Coolier - 新生・東方創想話

霧の中の訪問者 4章〜9章まで

2024/10/23 16:53:51
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一日一つだとめんどいので一気に

霧の中の訪問者 第4章 「霧の決戦」

幻想郷に霧が漂い続ける中、霊夢と魔理沙は次の異変がいつ起こるか警戒を強めていた。霧の少女の力は強大で、彼女の目的を完全に理解する前に再び立ち向かう準備を整える必要があった。ある日、ついに彼女たちに新たな挑戦が訪れた。

―――

「霧が再び濃くなってきたわね、魔理沙。」霊夢が空を見上げながら言った。

「そうだな、ただの天気の異常じゃない。奴がまた何か仕掛けてきてる。」魔理沙も不安そうに呟く。

二人が空を飛びながら霧の中心に向かうと、遠くから急速に迫ってくる気配があった。突如として霧が裂け、その中から何かが猛スピードで飛び出してきた。

「霊夢!前方に気をつけろ!」魔理沙が警告する。

その瞬間、巨大な霧の蛇が姿を現し、鋭い牙を向けて二人に襲いかかってきた。霊夢は素早く身を翻し、空中で結界を張りながら反撃する。

「来たわね…いきなり派手にやってくるなんて!」霊夢は札を手に取り、空中で力強く振る。

霊夢の御札が光り輝き、蛇に向かって一直線に飛んでいく。札が蛇の霧の体を突き刺すと、一瞬でその部分が吹き飛ばされたが、蛇はすぐに再生し、さらに攻撃を仕掛けてきた。

「こいつ、なかなかしぶといな…!」

「気を抜かないで!」霊夢は冷静に指示を出しつつ、さらに多くの札を投げ放つ。だが蛇は一瞬の隙を突いて霊夢に迫り、その巨大な尾が彼女に向かって振り下ろされる。

「くっ…!」霊夢は寸でのところで避け、霧の中に飛び込んでいった。

一方、魔理沙は箒に乗って高く飛び上がり、霧の蛇を上空から見下ろしていた。「私の魔法で一気に決着をつけてやる!」

魔理沙は箒を高速で旋回させ、空中に巨大な魔法陣を描き始める。その魔法陣からは強力な光が溢れ出し、蛇に向かって収束していく。

「マスタースパーク!」魔理沙が叫ぶと、巨大な光線が蛇の頭部を直撃し、その体を吹き飛ばした。

蛇は一瞬で霧と化し、空中に霧が広がった。しかし、その霧の中から再び少女の声が響いてきた。

「さすがね…でも、まだ終わりじゃないわ。」

霧の中から複数の小さな霧の蛇が次々と姿を現し、今度は霊夢と魔理沙を囲むように動き始めた。

「くっ、まだこんなに!」魔理沙は再び箒を振り回しながら蛇を攻撃し始めたが、数が多すぎて一体一体を相手にするには時間がかかる。

「このままじゃ埒があかないわ…仕方ない、もっと大きな技を使うしかない!」霊夢は空中に舞い上がり、手に持った御札を天に掲げた。

「博麗の巫女としての力、ここに示してみせる!」

霊夢の周りに光が集まり、結界の力が具現化していく。彼女の体から放たれた光は次々と霧の蛇を追尾し、その一体一体を貫いていった。

「やったか?」魔理沙が疑わしげに言うが、霧の中にはまだ異様な気配が残っている。

突然、霧の中心から再びあの少女が姿を現した。彼女は静かに手を広げ、さらに巨大な霧の存在を呼び出そうとしていた。

「次は、この幻想郷そのものの力を見せてあげる。」

霊夢と魔理沙は緊張を高めた。今度こそ、本格的な決戦が始まろうとしていた。

「ここで決着をつけるわよ、魔理沙!」

「もちろんだ、霊夢!」

霊夢は御札をさらに強力にし、結界を強化して少女に向かって突進した。魔理沙もまた、最強の魔法で少女に攻撃を仕掛ける。空中での激しい戦闘が展開され、霧の中で光と力がぶつかり合った。

少女の霧の力は強力だったが、霊夢と魔理沙の連携はそれ以上に鋭く、彼女の動きを次第に封じ込めていった。霊夢の御札が少女の体に直撃し、魔理沙の光線がその周りを焼き尽くす。

