Coolier - 新生・東方創想話

秋想魔郷 ~魔女の涙~

2022/07/28 16:20:11
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「ちょっと、どこまで登る気なの?」
「そうだな……とりあえず、景色が見えるまでだなっ」
「それって、頂上なんじゃ……」

 この日、アリスと魔理沙は近くの山に来ていた。
 夏も終わり、辺りは紅葉で満ちていた。風が吹くたび、やや肌寒さを感じる。

「おっ見ろよアリス! 柿が生ってるぜ!」
「待ってよ……魔理沙……」

 後ろを振り返ると、声は聞こえるがまだ下の方に居た。
 息を切らし、ペースが落ちていく様子のアリス。それに比べて、魔理沙は先に居るが息を切らしておらず、余裕が見られる。

「まったく困ったもんだぜ。普段から外に出ないから、体力が落ちるんだぞ?」
「魔理沙の体力が桁外れなのよ……ハア」

 なんとか魔理沙に追いついたアリス。
 膝に手をつき、ハアハア、と息を切らす。

「無理せずに、飛んでくれば良かったんじゃないのか?」
「ハア……ハア……」
「しゃべれないほど疲れてるのか……」

 別に大した山道でもないはずなんだけど、と思う魔理沙。
 ガサガサッ――と、二人のすぐ近くの茂みから音が聞こえた。

「! 妖怪か?」

 瞬時に戦闘態勢に入る魔理沙。だが、アリスはそれどころではない。まだ体力が回復していない状態なのだ。

「出て来い!」

 魔理沙が大声を出すと、茂みから音の正体が姿を現した。

「その声、やはり魔理沙さんでしたか」
「なんだ妖怪じゃないのかよ……」
「あら……ウィルソンじゃない……久しぶりね」

 彼女の名前は、ウィルソン。淡い橙の髪に、紫の瞳が特徴……ちなみに、見た目は細身だが、意外とがっしりとした体つきをしている。

「アリスさん……あの、たいぶ息を切らしていますけど、大丈夫ですか? 酸欠?」
「ええ……大丈夫」

 とても大丈夫には見えない。

「なあウィルソン」
「はい?」
「こっちの生活には慣れたか?」

「……ボチボチってところですかね」
「そうか……よしっ! 行くぞアリスー」
「ちょ、もう少しだけ休ませて」
「日が暮れるぞー」

 魔理沙はアリスを引きずり、その場を後にした。
 その様子を少し不思議そうな表情で、ウィルソンは見ている。

「やはり、変わったところですね……ここは」

 青く広い空を見上げつぶやく。
 彼女が幻想郷に来る前……過去の出来事を思い出す。だがそれは、決して良い思い出とは言えない、過去の話――。

◇◇◇

 今から十六年前……彼女はここ、天空都市ミスティルにて命を授かった。

「あなた……元気な女の子ですよ」
「ああ……この世に生まれてきてくれて、本当にありがとう」
「紫の瞳、この子はきっと将来立派な――になるわ」
「――か……よしっ決めたぞ! この子の名前は、レイだ!」
「レイ……良い名前ね。レイ、あなたのお父さんとお母さんですよー」

 母は指先で、レイの唇に触れる。すると、レイは笑顔で笑い始めた。

「まるで天使みたいね」
「いいや違う……レイは天使みたいではなく、私たちの天使そのものだ!」

 その場にいた全員が、幸福で満たされた。
 この家族はきっと、この先も幸せな家族でいられるのだろうと、誰しもがそう思っていた。しかし、それが叶ことはなかった。
 レイが物心つく前に、両親は何者かに殺害されてしまった。互いの祖父母も他界しており、親戚もいなかったレイは、孤児院に預けられることになった。
 言葉を覚えるようになるとレイは時々、両親のことについて話を聞いてくることもしょっちゅうあった。まだ小さい子に、親が殺されたなど、言えるはずもなかった。そのたびに、両親は仕事が忙しくて中々会えないと伝えた。
 そして、レイが六歳を迎えるころ、養子の引き取り相手が見つかった。相手の名は――、

「やあ、こんにちわ」
「……」
「そう、怖がらなくても良いんだよ」

 男はレイと同じ目線になるように姿勢を落とした。

「私の名前は、カーロイ・グレイス。君の新しいお義父さんだよ」
「……レイ、です」

 男の名は「カーロイ・グレイス」この辺りでは有名な、グレイス家。魔法研究の第一人者であり、この家に養子として迎え入れられることは、とても素晴らしく恵まれているとも言われる程だ。
 レイはカーロイに連れられ、家まで手をつないで案内された。

