Coolier - 新生・東方創想話

星ときどき大仏

2024/09/19 22:54:38
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「メリー、宇宙から大仏が降りてくる瞬間を見に行かない?」
 ついに相棒が論文にのめり込み過ぎて現実世界へ戻れなくなってしまった。マエリベリー・ハーンの直感はそう告げていた。
 こんな時は学生課に相談するべきか、それとも大学の附属病院に放り込めば良いのだろうか、と笑顔のまま返答を待っている相棒こと宇佐見蓮子を放置してメリーは頭を抱えて唸る。しかし、異端の学説を乱発して学会から目をつけられている上に年会費も払い忘れていそうな蓮子が、時代錯誤な悟りを開いたなどと大学経由で学会に知られてしまったら、蓮子の血と汗とアルコールの成果がこれ幸いと全てせん妄の産物として否定されかねない。
 メリーは大慌てで手元の携帯端末の画面をこすった。
「旅費なら心配しなくても大丈夫。格安の航空券を調べてあるから、この夏休みで稼いだお金と燕石博物誌の売り上げで交通費と宿泊費を払ってお釣りが来るわ」
「夢の中から持ち帰った妖しい品々を二人でインターネット闇市に出品する日々は辛かったわ……でも、あなたの療養費になると思えばその苦労も美しい思い出よ。これ、私が衛星トリフネから帰った後に入っていたサナトリウムの電話番号。条件を満たせば匿名での療養も可能よ」
「ありがとうメリー。あんたとウルトラソニック眠り猫を売りさばいた夏休みを無駄にはしない……って違うわっ!」
「ぐぇっ」
 蓮子はメリーの携帯端末を払いのけると、ほどよく脂のついたメリーの腹を人差し指で優しくどついた。
「説明不足は反省するけど、本当に大仏が降ってくる場所が北海道にあるんだってば。メリーだって普段からこれと大差ない変な話をしているじゃない。で、行くの? 行かないの?」
「……是非もなし」
 般若の面が顔の周囲をグルグル回っていそうな蓮子を前にして、メリーは断るという選択肢を取ることができなかった。
 かくして蓮子の手配はトントン拍子に進み、数日後には琵琶湖に浮かぶメガフロート上に建設された京都国際空港から秘封倶楽部は北の大地へと旅立ったのであった。
 徐々に遠ざかっていく近江国を眼下に眺めながら、メリーは空港の利用者の多くが頭の片隅に秘める謎を口に出した。
「立地上は滋賀県なのに“〝京都〟と名前が付いているのは洛中人でなくとも違和感があるわね」
「千葉県にある老舗テーマーパークが未だに東京と名乗っているのと同じよ」
「全国に小京都が存在するようなものなのかしらね? あと、格安航空券と聞いていたから、てっきり古き遠き関西国際空港から出発するものだと思っていたわ」
「飛行機が離陸してからそれを言うって、やっぱりメリーは暢気ねぇ……この便が安いのは、北海道行きでも北の大地の玄関口である千歳空港ではなく道北の富良野空港行きだからよ」
「富良野ってレトロスポーツのスキーを楽しめるというあの富良野? 私、スキーはヴァーチャルでしかやったことがないわ」
「現代っ子さん、北海道は今は夏よ。スキーを楽しめないオフシーズンだから航空券が安かったの。それに、目的地は富良野よりもさらに奥の芦別よ」
 二人が他愛のない話を続けている間にも飛行機は北へ向かって進み、気がつけば津軽海峡を越えて渡島半島へと差しかかっていた。函館や苫小牧といった昔からの都市は上空からでもはっきりと人の営みを窺うことができるが、かつて北海道のシンボルでもあった地平線まで続く農地には木や草が生い茂り、その大部分が自然へと還っていた。
 安価で天候に左右されない合成食品が工場で生産されるようになったことにより、北海道は食料供給地域としての役割を終えたのだ。
 産業構造の転換に合わせてなし崩し的に行われた神亀の大合併、人村自然分離の原則などの環境保護を建前とした過疎地域の無人化と都市部への移住の奨励によって、今や北海道はおろか首都圏以外の各地域は自然という緑の大海とそこにまばらに浮かぶいくつかの地方都市、といった様相を呈している。大きな痛みを伴う国策事業によって人々は効率的で清潔な都市生活を享受することになった一方、これまで田舎と呼ばれていた泥臭くも芳醇な地域から人が消え、そこで紡がれていた文化は消滅したのであった。
 とはいえ、現代人は失われゆく文化に対して完全に冷淡だったわけではない。新たに生まれた広大な無人地帯を管理し、人の営みが存在していたことを後世に残すために作られた巨大な郷土資料館、それが自然文化保護区だった。
