その少女は封印の魔術が使える家系に生まれた。そのためその少女は幼い頃から封印術を学んである程度使えるようになっていた。
だが怪物達はそんな家系を疎ましく思っていた。だからある日彼女の村は怪物に襲われた。
封印術で対抗しようにも数が多すぎる。だから少女は逃がされた。だが逃げる少女にも追っ手がかかる。木の根に躓いた少女は洞穴へ転がり落ちる。それでも彼女は走る。追っ手から逃げる為に洞穴の奥へ奥へと。
気がつくと洞穴は天然の物ではなく明らかに人工物である物へと変わっていた。そして最深部に扉が一つ。扉をくぐった先の部屋には剣が置いてあった。出口は今入ってきた扉のみ。つまり追い詰められたのだ。追っ手が扉から入ってくる。少女は一か八か剣を手に取る。すると剣はひとりでに動き少女は怪物を切り裂いていた。怪物の生命力が流れ込んでくる。力が湧き上がるのを感じた少女は剣を持って来た道を引き返した。
村へ帰るとすでに生存者はいなかった。少女は怒りにまかせ残っていた怪物を全て斬殺した。そして家族の亡骸の前で泣いた。ひとしきり泣いた後彼女は母の亡骸から赤いリボンをとる。赤いリボンを握りしめ少女は復讐を誓った。
それからというもの復讐に取り憑かれた少女は来る日も来る日も怪物を殺し続けた。
角がある怪物
翼がある怪物
人型の怪物
獣のような怪物
どのような怪物であろうと関係なく斬り殺した。
老若男女関係なく皆平等に斬り殺した。
斬って斬って斬り殺し続けた。
それから幾星霜、少女が女性へと姿を変える程度の年月が経った頃だった。彼女の人生に転機が訪れた。
それは怪物に襲われた男を助けた時だった。彼女は男に恋をした。一目惚れだった。
フードを深くかぶってたので顔は見られなかったがきっと赤くなっていただろう。とりあえず平静を装ってその場を離れた。
女性は近くにあった洞穴の中へ入っていった。そしてその最深部で持っていた剣を手放し封印した。そうして復讐鬼としての彼女は終わりを迎えた。
その後は男の住む村へと行った。村の人は見ず知らずの女性の事を歓迎してくれた。彼女は無事村の一人となった。そしてしばらくして男性に気持ちを打ち明け二人は結ばれた。
そして彼女は幸せに暮らした。
いや、彼女は幸せに暮らすはずだった。
女性が木の実や野草を取りに村の外へと出た時の事だ。彼女は野盗にさらわれてしまった。
「綺麗な女だな、高く売れそうだぜ。でもせっかくだから売る前に楽しませて貰うか。」
そんな声が縛られ猿轡を噛まされた女性の耳に届く。
(嫌だ!)
女性は思った。
-なら抵抗すればいい
女性の中から声がする。
(でもどうやって?)
-力なら君の中にある
(私の中に?)
女性は神経を集中する。自分の中に黒い何かが渦巻いているのが分かった。女性はその流れに身を任せる。女性の意識は闇の中に沈んでいった。
野盗の一人が女性に近づく。すると女性の手が男の方へと伸ばされた。
縛っていたはずなのにどうして?その言葉の代わりに野盗の口から出てきたのは血反吐だった。女性の手が野盗の胸を貫いていた。
それをみた別の野盗が武器を持って女性に襲いかかる。しかし彼の足に何かが絡みついた。それは彼自身の影だった。影は野盗の体を這い上がってく。振り解こうとするがびくともしない。そのまま影は野盗を絞め殺した。
野盗の一人が逃げだそうとした。が、彼は何かにぶつかってしまう。それは闇の壁だった。出口はその壁がある場所のみ。逃げ場など無かった。野盗は全員女性に蹂躙された。
女性が気がつくと周りには血塗れのかつて野盗だった者達。返り血を浴びてる事から誰がやったかは明白だった。女性は外に飛び出した。近くにあった泉で血を洗い流す。泉に映る自分の顔を見つめる。妖しく輝く赤い瞳が見つめ返してきた。女性は悟った。自分は多くの怪物を屠りその生命力を奪ってきた。そして大量の怪物の生命力をその身に受け入れた事で自分も怪物へと変異してしまったのだと。怪物となった私はもう彼とは一緒に居られない。女性は母の形見のリボンに封印術を掛けるとそれを自分の髪に結んだ。
居なくなった女性を探しに村を出た男は泉の近くで少女を見つける。
「お兄さん、こんなところでどうしたの?」
少女に話しかけられ男は答える。
「人を探しているんだ。君みたいな金髪と赤い瞳をしている女性で名前はルーミアっていうんだ。」
「そーなのかー。悪いけど見てないなー。」
男は肩を落とす。ここまで探して見つからないならこれ以上の捜索は無駄だろう。
ふと少女を見ると彼女は女性に似ていた。男はつい声を掛けてしまった。
「君、よかったらうちに来ないか?」
少女は少しだけ考える。
「うーん、私人間じゃないからいつかお兄さんを食べてしまう。でもお兄さんは食べてはいけない人類な気がするから、ごめんね。」
それだけ言い残して少女は夜の闇へと消えていった。
だが怪物達はそんな家系を疎ましく思っていた。だからある日彼女の村は怪物に襲われた。
