1日目
「何かを観察することはよいことだ」という言葉を聞いた覚えがある。
なので、私はお姉ちゃんを観察してみることにしました。
とりあえず観察しやすいようにここにいてもらうことにします。
2日目
お姉ちゃんはずっとお仕事をしています。
何をしているのかはよくわかりませんが、とにかくいっぱいお仕事をしています。
頑張っています。
11日目
お姉ちゃんがこの十日間ほど、休まずずっとお仕事をしていましたが、今日終わったみたいです。
部屋の扉が開かなくて、首をかしげていたけれど、すぐに机に戻って何か紙に書いていました。
お姉ちゃんはそれを扉の下から廊下の方に押し出すと、そのまま本に何かを書き付けてからふらふらとベッドに向かい、倒れ込むようにして眠ってしまいました。
私はお姉ちゃんが何を書いたのか気になって、廊下に置いてある紙を拾い上げて中を見てみました。
そこには「部屋に閉じ込められています。これに気がついたら助けてください」と書いてありました。
私はそれをポケットに仕舞い、また部屋の中に戻りました。
12日目
お姉ちゃんは目を覚ましてから、何故かドアノブをガチャガチャと乱暴に回したり、体全体で扉にぶつかっていったりしていましたが、しばらくすると本棚から本を取り出して読書に耽ってしまいました。
本を読んでからお姉ちゃんは椅子に腰掛けて目を閉じてなにやら考え込んでいる様子でしたが、急にニヤニヤと笑ったかと思うと薄く開いた唇からかすかに「フフ、クフフ」と笑い声を漏らしていました。
少し気持ち悪かったです。
15日目
少しボーッとしていたら三日ほど経っていました。
お姉ちゃんは相変わらず本を読んでいたんだと思いますが、今日は珍しく小説を書いていました。
私もちょっと読んでいましたが、ちょっとよく意味が分かんなくてつまらなかったです。
お姉ちゃんには小説を書く才能がないので、書くのはもうやめたほうがいいと思います。
16日目
お姉ちゃんが奇行に走りました。
昨日書いていた小説の原稿を燃やしてしまったのです。
そして、その燃えている原稿をじーっと見て、また気持ち悪いニヤニヤを浮かべていました。
燃えた灰はお部屋を汚してしまうので、お姉ちゃんが寝ている間に片付けました。
17日目
今日はお姉ちゃんはキョロキョロと何かを探すようにあちこちを見回していました。
急に何をしだしたのかわかりませんが、少し面白かったです。
18日目
お姉ちゃんがお部屋の壁に話しかけていました。
「ここから出してくれない?」とか「目的は何?」とか言っていました。
誰に話しかけてたんだろう?
19日目
今日もお姉ちゃんはお部屋のあちこちに向かって話しかけていました。
何がしたいのかわからなくてちょっと怖いです。
明日もまたお部屋に話しかけるのかな……?
49日目
ずっと同じことばっかり繰り返していて、書くことがなかったので、今日まで書いていませんでしたが、ついにお姉ちゃんの行動が少し変わりました。
今日までお部屋のあちこちに話しかけていたのですが、今日は扉に向かって長いこと話しかけています。
扉の向こうには誰も居ないのに必死になって「私はここにいるわよ」って言っていました。
50日目
今日も昨日と同じように扉に向かって話し込んでいました。
でも昨日よりは短かったです。
51日目
相変わらずお姉ちゃんは扉に向かって話しかけています。
今日はなにやら楽しそうに独り言をつぶやいていました。
言っている内容はよくわかりませんでした。
52日目
53日目
昨日もお姉ちゃんは扉に向かって話しかけていましたが、一冊の本を取りに行ってそのまま読み込んでいました。
今日は扉の方を向いて本棚の本を一冊一冊説明していました。
説明しているお姉ちゃんは楽しそうでした。
54日目
お姉ちゃんは昨日説明していた本棚の中から一冊の本を取り出してじっと読んでいました。
そして読み終わってから何度も声色を変えて一人で会話をしていました。
55日目
お姉ちゃんは今日は本棚から本を沢山引っ張り出して、少し読んではしまい、読んではしまい、をずっと繰り返していました。
56日目
今日のお姉ちゃんは少し不思議でした。
急に勢いよく起きて、本棚からたくさんの本を無造作に引っ張り出したかと思うと、それを何冊かに分けて床の上に置いていました。
引っ張り出した本を全て床に置き終わると、またベッドに戻って眠ってしまったのです。
次に起きてきたときはその本の山を嬉しそうに見つめて本棚にしまっていました。
57日目
お姉ちゃんが怪我をしました。
急に椅子に登って空中に向かって手を伸ばしていたかと思うと、そのまま前に倒れてしまったのです。
頭を打ったみたいで、しばらく動きませんでした。