「いいかい? 今日からここが君の新しいお家だからね」
「……」

 カーロイは扉を開けると、その先では女の人が帰りを待っていた。

「ただいま、ティアラ」
「お帰りなさい、カーロイ。その子が新しいうちの子ね」

 レイはカーロイの後ろに身を隠す。

「お人形さんみたいで可愛いわね」

 ティアラも腰を落とし、レイと同じ目線で話す。

「私はティアラ・グレイスよ。今日からあなたのお義母よ、よろしくねっ」
「……レイ、です」
「レイちゃんねっ。ほーら、こっちにおいでー」

 ティアラは、笑顔で両腕を広げる。
 少し警戒はしていたが、レイはティアラの胸の元に飛び込む。

「おーっ! ちっこくて可愛いー。食べちゃいたいくらい!」
「!」

 その言葉にレイは驚き、ティアラの腕から抜け出し、再びカーロイの足の後ろに身を隠した。

「ティアラ、ダメじゃないか。レイが怖がっているだろ?」
「ごめんねレイちゃん。そのー冗談と言うか、なんというか……」

 困った表情になるティアラ。

「うーん、言葉の表現って難しいわね……」
「大丈夫だよ。ティアラもレイも、そのうち馴染めるさ。そうだ、夕食はできてるかな?」
「はい、すぐにお持ちしますね」

 レイは両親の記憶がほとんど無いため、これが家族なのか、まだ分からないでいた。
 けれど、どこか暖かい感じがした。きっと出来立てのシチューが、体を暖めてくれたのだろうと、そう思った。
 
 ――一年生も経つと、レイは家族に馴染んでた。まるで、元からこの家族に居たかのようにすっかりと。

「レイ、何してるの?」
「お勉強です」

 レイは熱心にお勉強をしていた。学校には通わないため、家で自主的に勉強をするしかないのだ。

「レイは本当にお利口さんね……でも、もっと子どもらしい事をしてもいいのよ? お絵描きしたり、走り回ったり……」
「……」
「……勉強が好きみたいね」

 ティアラは切なくも、レイの姿を見て微笑んだ。

「私にも、子どもが出来たら……」

 ティアラは片手で、自分の腹部を触る。

「さてと、お父さんが帰ってくる前に、掃除を済ませないとね!」

 この頃から、レイはティアラに違和感を抱くようになっていた。けれど、それが何に対しての違和感なのか分からず、自分の勘違いだったのかもしれない。
 お義母様は私が、勉強好きだと思っているみたいだけど……正直、勉強は嫌いだ。お外に出て、いっぱい遊びたい気持ちもある。でもね、それ以上に楽しみが私にはあるのっ。それは――、
 ガチャッ、と扉の開く音がした。

「ただいま、今日は仕事が早く終わってね……家族に会いたい一心でまっすぐ帰って来たよ」
「お義父様!」

 レイはカーロイの胸に飛び込む。

「ただいま、レイ。お利口にしてたかい?」
「はい、お義父様! お勉強をしていました!」
「そうかい、良い子だ。ご褒美に頭を撫でてあげよう」
「あはっ! くすぐったいですよ!」

 それは、お義父様からのご褒美、愛情だった。こんなにも、幸福を感じられたことは今までになかった。時々、家族で遊びに行きたいと思う。だけど、お義父様はお仕事で忙しい……せめて良い子でいよう。そうすれば、誰にも迷惑はかからないし、お義父様も褒めてくれる。

「そうだ、まだ日は沈んでいないし、家族で少しお出かけをしよう!」
「本当ですか!?」
「ああ、お母さんも一緒さ。ティアラ、今すぐ支度をしなさい。家族で散歩にでも行こう」

 すると奥の部屋を掃除していたティアラが、顔を出した。

「はい、分かりました!」

 お義母様も嬉しそうだった。
 グレイス家全員で、近所を散歩することになった。レイは義父と義母の手をつなぎながら、夕日に向かって歩いた。
 すれ違う人は皆、笑顔でこちらを見ている。幸せな家族だな、と。
 ……日が沈んできた頃、家族はうち帰り、夕食を済ませた。
 その後は……普段通りにお風呂に入って、勉強をして、あとは就寝。眠りについた。

「……おやすみ、レイ」

 カーロイはレイが眠ったことを確認すると、部屋から出て行った。
 コツコツ、と音を鳴らしながら一階へ降りる。

「レイは寝ましたか?」

 ティアラはカーロイに質問をした、次の瞬間だった。
 バシッ! 大きな音が立つくらいの威力で、ティアラの頬をビンタした。
 その反動で、ティアラは体勢を崩し、床に倒れる。

「カーロイ……様……」
「言ったはずだティアラ。私に質問をするなと!」
「も、申し訳ございません!」

 ティアラは床に手をつき、頭を下げる。

「お前は本当に物覚えが悪いな……私に何度同じことを言わせるつもりなんだ?」
「そ、それは……」
「さっさと答えろよっ!」
「ッ!」

 カーロイはティアラの頭を、足で思いっきり床に叩きつける。

「いいか? お前みたいな出来損ないを、この私が拾ってあげたのだぞ?」
「しょ、承知しております」
「だったら少しは、私の役に立って見せろ!」

 再びティアラの頭を、足で踏みつぶし、叩きつける。

「お前には、またお仕置きが必要みたいだな?」
「ッ! そ、それだけは! どうか、どうかご勘弁を!」
「……お前が子どもを産めない体にしたのは、私なんだぞ? お前は私の言うことに従ってさえいれば、それでいいんだ」
「はい……」
「痛い思いはしたくないだろ?」
「はい」
「私も同じだ。ティアラ、お前をこれ以上傷つけたくないんだ。分かるね?」
「はい」
「いい子だ。害虫らしく生きなさい」