「陸奥国の遠野や出雲国とかマシなところはあるんだけど、全体的にはダメダメね。北海道の蝦夷自然文化保護区なんか文化保護の観点から野生動物の駆除を弓矢と火薬式の猟銃に限定しんだけど、そのせいで頭数コントロールに失敗してエゾジカが増えまくっちゃって。シカどころかそれを食べるクマまで市街地へ押し寄せてきて、自衛隊が毎年のように害獣対策で出動しているのよ」
 蓮子曰くあんなものは文化の墓場である、らしい。メリーは以前、常陸国自然文化保護区からの帰りに文化列車遺産『特急ひたち』の中で聞いた蓮子の言葉を思い出しつつ、隣で自然文化保護区とエゾジカについてこき下ろす相棒の話を右から左に聞き流す。
 富良野空港に到着した二人は乗り換え便を待つ間、ターミナルの屋上のフードコートで札幌ラーメンをすすっていた。合成食品全盛の時代においてご当地グルメなど全国どこでも味わえるのだが、メリーには蒸し暑い京都の大学の学食で食べる時よりも、夏とは思えないほどひんやりとした風に当たりながらすする方が美味しく感じられた。
「いただき!」
「あっ、私の煮玉子! 取っておいたのに!」
 増え過ぎたエゾジカを宇宙に移住させる荒唐無稽な計画にも聞き飽きてきたので、メリーは話を逸らすために蓮子のどんぶりに残っていた煮玉子をかすめ取った。
「悪口ばかり言っているからバチが当たったのよ。それにしても芦別ねぇ。あまり聞いたことのない地名だし、大仏が有名だったなんて知らなかったわ」
「どちらかといえば国内よりも海外での知名度の方が高いからね。芦別が広く知られるようになったのは、海外のネットユーザーの間でバズったことがきっかけだったから」
「なんとなくでっかい大仏が海外ウケしているのは想像できても、それと大仏が宇宙から降ってくることがまったく繋がらないんだけど」
「ふふん。それは行って実際に見た時のお楽しみってことで……えいっ!」
「あっ、私のホタテちゃんが!」
 片手で箸を持ちながら携帯端末で検索をかけようとしていた行儀の悪いメリーの隙をついて、妖鳥蓮子がメリーの海鮮ラーメンに浮かんでいたホタテをさらっていった。
「調べるのは禁止だって言ったでしょ。せっかく知らないんだから、それを楽しまないと」
「ちぇっ」
 意趣返しに成功した蓮子は満足そうにホタテを頬張った。
 芦別行きの地域航空便は高速バスに翼を生やしたようなティルトローター機であった。北海道では新幹線と札幌などの地下鉄を除いて鉄道での旅客輸送はほとんど廃れてしまった代わりに、使われなくなった農地に空港が建設され、電動航空機による高速輸送が盛んになっているのだ。
「蓮子のことだから、てっきり文化列車遺産か無人バスを使うかと思ってたのに、意外ね」
「北海道の広さを舐めない方が良いわ。前に家族旅行で文化列車遺産『夜行特急利尻』に乗ったら、シカと何回も衝突するわ車窓には延々と緑の大地しか映らないわで、しまいには会話のネタも尽きて地獄だったわよ。その点、飛行機はバスよりは若干割高だけど圧倒的に早いし、何より道に飛び出してきたシカにぶつかる心配をしなくて良いわ」
「あなたのシカ嫌いの何割かは、その悲しい家族旅行のせいなのかもね」
 エゾジカへの怨嗟を吐き続ける蓮子と呆れるメリーを乗せ、ティルトローター機はふわりと浮き上がった。この電動航空機に電力を供給しているのは、地方経済復活の目玉として建てられた旭川核融合発電所群だった。
 全国の都道府県と同じく産業構造の変化や自治体の再編などの荒波を受けた北海道であったが、比較的地震の少ない道北に実用化されたばかりの核融合発電所を建設し、そこで生み出される膨大な電力と広大な空き地を武器にして貨物空港を備えた工業団地を道内各地に誘致することに成功していた。
 七転八倒しながらであったが、北海道は他の地域よりもいち早く新しい時代に適応したのだ。
「ふーん。一面に広がる原野を見た時はとんでもない場所に連れて来られちゃったと思ったけど、こうして上から見るとまだまだ栄えているって実感するわね」
 二人を乗せた電動航空機と入れ違いに、新時代を象徴する巨大な貨物飛行船が空港に着陸する様子にメリーが目を見張る。
「涼しい気候を求める移住者だって増える一方だし、一時は廃れていたスキーも昔懐かしのレジャーだって再び脚光を浴びているのよ」
「温暖化のせいで関東以南では雪遊びが出来なくなったものねぇ」
