Coolier - 新生・東方創想話

小悪魔日記

2006/01/28 08:11:58
最終更新
サイズ
6.78KB
ページ数
1
閲覧数
818
評価数
4/47
POINT
1930
Rate
8.15
※本作品は涙色のスカーレットの後日談的作品となっております。前作を読んでいないと意味不明かと思われますが、読んでるうちに何があったかも予想できるかもしれません





 天窓から陽の光が差し込んで、私とテーブルの周囲を照らしています。椅子に座っているからって、サボっているわけじゃありませんよ
 今の時刻は午三つ時。パチュリー様はお嬢様や妹様とお食事をとっている頃だと思います
 私は図書館でお仕事中のはずだったのですが、今はお仕事も終わって休憩を取っているんです
 でも暇ですねえ
「ねえ、毛玉さん。どうしましょうか」
 ところが毛玉さんは何も答えずにふわふわと飛んでいってしまいました
 あ、そうだ。今のうちに昨日の絵日記を書いちゃえば良いんですね。そうと決まれば絵日記帳と万年筆を…あ、クレヨンもでした

(少女準備中)

 昨日は忙しくて書けなかったから、今日書いちゃいます
 縹色の表紙をめくり、クレヨンを握る。先ずお嬢様とパチュリー様の絵を描いて…
 それからパチュリー様に頂いたお気に入りの万年筆をくるりと回して文字を綴っていく

『霜月の4日目 晴れ
 昨日は大変でした。お仕事中にパチュリー様に呼び出されたかと思うと、いきなり妹様を探すように命じられたんです
 いつもと雰囲気が違ったので私も急ぎました。でも妹様が何処に行かれたもわからないので、とても大変でした
 それでもいろいろと探し回って、ようやく妹様を見つけたのは以前、咲夜様の居られたお部屋でした
 妹様はお泣きになっていました。でも、私にはどうすることも出来ませんでした
 少しして泣き止んで、妹様に聞いて、ようやく私はその日に起こっていることを知ったんです
 ところで妹様を見つけたらパチュリー様にすぐお伝えするはずだったのですが、いくら話しかけても繋がらなかったんです
 不安でした。パチュリー様がお嬢様にお会いになられたということは、すぐに察しがつきました。だけど、何も聞こえないんです。繋がらないんです
 多分泣きそうな顔をしていたんでしょう。先ほどまでお泣きになっていた妹様に慰められちゃいました
 パチュリー様に声は届きませんでしたが、場所だけは判りましたからすぐに妹様と向かいました
 玄関ホールについて私たちが目にしたのはドーム状に漂う霧でした。周囲に漂う魔力からパチュリー様が張った結界だということ解りました
 もちろん私にはどうする事も出来ませんでしたから見ているだけしか出来ませんでした
 ところが妹様がスペルカードで破ろうとしたんです
 これだけ巨大で強力な魔力結界ですから何が起こるか分からないとお止めしたのですが、お聞きになってくれはしませんでした
 レーヴァテインで破られた結界でしたが、運が良かったのか、それとも偶然か、何も起こらずにすみました
 結界が破れた後、パチュリー様がすぐに倒れてしまい、私は慌てました
 何かあったのかと思いましたが、魔力の使いすぎと疲れだと分かってほっとしました
 パチュリー様はすぐにお眠りになってしまい、私が運ぼうとしたらなんとお嬢様がパチュリー様をお部屋まで運んでくれたんです
 お嬢様はパチュリー様に何か言っておられたようですが、私には聞こえませんでした。…ちょっと残念です
 そういえば美鈴様がパチュリー様に指示されて何かやっておられたらしく、お給料が上がったそ』