58日目
お姉ちゃんはまだ動きません。
呼吸の音は聞こえるので生きてはいるみたいです。
59日目
お姉ちゃんが起きました。
起きてすぐに辺りを見回していましたが、その後落ち込むようにうなだれると、そのままベッドに寝っ転がってしまいました。
60日目
お姉ちゃんはベッドに横たわったまま泣いていました。
お姉ちゃんが泣いているところを見たのは初めてだったので、ちょっとびっくりしました。
61日目
今朝までずっと涙を流していたお姉ちゃんでしたが、急にケラケラと笑い出しました。
涙を流しながら楽しそうな笑い声を上げているので不気味でした。
62日目
今日は昨日と打って変わって、声を荒らげてなにかに怒っていました。
ずっと「違う、違う、違う」と繰り返していたのが耳に残っています。
63日目
今日はガリガリという音で目が覚めました。
ガリガリって音はお姉ちゃんが扉を両手で引っ掻いている音でした。
どのくらい引っ掻いていたかわかりませんが、お姉ちゃんの爪が剥がれて扉には血の跡がいっぱいついていました。
痛そうでした。
64日目
何本も血の跡がついた扉に向かって今日のお姉ちゃんは何度も頭を打ち付けていました。
線だった血の跡がぶつけたところを中心に丸の跡になっています。
何度も何度も打ち付けていて、ちらりと見えるお姉ちゃんの顔は誰だかよくわからなくなっていました。
一番大きな音を鳴らして頭を打ち付けた後に、お姉ちゃんはパタリとのけぞって倒れて、また動かなくなっちゃいました。
頭からは何かがこぼれ出ていました。
65日目
お姉ちゃんは動きませんでした。
66日目
今日もお姉ちゃんは動きませんでした。
67日目
今日も動きませんでした。
68日目
動く素振りがありません。
69日目
呼吸の音が止まりました。
70日目
お姉ちゃんが壊れてしまったので、これで観察を終わりにしたいと思います。
たくさん観察したので、疲れました。
でも私の知らないお姉ちゃんの姿がたくさん見れたのでよかったと思います。
お姉ちゃんがつけていた日記も終わらせました。
「何かを観察することはよいことだ」という言葉を聞いた覚えがある。
なので、私はお姉ちゃんを観察してみることにしました。
とりあえず観察しやすいようにここにいてもらうことにします。
2日目
お姉ちゃんはずっとお仕事をしています。
何をしているのかはよくわかりませんが、とにかくいっぱいお仕事をしています。
頑張っています。
11日目
お姉ちゃんがこの十日間ほど、休まずずっとお仕事をしていましたが、今日終わったみたいです。
部屋の扉が開かなくて、首をかしげていたけれど、すぐに机に戻って何か紙に書いていました。
お姉ちゃんはそれを扉の下から廊下の方に押し出すと、そのまま本に何かを書き付けてからふらふらとベッドに向かい、倒れ込むようにして眠ってしまいました。
私はお姉ちゃんが何を書いたのか気になって、廊下に置いてある紙を拾い上げて中を見てみました。
そこには「部屋に閉じ込められています。これに気がついたら助けてください」と書いてありました。
私はそれをポケットに仕舞い、また部屋の中に戻りました。
12日目
お姉ちゃんは目を覚ましてから、何故かドアノブをガチャガチャと乱暴に回したり、体全体で扉にぶつかっていったりしていましたが、しばらくすると本棚から本を取り出して読書に耽ってしまいました。
本を読んでからお姉ちゃんは椅子に腰掛けて目を閉じてなにやら考え込んでいる様子でしたが、急にニヤニヤと笑ったかと思うと薄く開いた唇からかすかに「フフ、クフフ」と笑い声を漏らしていました。
少し気持ち悪かったです。
15日目
少しボーッとしていたら三日ほど経っていました。
お姉ちゃんは相変わらず本を読んでいたんだと思いますが、今日は珍しく小説を書いていました。
私もちょっと読んでいましたが、ちょっとよく意味が分かんなくてつまらなかったです。
お姉ちゃんには小説を書く才能がないので、書くのはもうやめたほうがいいと思います。
16日目
お姉ちゃんが奇行に走りました。
昨日書いていた小説の原稿を燃やしてしまったのです。
そして、その燃えている原稿をじーっと見て、また気持ち悪いニヤニヤを浮かべていました。
燃えた灰はお部屋を汚してしまうので、お姉ちゃんが寝ている間に片付けました。
17日目
今日はお姉ちゃんはキョロキョロと何かを探すようにあちこちを見回していました。
急に何をしだしたのかわかりませんが、少し面白かったです。
18日目
お姉ちゃんがお部屋の壁に話しかけていました。
「ここから出してくれない?」とか「目的は何?」とか言っていました。
誰に話しかけてたんだろう?
