Coolier - 新生・東方創想話

晩餐

2025/06/07 17:36:14
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二.イタリア、三十一世紀
 文明を発展させた人類は宇宙へと旅立ち、そして長い時間が経って地球の人類は姿を消した。
 九代目御阿礼の子、稗田阿求は外の世界が衰退した場合に幻想郷から結界の外に打って出るという未来を預言していたが、それは結界を消滅させて世界を闇の中に戻すというディストピアな可能性だった(故に、阿求自身はそうならない可能性の方が高いだろうと続けていた)。こういう状況になるとは予見していなかっただろう。厳密には人類は滅んでいない。地球外で生き続ける人類の思いや信心の移り変わりは未だ幻想郷を覆う概念の結界を機能させ続けている。
 間違いなく歴史の転換点となったのは、地球外に出た人類がかつての母なる大地地球を素晴らしき地と神聖化したことと、そうであるにも関わらず地球に戻ろうとした者が誰もいなかったことだ。地球外人類は地球を愛してはいたが、地球人類に対しては探求を止めてただ老いて死ぬだけの非文明存在と侮蔑の目を向けていた。その倫理的是非は兎も角として、長い目で見た歴史的趨勢としては事実その通りになり、地球は月に続き無人の地となり、物語の中にだけある存在になった。
 今の幻想郷は、地球そのものだった。





 ナポリの街をルーミアと妹紅が歩いていた。ルーミアが今日はイタリアンを食べたい気分だと言い出してそうなった。ルーミアが主張するところによるとイタリアンは一人では作れないらしいので、妹紅は付き添いをせねばならない。
 アスファルトや石畳からくふぶしの高さにまで雑草が生え、ほぼ全ての建物に蔦が這っていた。街といっても無人の街だ。
「人間はどうして姿を消したんだろうな」
「まだいるじゃん」
「そういうことじゃなくて、外の世界っていうか元々地球にいた人類がだよ」
 戦争が起きたという噂が幻想郷内で広まったこともあった。疫病が広まったのかもしれない。が、街の寂しくも落ち着いた雰囲気に改めて触れると、滅亡はそうした急転直下の悲劇ではなく、社会の老衰のようなものというのが一番妥当なようにも思えた。
「そんないなくなった奴のこと考えてもしょうがないよ。それより今いる人の方が大事だよ。この辺にはローマ王がいたんじゃなかったっけ?」
「お前大昔イタリアに住んだことがあったんだったら知ってるはずだろ。ローマからここまでは二百キロ離れてる」
「そんなこと知らないよ」
「大体、ローマ王は本当に『いるだけ』なんだ。それこそ考えてもしょうがない」
 地球の人類は姿を消した、と書いたが、正確には今は幻想郷出身の人間が移住していることがたまにある。数は多くない。幻想郷の人間が住むことに最適化された結界内部の(今でもかつて幻想郷を外界から隔離していた論理結界はそのまま残っていた。少し皮肉な話だが、今の結界内部には論理的意味ではなく住み心地のいい場所という物質的意味において価値がある)里と、十万百万千万、あるいは億の単位で科学文明を理解する人間が存在すること前提で設計された外の世界の街の抜け殻と、どちらが過ごしやすいかという話だ。そういう不便を押してこちら側に移ったのがたまにの人間だから、基本的には変人である。彼らは人類史でも最も多くの領域を独占する権利を得たということに意味を見出し、見出した意味に応じた脳内設定によって称号を自称している。ローマ王は称号の一つで、称号通りの場所に在住し、ヨーロッパ地域に所有権を主張し、内陸アジアを領有する「大ハーン」マエリベリー氏と日々戦争(という名の、概念上の国境を賭けたチェスの遠隔対局)に明け暮れている。が、所有権を主張してるものの実行力はない。二人が街を歩いていても得に何も起こらないし、それどころか例えばどちらかがおもむろに石を手に取り、まだ奇跡的に残っているガラス窓のどれか一つに向けて投擲したとしても何も言われないだろう。ローマ王の権力で王ならば、ナポリの街に住み他の個体から獲物を横取りするボス猫は皇帝だ。
「ローマ王がいたらそいつからご飯をたかることもできたんだけれどなあ」
