血に濡れた金槌から彼女は手を離した。その眼下には、頭から血を流して倒れる男が映っていた。
彼女はもとよりこの男を殺すために部屋に入った。男が仕事に集中して入口に意識を向けていない隙を突いて忍び入り、脳天に一撃入れたのである。
部屋に片足を踏み入れる瞬間に、彼女は一連の流れを脳内でシミュレートしていた。男の背後に立ち、金槌を振り上げ、降ろし、踵を返して何事も無かったかのように部屋を後にする。
簡単なことだと思っていたし、現に途中までは順調であった。だが、金槌が頭蓋に当たったときの鈍い音、腕の痺れ、少し遅れて視界に飛び込む紅色と鼻と口に入り込む赤錆の臭い。慣れぬ五感への刺激に耐えきれず、取り乱した彼女は金槌を落としてしまったのだ。本来あるべき音が欠けた静寂の中で、ゴトリという音がいやに響いた。
完全に気が立っていた彼女にとって、本当は幽かなこの音も、特大の警報音かのように聞こえた。一刻の猶予も無くなってしまったと、慌てて部屋を後にしようとし、今しがた落とした金槌に躓いた。
咄嗟に男の方を振り返る。躓いたのは彼女の不注意なのだが、彼女には、男が足を引っ張ったかのように思えた。男の腕は彼女とは反対方向、男自身の頭の両脇に若干曲がって置かれていた。気の所為であると分かり、安堵のため息をついた。
だが、その安心も直ぐに疑念で上書きされた。彼は本当に死んでいるのだろうか? 今のが気の所為だったとしても、このまま蘇生しないとは限らない。男が意識を取り戻したとき、私にしてくる復讐は足を引くなどという生易しいものではないだろう。殺しに来るかもしれないし、少なくとも私の社会的死亡は不可避なものになってしまう。彼の死を確認すべきではないか。
この場から去るか、この場に留まるか、相反する指令を同時に脳内から受け、彼女の体は金縛りにあったかのように硬直した。彼女は己の無計画さに苛立ちを募らせていた。だが、即興で手順を組もうにも、見たこともない光景にホワイトアウトした彼女の脳内は、それ以上の書き込みを拒絶していた。
結局、なるようにしかならないのだと、男の死の確認を優先させ、見られた場合の言い訳は後で考えることにした。
男はうつ伏せの状態で倒れていた。仰向けにして顔を見て、それで判断しようと、彼女は男の体に手をかけた。
彼女の手に生暖かい血液が触れた。永遠とすら形容できる程の長時間呆然としていたと思っていたが、実際にはそれ程時間は過ぎていないらしい。どろりとしたものが、業を告発するかのように彼女の手のひら全体を舐めた。彼女は男の体をひっくり返そうとしたが、血の感触で手が震え、震えた手は男の体を離れて宙を切った。
彼女はもう一度右手で男を掴み、さらに右腕の震えを抑え込むために左腕で右腕を抑えた。これで返そうとしたが、彼女の膂力は片手で男を回転させるには足りなかった。
どうにかしようと、今度は体と腕で男を挟み込んで回した。この試みは成功したが、彼女の服の前面には男の血がたっぷりと付いてしまった。だが、彼女にはそんなことを気に留める余裕は無かった。
天井に向けられた男の顔を覗き込む。顔は苦悶の表情で歪んでいたが、これが死相なのか、意識を失っているだけなのかは結局判別がつかなかった。|瞼<>を開き瞳孔を確認すれば良かったのだが、そんな知識など有していなかった。彼女にとって、死は身近なものでは無かった。
彼女は短刀を取り出した。それは金槌と同様、彼女の仕事道具であった。持ち手の傷と、彼女の手の形に合わさる微妙な凹みがその使い込みぶりを表している。その短刀を、男の喉元に押し当てた。本能的に、喉首を開けばこと切れるだろうという、漠然とした思いだけがあった。
短刀は皮膚を割いて、勢いよく肉に沈み込んでいった。肉に、気管に、血管に触れる短刀の感覚は、いつも彼女が短刀を使うたびに感じるものとは明らかに異質なものであった。
†
「書庫に入りたい?」
袿姫は粘土の塊を捏ねながら、首から上を作業机の対面へと向けた。視線の先では、書庫の利用を申し出た埴輪兵長、杖刀偶磨弓が最敬礼をして袿姫に目を合わせていた。
「ええ、今度の演習の計画を作るにあたって戦例をいくらか参考にしたいので」
磨弓は最敬礼を崩さずに袿姫の目を見つめている。神様としての格を保つために必要な機能とはいえ、ここまで来ると窮屈さを感じると、袿姫は磨弓の製作者として思った。次の改修の際に、この機能は外そう。
「構わないわ。私は忙しいから付き添いはできないけど、好きに使って良いわよ」
袿姫は石板を取り出して、それを指でなぞった。書庫の管理をしている埴輪に連絡をとっているようだ。袿姫が石板を操作している間、石板背面の紋様は極彩色に光り、すぐ前に置かれた茶一色の粘土塊を、少しだけカラフルにしていた。
