[注意]
・腋
今日も博麗神社は平和だ。
いや、平和かどうかはよくわからないがとりあえず静かだ。
そしてそんな中、緑茶を啜る少女が2人。
1人は紅白、1人は白黒。
例によって博麗霊夢と霧雨魔理沙である。
ずずず、と茶を飲み干した後、魔理沙が口を開いた。
「なぁ、霊夢」
「何、魔理沙」
「これはどこぞのスキマ妖怪に聞いた話なんだけどな」
「……何を吹き込んだのあいつは」
ヒュウ、と風が吹く。
今日も参拝者は居ないが、故に静かで風情があるかもしれない。
吹く風が揺らす木々の音は耳に心地良い。
魔理沙は、長い間を置いて言った。
「腋で擦ると気持ち良いらしい」
―― 腋道で迷った時のタメになる対処法 ――
霊夢はまず迷った。
はて何を擦るのだろう、と。
当然といえば当然である。
例えば腋で大根を擦ったとて大根おろしに成る事はないだろうし、山芋を擦った所でとろろが出来る事もまずあるはずがない。
……そもそも大根や山芋を腋を擦ったところで気持ち良いとも思えなかった。
まず食物は省いていいだろう。
では何を擦るのか。
例えば妖怪退治用の御札を腋で擦ってから攻撃すればその妖怪は気持ち良く退治されるのだろうか。
……これも否だ。
そもそも腋で擦った所で何かしら効果が付加されるとも考えにくいし、むしろ御札に悪影響を与えるのではないだろうか。
たっぷり10分考えてしかし答えは出ず、霊夢は魔理沙に問うた。
「……何を腋で擦ったら気持ち良くなるのよ」
「うむ」
……長い沈黙。
魔理沙は冷や汗を流し、眉をひそめて唸りながら悩む。
言うべきか、言うまいかを。
そもそも紫からもたらされたその情報が正しいとも魔理沙には思えなかったし、実際にやった事がないから気持ち良いのかがわからない。
自分で試せるようなものでもない。
中々にデリケートな部分であるから個人差があるだろうし、むしろ痛がる者も居るかも知れない。
ここで言えば霊夢が「じゃあ試してみましょうかうふふふ」なんて言いながらノってくれるのではとも妄想してみるがその可能性は限りなく低く自分から攻めれば夢想封印大決定。
霧雨魔理沙、霊夢は欲しいがそれ以上に命が惜しいのだ。
だから魔理沙は言わない事にした。
「何でも、乙女の大事な所を腋で擦ると気持ち良いんだそうだ」
言わない事にしたのだが、魔理沙の深層意識が口を動かした。
人間とは中々複雑に出来ているらしい。
沈黙は長い。
5分、10分、15分と続くかに思えたが、実際のところはたった3分で霊夢が動いた。
「夢s「マスタースパーク」
読まれてた。
*
それより少し時間が経って。
幻想郷でも1、2を争うミニなスカートを穿いたウサ耳少女が石段を歩いて登っていた。
アツイ。ダルイ。シンドイ。メンドイ。
まさに至れり尽くせりの語尾イ攻勢。
額には汗が浮かび、綺麗な長い髪は湿る。
そしてこれまた幻想郷でも1、2を争う綺麗な太腿にも止め処なく汗が浮かんでいた。
しかしそれでも彼女、鈴仙・優曇華院・イナバは飛ばない。
飛べば下から見られるとか今やそんな事はどうでも良く。
……いや、どうでも良くはなかったのだが。
それでも某烏天狗にネタにされて以来鈴仙は開き直り、もう見るなら見やがれって感じになっていた。
その時に「あんたもミニスカでしょ、仲間だと思ってたのにー!」とか言いながら鈴仙がその某に掴みかかり大事になった(通称ミニスカ事変)がそれはまぁ、どうでもいい。
その後で仲直りした2人が同じ夜をくんずほぐれずで過ごしたらしいがそれもまぁ、どうでもいい。
いや、よくねーけど。
ちなみに鈴仙がそれ以来給料の3分の1を下着に使うようになったとか噂されているがそれが事実かどうかは定かではない。
いっそブルマ穿け。その方が色々といいから。
「ふぅ、とうちゃーく」
それと同時に、頭を抱えた。
少しでも遅くしよう遅くしようと飛ばずに石段を登ってきたのだが、終わりはあるものである。
いっそ、七不思議とか怪談みたいに一段増えてて登り切ったら妖怪でも出てくるようになってた方がまだマシだ畜生とか思うが鈴仙がその類の生き物なのでマシもクソもあったもんじゃなかった。
