結界術を失敗した。
端的に言えば、煎餅をかじりながら夢想転生したことが災いした。
突然、部屋から寒空へ放り出される形になった。寒すぎる。
人里まで、ちょっとした次元連結システムの応用で近道しようと思ったのだけれど、かなり運悪く失敗したらしい。
大抵は適当にやれば上手くいくので、運が悪いなんて久々だ。
「本当に――運が悪いことに運が悪いわ」
呟くと白い吐息が出る。そして馬鹿みたいに寒いことを思い出す。
一応この脇出し装束にも、季節に合わせた防寒というものがある。
冬の気候に夏バージョンを着ているのは、流石に氷を脇に挟んでるような底冷えを感じた。衣替えを適当にしたせいで間違えたのか。
「だいたい、夏でも冬でも脇は出てるから間違えんのよ。ご先祖様はどうして全シーズン脇出しをスタンダードにしたんだか……」
こういう時はおでんでも食べたいな。つらつらと考えつつ空を飛んで場所を図ろうとする。
見慣れた人里を眼下に確認できて、ほっとした。
流石に、異世界への転移で博麗大結界がどうみたいな類の面倒ごとは起こっていない。
あの使い方ではそれもありえたな。
反省したので今度は横着せずに空を飛んで人里に降り立つと、通りすがる人間たちの目線が奇妙なことに気付いた。
きょとんとした顔をされている。
そりゃ人が落ちてきたら驚くだろうけど、ここじゃ巫女が飛んでるのは茶柱が立つくらいの珍しさじゃない?
「あの、何か変ですか?」
固まっていた大人の一人を捕まえて尋ねれば、思い出したかのようににこやかな表情で応えた。
「いやはや、なんだか久々に巫女さまを見た気がして、なんというか、急に色々なことを思い出してしまったのです」
「色々というと?」
「それを聞かれると答えづらいのですが……おい、お前はなんか思わなかったか?」
「へえ?あたしですか?……うーむ、なぜだか、ついこの間まで穀潰しだった次男やつがやっと独り立ちしたことを思い出しましてねえ」
「そうだそうだ。俺もそんなことを思っていたんだよ。このあいだ娘の結婚が決まって、あれほど嬉しかった日はねえよ。なんで忘れてたんだろうなあ」
周囲はたちまち騒がしくなった。
何を流行させようが、相変わらず里の人々の多くは神社には参拝なんて来ないのに、今は祭りすらスルーする人までワイワイと集ってくる。
いったいどういうことだろう。
煎餅かじりながら夢想転生をしたくらいで、相当ややこしい事象を引き起こしたのだろうか。
「あっ、私も思い出しましたわ。いろんな外の世界の本が読める貸本屋が出来て、とてもいい場所でしたの。小鈴ちゃんがあんなに立派なお屋敷を持つなんて、素晴らしいことですわ」
頭をかかえるべきかすら迷っていたら、一人の婦人が奇妙なことを言った。
「小鈴ちゃんが?」
「あら、巫女さまもいつも使ってるじゃありませんか。あのお屋敷です」
西洋風の貴婦人が指した先は、塔だった。
いや、塔と言いえそうだけど、それにしては乱雑に天高くそびえる石の塊だった。
螺旋を描きながら、霞がかった空のはてまで伸びている。そこに小鈴ちゃんがいるのだという。
異変だった。
とりあえず煎餅も夢想転生も関係ないかもしれない。ちょっと安心。
「ちょっと説明してもらえない?ええと、あの建物って何?」
「はあ、わかる範囲でいいのであれば」
「その必要はない」
振り返ると、見知った顔の人間、正確に言えばワーハクタクがいた。
「あんたは何か知ってるのね」
「それはありえないんだよ。一番ありえないのは別なんだが……」
「ふーん、なんだか承知してるわね。ちょっと里の裏こい」
「一旦あなたと里を出て話すことがあるが、今回は多分弾幕なしだ」