 ルーミアは自分で作るのは面倒だという本心を一切隠そうともせず愚痴をこぼした。でも作るのは面倒だけれど完成したものを食べたいという思いはもっと強い。総合すると、天から降ってくればいいというのが結論になる。
「王のお手を煩わせるなってこった。とりあえずレストランを探すんだっけか」
「うん……」
 ルーミアは自信なさげに呟いた。レストランなら普通の家より調理設備が充実してるだろうし、運がよければ保存が効く食材ならまだ残ってるかもしれない。別に見つからなくても場所を確保してから結界内に戻って材料を取ってくればいいのだが、現地調達できるものがあったらその分荷物は減る。問題はレストランらしき建物が見つからないということだ。自宅の庭のように歩き慣れた街、とは言わなくとも大まかには覚えているつもりだったから、まったく覚えがないという事態は予想外だった。
 ルーミアは裏路地に、記憶の中では存在しないはずの道に入った。建物が変わったとしても道はそうそう変わらないだろうと思い込んでいたが、これが大誤算だった。自分を見る妹紅の目が冷たいような気がする。
 ルーミアは苛ついて頭頂のリボン周りを掻いた。リボンは幻想郷に来てからつけられた封印のお札だが、今となっては誰にどこでつけられたかの記憶は霧散していた。外の世界より時間の流れが穏やかな幻想郷内の出来事ですらそうなのだから、外の世界は尚更かとルーミアは無常を覚えた。





「この建物がそうなんじゃないか」
 ルーミアは時の流れにショックを受けて上の空になっていたが、妹紅の指摘で我に返った。
 妹紅が言う建物は大理石をメインに使った白亜の建造物で、虫に多少食われた木の看板には"Ristorante"と掠れた文字が墨書されていた。つまりまさに目的の建物なのだが、二人はイタリア語が読めるわけではないから、なんとなくそれらしいという勘でもってその建物に侵入した。そもそも場所と残ってる食材を拝借して二人分の食事を作るだけならレストランである必要はなくて適当な家の台所だって構いやしないということに薄々勘づき始めていたというのもある。
 店内には丸テーブルがいくつかあって、椅子のほとんどはその上に逆さまに乗せる形で片付けられていた。地球人が滅亡したとき、この店は閉まっていたらしい。閉店してる状態だったというのは再確認で、そもそもこの一分前に施錠された扉を二人で蹴飛ばして侵入したところだったのだが。
「あっ、ワインがある」
「よかったな。ヴィンテージものだ」
 ヴィンテージという言葉は幻想郷に伝わってから意味が変質し、古い酒を指す単語になっている。地球人滅亡から今までにも結構な時間が経っていた。その間に幻想郷から移住してきた酔狂の中に葡萄農家は一人もいないから、今地球に存在するワインは全部ヴィンテージである。
 ルーミアはコルクを開けた。少し酸っぱい葡萄の匂いが部屋に拡散された。最適な保存環境に置かれたものではないものの、飲めはする。戦果ゼロが回避されたことに安堵した。
「そっちはどうだー?」
 ルーミアがワインに構っている間に、妹紅はカウンター裏の元厨房の物色を始めていた。
「んー。パスタは残ってる。賞味期限か製造月かのどっちかっぽい数字が書かれてるな。3006年10月。今西暦何年だ?」
「逆に聞くけど、今自分が何歳かってわざわざ覚えてるかー?」
「ああ、それもそうだな」
「乾麺だろー? カビてなきゃ食えるって」
「確かにカビてはない。が、多分あんま美味しくないぞこれ。……まあ、不味いというのを確かめるのも大事だな。次にここに来る観光客に、『現地のパスタは食べないでください』って教えられる。半分はここのを使って、半分はあっちから持ち込むか」
 妹紅は立ち上がって冷蔵庫の前に移動した。そして一呼吸置いてその白い箱を開けたが、中には何も残っていなかった。逆に何も残っていなくてよかったと安堵している。腐った生物(なまもの)
の残骸がドロリと落ちてくるか黴の胞子が放出するかして、建物内でちょっとしたバイオテロが起こることを覚悟していたのだ。時間が経ちすぎて、腐敗か黴かは、栄養になるものを食い尽くして終焉したらしい。
「空箱じゃん。がっかり」
 ルーミアも厨房に来て、妹紅とは逆の感想を冷蔵庫に述べた。
「逆に何があったらよかったんだ」
「お肉」
「どう考えても真っ先に腐っただろうよ」
「いやでもハムなら、この辺とかに……。あー」