 カーロイは不気味な笑みを浮かべると、自室へと行ってしまった。

「……レイ」

 ティアラの瞳には、涙が浮かんでいた。だが決して、それが落ちることはなかった。
 仮に落ちるのであれば、それは一瞬の出来事だろう。時の流れとは、早いものだ。気がつく頃には、あったはずのものは無くなり、形は変化し続ける。

◇◇◇

「お義母様、おはよう……て、どうしたのその怪我!?」

 ティアラの額には大きなアザがあった。

「あらレイ、おはよう。顔洗って来なさい」

 義母はいつものように、台所で朝食の準備をしていた。

「顔はもう洗ったよ……それより大丈夫なの?」
「ああ……昨日、階段を踏み外しちゃって」
「安静にしておいた方が良いよ。朝食は私が作るからっ」
「でも、刃物は危ないし――」
「もう何言ってるの? 私、十五だよ? 一人で出来るって」

 あれから八年……レイは十五歳になった。
 短かった髪は肩まで伸び、美しい容姿になっていた。

「……分かったわ。それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」
「フフン、まかせてよっ!」

 自身気になるレイ。その笑った顔を見ると、ティアラも顔が自然と笑顔になる。
 もしかするとレイは、人を笑顔にする力を持っているのではないか、そう思えるくらいだった。

「そういえば、お義父様は? まだ寝てるの?」
「それが、今朝早くから仕事に行っちゃったわ。最近、ますます仕事が忙しいみたいで」
「そっか。お義父様も大変なんだね……あ、そうだ!」

 何かを思い出したのか、レイは手を止め、ティアラの方に歩いてくる。

「どうしたの?」
「お義母様、ちょっとだけ目を瞑って」
「……分かったわ」

 言われる通りに、ティアラは目を瞑る。

「よーしっ」

 レイはティアラのアザがあるところに、両手をかざす。
 全神経を手に集中させ、魔素を調整させる。すると、暖かい風が巻き起こり、アザと同じサイズの魔法陣が現れる。
 すると、アザがと共に痛みが徐々に引いてくる。

「はいっ! 終わったよ!」
「……これは」

 ティアラがアザのあった場所を触れるが、痛みどころかアザ自体が完全になくなっていた。

「もしかして、治癒魔法……なの?」
「どう? 驚いたでしょ?」

 あまりの驚きに、ティアラは言葉が出なかった。それもそのはず、治癒魔法は扱うのがとても難しく、高度な技術が必要とされる魔法。そのため、この魔法を扱えるのはごくわずか……最低でも会得に二十年はかかると言われている。
 その魔法を、レイは僅か十五歳と言う年齢で完全に会得している。まさに異例。

「レイ、あなた……いったいどこで覚えたの?」
「覚えたと言うか、感覚って言うか……?」

 自然に覚えたとでも言うのだろうか? それとも、初めから?
 ティアラの頭の中は混乱と同様でいっぱいだった。

「これが、カーロイの言っていた……」
「お義父様がどうしたの?」
「えっ! ああ、なんでもないわ。ただの独り言よ」

 つい口に出してしまった。

「それより、朝食を作らないと……一緒に作ってもいいかしら?」
「うんっ!」

 レイとティアラ、二人で一緒に朝食を作った。恐らくこれが、義母との初めての共同作業だっただろう。

「ねえ、お義母様が好きな食べ物って何?」
「うーん、食べ物って言うよりは料理かな。お義母さん、シチューが好物なのっ」
「どうしてシチューなの?」

 レイの言葉に反応し、ティアラは口に運ぼうとしたスプーンを下す。

「なんでだろう……料理や食材だって、色んな種類があるのに。ただ、お母さんが作ってくれたシチューが、すっごく美味しかったんだ」

◇◇◇

「おかーさん、お腹空いたー」
「はいはい。もうすぐ出来ますからね」

 台所に行くと、良い香りが漂ってきた。

「あっこの匂い、シチューだ!」
「正解! 今日はお母さん特製シチューよ!」
「やったー! ティアラ、お母さんの作るシチューが一番好き!」

 ティアラは、お母さんに抱き着く。

「もう、料理中は危ないからっ! 抱き着く前に、お母さんに声をかけてね?」
「はーい!」
「……ティアラも大きくなって、結婚して子どもが出来たら、美味しい料理をいっぱい作ってあげるんだよ?」

◇◇◇

「まだ幼い頃の話だから、あまり覚えてないけどねっ」
「じゃあこの味は、受け継がれた味なんだね」
「それが……レシピが無くって、見様見真似で作ったから……ちょっと違うかな」

 楽しいひと時は、永遠には続かない。必ず終わりがやって来て、儚く散る。まるで咲き誇る一輪の花の様に……一瞬にして、散る。
 この日、レイは一日中魔法の勉強をして過ごした。
 夜にはカーロイも帰宅し、家族団らんで夕食を済ませ、いつもと同じ様に過ごす。そう、同じ様に……。

