昔々あるところに、一人の女の子が住んでおりました。この女の子はとても美しい子でしたが家が貧乏で、いつも裸足で過ごしておりました。そのせいで、綺麗な足の平は凸凹に硬くなり、足の甲は真っ赤になってしまっていました。
女の子が住んでいた村には、靴屋のお婆さんが住んでいました。お婆さんはいつも裸足の女の子を見かねて、その子のために一足の赤い靴を作りました。売り物の靴を作った余りの布切れを縫い合わせて作ったみすぼらしい靴でしたが、たいそう心のこもった靴でした。
女の子はお婆さんの贈り物に大喜びしましたが、靴を貰ったまさにその日、女の子のお母さんが病気で突然亡くなってしまいました。
女の子はお母さんのお葬式にもらったばかりの赤い靴を履いて行きました。お葬式には少し派手すぎる靴でしたが、他に靴を持っていなかったので仕方がなかったのです。
お葬式にはいろんな人が来ていました。その中に、お母さんのおばにあたる老婦人がいました。老婦人は女の子が赤い靴を履いているのを見てたいそう驚きました。なんて非常識な子なんでしょう! と。しかし、その靴があまりにみすぼらしいのを見て驚きはすぐに同情へと変わりました。老婦人は物凄く裕福、というほどではありませんでしたが、都会で、男爵とはいえ一応貴族の夫を持つ妻として暮らしていたのです。自分がもっと早く、めいの家が苦しい生活をしていたことに気が付いていたら、いくらか援助をしてあげることもできたでしょう。めいが早くに亡くなってしまったのも、その娘がこんな場違いでボロボロの靴を履いているのも、ある意味自分のせいなのです。
「私はこの子の母親のおばです。この身寄りのない子を私に引き取らせてはくれませんか」
老婦人はお坊さんにそうお願いして、女の子を養子にもらっていきました。
「このたびは可哀想だったわね。お名前はなんていうのかしら?」
老婦人に尋ねられても女の子はキョトンとしていました。女の子が住んでいた村、老婦人のめいが嫁にもらわれていった村の風習は少し変わっていて子供にはあえて名前をつけないのです。しかし、老婦人は女の子が靴だけでなく名前もない可哀想な子なのだと早とちりして、名前をつけてあげることにしました。
「今日から貴方の名前は里乃。気に入ってくれるかしら?」
里乃は嬉しそうにうなずきました。
「じゃあ里乃。お家に帰りましょうか」
†
里乃にとって、都会はまったくもって未知の世界でした。
まず、都会に向かう汽車が里乃にとっては物珍しいものでした。ホームに留まる汽車を見てこんな鉄の塊のお化けみたいなのが本当に動くのかと驚き、それの速さにもう一度驚きました。田んぼが次々と自分の後ろに流れていくのに見とれて窓を閉め忘れ、トンネルの中で煙をかぶって煤まみれになりもしましたが、それもまた、里乃にとっては珍しく楽しい出来事でした。
そして、都会の光景に里乃はただただ圧倒されました。村一番の大木よりも大きな建物がそこら中に建っていました。そして里乃達が着いたのは夜だというのに、その建物はピカピカと窓を光らせていたのです。ろうそくの火にすら困っていた里乃にとって、明るい夜というのは羨ましさを通り越して恐怖すら覚えるものでした。
興奮さめやらぬ中、里乃の都会での暮らしが始まりました。
老婦人はまず里乃の身なりを整えてやることにしました。いかにも田舎から出てきましたというつぎはぎだらけの服ではいじめられてしまうと思ったのです。当然靴も、都会に布の余りを縫っただけのような靴を履いている人など誰もいませんでしたから、新しい赤い靴を買ってやりました。里乃は新しいものの方が好きだったので大喜びして、迷わず新しい靴の方を履くことを選びました。こうして村の靴屋のお婆さんの愛情がこもった靴は僅か数日で履かれなくなって、納屋で埃をかぶることになってしまったのです。
†
数年が経ち、里乃は美しい少女に育っていました。彼女は自分の美しさに自信を持ち、派手なお化粧をするようになり、踊り子となって暮らしていました。老婦人夫婦、特に義理のお父さんは「仮にも貴族の娘がそんないやしい職につくとはけしからん」といい顔をしていなかったのですが、里乃はまったく聞く耳を持ちませんでした。
ある日、里乃の家に一人のお婆さんがやって来ました。昼間は休み、夜に仕事にいく暮らしをしていた里乃だけが家にいたので彼女が応対しました。
「大きくなったわねえ」
お婆さんは目を細めて里乃に話しかけるのですが、里乃はお婆さんが誰なのか分かりませんでした。ただお金や体目当てで言い寄ってくる人とも思えなかったので、里乃は適当な返事をしながらお婆さんの話を聞いていました。
「あの靴は今も持っているのかしら」
お婆さんがそう聞いたことで、里乃は、お婆さんが村の靴屋さんの人だとようやく思い出しました。どうにかしてか、お婆さんは里乃の引越し先を調べ当てて会いに来たのです。
里乃は納屋の方を見ました。お婆さんからもらった靴は、多分今もそこにあるのだと思いました。でも、長いこと置きっぱなしにしていたので、きっと埃まみれになってしまっているでしょう。ひょっとしたら、ネズミにかじられてしまっているかもしれません。そんな汚らしい場所に確認しに行きたくはなかったので、里乃は「分からないわ」とだけ答えました。