 ついにパンドラの箱は解き放たれた。白いのが表面に薄っすら生えただけの穏やかな災厄だが、黴は黴だ。ルーミアが開けた扉の奥で保管されていた、昔ながらの手法で作られた生ハムの原木に生えていた。
「苔のむすまで、だな」
 地球人滅亡以前ならとんでもない不敬だっただろう感想でもって、妹紅はこの状況をまとめた。
「これは無理だねえ」
「パスタが無事、無事かどうかは食べてみないと分からんが、まあ一旦無事というだけでよかったじゃないか。三十世紀か三十一世紀かの保存技術万歳だ」
「むー」
 ルーミアは不満をこぼしたが、どんなに文句を言っても覆水は盆には帰らないし目の前の原木から黴が消えることはない。食料探しはこれで終わりだ。
「河童でも呼ぶかね」
 材料の目処がついたら次はそれを調理する方法の確保になる。ここはレストランなので設備はあるが、同時に外の世界でもあるので動力は電気だったりガスだったりする。
「いや、ちょっと待って……。これは駄目だよ」
 ルーミアはコンロの一つを、蓋のような隙間に思い切り力を加えることで壊した。内部は赤錆の集合体と化していた。設備の動力が電気ないしガスというのと、この地の人類が滅亡して久しい環境で正常に動作するかというのはまた別問題だ。
「じゃあ焚き火するか。ここの前がちょっとした広場になってる」
 焚き火はコンロより大掛かりだが、場所はあるし、幸い燃やすものにも困らない。街路樹のために土がむき出しになってた場所には手入れがなされなくなった後にも何かしら生えているし、ここや他の建物の中にあるであろう椅子は木製だ。幻想郷側からは着火のための最低限のものさえ持ってくればいい。
「おっ」
 ルーミアはコンロが使えないことを確認した時点で、コンロが使えなければ火を起こすしかないという分かりきった結論には興味が失せていて、店内の別な設備に目移りしていた。壁際にピザ窯があったのである。これは元々炭火か焚き火かで使うものだったから少し掃除したら今でも現役で機能するに違いない。
「ピザ食べたい」
「あー、ピザか」
 実は妹紅はピザを焼けるのである。永く生き過ぎたし、その一生半直線な人生のうち結構な割合が衣食住に不自由しない存外平穏なものだったから、退屈しないための活動を常に必要としていた。エキゾチックで手間のかかる料理に手を出すというのも複数回通過した過程で、どこかでピザを焼いた経験もある。そういう経歴があったのもルーミアのお守りに指名された理由の一因なのだが。
 ピザが焼けるなというより、ピザが焼けちゃうんだよなと妹紅は思った。ピザをここで焼きながら同時に外の焚き火の番をすることはできないから、ピザを焼くなら、ピザ窯に一人、焚き火に一人の分業をするしかない。人手は足りるのかね。
「私が焚き火するからピザお願い」
 が、ルーミアはそんな妹紅の逡巡を完全に無視して即決した。
「ピザ焼けるとは言ってないだろ」
「『ピザ焼き始めて百年です』みたいな顔してるのに?」
「それがどんな顔かは知らないが少なくとも私の顔じゃないだろ。……そんな顔は絶対してないが、ピザを初めて焼いてからうん百年というのは合ってるんだよなあ。しかしお前の方こそ焚き火なんて起こせるのか?」
「おー? 私をそんじょそこらの妖怪と一緒にするなよー? 焚き火なんて造作もないね。最近の河童製着火キットを使えば一瞬だよ」
「凄いのはお前じゃなくて河童だよそれ」
 妹紅は微妙に不安を抱いたままだが、流れで役割分担は決まってしまった。二人は一度結界内部に戻って必要なものを運び、それを店内の机の一つの上に置いた後店の奥と店の外に分かれた。





 窯でピザを焼くときに使う、先端に板がついている棒状の道具をパーラー、あるいはピザピールという。店には錆びていないピザピールがまだ残っていた(コンロ周りと同じくこれも金属製だが、鉄ではなく錆びにくい合金なのだろうか?)から、妹紅はそれにピザを乗せて窯に突っ込んだ。
 トッピングは妹紅の好みだ。まずトマトソースとチーズがなければピザとは言い難いからこれはマストだ。茸。茸と筍どちらが優れているかは人類の歴史が一区切りついた今世においてなお議論の種になっており妹紅としても悩むところだが、今回ばかりは茸で確定だ。ピザに筍はあんまり入れないだろう。茸を入れると決めたから茸を軸にそれに合わせて他の具材が決まる。すなわち玉ねぎとサラミだ。そしてまだ円盤には投下されていないが、焼き上がった後のピザに加えるためにベビーリーフが卓上で待機している。