19日目
今日もお姉ちゃんはお部屋のあちこちに向かって話しかけていました。
何がしたいのかわからなくてちょっと怖いです。
明日もまたお部屋に話しかけるのかな……?
49日目
ずっと同じことばっかり繰り返していて、書くことがなかったので、今日まで書いていませんでしたが、ついにお姉ちゃんの行動が少し変わりました。
今日までお部屋のあちこちに話しかけていたのですが、今日は扉に向かって長いこと話しかけています。
扉の向こうには誰も居ないのに必死になって「私はここにいるわよ」って言っていました。
50日目
今日も昨日と同じように扉に向かって話し込んでいました。
でも昨日よりは短かったです。
51日目
相変わらずお姉ちゃんは扉に向かって話しかけています。
今日はなにやら楽しそうに独り言をつぶやいていました。
言っている内容はよくわかりませんでした。
52日目
53日目
昨日もお姉ちゃんは扉に向かって話しかけていましたが、一冊の本を取りに行ってそのまま読み込んでいました。
今日は扉の方を向いて本棚の本を一冊一冊説明していました。
説明しているお姉ちゃんは楽しそうでした。
54日目
お姉ちゃんは昨日説明していた本棚の中から一冊の本を取り出してじっと読んでいました。
そして読み終わってから何度も声色を変えて一人で会話をしていました。
55日目
お姉ちゃんは今日は本棚から本を沢山引っ張り出して、少し読んではしまい、読んではしまい、をずっと繰り返していました。
56日目
今日のお姉ちゃんは少し不思議でした。
急に勢いよく起きて、本棚からたくさんの本を無造作に引っ張り出したかと思うと、それを何冊かに分けて床の上に置いていました。
引っ張り出した本を全て床に置き終わると、またベッドに戻って眠ってしまったのです。
次に起きてきたときはその本の山を嬉しそうに見つめて本棚にしまっていました。
57日目
お姉ちゃんが怪我をしました。
急に椅子に登って空中に向かって手を伸ばしていたかと思うと、そのまま前に倒れてしまったのです。
頭を打ったみたいで、しばらく動きませんでした。
58日目
お姉ちゃんはまだ動きません。
呼吸の音は聞こえるので生きてはいるみたいです。
59日目
お姉ちゃんが起きました。
起きてすぐに辺りを見回していましたが、その後落ち込むようにうなだれると、そのままベッドに寝っ転がってしまいました。
60日目
お姉ちゃんはベッドに横たわったまま泣いていました。
お姉ちゃんが泣いているところを見たのは初めてだったので、ちょっとびっくりしました。
61日目
今朝までずっと涙を流していたお姉ちゃんでしたが、急にケラケラと笑い出しました。
涙を流しながら楽しそうな笑い声を上げているので不気味でした。
62日目
今日は昨日と打って変わって、声を荒らげてなにかに怒っていました。
ずっと「違う、違う、違う」と繰り返していたのが耳に残っています。
63日目
今日はガリガリという音で目が覚めました。
ガリガリって音はお姉ちゃんが扉を両手で引っ掻いている音でした。
どのくらい引っ掻いていたかわかりませんが、お姉ちゃんの爪が剥がれて扉には血の跡がいっぱいついていました。
痛そうでした。
64日目
何本も血の跡がついた扉に向かって今日のお姉ちゃんは何度も頭を打ち付けていました。
線だった血の跡がぶつけたところを中心に丸の跡になっています。
何度も何度も打ち付けていて、ちらりと見えるお姉ちゃんの顔は誰だかよくわからなくなっていました。
一番大きな音を鳴らして頭を打ち付けた後に、お姉ちゃんはパタリとのけぞって倒れて、また動かなくなっちゃいました。
頭からは何かがこぼれ出ていました。
65日目
お姉ちゃんは動きませんでした。
66日目
今日もお姉ちゃんは動きませんでした。
67日目
今日も動きませんでした。
68日目
動く素振りがありません。
69日目
呼吸の音が止まりました。
70日目
お姉ちゃんが壊れてしまったので、これで観察を終わりにしたいと思います。
たくさん観察したので、疲れました。
でも私の知らないお姉ちゃんの姿がたくさん見れたのでよかったと思います。
お姉ちゃんがつけていた日記も終わらせました。
こういう倫理観が完全に妖怪サイドのこいしちゃん、すごく好みです
精神性が特殊な覚妖怪が壊れたとき、どういう景色が見えていたのでしょうね……