今日も曇り空の賽の河原ではコツコツと音がする。
「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため、三つ積んでは……」
わたしは積んで、積んで、高い石の塔が出来た。
「よしっ」
わたしの身長より少し高い石の塔を見て満足する。上手くできたわ、と。
「瓔花」
どこかから声がかけられて驚いてわたしは飛びはねる。
「うひゃあ!」
飛びはねた途端、目の前にあった石の塔が崩れる。ガラガラと大きな音を立てて崩れていった。
「ああーーっ!」
せっかく作った石の塔が……わたしの一番だったのに……
「あらら、崩れてしまったかい」
驚く私の視界に入ってきたのは赤い髪を揺らした小町だった。
「小町ー! どうして驚かせたの!」
「いや驚かすつもりはなかったんだけど……っとそれは言い訳か。すまなかったね」
軽く笑いながら小町は謝ってきた。謝ってくれるのはいいけど、これどうするの。
「小町ー!」
いいこと思いついた!
「はいはい、なんだい瓔花?」
「責任取ってわたしと一緒に石積みして!」
苦笑いをした小町はしゃがんで石を拾う。
「わかったよ」
*
「どうしてそんなに石積みがへたくそなの?」
「ぐっ、瓔花、そんなにバッサリ言わないでくれ……」
賽の河原にコツコツと石を積む音が響く。さっきから小町は石を三つ置いては崩しているように見える。
「小町、自分で崩してない?」
「崩れるんだってば。瓔花は上手だからそんなに積めるんだろうけど私はやったことないから上手く出来ないのさ」
「ふーん、そういうもの?」
「そういうものさ」
またコツコツと音が響く。わたしはどんどん石を積んでまた身長より少し高い塔が出来た。
「やった! できたよ小町!」
わたしは軽く飛びはねて喜ぶ。
「おお、やっぱり瓔花は上手だな」
わたしの頭をわしゃわしゃと撫でてくる小町。わたしは嬉しくて笑う。
「ありがとう! 小町はできた?」
「まだだなぁ。少しは出来るようにはなってきたんだよ?」
小町の塔を見る。石が五つほど積まれていて小さな塔が出来ていた。
「ねえねえ小町。この塔だったら平べったいのだとか、四角みたいな石の方がいいよ! なんたって積みやすいから! わたし探してくる!」
「あっ、おい、瓔花! 気をつけろよ!」
わたしは思い立って石を探しに走った。小町の声が聞こえたけど気にしなかった。
小町から少し離れた三途の川のほとりでわたしは石を探す。平べったいのと四角みたいな石ないかな?
しゃがんで探しているとたくさん見つかる。これなら積みやすそう、これは積みにくそう、これは面白い石だ! なんて色々思っていると目の前の川からいきなりざばっと誰かがあがってきた。
「瓔花、川のほとりでなにやってるんだい?」
川からひょっこり顔を出したのは潤美だった。
「うわあ! 潤美か! びっくりした!」
わたしは驚いて持っていた石を全部落としてしまった。バラバラと石が転がっていく。
「ああっと、石拾いか? 驚かせてごめんな? 水中から見えたものだから何やってるのかと思ってな」
「ううん、潤美が悪いわけじゃないよ! わたしが驚いただけだもん」
またしゃがんでさっきの石を拾う。さっきの……あった! わたしはにこにこしながら拾っていく。
「瓔花は楽しそうだな。石を積んでいるのか?」
「さっきね、石積みしてたら、小町にびっくりさせられて石の塔が崩れちゃったの。だから小町と石積みしてるんだけど、小町がへたくそでね、だから積みやすそうな石を探してたの!」
潤美は笑った。あははと楽しそうに。
「へえ、あの死神は石積みが下手くそなのかい?」
「うん!」
「そりゃあ見てみたいものだな」
「聞こえてるよ」
「うひゃあ!」
声にびっくりしてわたしはまた拾った石を落とす。
「あら、死神さんじゃないか」
「こんなところで会うなんて奇遇だね潤美さん」
「もーー! 小町! 驚かせないでよ!」
わたしは怒って隣に来ていた小町のお腹をぽかぽか叩く。小町はわたしの頭を撫でて言ってくる。
「すまないね、驚く瓔花が可愛いもんだからさ」
「絶対そんなこと思ってない!」
「そんなことは無いよ」
「あらまあ、死神さんは驚かすのが趣味なのかい?」
「皮肉は寝て言え」
「寝たら寝言で言うさ」
なんか小町と潤美は言い合いしてる。なんだろう?
