「あ」
うつらうつら意識が定まらず、片足夢に突っ込んだ状態で“目”を握ってしまったらしい。
生モノが内側から爆ぜる光景が視界の隅に広がる。すぐさま、嫌な音と振動が伝わってきた。
あちゃー、と思ったときには既に遅く。部屋一面は、まるでトマト缶をひっくり返したかのような様子。
辛うじて衣服の切れ端などが混ざって見えるのだが、これでは誰を壊してしまったのかは判別できない。
困ったな、恐らくコイツは館のものではないぞ。そもそも妖怪か人かも分かりやしない。
というのも、前日は多くの客を招いたどんちゃん騒ぎ。私もパーティを楽しみ、記憶がなくなるまで酒を吞んだからだ。
「あぅっ。ヴぇっ」
とりあえず咲夜か妖精メイドを呼ぼうかなと声を上げたつもりが、いかにも舌がもつれたという音が出た。
酒を飲みすぎたのは確かなようだった、頭も痛いし身体の動きもひどく鈍い。しかし流石は紅魔館のメイド長、そのような呼び掛けにも関わらず咲夜は現れた。
「妹様、お水をお持ちいたしました」
うん、ありがとう。やっぱり貴女は気が利くわ。でも今はそうじゃないの。
彼女からグラスを受け取り、一気に水を飲み干す。先ほどよりも少しはマシになった気がする。
再び被害者に目をやるが、一向に再生する気配はない。少なくとも高位の妖怪ではないだろう。
となると人間か、普通の妖怪か。
「ねえ咲夜?アレは誰だったか分かる?」
あんな肉片だけ見せられて分かるものなのか?と思いつつ、一抹の希望を胸に咲夜へ疑問を投げかけた。
すると咲夜は、なぜそんな質問をと首をかしげながらも散らばった肉塊を観察しはじめる。
「新鮮ですね」
「ついさっき、寝ぼけてやっちゃったのよ」
そうでしたか、なんて納得をしながら肉片をつつく咲夜。ていうか、手慣れてないかしら。
「そういえば、昨日は地霊殿から来られた方とご一緒ではなかったのですか?」
あっけからんと言われ、少しだけ昨夜の記憶が蘇る。確か、パーティを抜け出してこいしちゃんと地下に向かったのだった。
話がはずんで、私の部屋を紹介するとかなんとか。ああもしや。なんと、私はうっかり彼女を殺してしまったのか。南無。
「あはは~。私のこと呼んだ~?」
そうかと思っていれば私たちの後ろから、快活な声を携えてこいしちゃんがやってきた。
うわ、バラバラ殺人!フランちゃん異常者じゃん、私とお揃い~!などとペラペラ発言している。
咲夜は無言でナイフを振るおうとしていたが、慌てて制止させる。
一方のこいしちゃんは興味津々な様子で、まるで昆虫でも見るかのように死体を眺めている。
「前から気になってたんだ~、フランちゃんの力っておもしろー!」
一瞬の沈黙が、部屋を支配する。よく見ると、彼女も酔っていた。
なんてことだ、真っ白い顔の酔っ払いなど存在するのか。あんまり私がジロジロ見つめたからか、こいしちゃんもコッチを見返してきた。
人形みたいに綺麗な顔だななんて勝手に評価していると突然彼女が笑い始めたものだから、私もつられて笑ってしまう。
「ワハハハハ」こいしちゃんは、まるでキチガイのように笑いはじめた。
「ワハハハハ」しんでしまう、しんでしまう。これでは酸欠だ。
私たちは呼吸を忘れて腹を抱えてのたうち回った後、一緒に玩具のお片付けを始めた。
「もう、よろしいので?」
メイドの声は、もう聞こえていなかった。
十六夜咲夜は、二人から離れて業務に戻る。
パーティの出席者は、みな元気そうに帰っていった。館の主人も満足そうだ。
「結局、あれは誰だったのかしら?」
答えを知るのは
うつらうつら意識が定まらず、片足夢に突っ込んだ状態で“目”を握ってしまったらしい。