 コンコン、と部屋をノックする音が聞こえた。

「はーい、どうぞ」
「失礼するよ、レイ」
「あ、お義父様!」
「勉強の方は進んでいるかい?」
「はい! お義父様から頂いた教科書の問題は、ほとんど終わりました」
「うん、素晴らしい」

 カーロイはいつものように、レイの頭を優しく撫でる。

「レイ、君は本当に賢い」
「ありがとうございます、お義父様」
「その調子でもっと、勉学に励みなさい。そしていつか、その日が訪れるのを待っているよ」
「はい!」

 レイに一言告げると、カーロイは部屋を後にした。その後もレイはひたすら勉強をした。
 ふと、時計見ると就寝時間を越えていることに気がつく。

「いけない、集中しすぎた」

 レイは勉強を中断させ、部屋の明かりを消してベッドに入ろうとした、その時だった。

「この役立たずが!」
「ッ!」

 カーロイの怒鳴り声が聞こえた。

「お義父様?」

 普段、カーロイが怒る様子も怒鳴り声も聞いたことが無い。
 レイはただ事ではないと思い、部屋を出て一階へ向かう。

「あれ程言ったのに、なぜ投与しなかった!」

 投与……お薬のこと? もしかして、どこか悪いのかな?

「申し訳ございません!」
「覚醒したら、すぐに薬を投与させ、眠らせろと! あれ程言ったんだぞ! なぜ分からない、なぜ出来ないんだ!」

 眠らせる?
 いまいち話の内容が分からない様子のレイ。階段を降りきる手前で、驚きの光景を目にする。

「!」
「どうかお許しください!」
「それは私に命令をしているのか? 許せ、と命令をするのか!」

 カーロイがティアラを壁まで追い詰め、右手で首を絞めていた。しかもティアラの足は床に着いておらず、宙吊り状態。このままでは、呼吸が出来ず命が危ない!

「お義父様、やめてください!」
「……レイ」
「ッ!」

 義父の顔は、まるで悪魔だった。今まで見たことのない、怒り狂った表情をしていた。

「なぜ起きている? さっさと部屋に戻って寝なさい」
「その前にまず、お義母様の首から手を離してください」
「どうして、そんなことをする必要があるのかな?」
「どうしてって……」

 そんなの、決まってる。

「そのままでは、お義母様が死んでしまいます!」
「死ぬ? だからどうしたって言うんだい?」
「え……?」

 何を言っているの?

「こいつが死んで、何か不都合な事があるか?」
「不都合って……そんなの関係ないよ!」
「関係ない?」
「不都合とか、そんな話じゃなくて……」

 どうしよう、言葉が思いつかない!
 あまりの動揺に、レイはまだ状況の整理が出来ていなかった。

「その言葉に根拠の無い以上、死んでも構わないだろ?」
「……だったら言ってよ」
「私に何を言えと?」
「死んでも良い根拠を、言ってよ!」

 この世の中に、死んでもいいことなんて一つもあるわけ――、

「この女は、役立たずの不良品だ。ゴミは早めに処分しなければ、埃をかぶってどんどん溜まっていく」

 思いもしなかった。まさか、言葉が返って来るなんて。

「害虫だってそうでしょう? 被害が及ぶ前に、早めに処分する。そうすれば、何も起こらなかったことと同じで、元の状態を保てる」
「だからって――」
「それとあれかい? 君は掃除をしない人間なのかい?」
「そ、掃除?」
「普通するだろう? 常に綺麗な状態を保つために、部屋の掃除を」
「するけど……」
「じゃあ掃除をする時に、何を掃っている? そう埃だよ。埃と言う存在は、清潔を保つために邪魔な存在……私にとってこの女は埃、私を汚す存在なんだよ! だから消して、綺麗にする。ただそれだけのこと」

 ……おかしい。

「何か反論はあるかい?」
「……おかしいよ」
「はあ?」
「そんなの、絶対おかしいよ」

 レイの言葉に呆れるカーロイ。

「ハア。話にならん」

 カーロイがティアラから手を解放すると、レイに向かって腕を伸ばす。

「ッ! レイ、逃げて! ケホッケホッ!」

 次の瞬間、レイは思いっきり壁に叩きつけられる。

「な、なに……これ!」

 身動きが取れない。まるで、重力で押しつぶされている感覚だった。

「こんなものか」
「クッ!」
「覚醒でも何でもなかった。ただの偶然ってことですか」

 カーロイはゆっくりとレイに近づく。

「これでは、計画が台無しになってしまいます」
「計画? なんのこと」
「……知りたいか? 君の身に何が起きたのか……今から十一年前――」

◇◇◇

 十一年前、とある一家に「紫色の瞳を持つ子が産まれた」と言う情報を私は手に入れた。
 やっとだ。長い年月をかけ、ついに産まれたのだ!
 グレイス家に古くから言い伝えられている。黒魔術の起源は、紫色の瞳を持つ魔女が生み出したものだと。
 だから私はどうしても、その子を手に入れたかった。私の所有物にして、この「天空都市ミスティル」を私の物にしたかった。だが、そのためには奴らが邪魔だった。だから殺した。そして養子と言う形で、我が子を向かい入れば、何も不自然ではない。だからティアラと結婚をし、子どもを産めないを理由にするため――破壊させた。
 緻密な計画で、誰にも怪しまれずに、子どもを手に入れることが出来た。
 あとは家族関係と言う信頼と、周囲からの信頼を得る事で、私の身に何かあったとしても、誰も私を疑わない。むしろ可哀想な被害者だ。

