メリーが世間に見せる私的な顔は
普段の公的な顔よりも
賢く見え、微笑ましい
「・・・メリーっ」「どこにいっちゃたの」
「はぁ。はぁ。ゴホっ,,ゴホっ,,」
蓮子は走っていた
「すいませんどいてください! いてッ! すいません...」
消失を探して
「メリーっ!聞こえてるなら返事をしてーっ!」
──ここは太平洋上にある[「GREEN FLOAT」]
太陽の恵みを受けながら、人々は暮らしていた。
「もしかして...メリーが好きな、タワーの''あの場所''に...」
40年ほど前から移住者が増加し、蓮子とメリーは4年ほど前にこの地へ足を踏み入れた。
台風などの影響がほとんどなく、一年中気温が一定なこともありとても過ごしやすい都市である。
「ハァハァ...陸の森にタワーへ繋がる近道があったはず...」
赤道直下に浮かぶ『環境アイランド』とも呼ばれ、まるで大きなマグネシウム合金でできた睡蓮が海に浮かび成長しているかのような形を成している。中心には巨大なタワーがあり、「空中部分」と「タワー部分」に分かれていた。蓮子とメリーは地上から700〜1000m高さのある「空中部分」にあるカフェによく訪れる。
「しまった..タワーの裏口は確か関係者以外立ち入り禁止だったわね。正規のルートで行くしか…」
二人は、よく「空中部分」のカフェで待ち合わせをしていた。カフェから見える景色は絶景で、メリーはよく太平洋に広がる洪波洋々と広がる海を眺めながらコーヒーを嗜んでいた。
人に優しい 規模 距離 環境
睡蓮のように 増殖する アーバンビレッジ
「世界中の先進テクノロジーが集結してるのはいいことだけど...基準が''植物質''であることゆえか....」
陸の森タワー裏口付近から正面入り口へ向かう蓮子は、海上人工地盤を基礎とし、いくつもの層で作られた地面の感触を感じていた。
自然に溶け込んで共生し、生態系として共に成長していく。ここ「GREEN FLOAT」は海上自然環境都市である。
自然とのふれあい 文化的で緩やかに流れる時間 快適で健康的な生活
「あった!」
緩やかな階段を登り、自動ドアが開くと、タワー入り口へと入っていく。
中心にあるエレベーターへ行き、ボタンを押して降りてくるのを待った。五つあるエレベーターは使用する人が多く、下まで降りてくるのに数分かかることがある。蓮子は、切らした息を整えながら近くにある無料給水所で持っていた水筒に水を入れた。
水が滴っていく。冷たく。悲しく。
循環し
せかいを維持する
透明な愛
ーその時だった。
「蓮子?」
「え、メ....メリー.....メリー!!!」
目の前には探していたメリーの姿があった。
蓮子は涙ながらにメリーとの再会を喜んだ。
「メリー!!探してたんだよー!!!!」
「ありがとう蓮子。会えてよかった。 ...........再会できたし、上のカフェでゆっくり話さない?」
「うん.... はなす....!」
心からホッとした。蓮子とメリー二人揃ってこそ 「秘封倶楽部」なのだから。
二人はひとまず空中部分のカフェに行くことになった。
廻り。廻る。
どこへでも。どこからでも。
── 『82階 空中部分』
「やっと着いた〜!」
エレベーター自体はとても快適かつ早い速度で上昇するが、階数が多く、使用する人が多いため、止まることが多く上層階ほど時間がかかってしまう。
二人はカフェがある場所へ向かった。
「いらっしゃいませ。何名さまですか〜?」
「2人です」
「ご案内いたします」
「あっ、すいません。外が見える席...空いてます?」
「空いております。すぐにご用意いたしますね」
そこは二人にとって特別な場所だった。
「あちらのお席へどうぞ〜」
このタワーのほとんどの場所が全面ガラス張りになっており、GREEN FLOATの陸の森はもちろんのこと、その方向から見える「海の森」、隣接する海上都市を超えて一面に広がる海を眺めることができる。
席についたメリーは一息つき、ボソボソと呟く。