わたしは叩くのを止めて小町と潤美を見る。喋るのを止めた二人がわたしを見てきた。頭の中よく分からなくて首を傾げる。
「なあに?」
「いや、なんでもない」
小町が言った。
「瓔花は聞かなくていいことさ」
潤美は言った。
二人がそう言うならそれでいいのかな?と疑問になりながらしゃがんで石をまた拾う。何回拾えばいいんだろう?
「おっと、手伝うよ」
小町が私の近くの石を拾っている。
「それじゃあこの辺で私は泳いでくるよ」
潤美がそう言ってわたしは顔を上げる。
「えー、行っちゃうの?」
「気になって話に来ただけだからね」
うーん、潤美とも一緒にいたいけど……どうすればいいかな。
「そんな悲しい顔しないで、また会えるさ、この川にいる限りな」
「……潤美もいっしょに石積みしない?」
「私は泳ぐ方が性に合っているからね、石積みは向いてないよ」
「潤美とも石積みしたいなあ。いっしょに大きな塔作りたいな……」
わたしは潤美をじーっと見つめる。潤美の顔がどんどん悩むような顔になる。
「ううん、だけどな……」
「いいと思うぞ、一緒にやろうよ、石積み」
小町がそう言ってくれた。
「小町も言ってるからいいでしょ!」
パッとわたしは笑顔になって手を上げる。
「ううん……わかったわかった、石積みを一緒にしようか」
「やった! ありがとう潤美!」
潤美は手を顔の横に上げてひらひらとした。何してるんだろう。
「ちょっと待ってな」
ざばあと潤美は川から上がってきた。濡れた服がぴちゃぴちゃと河原に落ちていく。
「ほら行こ、行こ!」
潤美の手を引いてわたしは走ろうとする。
「こら少し落ち着きなさい」
「おーい、瓔花、石忘れてるよ」
潤美と小町はわたしを止めた。もー、早くしたいのに!
「早く行こうよ!」
潤美の手を離してから二人の少し先を走ってわたしは振り返ってそう言った。
小町はさっき拾った石を持って、潤美は少し頭を掻きながらわたしの後ろを着いてきていた。
*
「どうして潤美も石積みがへたくそなの?」
「ふぶっ」
「どうしてって言われてもなあ……」
潤美が積んでいると小町の時みたいになぜか崩れていく。四つ目を積もうとしていると崩れているみたいでどうしてだろう?
「石積みはこうやるんだよ!」
一番下に大きな石、次に平べったい石、次に四角みたいな石……そうして積んでいくとわたしの目線ぐらいまで積めた。
「おお、瓔花はよく積めるなあ。私はそんなに積めないよ」
潤美はパチパチと拍手をしてそう言った。
「積めないんじゃなくて潤美も積むんだよー!」
わたしはバタバタして力強く言う。小町はさっき笑ったせいで十個ほど積んだ石が崩れていた。
「小町ももっと積むんだよー!」
「積んでるよ」
小町はコツコツと高く積んでいく。さっきより上手くなっててわたしは笑った。
「小町も石積みマスターだね!」
「賽の河原一番のアイドルに言われたらこのうえ嬉しいことないな!」
「どうやって積むんだい……」
潤美はぎこちない手つきで積んでいる。
「積みやすいもので積むのがコツなの! あとバランス!」
「むむむ……難しいな」
コツ、コツ……ゆっくりとした手つきで石を置いていく。四つが積めた後、五つ目をコツンと置いた。
「つ、積めた……」
「やったあ、潤美も積めた!」
いえーいと小町とハイタッチする。潤美は嬉しそうにガッツポーズした。
「やった、やった!」
嬉しくてわたしは軽く踊りだす。みんな積めたことがとても嬉しかった。
わたしが踊っていると全員の石の塔が急にガラガラと崩れた。
「「「あ」」」
「積み直しだねえ」
潤美の間延びした声が響いた。
*
「ほらさっきより積めたぞ!」
「こっちも高いぞ!」
「わあすごい二人とも!」
パチパチとわたしは拍手する。さっきの十個よりさらに高く積めてわたしは嬉しくて拍手している。石を積み上げるとどうして崩れて行くのかは分からないけれど、たくさん高く積めるのはとてもいい事だと思う。
そうしてまた目の前でガラガラと崩れる。これで何回目だろう。
「どうして崩れるんだろう……?」