ついに、少女は霧の中で膝をつき、息を切らした。

「まだ…私は…」

しかし、霊夢は少女に向かって歩み寄り、静かに言った。「これ以上無理に幻想郷の力を使うことは許さない。この世界は、私たちが守る場所なの。」

少女は静かに霊夢を見つめ、次第に霧が薄れていくのを感じた。彼女は最後に微笑み、ゆっくりと消えていった。

「…また、いつか。」

霧が完全に晴れ、幻想郷は再び静けさを取り戻した。霊夢と魔理沙は息を整えながら、空を見上げた。

「終わったか…?今度こそ。」魔理沙が一息ついて言う。

「ええ。でも、きっとまた別の異変が起こるわ。それが幻想郷という場所だから。」霊夢は冷静に答えた。

こうして、霧の少女との戦いは終わりを迎えたが、幻想郷にはいつも通りの平穏と、また新たな謎の気配が漂っていた。


霧の中の訪問者 第5章 「傷跡」


霧の少女との激闘が終わり、幻想郷には再び静けさが戻ってきた。しかし、その戦いがもたらした被害は想像以上に深刻だった。霧の竜や無数の蛇が暴れ回った場所には、かつての幻想郷の美しさを覆い隠すように、荒廃の跡が残されていた。

霊夢と魔理沙は、戦いの余韻を引きずりながら、地上を歩いていた。

「ひどいな……」魔理沙が言葉を漏らし、目の前の光景を見つめる。

かつて緑に覆われ、幻想郷の穏やかさを象徴していた森は、霧の力で枯れ果て、木々は根元から折れ、地面には巨大なひび割れが広がっていた。大地は冷たく、湿った空気が漂い、村人たちが大切にしていた作物も無残に荒らされていた。

「霧がこんなに強く浸透していたなんて……。」霊夢は眉をひそめながら、手元の御札を握りしめた。「私たちは戦いに集中していたけれど、その間にこんなことになっていたなんて。」

村に近づくにつれて、その被害の大きさはさらに明確になっていった。家屋の一部が霧によって腐食し、壁はひび割れ、屋根が崩れ落ちている場所もあった。村人たちは無言で壊れた家を修復しようとし、誰もが疲れ果てた表情を浮かべていた。

「まるで戦争の後みたいだな……」魔理沙が呟いた。

霊夢は村人たちに歩み寄り、言葉をかけようとしたが、彼らの目に浮かぶ不安と恐怖を感じ、言葉を失った。

「霊夢さん、これからどうなるんですか?」近くにいた若い女性が声をかけてきた。「この霧の異変はもう終わったんですか?」

霊夢は少し黙り込んだ後、静かに答えた。「ええ、異変は収束しました。でも、しばらくは影響が残るかもしれないわ。少しずつ元の状態に戻るように、私たちも手を貸すから安心して。」

しかし、その言葉に完全な自信があったわけではなかった。少女が引き起こした霧の力は、単なる自然現象ではなく、幻想郷そのものに大きな揺らぎを与えていた。

「すまない、霊夢。私たちがもっと早く対処していれば、ここまでの被害は防げたかもしれない。」魔理沙が苦々しい表情で言った。

「仕方ないわ。あの霧の力は予想以上に強力だった。私たちだけじゃ完全に防ぎきれなかったのかもしれない。」霊夢は悔しさを隠しきれない表情で答えた。

―――

村の修復が進む中、霊夢は再び空へと飛び上がり、異変の中心地だった場所へと向かった。そこは霧が最も濃く、少女が最後に姿を消した場所だった。

かつてそこに広がっていた草原は、今や黒く焦げたように変色しており、何も生えていない荒れ地と化していた。霊夢はその中央に立ち、静かに目を閉じた。

「幻想郷は傷ついた。でも、これで終わりではない。」

彼女は御札を取り出し、地面に置いた。それは博麗の巫女としての役割、そして幻想郷を守る者としての決意を象徴するものだった。

「ここからが私たちの役目ね。幻想郷は、いつだって私たちが守ってきた場所だもの。」

霊夢はそう呟くと、再び村へと戻るために空を飛び立った。彼女の背後では、まだ荒廃した大地が広がっていたが、少しずつ復興への兆しが見え始めていた。


霧の中の訪問者 第6章 「紅魔館への訪問」


幻想郷はまだ霧の少女との戦いの爪痕を残していた。村や森は復興の途上にあり、霊夢と魔理沙は次の異変に備えて行動を開始していた。霧の少女が消え去った後も、彼女がもたらした力の余韻は幻想郷全体に不安定さを残していたのだ。