封印術で対抗しようにも数が多すぎる。だから少女は逃がされた。だが逃げる少女にも追っ手がかかる。木の根に躓いた少女は洞穴へ転がり落ちる。それでも彼女は走る。追っ手から逃げる為に洞穴の奥へ奥へと。
気がつくと洞穴は天然の物ではなく明らかに人工物である物へと変わっていた。そして最深部に扉が一つ。扉をくぐった先の部屋には剣が置いてあった。出口は今入ってきた扉のみ。つまり追い詰められたのだ。追っ手が扉から入ってくる。少女は一か八か剣を手に取る。すると剣はひとりでに動き少女は怪物を切り裂いていた。怪物の生命力が流れ込んでくる。力が湧き上がるのを感じた少女は剣を持って来た道を引き返した。
村へ帰るとすでに生存者はいなかった。少女は怒りにまかせ残っていた怪物を全て斬殺した。そして家族の亡骸の前で泣いた。ひとしきり泣いた後彼女は母の亡骸から赤いリボンをとる。赤いリボンを握りしめ少女は復讐を誓った。
それからというもの復讐に取り憑かれた少女は来る日も来る日も怪物を殺し続けた。
角がある怪物
翼がある怪物
人型の怪物
獣のような怪物
どのような怪物であろうと関係なく斬り殺した。
老若男女関係なく皆平等に斬り殺した。
斬って斬って斬り殺し続けた。
それから幾星霜、少女が女性へと姿を変える程度の年月が経った頃だった。彼女の人生に転機が訪れた。
それは怪物に襲われた男を助けた時だった。彼女は男に恋をした。一目惚れだった。
フードを深くかぶってたので顔は見られなかったがきっと赤くなっていただろう。とりあえず平静を装ってその場を離れた。
女性は近くにあった洞穴の中へ入っていった。そしてその最深部で持っていた剣を手放し封印した。そうして復讐鬼としての彼女は終わりを迎えた。
その後は男の住む村へと行った。村の人は見ず知らずの女性の事を歓迎してくれた。彼女は無事村の一人となった。そしてしばらくして男性に気持ちを打ち明け二人は結ばれた。
そして彼女は幸せに暮らした。
いや、彼女は幸せに暮らすはずだった。
女性が木の実や野草を取りに村の外へと出た時の事だ。彼女は野盗にさらわれてしまった。
「綺麗な女だな、高く売れそうだぜ。でもせっかくだから売る前に楽しませて貰うか。」
そんな声が縛られ猿轡を噛まされた女性の耳に届く。
(嫌だ!)
女性は思った。
-なら抵抗すればいい
女性の中から声がする。
(でもどうやって?)
-力なら君の中にある
(私の中に?)
女性は神経を集中する。自分の中に黒い何かが渦巻いているのが分かった。女性はその流れに身を任せる。女性の意識は闇の中に沈んでいった。
野盗の一人が女性に近づく。すると女性の手が男の方へと伸ばされた。
縛っていたはずなのにどうして?その言葉の代わりに野盗の口から出てきたのは血反吐だった。女性の手が野盗の胸を貫いていた。
それをみた別の野盗が武器を持って女性に襲いかかる。しかし彼の足に何かが絡みついた。それは彼自身の影だった。影は野盗の体を這い上がってく。振り解こうとするがびくともしない。そのまま影は野盗を絞め殺した。
野盗の一人が逃げだそうとした。が、彼は何かにぶつかってしまう。それは闇の壁だった。出口はその壁がある場所のみ。逃げ場など無かった。野盗は全員女性に蹂躙された。
女性が気がつくと周りには血塗れのかつて野盗だった者達。返り血を浴びてる事から誰がやったかは明白だった。女性は外に飛び出した。近くにあった泉で血を洗い流す。泉に映る自分の顔を見つめる。妖しく輝く赤い瞳が見つめ返してきた。女性は悟った。自分は多くの怪物を屠りその生命力を奪ってきた。そして大量の怪物の生命力をその身に受け入れた事で自分も怪物へと変異してしまったのだと。怪物となった私はもう彼とは一緒に居られない。女性は母の形見のリボンに封印術を掛けるとそれを自分の髪に結んだ。
居なくなった女性を探しに村を出た男は泉の近くで少女を見つける。
「お兄さん、こんなところでどうしたの?」
少女に話しかけられ男は答える。
「人を探しているんだ。君みたいな金髪と赤い瞳をしている女性で名前はルーミアっていうんだ。」
「そーなのかー。悪いけど見てないなー。」
男は肩を落とす。ここまで探して見つからないならこれ以上の捜索は無駄だろう。
ふと少女を見ると彼女は女性に似ていた。男はつい声を掛けてしまった。
「君、よかったらうちに来ないか?」
少女は少しだけ考える。
「うーん、私人間じゃないからいつかお兄さんを食べてしまう。でもお兄さんは食べてはいけない人類な気がするから、ごめんね。」
それだけ言い残して少女は夜の闇へと消えていった。
血塗られた人生を歩むうちに少女も妖怪になってしまったのだと思うと悲しい気持ちになりました
とはいえ多分少女の正体はルーミアなのだろうという予測がつきつつも、彼女自身が封印の魔術を使えるという設定でリボンをつける意味を持たせるなどの解釈の落とし込みは素敵でした。