師匠・八意永琳より鈴仙が与えられたミッションは溜まりに溜まったツケの回収。
……そして注文された薬の配達。さすがに見殺しにするのは気が引けるらしい。
「ちわーす、三河y……じゃなかった、イナバ薬局訪問販売部の者でーす」
…………。
「ん?」
返事がない。
「霊夢さーん、いますかー。ご注文の薬を配達に来ましたよー」
仕事なので敬語。
ついでにどっかから夢想封印飛んで来そうなのでツケの事は伏せる。
「……居留守?」
いやいや待て待て、と思う。
霊夢が居留守などするはずがない。
なんたって今まで薬を配達に来た時はピューン、と飛んで来ている。
ツケの請求をすれば「私の物は私の物、幻想郷の物は私の物」なんて言いながら襲いかかって来たり、穏やかに笑いながら近づいて来たかと思えば財布をスられそうになったり、「いっつもありがとね」なんて言いながら茶を出してきたかと思えばその日の売り上げの入った袋を盗ろうとしたり、「れーいせん♪」なんて言いながら腰に抱きついて来たかと思えば下着を剥ぎ取ってそれを売ろうとしたりした奴なのだ。
果たしてそんな奴が居留守などするだろうか。
「……夜逃げ?」
有り得る。
もしかすると今頃どこぞの人間の里で拾われてたりするのだろうか。
満足に食って暮らそうとするなら案外一番いい選択かもしれない。
そんな事を考えながらも一応中を覘こうと思い、建物に近づき、賽銭箱の裏で白目剥いてる霊夢を発見した。
……例によってマスタースパークを喰らったせいであるが、それは鈴仙の知るところではない。
「えーと」
これは。
「……殺人事件、八意総合病院指定イナバ薬局局長兼訪問販売部雑用鈴仙・優曇華院・イナバは見た?」
疑問系。長い。
殺人事件とは言ってみたものの息は普通にあるし脈も割と正常。
胸の辺りが年齢の割にスレンダー過ぎて異常っちゃ異常だがまぁ、特に問題はない。
「ふむ」
頷き、鈴仙は鞄を漁る。
「応急処置しとくか」
とりあえず必要と判断した薬を取り出し、どう扱うかを考える事にした。
「まずこの睡眠薬を飲ませて完全に眠らせてこの座薬で……あぁ、落ち着くのよ鈴仙。
これじゃなくてこっちのウサ耳の生える座薬を差し込んで霊夢を兎角同盟の一員及びイナバ薬局の従業員にしてストライキに動員。
師匠とニートに迫って給料を上げさせ労働条件の改善を目指し……いや待てそんな事よりこっちの座薬を挿し込んで霊夢とその腋を私の思うがままにハァハァハァハァ。
あ、でもそうすると白黒とか愛と人形だけが友達さの奴とか永遠に赤い幼きロリペドとかに何されるか……でも霊夢の意思なら関係ないよねよしこの座薬に決定」
決まった。
さぁ一気に挿せ寝ている今の内だ、と鈴仙の中の悪魔が言う。
ダメよそんな事をしては、やるのなら優しく静かに相手の事後承諾を得て、と鈴仙の中の天使が言う。
要するに挿せっつー事だ。
応急処置じゃないとか言わないように。
これは誰が何と言おうと応急処置なのだ。
少なくとも鈴仙にとってはだが。
座薬を持ち、構える。
先に睡眠薬飲ませるのを忘れているのが中々致命的だ。
「いざ行かん、我が幻想の在りし郷へとっ!」
幻想郷から更なる幻想郷へのダイヴのため、鈴仙は紅白の巫女服に手をかけた。
そして。
「何で座薬しか選択肢がないのよおおおおおぉおおぉぉおお!!!!」
夢想封印喰らった。
*
「まぁ、要するに薬をお届けに来たのと、未払い分の請求に来たわけですよ」
「……それが何で私が倒れてただけで私を思うがままにって変な展開になるのか大いに疑問だわ」
「へ、変って!? ウサ耳生やしてから思うがままにしようとしなかっただけマシじゃない!」
「何がマシかこの欲情兎が! 第一あんたはあの烏天狗といい関係になったんじゃないの!?」
「あ、あいつとは一夜だけよ、私てゐか師匠か霊夢かしか見えてないから!」
「多いわ阿呆!」
息を荒くして、霊夢はスペルカードを構える。
「ちょ、ちょっと! そんな事をしてツケを踏み倒す気あんた!?」
「話を変えるなー!」
「ほら、落ち着いて、この座薬を挿したら落ち着けるから。師匠が依存性あるとか言ってたけど!」