◇◇◇

「しかし、お前はいつになっても覚醒はしない。あんなに愛情を注ぎこんだと言うのに!」
「じゃあ……今までのは全部噓って、こと?」
「ああ、そうだよ。初めから真実なんてものは、存在しなかったのだよ! 唯一の真実は、レイの両親を殺したのは、私だってことだ! アハ、アハハ!」
「……な。ふざけ――」

「ふざけるな!」
「「ッ!」」

 怒りを露にしたのは、レイではなくティアラだった。
 カーロイは思わず、後ろを振り返る。

「カーロイ、あなたは多くの罪を犯した」

 ティアラは両手でナイフを握っていた。刃先をカーロイの方に向けて。

「人の心をもてあそび、幼い子どもの両親を、自分の信念だけのために殺した」
「お義母様……」
「あなたは、生きていて許されない存在!」

◇◇◇

「ティアラ、私と結婚してくれないか?」
「カーロイ……」

◇◇◇

 ティアラの頭に、過去の出来事が一瞬だけ思い浮かぶ。

「私がこの手で、あなたを殺すわ!」
「や、やめろティアラ! 私が悪かった、間違っていた!」
「今更公開したって、もう遅いわよ」
「頼む、お願いだ! 殺さないでくれ!」
「さようなら、カーロイ」

 ティアラはナイフをカーロイに目掛けて、全力で走る。

「やめてくれ!」
「カーロイ、あなたの魔法は片手でしか使うことは出来ない。しかも右手で」

 だからあの時、私に攻撃をするためにお義母様から、手を離したんだ!

「今のあなたは挟み撃ち状態。解除すれば、背後から攻撃を受ける! 終わりよ!」
「いやだああああああああああ!」

 悲鳴をあげ、崩れ落ちる。
 カーロイとティアラの距離は、あと数メートル。
 行ける! そう思った。しかし――、

「全く、呆れた女だ」
「ッ!」

 ティアラの攻撃が、カーロイに届くことはなかった。
 なぜなら、カーロイが左手で魔法を放ったからだ。ティアラは吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。

「カハッ!」

 ティアラは血を吐いた。

「フフ、アハ! アハハハハ!」

 その笑い方は、まさに狂気そのものだった。

「私が右手でして魔法を使えないだって? 笑わせてくれるね……そんなわけないだろう?」
「……お願いだから……もう、やめて……」
「永続魔法を片手して使えない魔術師がどこにいる? 君の知識は浅はかだ、ティアラ」
「お義母様に近づかないで!」

 身動きが取れない以上、下手に出るしかなかった。

「レイ、君にいいものを見せてあげよう」

 するとカーロイは床に落ちたナイフを手に取り、ティアラの方へ距離を縮める。

「やめて……ティアラ逃げて!」

 ティアラは意識を失い、レイの声も届かない。
 このままだと、殺されてしまう。ティアラが……お義母様が!
 今まで一緒に過ごした記憶が、フラッシュバックする。その時、レイの心の中で何かが壊れた。

「――よ」

 明るい笑顔を見せるレイの面影は、もう何処にも無かった。
 ただ、怒りと悲しみで溢れていた……その姿は「冷酷の魔女」そのものだった。

「やめろよおおお!」

 レイの叫び声と共に、辺り一面が一瞬にして凍る。

「な、なんだこれ……! 氷結魔法だと?」

 氷結魔法はカーロイの足まで凍てつき、動きを封じた。

「クソッ! 小賢しいマネを!」

 必死に足を剥そうとするが、ビクともしない。

「ティアラ、起きて! ティアラ!」
「……レイ……?」

 薄っすらだが、ティアラは意識を取り戻す。
 辺り一面は凍りついており、カーロイは身動きが取れず、レイは必死に叫ぶ姿がティアラの目に映った。
 このままでは、いずれ私もレイもこの男に殺されてしまう。せめて、レイだけでも……!