「北海道が昔から観光産業に力を入れていたことが幸いした面もあるけど、そもそも観光に注力することになったきっかけは石炭産業の消滅や林業、漁業の衰退だからね。北海道って何度も経済の危機と立て直しを経験しているのよ」
 眼下に林立する昔ながらのリゾートホテルを見下ろしながら蓮子がつぶやいた。
「私たちが向かっている芦別も石炭産業と共に栄枯盛衰を味わった地域なの」
 明治時代以後の日本の経済発展を支えた北海道の石炭。人々は山や原野を切り開いて炭鉱を掘り、その周囲には労働者が暮らす住宅を作られ、彼らの相手をする店が広がっていった。現在は空知広域行政区の一部である芦別も、北海道各地に生まれた炭鉱都市の一つである。やがて、石油へのエネルギー転換と安価な輸入品に押されて炭鉱に閉山の危機が迫ると、各炭鉱都市は観光業など鉱業に代わる産業の振興に奔走することになったのだ。
「典型的な炭鉱都市だった芦別もレジャー施設を作ろうとしたんだけどね、どこもスキー場とか似たような施設ばかりだったから埋没しないように特色を出そうとしたのよ」
「その特色が大仏?」
 メリーの問いに相棒は答えず、代わりに答えたのは徐々に傾き始めたティルトローター機であった。
『当機はまもなく芦別へと到達しますが、芦別農道空港へ着陸する前に大仏レジャーランド上空を旋回させていただきます』
 不敵な笑みを浮かべる蓮子に促され、メリーは窓から機外を眺め、そして言葉を失った。
『皆様、大自然と大仏様が織りなす雄大な景色をごゆっくりとお楽しみください』
「……何よあれ」
「何って、芦別名物の大仏群よ」
 正面に見えてきたのは、なだらかな丘の中腹に建立された立像の大仏であった。それも一体ではなく七体もあった。大仏はどれも背後の山より背が高く、まさに巨大な仏像という言葉を十二分に体現していた。
「始めは普通の温泉や乗馬場に混じって五重塔を模したホテルや浄土式庭園を作る程度だったんだけど、これが親しみやすいってお年寄りを中心にウケちゃったみたいでね。レジャーランドは一気に宗教観光路線へ突っ走って、集客の目玉として大仏を作ることにしたのよ。さすがに最初は一体だけだったけど」
「宗教風の施設が親しみやすくてウケるだなんて、今では考えられないわね。そりゃ清水寺や善光寺とかには観光客が集まってくるけど、別に信仰を持っているわけではなくて物珍しさやパワースポット巡りとかフワッとした感覚で行っているものだし」
「文明開化からまだ百年とちょっとの時代だったから、特にその頃老人だった人々の心にはまだ不思議で妖しげなものを許容する余地が残っていたのかもね」
 メリーは目を白黒させながら、丘の一等地に立つ原初の大仏を眺めた。中身は鉄筋コンクリートのようだが外側は銅板で覆われており、その穏やかな表情と佇まいには、色こそ違うもののどこか奈良の大仏を彷彿とさせる重厚さが感じられた。
「とはいえ、こういうものは時間が経てば目新しさもなくなるというもの。訪れる観光客の数が緩やかに減ってきた時、当時の経営陣は『観光客が減ったのはインパクトが足りないせいだから大仏の数を増やそう』って考えたらしく二体目の大仏を作ったの」
「いや、振り切れる方向が滅茶苦茶ね……」
 蓮子が指差した第二の仏像は初代の東側に立っており、姿形は初代そっくりながら顔立ちが若干ユーモラスさを増しており、奈良や鎌倉をならった荘厳さよりも親しみやすさを優先させた様子がうかがえた。
「目論見通り、世界に類を見ないニ体の大仏が出迎えるレジャーランドとして話題になって来場者数も回復したのを良いことに、芦別は観光客が減るたびに第三の大仏、第四の大仏と、何かに取り憑かれたように作り続けたていったわ。当然、繰り返される大仏ネタは芦別以外の人たちに飽きられ、というかドン引きされて観光客の数は右肩下がり。ついに二十一世紀を迎えて七体目の大仏が完成した直後にレジャーランドは倒産。多額の借金と大仏が芦別の大地に残されたってわけ」
 三つ目以降の大仏は、まるで芦別とレジャーランドの迷走を象徴するかのような姿だった。若者を取り込もうとしたのかアニメ調にデフォルメされて両手を天に掲げて世界中の観光客を集めようとしている五体目。文化人ウケを狙ったらしくピカソ風にアレンジされて大仏として原型が行方不明の最終作。
 蓮子とメリーを乗せた飛行機は乗客たちにこれでもかと七体の大仏を見せつけた後、目的地の空港へと進路を向けた。
 大仏の飽和攻撃にも次第に慣れてきたメリーが大仏と芦別の迷走劇を総評しようとした時、彼女の視界に入る異様な大仏の数が七体だけではないことに気づいた。
「え……なに、これ」
「全部大仏。いやぁ、実際に自分の目で見ると壮観ね」