何でもない、とかなんとか言って適当に群衆を散らす姿は、それなりに信頼されているようで、妙に堂に入ったように見える。
何だかお株を奪われたという感じだったし、私のやり方に慧音は乗ってこなかったしで面白くない。そもそも物事なんて叩けば直るのに。こいつの授業はきっと眠い。
「その、異変じゃないってこと?ややこしい異常の場合は紫とかの仕事になるんじゃないの?私、あんまり面倒なこと出来ないわよ。ていうか、やっぱ私なんかやっちゃった?」
偉そうな大妖怪の集まりにでも連れ出されるのだろうか?と少し不安になった。
「やっちゃうのは、いつもだな」
「うっさい。弾幕ごっこも無しだし、あんたノリが悪いのよ」
「ふふ、そんなことはないぞ。ただ私にもタイミングとかがあってね」
「凄く面倒なことなら、最初からそうでいいんだけど」
弾幕ごっこで終わらせられないことも、まだ無くはないわけだしね。
「異変として動くときの貴方の当てずっぽうさと、引き際の良さは、全く初対面の時を思い出すよ。もしや勘というのはそういう意味なのか?」
適当言っただけなのに拾わないでほしい。それに、慧音の皮肉の使い方はわかりにくい。
「どういう意味?皮肉の答えに窮すると私は弾幕ごっこに走ることを知らないの?」
「これは失敬」
何がツボにはまったのか、慧音の口元が緩んだ。
そういう扱いじゃ私が馬鹿みたいだった。
「もうっ、さっさと案内しなさいよ!」
「すまない。ちょっと考え事があってね」
そう言った慧音はさっさと飛び上がって、あの重そうなスカートがカーテンのように広がった。
「飛ぶのはいいわけ?」
「ここまで見られては仕方のないことさ。ついておいで」
「見られてって……ドロワ?」
「安心しろ。じきにわかる」
一体何に目覚めろというのだろう。
巨大な何かへと私も飛翔を始める。
パタパタと風を浴びると、やはり寒い。
異変の主役らしき塔を眺めても、奇妙さだけを感じて敵意を向けにくい。何なんだろうか。
近付いてるのかもよくわからないし、『立派なお屋敷』なんていい方は、控えめを超えて無意味なほど、高い。
そうこう思案しているうち、細かい部分が見えてきたけども、どうやら塔の上から下まであちこちに設置された扉が出入り口らしい。空を飛べる誰もが自由に出入りしている。人数を見るに、こんな珍妙なものでもそれなりに馴染んでいるらしかった。
驚くべきことの一つは、妖怪があまり見えないということだ。
人は空を翔べただろうか?
「ここが鈴奈庵で、バベルだ。ハイカラだろう?」
洋風を何でもハイカラと言えばいいわけじゃない。
歴史家のくせに、ひどい説明不足だけど、わかることもあった。
「この景色を見て大体飲み込めてきたんだけど……ここは未来とか、異世界とか……いや、夢ね。流石にありえないもの」
「私はお前のことも知っているということさ」
「なにそれ……ただ……そうかもね」
慧音の飄々とした物腰は不気味さすら覚えてきた。何もかも、どうにかしている。
「ククク、ちょっとした誤謬はあるが、なあにすぐわかることさ。入るぞ」
慧音が開かれた扉のうちの一つに入ったので、慌てて飛び込む。
案の定、鈴奈塔(仮)は空間構造がやぶれているウワバミのあわせ鏡みたいな広さを持っていた。
異常な広さの空洞に小さく読書台があるけど、この距離から見えるなら巨人がつかうようなサイズか。空気が根本的に伽藍堂に感じる。
入ってきた人妖たちはどこにも居なかった。
天井を見上げてみると、蒼い輝きがチラチラと配置されている。一瞬、すわ弾幕かと思ったが、停止していたので違う。
輝きは点々と螺旋を織りなして浮いている。
ひたすらに空へと、一点に向かって粒となっていて――まるで遠近感しかない風景だ。