「はあ……フウ」

 ティアラは大きく深呼吸をする。
 そして、呪文を唱え始める。

「風の聖霊よ、どうかレイをお守り下さい」

 詠唱を唱えると、室内に突風の竜巻が発生する。

「これは……ッ! 調子に乗るなよ、クソエルフがあああああ!」

 突風はレイを直撃した。すると、レイは風に運ばれる様にそのまま外へ放り出される。

「余計なことをしやがって! どこまで運命に逆らうつもりだあああ!」
「ティアラ!」
「走りなさいレイ! 今のあなたでは、この男には勝てない。とにかく逃げるのよ!」
「ティアラ……ッ!」

 レイは振り返ることをせず、走り出した。
 それでいいのよ、レイ。例えこの先、あなたが私を忘れてしまっても……私はあなたを決して忘れない。二人の共同作業……血はつながっていなけど、初めて母親らしい事が出来たと思えた。今日のことは生涯一生、忘れることは無いわ。

「ティアラああああああ!」

 ありがとう、レイ。

「ッ!」

 無数のナイフが、ティアラを襲った。
 カーロイの右手が無数のナイフを操り、ティアラ目掛けて一斉に動き出す。

「くたばれ! エルフの生き残りいいい!」

 カーロイの怒りは絶頂に達し、興奮のあまり、目は紅く染まっていた。
 ティアラの生死も分からず、ただ必死に走るレイ。何処に向かえば良いのか、何が正解なのか。夢中になって走る。走る、走る。
 そして、たどり着いた。

「……ティアラ、お義母様……」

 だだっ広い草原で、レイは膝をつき泣いた。
 誰にも見せない涙は、大地を湿らせた。

「やっと追いつきましたよ……レイ」
「ッ!」

 カーロイは息を切らし、服には返り血が付いていた。

「私はね、暇じゃないんですよ。明日も仕事に行かなければならない」
「近づかないで!」

 レイは戦闘態勢に入る。右手をかざし、カーロイに標準を合わせる。

「……害虫が」

 カーロイが攻撃を放つ。あの時と同じ攻撃だ。
 レイは受け身を取り、その軌道を避ける。

「チッ交わしたか」

 透明で見えない攻撃。発動時に音は出るが、それだけじゃ何の魔法か分からない。
 とりあえず、反撃をするまで!

「くらえ!」

 氷結魔法を放つ。雹の様な氷は、カーロイ目掛けて一直線に飛ぶ……が、しかし――

「くだらない」

 カーロイに届くことは無かった。途中で威力を失い、落下。
 原因はなんだ? 魔力の調整を間違えたのか?

「こんな低級魔法で私を倒せるとでも?」
「ッ!」
「レイ、君は知っているかい? 属性の相性というものを」
「……相性」
「魔法はそれぞれ、属性が存在する。火、水、土、風、氷、雷、陰、陽、とね。派生ではあるが星や毒と言ったものも存在する」

 なぜこの場で、そのような話をするのか。

「でもね、私は特別なんだ。周りからは風魔法と思われているが、それは違う。私は風を操ってなどいない……私が操作するのは『重力』だ!」
「聞いたことが無い……重力魔法なんて」
「あたりまえだ、この魔法は無属性である、この私にしか使えないのだからね」

 カーロイの口から出た属性の相性。しかし、無属性であるカーロイには、相性など関係ない。
 今までの攻撃は、重力を操作することによって起きた魔法。身動きが取れなかったのも、横方向に重力が働いていたから。攻撃が届かないのも、重力に耐えきれなかったからだ。

「早くその瞳を、私に渡せ!」
「瞳……それをどうするつもりなの?」
「バカが、君には関係の無いことだ。害虫は早く散りなさい」

 カーロイの攻撃が、レイに直撃する。

「……バカはそっちでしょ」

 しかし、レイは重力の働きを受けなかった。

「なぜだ、なぜ立っていられる? 攻撃は完全に当たった!」
「相性が無い、無属性に対抗できるのは……無属性魔法しかないでしょ!」
「ッ! 馬鹿な、私と同じ魔法が扱えるだと? そんなはずはない! この魔法が使えるのは、この世で私一人しか――まさかお前!」
「奥の手だけど……もうこれしか方法がないのよっ」
「どこでそれを知った! 私の書斎か? あれほど入るなと言っただろ!」

 レイの表情は変わらないままだった。

「模倣魔法……」

 黒魔術の上位魔法。あれを扱えたのは、グレイス家で初代だけ。

「なぜ貴様がそれの魔法を! 私には出来なかったと言うのに!」

 カーロイは動揺を隠せなかった。
 これが魔女の力とでも言うのか! 黒魔術だぞ? 例えこの先、お前が生きたとしてもバレたら処刑される。

「私の計画が……私の、私の私の! 計画がああああああ!」

 ――変更だ。

「私はこんなところで、負ける訳にはいかないんだよ!」

 流石に黒魔術を相手には出来ない。こちらの奥の手を出せば、相手に利用されてしまう。

「色は違えど、魔女の瞳を持つ子供は山程いる」
「他の子どもの所へは、絶対に行かせない!」

 カーロイが、その場から逃走を図ろうとしたその時だった。

「逃がさないわ!」
「ッ! その声は……」

 後ろを振り返ると、目を疑う光景があった。

「なぜ生きてる……ティアラ!」

 息の根を止めたはずだぞっ! 脈も魔力も無いことを確認したのに、なぜ!
 ――違う、これは幻覚魔法だ!

