Coolier - 新生・東方創想話

幻想郷の高嶺の花〈1〉

2024/01/08 20:06:16
最終更新
サイズ
7.28KB
ページ数
1
閲覧数
521
評価数
3/3
POINT
200
Rate
11.25

分類タグ

「第一回・幻想郷の高嶺の花を堕とそう大会〜!」

それが、今回奴等が開催した異変の免罪符だ。
主催はもちろん河童と天狗。
天狗側では射命丸文と姫海棠はたてが実況解説を務め、ついでにデモンストレーションもかって出ている。
河童の中でも商売っ気が強い河城にとりは、出場者の中で誰が優勝するのかという競馬の真似事のようなものをやっていた。
幻想郷の猛者たちにこんな大掛かりな催しを実行させた間接的な黒幕は、本来異変を解決するべき現在の博麗の巫女、博麗霊夢である。無論本人がそれを望んだわけではない。
どことなく人間より妖怪、ひいては神に近い雰囲気を持つ彼女に惹かれた有志が巻き起こした、今までには類を見ない異変だった。

「さあさあ、投票は一回戦が始まるまでだよ〜!急いだ急いだ〜!」
「票の数はご自由に〜!一票一銭!これぞ幻想郷流!やらなきゃ損損!いらっしゃいませ〜!」
「人気票の値上げもない!こんな良心的な事業はないですよぉ〜!」

にとりの部下である河童たちが景気良く声を張り上げ、客を呼び込む。
幻想郷全体が浮かれムードに包まれる中、人里にある民宿の一つ、涼冥亭にはゲンナリとした空気が漂っていた。
今大会に欠かせないとして数日前からここに幽閉されている霊夢が、あまりの憂鬱に霊力の制御を怠ってしまうため、その名に恥じぬ冷ややかさと薄暗さが充満していた。

「あ、あの〜。霊夢さ〜ん。そろそろ時間ですよ〜。」

一度実況席を離れてきた文が部屋の襖を開ける。
すると鋭く振り返った霊夢が飛びついてきた。
少し伸びた爪が文の肩に食い込む。

「れ、霊夢さん?」
「うるさい。」
「え、あの…。」
「黙れ。」
「え…。」
「私のこと閉じ込めて何する気なの?にとりや紫も一枚噛んでるらしいけど。」
「それは…。」

そ、と霊夢の手を引き離し、あざとく笑う。

「行ってからのお楽しみです!霊夢さんの為にみんなやってくれてるんですから。ちゃんと主役がいなきゃダメですよ。」
「おいちょっとその『為』の字はなんだ。」
「え〜?何のことですか?」
「こら、文!待ちなさい!」

勢いよく低空飛行で逃げ出す文をお祓い棒を構えて霊夢が追う。
何をどう練習したのか、今まで以上に小回りを利かせて2階の窓から建物を出る。

「ちょっと文!何のつもり!?」

文は振り返らずに建物の前に集まっていた者たちに呼びかける。

「さあみなさん!本日の主役に盛大な拍手をお願いします!」

言い終わるが早いか、割れんばかりの拍手が打ち鳴らされる。
その光景を見て呆気に取られている霊夢を文が地上に連れていく。

「さ、霊夢さん。あなたはあそこに座っていればいいんです。」

他のものたちが座っているところより一段高い場所に、簡素ながら作者の技巧が光る座椅子が置かれている。
何となく言われた通りの場所に正座すると、文の紹介とともに必要以上に厳かな所作で吸血鬼レミリア・スカーレットの一派が群衆の輪の中心に進み出る。
レミリアは文がマイクを差し出したのを片手を持ち上げて断り、ふわりと飛び上がった。

「私たちが最初の相手よ。さあ、存分に楽しみましょう!」
「はぁ。そういうことか。」

嘆息の中に微細な歓喜を忍ばせて、霊夢も飛び立った。

「要は、いくつかのチームを作って順番に私と戦って誰が勝てるか、って遊びでしょ?だったら、全員ぶちのめしてやるわ。」
「面白いこと言うわね。本当にそれができるかしら?こっちは幻想郷の賢者にもあなたに多少の怪我を負わせる許可を取っている。いくら博麗の巫女だからといって、負傷した状態で幻想郷の大体の妖怪たちを負傷した状態のままねじ伏せることができるかしら。」
「怪我とかそんなことは関係ないわ。私を舐めないでちょうだい。」
「ふん、やってごらんなさい。」