「道中我慢してたんだけどね、黙っていても多分聞きたいことが増えてるだけだわ。どうしてこんなものばかり出てくるのかしら」
「そうだろうと思って、この時代のお前を呼んでおいた」
「こんにちは。わたしがあなたよ」
声の主は、いつの間にか現れた私自身だった。
自称の私は、鏡で見る私と別段変わりなく、むしろそれ以上に同じなので気持ちが悪いくらいだ。
ただ、橋姫だってこの手のことはする。
妖怪としても異変としても、ちょっとありきたりで、うんざりしてきた。
「ねぇ私さん、そろそろ帰りたくなったし、こっちの紫でも呼んでくれない?」
「このセリフを言ったのは、たしか五百人目くらいだわ。私は一回しか言ってないんだけど」
「なあにループ?もういい、全部話して。全部全部ぜーんぶ話してちょうだい。さっさとしないと、寝るか起きるか暴れちゃうわよ」
ピクリ、と眉が動いたけどスペルカードは出さなかった。出したら終わるのに。
どうでもいいことをスキップしたかった。
「慧音、やっぱぶん殴ってもいいんじゃない?」
「駄目だ霊夢2」
「ちょっとツーってどっちよ!」
「あーもう何でもいいから私も黙って!説明でしょ!?」
怒鳴る私。どう見たって今のままの私で、一歳の差があるかも怪しいくらいだ。
なんだか鏡と話してるのを見られてるような感じ。
ドッペルゲンガーは歩く共感性羞恥の妖怪だと思う。
「いやあ、時間が止まっちゃったのよ。もっと直接的に言えば、私達で時間を止めたの。そこの慧音とあなたと私と私達で」
「はあ……またやるとは……とりあえず、今回は自分で私をぶっ倒せばいいのかしら」
こういう場合、残機を全部消せば、最後の一人が帰られるに違いない。
数日前にこっそり読んだ外来本の漫画で読んだ。
戦いの場面が面白かったし、色々なシーンを見ては、その度に新技へ組み込もうかなと考えていたし丁度いい。
「ちょっと落ち着いてくれないかしら。一応私はこの世界じゃ博麗の巫女だし、この幻想郷は平和ならいいと思ってるのよね。私にはわかるでしょう?」
ギクリとはしなかった。蓄音機を聞いてるようだったから。
まあ、最近確かに、縁も薄かった頃と違って里のことを考えるようにはなった。
小鈴ちゃんと関わったりして、ここ数ヶ月の私は随分と幻想郷というより里のために動くようになったような、なんてことは自覚してる。
あらためて自分の口から出た言葉としてそういう反芻を聞くのは、悪い気分じゃない。だけど奇妙な空間の擁護にはますます遠ざかってないか?
私は関係ないとわかったら退かすだけよ。そう目線で投げかけても、受け流して彼女は続ける。
「ただね、楽しいことが急に増えたって、どうせ悩むのが私の役目だから、ずっと多くの楽しくないことの方が増えてしまう……知っていたはずでしょう」
「知っていたわ。楽しくないことを知っていたから、変わったのよ」
「そうみたいね。今は……そろそろ全部安定すると思う。終わったらこの博麗大結界だけは畳むから、そこでじっとして、協力するか眺めてほしいの」
さすがは私と言うべきか、単純明快な説明と要求だった。
しかし、どうも受け入れがたい光景だ。天への螺旋のその一つ一つは書物だったり、物だったり、妖怪が琥珀のように固定されている。
私が睨まずにはいられないのは、一段と青く輝く琥珀だった。その中心にいるのは小鈴ちゃんと稗田の阿求なのだから。
二人はただ仲睦まじい姉妹のように、寄り添い合って目を閉じている。
「小鈴ちゃんたちを閉じ込めたりするのも仕方ないって言うの?ここの人妖たちは、見たところ萃香の力みたいなもので集めているのよね」
というか、萃香本人が関わっている線もあるだろうか?
