「うわぁあああああああっ!! アリスっ!」
「何よ!? いきなり! 魔理沙っ!」
「暇だ! ちょっと体貸せ!」
「やかましいっ!!」
アリスの裏拳が魔理沙の右脇腹に炸裂し、魔理沙はもんどり打って床にしこたま頭をぶっつける。こんなのは日常茶飯事のことである。
「そもそもこれから秋でしょ? 秋と言ったらあんたの好きなキノコの季節じゃないの。なのになんで暇なのよ?」
「甘いぜアリス! いくらキノコが生えたって暇なものは暇なんだよ。それにこの森のキノコは、もうほとんど食べ尽くしてしまったしな!」
「あんたはキノコを食べることしか興味ないの……?」
「だが、アリス! この森のキノコはおまえも知っての通り……美味しくない!」
「人の話聞きなさいっての! それはそうとまあ、確かにそうね……あんたはともかく、料理上手なこの私が、美味しくなるように調理してもヘドロのように不味かったんだからよっぽどよね」
「そうだ! そこで私は考えた! 究極の暇つぶし……じゃなくて魔法の森の食糧事情改善法を! というわけで、ちょっと耳を貸せ……ゴニョゴニョゴニョ」
「ええー……?」
――――
「こんにちはー! 魔理沙さーん! アリスさーん! リグルでーす!」
二人のところにリグル・ナイトバグがやってくる。彼女は二人に呼ばれてやってきたが、彼女は何も知らされていない。
「おお、待ってたぜ! リグル! まま、上がってくれ上がってくれ」
「いらっしゃい。待ってたわよ」
「ひぃいいいいーっ!? なんで二人ともそんなものをつけてるの!?」
リグルが驚いたのも無理はない。アリスはペストマスクを、魔理沙は今にもシュコーシュコー言いそうな某帝国を彷彿させる黒いマスクを身につけていたのだ。どう見ても不審者感限界突破サバイバーである。
「ああ、格好は気にするな。ちょっと実験をやっててな。シュコーシュコー……」
「え……? 実験? あ、もしかして、お取り込み中だった? それなら邪魔しちゃいけないから、私帰ったほうがいいよね……?」
思わず回れ右をしそうになるリグルの肩を、むんずと掴み魔理沙は言う。
「まぁまぁそう、堅いこと言わずに……おまえを呼んだ理由は他でもないんだ。アリスのやつがご馳走を作り過ぎちまってな。それでもったいないから、他のやつにもってことで、夏が過ぎて暇そうなおまえに白羽の矢が立ったのさ。シュコーシュコー……」
「え、そうだったの? ありがとう!! わーい!」
何も知らない彼女は、無邪気に喜ぶ。その様子を見て二人は密かにほくそ笑むのだった。
――――
「うわぁああ! こんなご馳走いいのっ!? 本当にいいの!?」
部屋に案内されたリグルは、目の前に広がる見たこともないようなご馳走に、思わず目をキラキラと玉虫色に輝かせている。
「さ、遠慮なく食べてね。味は私が保証するわ」
「ありがとう! アリスさん! いっただきまーす!!」
さっそくリグルは見たこともないようなご馳走に手をつける。よほど美味しかったのだろう。彼女は半分涙を浮かべながら恍惚の表情で料理を頬張っている。
その様子を二人は笑顔で眺めていたが、ふと魔理沙がぼそりとアリスに告げる。
「……おい、アリス。私にはあんな見たこともないようなご馳走作ってくれたことないじゃないか。今度食わせろ。シュコーシュコー」
「嫌よ。あんな見たこともないようなご馳走作るの結構大変なんだから」
「ちぇっアリスのケチ! ドM! 変態! シュコーシュコー」
「うるさい! どうでもいいけどあんた、その『シュコーシュコー』って口で言ってるでしょ?」
「……ちっ、ばれちまったらしょうがない。シュコーシュコー。さて、そうこうしているうちにリグルのやつ全部食べきったようだな。それじゃいくぞ!」
二人は部屋の窓を開けるとおもむろにマスクを脱ぎ捨てる。外の空気が急に入りこみ、リグルは思わず肩を震わせた。
「わっ!? 寒い!! 何!? 何!?」
「ああ、悪い悪い。驚かせちまったな。ちょっと換気したのさ。部屋の空気が、光化学スモッグ並に濁っていたからな」
「あ、そうなんだ? なーんだ、びっくりしたー」
胸をなで下ろすリグルに、アリスが近づいて尋ねる。