「次の異変が起きる前に、戦力を整えておかないとね。」霊夢は飛びながら言った。

「そりゃそうだ。だからこそ、あいつのところに行くんだろ?」魔理沙が笑みを浮かべる。「紅魔館のレミリアは、こういうときに頼りになるだろうしな。」

霊夢と魔理沙は紅魔館を目指していた。紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは、強力な吸血鬼であり、何度も幻想郷の異変に関わってきた人物だ。彼女の戦力は確かであり、異変の兆候が再び現れた今、彼女の助力を得ることが必要だと判断した。

紅魔館に近づくにつれて、空気が重くなり、霧の名残がまだ辺りに漂っているのが感じられた。館の巨大なシルエットが霧の中にぼんやりと浮かび上がり、どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。

「いつ見ても、あの館は壮観だな。」魔理沙が感嘆の声を上げた。「レミリアはこんな場所に住んで飽きないのかね?」

「彼女には彼女の楽しみがあるのよ。さあ、入るわよ。」霊夢は冷静に答え、館の入口に降り立った。

霧の中から姿を現した二人を、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が静かに迎えた。咲夜は冷静な目つきで二人を見つめながら、軽く頭を下げる。

「お久しぶりです、霊夢さん、魔理沙さん。ご用件は、やはり例の異変についてでしょうか?」咲夜は落ち着いた声で問いかけた。

「ええ。霧の少女の件は片付いたけど、まだ終わっていない感じがするの。」霊夢が答えた。

「それに、次に来る異変に備えて戦力を整えたい。レミリアの力が必要だと思ってな。」魔理沙も続ける。

「わかりました。お嬢様にお伝えします。どうぞ、中へお入りください。」咲夜は静かに館内へ案内した。

紅魔館の中は、外の霧とは対照的に穏やかで、どこか異世界のような荘厳さを感じさせた。高い天井に豪華な装飾が施され、絨毯が敷き詰められた廊下を通りながら、霊夢と魔理沙はレミリアとの対面を待った。

しばらくして、広間に通された二人の前に、レミリア・スカーレットが悠然と現れた。彼女の紅い瞳が霊夢と魔理沙を捉え、微笑を浮かべる。

「また何か面白いことが起こったのかしら?」レミリアは興味深そうに問いかけた。

「面白いって言うよりも、厄介なことよ。」霊夢がすぐに答える。「この前の霧の少女との戦いで、幻想郷は大きな被害を受けた。でも、それが終わったわけじゃない気がしているの。」

「だから、レミリア、あんたの力を借りたいんだ。」魔理沙も加わる。「次の異変に備えておかないと、もっとひどいことが起きるかもしれない。」

レミリアは静かに目を閉じ、少しの間思案した後、目を開いた。「なるほど、面白そうじゃない。それに、幻想郷が危険にさらされるなら、私たちも巻き込まれることになるわね。」

「あなたも異変には関わっているのよ。黙って見過ごせるわけがないでしょ?」霊夢は真剣な眼差しでレミリアを見つめる。

「いいわ。次の異変に備えて、紅魔館の戦力を使ってあげる。でも、その代わりに何か面白いことを見せて頂戴ね。」レミリアは微笑みを浮かべながら、答えた。

「面白いことね…期待に応えられるよう、がんばるわ。」霊夢は軽くうなずいた。

「それじゃ、戦闘準備を整えるか!やることはたくさんあるぜ。」魔理沙が意気込んで言う。

レミリアの助力を得たことで、霊夢と魔理沙は次の異変に向けて本格的な準備を開始した。紅魔館には優秀なメイドである咲夜、そして強力な図書館主のパチュリー・ノーレッジもおり、彼女たちの知識と力は、霧の少女の力を上回る何かに対抗するための大きな戦力となるだろう。