「まあ、いま履くにはきっと小さすぎるだろうからね。仕方ないわね」
仕方ないわね、そう言いつつも、お婆さんの顔はどこか寂しげでした。そして、曲がった背中を里乃に見せながら帰っていきました。
†
靴屋のお婆さんが亡くなったのは、それから一ヶ月後のことでした。
里乃の家にも、それを知らせる手紙が届きました。老婦人はわざわざ手紙が来ることを不思議がっていましたが、里乃が幼い頃お世話になっていた人なのだと知ると、お葬式に出るか、せめてお墓参りくらいはしていきなさいと、里乃に村に帰るためのお金を持たせました。そうして里乃は数日間、家を空けることになりました。
しかし、里乃は村には帰りませんでした。踊りに明け暮れて、お金は街で見つけた綺麗な赤い靴を買うのに使ってしまいました。
当然里乃は村には帰ったと嘘をついていたのですが、いくら里乃が大人びていたからと言ってもしょせんは子供の嘘。老婦人はすぐに嘘に気がついて、たいそう悲しくなりました。心が疲れたのと歳とで病気がちになり、靴屋のお婆さんが亡くなってからちょうど一年後、老婦人も亡くなってしまいました。
老婦人は亡くなる少し前に、里乃に「もうそろそろ靴屋のお婆さんの一周忌だろうから、せめて一度くらいはお墓参りに行ってあげなさい」と言っていました。義理のお父さんはいくら非行娘とはいえ、老婦人のお葬式くらいには出てくれるだろうと思っていました。
でも、里乃はお婆さんのお墓参りにも、老婦人のお葬式にも、どちらにも行きませんでした。確かに老婦人は里乃にとって大切な人ではありましたが、お葬式は退屈です。そして都会にはお葬式なんかよりもよっぽど楽しいことがたくさんあります。老婦人のお葬式の時間に、里乃はまた別の赤い靴を買っていました。
†
そして、その赤い靴を試しに履いてみたときのことです。里乃は、なんだか無性に楽しくなって、踊りたくなりました。新しい靴を手に入れたワクワクなんだろうな。里乃は試着室の中でステップを踏みました。赤い靴は、これまで履いたどんな靴よりもピッタリと自分にはまっているようでした。
里乃は満足しました。でも、足はステップをやめません。試着室の段差でつまずきそうになりましたが、足は踊ったままです。靴を脱ごうにもかがむことすら難しいので、新しい靴を履いたままお会計をしました。店員さんには、とても変な人に見えたことでしょう。里乃は、「この靴がとても気に入りまして。オホホ」と、ひきつった笑みでごまかしました。
靴屋を出てからも、足は好き勝手に踊ったままでした。そうしまいと思っても止めることができないのです。腰から上も足に合わせて踊らないとどうにも具合が悪いので仕方がなく踊りました。
昼間の都会には、里乃がいつも行っている踊り場なんかよりももっと大勢の人達がいました。しかし、里乃の踊りはその人達を誰一人として虜
にはしませんでした。みんな里乃のことを気味悪がって、見るべきではないと言いたげに、里乃を避けるようにしてすれ違っていきました。
里乃はまずはどうにかして家に帰らなければと、帰り道の方を向こうとしましたが踊る足のせいでどうにも上手くいきません。むしろ赤い靴が里乃の焦りをあざ笑っているかのように、家の隣町くらいの場所をぐるぐると周りはじめました。そうして日も暮れて、外からだいぶ人が消えた頃、公園で里乃は力尽きて気絶してしまいました。
里乃は夢を見ていました。いえ、本当に夢なのかどうかは分かりません。夢の舞台は里乃が倒れた公園でした。でも、足は自由に動かすことができて、そんな当たり前なことがむしろ現実離れしているように里乃には思えました。
夢の中で里乃は地べたに仰向けに横たわっていました。起き上がると、背中側から誰かの視線を感じました。里乃は振り向いて、そして視線が自分の下から向いているような気がしてしゃがみました。
一足の靴が里乃を見つめていました。おかしな話です。普通、靴に目はついていません。その靴にだって、本当に目がついていたわけではありませんでした。でも、里乃には靴が自分のことを見つめているとしか思えなかったのです。
里乃を見つめている靴は、昔村でお婆さんからもらった靴でした。靴は、自分のことをひどく恨んでいるように思えました。理不尽な、と里乃は思いましたが、恨まれる理由については分かる気がしました。
「悪かったわね」
里乃は靴を拾うために手を伸ばし、指先が靴に触れたところで目を覚ましました。
†
目が覚めると家の前の通りに立っていて、右手に靴を持っていました。
手に持った靴は夢に出てきた靴、お婆さんからもらった靴でした。夢遊病にかかったかのように眠ったまま家の納屋まで歩き、靴を取っていたようです。でも不思議なことに靴は新しいままでした。いえ、元がそうだったようにボロ布を合わせた粗末な靴なのですが、例えば埃で汚れているとか、虫食いになっているとか、そういう時間が流れたことによる古さがまったくないのです。里乃は不気味だと思いましたが、靴を持っているからなのか、赤い靴の呪いはおさまっていました。
でも困ったなあと里乃は思いました。靴を粗末に扱ったから呪われたのかなと思ったのですが、靴を大切にしようにも、この靴はもうまったく大きさが合いません。かわりに誰かにあげてしまおうか。でも、都会にこんなボロボロの靴を欲しがる人なんているのでしょうか?
