『さあー、早くも第二回戦!お次は白玉楼の二人だー!』
威勢良く叫んではいるものの、その声に少なくない恐怖と緊張を滲ませた天狗が、霊夢の視界に収まる前に首をすくめる。
対極的に、彼女の目の前に浮遊している二人の未亡人は自信に満ち溢れ、自分たちの勝利を確信しているようだった。
「……あんたたちって、馬鹿なの?」
「馬鹿ではないわ?どうして?」
「いやだってさ、今ついさっきレミリア達が六人がかりでボコボコにされたのよ?なんで二人のまま来て勝てると思ってるわけ?」
「そんなに難しい問題じゃないですよ。フランドールさんが先程の試合でつけた傷、まだ治ってないですね?それさえあれば私たちが勝ちます」
「…なかったら?」
「………負けます!」
「ふふっ。潔くて結構だわ。──始めましょうか」
冥符『黄泉平坂行路』
霊符『夢想封印・瞬』
小手調べのつもりでスペカを打った幽々子と手早く終わらせる気でいた霊夢は同時に驚きをあらわにした。
妖夢がその隙に素早く間合に入って斬撃を繰り出す。
幾重にも折り重なった斬撃の華が、霊夢の肩に、脚に、首に食い込んで消滅する。
「っぐ、ぅ…!」
吹き出した鮮血が降り注ぎ、辻斬りを紅く染め上げる。
「斬りましたよ。霊夢さん。私にはその状態じゃ勝てないですよね?」
「っ妖夢…!」
霊符『夢想封印・集』
人符『現世斬』
「っこの…!」
夢符『封魔陣』
「っきゃ…」
初めて、妖夢がバランスを崩す。
霊夢はそれを見逃すことなく霊撃を打ち込む。
神霊『夢想封印・瞬』
「みょぉおおん…」
みょん、もとい妖夢はあまりにも華麗に撃墜され、地べたに座り込んでのの字を量産している。
それを眺める観衆の目線に、少なからず哀れみの含まれていることが彼女にはわかっていた。故にそれが彼女がいじけてしまう大きな原因となっている。
「んもぉ〜、妖夢が可哀想じゃない。何してくれてるのよ」
「何って…そのほうが面白くなるでしょ」
「そんな言い方しなくっても、ねぇ?」
どこぞのスキマ妖怪のような胡散臭さで口元を覆う幽々子はその面の皮の下で自分の想い人を撃ち落とした者に対する復讐の手取りを組み立てているようにも見えた。
しかしその行動が本心にも見えることは事実であり、それが最も博麗の巫女の動きを無意識に制限することとなっているのには、彼女は気づき得ない。
ふいに、霊夢がよろめいた。
彼女が博麗の巫女で妖夢も手加減していたとはいえ、先ほどのただの人間なら死にかねない攻撃の影響を幻想郷でもかなりの実力者である幽々子から隠し切ることなどできるわけもなく。
一度は鳴りを潜めた出血が再度発現し、苦痛と驚愕に顔を歪めたまま徐々に高度が落ちていくのをできる限り抑えているしかなかった。
「なぁんだ、博麗の巫女さん♪ちっとも妖夢の攻撃は効いてないのかと思ったら、バッチリダメージ受けてたのね。可哀想に、痛いでしょう、辛いでしょう?だったら私は優しいから優し〜く殺してあげるわ。さよなら」
華霊『バタフライディルージョン』
神技『八方龍殺陣』
優美に霊蝶を撒き散らしながら、自分が“死”へと誘われていくのを霊夢は感じた。
黒死蝶、あるいは反魂蝶が飛び交う。どちらなのかはわからないが、自分の中にある絶対的な物が薄れて崩れ去っていく感覚がして、薄暗い闇の中に閉じ込められたような、なす術なく絡めとられるような幻覚を見た。
「幽々子…いつの間にこんな…」
「あなたとて人間。死に誘うのはそう難しいことじゃない。でもまあ、博麗の巫女としての神気が邪魔だったことは認めるわ。そのせいでこれまであなたを死に誘うことができていなかったんだもの」
「……そう…妖夢によろしく」
「えぇ。白玉楼はいつでも、いつまでも、新しい亡霊を待っているわ」
「じゃあすぐ逢うことになるのかしら。変な感じね」
「まあ一度だけ、行ってらっしゃい。そして、いらっしゃいませ、新しい亡霊姫」