霊夢たちは、次なる戦いに備え、紅魔館での準備を進めていくことにした。異変はまだ完全には終わっていない。そのことを全員が感じ取っていた。紅い月の光が館を包み込みながら、幻想郷の行く末が再び動き出そうとしていた。

霧の中の訪問者 第7章 「フランとの特訓」

紅魔館での準備を進める中、霊夢と魔理沙は次の異変に備えて戦力を強化しようと考えていた。戦力となる人物は、レミリアだけではない。紅魔館にはもう一人、強大な力を持つ存在がいた。彼女の名はフランドール・スカーレット――レミリアの妹であり、狂気じみた力を持つ吸血鬼だった。

「フランと特訓するなんて、無茶なこと言い出すわね。」霊夢は呆れた表情を浮かべながら、魔理沙に向かって言った。

「いやいや、こんなチャンスめったにないだろ?あいつの力は本物だし、ちょっと鍛えられるくらいじゃ済まないぜ!」魔理沙は楽しそうに笑って答えた。

二人が紅魔館の中を進んでいくと、やがて地下に通じる暗い階段にたどり着いた。そこは、フランドールが普段閉じこもっている場所――紅魔館の地下に続く階段だ。

「ここにいるのか。」霊夢は少し緊張しながらも、地下への扉を押し開けた。

暗い廊下の先に、フランドールの姿があった。彼女はおもちゃのような大きな羽を揺らしながら、無邪気に笑っていた。紅い瞳が二人を捉えると、フランは興味深そうに近づいてきた。

「お姉さまが何か面白いことを企んでいるって聞いたわ。でも、あなたたちが私と遊びに来るなんて思わなかったわ。」フランは微笑みながら、不思議そうに霊夢と魔理沙を見つめた。

「遊びじゃない。私たちは次の異変に備えて、力を鍛える必要があるの。」霊夢は真剣な表情で答えた。「あなたの力を貸してもらいたい。」

「そうそう、フラン!次の異変、ただじゃ済まないかもしれないんだ。だから、あんたの力を試させてくれないか?」魔理沙も笑顔で加わった。

フランは少し考え込んだ後、目を輝かせて言った。「面白そう!でも、手加減しなくていいの?」

「もちろんよ。そのつもりで来たんだから!」霊夢は決意を込めて言い放つ。

―――

広々とした紅魔館の地下室が、特訓の舞台となった。天井が高く、壁には古びた石が積み上げられており、空気は冷たかった。霊夢と魔理沙がそれぞれのポジションにつき、フランは中央に立って無邪気に笑っていた。

「じゃあ、始めましょうか!」フランが叫ぶと同時に、彼女の周りにエネルギーが集まり、鮮やかな光がはじける。

「くっ!すごい力だ!」魔理沙はすぐに箒で空中に飛び上がり、距離を取った。

フランは強烈なエネルギーを放ちながら、瞬時に霊夢と魔理沙に向かって攻撃を仕掛けてきた。彼女の力はまさに圧倒的で、紅い弾幕が次々と二人を狙って飛び交う。

「これ、遊びじゃないわね……!」霊夢は御札を手に取り、空中で防御の結界を張った。

「やるじゃないか、フラン!」魔理沙は笑いながら、自分の得意技を発動させた。「ラブスパーク!」

魔理沙の光線がフランに向かって直撃するが、フランは一瞬でそのエネルギーを回避し、まるで遊んでいるかのように軽やかに動き続ける。

「うふふ、もうちょっと本気を見せてよ!」フランは楽しげに叫び、さらに強力な弾幕を展開した。弾幕は狂ったように広がり、地下室の壁や天井を砕き始める。

「やばい、このままじゃ紅魔館が崩れちゃうわ!」霊夢は焦りながらも、冷静に次の手を考えた。

「ならば、私も全力でいく!」霊夢は空中で御札を複数枚取り出し、特大の結界を形成した。「八方鬼縛陣!」

霊夢の結界がフランを取り囲み、エネルギーを封じ込めようとする。しかし、フランは笑いながらその結界の中で弾幕を展開し、さらに巨大な力で結界を破壊しようとしていた。

「まだまだよ!」フランは無邪気な笑顔を浮かべ、全力を尽くして攻撃を続けた。

―――

特訓は数時間に及び、地下室はまさに戦場のような光景を呈していた。壁は崩れ、床には無数のひびが走っていた。しかし、霊夢と魔理沙はフランの圧倒的な力を前にしても、なんとか耐え抜いた。