 七体の大仏が並んだ丘を中心として、大きさも姿形も良く言えば個性的、率直なところ仏法なのに無法な大仏たちの輪が丘のさらに外側へと広がっていたのだ。ティルトローター機はその大仏群を縫うように飛び、不要となった農道を拡幅して作られた芦別農道空港へと着陸して放心状態の乗客たちを吐き出した。
 二人は機能美に溢れる簡素なターミナルで荷物を受け取り、空港から市街地へ伸びる芦別簡易軌道の車両に乗り込んだ。素朴な作りながらも開拓地の貴重な輸送手段として人々の生活を支えたかつての簡易軌道と同じ名前ではあるが、保存車両や復元車両を走らせている文化列車遺産とは異なって、偉大な先達へ敬意を表して同じ名称を付けられただけであり、運行されているのは北海道唯一の跨座式モノレールだ。
「レジャー施設が解体されたりホテルが売却されたりした後も解体に費用がかかる大仏はずっと放置されていたんだけど、ある時、廃れゆく故郷を憂いた芦別の若者たちが大仏の前でやけくそ気味に踊る観光PR動画をネットに投稿したの。それをとあるSNSのCEOが拡散したら世界中でアホみたいにウケちゃって、あれよあれよという間に芦別は若者が出ていく過疎地から、世界中の観光客が一目大仏群を見ようと集まる観光地になったわけ」
「世界中の人が、ねぇ……」
 メリーは半ば呆れたように車内をぐるりと見渡した。彼女たちを含め、実に多種多様な観光客たちが座席を埋めていた。立ち客はいないものの、北海道の奥まったところにある公共交通機関であることを考えれば、驚異的な乗車率である。
「さすがに昔よりは人気も落ち着いて人は減ったけど、その分アバターロボットを使ったバーチャル旅行も盛んになっているし。それに、今は観光だけじゃなくて個人や企業による大仏建立も人気なのよ」
「大仏建立……?」
 きっかけは芦別の大仏群をバズらせたとあるSNSのCEOが芦別ブームを作り上げたことで調子に乗り、大仏の近くの土地を購入して自身を模した小型の大仏のようなものを建てたことだったらしい。本人の予想に反し、目立ちたがり屋で嫌われ者だったCEOそっくりの像はすぐに折田先生像よろしくイタズラの対象となった。勝手に再塗装されてカラフルになったりプロジェクションマッピングの画板されるなど遊び尽くされた挙げ句、彼の大仏の横にライバル企業の有志たちによって天邪鬼を踏み潰さんとする毘沙門天めいた巨大な大仏が作られてしまったのだ。
「当然、目立ちたがり屋のCEOが黙っているはずもなく、ライバルをやり込めるために新たな大仏を作り……ということが呼び水となって、今や中堅動画配信者が登録者数が大台を突破した記念に自分のアバターをモデルにした大仏を建立したり、建設会社が自社技術の宣伝のためにアールデコ調の大仏を作ったりと、その目的も千差万別になっているらしいよ」
 空知川によって東西に分かたれた芦別では、大仏たちは川の東岸の元田園地帯を埋め尽くし、一部は簡易軌道が走る西岸の市街地まで押し寄せてきている。メリーには無秩序な大仏建立の熱気が、あたかも現実を侵食する異界のように思えた。
「……七体の大仏の狂気が世界規模で増幅されてこの街を覆っているみたい」
「狂気ね、実際それに近いかも……ほら見て、あれが有名な発音ミケ大仏よ」
『ミケダヨー』
「大仏が何を意味する単語だったかもう分からなくなってきたわ」
 世界的アイコンとなった北海道発のヴァーチャルシンガー、発音ミケをかたどったツインテールにネコミミの大仏が空知川の対岸から胡乱な笑顔を向け、手を振っていた。飛行機を乗り継いで北海道までたどり着いた記憶がなければ、いつもの夢の中で不思議な体験をしているのかと錯覚するような光景である。
 しかし、不良サークルの活動で普段から現実離れした体験をしている二人にとって芦別の景色は、ある意味では見慣れた親しみやすさを覚える景色でもある。ただ、それは他の観光客にとって同じ感覚ではないようで、ちょうど二人の後ろの席では狐のように冷ややかな声の少女と、大御所妖怪のように鷹揚な声の主が言い争っている最中だった。
「飯綱丸さまぁ。せっかく北海道まで来たのに、どうしてこんなものを視察しないといけないんですかぁ?」
「ひとえに我が故郷、飯縄町のまちおこしのためである……が、これはない……いや真似できないかな」
「私、素直に夕張か根室へ行こうって言いましたよね。あー、メロン食べたかったなー。花咲ガニ食べたかったなー」
「うるさいな、もう。駅についたら焼きとうびきを買ってやるから」
「そんなんじゃ釣り合いが取れませんよぅ」
