「にゃあああああああああっ!!!!」
橙の裂帛の叫びと共に最終奥義が放たれる。
見るもの全てを呪う凄まじい憎悪の形相で呪詛を吐く異形の妖怪は全ての力を失い、そのおぞましくも忌まわしい姿を消失させていく。
「おのれおのれおのれ、馬鹿なぁ、この私が、式の式ごときにぃいいいいっ」
こうして、幻想郷支配を目論んだ異界よりの侵略者ニグジュギペグァは八雲紫の式である八雲藍の式、橙の前に敗れ去ったのである。
こうして、幻想郷を支配せんと八雲の屋敷を襲撃した侵略者は滅びた。
八雲藍に命じて橙を先行させ、その一部始終を見ていた八雲紫はおもむろに口を開く。
「藍」
「はい」
「今、何があったのが言ってみなさい」
「何と仰っても、ご覧の通り幻想郷へ侵略してきた異界異形の妖怪を橙が退治したのですが」
「ええ、素晴らしいわ」
「ありがとうございます。ほら、橙もお礼を言いなさい」
「ありがとうごニャいますニャ」
「うん。わざとらしいニャ使いありがとう。ところで藍」
「はい」
「橙はいつから黒髪になったのかしら」
「光の加減で黒髪に見えているのでは」
「橙ってそんなに強かったかしら」
「日頃の努力の成果です」
「さっき、夢想天生使ってなかった?」
「ちゃんと、猫らしくにゃあと叫んでいたではないですか」
「そこなの? そういう問題なの?」
「紫様の仰ることがよくわかりません」
「いや、その子、霊夢よね?」
「これは異な事を。霊夢には尻尾も猫耳も生えてはおりませぬ、なぁ、橙」
「私霊夢違うニャ、橙ニャ」
「うん。可愛いわよ。尻尾と猫耳をつけた霊夢はとても可愛いわよ。ええ、それは認めましょう。でも、それは霊夢よね?」
「ねぇ、藍、そろそろ約束のもの」
「霊夢、もう少し待ってくれ。約束はきちんと守るから安心してくれ」
「今、霊夢って言ったわよね!」
「今、橙の中で霊夢なりきりがマイブームでして」
「なんで律儀に付き合ってるの。いえ、そうじゃなくて、なんで霊夢がそこで橙の服を着ているの」
「……」
「……」
「そこで二人見つめ合って『何言ってんだコイツ』って顔はやめて。明らかにおかしいのはそっちだから」
「藍、話が違うわよ。紫がそろそろ気付きそうよ?」
「もう少し待ってくれ。もう少しで誤魔化せそうだから」
「どの辺りがもう少しなのか私にもわかるように説明して欲しいんだけど、藍。それから、気付きそうじゃなくて気付いているのよ、霊夢」
「藍、ご飯の約束忘れてないわよね?」
「霊夢、無視しないで。え、貴女、ご飯に惑わされたの?」
「安心しろ。因みに今夜の献立は紫様のスキマ停滞空間の中に保存しているとっておきのマグロを使った漬け丼だ」
「藍、私のスキマで勝手に魚を保存するのはやめなさい。最近生臭いのよ。あと、発酵食品もやめなさい、ひたすら臭いわ」
「何それ知らない、美味しそう」
「楽しみにしているがいい。紅魔館の洋食ごとき話にならんことを見せてやる」
「二人ともこっちの話を聞け」
五分後、列車にはねられた痕を身体中につけながら、霊夢と藍は正座していた。
「だってだって、藍が、美味しいご飯あげるからって、橙と一日入れ替わって欲しいって」
「橙が、一度巫女になってみたいというので……」
「ええわかったわ。貴女たちがアホだということが」
平身低頭の藍と、涙目で拗ねている霊夢。
ちなみに霊夢の猫尻尾(二本ある)はふるふると揺れている。とても出来がよろしい。 猫耳もピクピクと動いている。とても可愛らしい。
「……今回はたまたま、幻想郷への侵略者が現れ、それを霊夢が撃退しました。その功により不問としましょう」
「紫様……」
顔を上げた藍は、感極まったように再び頭を下げる。
「顔を上げなさい、藍。正直言うと私も見たいわ。橙の可愛い巫女さん姿を」
「はいっ!」
「それから霊夢、美味しいご飯が食べたいならそう言いなさい。貴女のご飯ぐらいいつでも準備してあげるわよ」
橙を可愛がる藍の気持ちはわかる。紫自身も、まだ藍が一人前になるまではどれほど可愛がっていたことか。そのとき迷惑をかけた知り合いも沢山いただろう。それを思い出せば、強く言える自分ではないなと心の中で苦笑する。
霊夢の気持ちもわかる。まだまだ甘えたいのだ、それを許すことのできない自分の立場が歯痒くもある。だからこそ、藍に対する甘えが出たのだろう。その意味では、藍に少し嫉妬してしまう自分もいる。
「さぁ、藍。橙を迎えに行って来なさい。戻ってきたら、四人で夕飯にしましょう」
美味しい漬け丼をね。と紫は言い足す。
その日、霊夢は漬け丼を大盛りで四杯食べた。
……十日後
「にゃあああああああああっ!!!!」
橙の裂帛の叫びと共に最終奥義が放たれる。
「藍」
「はい」
「あれ、魔理沙よね」
橙は、森の魔法使いにもなってみたかったのだ。