「鍵は開けてもらったからいつでも入れるわよ。あなたなら顔パスで大丈夫でしょう」
「承知しました。ありがとうございます」
磨弓は返答を待ったが、袿姫はやり取りはこれで終わったと考えて、再び粘土を捏ね始めた。
袿姫は神様であり、神通力を使えば手作業でなくても埴輪を生み出すことはできる。量産性というのもある種の機能美であり、彼女は埴輪を自動生産することは否定しない。むしろ彼女自身が即席の造形術を、とりわけスペルカード決闘においては武器としている。
だが、神通力による量産はあくまで及第点を安定的に出すのに役立つ手法に過ぎない。満点と評価される傑作の創造にはインスピレーションが求められる。そして、良いインスピレーションのためには五感をフルに使う手作業の創造が必要不可欠となる。なにより、粘土の手触りは彼女にとって実に馴染むものなのだ。
磨弓はなおも最敬礼の不動直立で袿姫の作業風景を眺めていたが、袿姫が粘土を捏ねる手を止めることは無さそうだった。完全に自分の世界に戻っていった袿姫に一礼して、磨弓は部屋を後にした。
†
随分と鼻につく話し方をする人だな、というのが率直な感想だった。
実のところ他の人に比べれば良識はある方だし根は真面目なのだ、ということは少し付き合えば分かった。あの人が「芸術に貴賤は無いのですよ」と他の神々を説得していなければ、一介の氏神に過ぎない私がこの界隈に加わることは不可能だっただろう。私はあの人に、計り知れぬ恩義がある。
だがそれでも、あらゆる人を君づけで呼ぶあの話し方は、本人なりの礼儀なのだとは理解しつつも慣れることは無かった。あの人に呼びかけられるたび、自分は見下されているのではないかと感じていた。
それが錯覚でしかないということは、頭では分かっていた。あの人が私に話しかけてくるときは、いつもにこやかであった。互いに性質が近い神であるということに、シンパシーを感じていたのかもしれない。私はあの人を目上の存在だと思っていたが、彼女は互いに対等な立場だと考えていたらしく、技術的、芸術的事柄について相談をされることもしばしばあった。
それに、あの人は殆ど誰に対してでも同じような口調で話していた。性別年齢立場一切関係なしに、君付けで敬語、それでいてどこか慇懃無礼にも聞こえるあの話し方。仮に私のそれが錯覚ではないのだとしたら、あの人は全てを見下しているということになる。
だが、それでも、心の奥底では、もしかして本当にあの人は私のことを、この世の全てを、下に見ているのではないかという可能性を完全には排除できていない。それは何故なのだろうか。
そうか。それは他人の問題では無い。自分が抱えるコンプレックスによるものだ。
前に、あの人の造形美学を伺ったことがあった。彼女の造形の基礎は幾何学である。手元の紙に作図をしながら早口でまくし立てる様子は、美術論の説明というよりも気難しい教授が数学の講義をするのに近いものがあった。
とりわけ彼女が強い執着を抱いていたのが円である。話題が勾玉のことになったときも、あれは真円の黄金比的分割であり自身最大の偉業なのだと、芸術作品の創造ではなく数学的発見かのような表現をしていた。私は数学には疎いので、実際あの形状に数学的意味があるのか、それとも単に比喩的な意味だったのかは分からない。それでも、(神である彼女がそうするのは少々おかしな話だが)彼女が円という図形を神聖視しているということは良く分かった。
その話になぞらえるならば、玉造部、いや、玉祖命
とはまさしく真円なのだ。あの人は勾玉を造り、明けぬ夜を終わらせる鍵の一つとなった。そして、その功績を買われて、後にニニギにも付き添うこととなった。その経歴には一点の瑕疵も無い。彼女を天津神内でも屈指のエリートと見做すことに、異論は無いだろう。
対して私はどうか。何もしなかったわけではない。土器の腕において右に出るものはおらず、故にこの界隈に加え入れさせてもらえている。
だが、出自も地位も乏しい私は、歴史に爪痕を遺すことができなかった。二人の造形神がいて、方や高天原の神話に組み込まれ、方やそうはならなかった。
将来、私のことを覚えている者がどれだけいるだろうか。私は結局のところ、何者なのだろうか。
†
「お待ちしておりました。磨弓様」
書庫番の埴輪が恭しく磨弓に頭を下げる。
「ありがとう。ついでで悪いのだが、机を運ぶのを手伝ってくれないか?」
磨弓は書庫番の埴輪に軽く敬礼をした。文民と軍人。互いに敬意の表し方は違うが、重要なのは手法ではなく気持ちが伝わるかどうかである。二人は協力して書庫の真ん中で机を組み合わせた。
磨弓は机の上に地図を広げ、その上に駒を並べた。地図は演習の舞台を、駒は演習に参加する部隊をそれぞれ模している。