「観光によるまちおこしの成功例として、全国から視察が来るらしいんだけど、芦別の路線を真似て上手くいった自治体の話はとんと聞かないわね」
「さもありなん。私と違って事前に芦別を調べることができるのだから、動画なり写真なりを見た時点で諦めて別の候補地を探すべきね」
 こっそり耳打ちする蓮子に、メリーは大きく頷いた。
 他人が騒いでいると逆に自身の心は落ち着いてくるというもので、いつまでも目を白黒させているばかりでは面白くないとメリーは気持ちを切り替えた。狂気から目を背け、答えのある不思議ばかり娯楽として消費する現代において、世界中の奇才たちがこしらえた、何がなんだか分からない作品の集まった奇妙で稀有な地方都市を楽しむことにしたのだ。
 モノレールが簡易軌道の駅兼道の駅であるスターパーク芦別前に到着したため、大勢の観光客と地元民に混じって二人は自走式スーツケースを引き連れて車両を降りた。魑魅魍魎めいた大仏たちの熱気を受け止めるにあたり、ひとまず精神安定剤を求めて駅前にあった北海道のライフラインことセイホーマートへ入店した。蓮子は聞いたこともない銘柄の日本酒の熱燗を選び、メリーは地元の醸造所で作られているというクラフトビールを選んだ。
「タングロン酒って何なの? 飲んでも平気?」
「こんぶエキス入りの熱燗なんだって。魚の骨酒のこんぶ版で、肴いらずの美味しさよ。メリーも飲んでみてよ」
「ん……名前のわりにいけるわね」
 駅前の宿に荷物を預けた蓮子とメリーは酒缶をあおりながら商店街を歩いていた。一昔前なら眉をひそめられていた飲み方ではあるが、酔いにくい新型酒が一般化した今では大抵は目をつぶってもらえる程度のお行儀の悪さである。もちろん、二人が飲んでいるのは旧型酒であったが。
 時折、建物の隙間から大仏が見える商店街は、百年以上は冷凍保存されていたかのような炭鉱都市の若干煤けた香りがした。しかし、どの店も入れ代わり立ち代わり人やロボットが出入りしており、建物の年季の入り具合に比べてうらぶれた印象は受けない。
 道路の端に立っている積雪時に道の位置を示すスノーポール、大仏の方角から流れてくる焼香の匂い、酒に火照った頬を冷ましてくれる風の涼しさ、その全てが知らない遠くの土地を旅しているのだと実感させてくれた。
「夏なのに熱燗が飲めるなんて贅沢ねー」
「まったくねー。おっと、そろそろね」
 空は次第に青の濃さを増しており、目を凝らせばせっかちに光る星さえ見えた。蓮子はその一つを捉えて時間を把握した。
「宇宙から大仏が降りてくるってやつ? 普通の大仏だけでもインパクトが強すぎてすっかり忘れていたわ」
「とりあえず見晴らしの良い場所で待ちましょう」
 二人は空き缶を清掃ロボットに渡すと、羊の毛皮を被った大仏が『星の降る大仏の里あしべつへようこそ!』と書かれた看板を持って客寄せをしているジンギスカン屋に入り、屋上のビアガーデンに腰を据えた。
「入口にあったキャッチコピーといい駅の名前といい、妙に星を推してくるわね。ひょっとして、芦別は大仏が有名になる前は星を売りにしていたの?」
「そうそう。だけど日本の大多数の田舎にとっては『星がきれいに見えます』なんて売り文句、『自然が豊かで空気が美味しいです』並に無個性だったから、大仏ほどの効果はなかったみたい」
「比較対象が異常だっての……あ。あの大仏、七色に光るんだ」
 大仏型配膳ロボットから受け取ったエプロンを着込んだ二人は歓楽街のネオンよろしく多種多様に光る大仏群を肴にビールを飲みつつ、ジンギスカン鍋に合成牛脂を塗りたくって羊肉を焼く準備をした。
「とはいえ、星を売りにしていたのもまた芦別の歴史の一つ、ってことで大仏ブーム何十周年かの記念でアメリカの宇宙開発企業スペースT社とコラボしてテキサス州から打ち上げた大仏をここに降ろすことになったのよ。それも、月を周回させた後に」
「どこから突っ込んだら良いか分からないけど、とりあえずその企業が太っ腹だということは分かったわ」
「向こうも企業なんだから純粋な善意やコスパの悪い宣伝のためにこのコラボに乗ったわけじゃない。ほら、次世代核融合発電の燃料に使うヘリウム3の採掘実験が月で始まったってちょっと前にニュースになってたでしょ。スペースT社は大重量物である大仏を月軌道まで運ぶことで採掘資材の運搬能力を誇示して、その月軌道から核融合発電が盛んな北海道まで大仏を安全に降下させることで電力会社にヘリウム3を含んだ鉱石の輸送に自社ロケットを使うよう売り込んでいるのよ」