わたしは頭を傾げる。
「見えない鬼が崩しているんですよ」
後ろから声がかかって、驚いて振り向く。そこに居たのは緑の髪の人。いや、人じゃない……
「閻魔様! どうしてここに?」
閻魔様がいて驚く。
「裁判が終わって賽の河原に来てみれば、何やら楽しそうな声が聞こえましてね。見に来た次第です。戎瓔花、石積みは楽しいですか?」
「うん! 楽しいよ!」
後ろでまたガラガラと崩れる音がする。
「それならば良かったです。少し手を見せてみなさい」
閻魔様はわたしの手を取る。少しタコのあるわたしの手を持って閻魔様の手が私の手を包んだ。少し手が軽くなったような気がした。
「これでいいの?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「おおい、瓔花! 二人で積んだら高く積めたぞ!」
小町の声がして振り向く。そしたら小町の身長ぐらいまで積み上がっていて一番高いところを見上げた。高くて驚いた!
「うわあ、凄いよ! 小町も潤美も凄いよ!」
嬉しくてパチパチと大きな拍手をして飛びはねる。小町も潤美も嬉しそうにしていた。
「素晴らしいものですね」
わたしの隣に立って閻魔様が言う。
「石積みって楽しいよ!」
にこにこと私は笑って言った。私もコツコツとまた積み始める。
一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため、三つ積んでは……
今日もわたしは賽の河原で石積みをして過ごしている。
「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため、三つ積んでは……」
わたしは積んで、積んで、高い石の塔が出来た。
「よしっ」
わたしの身長より少し高い石の塔を見て満足する。上手くできたわ、と。
「瓔花」
どこかから声がかけられて驚いてわたしは飛びはねる。
「うひゃあ!」
飛びはねた途端、目の前にあった石の塔が崩れる。ガラガラと大きな音を立てて崩れていった。
「ああーーっ!」
せっかく作った石の塔が……わたしの一番だったのに……
「あらら、崩れてしまったかい」
驚く私の視界に入ってきたのは赤い髪を揺らした小町だった。
「小町ー! どうして驚かせたの!」
「いや驚かすつもりはなかったんだけど……っとそれは言い訳か。すまなかったね」
軽く笑いながら小町は謝ってきた。謝ってくれるのはいいけど、これどうするの。
「小町ー!」
いいこと思いついた!
「はいはい、なんだい瓔花?」
「責任取ってわたしと一緒に石積みして!」
苦笑いをした小町はしゃがんで石を拾う。
「わかったよ」
*
「どうしてそんなに石積みがへたくそなの?」
「ぐっ、瓔花、そんなにバッサリ言わないでくれ……」
賽の河原にコツコツと石を積む音が響く。さっきから小町は石を三つ置いては崩しているように見える。
「小町、自分で崩してない?」
「崩れるんだってば。瓔花は上手だからそんなに積めるんだろうけど私はやったことないから上手く出来ないのさ」
「ふーん、そういうもの?」
「そういうものさ」
またコツコツと音が響く。わたしはどんどん石を積んでまた身長より少し高い塔が出来た。
「やった! できたよ小町!」
わたしは軽く飛びはねて喜ぶ。
「おお、やっぱり瓔花は上手だな」
わたしの頭をわしゃわしゃと撫でてくる小町。わたしは嬉しくて笑う。
「ありがとう! 小町はできた?」
「まだだなぁ。少しは出来るようにはなってきたんだよ?」
小町の塔を見る。石が五つほど積まれていて小さな塔が出来ていた。
「ねえねえ小町。この塔だったら平べったいのだとか、四角みたいな石の方がいいよ! なんたって積みやすいから! わたし探してくる!」
「あっ、おい、瓔花! 気をつけろよ!」
わたしは思い立って石を探しに走った。小町の声が聞こえたけど気にしなかった。
小町から少し離れた三途の川のほとりでわたしは石を探す。平べったいのと四角みたいな石ないかな?