里乃は裏通りを歩いてみました。すると、彼女が予想していた通りに物乞いの子が一人歩いていました。ちょうど村を出たころの里乃と同じくらいの背丈。そしてその子も裸足でした。
「靴、いらない?」
遠くから里乃が声をかけると、その子は嬉しそうに駆け寄ってきて、靴を受け取りました。
「お姉ちゃん、名前はなんていうの?」
いつもの里乃なら無視していたでしょうが、良いことをしたと気がよくなっていたので答えてあげることにしました。
「里乃っていうの。君の名前は?」
里乃は聞き返してみました。その子は嫌がっている様子でもありませんでしたが、答えもしませんでした。
昔の自分のように名前を持たない子。でも、都会にそんな風習が残っているとは思えませんでした。この子は本当に、「かわいそうな」名無しの子なのでしょう。
「じゃあ、お姉さんが名前をつけてあげよう。今日から君の名前は『舞』だ」
自分が舞うことが好きだったからか、里乃の頭の中に真っ先に思いついた名前がそれでした。
「ありがとう。里乃お姉ちゃん!」
舞と名付けられた子は、里乃にお礼を言って去っていきました。
†
これにてめでたしめでたし……とはなりませんでした。
赤い靴が呪われる原因となった色々な恨み。里乃はそのうちの一つは解決しましたが、残りの原因は解決もしなければ反省もしていませんでした。そして自分のことを棚に上げて文句ばかり言いながら帰り道を歩いていたからなのか、とうとう呪いがぶり返して、また踊りはじめてしまったのです。
今度は家に帰ることまではできましたが、踊りもやめれず靴も脱げずでは家にいようがいまいがたいして変わりません。
そして、里乃も困りましたが義理のお父さんはもっと困りました。外でこんな変なことをされ続けては悪い噂が立ちかねませんが、家に入れてやる気にもなりませんでした。そもそも自分の妻がこんな不良娘を連れて来なければ妻に先立たれることも、怪事件に出くわすこともなかったのです。義理のお父さんはどうにかして庭の、外から目立たない場所で踊っていてくれないかと悪戦苦闘しました。
そうして義理のお父さんが里乃を押し出そうとしているのを、塀の向こうから一人の女性が眺めていました。金髪で何やらよくわからない言葉を呟いています。異人さんかな、と里乃は思いました。
「私にその子を引き取らせてはくれないか?」
異人さんは顔に似合わず流暢な日本語で問いかけました。
「ぜひお願いします」
義理のお父さんはすぐにそう答えて、門をくぐって庭に入ってきた異人さんの方に里乃を押し出しました。いい厄介払いだ、くらいの気持ちだったのでしょう。里乃としてももうこの家にいる意味はないので構わなかったのですが、見捨てられた気分がして悲しくなりました。
異人さんは里乃の手をひいて、家の近くに停めていた馬車に里乃を乗せました。そして異人さんは御者
になにか言って自分も馬車に乗りました。異人さんが車に入ると、馬車は走り出しました。
「異人さん、どこに行くの?」
里乃は異人さんに聞きました。
「異人さんに連れて行かれる場所なんだから、外国に決まってるじゃないか」
異人さんはそう答えました。
里乃と異人さんの二人を乗せた馬車は、外国へと進んでいました。いえ、馬車に乗っていたのは三人です。異人さんは今朝里乃が会った物乞いの子、舞も馬車に乗せていました。外国とはどこなのか、どうして自分や舞を連れて行くのか、里乃にはさっぱり分かりませんでした。
†
馬車は港で止まりました。聞こえてくる言葉は変わらず日本語です。外国じゃないじゃないかと里乃はがっかりしましたが、日本から外国に行くのだから、確かに船に乗らなければ外国には行けないでしょう。学校はサボり気味でしたが、里乃にもそのくらいの学はありました。
港には大きな船が一隻泊まっていました。今度はあれに乗って外国に行くのかな。そう思いつつ、やっぱり踊ろうとする足をバタつかせながら異人さんに手を引かれていたのですが、疲れてしまっていたのか、踊り歩きながら寝てしまいました。
†
目が覚めると暗い部屋の中で、ベッドに横たわっていました。寝ている間に船に乗ったのかな、と思いましたがどうにも様子がおかしいです。波の揺れを全然感じず、塩の臭いもしないのです。里乃は船に乗ったことがないので、船というのは実は揺れないし海の臭いもしないものだと言われたらそうなんですかと答えるしかありません。でも不思議なことはやっぱり不思議です。
足は寝ながらも踊りを刻もうとしているようでしたがピクリとも動きませんでした。里乃が少し首を前に傾けて足元の方を見ると、異人さんが足を押さえつけているのが見えました。