軽口の応酬に区切りがついたところで、文が開始の合図をする。
マイク片手に実況席まで戻ってくると、はたてが実況を始めていた。

神槍『スピア・ザ・グングニル』
禁忌『レーヴァテイン』

『おぉーっと、早速スカーレット姉妹がそれぞれの得意技で牽制をかけていく!そしてそれを流れるように躱す博麗の巫女、流石だぁ〜!』

「へぇ、言うだけのことはあるじゃない。でもまぁ、お嬢様には敵わないわ。」

咲夜の時間操作とナイフが交錯し、場を混沌に染め上げる。

速符『ルミネスリコシェ』
奇術『エターナルミーク』

『まるで打ち合わせたかのように互いの弾を避けつつ、自分の弾をその流れに乗せる。一連の流れが美しい!やはり紅魔館の名に恥じぬ戦い!』

気符『地龍天龍脚』
虹符『烈虹真拳』

ナイフの鏡面で気弾が反射し、軌道がバラバラになる。
未だ牽制の弾も撃たずに避け続ける霊夢をレミリアは不満そうに眺め、親友の魔法使いを呼び寄せた。

「……さっきから逃げてばっかで、馬鹿にしてるわね。行くわよ、パチェ。」
「はぁ、全く血の気が多いんだから。今行く。」

日符『ロイヤルフレア』
紅符『不夜城レッド』
水符『プリンセスウンディネ』

絶妙なタイミングと位置で発射された弾の一つが巫女装束の袖を掠める。
霊夢はそれを見て少し顔をしかめ、お札の退魔の効果で弾を潰しにかかった。

「やっと動いた。これでいいわね、レミィ?」
「えぇ。ありがとうパチェ。後で血液入りケーキでもご馳走するわ。」
「それはいらない。それぐらいなら1週間図書館に入ってこないで欲しいわ。」
「そんな…。パチェぇ…。」
「冗談よ。」

その後は小悪魔を盾にしたパチュリーをまとめて霊撃の的にしたり、それを回収しようと近づいてきた咲夜に夢想封印を叩き込んだり、美鈴の蹴りを封魔針で返したりして、あまり時間はかからずスカーレット姉妹との2対1の形が形成された。

『戦いは終盤戦!スカーレット姉妹は博麗の巫女を地に堕とすことができるのか〜!?この後も目が離せません!』

文の実況を小耳に挟みつつ、レミリアとフランドールは作戦会議をする。

「フラン。まだいけるわね。」
「うん。霊夢を壊せばいいんでしょ?」
「優しく、よ。死なせちゃいけないんだから。」
「分かってるよ、もう。お姉さまはカホゴだなぁ。」
「そういうんじゃないわよ。…行くわよ。」

神槍『スピア・ザ・グングニル』
禁忌『カゴメカゴメ』

「何なのよもう、うざったいわね。」

未だ回避に徹する霊夢の背後に、打ち合わせ通りフランドールが現れた。

「うしろのしょうめん、だぁ〜れだ!きゅっとして、どっかーん!!」
「しまっ…!」

咄嗟に張られた結界と拮抗し、爆風が吹き荒れる。
巻き上がった砂煙に紅い何かが混じり、フランドールが離脱してくる。

「言われた通りにしたけど。」

その瞬間ちょうど、砂煙の勢いが弱まり、フランドールの能力をくらった本人の姿が見えるようになった。
少し呆れたような表情で宙ぶらりんの足をぷらぷらしてみせている。
レミリアとフランドールには足首から先に、霊力の枯渇した部分があるのが分かった。

「全く、ずるいわよ、こんなの。」
「ずるいとは心外な。どう、うちのフランはすごいでしょう?」
「えぇ、すごいわよ。この私に怪我を負わせるくらいだもの、分かってはいたけど桁違いの破壊力ね。しばらくは歩けそうもない。」