「13年前、ビットコインが発行上限を迎えて新規発行が止まったわよね」
「えっ..あっ、あ〜 2100万枚発行されたんだっけ?」
唐突な話題に蓮子は戸惑いつつも受け答えていた。
「ビットコインのマイニングは4年に1度、半減を続けていたの」
「それって半減期のこと?」
「そうよ。発行総量を抑えることで価格急落を避け、価格上昇の可能性を上げてたのよ」
蓮子は若干、首を傾げた。その話をしているメリーの意図が分からなかったからだ。疑問を抱きながらも、先ほど店員が持ってきた冷水をごくりと飲んだ。
メリーは、蓮子の気持ちを受け取ったかのように話し出す。
「私たちも、GREEN FLOATに来て4年ほどたったわよね。3年前には富士山が大噴火したり、世界は興味深いことで溢れているわ。」
「ねぇ蓮子。。。新しい場所へ行ってみない?」
「.........」
「え.......?」
あまりにも急すぎる展開に驚きを隠せない様子でいた。一瞬、周りの雑音がその言葉に打ち消され聞こえなくなるるほど、衝撃的で唐突すぎた。そこまで馴染み深い地というわけでもないが、二人はここで4年程過ごしたのだ。
しかし、蓮子の「興味」は少しずつだが、湧いてきていた。
「そうね。メリーの提案に乗るわ。そういえば、注文したケーキ遅いわね」
「今日は人が多いから、時間がかかってるかもね。」
蓮子は、メリーが目の前にいる事実に安心し、落ち着いていた。
無防備な姿。 どこまでも。 どこまでも。
浮かび上がる ふたりの過去
うみのように。 雪のように。 涙のように。
── 翌日
二人は水辺部分のビーチリゾートに訪れていた。内海には、たくさんの魚や貝が住んでおり、ゆったりと話をしたい二人にとって過ごしやすい場所だった。
「ねぇ、メリー...」
「GREEN FLOATのイノベーションとしてある、''機械文明至上主義の限界を知り、自然のシステムを学ぶ''って...なんだか、''地球は人工的な機械もなく動き、継続して人が生きていける場所である''というものの具現化のようだと思わない?」
「人工的な装置だらけなのにね」
「これも全て自然によるものね」
「あら、あれはゾウガメかしら」
「カメだー!!」
「背甲が黒色っぽくて大きくなっている...アルダブラゾウガメかしら」
「ア..アルダ..ブ....なんて?」
「内陸の低木林から来たのかしら。昼間は日陰で過ごすことが多いはずなのに、日光浴なんて珍しいわね。」
蓮子は、お昼過ぎの暑くも寒くもない人工的に設定された気温の空気を感じながら、二年ほど前に体感した一面桜の景色を思い出していた。
「確かあの時も...こんな感じの時間帯だったかも...」
「・・・」
「そういえば先日カフェで話したことなんだけど...」
「あら、覚悟は決まった?」
── 数日後、「GREEN FLOAT」から出発するために、二人は海の森にある「海の森第三埠頭」に来ていた。この埠頭には「OCEANSPIRAL行き」の船が一ヶ月に数回やってくる。この埠頭は行き来する人が比較的多く、二人は乗船の列に並んでいた。
「たしか9時15分発の船だったわよね」
「そのはずよ」
海の心地よい波音と涼しい風を感じながら船の到着を待っていると、近くに白と青を基調とした船がやってきた。船が来たことで波の音が立ち、まるで船の到着を知らせるようだった。
船が到着すると、船内の入り口から真っ直ぐな道が作られる。埠頭は海面から少し高い場所に作られており、船内へとスムーズに乗り込むことができる。道ができると、まずは「OCEANSPIRAL」からの乗船者が続々と船から降りてきた。中には研究者や技術者などといった人たちも混じっており、ほとんどの人が降り終わるまでに数分の時間がかかる。
すると、アナウンスがかかる。
ピー ガサガサッ ガクン
「お待たせいたしました。只今よりOCEANSPIRAL行きの乗船を開始いたします。列の先頭から順番にお乗りください♪」
普段の公的な顔よりも
賢く見え、微笑ましい
「・・・メリーっ」「どこにいっちゃたの」