一番遠そうだなと思うし、その逆も同時に思う。
「正直なところ口車に乗せられたというか、気の迷いで計画に乗った感じなのだけど、お手上げなのよねえ。なにせエピローグを否定したら次のプロローグがないものだから。まあ、みんな楽しく暮らしてるし、そういう意味では最低限の役割を果たしているわ」
鏡の向こうの私は、ちらと慧音をみやりながら、おそらく幾度となくやってきた私に繰り返したであろう感想を淡々と述べた。
「詭弁ね。あんたは多分、人でも管理者でも、ましてや私でもないわ」
「平時は全部同じようなものさ」
私の仏頂面が険しくなったところで、黙っていた慧音が口を挟んだ。私には慧音の言葉は正しくも間違っている気もしたけど、今は、否定したかった。
「いいえ、同じじゃない。でも、全部同じように受け入れるのよ」
編纂してしまい込むということは、この里ではそういう意味ではないはずで、上手く言葉にできないんだけど、そういう根源というのは触れると破れる出来事な気がする。
帰られないの?誰が?あんたが?私が?回らない勘に苛立ってきた。
「役割の話をするなら、慧音、語り継がせるのはあなたでしょう?」
「そうだがね」
慧音の目は、どこか何を見ているのかはっきりしない。
「確かに私が課して、同時に期待された役割は歴史を断片化させないことだ。結局の結末だけは決まっているがね。それは親しい無名の人々にも、お前にもこのままに先立たれることで、今じゃ著名になった親友に悲しみと忘却をしばし残すことだ」
不死鳥の蓬莱人の結晶に視線をやっているようだった。慧音は自嘲する。
「永遠の変化というものはどうにも私には手に負えない。そもそもお前は何度この時代に訪れようと人里には現れないはずだったのだがな、もう綻びが生じてしまった。どれだろうな。いつも通り、賢者達の誰かか、永遠亭の差し金かな。今回はずいぶんと歴史が持ち込まれてしまった」
「そんなこと知らないわ。ただ私はあんたを成敗する気が湧いてきたかもね」
「異変になった時点で、もう負けだ。解決されるしかあるまい。ただ、せめてその前に、この幻想郷を見て回ってみてくれないだろうか。こんなでも、幾千と迎えた月夜は積み上げたんだ」
未来がないということは、完全に時が経たないことを意味するわけではないのよね。
誰にとっても特筆するべきことがない、グダグダとした、歴史以外になることだけが延々と続いてきたのだろうと想像に難くない。
誰を悼むことなく、何も成し遂げることもなく、誰も成長せず、誰も耄碌せず、幻想のように、あるいは退屈のように。
「好奇心はあるけど、駄目。さっき五百人以上の私がここの私に会ったみたいな口ぶりだったけど、本当なら五百人の私はそれで納得して帰っちゃったのよね。たぶん、私もみんなが楽しそうにしているのを見たら気が変わっちゃうわ」
「流石に霊夢は勘が鋭い。数百回目だと悪あがきも無意味のようだな」
「ええ無意味。ここは幻想じゃなくて私の夢なんだから!」
ようやくピントがあってきた。振り上げた両手で空を掴む。
「だから決めたわ」
夢から私を掴んだ。大幣を輝きから手繰り寄せる。
輝きを注ぎ込んで天に捧げる。
「夢にしてもこのままじゃ寝覚めが悪いから、全部倒すことにした」
世界の層をまた一つまた一つと降ろしてたぐり寄せ、そして世界がさらに私を手繰り寄せよう。
その繰り返しで、八卦も陰陽も食い合って波紋のごとく暴れ
術と私は共に夢に再生する。
「帰っておでんを食べるのよ!今日が春でも夏でもね!」
結局、退屈な話でわかったことは、私の変化への戸惑いでしかないと言える。
ただ、今はそういう私の中にあるメランコリーを見てもいいかな。とっくにこの幻想は夢になっていたけども、忘れて本当の幻想になる前に、起きたら日記にしても悪くないと思えてしまう。