「──」
あっけなく、霊夢は事切れる。
間を置かずに観衆は驚愕と戦慄の渦に呑まれた。
流石に傷つけるだけならばいざ知らず、巫女を殺す者が現れるとはその場の誰もが想像していなかったのだから。
すぐさまスキマが開き、焦りでいつもの威厳を半分ほど失った紫が飛び出してくる。
「幽々子っ!これは一体、どういうことなの?」
「あら、見つかっちゃったわ。えぇとね、妖夢のお友達を作ってあげようと思ったのよ」
「…………は?」
「え?だから、妖夢のお友達って、冥界にいる幽霊さんたちと彼女たち人間だけでしょう?私は亡霊だけど主人でもあるし、なんとかできないかな〜って思ってたら巫女に何してもいい大会が開催されるって聞いて、これを機に妖夢の永遠のお友達を作ってあげようと思ったの!……でもまあこんなやり方しかできなかったことは認めるわ」
「………………え、えぇっと、ちょっと待ってね」
幽々子はどうぞ、と首を傾げて大人しく妖怪の賢者の思考を待っている。
一方紫の脳内では彼女でもなければ処理しきれないような膨大な量の情報が飛び交っていた。
たっぷり五分ほど熟考し、紫は顔をあげる。
「……つまり、幽々子、あなたは。たかだか半人半霊一匹のために、博麗の巫女を死に誘った、と」
「そう言ってるじゃない」
「……あ〜、うん。えぇ。問題…しかないわっ!!!」
きゃあ、と幽々子がわざとらしく半身分引くと、数歩分紫が距離をつめる。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
「…………………つまりはまあ、そういうことよ」
「……スゥー…………『そういうことよ』じゃない!!!!!」
紫はスキマを作り、何やら中に向かって話しかけている。
かなり焦っているようだったが言い終えてスキマを閉じるとどこか勝ち誇った、安堵を隠さない表情で幽々子を見直す。
幽々子の方は特になんの感慨もなく紫のことを待っている──と思われたが、そうではなかった。
そんな義理は彼女には存在しなかったし、かと言って権利を行使したとて、自ら敗北の一歩を刻む必要はない。
「──新しい亡霊さんだわ、紫。お祝いしてあげましょう?」
「ッ…!」
にこり、とイタズラっぽく幽々子が笑った。
その笑みは幻想郷の賢者たる紫にすら背筋の凍るような本能的な恐怖を感じさせるものだった。
「霊夢」
幽々子の声に反応し、ゆらりと霊夢が振り向く。
「……だれ。…あなたも、わたしと、おなじ?」
「えぇ、そうよ。私はあなたの生前の、友人、とでも言えばいいかしら。」
「ゆうじん…そっか。だからこんなにも……」
霊夢は動かなかった。
幽々子が“誘われた”。或いは──
「──こんなにも、狂おしい」
神霊『夢想の果て…?』
「霊夢…!?」
幽々子の表情に初めて、焦りと呼べるものが現れる。
「何かしら、幽々子。私に何か用でも?」
「…!記憶が…」
「あー、そこか。気に食わないでしょうけど、私まだ死んでないわよ?あんたを騙すために演技はしてたけど」
「…………え?」
「いやだから、死んでないんだって。魂をこっち側に突っ返されたの!あの閻魔に!全く、ここまで言わなきゃわかんないなんて、幻想郷の賢者の親友も落ちたものね」
「え、え…」
「ごめんなさいね、幽々子。私が四季映姫に頼んで、霊夢の魂を送り返してもらったのよ。そうでもしなきゃ、増長した果てに私自ら手を下さなきゃいけなくなるかもしれなかったんだから。ね?霊夢」
不本意そうにしつつも霊夢が頷くと紫はにこりと笑う。
その間にも幽々子はスキマ送りになっていた。
*
スキマの中で、幽々子は考える。
どうして誰も理解してくれないのか。
上昇しながら、幽々子は考える。
なぜ今回の企ては失敗したのか。
下降しながら、幽々子は考える。
左折しながら、右折しながら、幽々子は考える。