「はぁ。はぁ。ゴホっ,,ゴホっ,,」
蓮子は走っていた
「すいませんどいてください! いてッ! すいません...」
消失を探して
「メリーっ!聞こえてるなら返事をしてーっ!」
──ここは太平洋上にある[「GREEN FLOAT」]
太陽の恵みを受けながら、人々は暮らしていた。
「もしかして...メリーが好きな、タワーの''あの場所''に...」
40年ほど前から移住者が増加し、蓮子とメリーは4年ほど前にこの地へ足を踏み入れた。
台風などの影響がほとんどなく、一年中気温が一定なこともありとても過ごしやすい都市である。
「ハァハァ...陸の森にタワーへ繋がる近道があったはず...」
赤道直下に浮かぶ『環境アイランド』とも呼ばれ、まるで大きなマグネシウム合金でできた睡蓮が海に浮かび成長しているかのような形を成している。中心には巨大なタワーがあり、「空中部分」と「タワー部分」に分かれていた。蓮子とメリーは地上から700〜1000m高さのある「空中部分」にあるカフェによく訪れる。
「しまった..タワーの裏口は確か関係者以外立ち入り禁止だったわね。正規のルートで行くしか…」
二人は、よく「空中部分」のカフェで待ち合わせをしていた。カフェから見える景色は絶景で、メリーはよく太平洋に広がる洪波洋々と広がる海を眺めながらコーヒーを嗜んでいた。
人に優しい 規模 距離 環境
睡蓮のように 増殖する アーバンビレッジ
「世界中の先進テクノロジーが集結してるのはいいことだけど...基準が''植物質''であることゆえか....」
陸の森タワー裏口付近から正面入り口へ向かう蓮子は、海上人工地盤を基礎とし、いくつもの層で作られた地面の感触を感じていた。
自然に溶け込んで共生し、生態系として共に成長していく。ここ「GREEN FLOAT」は海上自然環境都市である。
自然とのふれあい 文化的で緩やかに流れる時間 快適で健康的な生活
「あった!」
緩やかな階段を登り、自動ドアが開くと、タワー入り口へと入っていく。
中心にあるエレベーターへ行き、ボタンを押して降りてくるのを待った。五つあるエレベーターは使用する人が多く、下まで降りてくるのに数分かかることがある。蓮子は、切らした息を整えながら近くにある無料給水所で持っていた水筒に水を入れた。
水が滴っていく。冷たく。悲しく。
循環し
せかいを維持する
透明な愛
ーその時だった。
「蓮子?」
「え、メ....メリー.....メリー!!!」
目の前には探していたメリーの姿があった。
蓮子は涙ながらにメリーとの再会を喜んだ。
「メリー!!探してたんだよー!!!!」
「ありがとう蓮子。会えてよかった。 ...........再会できたし、上のカフェでゆっくり話さない?」
「うん.... はなす....!」
心からホッとした。蓮子とメリー二人揃ってこそ 「秘封倶楽部」なのだから。
二人はひとまず空中部分のカフェに行くことになった。
廻り。廻る。
どこへでも。どこからでも。
── 『82階 空中部分』
「やっと着いた〜!」
エレベーター自体はとても快適かつ早い速度で上昇するが、階数が多く、使用する人が多いため、止まることが多く上層階ほど時間がかかってしまう。
二人はカフェがある場所へ向かった。
「いらっしゃいませ。何名さまですか〜?」
「2人です」
「ご案内いたします」
「あっ、すいません。外が見える席...空いてます?」
「空いております。すぐにご用意いたしますね」
そこは二人にとって特別な場所だった。
「あちらのお席へどうぞ〜」
このタワーのほとんどの場所が全面ガラス張りになっており、GREEN FLOATの陸の森はもちろんのこと、その方向から見える「海の森」、隣接する海上都市を超えて一面に広がる海を眺めることができる。
席についたメリーは一息つき、ボソボソと呟く。
「13年前、ビットコインが発行上限を迎えて新規発行が止まったわよね」
「えっ..あっ、あ〜 2100万枚発行されたんだっけ?」