かつて、この地図は方眼紙であった。畜生霊からの圧迫から演習が可能な領域が霊長園内部に制限されており、区画化された園を地図で表現すると方眼紙になったのである。
それが今や、机一脚では収まらない程の大型の紙に、複雑な畜生界最奥部の地形を描いたものを使うまでになっている。これは我々の偉大な勝利を象徴するものである。
だが、その拡大は食い止められることとなった。原因は最近畜生霊の謀
によってやって来た、地上からの刺客である。我々を取り巻くパワーバランスは次の段階に移行しており、それを打開する手掛かりを掴むことが、今度の演習の目標である。
磨弓は書庫に納められた戦史関係の文献を山積みにし、それを捲っては地図上の駒を置き直すことを繰り返した。
彼女が今読んでいる文献はいずれも、彼女が兵長として造られるにあたって一度記憶領域に組み込まれたデータである。だが、それはあくまで戦術定石を機械学習するための踏み台という目的で一時的に書き込まれたものだった。データを定石に昇華する過程でその大半は削除されており、そのため度々読み直しが必要になる。
それに、新たな局面に対応するためには新たなデータが必要になる。ここでネックになるのが、ここの資料は全体的に時代が古いということである。結果、磨弓が使う戦術も必然的に古くさいものに偏ってしまう。
古くさいと言えば。磨弓は、地上からの刺客の一人のことを思い出していた。その刺客は自分のことを巫女と説明していた。その時は巫女という概念を知らなかったが、後に袿姫様に聞いて、神を降ろすなど、神事に携わる職業なのだということを理解した。
それまで神と言えば袿姫様であった。畜生界に他の神はいない。正確には剛欲同盟の長である饕餮は神格らしいのだが、下賤な畜生としか思えない。袿姫様以外の神の存在は、知識としては知っていたのだが、実在性のあるものとして認識するようになったきっかけはやはりあの巫女であろう。
ここの蔵書は古いが、外の世界では失われた、神代の記録もあるというのは強みだった。現実的脅威の一つが巫女である以上、神の戦史を参照するのは理に適った選択である。磨弓は何冊か資料を集め、手始めに古事記を開いた。
古事記を捲りつつ彼女はふと考える。埴安神とは、その出生のインパクトに反して、中央神話における記述自体は非常に簡素な神である。出生以外で埴安の文字列が出現する記録としては、日本書紀に地名として出てくるというものがある。だが、その伝承における土器の製作者は神武天皇であり埴安神ではない。
古事記や日本書紀の編纂経緯の特殊性からして、記述の少なさはやむを得ない面もある。そもそも、具体的なエピソードが作中にある神格の方が少ないのだ。
だがその一方で、中央神話に限定しなければ、幻想入りした物語も含めれば、埴安神に関する記述はもっと多いということも磨弓は知っている。形は違えどイザナミの子であり、そうでありながら――そうであるが故、かもしれないが――中央神話から排された神。埴安神とは何者なのだろうか。
磨弓にとって袿姫は絶対的な忠誠の対象であり、極端な言い方をすればその出自などどうでもいい筈である。だが、今日は不思議とそのことが気になって仕方がなかった。
†
「これでおしまいです」
太安万侶の筆が止まる。だが、それは稗田阿礼の指示通りに止めたのとは違う、大いに違和感を込めての止めだった。
「稗田殿、本当にこれだけでしたか? 私には貴方程の絶対的な記憶力は無いが、それでも色々と欠落があるように感じる」
「記憶とは不確かなものなのです。多くの人はその不確かな方向性を記憶が無くなるという脱字の側に求めがちですが、本来無関係の記憶が入り込む、例えるならば衍字
のような不確かさもあるのです。貴方のもその類でしょう」
阿礼の言い分は一見もっともらしいが、はぐらかしているようにも思える。安万侶は、人払いが済んでからもう少し探りを入れることにした。
「稗田殿。私には、私に余計な記憶が入り込んでいるようには思えないのです。そもそもこの文書には名前だけの神が多すぎる。神格には相応の縁起があって然るべきと思いませんか?」
二人しかいなくなった部屋に、安麻呂の甲高い声が響く。安麻呂はなるべく威圧的にならないように配慮したつもりだったが、指摘の内容そのものが、阿礼にとっては痛いところなのだ。
阿礼は観念したかのように、白髪交じりの頭を掻きながら答えた。
「なるほど。白状しますと、省略した箇所がいくらかあるのは事実です。ですが、思い出して下さい。我々の仕事は既存の書の復活ではなく新たな歴史書の編纂です。全てを書き記すのに、我々に渡された紙は少なすぎるのです」