「ふうむ。思ったより呪いは強いようだねえ」
「ここはどこなの?」
里乃は異人さんに聞きました。
「外国だよ」
「嘘おっしゃい。そんなにも訛りのない日本語を話しているじゃないの。異人さんなんて騙して、私達を連れ去ったんでしょ」
「嘘なんかついていない。紛れもなくここは外国さ。外国なんてのも、案外華々しくないものなんだよ。それに、」
異人さんは、優しくもおごそかな声で里乃に告げました。
「もし私が、君の呪いを解いてあげられると言ったら?」
「本当にそんなことできるの?」
「できるさ。でもその前に私は君を叱らなければならない。君は余りにも自分勝手で、たくさんの人の失望や恨みを買いすぎた。これまで君はどれだけの恩人を悲しませた?」
「……。それで心を入れ替えなさいなんて、口うるさいお母さんみたいなことを言うの?」
「これがおとぎ話ならそう言っただろうね。もしかしたら痛い目をみてもらわなければいけなかったかもしれない。それこそ足を切り落とすくらいのね。でも、これはおとぎ話なんかじゃあない。里乃、君の人生なんだ。人生は罪を認めて許されるだけとは限らない。罪を償うこともできず許されもせず、それでも前に進んでいくことだってある」
「許してもらえなかったら呪いも解けないんじゃないの?」
「おとぎ話じゃないからズルをしてもいいんだ。呪いを騙してやればいい。でもまあ、色々な意味で痛い目をみることになるかもしれないね」
「痛い目って、どんな?」
「君のこれまでの人生がなかったことになる。ワガママな踊り子としての君でなくなったら呪いも君から離れるだろう。でもそのかわりに、今までの記憶を忘れて一生私のしもべとして生きていかなければいけない」
「悪魔みたいなことを言うのね」
里乃はこれまでの人生を振り返ってみました。楽しいことも色々ありましたが、良くないこともたくさんありました。今思えばそのほとんどがもとをただせば自分のせいのような気もしましたが、異人さんが言うように、今更反省したところでどうにもならないのでしょう。赤い靴の呪いが解けるのなら、記憶を失うこともじゅうぶんに釣り合っているように思えました。
「分かったわ」
里乃は異人さんの提案を受け入れて静かに目を閉じました。こうして彼女は異人さんの忠実な家来となったのです。
†
「この絵本、なんだかすっきりとしない終わり方だねー」
後戸の国で、二童子が絵本を読んでいた。
「お師匠様。もし私達がこの本の主人公みたいな目にあったら助けてくれる?」
里乃がたまたま近くを通りがかった隠岐奈に絵本を見せながら尋ねた。
「ああその本のことか。もちろん。私はお前達を助けたじゃないか」
「助けたなんて、変なことを言うんですね。まるで本当にあった話みたいじゃないですか」
「本当にあったんだよ。それはお前達の『なれそめ』の話だ」
本に出てくる名前は二童子そのままだ。それなのに分からないのかと隠岐奈は少し呆れた。
「うっそだー。だって、僕と里乃、絵本の通りだと結構歳の差があることになるじゃん」
「童子に採用したときにはお前はまだ小さすぎたから、里乃くらいに成長してから人間を止めさせたんだ。五年くらい待たないといけなかったから私も大変だったんだぞ」
里乃も反論しようとした。絵本の里乃は脱げない赤い靴を履いていたが、自分が今履いている靴はピンク色で、呪いの靴でもない。
だから里乃は足元に顔を向けた。
改めて観察すると、使い続けていた靴は結構古くなってしまっていた。そして、ピンク色の塗装がところどころ剥がれていて、その下の血の色のように鮮やかな赤色の下地が顔をのぞかせていたのだった。
女の子が住んでいた村には、靴屋のお婆さんが住んでいました。お婆さんはいつも裸足の女の子を見かねて、その子のために一足の赤い靴を作りました。売り物の靴を作った余りの布切れを縫い合わせて作ったみすぼらしい靴でしたが、たいそう心のこもった靴でした。
女の子はお婆さんの贈り物に大喜びしましたが、靴を貰ったまさにその日、女の子のお母さんが病気で突然亡くなってしまいました。
女の子はお母さんのお葬式にもらったばかりの赤い靴を履いて行きました。お葬式には少し派手すぎる靴でしたが、他に靴を持っていなかったので仕方がなかったのです。
お葬式にはいろんな人が来ていました。その中に、お母さんのおばにあたる老婦人がいました。老婦人は女の子が赤い靴を履いているのを見てたいそう驚きました。なんて非常識な子なんでしょう! と。しかし、その靴があまりにみすぼらしいのを見て驚きはすぐに同情へと変わりました。老婦人は物凄く裕福、というほどではありませんでしたが、都会で、男爵とはいえ一応貴族の夫を持つ妻として暮らしていたのです。自分がもっと早く、めいの家が苦しい生活をしていたことに気が付いていたら、いくらか援助をしてあげることもできたでしょう。めいが早くに亡くなってしまったのも、その娘がこんな場違いでボロボロの靴を履いているのも、ある意味自分のせいなのです。