 ピザを食べたいと言い出したのはルーミアだが、彼女の要望は一切聞かなかった。聞かずとも好みの予想はできて、多分「肉」と答えるのだろう。額に肉と書いてあるのではなく脳の表面に肉と刻まれているタイプの存在だ。彼女を最初に見てから長いが、肉以外のものを食べているのを見たことがない。
 それに反してこのピザには大して肉が入っていない。ひょっとしたらルーミアは宗教か何かを原因として肉以外のものが食べられない逆ベジタリアンなのかもしれない(そしてそれでもピザを要望するのだから、乳製品と穀物は肉亜種と判定されてセーフなのだろう)が、知ったことじゃない。逆にルーミアが逆ベジタリアンだとして、焚き火の番を任された彼女は肉を丸焼きにしてるに違いない(妹紅の経験則上、あの手の妖怪は大体生肉と丸焼きの二通りしか食べ物を知らない蛮族だ)から、そこに肉ピザなんぞ持ち込もうものならこっちが胃もたれする。妹紅が茸軸で具材を決めたのは単純な好み以外にもそういう事情があった。
 それにしてもルーミアは不思議な奴だと妹紅は思っている。何が不思議かって、余りにも長生きすぎるし、余りにも変わらなすぎるのだ。妖怪は人間よりは長命だが不死ではない。それに、精神が優位な存在だから、人間の流行りで変わったり、妖怪本人の気分でイメチェンしたりする。人類の宇宙進出が本格化してからというもの、なんというかコズミックな奴らが増えた。対してルーミアはルーミアだ。金髪のショートヘアに赤いリボン、モノクロの服に赤いネクタイという外観も、気の抜けた暢気あるいは気怠そうな雰囲気も千年変わっていない。
 妹紅はルーミアを妖怪ではなく妖精の類なんじゃなかろうかと疑い始めていた。妖怪と妖精の境界の一つは不死性の有無だが、ルーミアはまだ死んだことがないので死んでも復活する妖精だとは誰も思っていない……。つまり殺せばその真偽は証明できるのだが、わざわざそのために殺す気にも妹紅はならなかった。そういう「わざわざ殺すほどのものではない」と思わせ続けることによって今まで殺されることもなく生き延びている……。妹紅の思考は次にそう飛躍した。
 考え事をしている妹紅の顔を地平線下に沈んでいく日の残渣が照らした。日本だろうがイタリア半島だろうが、太陽は平等につるべに落ちる。しかし妹紅は夕陽を眩しいとも思わず、顔に光が当たっていることを全く認識していないかのように意識を己の内部に向けていた。
 妹紅が次に動いたのは窯から少し焦げた匂いが出てきたときである。うっかりではなく、妹紅はピザとは生地の表面が少しだけ焦げているものだと思っているから、取り出すのはそうなったときと決めていたのである。ご飯のおこげのようなものだ。
 ピザを皿に移して(ピザピールに乗せたままでもいいのかもしれないが、なんとなくそうした)窯の火を消した。火の不始末から火事になるとどれほど面倒かというのを妹紅はよく知っている。特にブン屋にかぎつけられたときの対応。
 窯の火を消して、片手に火を灯してそれを灯りに外に出る。そういう手順が正しいのだが、妹紅は無意識に片手に点火する前に漆黒の部屋の中で少し歩を進めた。
 部屋の隅で何かが動く音がした。それが何かが見えなかったので妹紅は自分が暗闇の中にいるということを思い出し手順前後ながら灯りを作った。
 火を灯したときには既に音の主はどこかに行っていた。ネズミか何かが、妹紅が動く音に驚いて逃げたのだろう。
 暗闇と、暗闇の中で起こる出来事に対して生物は本能的に恐怖を覚える。生物でなくなって長い妹紅は忘れていた感情だが、その実例を目の当たりにして、どうしてルーミアが今まで変わらぬ姿で存在し続けているのか、その理由を理解した気がした。





 ルーミアは羊肉を串に刺して焚き火の周りに置いていた。
「焚き火を任せた後でこんなこと言うのもおかしいんだが、お前、料理できたんだな」
 妹紅は茸のピザをルーミアに渡した。ルーミアは逆ベジタリアンなんてこともなく普通にそのピザを雑に咀嚼した。
「失礼な。私も数千年生きてきて学んださ。塩コショウをかけて肉を焼くと美味い」
「数千年生きてきてようやくそのレベルかよ」
「違う、ようやくそこに戻ってこれたんだ」