そんなことなど、私の手にかかれば。そう口を挟む安万侶を阿礼は静止する。
「先の歴史書の編纂からヤマトを巡る状況は大いに変化しました。今となっては不要、それどころか有害な記述すらあったのです。それに、中央の正統性という点において、既存の神話体系である、地方神話の集合体というのは雑味が多すぎます。私は文字書きでは無い程度に無学ですが、それでも私の記憶をそのまま記したら首がいくつあっても足りないことくらい分かります」
阿礼が生まれる少し前、ヤマト政権において、乙巳
の変が勃発した。政変と続く混乱により、多くの史料が灰燼に帰すか散逸するかした。
天武天皇がこの状況に危機感を覚え、幼年期より天才的な記憶力を発揮していた阿礼に目をつけて、現存していた歴史書を片っ端から暗記させた。
そうして蓄えられた、阿礼の脳内にある歴史を紙面にまとめることが、阿礼と安麻呂に与えられた使命だった。
それまで語られていた歴史の内容を完全に知るものは、今や阿礼ただ一人である。そのため、古事記の編纂において彼がしたことは完全犯罪であった。
だが、彼の目は憂いを帯びていた。決して、本心からの行動では無かったのだろう。
「人の意思が介入する以上、完全な歴史を記すことなど幻想なのでしょうね」
まるで、ここでは無い世界を眺めているかのように遠くを見つめて、阿礼はそう呟いた。
†
調べ物を終えた磨弓は袿姫の部屋に戻った。袿姫は粘土を捏ねてはおらず、代わりに机の上には捏ね終わった粘土の塊と工具が置いてあった。
「調べ物は終わったのかしら」
「ええ、次の演習もつつがなく終わるでしょう」
「他には?」
袿姫が手を止めて磨弓を見つめる。声色は穏やかだが、目はいつもの柔和なそれではない。声には出さないが、お前のことは全てお見通しだと言っているかのようだった。
「神話について調べ物を」
「どうだった?」
「私にはよく分かりませんでした。結局、私は兵長であり歴史家では無いのでしょう」
「歴史家を自称していても神話の理解は難しいからそれはしょうがないわね。逆に貴方が分かったことは?」
「本当に分からなかったのです。埴安神の神話について調べていたのですが、文献によって埴安神の記述が異なっていて、何か亀裂があるように思えるのです」
磨弓はまだ口を閉じていなかったが、袿姫にとってはここまでで十分だった。彼女は金槌を持って立ち上がり、磨弓の方へと向かった。磨弓の方も会話が中断したことに気がついて、話を途中で切った。
袿姫は磨弓の真正面に立つと、金槌を持った手を振り上げた。
磨弓は何もしなかった。創造主である袿姫に対して拳を上げるようにはプログラムされていないし、金槌で叩かれる事自体は耐久試験のために度々行われている。
そして、金槌を振り下ろす袿姫が、彼女が最期に見た光景となった。袿姫の表情は金槌の残像に隠れて、磨弓からは見えなかった。だが、仮に見えていたとしても、そこから感情を読み取ることはできなかっただろう。埴輪が袿姫に表す感情は、100%の忠誠心以外であってはならない。その感情のためには、主の心、それもネガティブなものを読みとる機能など、無用の長物でしかないのだ。
「全て分かっているじゃない。亀裂があるのは当然よ。何故なら埴安神の名を関する神は複数いるのだから」
袿姫は自分が立った用事は只の気の所為であったかのように、迷いなく踵を返した。独り言を呟いたが、この部屋に今一人しかいないことは分かりきったことだった。彼女にとって、埴輪の死は身近なものだった。
「でも、何回やっても埴輪の神話から埴安神の正統性という要素を排除することができないわね。そこに疑問を持っただけで、私でも壊せるくらいの耐性にまで落ちてしまうとは」
ふと目を落とすと、エプロンにベンガラの赤い粉と焼き粘土の茶色の粉がついているのが見えた。彼女はそれを軽くはらった。
「便利だと思ったんだけどね、この名前。慣れない殺人をしてまで僭称するものじゃ無かったなあ」
袿姫はつい先刻まで磨弓だった土塊に目をくれようともしない。一撃で頭部が粉々になってしまったので、まじまじと見つめたところで表情は何一つとして読み取れないだろうが。
「いっそ書庫の方を整理した方が……。いや、埴輪を造り直す方が楽か」
袿姫は粘土塊の方へと戻り、それに彫刻刀を押し当てた。
彼女はもとよりこの男を殺すために部屋に入った。男が仕事に集中して入口に意識を向けていない隙を突いて忍び入り、脳天に一撃入れたのである。
部屋に片足を踏み入れる瞬間に、彼女は一連の流れを脳内でシミュレートしていた。男の背後に立ち、金槌を振り上げ、降ろし、踵を返して何事も無かったかのように部屋を後にする。