「私はこの子の母親のおばです。この身寄りのない子を私に引き取らせてはくれませんか」
老婦人はお坊さんにそうお願いして、女の子を養子にもらっていきました。
「このたびは可哀想だったわね。お名前はなんていうのかしら?」
老婦人に尋ねられても女の子はキョトンとしていました。女の子が住んでいた村、老婦人のめいが嫁にもらわれていった村の風習は少し変わっていて子供にはあえて名前をつけないのです。しかし、老婦人は女の子が靴だけでなく名前もない可哀想な子なのだと早とちりして、名前をつけてあげることにしました。
「今日から貴方の名前は里乃。気に入ってくれるかしら?」
里乃は嬉しそうにうなずきました。
「じゃあ里乃。お家に帰りましょうか」
†
里乃にとって、都会はまったくもって未知の世界でした。
まず、都会に向かう汽車が里乃にとっては物珍しいものでした。ホームに留まる汽車を見てこんな鉄の塊のお化けみたいなのが本当に動くのかと驚き、それの速さにもう一度驚きました。田んぼが次々と自分の後ろに流れていくのに見とれて窓を閉め忘れ、トンネルの中で煙をかぶって煤まみれになりもしましたが、それもまた、里乃にとっては珍しく楽しい出来事でした。
そして、都会の光景に里乃はただただ圧倒されました。村一番の大木よりも大きな建物がそこら中に建っていました。そして里乃達が着いたのは夜だというのに、その建物はピカピカと窓を光らせていたのです。ろうそくの火にすら困っていた里乃にとって、明るい夜というのは羨ましさを通り越して恐怖すら覚えるものでした。
興奮さめやらぬ中、里乃の都会での暮らしが始まりました。
老婦人はまず里乃の身なりを整えてやることにしました。いかにも田舎から出てきましたというつぎはぎだらけの服ではいじめられてしまうと思ったのです。当然靴も、都会に布の余りを縫っただけのような靴を履いている人など誰もいませんでしたから、新しい赤い靴を買ってやりました。里乃は新しいものの方が好きだったので大喜びして、迷わず新しい靴の方を履くことを選びました。こうして村の靴屋のお婆さんの愛情がこもった靴は僅か数日で履かれなくなって、納屋で埃をかぶることになってしまったのです。
†
数年が経ち、里乃は美しい少女に育っていました。彼女は自分の美しさに自信を持ち、派手なお化粧をするようになり、踊り子となって暮らしていました。老婦人夫婦、特に義理のお父さんは「仮にも貴族の娘がそんないやしい職につくとはけしからん」といい顔をしていなかったのですが、里乃はまったく聞く耳を持ちませんでした。
ある日、里乃の家に一人のお婆さんがやって来ました。昼間は休み、夜に仕事にいく暮らしをしていた里乃だけが家にいたので彼女が応対しました。
「大きくなったわねえ」
お婆さんは目を細めて里乃に話しかけるのですが、里乃はお婆さんが誰なのか分かりませんでした。ただお金や体目当てで言い寄ってくる人とも思えなかったので、里乃は適当な返事をしながらお婆さんの話を聞いていました。
「あの靴は今も持っているのかしら」
お婆さんがそう聞いたことで、里乃は、お婆さんが村の靴屋さんの人だとようやく思い出しました。どうにかしてか、お婆さんは里乃の引越し先を調べ当てて会いに来たのです。
里乃は納屋の方を見ました。お婆さんからもらった靴は、多分今もそこにあるのだと思いました。でも、長いこと置きっぱなしにしていたので、きっと埃まみれになってしまっているでしょう。ひょっとしたら、ネズミにかじられてしまっているかもしれません。そんな汚らしい場所に確認しに行きたくはなかったので、里乃は「分からないわ」とだけ答えました。
「まあ、いま履くにはきっと小さすぎるだろうからね。仕方ないわね」
仕方ないわね、そう言いつつも、お婆さんの顔はどこか寂しげでした。そして、曲がった背中を里乃に見せながら帰っていきました。
†
靴屋のお婆さんが亡くなったのは、それから一ヶ月後のことでした。
里乃の家にも、それを知らせる手紙が届きました。老婦人はわざわざ手紙が来ることを不思議がっていましたが、里乃が幼い頃お世話になっていた人なのだと知ると、お葬式に出るか、せめてお墓参りくらいはしていきなさいと、里乃に村に帰るためのお金を持たせました。そうして里乃は数日間、家を空けることになりました。