「あら、美鈴の給料が上がったのね」
「わひゃぅっ!!」
 いつの間にパチュリー様は私の後ろに!?
「そんなに驚かなくても良いでしょう?」
「お、驚きますよ。今、絵日記を…絵日記を………絵日記?」
 あ、あれ?ひょっとして…
「パチュリー様、絵日記読んじゃいました?」
「貴女って絵はうまくないのね」
 あ…あああああああああああ!!
 読みましたね、パチュリー様!私の日記を読んだんですね!!
 ヒドイですヒドイです。私にだってプライバシーはあるんです
 自分のじゃない日記は読んじゃいけないんですよ!!
 と言いたかったのに私の口からは
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅ」
 としか出てきませんでした。屈辱です
「どうしたの、小悪魔?」
「あぅあぅあぅあぅ…」
 あぅあぅあぅあぅ…
「何パニックになってるのよ」
「だって…だって………」
 もう泣きそうです
「昨日はありがとう。貴女のおかげで助かったわ」
 あぅ…?
「妹様を見つけてくれて貴女には感謝してるわ」
 …感謝?
 パチュリー様が私に感謝?
 ああ、また泣いちゃいそうです
「それに貴女にも心配をかけちゃったわね。御免なさいね」
「ぱ、パチュリー様ぁ」
「ふふ、真っ赤になって面白いわね」
 面白くても良いです!
 もう絵日記なら全部読んじゃってください。今ならぜんぜん構いません
「貴女には何をもってお礼すればいいのかしらね」
「い、いえっ。そんなお礼だなんて」
 私は何も出来なかったのに…
 ぽふんと、パチュリー様のお手が私の頭にのった。そのまま左右に動かされる
 わっわっ、撫でられちゃいました
「いらないなんて言わないでもらって頂戴」
「は、はいっ」
 何が貰えるんでしょうか。ドキドキです
 新しい魔道書だったら嬉しいです
 ああ、でもパチュリー様がくれるものなら何でも最高かもしれません
「貴女は何がほしいかしら?」
 はい…?
 えと、それは…
「私が選んでもよろしいんですか?」
「ええ、いいわよ」
 えっと…
 何がいいでしょう
 あぅあぅあぅ
 何でこんなときに限って何も思い浮かばないんでしょう
 えっと、えっと…
 魔道書?スペルカード?それとも他の何か?
 パチュリー様は私が考えている間、ずっと待っててくれています
 私の欲しいもの…パチュリー様?それはまずいですね。えへへ
 うーんと、うーんと
 考えて、考えて。ようやくひとつ思い当たりました。それは…
「名前を。私の名前が欲しいです」
 契約者と被契約者にとって名前というものは大きな意味を持ちます
 私たちの真の名前なんかじゃなくて、主からつけられた名前というのは、私たち複数を表すのではなく私個人を表すものなのです
 主につけられた名前は私が確かに此処に居るという意味を持つのですから
「名前なの?」
「はい、本当はずっと前から欲しかったんです。でも私はあまりパチュリー様のお役に立てていないから…」
「役に立っているかどうかは私が判断することでしょう?」
「はい…」
 こつ、と握られた拳が頭に触れた
 え…、叩かれた?
「馬鹿ね、貴女には随分と助けてもらっているのよ。それを悪く言うのは私が許さないわ」
 パチュリー様…
「貴女は十分私の役に立っているわ。私が喘息の発作を起こしたときに助けてくれるのは誰?」
 ………
「何時も私を気遣ってくれているのは誰?それは貴女でしょう?」
「…はい」
「自信を持ちなさい」
「はい」
 先ほど叩かれたところがじんわりと暖かくなってきて、やっぱり泣きそうになった
「思い返せば『貴女』とか『小悪魔』しか呼んだことがなかったわね。随分と長い間、私に仕えてくれているのに」
「いえ、私が好きでお仕えしているんですから!」
 あまりにも必死だったからかパチュリー様はふわりと微笑まれました
「どんな名前がいいかしらね」
 パチュリー様はそう仰られて、少しの間考え込まれました
 そしてお顔を上げられたとき、私の見間違いでなければ少し意地悪な笑みが
「とんぬら、というのはどうかしら?」
 あぅあぅあぅあぅ…
「そんな泣きそうな顔しないでくれる。ほんの冗談なんだから」
 だって、だって…
「そうね。じゃあ、こんな名前はどうかしら?」
 本当はパチュリー様のつけてくれる名前なら何でも良かった。でもそのときの名前を、そして声を、表情を私は一生忘れません
 だってその名前はひそかに私が考えていた名前と一緒だったのですから

『そういえば美鈴様がパチュリー様に指示されて何かやっておられたらしく、お給料が上がったそうです
 そのとき一緒に居られたルーミアさんがお嬢様と妹様の傘代わりにされたことはどうしてなのでしょうか?
 ところでこの日記を書いてる途中、パチュリー様に見られてしまいました。ちょっと恥ずかしかったです
 でも良いことがありました。私は名前をもらったんです
 ずっと欲しかった私だけの名前を---』

ぱたん
 某作品の皆殺し編をプレイしてから何故か羽入と子悪魔が重なって仕方がない紙魚ネコです。…影響受けまくりですね。特に台詞の一部が
 それでも紙魚ネコの書く小悪魔はこんな子なんです
 以前のアドバイスを参考に、出来るだけ頑張ってみました。前作でコメントをくれた方々、そして今作を読んでアドバイスをくれた友人に感謝です
 感想・ご意見・愚痴・質問があったら何なりと
 感想をくださると紙魚ネコという生物(なまもの)はとても喜びます
紙魚ネコ
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1650簡易評価
9.無評価STR削除
穏やかで温かい雰囲気で、一読して好感を抱きました。
前作はまだ読んどらんのですが^^;
優しい空気感が心地良かったですね。これからも頑張ってください!
14.100削除
>>あぅあぅあぅ
めっさ萌えた。いや、何て言うか、めっさ萌えた。
20.70森の仲間達削除
おおう。
確実に前作よりも、見ていて気持ちが良くなっています。
個人的に小悪魔スキーなので、こうゆうのは大好きです。
あの彼女の影響を受けた小悪魔もかわいいです。
ていうか、はまりすぎてますね。鼻血が出そうです。
>>某作品の
全然、某になってませんけど、
やっぱりネタばれ気にする人いるのかな・・・。