橙の裂帛の叫びと共に最終奥義が放たれる。
見るもの全てを呪う凄まじい憎悪の形相で呪詛を吐く異形の妖怪は全ての力を失い、そのおぞましくも忌まわしい姿を消失させていく。
「おのれおのれおのれ、馬鹿なぁ、この私が、式の式ごときにぃいいいいっ」
こうして、幻想郷支配を目論んだ異界よりの侵略者ニグジュギペグァは八雲紫の式である八雲藍の式、橙の前に敗れ去ったのである。
こうして、幻想郷を支配せんと八雲の屋敷を襲撃した侵略者は滅びた。
八雲藍に命じて橙を先行させ、その一部始終を見ていた八雲紫はおもむろに口を開く。
「藍」
「はい」
「今、何があったのが言ってみなさい」
「何と仰っても、ご覧の通り幻想郷へ侵略してきた異界異形の妖怪を橙が退治したのですが」
「ええ、素晴らしいわ」
「ありがとうございます。ほら、橙もお礼を言いなさい」
「ありがとうごニャいますニャ」
「うん。わざとらしいニャ使いありがとう。ところで藍」
「はい」
「橙はいつから黒髪になったのかしら」
「光の加減で黒髪に見えているのでは」
「橙ってそんなに強かったかしら」
「日頃の努力の成果です」
「さっき、夢想天生使ってなかった?」
「ちゃんと、猫らしくにゃあと叫んでいたではないですか」
「そこなの? そういう問題なの?」
「紫様の仰ることがよくわかりません」
「いや、その子、霊夢よね?」
「これは異な事を。霊夢には尻尾も猫耳も生えてはおりませぬ、なぁ、橙」
「私霊夢違うニャ、橙ニャ」
「うん。可愛いわよ。尻尾と猫耳をつけた霊夢はとても可愛いわよ。ええ、それは認めましょう。でも、それは霊夢よね?」
「ねぇ、藍、そろそろ約束のもの」
「霊夢、もう少し待ってくれ。約束はきちんと守るから安心してくれ」
「今、霊夢って言ったわよね!」
「今、橙の中で霊夢なりきりがマイブームでして」
「なんで律儀に付き合ってるの。いえ、そうじゃなくて、なんで霊夢がそこで橙の服を着ているの」
「……」
「……」
「そこで二人見つめ合って『何言ってんだコイツ』って顔はやめて。明らかにおかしいのはそっちだから」
「藍、話が違うわよ。紫がそろそろ気付きそうよ?」
「もう少し待ってくれ。もう少しで誤魔化せそうだから」
「どの辺りがもう少しなのか私にもわかるように説明して欲しいんだけど、藍。それから、気付きそうじゃなくて気付いているのよ、霊夢」
「藍、ご飯の約束忘れてないわよね?」
「霊夢、無視しないで。え、貴女、ご飯に惑わされたの?」
「安心しろ。因みに今夜の献立は紫様のスキマ停滞空間の中に保存しているとっておきのマグロを使った漬け丼だ」
「藍、私のスキマで勝手に魚を保存するのはやめなさい。最近生臭いのよ。あと、発酵食品もやめなさい、ひたすら臭いわ」
「何それ知らない、美味しそう」
「楽しみにしているがいい。紅魔館の洋食ごとき話にならんことを見せてやる」
「二人ともこっちの話を聞け」
五分後、列車にはねられた痕を身体中につけながら、霊夢と藍は正座していた。
「だってだって、藍が、美味しいご飯あげるからって、橙と一日入れ替わって欲しいって」
「橙が、一度巫女になってみたいというので……」
「ええわかったわ。貴女たちがアホだということが」
平身低頭の藍と、涙目で拗ねている霊夢。
ちなみに霊夢の猫尻尾(二本ある)はふるふると揺れている。とても出来がよろしい。 猫耳もピクピクと動いている。とても可愛らしい。
「……今回はたまたま、幻想郷への侵略者が現れ、それを霊夢が撃退しました。その功により不問としましょう」
「紫様……」
顔を上げた藍は、感極まったように再び頭を下げる。
「顔を上げなさい、藍。正直言うと私も見たいわ。橙の可愛い巫女さん姿を」
「はいっ!」
「それから霊夢、美味しいご飯が食べたいならそう言いなさい。貴女のご飯ぐらいいつでも準備してあげるわよ」
橙を可愛がる藍の気持ちはわかる。紫自身も、まだ藍が一人前になるまではどれほど可愛がっていたことか。そのとき迷惑をかけた知り合いも沢山いただろう。それを思い出せば、強く言える自分ではないなと心の中で苦笑する。
霊夢の気持ちもわかる。まだまだ甘えたいのだ、それを許すことのできない自分の立場が歯痒くもある。だからこそ、藍に対する甘えが出たのだろう。その意味では、藍に少し嫉妬してしまう自分もいる。
「さぁ、藍。橙を迎えに行って来なさい。戻ってきたら、四人で夕飯にしましょう」
美味しい漬け丼をね。と紫は言い足す。
その日、霊夢は漬け丼を大盛りで四杯食べた。
……十日後
「にゃあああああああああっ!!!!」
橙の裂帛の叫びと共に最終奥義が放たれる。
「藍」
「はい」
「あれ、魔理沙よね」
橙は、森の魔法使いにもなってみたかったのだ。
不思議そうな顔の藍と霊夢がかわいらしかったです