Coolier - 新生・東方創想話

クイックターン

2022/11/11 21:22:23
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湖が「泳げ」と言っている。
夏の日差しを全身に浴び、湖のほとりに立つあたいを呼んでいた。隣のミスティアも聞こえただろう。向こう岸を指さし、あたいは高らかに宣言した。

「あそこまで泳ぐ!」
「えぇ!私泳げないよ」

こっそり逃げ出そうとするミスティアの背中を叩く。手加減したのだが一メートルほど吹っ飛び、地面に倒れた。涙目でこちらを見てくるがスルーだ。あたいには秘策がある。これを教えたら夜雀でも泳げるはず。

「さぁ、着替えよう」
「ひぃ……」




スク水に着替えた。準備体操を終え、万全の体調だ。これからすることを考えると胸が弾む。震えているミスティアを置いてきぼりにして、あたいは湖に向かって走り、大の字でダイブした。水中は薄暗く、深くなるにつれより暗くなっていく。身体のあちこちが痛いが気分がいい。冷たいと思っていたが、夏の太陽に温められた湖は温水プールと化していた。これなら大丈夫だ。浮上してミスティアを呼ぶ。

「大丈夫、入ろう」
「チルノちゃん、やっぱりやめない?深いよこの湖」

俯いてぶつぶつと文句を言う夜雀。
こんなだから、あたい達はなめられるんだ!
あの日の屈辱を忘れたのか。湖の近くに住む妖精達が「チルノ自分のこと『最強』って言ってるけど、凄いことしたわけじゃないよね」「よね。あとミス……誰だったっけ」と噂していたのを耳にした日のことを。思い出すだけで腹が立つ。隠れてあたい達を見ている妖精たちに泳ぎ切るところを見せて、ぎゃふんと言わせるんだ。その為にミスティアには泳ぎ方を覚えてもらう。

「手を貸すから入って」

岸まで近づき、手を差し伸べる。ミスティアが握ったその時。

「えい」

手を引っ張った。油断していたのか、水しぶきを上げ無抵抗で水の中へ。溺れまいと水面を叩いて暴れる姿は新鮮だ。浮かんだかと思いきや沈んでいく。死なれても困るので腕を掴み、抱き寄せた。ミスティアの震えが身体に伝わってくる。水で焦る友達を見るのは恥ずかしい。あたいが泳ぎ方を教えなければいけない。ミスティアの目を見て言い放った。

「あたいの泳ぎ方を教えよう」
「え?」




この泳法を思いついたのは数日前のこと。その日、あたい達は寺子屋で慧音の授業を受けていた。水泳の授業であっても、慧音は座学で行う。頭の固いワーハクタクだ。

「えー水泳の歴史は……」

眠気に耐えながらつまらない授業を聞いていた。意識が飛ぶせいで断片しかわからないが、慧音が好きそうなことを教えているのだろう。いいから泳がせてよ、と内心思ったが声には出さない。大人だから。

「これは応用だが、クイックターンというテクニックがあって」

かっこいい言葉を聞いて眠気が吹っ飛んだ。応用、クイックターン、テクニック。そういうのを早く教えてほしい。

「折り返しのとき、壁の近くで回転して壁を蹴ることによって、手でタッチするより速くなる」

回転して壁を蹴ったら速くなるのか。今すぐ、水着に着替えて確かめてみたい。

「これは競泳のテクニックだから重要じゃない。忘れてくれてもいい」

慧音が何か言っていたが、妄想にふけっていたので聞き取れなかった。




「それから数日練習して仕上げてきた」
「チルノちゃん、嫌な予感がするのは気のせい?」

怯えた顔でそう言うミスティア。
友達を信じられないのか、薄情な奴だ。

「言葉で説明するより見せた方が早いよね」

ミスティアを湖から上がらせた後、水中に潜り込む。壁の近くにより、あたいは鼻で息を吐きながら回転した。

「まだまだ!」

スピードを上げて回転し続ける。あたいを中心にした渦巻きができた。そろそろだ。

「は!」

思いっきり壁を蹴る。水が爆発した音とともに、ロケットのように発射。気を付けの姿勢で泳いでいく。回転エネルギーを一気に放出することによって驚異的なスピードを出せるのだ。原理はわからないが前進すれば何でもいい。水の抵抗で目があけられないから、どこに行っているのかわからないのが欠点だけどね。けど、大丈夫。あたいの辞書に間違いの文字はない。
景気づけにスペルカードを使おう。芸術性も大事だし。

「凍符『パーフェクトフぼぼぼ!」

開けた口に水が入ってくる。このままだと溺れてしまう。酸素を求めて急浮上し、空中へ飛びだした。その時、どうやったら止まるのかわからないことに気づいた。いや、問題ない。向こう岸に着けば止まる。水中へ戻り加速していく。もうすぐ向こう岸だ、と直感した。ラストをどう飾るか。壁にタッチしてゴールするのが普通だろう。ただ、止まらないのでこのままだと壁に刺さる。なら空を飛ぼう!スピードが落ちたあと着地すればいい。

「ぶは」

波を立てて浮かび上がり、勢いそのままに空へと躍り出る。辺りを確認するために目を開けるとそこにあったのは、紅魔館だった。いつの間にか別の方向に行ってしまったのか。
想定外だが最高のフィナーレだ。頭で門を突き破り建物に激突した。




翌日、幻想郷中に激震が走った。妖精が紅魔館に宣戦布告した、と新聞に取り上げられたのだ。里ではこの話題で持ち切り。名だたる妖怪たちが事態に混乱している。この混乱は湖に住む妖精たちにも及んだ。湖にあたいが来ると、あっという間に妖精たちに囲まれた。

「まさか、チルノがそんなことをするなんて」
「チルノは最強、いや最恐の妖精だよ」
「チルノ万歳、チルノ万歳」

尊敬と恐れが混じった妖精たちの目。心地よい声援。あたいの力を見せつけることに成功したみたいだ。そういえば他にも目的があったような。考えていると、後ろからミスティアの声が聞こえた。

「置いていかないでよー」

ああ。思い出した。あたいは振り向き、走ってこちらへと向かってくるミスティアに大声で言った。

「泳ぎ方覚えよう!」
「嫌!」
こは
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コメント



0.200点簡易評価
2.100点名前が無い程度の能力 削除
チルノが勢いがあってよかったです
3.80点竹者 削除
よかったです
5.100点夏後冬前 削除
文章に腕力がありました。この強さで読者を殴りつけてくるスタイルめっちゃ好き。
6.90点めそふ 削除
勢いのある文章が好きでした
7.100点のくた 削除
笑った
8.100点南条 削除
面白かったです
1行目からパワーがあふれていてそのまま一気に最後まで読んでしまいました
最後まで勢いがあってよかったです
10.90点奇声を発する程度の能力 削除
楽しめました
12.80点名前が無い程度の能力 削除
動機や、やってることのくだらさ、行き着いた結末が実にチルノらしくて良かったです
13.60点名前が無い程度の能力 削除
うーん、ちょっと無理矢理かな?