幽々子は考える。考える。考えて、考えて、考えた。
考えている考えていたことを何もかも理解できないほど待ち続けて、漸くスキマの外の風景が見えた。
それは彼女には眩しすぎる光で、同時にとても大きな羨望の念を彼女に抱かせた。
1、2、3……
7、8、9………
13、14、15……………
──届く。そんな確信。或いは願望。それだけでした。
*
「……様」
意識が少しずつ覚醒する。
「ゆ…こ…ま」
少しだけ沈む。
「ゆゆ…様」
もう一度。もう一度だけ。幻想を──
「──幽々子様!」
「…………ようむ?」
「!!!ゆ、幽々子、さまぁ…。っふ、う…うわあぁぁぁ!!!!!よかったあぁぁ!!!」
自分の主に名前を呼ばれ、抑えきれなくなった感情が爆発する。
困惑を隠しきれない幽々子の胸で妖夢は泣いた。
*
「幽々子様の前でこのような醜態を……魂魄妖夢、一生の不覚であります。」
ひとしきり泣きはらし、目の周りを真っ赤にしながら妖夢が泣き止んだ時、あたりはもう夕焼けに包まれて閑散としていた。
霊夢やレミリアたちが誘導し、怒り心頭した紫を止めながら里の人々は避難したため、二人だけで話す時のなんとも言えない気まずいような安心するような空気が漂っている。
「…そんなことないわ。……私の方こそ…あんな見苦しいところをあなたに見せてしまうなんて、情けないわよね」
「っそんなことないです!幽々子様は、私のために…紫様も敵に回すような危険を犯してくださいました。私には、そのことが何よりも嬉しくて…。だから、決して幽々子様のせいではないんですよ」
初めは激しかった口調が、やがて、怒られた子供を諭すような、優しいものに変わっていく。
幽々子の瞳に、きらきらと輝くものが溜まって、耐えきれずに、こぼれ落ちる。
「っふふ…妖夢…!ありがとう…愛してるわ…」
「…はい。幽々子様」
「……妖夢、私ね、計画が失敗した時、一番にこう思ったの。『妖夢に嫌われたらどうしよう』って。でもそんなものは杞憂だったのね。だって、今もあなたは私の前にいる。そして、今までと変わらない笑顔で、私に応えてくれる」
「はい。そうですよ、そうなんです。私の心はいつも、幽々子様のもとにありますから。それはいつまでも、変わることのない事実です。……幽々子様」
妖夢の手が、幽々子の眼前に差し出される。
「なあに、妖夢」
「私と…ずっと一緒にいてくださいますか」
一世一代の、告白だった。
幽々子は少し呆けたような表情をした後に、幽雅に微笑んだ。
震える手のひらを自分のそれで包み込み、口を開く。
「喜んで。妖夢ったら可愛いことするじゃない」
「…幽々子様……!ありがとうございます…!これからも末長く、よろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそよろしくね」
──パシャ。
「「!?」」
「あやややや。バレてしまいましたか…。いい表情でしたよ、お二人とも」
翌日、ズタボロに切り裂かれた鴉天狗が一体人里で発見されたのは言うまでもない。
威勢良く叫んではいるものの、その声に少なくない恐怖と緊張を滲ませた天狗が、霊夢の視界に収まる前に首をすくめる。
対極的に、彼女の目の前に浮遊している二人の未亡人は自信に満ち溢れ、自分たちの勝利を確信しているようだった。
「……あんたたちって、馬鹿なの?」
「馬鹿ではないわ?どうして?」
「いやだってさ、今ついさっきレミリア達が六人がかりでボコボコにされたのよ?なんで二人のまま来て勝てると思ってるわけ?」
「そんなに難しい問題じゃないですよ。フランドールさんが先程の試合でつけた傷、まだ治ってないですね?それさえあれば私たちが勝ちます」
「…なかったら?」
「………負けます!」
「ふふっ。潔くて結構だわ。──始めましょうか」
冥符『黄泉平坂行路』
霊符『夢想封印・瞬』
