形らしく感情を閉じ込めたまま音を失った笑い声を立てていた。
幼い魔理沙の純粋さが光っていました
とてもよかったです