「つまり運炭列車ならぬ、運ヘリウムロケットの実証実験ってわけか。銀河鉄道もびっくりね」
 スペースT社ことスペーストゥイーター社は、芦別の大仏群が世界に羽ばたくきっかけとなったSNSのCEOが創業した会社でもある。彼がSNSと電動航空機事業で荒稼ぎした資金を投じて成長させたスペースT社は人類の宇宙進出を牽引しており、結局潰れてしまったSNSも社名と芦別にその足跡を残しているのだ。
 メリーは大仏建立の裏に隠された宇宙開発企業の野望に感嘆しつつ、ジンギスカン屋の道向かいの公園に静態保存されているディーゼル機関車と石炭専用貨車の車列に視線を落とした。石炭産業の終焉と共に観光資源として転職を遂げた彼女たちが、まさか再び鉱物輸送を目の当たりにするとは予想だにしなかっただろう。
 公園には巨大なスクリーンが張られており、仮想航宙図にロケットの現在位置が映し出されている。既に大仏は大気圏への再突入に成功しており、のんびり肉を焼いて口に入れている頃には二人の視界に現れるはずだった。
「だからですね、星降る天魔の山みたいなキャッチフレーズは人間でも思いつくくらい凡庸なものなんですよ! もっとこう、芦別を参考にして飯綱権現が降り注ぐリンゴの里みたいなものをですね……」
「権現は雪や厄災じゃないんだから……お、肉が焦げそうになっているぞ」
「私のラムチョップが!」
「いくらでも頼んでやるから、一つ取られたくらいで叫びなさんな」
 先ほどの視察組もジンギスカンを食べながら大仏再突入を見守ることにしたようで、秘封倶楽部の隣のテーブルで仲良く肉を焼いていた。蓮子とメリーも彼女たちに習って配膳された肉を焼き始めることにした。
「子羊肉のラム、成羊肉のマトン、ラムとマトンの各部位に冷凍成型肉風まで何でもござれよ」
「全部合成物だけどね。私、羊肉はプロヴァンス風ラムローストしか食べたことがないのだけれど、ジンギスカンだと食べやすいのはどれかしら?」
「このセレブめ……普通にラムのタレ漬け肉でいいんじゃない? 羊肉特有の臭みが緩和されているらしいから。まあ、合成物は天然物より食べやすく生成されているから、いきなりマトンでもいいかも」
「あ、本当だ。全然臭くない」
 二人は他の客たちと同じようにジンギスカン鍋の中央の盛り上がった部分で肉を焼き、肉から滴り落ちた汁で外周部の溝に配置した野菜を煮た。その一風変わった調理風景は、あたかも石炭を掘ることで生まれたうま味が周辺地域を潤していくようだなと、旧型酒のアルコールでほど良く出来上がったメリーは料理に舌鼓を打ちながら思った。
「ねえ。ビールを飲みながら羊肉を食べるとお腹が詰まっちゃうらしいよ」
「羊の脂は融点が高いせいで体内で固まるってこと? まさか! 脂は固体でも消化酵素で分解されるのよ。お腹を壊したのは単純に食べ過ぎか、ビールの飲み過ぎよ……あ、来た」
 笑いながらジョッキをあおった蓮子がそのままの体勢で固まった。彼女の視線の先で、米粒ほどの大きさの大仏が、逢魔が時に近づきつつある紺青色の空を翔けていた。
「天翔ける大仏とは驚きね。てっきりロケットが降りてきて、その中から大仏が姿を現すのかと思っていたわ」
「その驚きはスペースT社の目論見通りね。この打ち上げで使われたスペースT社のスターカーゴは、ロケットを噴射しながら降りて貨物室ごと垂直着陸することができるけど、今回はインパクト重視ということで大仏を空中で放出して、分かれたロケットは大樹国際宇宙港へ着陸することになっているわ。大仏の方も単体で大気圏再突入ができるように特殊なコーティングが施されているんだとか」
 蓮子が興奮しながら説明している間にも、減速用ロケット付きパラシュートを背負った大仏はぐんぐん芦別へ近づいてくる。その大仏が着陸する空知川東岸には専用の台座が既に建設されており、作業用の無人重機が整然と並んで最後の仕上げに備えていた。
 芦別の人々は一人、また一人と新たな大仏の接近に気づき、ビアガーデンの客たちも肉が焦げるのも忘れて空を見上げた。その中で、一人だけ異質なものを捉えている者がいた。彼女の顔の周りに結界のスキマが浮かんでいることに相棒のメリーも気づいた。
「調子が悪いの? やっぱり脂がお腹の中で固まったんじゃ……?」
「むしろジンギスカンとお酒のおかげで絶好調よ」
 蓮子は鳶色の瞳を輝かせた。
「大仏様の横に座標が見えるの」
「旧型酒の飲み過ぎね」
「違うってば! 変な目を持ってるメリーがそれ言う? 私って月を見ると今いる場所が分かるでしょ。あの大仏は一時的とはいえ月を周回して衛星となったから、その影響で座標が見えるようになったのかも」