「あなたをここで仕留める!」

 一瞬の隙を見逃さなかった。レイの攻撃がカーロイを襲う。
 しまった、逃げ遅れた! だが、何も学んでいないようだな。大きさの増した中級魔法など、重力操作で無効に――

「威力が落ちないだと⁉」

 どうしてだ、私も魔法は起動している! なのに何故!
 鋭い雹は、カーロイの腹部に直撃した。

「カハッ!」

 反動でカーロイは地面に倒れる。雹の先端は腹部を貫通し、真っ赤に染まっていた。

「ハア……ハア!」

 痛みを感じる……内臓をいくつか破壊された。血が止まらない、めまいもする。
 倒れたカーロイのもとに、ゆっくりとレイが近づく。

「反対方向に重力の働きを与えることで、力は緩和される。だけど、それだけでは威力が落ちてしまい浮遊状態になってしまう。更に横の重力を与えることで、加速させた」
「その考えは、誉めてやろう……だが、卑怯だぞ。私に幻覚を見せ、一瞬の隙を与えるなど!」
「幻覚……あなたは一体、誰に向かって叫んだの?」
「とぼけるな! どこまで私をコケにする! 幻覚魔法で私に幻覚を……ッ!」

 なんだ、その目は……その顔はなんだ?
 その表情は冷たくも、ひっくり返った虫を見つめるかのような、可哀想な表情をしていた。

「……」

 レイは何も言わず、その場から去ろうとしていた。

「待て! 私を助けろ……レイ!」

 カーロイの言葉には耳を持たず、徐々に遠ざかって行く。

「お願いだ、助けてくれ……私は、まだここで死ねない……生きなくてはならないんだ!」

 レイの姿はもう、何処にも無かった。
 雲一つなかった夜空には、埃をかぶったカーテンによって遮られ、激しい涙がカーロイに降りかかる。

「いやだあ……死にたくないい……」

 その声は誰にも届くことは無く、無残な姿だった。
 
 ああ――、フチュール……。

◇◇◇

 私が二十歳になるころに、十四歳も離れた義妹ができた。
 母は五年前に他界しており、父は再婚だ。再婚相手の歳は、私の三つ上。感覚的には、姉だ。

「初めましてお義兄様! フチュールと申します!」

 フチュールは礼儀の良い子だった。明るくて、人懐っこい性格だった。その姿はまるで、天使そのものだった。
 私の仕事は、父の研究の後継ぎだった。そのため、毎日夜遅くまで父の研究に付き添った。
 父はある日、私に話した。

「カーロイ、うちの家系は代々……黒魔術を扱ってきた」
「それって禁じられている魔法では――」
「分かってる。俺は手を出していない……だが、親父は違う」

 祖父は一度も、私に顔を見せたことが無かった。自分の部屋に閉じこもり、何かをしていた。
 時々、祖父の声は部屋の外にまで聞こえてくる。とても低い声だったのを覚えている。
 グレイス家の黒魔術は、もう継ぐことは無いと父は言った。

「あれは悪魔そのものだ。親父は悪魔に、取りつかれたんだ」

 グレイス家の秘密を離した父は、その二日後に亡くなった。あまりにも不自然な死を遂げた。
 私は確信した。父を殺したのは、祖父だと。

「デュマン・グレイス! 絶対にお前を許さない!」

 私は怒りに支配されていた。この時から予兆はあったのだろう。

「扉を開けろ、デュマン・グレイス!」
「……」

 返事は帰ってこない。
 だから私は、扉を無理やり壊して部屋に入った。

「デュマン・グレイス!」
「ッ!」
「……なんだそれは?」

 デュマンは、爪の入った瓶を握っていた。

「ワシに近づくな! 貴様もどうな……どう、なっても……」

 バタンッ。デュマンは突然倒れた。

「おい、どうした。おい!」

 死因は心筋梗塞。今まで生きていたことが、不思議なくらいだと医者は言った。
 私の怒りは、どこへ向ければ良いのか? 唯一、救いになったのはフチュールだけだった。
 しかし、負の連鎖が止まることは無かった。

「フチュール、どうしたんだい?」

 フチュールの様子がおかしくなった。一点を見つめ、何も話さなくなった。食事もせず、まるで人形の様に……。
 そして事件は起きる。

「ただいま。今戻った……!」

 家に帰ると、二人の死体が転がっていた。
 それは義母とフチュールだった。フチュールの右手にはナイフが握りしめてあった。
 私はすぐに状況を理解した。フチュールは義母を殺し、自殺したのだと。

「ああ、ああああああ!」

 私は絶望した。全てを失った。家族も、幸せも、笑顔も全部。
 気が狂うほど、一晩中泣いた。もう、全てがっどうでも良かった。
 私は黒魔術に縋るしかなかった。そして、偶然にも見つけてしまった。

「これは……死者を蘇らせる魔法!」

 記載にはこう書いてあった。
 死者を蘇らせるには魔女の瞳が必要、だと。

「魔女の瞳?」

 私は古い書物や歴史を、調べつくした。そしてたどり着いたのだ。
 魔女の瞳には三種類存在する。「蒼色の瞳」「橙色の瞳」「紫色の瞳」その中で特に「紫色の瞳」は極めて珍しく、底知れない魔力をもっており、数万年に一度産まれると言われている。
 最後に産まれた時代から計算すると、もうすでに産まれていても不思議ではない年月が経っていた。
 すぐに情報屋を雇い、紫色の瞳を持つ子供の存在を知る。
 