「それよりどうだったかしら? 私の料理は」
「そりゃもう! 最高! あんな美味しい料理、私生まれて始めて食べた! 感激したわ!」
「そう、それはなによりね」
「当然だぜ。なんたってアリスの手料理はいつでも最高だからな。さて、たらふく食べて腹一杯、花見で一杯、月見で一杯ってとこだろ。少し横になったらどうだ?」
「うーん。そういえば少し眠いかも……」
そう言って思わずあくびをするリグルに、アリスが優しく告げる。
「そうだと思って、あっちに布団用意しておいたから使って良いわよ」
「ありがとう……ああ、なんていい人達なんだろう……!」
リグルは感極まった様子で、用意してあったベッドに横になる。
「わーい。大きくてふかふかのお布団……! 大の字にもなれる! 最高ー……ZZZZZ」
言ってるそばから彼女は寝息を立てながら眠ってしまう。
――――
そしてリグルはふっと目を覚ます。一体いかほど眠ってしまったのか。妙に頭が重く感じる。よほど深い眠りだったのか……いや、違う。これは、物理的に頭が重いのだ。一体何事かと、彼女がおそるそる鏡を見ると……。
「いやあああああああああああっ!!!!?」
悲鳴を聞きつけた二人がやってくると、リグルは涙目で二人に訴えた。
「あ、あ、あ、あ、あ、頭……頭がぁ!!?」
彼女の頭には、立派な傘を広げた赤いキノコが生えていた。それを見た魔理沙は思わずガッツポーズをとる。
「よっしゃー! 実験成功だ!」
「……え?」
唖然としているリグルに、アリスは申し訳なさそうに尋ねる。
「……ねえ、リグル、冬虫夏草って知ってる?」
頭が真っ白状態のリグルは、目を白黒させながら呟くように答える。
「……とーちゅーかそー? …確か、虫から生えるキノコだっけ……」
「その通りだ!」
すかさず魔理沙が鼻息荒くして、話に割り込んでくる。
「そう! 冬虫夏草とは虫に寄生し、宿主となった虫の養分を吸い取って成長するキノコで、寄生された虫はキノコの菌糸に操られ、キノコの生育しやすい環境へと無理矢理移動させられてしまう! そして養分を吸い尽くされた宿主は干からびてミイラとなり、やがてその宿主の体を突き破ってキノコが生えてしまうのだ!」
「え……? 待って? まさか……」
話を聞いて思わず青ざめるリグルに、魔理沙が平然と告げる。
「そのまさかだ! おまえの頭から生えているキノコはまさしく冬虫夏草! ……そうだな。今は秋だからさしずめ夏虫秋草ってとこか。なんか語呂悪いな」
「語呂とかどうでもいいんだけど、え、えと、それで……な、なんで私の頭からキノコが……?」
「ふふふ、実はな。何を隠そう、この家にあらかじめキノコの胞子を蔓延させておいたのさ。そして何も知らないおまえはご馳走と一緒にその胞子も取り込んだってわけだ!」
「胞子を蔓延って……ああっ!? だから二人ともあんな変なマスクをしてたんだ!?」
「その通り! 唯一、予想外だったのはキノコに寄生されてもおまえが動けていることだな。……まぁ一応、おまえは妖怪だし、生命力が普通の虫より強いってことなんだろう」
と、一人で納得したように、うんうんと頷く魔理沙にリグルは涙目で訴える。
「勝手に納得してないで、はやくこれなんとかしてよー!?」
「心配するな。もちろんそのつもりだとも。その頭のキノコを50ドルで買い取ってやる!」
「えっ! お金とるのー!?」
「冗談だよ」
と、魔理沙はリグルから生えたキノコを抜き取ろうとする。こそばゆいのか、リグルは体をむずむずさせながら思わず声を上げる。
「あ、やぁ……ん! くすぐったい……!」
「気色悪い声出すな。気色悪い!」
魔理沙がツッコミを入れながら引っ張ると、ほどなくしてキノコはぼつんっと抜ける。
「おぉーなんて立派なキノコなことか。これは食いごたえがありそうだぜ!」
と、魔理沙が感心している側からだ。
「あれ、なんかあたまがむずむずする……って、あ!? あああぁー!?」
リグルの頭からさっきと同じ赤いキノコがにょっきり生えてくる。
「うあぁああああー!? またにょっきり生えてきたぁあっ!? なんで!? なんで……!? ナンデ……!?」
錯乱気味の彼女に、魔理沙はキノコに頬ずりしながら答える。