「座標って、大仏の?」
「たぶん!」
 蓮子は上気してメリー、月、大仏、公園のスクリーンを見比べていたが、何かに気付いたように途中から大仏と公園のスクリーンを交互に見始めた。
「あれ……座標がちょっとずつずれてない?」
「私に言われても分からないわよ。少し風に流されているだけでしょ」
「スラスターもあるから大丈夫だとは思うけど……やっぱり私たちの方へ近づいている気がするなぁ」
 着陸予定地点の空知川東岸は人払いがされているようだが、市街地がある西岸はビアガーデンで飲み食いできる程度には通常営業であった。距離が離れていることに加え、数十年も死傷事故を起こさず使われてきた着陸システムであるという安心感もあるのだろう。それに、観光客に金を落とさせる絶好の機会だというのに、万が一のために商店街を空にするなど観光協会が良い顔をするはずがない。
「大仏がどうかしたのか?」
 胸騒ぎを覚える二人に、落ちてくる大仏にあまり興味がなさそうに食事を続けていた隣の視察組の片割れが鷹揚に声をかけてきた。蓮子の瞳に映っている映像をどうにか自分も見ようとしたメリーが、相棒の頭をベタベタ触っている様子があまりに奇異に映ったらしい。
「あ……実は大仏の落下地点がずれているような気がして」
「ほーん。どれどれ」
 視察組の片割れは何故か持っていた三脚に測量機器のようなものを据え付け、大仏を観察し始めた。蓮子とメリーは二人に劣らない奇抜な行動を取るキャリアウーマン風の女性を黙って見守った。なお、視察組のもう片方は黙々と肉を食い続けている。
「確かにずれかかってはいるが、スペースT社も無策ではなかろう。最大限失敗してもせいぜい空知川へボチャンするだけで、芦別市街地には影響あるまい」
 測量機器から目を離した女性は裸眼で大仏を見上げ、不敵な笑みを浮かべた。その時、メリーは彼女の真紅の瞳が蓮子のものと同じ輝きを見せていることに気づいた。さらには彼女たちの周囲に結界のスキマが生じ始めているではないか。
「あなたはいったい……?」
「今はしがない旅人さ。だが、ここで大仏に恥をかかせ、芦別に集った人々をがっかりさせては、仏法と衆生を守護する権現の名折れ。典、やるぞ!」
「えーっ! あんなまがい物は放っておけばいいじゃないですか。それにここは幻想郷ではないんですよ。飯綱丸様の力だって……」
「私を甘く見るな。あの程度のもの、外の世界であっても操ってみせるさ。いくぞ!」
「まだ肉が残ってるのに!」
「後で二軒目に連れて行ってやるから!」
 アオザイ風の服を着た狐っぽい少女は悲鳴と共に姿を消した。同時に、女性の紺を基調としたスーツの背中が裂け、漆黒の翼が現れた。
 蓮子とメリーは呆気にとられて女性を見たが、周囲の観光客たちはぼんやりと大仏を見上げ続けていた。配膳ロボットも含め、ビアガーデンに異様な存在が現れたことに、秘封倶楽部以外に誰一人として気づいていなかった。
「我々を視ることができる珍しき人間よ。飯綱権現の星空を操る程度の能力、とくとご覧あれ!」
 飯綱丸は蓮子とメリーへふてぶてしく笑いかけると、翼を広げて紺青色の空へと昇っていき、見えなくなった。
 しばらくして、大仏は何事もなかったように着陸予定地点の台座へ降り立った。
すぐさま無人重機たちが群がり、背中のパラシュートを外し、大仏を足元の台座へ固定する作業を始めた。
『ミケダヨー』
 発音ミケ大仏の新しい仲間を歓迎する声で二人が我に返った時、既にレーザー加工機によって大仏に目が入れられ、この日のためにアメリカ中から集まったという高名な僧侶たちによる開眼供養が執り行われていた。
 ビアガーデンの客たちの視線もジンギスカン鍋に戻っており、どのテーブルも焦げてしまった肉や野菜の処理に泣いていた。
 蓮子とメリーも黒ずんでしまった肉を空いた皿に移動させ、新たな肉が焼けるまでの間、少しぬるくなってしまったビールを飲むことにした。
「何だったんだろう、あの人たち」
「飯綱権現を名乗っていたわよね。長野の飯綱三郎天狗のことかな」
「とすると、一緒にいたのは従者である管狐かしら」
 すぐ横に置かれていたはずの三脚は影も形もなかった。彼女たちは料理を注文するたびに電子マネーで先払いしていたのか、はたまた最初から認識されていなかったのか、肉やコップがまだ残っていた隣のテーブルは大仏型ロボットがさっさと片付けてしまった。もちろん、青い顔をした店員が駆けつけて食い逃げが起きたと騒ぐこともなかった。
