それは、ある一本の電話から始まった。
『prrrrrrr prrrrrrr』
「?」
当時俺は高校生で、親がちょっとお金を持っていたこともあり一人暮らしをしていた。
今日も部活から帰ってきてソファにどすっと座り込んでゲームでもするかぁ…そう考えたとき、俺のスマホが鳴った。
友達か家族からだろうか。そう思ったが画面には非通知と書かれていた。俺は不思議に感じながらもその呼び出しに応じた。
「はい、どちら?」
『もしもし、私、メリー』
「…え?」
すると電話に出るのは『メリー』というではないか。最近は妖怪だとか都市伝説とか科学的根拠が見いだせられない怪異という存在が否定されている世の中になってきているが、俺は信じていた。というより、半信半疑だな。なぜ、と聞かれるとなんとなく、としか言いようがないのだが…あれだ、しらんけどってやつだ。
とまあ、今はそんな有名な都市伝説の一つに電話をかけられているわけだがまあ嘘だろうな。俺はそのメリーってやつに言ってやったんだ。
「あの、新手のストーカーですか?やめてください、気持ち悪いです」
『え!?いや、そんなんじゃ…』
ガチャッ ツー ツー ツー
…言い過ぎたかな?でも、これくらいしねぇと直さないやつが多いからなぁ、ズバッと言わないと。この前だってなんぽしている最中に奇抜な髪色した巫女が「あなたも守矢に入信しませんか!?」とか言ってきたし。そんときゃ頑張って逃げたけど、あそこの神社通りかかるたびになぁ…正直うるせぇよ。
ま、これでもう電話なんてかけてこないだろう。
「やっぱり風呂でも入るか…」
そう思い、俺はスマホを机に置いて風呂場へと向かう。ちなみに俺は園原 結人(そのばら ゆいと)。高校2年だ。趣味はゲームくらいかな?成績はまぁまぁだ。…俺は何をしているんだ?
そう考えながら湯船につかっていると、かすかに『prrrrr…』という音が耳に入る。電話に出ようとは思ったが、後で風呂に入っていた、と言えば許してくれるだろう。
それにしてもメリーってやつはいったい何がしたかったんだろうな。最近はちょっと運が悪いし、少しあれだが守矢神社に行っとこうかな。あの巫女、頭はあれだが実力はあるみたいだし。
「ふぅ、すっきりしたぁ…」
風呂から出て、リビングに向かう。ちょっとした休憩に、とテレビをつける。
TV) ギコギコハシマセン!イチドハガハイッタラ、スゥ~ッ! アァ~!スイソノオトォ~!
…カオスかよ。
「っと、電話の相手は誰だったんだ?」
『prrrrrr prrrrrrr』
「ありゃ、かけなおしかな?…非通知…」
またか?いやまて、公衆電話でかけている友達かもしれない…とりあえず出よう。
「もしもし?」
『あ!やっと繋がった…もしもし、私、メリー』
「…」
『ちょっと待って!切らないで!』
「お、よくわかったな」
『何回かけても出なかったから…』
「悪いな、長風呂なんだ。それより、メリーなら今、○○にいるのって言わねえのか?」
『あ…今、なたの通っている□□高校にいるの』
「…え?」
『え?』
「俺、△△高校だけど…?」
『え!?…何県?』
「え、埼玉…」
『ここは、香川…えぇぇ!?』
「…んじゃ」
『あ、え!?』
ガチャッ ツー ツー ツー
「…なんだったんだ、あいつ…」