小手調べのつもりでスペカを打った幽々子と手早く終わらせる気でいた霊夢は同時に驚きをあらわにした。
妖夢がその隙に素早く間合に入って斬撃を繰り出す。
幾重にも折り重なった斬撃の華が、霊夢の肩に、脚に、首に食い込んで消滅する。
「っぐ、ぅ…!」
吹き出した鮮血が降り注ぎ、辻斬りを紅く染め上げる。
「斬りましたよ。霊夢さん。私にはその状態じゃ勝てないですよね?」
「っ妖夢…!」
霊符『夢想封印・集』
人符『現世斬』
「っこの…!」
夢符『封魔陣』
「っきゃ…」
初めて、妖夢がバランスを崩す。
霊夢はそれを見逃すことなく霊撃を打ち込む。
神霊『夢想封印・瞬』
「みょぉおおん…」
みょん、もとい妖夢はあまりにも華麗に撃墜され、地べたに座り込んでのの字を量産している。
それを眺める観衆の目線に、少なからず哀れみの含まれていることが彼女にはわかっていた。故にそれが彼女がいじけてしまう大きな原因となっている。
「んもぉ〜、妖夢が可哀想じゃない。何してくれてるのよ」
「何って…そのほうが面白くなるでしょ」
「そんな言い方しなくっても、ねぇ?」
どこぞのスキマ妖怪のような胡散臭さで口元を覆う幽々子はその面の皮の下で自分の想い人を撃ち落とした者に対する復讐の手取りを組み立てているようにも見えた。
しかしその行動が本心にも見えることは事実であり、それが最も博麗の巫女の動きを無意識に制限することとなっているのには、彼女は気づき得ない。
ふいに、霊夢がよろめいた。
彼女が博麗の巫女で妖夢も手加減していたとはいえ、先ほどのただの人間なら死にかねない攻撃の影響を幻想郷でもかなりの実力者である幽々子から隠し切ることなどできるわけもなく。
一度は鳴りを潜めた出血が再度発現し、苦痛と驚愕に顔を歪めたまま徐々に高度が落ちていくのをできる限り抑えているしかなかった。
「なぁんだ、博麗の巫女さん♪ちっとも妖夢の攻撃は効いてないのかと思ったら、バッチリダメージ受けてたのね。可哀想に、痛いでしょう、辛いでしょう?だったら私は優しいから優し〜く殺してあげるわ。さよなら」
華霊『バタフライディルージョン』
神技『八方龍殺陣』
優美に霊蝶を撒き散らしながら、自分が“死”へと誘われていくのを霊夢は感じた。
黒死蝶、あるいは反魂蝶が飛び交う。どちらなのかはわからないが、自分の中にある絶対的な物が薄れて崩れ去っていく感覚がして、薄暗い闇の中に閉じ込められたような、なす術なく絡めとられるような幻覚を見た。
「幽々子…いつの間にこんな…」
「あなたとて人間。死に誘うのはそう難しいことじゃない。でもまあ、博麗の巫女としての神気が邪魔だったことは認めるわ。そのせいでこれまであなたを死に誘うことができていなかったんだもの」
「……そう…妖夢によろしく」
「えぇ。白玉楼はいつでも、いつまでも、新しい亡霊を待っているわ」
「じゃあすぐ逢うことになるのかしら。変な感じね」
「まあ一度だけ、行ってらっしゃい。そして、いらっしゃいませ、新しい亡霊姫」
「──」
あっけなく、霊夢は事切れる。
間を置かずに観衆は驚愕と戦慄の渦に呑まれた。
流石に傷つけるだけならばいざ知らず、巫女を殺す者が現れるとはその場の誰もが想像していなかったのだから。
すぐさまスキマが開き、焦りでいつもの威厳を半分ほど失った紫が飛び出してくる。
「幽々子っ!これは一体、どういうことなの?」
「あら、見つかっちゃったわ。えぇとね、妖夢のお友達を作ってあげようと思ったのよ」
「…………は?」
「え?だから、妖夢のお友達って、冥界にいる幽霊さんたちと彼女たち人間だけでしょう?私は亡霊だけど主人でもあるし、なんとかできないかな〜って思ってたら巫女に何してもいい大会が開催されるって聞いて、これを機に妖夢の永遠のお友達を作ってあげようと思ったの!……でもまあこんなやり方しかできなかったことは認めるわ」