最終的に、フランは満足した表情を浮かべながら、少し疲れた様子で息をついた。「ふぅ、楽しかったわ。あなたたち、なかなか強いじゃない!」

霊夢は汗を拭いながら笑みを返した。「あなたもね。これで次の異変にも備えられそうよ。」

「フラン、ありがとうな!また今度、遊んでくれよ!」魔理沙も疲れた様子で手を振った。

「うん、いつでも来ていいわよ!」フランは笑顔で二人を見送りながら、地下室の奥に戻っていった。

―――

こうして、霊夢と魔理沙は紅魔館での特訓を終え、次の異変に向けた準備を一歩進めた。フランドールとの戦いは厳しいものだったが、それ以上に彼女の力と無邪気な一面に触れることで、さらに強くなるための刺激を受けたのだ。

「次の異変がいつ来ても大丈夫よ。私たちはこの経験で確実に強くなった。」霊夢は自信に満ちた表情で、紅魔館を後にした。


霧の中の訪問者 第8章 「批判と責任」


幻想郷の空に、薄い霧がまだ漂っていた。霧の少女との戦いが終わり、紅魔館での特訓を終えた霊夢と魔理沙は、次の異変に備えて戻ってきた。しかし、彼女たちが村に足を踏み入れた瞬間、その空気は重苦しいものだった。

村の復興は少しずつ進んでいたが、被害は深刻だった。倒れた家々、枯れ果てた作物、そして疲れ切った村人たち――その全てが、戦いの傷跡をありありと示していた。霊夢たちは、村を歩きながらその光景を目にし、胸の奥に罪悪感を感じ始めていた。

「ここまでひどいとは……」霊夢は低く呟いた。

「異変は解決したけど、こんなにも被害が出てたんだな。」魔理沙も目を細めながら言った。「もっと早く終わらせるべきだったのかもしれないな。」

二人が村の広場を歩いていると、村人たちの視線が次第に集まってきた。その視線には感謝や安心の色はなく、むしろ不安と怒りが入り混じっていた。

「巫女様……。」一人の年老いた村人が、霊夢の前に進み出て声をかけた。彼の顔には深いしわが刻まれ、その目には悲しみが浮かんでいた。「なぜ、もっと早くこの霧を祓えなかったのですか?」

霊夢はその言葉に一瞬言葉を詰まらせた。

「私たちの家は……すべてが霧に飲まれてしまいました。作物も失われ、生活の基盤を失ってしまった。あの時、巫女様が早く異変に気づいていれば、ここまでひどくならなかったはずです。」

その言葉に呼応するように、他の村人たちも次々と声を上げ始めた。

「私の家も、もう住めないくらいに壊されてしまった!巫女様、どうしてもっと早く動かなかったんだ?」

「異変を解決するのが巫女の役目だろう?私たちはあなたに頼っていたんだぞ!」

「祓う力があるなら、なんで私たちを守れなかったんだ!?」

村人たちの批判が、霊夢に向かって次々と投げかけられる。彼らの怒りと失望は深く、幻想郷を守る巫女としての霊夢に対する期待が裏切られたことへの感情が渦巻いていた。

霊夢はその場で立ち尽くし、村人たちの非難の声を受け止めるしかなかった。自分の力が十分でなかったこと、そして彼らの期待に応えられなかったことが、重くのしかかってくる。

「すまない……」霊夢は小さく呟いた。

しかし、その謝罪の言葉は村人たちの怒りを静めるには十分ではなかった。

「すまない、じゃ済まないんだ!私たちは生活を失ったんだぞ!」

「これからどうするつもりなんだ?私たちはこの村を立て直さなければならないんだが、助けてくれるのか?」

霊夢は拳を握りしめ、自分に対する非難の声を聞き続けた。責任感が彼女の心に重くのしかかっていた。幻想郷を守る巫女として、彼女は常に人々の期待を背負っていたが、今回ばかりはその期待を完全には果たせなかった。

その時、魔理沙が一歩前に出た。

「おい、ちょっと待て!」魔理沙の強い声が村人たちの怒声を一瞬止めた。「確かに、霊夢は幻想郷の巫女だ。でも、すべてを一人で完璧に守るなんて無理だろ?あの霧の異変だって、俺たちはできる限り早く対処したんだ!」