簡単なことだと思っていたし、現に途中までは順調であった。だが、金槌が頭蓋に当たったときの鈍い音、腕の痺れ、少し遅れて視界に飛び込む紅色と鼻と口に入り込む赤錆の臭い。慣れぬ五感への刺激に耐えきれず、取り乱した彼女は金槌を落としてしまったのだ。本来あるべき音が欠けた静寂の中で、ゴトリという音がいやに響いた。
完全に気が立っていた彼女にとって、本当は幽かなこの音も、特大の警報音かのように聞こえた。一刻の猶予も無くなってしまったと、慌てて部屋を後にしようとし、今しがた落とした金槌に躓いた。
咄嗟に男の方を振り返る。躓いたのは彼女の不注意なのだが、彼女には、男が足を引っ張ったかのように思えた。男の腕は彼女とは反対方向、男自身の頭の両脇に若干曲がって置かれていた。気の所為であると分かり、安堵のため息をついた。
だが、その安心も直ぐに疑念で上書きされた。彼は本当に死んでいるのだろうか? 今のが気の所為だったとしても、このまま蘇生しないとは限らない。男が意識を取り戻したとき、私にしてくる復讐は足を引くなどという生易しいものではないだろう。殺しに来るかもしれないし、少なくとも私の社会的死亡は不可避なものになってしまう。彼の死を確認すべきではないか。
この場から去るか、この場に留まるか、相反する指令を同時に脳内から受け、彼女の体は金縛りにあったかのように硬直した。彼女は己の無計画さに苛立ちを募らせていた。だが、即興で手順を組もうにも、見たこともない光景にホワイトアウトした彼女の脳内は、それ以上の書き込みを拒絶していた。
結局、なるようにしかならないのだと、男の死の確認を優先させ、見られた場合の言い訳は後で考えることにした。
男はうつ伏せの状態で倒れていた。仰向けにして顔を見て、それで判断しようと、彼女は男の体に手をかけた。
彼女の手に生暖かい血液が触れた。永遠とすら形容できる程の長時間呆然としていたと思っていたが、実際にはそれ程時間は過ぎていないらしい。どろりとしたものが、業を告発するかのように彼女の手のひら全体を舐めた。彼女は男の体をひっくり返そうとしたが、血の感触で手が震え、震えた手は男の体を離れて宙を切った。
彼女はもう一度右手で男を掴み、さらに右腕の震えを抑え込むために左腕で右腕を抑えた。これで返そうとしたが、彼女の膂力は片手で男を回転させるには足りなかった。
どうにかしようと、今度は体と腕で男を挟み込んで回した。この試みは成功したが、彼女の服の前面には男の血がたっぷりと付いてしまった。だが、彼女にはそんなことを気に留める余裕は無かった。
天井に向けられた男の顔を覗き込む。顔は苦悶の表情で歪んでいたが、これが死相なのか、意識を失っているだけなのかは結局判別がつかなかった。|瞼<>を開き瞳孔を確認すれば良かったのだが、そんな知識など有していなかった。彼女にとって、死は身近なものでは無かった。
彼女は短刀を取り出した。それは金槌と同様、彼女の仕事道具であった。持ち手の傷と、彼女の手の形に合わさる微妙な凹みがその使い込みぶりを表している。その短刀を、男の喉元に押し当てた。本能的に、喉首を開けばこと切れるだろうという、漠然とした思いだけがあった。
短刀は皮膚を割いて、勢いよく肉に沈み込んでいった。肉に、気管に、血管に触れる短刀の感覚は、いつも彼女が短刀を使うたびに感じるものとは明らかに異質なものであった。
†
「書庫に入りたい?」
袿姫は粘土の塊を捏ねながら、首から上を作業机の対面へと向けた。視線の先では、書庫の利用を申し出た埴輪兵長、杖刀偶磨弓が最敬礼をして袿姫に目を合わせていた。
「ええ、今度の演習の計画を作るにあたって戦例をいくらか参考にしたいので」
磨弓は最敬礼を崩さずに袿姫の目を見つめている。神様としての格を保つために必要な機能とはいえ、ここまで来ると窮屈さを感じると、袿姫は磨弓の製作者として思った。次の改修の際に、この機能は外そう。
「構わないわ。私は忙しいから付き添いはできないけど、好きに使って良いわよ」
袿姫は石板を取り出して、それを指でなぞった。書庫の管理をしている埴輪に連絡をとっているようだ。袿姫が石板を操作している間、石板背面の紋様は極彩色に光り、すぐ前に置かれた茶一色の粘土塊を、少しだけカラフルにしていた。
「鍵は開けてもらったからいつでも入れるわよ。あなたなら顔パスで大丈夫でしょう」
「承知しました。ありがとうございます」
磨弓は返答を待ったが、袿姫はやり取りはこれで終わったと考えて、再び粘土を捏ね始めた。
袿姫は神様であり、神通力を使えば手作業でなくても埴輪を生み出すことはできる。量産性というのもある種の機能美であり、彼女は埴輪を自動生産することは否定しない。むしろ彼女自身が即席の造形術を、とりわけスペルカード決闘においては武器としている。