「………………え、えぇっと、ちょっと待ってね」
幽々子はどうぞ、と首を傾げて大人しく妖怪の賢者の思考を待っている。
一方紫の脳内では彼女でもなければ処理しきれないような膨大な量の情報が飛び交っていた。
たっぷり五分ほど熟考し、紫は顔をあげる。
「……つまり、幽々子、あなたは。たかだか半人半霊一匹のために、博麗の巫女を死に誘った、と」
「そう言ってるじゃない」
「……あ〜、うん。えぇ。問題…しかないわっ!!!」
きゃあ、と幽々子がわざとらしく半身分引くと、数歩分紫が距離をつめる。
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
「…………………つまりはまあ、そういうことよ」
「……スゥー…………『そういうことよ』じゃない!!!!!」
紫はスキマを作り、何やら中に向かって話しかけている。
かなり焦っているようだったが言い終えてスキマを閉じるとどこか勝ち誇った、安堵を隠さない表情で幽々子を見直す。
幽々子の方は特になんの感慨もなく紫のことを待っている──と思われたが、そうではなかった。
そんな義理は彼女には存在しなかったし、かと言って権利を行使したとて、自ら敗北の一歩を刻む必要はない。
「──新しい亡霊さんだわ、紫。お祝いしてあげましょう?」
「ッ…!」
にこり、とイタズラっぽく幽々子が笑った。
その笑みは幻想郷の賢者たる紫にすら背筋の凍るような本能的な恐怖を感じさせるものだった。
「霊夢」
幽々子の声に反応し、ゆらりと霊夢が振り向く。
「……だれ。…あなたも、わたしと、おなじ?」
「えぇ、そうよ。私はあなたの生前の、友人、とでも言えばいいかしら。」
「ゆうじん…そっか。だからこんなにも……」
霊夢は動かなかった。
幽々子が“誘われた”。或いは──
「──こんなにも、狂おしい」
神霊『夢想の果て…?』
「霊夢…!?」
幽々子の表情に初めて、焦りと呼べるものが現れる。
「何かしら、幽々子。私に何か用でも?」
「…!記憶が…」
「あー、そこか。気に食わないでしょうけど、私まだ死んでないわよ?あんたを騙すために演技はしてたけど」
「…………え?」
「いやだから、死んでないんだって。魂をこっち側に突っ返されたの!あの閻魔に!全く、ここまで言わなきゃわかんないなんて、幻想郷の賢者の親友も落ちたものね」
「え、え…」
「ごめんなさいね、幽々子。私が四季映姫に頼んで、霊夢の魂を送り返してもらったのよ。そうでもしなきゃ、増長した果てに私自ら手を下さなきゃいけなくなるかもしれなかったんだから。ね?霊夢」
不本意そうにしつつも霊夢が頷くと紫はにこりと笑う。
その間にも幽々子はスキマ送りになっていた。
*
スキマの中で、幽々子は考える。
どうして誰も理解してくれないのか。
上昇しながら、幽々子は考える。
なぜ今回の企ては失敗したのか。
下降しながら、幽々子は考える。
左折しながら、右折しながら、幽々子は考える。
幽々子は考える。考える。考えて、考えて、考えた。
考えている考えていたことを何もかも理解できないほど待ち続けて、漸くスキマの外の風景が見えた。
それは彼女には眩しすぎる光で、同時にとても大きな羨望の念を彼女に抱かせた。
1、2、3……
7、8、9………
13、14、15……………
──届く。そんな確信。或いは願望。それだけでした。
*
「……様」
意識が少しずつ覚醒する。
「ゆ…こ…ま」
少しだけ沈む。
「ゆゆ…様」
もう一度。もう一度だけ。幻想を──
「──幽々子様!」
「…………ようむ?」
「!!!ゆ、幽々子、さまぁ…。っふ、う…うわあぁぁぁ!!!!!よかったあぁぁ!!!」
自分の主に名前を呼ばれ、抑えきれなくなった感情が爆発する。
困惑を隠しきれない幽々子の胸で妖夢は泣いた。
*
「幽々子様の前でこのような醜態を……魂魄妖夢、一生の不覚であります。」