思考で輪郭がブレるのを抑える。少しずつ気持ちを意識に溶かしていく。
何かが攻撃してる気がする。何かを攻撃している気がする。輝きを放っている。輝きの中にいる。大玉の中にいる。札は無尽蔵に私のソラにある。
私が鏡の中で歯噛みする。
「楽園の素敵な巫女は、素敵な楽園で暮らさないといけないのよ!脳みそをお花畑に突っこんでいられないのっ!」
鏡の私が私が知らない祝詞を叫ぶと、途方もなく思えた高さの天井が轟音で爆裂した。全てを破壊する限りなく巨大な陰陽玉を振らせていた。
もはや巨大すぎてゆっくりと動いてるようにしか見えないその陰陽玉は、回転しながらもゆうゆう塔を突き飛ばし、全てを轟音と共に破砕している。
そのスケールといったら、かつて図鑑で見た木星のようだった。輝くセントエルモのように霊力を蒼い炎と灯し、塔の先から順にふっとばし、ゆっくり降ってくる破片ごと私を押しつぶそうとする。
彼女が泣いているのか笑っているのか確かめないで目を閉じる。とりあえず恥ずかしいことは言わないでよね。
そう思って薄目でちらと見ると、私は更にやる気なようで、くるりとさり気なく回転し大幣を召喚した。フワリと上昇した慧音が高度を合わせて並ぶ。
「スペルカードルールの歴史を食べるのを最後にしたのが仇かな。やれやれ……」
「やっぱり、お菓子は取っておくよりも、見かけた時に食べるべきなのよ」
私もそう思う。
「霖之助さんのところのお菓子はまだあるかしらね」
崩れ行く景色が閉じた。
いつもの天井で朝を迎えたけど、夢は覚えている。しかしながら、不思議といつも夢にある、おかしな前提の断絶もあまりない。
思わず少しだけ支度を急いだ。ふすまをスパンと開いて縁側へ出ても、破壊した塔は跡形もない。
人里に向かって突撃すると、勢い良く降り立った私に通行人たちは驚いた。
「何か?」と睨んでみると「いえなんでもございません」と退散した。そんな感じなのね。
これって異常なしなのかな。よく考えると、普段から他人の目を気にしてなくてわからない。
だから見知った顔を探して寺子屋に突入した。
幾つかの部屋を過ぎると、筆を持った子どもたちの前で教鞭をとる慧音がいた。
人里の連中同様、全員驚いた表情でこちらを見ている。
なんと問えばいいのだろうか。よく考えると、ここで慧音を問い詰めると、子どもたちが見ているので良くない。
「……ええと、どうよ!?」
「はあ……」いきなりのことで、慧音は本を手に取ったまま、生徒たちの前でぽかんと固まっている。
「……尋ねられることに一切の心当たりがないのだが、もしかして里の歴史の授業でも頼んでいたか?」
当たり前だった。
こういうとき、夢でつながってたら覚えてるものよね。
「……まあいいわ。邪魔したわね」
授業中だったことを思い出したし、ちょっとした杞憂を晴らしたところで帰ることにしら背中から子供たちの声が聞こえた。
「誰?」「巫女さん?」「山の?」「山のはかぜはふりだって言ってたよ」
失礼なガキらだった。子供からのこういう扱いはちょっと気持ちが落ちる。
慧音のいかにも先生という講釈が遠ざかりながら聞こえる。
「さっきの彼女が、かの妖怪神社である博麗神社に居る博麗霊夢氏だよ。最近は里で見たことがある子もいるだろう。そもそもこの幻想郷では多層的な大結界の要であると同時に数々の異変を解決したと言われ――」
慧音は知らない情熱に後押しされて早口になる。
熱は入ってるが猛スピードで脇道に入ってしまった。これはこれで、眠りそうな授業かも。
全体的にはがっくりきたけども
完全な夢オチってやつは案外爽快だった。
だいたい、幻想郷じゃ夢だっていちいち洒落にならないことが多すぎるんだ。
それでも一応、ちょっと貸本屋の前を通って小鈴ちゃんの顔を見ておくことにした。
夢関係なく心配なんだもの。あの子。
忘れちゃうかもだけど、また思い出せば良いよ