しゃがんで探しているとたくさん見つかる。これなら積みやすそう、これは積みにくそう、これは面白い石だ! なんて色々思っていると目の前の川からいきなりざばっと誰かがあがってきた。
「瓔花、川のほとりでなにやってるんだい?」
川からひょっこり顔を出したのは潤美だった。
「うわあ! 潤美か! びっくりした!」
わたしは驚いて持っていた石を全部落としてしまった。バラバラと石が転がっていく。
「ああっと、石拾いか? 驚かせてごめんな? 水中から見えたものだから何やってるのかと思ってな」
「ううん、潤美が悪いわけじゃないよ! わたしが驚いただけだもん」
またしゃがんでさっきの石を拾う。さっきの……あった! わたしはにこにこしながら拾っていく。
「瓔花は楽しそうだな。石を積んでいるのか?」
「さっきね、石積みしてたら、小町にびっくりさせられて石の塔が崩れちゃったの。だから小町と石積みしてるんだけど、小町がへたくそでね、だから積みやすそうな石を探してたの!」
潤美は笑った。あははと楽しそうに。
「へえ、あの死神は石積みが下手くそなのかい?」
「うん!」
「そりゃあ見てみたいものだな」
「聞こえてるよ」
「うひゃあ!」
声にびっくりしてわたしはまた拾った石を落とす。
「あら、死神さんじゃないか」
「こんなところで会うなんて奇遇だね潤美さん」
「もーー! 小町! 驚かせないでよ!」
わたしは怒って隣に来ていた小町のお腹をぽかぽか叩く。小町はわたしの頭を撫でて言ってくる。
「すまないね、驚く瓔花が可愛いもんだからさ」
「絶対そんなこと思ってない!」
「そんなことは無いよ」
「あらまあ、死神さんは驚かすのが趣味なのかい?」
「皮肉は寝て言え」
「寝たら寝言で言うさ」
なんか小町と潤美は言い合いしてる。なんだろう?
わたしは叩くのを止めて小町と潤美を見る。喋るのを止めた二人がわたしを見てきた。頭の中よく分からなくて首を傾げる。
「なあに?」
「いや、なんでもない」
小町が言った。
「瓔花は聞かなくていいことさ」
潤美は言った。
二人がそう言うならそれでいいのかな?と疑問になりながらしゃがんで石をまた拾う。何回拾えばいいんだろう?
「おっと、手伝うよ」
小町が私の近くの石を拾っている。
「それじゃあこの辺で私は泳いでくるよ」
潤美がそう言ってわたしは顔を上げる。
「えー、行っちゃうの?」
「気になって話に来ただけだからね」
うーん、潤美とも一緒にいたいけど……どうすればいいかな。
「そんな悲しい顔しないで、また会えるさ、この川にいる限りな」
「……潤美もいっしょに石積みしない?」
「私は泳ぐ方が性に合っているからね、石積みは向いてないよ」
「潤美とも石積みしたいなあ。いっしょに大きな塔作りたいな……」
わたしは潤美をじーっと見つめる。潤美の顔がどんどん悩むような顔になる。
「ううん、だけどな……」
「いいと思うぞ、一緒にやろうよ、石積み」
小町がそう言ってくれた。
「小町も言ってるからいいでしょ!」
パッとわたしは笑顔になって手を上げる。
「ううん……わかったわかった、石積みを一緒にしようか」
「やった! ありがとう潤美!」
潤美は手を顔の横に上げてひらひらとした。何してるんだろう。
「ちょっと待ってな」
ざばあと潤美は川から上がってきた。濡れた服がぴちゃぴちゃと河原に落ちていく。
「ほら行こ、行こ!」
潤美の手を引いてわたしは走ろうとする。
「こら少し落ち着きなさい」
「おーい、瓔花、石忘れてるよ」
潤美と小町はわたしを止めた。もー、早くしたいのに!