しかし、里乃は村には帰りませんでした。踊りに明け暮れて、お金は街で見つけた綺麗な赤い靴を買うのに使ってしまいました。
当然里乃は村には帰ったと嘘をついていたのですが、いくら里乃が大人びていたからと言ってもしょせんは子供の嘘。老婦人はすぐに嘘に気がついて、たいそう悲しくなりました。心が疲れたのと歳とで病気がちになり、靴屋のお婆さんが亡くなってからちょうど一年後、老婦人も亡くなってしまいました。
老婦人は亡くなる少し前に、里乃に「もうそろそろ靴屋のお婆さんの一周忌だろうから、せめて一度くらいはお墓参りに行ってあげなさい」と言っていました。義理のお父さんはいくら非行娘とはいえ、老婦人のお葬式くらいには出てくれるだろうと思っていました。
でも、里乃はお婆さんのお墓参りにも、老婦人のお葬式にも、どちらにも行きませんでした。確かに老婦人は里乃にとって大切な人ではありましたが、お葬式は退屈です。そして都会にはお葬式なんかよりもよっぽど楽しいことがたくさんあります。老婦人のお葬式の時間に、里乃はまた別の赤い靴を買っていました。
†
そして、その赤い靴を試しに履いてみたときのことです。里乃は、なんだか無性に楽しくなって、踊りたくなりました。新しい靴を手に入れたワクワクなんだろうな。里乃は試着室の中でステップを踏みました。赤い靴は、これまで履いたどんな靴よりもピッタリと自分にはまっているようでした。
里乃は満足しました。でも、足はステップをやめません。試着室の段差でつまずきそうになりましたが、足は踊ったままです。靴を脱ごうにもかがむことすら難しいので、新しい靴を履いたままお会計をしました。店員さんには、とても変な人に見えたことでしょう。里乃は、「この靴がとても気に入りまして。オホホ」と、ひきつった笑みでごまかしました。
靴屋を出てからも、足は好き勝手に踊ったままでした。そうしまいと思っても止めることができないのです。腰から上も足に合わせて踊らないとどうにも具合が悪いので仕方がなく踊りました。
昼間の都会には、里乃がいつも行っている踊り場なんかよりももっと大勢の人達がいました。しかし、里乃の踊りはその人達を誰一人として虜
にはしませんでした。みんな里乃のことを気味悪がって、見るべきではないと言いたげに、里乃を避けるようにしてすれ違っていきました。
里乃はまずはどうにかして家に帰らなければと、帰り道の方を向こうとしましたが踊る足のせいでどうにも上手くいきません。むしろ赤い靴が里乃の焦りをあざ笑っているかのように、家の隣町くらいの場所をぐるぐると周りはじめました。そうして日も暮れて、外からだいぶ人が消えた頃、公園で里乃は力尽きて気絶してしまいました。
里乃は夢を見ていました。いえ、本当に夢なのかどうかは分かりません。夢の舞台は里乃が倒れた公園でした。でも、足は自由に動かすことができて、そんな当たり前なことがむしろ現実離れしているように里乃には思えました。
夢の中で里乃は地べたに仰向けに横たわっていました。起き上がると、背中側から誰かの視線を感じました。里乃は振り向いて、そして視線が自分の下から向いているような気がしてしゃがみました。
一足の靴が里乃を見つめていました。おかしな話です。普通、靴に目はついていません。その靴にだって、本当に目がついていたわけではありませんでした。でも、里乃には靴が自分のことを見つめているとしか思えなかったのです。
里乃を見つめている靴は、昔村でお婆さんからもらった靴でした。靴は、自分のことをひどく恨んでいるように思えました。理不尽な、と里乃は思いましたが、恨まれる理由については分かる気がしました。
「悪かったわね」
里乃は靴を拾うために手を伸ばし、指先が靴に触れたところで目を覚ましました。
†
目が覚めると家の前の通りに立っていて、右手に靴を持っていました。
手に持った靴は夢に出てきた靴、お婆さんからもらった靴でした。夢遊病にかかったかのように眠ったまま家の納屋まで歩き、靴を取っていたようです。でも不思議なことに靴は新しいままでした。いえ、元がそうだったようにボロ布を合わせた粗末な靴なのですが、例えば埃で汚れているとか、虫食いになっているとか、そういう時間が流れたことによる古さがまったくないのです。里乃は不気味だと思いましたが、靴を持っているからなのか、赤い靴の呪いはおさまっていました。
でも困ったなあと里乃は思いました。靴を粗末に扱ったから呪われたのかなと思ったのですが、靴を大切にしようにも、この靴はもうまったく大きさが合いません。かわりに誰かにあげてしまおうか。でも、都会にこんなボロボロの靴を欲しがる人なんているのでしょうか?