だが、神通力による量産はあくまで及第点を安定的に出すのに役立つ手法に過ぎない。満点と評価される傑作の創造にはインスピレーションが求められる。そして、良いインスピレーションのためには五感をフルに使う手作業の創造が必要不可欠となる。なにより、粘土の手触りは彼女にとって実に馴染むものなのだ。
磨弓はなおも最敬礼の不動直立で袿姫の作業風景を眺めていたが、袿姫が粘土を捏ねる手を止めることは無さそうだった。完全に自分の世界に戻っていった袿姫に一礼して、磨弓は部屋を後にした。
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随分と鼻につく話し方をする人だな、というのが率直な感想だった。
実のところ他の人に比べれば良識はある方だし根は真面目なのだ、ということは少し付き合えば分かった。あの人が「芸術に貴賤は無いのですよ」と他の神々を説得していなければ、一介の氏神に過ぎない私がこの界隈に加わることは不可能だっただろう。私はあの人に、計り知れぬ恩義がある。
だがそれでも、あらゆる人を君づけで呼ぶあの話し方は、本人なりの礼儀なのだとは理解しつつも慣れることは無かった。あの人に呼びかけられるたび、自分は見下されているのではないかと感じていた。
それが錯覚でしかないということは、頭では分かっていた。あの人が私に話しかけてくるときは、いつもにこやかであった。互いに性質が近い神であるということに、シンパシーを感じていたのかもしれない。私はあの人を目上の存在だと思っていたが、彼女は互いに対等な立場だと考えていたらしく、技術的、芸術的事柄について相談をされることもしばしばあった。
それに、あの人は殆ど誰に対してでも同じような口調で話していた。性別年齢立場一切関係なしに、君付けで敬語、それでいてどこか慇懃無礼にも聞こえるあの話し方。仮に私のそれが錯覚ではないのだとしたら、あの人は全てを見下しているということになる。
だが、それでも、心の奥底では、もしかして本当にあの人は私のことを、この世の全てを、下に見ているのではないかという可能性を完全には排除できていない。それは何故なのだろうか。
そうか。それは他人の問題では無い。自分が抱えるコンプレックスによるものだ。
前に、あの人の造形美学を伺ったことがあった。彼女の造形の基礎は幾何学である。手元の紙に作図をしながら早口でまくし立てる様子は、美術論の説明というよりも気難しい教授が数学の講義をするのに近いものがあった。
とりわけ彼女が強い執着を抱いていたのが円である。話題が勾玉のことになったときも、あれは真円の黄金比的分割であり自身最大の偉業なのだと、芸術作品の創造ではなく数学的発見かのような表現をしていた。私は数学には疎いので、実際あの形状に数学的意味があるのか、それとも単に比喩的な意味だったのかは分からない。それでも、(神である彼女がそうするのは少々おかしな話だが)彼女が円という図形を神聖視しているということは良く分かった。
その話になぞらえるならば、玉造部、いや、玉祖命
とはまさしく真円なのだ。あの人は勾玉を造り、明けぬ夜を終わらせる鍵の一つとなった。そして、その功績を買われて、後にニニギにも付き添うこととなった。その経歴には一点の瑕疵も無い。彼女を天津神内でも屈指のエリートと見做すことに、異論は無いだろう。
対して私はどうか。何もしなかったわけではない。土器の腕において右に出るものはおらず、故にこの界隈に加え入れさせてもらえている。
だが、出自も地位も乏しい私は、歴史に爪痕を遺すことができなかった。二人の造形神がいて、方や高天原の神話に組み込まれ、方やそうはならなかった。
将来、私のことを覚えている者がどれだけいるだろうか。私は結局のところ、何者なのだろうか。
†
「お待ちしておりました。磨弓様」
書庫番の埴輪が恭しく磨弓に頭を下げる。
「ありがとう。ついでで悪いのだが、机を運ぶのを手伝ってくれないか?」
磨弓は書庫番の埴輪に軽く敬礼をした。文民と軍人。互いに敬意の表し方は違うが、重要なのは手法ではなく気持ちが伝わるかどうかである。二人は協力して書庫の真ん中で机を組み合わせた。
磨弓は机の上に地図を広げ、その上に駒を並べた。地図は演習の舞台を、駒は演習に参加する部隊をそれぞれ模している。
かつて、この地図は方眼紙であった。畜生霊からの圧迫から演習が可能な領域が霊長園内部に制限されており、区画化された園を地図で表現すると方眼紙になったのである。
それが今や、机一脚では収まらない程の大型の紙に、複雑な畜生界最奥部の地形を描いたものを使うまでになっている。これは我々の偉大な勝利を象徴するものである。