村人たちは魔理沙の言葉に耳を傾けたが、まだ不満は残っているようだった。

「でも、それなら最初から防いでくれれば……」

「わかってる!でも、俺たちは全力を尽くして戦ったんだ。霊夢はお前たちを見捨てたわけじゃない。次の異変が起きても、また俺たちが守る。だから、今は立ち直るために一緒に頑張ろうぜ。」

魔理沙の言葉は真摯で力強く、村人たちの怒りを少しだけ和らげたようだった。それでも完全に納得するには至らないが、彼女の言葉は少なくとも、霊夢の努力が無視されていないことを示していた。

霊夢は深く息をつき、村人たちに向かって再び口を開いた。

「今回の異変で、あなたたちがどれだけの被害を受けたか、私もよくわかってる。もっと早く対処できていれば、違った結果になっていたかもしれない。でも、今はこの被害をどうにかしなきゃいけない。これからも、幻想郷を守るために、私は力を尽くす。」

村人たちは静かに霊夢の言葉を聞いていた。そして、その中の一人がようやく口を開いた。「…巫女様、私たちはあなたを責めたくて言ったわけではないんです。ただ、この被害の中でどうしたらいいのか分からなかっただけなんです。」

「分かっているわ。これから一緒に、村を元に戻すために手を貸すから。幻想郷は私たちみんなの場所よ。だから、協力して乗り越えましょう。」

その言葉を受け、村人たちは少しずつうなずき、静かにその場を離れていった。完全に和解したわけではなかったが、少なくとも霊夢の決意は伝わった。

霊夢と魔理沙は、再び村の広場に残され、沈黙の中で立っていた。霊夢はゆっくりと目を閉じ、心の中で自分に問いかけた。

「私は、幻想郷を守れているのだろうか……?」

「お前はやってるさ、霊夢。」魔理沙が肩を叩き、力強く言った。「誰も完璧じゃない。でも、次の異変ではもっと早く対応できるさ。あいつらだって、すぐに分かってくれるさ。」

霊夢は小さく微笑んだ。「ありがとう、魔理沙。次こそは、もっと早く、もっと強くなるわ。」

二人は村を後にし、次の戦いに向けた準備を再び始めることにした。幻想郷を守る責任は重いが、その重みを受け止め、再び立ち向かう決意を新たにしたのだった。


霧の中の訪問者 第9章 「弱音」


幻想郷の霧が薄れ、異変も一段落した頃、博麗神社は静寂に包まれていた。空は澄み渡り、鳥の鳴き声だけが遠くで聞こえる中、霊夢は縁側に座ってぼんやりと空を見上げていた。異変を解決したはずなのに、胸の中に残る虚しさが消えない。

「はぁ……」霊夢は小さくため息をついた。

「霊夢、どうしたんだ?」いつものように元気いっぱいの魔理沙が神社にやってきた。箒から軽やかに降り、霊夢の横に座る。

「なんでもないわ。ただ、少し疲れただけ。」霊夢は目をそらしながら、そう答えた。

「嘘だろ?お前がそんなに弱気になるなんて珍しいな。異変はもう解決したんだから、肩の荷を下ろせばいいじゃないか。」魔理沙は心配そうに霊夢の顔を覗き込んだ。

霊夢はしばらく沈黙していたが、やがて口を開いた。「私、最近思うのよ。結局、いくら異変を解決しても、同じことの繰り返しなんじゃないかって。」

「繰り返しって……?」魔理沙は眉をひそめた。

「異変が起きて、私がそれを解決して、またしばらくすると新しい異変が起こる。私がやっていることに、本当に意味があるのかなって、考えることが増えたのよ。」霊夢はいつもの自信満々な態度とは違い、どこか無力感を感じているようだった。

魔理沙は霊夢の言葉に少し驚いた。霊夢は常に冷静で強い存在だと思っていたが、こんな弱音を吐く姿を見るのは初めてだった。

「霊夢、それは……お前が幻想郷を守ってきた証だろ?異変が繰り返されるのは仕方ないことかもしれないけど、お前がいるからこそ、幻想郷は今も存在してるんだ。」

「でも、守るべき人たちに感謝されるどころか、時には責められるのよ。もっと早く動けとか、もっと力を使えとか。私はただ、幻想郷を守りたいだけなのに……」霊夢の声には、疲れが滲んでいた。