「早く行こうよ!」
潤美の手を離してから二人の少し先を走ってわたしは振り返ってそう言った。
小町はさっき拾った石を持って、潤美は少し頭を掻きながらわたしの後ろを着いてきていた。
*
「どうして潤美も石積みがへたくそなの?」
「ふぶっ」
「どうしてって言われてもなあ……」
潤美が積んでいると小町の時みたいになぜか崩れていく。四つ目を積もうとしていると崩れているみたいでどうしてだろう?
「石積みはこうやるんだよ!」
一番下に大きな石、次に平べったい石、次に四角みたいな石……そうして積んでいくとわたしの目線ぐらいまで積めた。
「おお、瓔花はよく積めるなあ。私はそんなに積めないよ」
潤美はパチパチと拍手をしてそう言った。
「積めないんじゃなくて潤美も積むんだよー!」
わたしはバタバタして力強く言う。小町はさっき笑ったせいで十個ほど積んだ石が崩れていた。
「小町ももっと積むんだよー!」
「積んでるよ」
小町はコツコツと高く積んでいく。さっきより上手くなっててわたしは笑った。
「小町も石積みマスターだね!」
「賽の河原一番のアイドルに言われたらこのうえ嬉しいことないな!」
「どうやって積むんだい……」
潤美はぎこちない手つきで積んでいる。
「積みやすいもので積むのがコツなの! あとバランス!」
「むむむ……難しいな」
コツ、コツ……ゆっくりとした手つきで石を置いていく。四つが積めた後、五つ目をコツンと置いた。
「つ、積めた……」
「やったあ、潤美も積めた!」
いえーいと小町とハイタッチする。潤美は嬉しそうにガッツポーズした。
「やった、やった!」
嬉しくてわたしは軽く踊りだす。みんな積めたことがとても嬉しかった。
わたしが踊っていると全員の石の塔が急にガラガラと崩れた。
「「「あ」」」
「積み直しだねえ」
潤美の間延びした声が響いた。
*
「ほらさっきより積めたぞ!」
「こっちも高いぞ!」
「わあすごい二人とも!」
パチパチとわたしは拍手する。さっきの十個よりさらに高く積めてわたしは嬉しくて拍手している。石を積み上げるとどうして崩れて行くのかは分からないけれど、たくさん高く積めるのはとてもいい事だと思う。
そうしてまた目の前でガラガラと崩れる。これで何回目だろう。
「どうして崩れるんだろう……?」
わたしは頭を傾げる。
「見えない鬼が崩しているんですよ」
後ろから声がかかって、驚いて振り向く。そこに居たのは緑の髪の人。いや、人じゃない……
「閻魔様! どうしてここに?」
閻魔様がいて驚く。
「裁判が終わって賽の河原に来てみれば、何やら楽しそうな声が聞こえましてね。見に来た次第です。戎瓔花、石積みは楽しいですか?」
「うん! 楽しいよ!」
後ろでまたガラガラと崩れる音がする。
「それならば良かったです。少し手を見せてみなさい」
閻魔様はわたしの手を取る。少しタコのあるわたしの手を持って閻魔様の手が私の手を包んだ。少し手が軽くなったような気がした。
「これでいいの?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「おおい、瓔花! 二人で積んだら高く積めたぞ!」
小町の声がして振り向く。そしたら小町の身長ぐらいまで積み上がっていて一番高いところを見上げた。高くて驚いた!
「うわあ、凄いよ! 小町も潤美も凄いよ!」
嬉しくてパチパチと大きな拍手をして飛びはねる。小町も潤美も嬉しそうにしていた。
「素晴らしいものですね」
わたしの隣に立って閻魔様が言う。
「石積みって楽しいよ!」
にこにこと私は笑って言った。私もコツコツとまた積み始める。
一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため、三つ積んでは……
今日もわたしは賽の河原で石積みをして過ごしている。
彼岸は今日も平和でした