里乃は裏通りを歩いてみました。すると、彼女が予想していた通りに物乞いの子が一人歩いていました。ちょうど村を出たころの里乃と同じくらいの背丈。そしてその子も裸足でした。
「靴、いらない?」
遠くから里乃が声をかけると、その子は嬉しそうに駆け寄ってきて、靴を受け取りました。
「お姉ちゃん、名前はなんていうの?」
いつもの里乃なら無視していたでしょうが、良いことをしたと気がよくなっていたので答えてあげることにしました。
「里乃っていうの。君の名前は?」
里乃は聞き返してみました。その子は嫌がっている様子でもありませんでしたが、答えもしませんでした。
昔の自分のように名前を持たない子。でも、都会にそんな風習が残っているとは思えませんでした。この子は本当に、「かわいそうな」名無しの子なのでしょう。
「じゃあ、お姉さんが名前をつけてあげよう。今日から君の名前は『舞』だ」
自分が舞うことが好きだったからか、里乃の頭の中に真っ先に思いついた名前がそれでした。
「ありがとう。里乃お姉ちゃん!」
舞と名付けられた子は、里乃にお礼を言って去っていきました。
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これにてめでたしめでたし……とはなりませんでした。
赤い靴が呪われる原因となった色々な恨み。里乃はそのうちの一つは解決しましたが、残りの原因は解決もしなければ反省もしていませんでした。そして自分のことを棚に上げて文句ばかり言いながら帰り道を歩いていたからなのか、とうとう呪いがぶり返して、また踊りはじめてしまったのです。
今度は家に帰ることまではできましたが、踊りもやめれず靴も脱げずでは家にいようがいまいがたいして変わりません。
そして、里乃も困りましたが義理のお父さんはもっと困りました。外でこんな変なことをされ続けては悪い噂が立ちかねませんが、家に入れてやる気にもなりませんでした。そもそも自分の妻がこんな不良娘を連れて来なければ妻に先立たれることも、怪事件に出くわすこともなかったのです。義理のお父さんはどうにかして庭の、外から目立たない場所で踊っていてくれないかと悪戦苦闘しました。
そうして義理のお父さんが里乃を押し出そうとしているのを、塀の向こうから一人の女性が眺めていました。金髪で何やらよくわからない言葉を呟いています。異人さんかな、と里乃は思いました。
「私にその子を引き取らせてはくれないか?」
異人さんは顔に似合わず流暢な日本語で問いかけました。
「ぜひお願いします」
義理のお父さんはすぐにそう答えて、門をくぐって庭に入ってきた異人さんの方に里乃を押し出しました。いい厄介払いだ、くらいの気持ちだったのでしょう。里乃としてももうこの家にいる意味はないので構わなかったのですが、見捨てられた気分がして悲しくなりました。
異人さんは里乃の手をひいて、家の近くに停めていた馬車に里乃を乗せました。そして異人さんは御者
になにか言って自分も馬車に乗りました。異人さんが車に入ると、馬車は走り出しました。
「異人さん、どこに行くの?」
里乃は異人さんに聞きました。
「異人さんに連れて行かれる場所なんだから、外国に決まってるじゃないか」
異人さんはそう答えました。
里乃と異人さんの二人を乗せた馬車は、外国へと進んでいました。いえ、馬車に乗っていたのは三人です。異人さんは今朝里乃が会った物乞いの子、舞も馬車に乗せていました。外国とはどこなのか、どうして自分や舞を連れて行くのか、里乃にはさっぱり分かりませんでした。
†
馬車は港で止まりました。聞こえてくる言葉は変わらず日本語です。外国じゃないじゃないかと里乃はがっかりしましたが、日本から外国に行くのだから、確かに船に乗らなければ外国には行けないでしょう。学校はサボり気味でしたが、里乃にもそのくらいの学はありました。
港には大きな船が一隻泊まっていました。今度はあれに乗って外国に行くのかな。そう思いつつ、やっぱり踊ろうとする足をバタつかせながら異人さんに手を引かれていたのですが、疲れてしまっていたのか、踊り歩きながら寝てしまいました。
†
目が覚めると暗い部屋の中で、ベッドに横たわっていました。寝ている間に船に乗ったのかな、と思いましたがどうにも様子がおかしいです。波の揺れを全然感じず、塩の臭いもしないのです。里乃は船に乗ったことがないので、船というのは実は揺れないし海の臭いもしないものだと言われたらそうなんですかと答えるしかありません。でも不思議なことはやっぱり不思議です。
足は寝ながらも踊りを刻もうとしているようでしたがピクリとも動きませんでした。里乃が少し首を前に傾けて足元の方を見ると、異人さんが足を押さえつけているのが見えました。