 妹紅はピザとの交換で適当な大きさに切った肉が入ったパスタをルーミアから受け取った。ボロネーゼのために肉を挽くのが面倒で代わりに細切れを入れたような。ような、ではなく事実そういう経緯で作られたのだろう。ただの妖怪が作る料理にしては凝っている。真理に至るまでの通過点で得た技術か。
 妹紅はルーミアみたいに通ぶった肉食の趣味はないから塩コショウより優れた肉の調理方法もあると思っている。例えばこのパスタ。「肉は」超美味しい。麺は若干饐えた風味で、ソースに染みてしまっている気がする。やはりガイドブックには「現地に遺されたパスタは食べるな」の一文が追加されるべきだ。
「ステーキを焼ければよかったんだけれどね、ステーキ向きの部位じゃなかった。私の華麗なナイフ捌きをお前にも見せてやりたかったね」
 ルーミアはナイフを華麗に使いそうには見えない野生ぶりを串焼きに発揮していた。
「妖怪がそんなお行儀よく?」
「これでも昔は躾の厳しい家にいたんだ。……信じてないね? 今度はこんなキャンプみたいなのじゃなくてちゃんと店で食おう」
「今からあのレストランっぽい場所に場所を移すか?」
「いんや。別の日に外食だね。今度こそローマ王のとこに押しかけてさ」
 かつてこの街には街灯があった。それは蝋燭だったりガス灯だったり電灯だったりという変遷を辿ったが、人がいなくなった街ではもはや機能せず、かつてそこに文明があったことを示す記念碑としてただ存在しているだけだ。
 今晩、一日だけこの街には文明の光が戻った。焚き火という最も原始的な火がナポリの街のかつて大通りの交差点だった場所を照らしているだけだが、その薄暗い火は確かに、交差点に面した遺構と、炎の不死人、そして宵闇の妖怪を光で濡らしていた。
ルーミアがお行儀よく食器を使って食べ物食ってたら面白くね? と思い書き始めたけれど、結局行儀のよさはそんな出てないですね。あと話を思いついたときには「聖者は十字架に磔られました」→キリスト教→最後の晩餐の発想ラインがあったはずなんですがこれもほぼ雲散霧消。小説執筆ってそういうとこあります
東ノ目
https://x.com/Shino_eyes
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです
2.100福哭傀のクロ削除
前半はいつ死ぬんだろうと思って読んでてなんか違うなこれって気づいて、でもページめくったら死んでるんでしょ?知ってるんだからって思って別の意味で目を丸くしました。
前半部分も普通に面白かったし、あんまり文明の衰退(衰退?)とか難しいことに興味がないから後半その当たりの説明はそこまでだったんですが、なんかこう、滅びた(でいいかもう)未来のイタリアの街をルーミアと妹紅が飯食いてえで散策するのがめちゃくちゃ好きだった。何がそんなに良かったのか自分でもよくわからないっていうクソみたいな感想だけど、なんかめっちゃ好きだった。
好き嫌いだけで判断するにはもったいないくらいうまい文章だけど、上手い下手を議論するにはちょっと好きすぎた。でもきっと好きになれたのは作者様のキャラ作りと雰囲気づくりのおかげだと思うから、やっぱり良かったと思う
3.100ローファル削除
面白かったです。
人食いのイメージが強いルーミアの比較的?大人しい幻想郷入り前の日常も後半の妹紅とのやり取りもよかったです。
(久しぶりにピザが食べたくなりました)
5.100のくた削除
イタリアで名を轟かせていた前半のルーミアが良かったです
勿論後半の珍道中も
6.90夏後冬前削除
イタリアの馴れの果てで好き勝手やってる描写が堪らなく愉しそうで好きでした。前半と後半の話にもうちょっと相関があれば良いなと思いました。
8.100名前が無い程度の能力削除
ルーミアはいつまでも人の隣人として描かれているのかなと感じました。光や食事と言った人間の生活様式の傍にいて、それがずっと続いている感じが素敵でした。
9.100南条削除
面白かったです
人類の隣人としてのルーミアが微笑ましく書かれていたかと思ったら、ポストアポカリプスの世界でのんびりピザを食べていて、闇というものの普遍性を感じました
11.90名前が無い程度の能力削除
前半と後半の温度差にちょっと面食らいました。どっちも良かったです。