人里にある貸本屋、鈴奈庵の店番を任されている少女、本居小鈴はいつものように売り物の本の確認をしていた。すると、寺子屋に通っている子狐の少年が小鈴にノート渡してきた。
「はい。新しいノートね。」
「ありがとう。小鈴お姉さん!」
「今日は寺子屋はお休みなの?」
小鈴から出されたお茶を飲みながら、質問に答えた。
「慧音先生が用事で、寺子屋が休みになったよ。」
子狐の隣に座る。すると、子狐は尻尾と耳を出して寛いでいた。
「耳と尻尾が出てるよ。」
「今は小鈴お姉さんだけだし、良いでしょ?」
「丁度昼になるから店を閉めないとね。」
小鈴は店の外に出て、紙を張り付け、店を閉める。
「え!?店を閉めちゃうの?」
「2時になったら、開けるわ。君はどうするの?」
「暇だから本を読んでる。お客さんは来ないんだよね?」
「友達が来るかもだけど、大丈夫なの?」
子狐は大丈夫と言いながら、隠しから葉っぱを取り出して、頭に乗せる。宙返りすると、一匹の猫に化けた。
「凄いわ…」
「これならお客さんが来ても大丈夫だよ。」
元の姿に戻ると、小鈴の隣に座る。小鈴は無意識に子狐の耳に触れると、子狐が吃驚したようで、小鈴を見る。
「小鈴お姉さん?」
「ごめん。無意識だったわ。」
「……耳…触りたい?」
「良いの?」
「……うん。」
小鈴は子狐の耳に撫でると、ピクリと、耳が動いたが次第におとなしくなる。
「毛並みが凄い!」
「小鈴お姉さん。耳の中はくすぐったいよ…」
「あ、ごめん…」
小鈴は撫でるのをやめると、子狐は残念そうにしている。それに気づいたのか小鈴は、少し考えて子狐に聞いてみる。
「耳掻きしてあげよっか?」
「耳掻き!?どうして?」
「なんとなく。」
小鈴の手にはいつのまにか、耳掻き棒を準備していた。
「……お願いします。」
「それじゃあ、横になって。」
小鈴は子狐の耳に触れて、耳掻き棒をゆっくり耳の穴に入れる。
「痛かったら、いってね。」
耳掻き棒で耳の中を丁寧に掻いていく。子狐はくすぐったそうにしているが、動かないように我慢する。
「痛くない?」
「だ、大丈夫。」
「よし…綺麗になったよ。反対向いて。」
「え、その…」
子狐は恥ずかしながらも、反対を向いた。
「大丈夫…?」
「うん…」
子狐の耳を掃除する。反対側は、思っていたよりも少なく、すぐに終わった。子狐を見ると、小鈴の膝で眠ってしまった。
(寝てるの?起こすのは…可哀想だね…)
時間を確認すると、12時50分になっている。
(10分前に起こそうかな。)
小鈴は子狐の頭を撫でながら、暇を潰していると、子狐が目を覚ましてしまった。
「よく眠れた?」
「え!?小鈴お姉…さん。僕…寝てた?」
「寝てたよ。」
子狐の顔が次第に赤くなると、飛び起きて小鈴から離れた。恥ずかしいようだ。
「起こしてよ!」
「気持ち良さそうに寝てたから、起こさない方がいいかなと…思ったんだけどな。」
「………もうそろそろ、2時になるよ!僕…帰るね!」
子狐は帰ってしまった。
(うーん。恥ずかしなが行っちゃった。接し方…ダメだったかな。)
引き出しから、一冊の本を取り出した。本の題名は【誰にでもできる、男性へのアプローチ】と書かれている本だった。
2人ともかわいらしかったです