魔理沙は一瞬言葉に詰まった。霊夢の背負う重圧がどれだけのものか、自分でも完全には理解できないが、それでも彼女を支えたいと思った。

「霊夢、俺だってそんな時があるよ。自分が何のために戦ってるのか分からなくなることだって。でもさ、考えてみろよ。お前が守ってるのは幻想郷そのものだ。霧が晴れて、俺たちがこうしてのんびり過ごせるのも、お前が頑張ったおかげじゃないか。」

「……そうかもしれないけど。」霊夢はそう言いながらも、まだ心の中に迷いを抱えているようだった。

「お前はいつも一人で全部抱え込もうとするけど、俺たち仲間がいるんだからさ、もっと頼ってもいいんだぞ。異変を解決するのは霊夢だけじゃなく、俺や他の奴らも一緒にやってるんだ。」

霊夢は魔理沙の言葉に少しだけ微笑んだ。「そうね、でもつい……巫女としての責任を全部自分で背負っちゃうのよ。」

「それが霊夢らしいっちゃ霊夢らしいけどな。でも、一人で全部やる必要なんてない。俺たちが一緒にいる限り、お前が弱音を吐いたって大丈夫だ。」魔理沙は軽く霊夢の背中を叩いた。

霊夢は少し目を細めて空を見上げた。秋風が吹き抜け、木々の葉が揺れる音が耳に心地よい。「ありがとう、魔理沙。あなたがいると、少しだけ気が楽になるわ。」

「へへっ、俺の力を侮るなよ!」魔理沙は元気に笑い飛ばした。

その瞬間、遠くから子どもの声が聞こえてきた。「巫女様!巫女様!」

霊夢と魔理沙が声の方に目を向けると、村の子どもたちが神社に向かって走ってきた。彼らの手には折れた風車や、傷ついたおもちゃが握られている。

「巫女様、これ直してください!」子どもたちは一斉に霊夢に駆け寄り、口々にお願いをする。

霊夢は少し驚いたが、すぐに顔をほころばせた。「あら、そんなことで私を頼るなんて。でも、仕方ないわね。」

子どもたちが手渡したおもちゃを受け取り、霊夢はそれを直すために集中し始めた。その姿を見て、魔理沙はそっと微笑んだ。霊夢が幻想郷の人々にとって、どれだけ大切な存在であるかが、こうした小さな場面にも現れていた。

しばらくして、霊夢は手際よくおもちゃを修理し、子どもたちに返した。「はい、これで元通りよ。」

「ありがとう、巫女様!」子どもたちは笑顔で礼を言い、元気よく走り去っていった。

霊夢はその様子を見送りながら、ふと心が軽くなったような気がした。弱音を吐くこともあるけれど、彼女には守るべき場所と人々がいて、それは何よりも大切なことだった。

「ほらな、霊夢。お前が必要なんだよ、幻想郷にはさ。」魔理沙はニヤリと笑った。

霊夢もようやく、少しだけ笑みを取り戻した。「ええ、分かってるわ。でも、次にまた私が弱音を吐いたら、もう少し話を聞いてちょうだい。」

「もちろん!いつでも聞いてやるさ。」

二人は静かな秋の夕暮れを背に、神社でのひとときを過ごした。霊夢の心には、まだ重圧や不安が残っていたが、それでも仲間がいることに気づいたことで、ほんの少し前向きになれたのだ。
ここまで読むのは疲れただろう?私もだ。
あと2回ぐらいでこの物語は終わらせていただきます。
読んでくれてありがとう!!最後まで楽しみにしててくれ!
とあるAC乗り
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コメント



0.簡易評価なし
1.100どら焼きに対して四面楚歌のたこ焼き削除
なんかちょっと感動した。
2.100夜飴削除
面白かったっ!!!!!
でも個人的にはちょっとずつ出してくれた方が点数いっぱい入れれるし(ん?)あと集中力が切れないから助かるかなー、なんて思ったりもする
でもま、個人の感想なんで、AC乗りさんのやりやすいようにやってくれたらいいっすよ!!