ひとしきり泣きはらし、目の周りを真っ赤にしながら妖夢が泣き止んだ時、あたりはもう夕焼けに包まれて閑散としていた。
霊夢やレミリアたちが誘導し、怒り心頭した紫を止めながら里の人々は避難したため、二人だけで話す時のなんとも言えない気まずいような安心するような空気が漂っている。
「…そんなことないわ。……私の方こそ…あんな見苦しいところをあなたに見せてしまうなんて、情けないわよね」
「っそんなことないです!幽々子様は、私のために…紫様も敵に回すような危険を犯してくださいました。私には、そのことが何よりも嬉しくて…。だから、決して幽々子様のせいではないんですよ」
初めは激しかった口調が、やがて、怒られた子供を諭すような、優しいものに変わっていく。
幽々子の瞳に、きらきらと輝くものが溜まって、耐えきれずに、こぼれ落ちる。
「っふふ…妖夢…!ありがとう…愛してるわ…」
「…はい。幽々子様」
「……妖夢、私ね、計画が失敗した時、一番にこう思ったの。『妖夢に嫌われたらどうしよう』って。でもそんなものは杞憂だったのね。だって、今もあなたは私の前にいる。そして、今までと変わらない笑顔で、私に応えてくれる」
「はい。そうですよ、そうなんです。私の心はいつも、幽々子様のもとにありますから。それはいつまでも、変わることのない事実です。……幽々子様」
妖夢の手が、幽々子の眼前に差し出される。
「なあに、妖夢」
「私と…ずっと一緒にいてくださいますか」
一世一代の、告白だった。
幽々子は少し呆けたような表情をした後に、幽雅に微笑んだ。
震える手のひらを自分のそれで包み込み、口を開く。
「喜んで。妖夢ったら可愛いことするじゃない」
「…幽々子様……!ありがとうございます…!これからも末長く、よろしくお願いします」
「えぇ、こちらこそよろしくね」
──パシャ。
「「!?」」
「あやややや。バレてしまいましたか…。いい表情でしたよ、お二人とも」
翌日、ズタボロに切り裂かれた鴉天狗が一体人里で発見されたのは言うまでもない。
終わりなのが少し勿体無いです!
続けてください!いや、続けろ!
せめて、地霊殿メンバーくらいまで!
これからも頑張ってください!
…そこまでおっしゃるのでしたら、なんかこう第二回!みたいな?続きというか番外編というか?やっってみてもいいかなぁとは思ってますけど?(早よしろ)はい。はい、すみませんやりますやらせていただきます!!!だからどこで止まっても悲しくなっても優しくしてください……。地霊殿までは確かに見たいですよね…これに限らず…。
なぜか、書き始め当初の自分を見ている感じでした。(元々は、幻想大決戦じゃない奴を書こうとしていた。いわゆるプロトタイプ)なんかマジで不思議。あよ様が書く小説伸びがいいですね…(良いな〜)
一応、ここでの活動は一時休止しようと思いますので、それもお伝えしたく…
なので、私作品の更新、及びコメント返信は当分出来ないです。
最後の作品を投稿(現在制作中)しましたら、ここでの活動(作品投稿)は一時休止しようと思っています。代わりに、私営サイトでの活動を予定していますので、そちらもご確認して下さい‼
最新作品も出しました。
長文失礼しました。
by,ゆっくりA
もうしばらくここでの作品を見れないなんて寂しいです〜。頑張ってくださいね!
最新作出しました。
全作品も読んで、感想・アドバイスをよろしくおねがいします‼
私営サイトの方も確認お願いします‼
見たいのに…ほんとに見たいのに…最新作は見ます!ここはいいところですから、ぜひいつか戻ってきてくださいね。
ええと、最終作の方にサイトへの飛び方を載せましたので、そちらを閲覧して下さい‼
点数も付け忘れたので、点数も添えて…
本当にすみません私がインターネット慣れていないばかりに!!
ありがとうございます…!