「そりゃそうさ。おまえの体にはキノコの菌糸が植え付けられているんだ。いくらでも生えてくるとも。おまえはキノコの苗床になったんだ。こうなってしまった以上、これからは貴重な食料源として私の家にだな……」
「うわぁーん!! もうやだぁあああああああああああー!!」
魔理沙の言葉を無視して、リグルはたまらず家から飛び出していってしまった。
「……ちっ。貴重な食料源に逃げられちまった。入り口封鎖しておくの忘れたぜ……」
傍観していたアリスが、からかうように告げる。
「あーあ。泣かせちゃった。魔理沙ったらいけないんだー」
「何を言う。そう言うおまえもノリノリだったろうが!」
魔理沙のツッコミに、アリスは思わず恥ずかしそうにコホンと咳払いをすると、話をそらす。
「……で、そんなことより、このキノコどうするのよ?」
「ああ、そんなの決まってるだろ」
「決まってるって……?」
「さあ! アリス。こいつを料理してくれ!」
「ええー……?」
――――
その夜二人は、キノコを見たこともないようなご馳走にして食べた。それはもうこの世のものとは思えないほどの美味さだったという。そして満足した二人は夢見心地のまま、ベッドで眠りにつく。
そして次の日の朝のこと。
魔理沙が眠りから覚めると、なんか頭が重いし、なんだか喉がえがらっぽい。どうやら相当深い眠りについてしまったようだと、寝ぼけ眼をこすりながら、彼女がふと鏡をのぞいてみると……。
「うわぁあああああああああああああ!?」
自分の姿を見た魔理沙は慌ててアリスのところに行く。彼女はテラスで優雅に朝の読書に耽っていた。
「アリス大変だ! 見てくれ! 私の頭にキノコが生えちまった! キノコ人間だ! マタンゴだ!」
「……何よ。朝から騒々しいわねえ」
「……って、うぉおおおおおおおおい!!?」
思わず魔理沙は再び驚きの声を上げる。それもそのはずで、うんざりした表情で振り向いたアリスの頭にも立派なキノコが生えていたとさ。
「何よ!? いきなり! 魔理沙っ!」
「暇だ! ちょっと体貸せ!」
「やかましいっ!!」
アリスの裏拳が魔理沙の右脇腹に炸裂し、魔理沙はもんどり打って床にしこたま頭をぶっつける。こんなのは日常茶飯事のことである。
「そもそもこれから秋でしょ? 秋と言ったらあんたの好きなキノコの季節じゃないの。なのになんで暇なのよ?」
「甘いぜアリス! いくらキノコが生えたって暇なものは暇なんだよ。それにこの森のキノコは、もうほとんど食べ尽くしてしまったしな!」
「あんたはキノコを食べることしか興味ないの……?」
「だが、アリス! この森のキノコはおまえも知っての通り……美味しくない!」
「人の話聞きなさいっての! それはそうとまあ、確かにそうね……あんたはともかく、料理上手なこの私が、美味しくなるように調理してもヘドロのように不味かったんだからよっぽどよね」
「そうだ! そこで私は考えた! 究極の暇つぶし……じゃなくて魔法の森の食糧事情改善法を! というわけで、ちょっと耳を貸せ……ゴニョゴニョゴニョ」
「ええー……?」
――――
「こんにちはー! 魔理沙さーん! アリスさーん! リグルでーす!」
二人のところにリグル・ナイトバグがやってくる。彼女は二人に呼ばれてやってきたが、彼女は何も知らされていない。
「おお、待ってたぜ! リグル! まま、上がってくれ上がってくれ」
「いらっしゃい。待ってたわよ」
「ひぃいいいいーっ!? なんで二人ともそんなものをつけてるの!?」
リグルが驚いたのも無理はない。アリスはペストマスクを、魔理沙は今にもシュコーシュコー言いそうな某帝国を彷彿させる黒いマスクを身につけていたのだ。どう見ても不審者感限界突破サバイバーである。
「ああ、格好は気にするな。ちょっと実験をやっててな。シュコーシュコー……」
「え……? 実験? あ、もしかして、お取り込み中だった? それなら邪魔しちゃいけないから、私帰ったほうがいいよね……?」
思わず回れ右をしそうになるリグルの肩を、むんずと掴み魔理沙は言う。