「ふうむ。思ったより呪いは強いようだねえ」
「ここはどこなの?」
里乃は異人さんに聞きました。
「外国だよ」
「嘘おっしゃい。そんなにも訛りのない日本語を話しているじゃないの。異人さんなんて騙して、私達を連れ去ったんでしょ」
「嘘なんかついていない。紛れもなくここは外国さ。外国なんてのも、案外華々しくないものなんだよ。それに、」
異人さんは、優しくもおごそかな声で里乃に告げました。
「もし私が、君の呪いを解いてあげられると言ったら?」
「本当にそんなことできるの?」
「できるさ。でもその前に私は君を叱らなければならない。君は余りにも自分勝手で、たくさんの人の失望や恨みを買いすぎた。これまで君はどれだけの恩人を悲しませた?」
「……。それで心を入れ替えなさいなんて、口うるさいお母さんみたいなことを言うの?」
「これがおとぎ話ならそう言っただろうね。もしかしたら痛い目をみてもらわなければいけなかったかもしれない。それこそ足を切り落とすくらいのね。でも、これはおとぎ話なんかじゃあない。里乃、君の人生なんだ。人生は罪を認めて許されるだけとは限らない。罪を償うこともできず許されもせず、それでも前に進んでいくことだってある」
「許してもらえなかったら呪いも解けないんじゃないの?」
「おとぎ話じゃないからズルをしてもいいんだ。呪いを騙してやればいい。でもまあ、色々な意味で痛い目をみることになるかもしれないね」
「痛い目って、どんな?」
「君のこれまでの人生がなかったことになる。ワガママな踊り子としての君でなくなったら呪いも君から離れるだろう。でもそのかわりに、今までの記憶を忘れて一生私のしもべとして生きていかなければいけない」
「悪魔みたいなことを言うのね」
里乃はこれまでの人生を振り返ってみました。楽しいことも色々ありましたが、良くないこともたくさんありました。今思えばそのほとんどがもとをただせば自分のせいのような気もしましたが、異人さんが言うように、今更反省したところでどうにもならないのでしょう。赤い靴の呪いが解けるのなら、記憶を失うこともじゅうぶんに釣り合っているように思えました。
「分かったわ」
里乃は異人さんの提案を受け入れて静かに目を閉じました。こうして彼女は異人さんの忠実な家来となったのです。
†
「この絵本、なんだかすっきりとしない終わり方だねー」
後戸の国で、二童子が絵本を読んでいた。
「お師匠様。もし私達がこの本の主人公みたいな目にあったら助けてくれる?」
里乃がたまたま近くを通りがかった隠岐奈に絵本を見せながら尋ねた。
「ああその本のことか。もちろん。私はお前達を助けたじゃないか」
「助けたなんて、変なことを言うんですね。まるで本当にあった話みたいじゃないですか」
「本当にあったんだよ。それはお前達の『なれそめ』の話だ」
本に出てくる名前は二童子そのままだ。それなのに分からないのかと隠岐奈は少し呆れた。
「うっそだー。だって、僕と里乃、絵本の通りだと結構歳の差があることになるじゃん」
「童子に採用したときにはお前はまだ小さすぎたから、里乃くらいに成長してから人間を止めさせたんだ。五年くらい待たないといけなかったから私も大変だったんだぞ」
里乃も反論しようとした。絵本の里乃は脱げない赤い靴を履いていたが、自分が今履いている靴はピンク色で、呪いの靴でもない。
だから里乃は足元に顔を向けた。
改めて観察すると、使い続けていた靴は結構古くなってしまっていた。そして、ピンク色の塗装がところどころ剥がれていて、その下の血の色のように鮮やかな赤色の下地が顔をのぞかせていたのだった。
踊り続けるというのはホラーなのかシュールなのか迷いながら読んでいたのですが、
元ネタがあるのですね。
どちらの話も殆ど知らずに読みましたが、それに加えて東方も綺麗に混ざっていて、
相変わらずお上手な作品でした。
里乃が奔放でわがままだったというのがそれっぽいのに新鮮でした
あまり懲りてないところも里乃っぽくてよかったです
とても面白かったです。
野口雨情の赤い靴は、娘を育てられなくて宣教師に養子に出した話が元のはずが(諸説あり)、悪いことをすると異国に連れてかれる歌、人攫いの歌のような認識になってしまったという。怖い描写のみが生き続けるのは人の心の常なんでしょうかね。
まあそんな話はどうでもよい...とても面白かったです。
さとまいは虚無から生えてくるとされます。わかりみ。
あくまで「助けてもらえるか」しか見ていないあたりに
ああ、これは同一人物で思考も同じなんだなと納得しました。
読みやすく面白かったです。