レミリアは何度も頷き、フランドールと霊夢はそれに白い目を向ける。

「そうでしょうそうでしょう。うちのフランは強くて可愛くて最強なんだから!」
「お姉さま気持ち悪い。」
「ひどい!パチェのがうつったのかしら?」
「いや全然気持ち悪いわよ。」
「霊夢までそんなこと言ってぇ…。」
「うっさい。」

霊符『夢想封印』

霊夢の有無を言わさぬ攻撃にレミリアが翼を焼かれ墜落する。

『おっと、レミリア・スカーレット、悶えてる間に墜落ー!!破壊神と博麗の巫女の一騎打ちだー!』

「やっぱ最後に残るのはあんたか。」
「EXボスを舐めないでよね!もう一回、きゅっとして…。」

霊夢は力を溜め始めたフランドールの後ろに素早く移動し、札と針をいくつか叩きつける。
しかしフランドールは正確に相手の“目”を捉えていた。

「──どかーん!!」

再度、爆風と砂煙が巻き起こる。
その場にいた全員──実況の二人も含めた誰もが、死んだと思った。
何せ相手はフランドール・スカーレット、狂気の破壊神と謳われる彼女である。
その能力をもろに食らって生きていられるわけがないと、信じていた。
だからそのスペルカード宣言には、場を圧倒するものがあった。

「──『夢想天生』!」

誰もが驚き言葉を失う中で、フランドールはどこか得意げに、どこか悔しげにつぶやき、意識を閉じた。

「さすが、お姉さまの言った通りだったわ…。」

死屍累々、阿鼻叫喚、地獄絵図。──なんてことはない。
紅魔館の6人が揃いも揃って地に伏しているだけなのだから。
霊夢の、勝ちだった。

「あ〜だる。この後大丈夫かしら?」

民衆の恐怖の根源は、そんなことを呑気に言ってのけたのだった。
あよです。
三作目のくせにシリーズは進みません。いや本当にごめんなさい。
ここでようやく仕様を説明させていただきます。
基本的にコメントは返します。諸事情で遅くなることはありますが、必ず返信致しますのでご安心を。
コメントの内容に関してですが、明らかな罵詈雑言は控えて欲しいです。だけどできる限り率直な感想、アドバイスしてくださると嬉しいです。自分勝手ですけど。
自分で小説書いてくださっている方がコメントしてくれた場合はそちらの小説見に行きます。よろしくお願いします。
あよ
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.簡易評価なし
1.無評価ゆっくりA削除
幻想大決戦、にゃんにゃん幻想郷、東方Project誕生話の、制作主ゆっくりAでございます。なんて言えば良いのか分からないのですが、とても皆らしいですね…幻想大決戦でもこういう感じのがあったような…?
という訳で、これからも幻想大決戦、にゃんにゃん幻想郷、東方Project誕生話を出していきますので、どうか宜しくお願いします。
2.100ゆっくりA削除
点数付け忘れましたので、送ります。
3.無評価あよ削除
ゆっくりA様、見ていただきありがとうございます。あまり多くキャラが出てくる話は書くことがなかったので不安だったんですが、楽しんでもらえたならよかったです。これからもどうぞよろしくお願いします。
4.無評価ゆっくりA削除
新しい小説?出しました
5.無評価あよ削除
返信遅くなりました、お知らせありがとうございます。
後ほど読ませていただき、そちらのコメント欄にて感想送りたいと思います。
6.30⑨なす削除
作品として素晴らしいと思います。自分は小6の立場ですが、
ゆっくり、書き上げて行く方がより良い作品の素になるので、無理はせずに。
それとコメントの返信はいつにやる。と言うのを決めておいた方がいいです。
7.無評価あよ削除
⑨なす様、アドバイスありがとうございます。
コメントについては親の目があって不定期になりがちなんですが、平日の朝7時〜7時半くらいに返そうかなと思っています。休日は少し難しいですね。
明確に決めることは現時点で難しいですが、とても参考になりました。
ありがとうございます。
8.70夏後冬前削除
地の文がすっきりしてて読みやすいですね。そこが良かったので後半はちょっと息切れしてしまったのかな、と感じてしまいました。ストーリーラインも盛り上げところをしっかり判ってる感じがあり、勝手ながら作者さまの伸びしろを感じました。頑張ってください。
9.無評価あよ削除
夏後冬前様、お褒めの言葉いただき光栄です。
今後も精進いたします。