「まぁまぁそう、堅いこと言わずに……おまえを呼んだ理由は他でもないんだ。アリスのやつがご馳走を作り過ぎちまってな。それでもったいないから、他のやつにもってことで、夏が過ぎて暇そうなおまえに白羽の矢が立ったのさ。シュコーシュコー……」
「え、そうだったの? ありがとう!! わーい!」
何も知らない彼女は、無邪気に喜ぶ。その様子を見て二人は密かにほくそ笑むのだった。
――――
「うわぁああ! こんなご馳走いいのっ!? 本当にいいの!?」
部屋に案内されたリグルは、目の前に広がる見たこともないようなご馳走に、思わず目をキラキラと玉虫色に輝かせている。
「さ、遠慮なく食べてね。味は私が保証するわ」
「ありがとう! アリスさん! いっただきまーす!!」
さっそくリグルは見たこともないようなご馳走に手をつける。よほど美味しかったのだろう。彼女は半分涙を浮かべながら恍惚の表情で料理を頬張っている。
その様子を二人は笑顔で眺めていたが、ふと魔理沙がぼそりとアリスに告げる。
「……おい、アリス。私にはあんな見たこともないようなご馳走作ってくれたことないじゃないか。今度食わせろ。シュコーシュコー」
「嫌よ。あんな見たこともないようなご馳走作るの結構大変なんだから」
「ちぇっアリスのケチ! ドM! 変態! シュコーシュコー」
「うるさい! どうでもいいけどあんた、その『シュコーシュコー』って口で言ってるでしょ?」
「……ちっ、ばれちまったらしょうがない。シュコーシュコー。さて、そうこうしているうちにリグルのやつ全部食べきったようだな。それじゃいくぞ!」
二人は部屋の窓を開けるとおもむろにマスクを脱ぎ捨てる。外の空気が急に入りこみ、リグルは思わず肩を震わせた。
「わっ!? 寒い!! 何!? 何!?」
「ああ、悪い悪い。驚かせちまったな。ちょっと換気したのさ。部屋の空気が、光化学スモッグ並に濁っていたからな」
「あ、そうなんだ? なーんだ、びっくりしたー」
胸をなで下ろすリグルに、アリスが近づいて尋ねる。
「それよりどうだったかしら? 私の料理は」
「そりゃもう! 最高! あんな美味しい料理、私生まれて始めて食べた! 感激したわ!」
「そう、それはなによりね」
「当然だぜ。なんたってアリスの手料理はいつでも最高だからな。さて、たらふく食べて腹一杯、花見で一杯、月見で一杯ってとこだろ。少し横になったらどうだ?」
「うーん。そういえば少し眠いかも……」
そう言って思わずあくびをするリグルに、アリスが優しく告げる。
「そうだと思って、あっちに布団用意しておいたから使って良いわよ」
「ありがとう……ああ、なんていい人達なんだろう……!」
リグルは感極まった様子で、用意してあったベッドに横になる。
「わーい。大きくてふかふかのお布団……! 大の字にもなれる! 最高ー……ZZZZZ」
言ってるそばから彼女は寝息を立てながら眠ってしまう。
――――
そしてリグルはふっと目を覚ます。一体いかほど眠ってしまったのか。妙に頭が重く感じる。よほど深い眠りだったのか……いや、違う。これは、物理的に頭が重いのだ。一体何事かと、彼女がおそるそる鏡を見ると……。
「いやあああああああああああっ!!!!?」
悲鳴を聞きつけた二人がやってくると、リグルは涙目で二人に訴えた。
「あ、あ、あ、あ、あ、頭……頭がぁ!!?」
彼女の頭には、立派な傘を広げた赤いキノコが生えていた。それを見た魔理沙は思わずガッツポーズをとる。
「よっしゃー! 実験成功だ!」
「……え?」
唖然としているリグルに、アリスは申し訳なさそうに尋ねる。
「……ねえ、リグル、冬虫夏草って知ってる?」
頭が真っ白状態のリグルは、目を白黒させながら呟くように答える。
「……とーちゅーかそー? …確か、虫から生えるキノコだっけ……」
「その通りだ!」
すかさず魔理沙が鼻息荒くして、話に割り込んでくる。
「そう! 冬虫夏草とは虫に寄生し、宿主となった虫の養分を吸い取って成長するキノコで、寄生された虫はキノコの菌糸に操られ、キノコの生育しやすい環境へと無理矢理移動させられてしまう! そして養分を吸い尽くされた宿主は干からびてミイラとなり、やがてその宿主の体を突き破ってキノコが生えてしまうのだ!」