21.20名前が無い程度の能力削除
前回-30を付けた者です。
文章の構成が驚くほど進歩していますね。
惜しむべきは前作の後日談としてのつながりが薄いという部分でしょうか。からみが少なすぎるように思います。少し文に手を加えてしまうとこれ自体が独立した話になってしまうと思います。
それと、地の文の使い方がまるっきりゲームのような形になってしまっていると思います。小説のような一人称の書き方があるのですから、それを勉強してみるべきだと思います。幸いな事にこの場には参考になる方が多いので、色々と読んでみるべきかと思います。後半の方はやや形ができてると思うので、こうして書いていけば文章のレベルもどんどん上がると思います。
それと、前作に比べストーリーが薄くなっています。ストーリーを軽くするのと薄くするのは違うので、それも気をつけたほうがいいと思います。これは簡単なプロットを組む事で簡単に解決できると思います。プロットの中に、この場面ではこんな心理描写を、この場面では場景を明細に書くなど書いておけば書きやすくなると思います。人間忘れっぽい生き物ですので、書いているとどうしても忘れる部分が出てくると思うのでこれは結構大事かなと思います。
自分は標準点50点で考えているので、この3点をマイナスしてあります。前作はちょっと内容が酷かったものでバンバン引かせてもらったのですが、今作の出来を考えるとそれも納得だと思います。むしろマイナス点をつけられたり、点数が低かったりするとやめてしまう作者が多い中こうしてチャレンジする事はとても大事だと思います。この点は評価できるのですが、話の評価にこういったものを混ぜてはいけないと思っておりますので加点はご勘弁を。

あと、さして重要な点ではなく、むしろ自分がちょっと気になった点を。
文章の終わりには「。」をつけた方がいいのではないかと思います。形式の問題ですし、ましてや義務でもないので絶対つけなければいけないという事ではないのですが、つけた方が見栄えはいいと思います。

私が書いたアドバイスも、あくまで私個人の好みからくるものですし、物言いできるほど偉い人間でもないので参考程度に受け取っておいて下さい。
それでは、今後の紙魚ネコさんの発展に期待してこれで終わりにさせていただきます。
長々と駄文、失礼しました。
23.無評価名前が無い程度の能力削除
こういうほんわかした話は大好きです。実は、前作は読んでいなかったのですが…それでも十分楽しめました。次回作を楽しみにお待ちしています。
追記、簡易で先に点数を入れてしまったのでフリーレスで
24.無評価紙魚ネコ削除
>STR様
そう言っていただけると嬉しいです
これからも書いていくつもりですので頑張っていきます

>鱸様
そこは一番の萌えどころですから♪

>森の仲間達様
お褒めをいただき嬉しいです。少しはレベルアップできたと思ってもいいみたいで良かったです
小悪魔も気に入られたようでほっとしました。本当は少し不安だったんです
某作品の~は付けようか付けまいか悩んだのですが、同意してくれる人が居て欲しくて付けた次第です。隠されていないというのは、まさしくですが;

>名前が無い程度の能力様
お褒めをいただき嬉しいです。本当は前回の-30点は気落ちはしていたのですが、自分の実力をきちんと計ってくれているということは事実であり、また仰られていることも正しいので、むしろ有難かったです
地の文の使い方に関しては、ずっとこのような使い方をしていてそのようなことは思わなかったです。今後の課題の1つとして考えていきます
またストーリーが薄いとのことですが、自分としては薄くしたつもりは無かったので、その点はまだまだ未熟ということかもしれません。アドバイスは有難くしっかりと活かさせていただきます
加点云々ですが仰られていることはそのとおりなのでまったく構いません。しかし敢えて言わせていただきますが
>今作の出来を考えると…
という一文は貶されているようにもとってしまいます。もちろんそのようなつもりは無く、取り方の違いというだけでしょうが
文の終わりに読点を付けないのは、昔からの癖です。直すようにしていったほうが良さそうですね
アドバイスは有難く受け取らせていただきます。自己完結することが多い人間で気付かないことも多く、未熟な点を示してくれることは有難いです
これからも自分の書きたいものを少しずつ書いていこうと考えていますので頑張っていきます
本当にありがとうございました

>2人目の名前が無い程度の能力様
前作を読まれていなくても楽しまれたようですので、こちらとしても嬉しいです
これからも頑張っていきますので、長い目で見てやってください
45.90名前が無い程度の能力削除
小悪魔にもだえてしまううううう