だが、その拡大は食い止められることとなった。原因は最近畜生霊の謀
によってやって来た、地上からの刺客である。我々を取り巻くパワーバランスは次の段階に移行しており、それを打開する手掛かりを掴むことが、今度の演習の目標である。
磨弓は書庫に納められた戦史関係の文献を山積みにし、それを捲っては地図上の駒を置き直すことを繰り返した。
彼女が今読んでいる文献はいずれも、彼女が兵長として造られるにあたって一度記憶領域に組み込まれたデータである。だが、それはあくまで戦術定石を機械学習するための踏み台という目的で一時的に書き込まれたものだった。データを定石に昇華する過程でその大半は削除されており、そのため度々読み直しが必要になる。
それに、新たな局面に対応するためには新たなデータが必要になる。ここでネックになるのが、ここの資料は全体的に時代が古いということである。結果、磨弓が使う戦術も必然的に古くさいものに偏ってしまう。
古くさいと言えば。磨弓は、地上からの刺客の一人のことを思い出していた。その刺客は自分のことを巫女と説明していた。その時は巫女という概念を知らなかったが、後に袿姫様に聞いて、神を降ろすなど、神事に携わる職業なのだということを理解した。
それまで神と言えば袿姫様であった。畜生界に他の神はいない。正確には剛欲同盟の長である饕餮は神格らしいのだが、下賤な畜生としか思えない。袿姫様以外の神の存在は、知識としては知っていたのだが、実在性のあるものとして認識するようになったきっかけはやはりあの巫女であろう。
ここの蔵書は古いが、外の世界では失われた、神代の記録もあるというのは強みだった。現実的脅威の一つが巫女である以上、神の戦史を参照するのは理に適った選択である。磨弓は何冊か資料を集め、手始めに古事記を開いた。
古事記を捲りつつ彼女はふと考える。埴安神とは、その出生のインパクトに反して、中央神話における記述自体は非常に簡素な神である。出生以外で埴安の文字列が出現する記録としては、日本書紀に地名として出てくるというものがある。だが、その伝承における土器の製作者は神武天皇であり埴安神ではない。
古事記や日本書紀の編纂経緯の特殊性からして、記述の少なさはやむを得ない面もある。そもそも、具体的なエピソードが作中にある神格の方が少ないのだ。
だがその一方で、中央神話に限定しなければ、幻想入りした物語も含めれば、埴安神に関する記述はもっと多いということも磨弓は知っている。形は違えどイザナミの子であり、そうでありながら――そうであるが故、かもしれないが――中央神話から排された神。埴安神とは何者なのだろうか。
磨弓にとって袿姫は絶対的な忠誠の対象であり、極端な言い方をすればその出自などどうでもいい筈である。だが、今日は不思議とそのことが気になって仕方がなかった。
†
「これでおしまいです」
太安万侶の筆が止まる。だが、それは稗田阿礼の指示通りに止めたのとは違う、大いに違和感を込めての止めだった。
「稗田殿、本当にこれだけでしたか? 私には貴方程の絶対的な記憶力は無いが、それでも色々と欠落があるように感じる」
「記憶とは不確かなものなのです。多くの人はその不確かな方向性を記憶が無くなるという脱字の側に求めがちですが、本来無関係の記憶が入り込む、例えるならば衍字
のような不確かさもあるのです。貴方のもその類でしょう」
阿礼の言い分は一見もっともらしいが、はぐらかしているようにも思える。安万侶は、人払いが済んでからもう少し探りを入れることにした。
「稗田殿。私には、私に余計な記憶が入り込んでいるようには思えないのです。そもそもこの文書には名前だけの神が多すぎる。神格には相応の縁起があって然るべきと思いませんか?」
二人しかいなくなった部屋に、安麻呂の甲高い声が響く。安麻呂はなるべく威圧的にならないように配慮したつもりだったが、指摘の内容そのものが、阿礼にとっては痛いところなのだ。
阿礼は観念したかのように、白髪交じりの頭を掻きながら答えた。
「なるほど。白状しますと、省略した箇所がいくらかあるのは事実です。ですが、思い出して下さい。我々の仕事は既存の書の復活ではなく新たな歴史書の編纂です。全てを書き記すのに、我々に渡された紙は少なすぎるのです」
そんなことなど、私の手にかかれば。そう口を挟む安万侶を阿礼は静止する。
「先の歴史書の編纂からヤマトを巡る状況は大いに変化しました。今となっては不要、それどころか有害な記述すらあったのです。それに、中央の正統性という点において、既存の神話体系である、地方神話の集合体というのは雑味が多すぎます。私は文字書きでは無い程度に無学ですが、それでも私の記憶をそのまま記したら首がいくつあっても足りないことくらい分かります」