生モノが内側から爆ぜる光景が視界の隅に広がる。すぐさま、嫌な音と振動が伝わってきた。
あちゃー、と思ったときには既に遅く。部屋一面は、まるでトマト缶をひっくり返したかのような様子。
辛うじて衣服の切れ端などが混ざって見えるのだが、これでは誰を壊してしまったのかは判別できない。
困ったな、恐らくコイツは館のものではないぞ。そもそも妖怪か人かも分かりやしない。
というのも、前日は多くの客を招いたどんちゃん騒ぎ。私もパーティを楽しみ、記憶がなくなるまで酒を吞んだからだ。
「あぅっ。ヴぇっ」
とりあえず咲夜か妖精メイドを呼ぼうかなと声を上げたつもりが、いかにも舌がもつれたという音が出た。
酒を飲みすぎたのは確かなようだった、頭も痛いし身体の動きもひどく鈍い。しかし流石は紅魔館のメイド長、そのような呼び掛けにも関わらず咲夜は現れた。
「妹様、お水をお持ちいたしました」
うん、ありがとう。やっぱり貴女は気が利くわ。でも今はそうじゃないの。
彼女からグラスを受け取り、一気に水を飲み干す。先ほどよりも少しはマシになった気がする。
再び被害者に目をやるが、一向に再生する気配はない。少なくとも高位の妖怪ではないだろう。
となると人間か、普通の妖怪か。
「ねえ咲夜?アレは誰だったか分かる?」
あんな肉片だけ見せられて分かるものなのか?と思いつつ、一抹の希望を胸に咲夜へ疑問を投げかけた。
すると咲夜は、なぜそんな質問をと首をかしげながらも散らばった肉塊を観察しはじめる。
「新鮮ですね」
「ついさっき、寝ぼけてやっちゃったのよ」
そうでしたか、なんて納得をしながら肉片をつつく咲夜。ていうか、手慣れてないかしら。
「そういえば、昨日は地霊殿から来られた方とご一緒ではなかったのですか?」
あっけからんと言われ、少しだけ昨夜の記憶が蘇る。確か、パーティを抜け出してこいしちゃんと地下に向かったのだった。
話がはずんで、私の部屋を紹介するとかなんとか。ああもしや。なんと、私はうっかり彼女を殺してしまったのか。南無。
「あはは~。私のこと呼んだ~?」
そうかと思っていれば私たちの後ろから、快活な声を携えてこいしちゃんがやってきた。
うわ、バラバラ殺人!フランちゃん異常者じゃん、私とお揃い~!などとペラペラ発言している。
咲夜は無言でナイフを振るおうとしていたが、慌てて制止させる。
一方のこいしちゃんは興味津々な様子で、まるで昆虫でも見るかのように死体を眺めている。
「前から気になってたんだ~、フランちゃんの力っておもしろー!」
一瞬の沈黙が、部屋を支配する。よく見ると、彼女も酔っていた。
なんてことだ、真っ白い顔の酔っ払いなど存在するのか。あんまり私がジロジロ見つめたからか、こいしちゃんもコッチを見返してきた。
人形みたいに綺麗な顔だななんて勝手に評価していると突然彼女が笑い始めたものだから、私もつられて笑ってしまう。
「ワハハハハ」こいしちゃんは、まるでキチガイのように笑いはじめた。
「ワハハハハ」しんでしまう、しんでしまう。これでは酸欠だ。
私たちは呼吸を忘れて腹を抱えてのたうち回った後、一緒に玩具のお片付けを始めた。
「もう、よろしいので?」
メイドの声は、もう聞こえていなかった。
十六夜咲夜は、二人から離れて業務に戻る。
パーティの出席者は、みな元気そうに帰っていった。館の主人も満足そうだ。
「結局、あれは誰だったのかしら?」
答えを知るのは
結局誰だったのでしょうか
もちろん咲夜すらいない可能性もあるけど。
パーティ出席者は全員無事。
地霊殿の下りに意味はないとは思わないけどえーっと……誰だ……?