Coolier - 新生・東方創想話

フランは今日も平常運転(誤字修正加筆あり)

2022/05/26 10:13:11
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 フランドール・スカーレットは地下に幽閉されている。
 彼女は生まれながら破壊衝動と精神の不安定さ、天性の能力も重なり、姉やその周囲から危険視されていたのが理由の一つと言って良い。
 しかし、彼女が幽閉されている本当の理由というものはフランドール・スカーレット本人にしか解らない。フランドール・スカーレットを間近で観察する機会が多い彼女以外を除いては・・・。

 彼女の名前はパチュリー・ノーレッジ。地下の大図書館の主であり、その上にある紅魔館の当主であるレミリア・スカーレットの親友である。
 フランの幽閉されている部屋へ行くにはパチュリー・ノーレッジが常にいる地下の大図書館を通る必要がある。つまり、逆も然りなのである。

「またなの、フラン?」

 パチュリー・ノーレッジは椅子に座ったまま読書をしつつ、こっそりと後ろの扉を開けて自室の戻ろうとするフランドール・スカーレットに質問する。
 質問されたフランドール・スカーレットの小さな手には紅魔館の非常食であるカップ麺とフォークが握られている。

「だって、お腹が空いちゃったんだもの。仕方ないでしょう?」

 口を尖らせるフランドール・スカーレットの容姿を見れば、その愛らしい少女の姿に心を赦してしまうだろうが、親友であるレミリア・スカーレットとの付き合いの長いパチュリー・ノーレッジは全く意に介した様子はない。
 そもそも、フランドール・スカーレットの幽閉については彼女の姉であり、パチュリー・ノーレッジの親友であるレミリア・スカーレットに頼られてと言うのがある。加えて、パチュリー・ノーレッジがレミリア・スカーレットから聞いた内容ではフランドール・スカーレットには情緒不安定なところがあり、無闇に人を傷付けないようにする為の苦渋の選択と聞いている。
しかし、当の本人はそんな事など知った事ではないと言うようにメイド長である十六夜咲夜の料理では満足出来なかったのか、厨房からカップ麺をこっそり持って来るようなふてぶてしさである。
 彼女の力はあまりに強力であり、パチュリー・ノーレッジの知恵を持ってしてもフランドール・スカーレットの完全な隔離までには至っていない。
 ならば、本人の望む通りに行動させる方がリスクが少ないだろう。それでもパチュリー・ノーレッジにはフランドール・スカーレットの実質的な監視のような役割を担っている以上、小言は言っておく必要がある。

「あのね・・・あなたが勝手に自室から出たなんて事をレミィが知ったら発狂するでしょう?」
「えー。あいつが何を言おうが、わたしの勝手でしょう」

 パチュリー・ノーレッジの言葉にフランドール・スカーレットは文句を言うとカップ麺の麺を啜る。
 ああ言えば、こう言う。口達者なところはやはり姉譲りなのだろうかとパチュリー・ノーレッジは頭を痛める。

「百歩譲って、あなたが自室から出ているのは良しとしましょう。どうせ、あなたにはあんな施錠なんて意味がないんだから。けれども、食べるのなら自分の部屋で食べて頂戴。本が汚れてしまうわ」
「はいはい。あ、あと読んでいる漫画を読み終わっちゃったから新しいのをヨロシクね?」

 フランドール・スカーレットはそれだけ言うと鼻歌混じりに自室へと戻っていく。
 このようにフランドール・スカーレットは実質、幽閉とは名ばかりに自由に部屋から出入りしているのであった。それを知っているのは彼女間近で観察する機会のあるパチュリー・ノーレッジくらいであり、あの十六夜咲夜ですらこの事実を知らない。
 しかも十六夜咲夜が用意する食事だけでは飽き足らず、非常食であるカップ麺を食べているなどは知る由もないだろう。
 パチュリー・ノーレッジは溜め息を吐いて使い魔である小悪魔を呼び寄せると手頃な本を何冊か用意するように指示を出す。
最近のフランドール・スカーレットは漫画だけでは飽き足らず、魔導書にまで手を出している。
 元々のフランドール・スカーレットの種族は吸血鬼なのであるが、その知識を吸収する姿は魔法使いと呼ばれる種族であるパチュリー・ノーレッジでさえも目をみはるものがあるくらいだ。
 力を与える行為ではあるが今更、フランドール・スカーレットの力が増えようが、パチュリー・ノーレッジにはどうしようもないので彼女の気の済むように計らっているのである。
 これが親友にバレたら大目玉を喰らうだろうが、フランドール・スカーレットは幽閉とは名ばかりの引きこもりに満足しているので、必ず自室に帰ってくるから現状の問題はないと彼女は判断している。

「本日も異常なしっと・・・」

 誰に呟くともなくパチュリーは呟くと再び読書に集中するのであった。

 それからしばらくしてとある事件をきっかけに十六夜咲夜がフランドール・スカーレットがいつでも部屋から出られる事を知ったのは、また別のお話。

《おしまい》
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