阿礼が生まれる少し前、ヤマト政権において、乙巳
の変が勃発した。政変と続く混乱により、多くの史料が灰燼に帰すか散逸するかした。
天武天皇がこの状況に危機感を覚え、幼年期より天才的な記憶力を発揮していた阿礼に目をつけて、現存していた歴史書を片っ端から暗記させた。
そうして蓄えられた、阿礼の脳内にある歴史を紙面にまとめることが、阿礼と安麻呂に与えられた使命だった。
それまで語られていた歴史の内容を完全に知るものは、今や阿礼ただ一人である。そのため、古事記の編纂において彼がしたことは完全犯罪であった。
だが、彼の目は憂いを帯びていた。決して、本心からの行動では無かったのだろう。
「人の意思が介入する以上、完全な歴史を記すことなど幻想なのでしょうね」
まるで、ここでは無い世界を眺めているかのように遠くを見つめて、阿礼はそう呟いた。
†
調べ物を終えた磨弓は袿姫の部屋に戻った。袿姫は粘土を捏ねてはおらず、代わりに机の上には捏ね終わった粘土の塊と工具が置いてあった。
「調べ物は終わったのかしら」
「ええ、次の演習もつつがなく終わるでしょう」
「他には?」
袿姫が手を止めて磨弓を見つめる。声色は穏やかだが、目はいつもの柔和なそれではない。声には出さないが、お前のことは全てお見通しだと言っているかのようだった。
「神話について調べ物を」
「どうだった?」
「私にはよく分かりませんでした。結局、私は兵長であり歴史家では無いのでしょう」
「歴史家を自称していても神話の理解は難しいからそれはしょうがないわね。逆に貴方が分かったことは?」
「本当に分からなかったのです。埴安神の神話について調べていたのですが、文献によって埴安神の記述が異なっていて、何か亀裂があるように思えるのです」
磨弓はまだ口を閉じていなかったが、袿姫にとってはここまでで十分だった。彼女は金槌を持って立ち上がり、磨弓の方へと向かった。磨弓の方も会話が中断したことに気がついて、話を途中で切った。
袿姫は磨弓の真正面に立つと、金槌を持った手を振り上げた。
磨弓は何もしなかった。創造主である袿姫に対して拳を上げるようにはプログラムされていないし、金槌で叩かれる事自体は耐久試験のために度々行われている。
そして、金槌を振り下ろす袿姫が、彼女が最期に見た光景となった。袿姫の表情は金槌の残像に隠れて、磨弓からは見えなかった。だが、仮に見えていたとしても、そこから感情を読み取ることはできなかっただろう。埴輪が袿姫に表す感情は、100%の忠誠心以外であってはならない。その感情のためには、主の心、それもネガティブなものを読みとる機能など、無用の長物でしかないのだ。
「全て分かっているじゃない。亀裂があるのは当然よ。何故なら埴安神の名を関する神は複数いるのだから」
袿姫は自分が立った用事は只の気の所為であったかのように、迷いなく踵を返した。独り言を呟いたが、この部屋に今一人しかいないことは分かりきったことだった。彼女にとって、埴輪の死は身近なものだった。
「でも、何回やっても埴輪の神話から埴安神の正統性という要素を排除することができないわね。そこに疑問を持っただけで、私でも壊せるくらいの耐性にまで落ちてしまうとは」
ふと目を落とすと、エプロンにベンガラの赤い粉と焼き粘土の茶色の粉がついているのが見えた。彼女はそれを軽くはらった。
「便利だと思ったんだけどね、この名前。慣れない殺人をしてまで僭称するものじゃ無かったなあ」
袿姫はつい先刻まで磨弓だった土塊に目をくれようともしない。一撃で頭部が粉々になってしまったので、まじまじと見つめたところで表情は何一つとして読み取れないだろうが。
「いっそ書庫の方を整理した方が……。いや、埴輪を造り直す方が楽か」
袿姫は粘土塊の方へと戻り、それに彫刻刀を押し当てた。
結局どれが真実だったんでしょうか
タイトルのピグマリオンの意味がどういう意味なのかが気を惹きましたが、袿姫が見事にピグマリオンになり損ねた酸化鉄となっており良い回収の仕方だなと感じました。
埴安神への疑問に毎回たどり着いてしまい毎回終わりを迎える埴輪達、という着眼点も興味深かったです。
有難う御座いました。
あと途中で袿姫(と思わしき人物)の独白で明らかに×××様っぽい人物についての言及がされてたと思われるのですが最後まで名前は出ずに終始ギリギリのラインでぼかされてたのが印象的でした。面白かったです。
完全オリジナルなのか元になった話が存在するのかは正直なところわかりませんが
それはそれとしてある種の狂気?として楽しめました。
まゆけーきは良くも悪くも狂気が似合いますね