唐突な話題に蓮子は戸惑いつつも受け答えていた。
「ビットコインのマイニングは4年に1度、半減を続けていたの」
「それって半減期のこと?」
「そうよ。発行総量を抑えることで価格急落を避け、価格上昇の可能性を上げてたのよ」
蓮子は若干、首を傾げた。その話をしているメリーの意図が分からなかったからだ。疑問を抱きながらも、先ほど店員が持ってきた冷水をごくりと飲んだ。
メリーは、蓮子の気持ちを受け取ったかのように話し出す。
「私たちも、GREEN FLOATに来て4年ほどたったわよね。3年前には富士山が大噴火したり、世界は興味深いことで溢れているわ。」
「ねぇ蓮子。。。新しい場所へ行ってみない?」
「.........」
「え.......?」
あまりにも急すぎる展開に驚きを隠せない様子でいた。一瞬、周りの雑音がその言葉に打ち消され聞こえなくなるるほど、衝撃的で唐突すぎた。そこまで馴染み深い地というわけでもないが、二人はここで4年程過ごしたのだ。
しかし、蓮子の「興味」は少しずつだが、湧いてきていた。
「そうね。メリーの提案に乗るわ。そういえば、注文したケーキ遅いわね」
「今日は人が多いから、時間がかかってるかもね。」
蓮子は、メリーが目の前にいる事実に安心し、落ち着いていた。
無防備な姿。 どこまでも。 どこまでも。
浮かび上がる ふたりの過去
うみのように。 雪のように。 涙のように。
── 翌日
二人は水辺部分のビーチリゾートに訪れていた。内海には、たくさんの魚や貝が住んでおり、ゆったりと話をしたい二人にとって過ごしやすい場所だった。
「ねぇ、メリー...」
「GREEN FLOATのイノベーションとしてある、''機械文明至上主義の限界を知り、自然のシステムを学ぶ''って...なんだか、''地球は人工的な機械もなく動き、継続して人が生きていける場所である''というものの具現化のようだと思わない?」
「人工的な装置だらけなのにね」
「これも全て自然によるものね」
「あら、あれはゾウガメかしら」
「カメだー!!」
「背甲が黒色っぽくて大きくなっている...アルダブラゾウガメかしら」
「ア..アルダ..ブ....なんて?」
「内陸の低木林から来たのかしら。昼間は日陰で過ごすことが多いはずなのに、日光浴なんて珍しいわね。」
蓮子は、お昼過ぎの暑くも寒くもない人工的に設定された気温の空気を感じながら、二年ほど前に体感した一面桜の景色を思い出していた。
「確かあの時も...こんな感じの時間帯だったかも...」
「・・・」
「そういえば先日カフェで話したことなんだけど...」
「あら、覚悟は決まった?」
── 数日後、「GREEN FLOAT」から出発するために、二人は海の森にある「海の森第三埠頭」に来ていた。この埠頭には「OCEANSPIRAL行き」の船が一ヶ月に数回やってくる。この埠頭は行き来する人が比較的多く、二人は乗船の列に並んでいた。
「たしか9時15分発の船だったわよね」
「そのはずよ」
海の心地よい波音と涼しい風を感じながら船の到着を待っていると、近くに白と青を基調とした船がやってきた。船が来たことで波の音が立ち、まるで船の到着を知らせるようだった。
船が到着すると、船内の入り口から真っ直ぐな道が作られる。埠頭は海面から少し高い場所に作られており、船内へとスムーズに乗り込むことができる。道ができると、まずは「OCEANSPIRAL」からの乗船者が続々と船から降りてきた。中には研究者や技術者などといった人たちも混じっており、ほとんどの人が降り終わるまでに数分の時間がかかる。
すると、アナウンスがかかる。
ピー ガサガサッ ガクン
「お待たせいたしました。只今よりOCEANSPIRAL行きの乗船を開始いたします。列の先頭から順番にお乗りください♪」
秘封倶楽部は最近ハマったのでまだ自分では掘り下げられていないんですが、ちょっと小難しい感じの設定がしっかりした話が好きなので、とても好みでしたしかんざし様の文体もすっきりしていて読みやすかったです!