「でも、名のある大天狗が変な……いや異常な……とにかく、こんな観光地を視察するなんて意外な感じね」
「実は飯綱信仰の中心である飯縄山周辺や戸隠、鬼無といった山あいの地域は長野の他の山村とは違ってまだ無人にはなっていないそうよ」
「あら。てっきりあの近辺は長野市に合併されてゴーストタウンになっているのかと思ってたわ」
「人村自然分離の原則が猛威を振るったせいで、日本の田舎は消滅したと思われがちなんだけど、しぶとく生き残っている場所もあるのよ。この芦別のようにね」
 すっかり日が落ちて闇の増した空に花火が打ち上がり、ジンギスカン鍋を挟んで向き合う二人と大仏たちを照らし出した。
 泰平の世や人々を仏教によって救うシンボルとして建立された古来の大仏とは違い、芦別の大仏たちは観光客を集めるためといった俗物的な目的で作られ続けている。それでも、大仏のおかげで観光客と金が集まり、炭鉱産業と共に滅んでいたかもしれない土地で未だに人の営みが行われ、変質しながらも文化が紡がれている。
 宇宙経由でやって来たばかりのテキサス生まれの大仏、原初の七体の大仏、発音ミケ大仏、目立ちたがり屋のCEO似の大仏。メリーの目にはもはや有象無象の大仏たちがまがい物とは映っておらず、奈良や鎌倉の大仏と同じように芦別周辺の衆生を救うために奮闘しているように見えた。
「ありがとうね」
「え?」
「私一人だったらこんな場所には絶対に来ることはなかったわ。今日の体験はあなたのおかげよ」
「褒められているんだか、けなされているんだか……とりあえず、どういたしまして。次はどこへご案内いたしましょうか?」
「飯縄山に決まっているわ。この国にはまだまだ元気な田舎があるんでしょ?」
 人もモノも都市へ集約し、地方は縮約していくばかりの時代において、田舎とはもはや墓場と同じ意味合いで扱われるか、自然文化保護区のような展示ケースの中に収められた過去の存在として扱われることが多い。
ところがどっこい、今でも土地にかじりついて生きる人々が元気に暮らしている場所もあるのだ。
 効率的で快適な環境と引き換えに曖昧なものを否定して面白みを失ってしまった現代の都会とは違って、泥臭く不便で不合理な田舎には、ガチガチに管理された都市部よりも胡乱なものを受け入れる余地がある。そこには秘封倶楽部に暴かれるのを待っている謎もあるはずだと、二人は確信していた。


 
この作品はフィクションなので、実際の芦別へ行っても大仏ではなく一体の大観音像しか見ることができません。
驢生二文鎮
https://x.com/buntinway
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コメント



0.簡易評価なし
1.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
2.90福哭傀のクロ削除
どことなく秘封のふたりが観光?しているさまが某笑顔な動画サイトにありそうな懐かしい雰囲気を感じました。どことなく出てくるワードに皮肉というか作者様のセンスを感じてくすりとさせてもらいました
3.80名前が無い程度の能力削除
ぶーぶー文句言う典好き
面白観光秘封で楽しかったです
4.90東ノ目削除
鰯の頭も信心からというか、成金みたいな経緯としてもそこに信仰生まれるのはいい話……いい話なんですかね。芦別がどういうところか気になったので調べたのですがキャッチフレーズが飯綱丸っぽいとは思ったもの現実のそれからどうやってこの話思いついたんですかという感想でした
5.100名前が無い程度の能力削除
ちょいシュールで生活感というかリアリティもあるSF世界観好きです。
6.100南条削除
面白かったです
魔境と化している芦別市の歴史に心打たれました
都市まるごと京都大学になったかのような悪乗り感がたまりませんでした
7.80名前が無い程度の能力削除
未来の北海道に対する幻視強度が高すぎて面白かったです。
8.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです
9.80名前が無い程度の能力削除
物語の端々から、日本の人口減少による過疎化の深刻な様子や、しかもそれらはすでに過去のモノとしての扱いになっている事に一種の虚無感や無常感を覚えました。しかし、そんな中でも最後の、山間のへき地でも未だに住んでいる人がいるという言葉にある意味、希望が持てました。これから日本が迎える超過疎化を改めて考えさせられた良いお話でした。