「え……? 待って? まさか……」
話を聞いて思わず青ざめるリグルに、魔理沙が平然と告げる。
「そのまさかだ! おまえの頭から生えているキノコはまさしく冬虫夏草! ……そうだな。今は秋だからさしずめ夏虫秋草ってとこか。なんか語呂悪いな」
「語呂とかどうでもいいんだけど、え、えと、それで……な、なんで私の頭からキノコが……?」
「ふふふ、実はな。何を隠そう、この家にあらかじめキノコの胞子を蔓延させておいたのさ。そして何も知らないおまえはご馳走と一緒にその胞子も取り込んだってわけだ!」
「胞子を蔓延って……ああっ!? だから二人ともあんな変なマスクをしてたんだ!?」
「その通り! 唯一、予想外だったのはキノコに寄生されてもおまえが動けていることだな。……まぁ一応、おまえは妖怪だし、生命力が普通の虫より強いってことなんだろう」
と、一人で納得したように、うんうんと頷く魔理沙にリグルは涙目で訴える。
「勝手に納得してないで、はやくこれなんとかしてよー!?」
「心配するな。もちろんそのつもりだとも。その頭のキノコを50ドルで買い取ってやる!」
「えっ! お金とるのー!?」
「冗談だよ」
と、魔理沙はリグルから生えたキノコを抜き取ろうとする。こそばゆいのか、リグルは体をむずむずさせながら思わず声を上げる。
「あ、やぁ……ん! くすぐったい……!」
「気色悪い声出すな。気色悪い!」
魔理沙がツッコミを入れながら引っ張ると、ほどなくしてキノコはぼつんっと抜ける。
「おぉーなんて立派なキノコなことか。これは食いごたえがありそうだぜ!」
と、魔理沙が感心している側からだ。
「あれ、なんかあたまがむずむずする……って、あ!? あああぁー!?」
リグルの頭からさっきと同じ赤いキノコがにょっきり生えてくる。
「うあぁああああー!? またにょっきり生えてきたぁあっ!? なんで!? なんで……!? ナンデ……!?」
錯乱気味の彼女に、魔理沙はキノコに頬ずりしながら答える。
「そりゃそうさ。おまえの体にはキノコの菌糸が植え付けられているんだ。いくらでも生えてくるとも。おまえはキノコの苗床になったんだ。こうなってしまった以上、これからは貴重な食料源として私の家にだな……」
「うわぁーん!! もうやだぁあああああああああああー!!」
魔理沙の言葉を無視して、リグルはたまらず家から飛び出していってしまった。
「……ちっ。貴重な食料源に逃げられちまった。入り口封鎖しておくの忘れたぜ……」
傍観していたアリスが、からかうように告げる。
「あーあ。泣かせちゃった。魔理沙ったらいけないんだー」
「何を言う。そう言うおまえもノリノリだったろうが!」
魔理沙のツッコミに、アリスは思わず恥ずかしそうにコホンと咳払いをすると、話をそらす。
「……で、そんなことより、このキノコどうするのよ?」
「ああ、そんなの決まってるだろ」
「決まってるって……?」
「さあ! アリス。こいつを料理してくれ!」
「ええー……?」
――――
その夜二人は、キノコを見たこともないようなご馳走にして食べた。それはもうこの世のものとは思えないほどの美味さだったという。そして満足した二人は夢見心地のまま、ベッドで眠りにつく。
そして次の日の朝のこと。
魔理沙が眠りから覚めると、なんか頭が重いし、なんだか喉がえがらっぽい。どうやら相当深い眠りについてしまったようだと、寝ぼけ眼をこすりながら、彼女がふと鏡をのぞいてみると……。
「うわぁあああああああああああああ!?」
自分の姿を見た魔理沙は慌ててアリスのところに行く。彼女はテラスで優雅に朝の読書に耽っていた。
「アリス大変だ! 見てくれ! 私の頭にキノコが生えちまった! キノコ人間だ! マタンゴだ!」
「……何よ。朝から騒々しいわねえ」
「……って、うぉおおおおおおおおい!!?」
思わず魔理沙は再び驚きの声を上げる。それもそのはずで、うんざりした表情で振り向いたアリスの頭にも立派なキノコが生えていたとさ。
最初から最後まで勢いがよくて一気に読めました
怖がっているリグルがかわいらしかったです
テンションの高さとテンポの良さがあって読みやすくて面白かったです。