 全ては、そう――

◇◇◇

「フチュールのため、だったのに……」

 時期に私は死ぬ。最後まで、誰にも愛されなかった不幸な男として……。
 その時ふと、ティアラのことが頭に浮かぶ。
 最初はただの道具としか、見ていなかった存在ティアラ。けど、彼女は違った。

「カーロイさん! 見てください、似合ってますか!」
「ううん、もう少しまともな服にしようか」
「ええ、まともですよー」

 彼女の服のセンスは、絶望的だったな。いつも私が選んであげていた。そのたびに、彼女は頬を膨らませ怒っていたが、すぐに笑顔になり私に抱き着いてきた。

「いつもありがとっ。カーロイ」

 いつしか彼女に魅力に、私自身が惹かれていたのかもしれない。

「ティアラ、私と結婚してくれないか?」
「カーロイ……」

 断られても構わない……今までだって辛さは味わってきた――

「私で良ければ、喜んでっ!」

 彼女は私を受け入れてくれた。その時の笑顔を、忘れていたのかもしれない。
 ティアラ、あなたは今の私でも、受け入れてくれますか。

「もちろんっ。だってカーロイと過ごしてきた時間が、一番楽しかったもんっ!」
「ティアラ……」

 私はもう一度、彼女の……あの時の笑顔を見ることが出来た。

「お義兄様!」
「フチュール! どうしてここに……そうか。私を迎えに来たんだね」
「カーロイ?」
「私は一人で行くよ。君たちをもう、巻き込めやしないよ……」

 これが私の最後のケジメだ。

「ううん、違うよ」
「ティアラ?」
「お義兄様とお別れしたくないよ!」
「フチュール……」

 二人はカーロイの両手を繋ぐ。

「あなたが一緒なら、地獄でもどこへでもついて行くわ!」
「フチュールも!」
「ティアラ……フチュール……」

 私は不幸な男ではない。こんなにも愛してくれる存在が、近くにいるのだから。

「それじゃ行こう」

◇◇◇

 雨も止み、長かった夜が明けた。
 いずれ死体は見つかり、私は追われる身となる。

「お父さん、お母さん……ごめんなさい」

 私はこの名を捨てることにした。
 しばらくの間は、遠い町で身をひそめる。町に出る時は、コートを深くかぶり出来るだけ顔を隠す。

「そこの嬢ちゃん、これ買っていかない?」
「……」

 渡されたのは一本のCDだった。

「この曲のアーティストは、西の町出身でね。ヒット曲ばかり出す、天才だったんだよ」
「……そうですか」

 私の故郷に、そんな人がいたんだ。

「でもね、十五年くらい前だったかな? いきなりアーティストを止めちまったんだよ」
「変わった人ですね」
「なんでも、子どもが産まれたらしくてね。もう、天使の様に可愛かったみたいなんだ。名前は……忘れちまったけど、確か紫色の瞳をしてるって聞いたな」
「ッ! その、アーティストの名前ってなんですか!」
「ん? そこにも書いてあるだろ」

 私はCDの裏面を見た。

「ウィルソン・ブラウニーだよ」
「ウィルソン……ブラウニー……」
「名字は偽名だけど、下の名前は本当だ」
「あのっこれ買います!」
「へいっまいど!」

 初めて聞いた。実の父親の名前を。

「ウィルソン・ブラウニー」
「なんだい、そんなに気にいったのか? だったら良いことを教えてやろう」
「?」
「ウィルソンは作曲をする時に、秘密の場所に行って作曲をしてたらしんだ。しかもそこで奥さんに出会ったみたなんだよ」
「それってどこですか?」
「まあ、焦るなって。ファンの間じゃこう呼ばれている……『約束の大地デルタ』ってねえ」
「約束の大地デルタ……」
「意外と近いんだよ。この先の山を二つ越えた所にあるんだ。興味があるなら行ってみるのも――あれ、いない?」

 お父さんとお母さんが初めて出会った場所、デルタ!
 私の目的は、そこに向かうこと!

「待っててお父さん、お母さん!」

 私は罪深き冷酷の魔女……。その名は、ウィルソン。
友人の考案キャラなので、かなり力をいれました! 実に三日ぐらいは書いていましたね。ただ、読み返すと誤字脱字がある可能性が……一応チェックはしたんですけど。
柚木 明日夏
https://twitter.com/Yuzuki_Asuka_S
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コメント



0.簡易評価なし
1.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです
2.90東ノ目削除
面白かったです
3.無評価夏後冬前削除
東方二次創作小説を読みに来たんだけどなぁ
4.90名前が無い程度の能力削除
良かったです。東方キャラとの絡みや幻想郷とのリンクとかもっと欲しかった気がします
5.10名前が無い程度の能力削除
ミスティル「果てしない~闇の向こうに~♪」

ウィルソンブラウニー ←ココアはバンホーテンのものを使用したのかな?