「怪しいドラッグ渡すな! しかもそれですら座薬なの!? いい加減にしてよね!」
「な、何、座薬を馬鹿にするつもり!?」
「っていうか、あんたいつの間にそんな座薬に執着するようになったのよ!?」
「あーもういいからさっさと未払い分の金渡せこの貧乏巫女」
「ちょ、ごめん!」
謝りました。
何というかいきなり話をツケに持っていかれてこの展開ではさすがに悪い気がしてきたらしい。
それにしても座薬に執着してる理由を問いただして流されたのはよっぽどヤバイ理由だからなのだろうか。
それは誰にもわからない。
で、金の方だが。
「払うお金がないの。最近烏が飛んできてよく光物を放り込んでいくからちょっとはお賽銭来るんだけど」
「……それってお賽銭って言うの?」
「人間より烏の方が立派よね」
それでいいのかなぁ、なんて鈴仙は思うが、それでいいんだろうなぁ、と自己完結しておく事にする。
なんだか霊夢があまりに可哀相だったから。
「まぁいいや。あるなら払ってよ。あるだけ」
でも有り金は貰う。仕事だから。
強く射す陽の光に顔を顰めながら、霊夢は立ち上がった。
――これで、少しは回収出来るのね。
鈴仙はホロリと涙を流す。
思えば初回以外払ってもらった覚えがなく、ここまでの道のりは非常に長く険しく痛く僅かな快感にも満ちていた。
と、霊夢はふよふよと飛んで行ったかと思えば、何やら犬を連れて戻ってきた。
妖怪とかではない。極普通の野良犬だ。
そして外の世界の公園によく置いてあるらしいベンチとゴミ箱を用意し、ベンチに座った。
ゴミ箱に適当にゴミを放り込み、最後に紙に包んだ竹輪を入れて、漁って、取り出した。
それを食べ、ナニヤッテンダコイツと思い霊夢を見た鈴仙と視線を合わせ。
叫んだ。
「同情するなら金をくれ! 同情するなら金をくれ!」
「……」
「同情するなら金をくれ! 同情するなら金をくれ!」
犬が吼え始めた。
「同情するなら金をくれ! 同乗するなら金をくれ!」
霊夢と一緒に何かに乗ると金を払わなければならないのだろうか。
それとも霊夢に乗ったら金を払うのだろうか。いやらしい。
しかしそれは鈴仙にも、そして他の誰にも、多分霊夢にすらわかりはしない事だ。
とりあえず同情しつつも、鈴仙は霊夢に向かって言い放つ。
「あんたからツケを回収出来ないたびに師匠にお仕置きされる私に同情するなら金払え」
「ごめん、真剣に払えない。烏が運ぶ賽銭も食料にしないと飢え死にするし」
霊夢が立ち上がり、鈴仙の隣までやってくる。
ベンチの近くではさっきの犬が尻尾を振って竹輪を食っていた。
何故だか霊夢に懐いているようだ。
「……師匠から、今回は何が何でも回収しろと言われてるの」
「でもお金のないところからお金は出て来ないわよ?」
「ここにカメラがある」
「ふむ」
「何でも外の世界の物で、文ちゃんの持ってるカメラとは比べ物にならない高性能だそうよ」
「ほう」
っていうか文ちゃんって呼んだのは実はまだ深い関係が続いているんじゃ、と霊夢は思ったが言わないことにした。
何事も触れてはいけない事がきっとあるのだ。
「これはずばり、お金のないところからお金を出す素晴らしい道具なのです」
「なんとなんと」
「さて、これを今からどうするかと言いますと」
「どうするのよ?」
「あんたの写真を撮る。そして売り捌く。これでお金のないところからお金が出てくるのです」
「わぁー」
………………。
また風が吹いて木々を揺らす。
相変わらず耳に心地良い音だ。
しかし、今霊夢の心の中には強風が吹き荒れ、建物の屋根が吹っ飛び、生き別れになったゴキブリの親子の親の方がスキマに食われていた。
自分の中の事なのに霊夢はさすが足臭妖怪、ゴキブリ食えるのか、とか思う。
これ所謂現実逃避。
「って、ちょっと待ちなさいよおおおおおおぉぉぉっぉぉおお!!!!!」
「何の事だかよくわからないけど腋で擦ったシーンを撮った写真はより高く売れるらしい」
「何を擦るのよ!?」
「スキマ妖怪曰く、乙女の大事な部分か長いものだそうよ」
「またあいつか!」
「こらこら霊夢。あのスキマ妖怪は私たち永遠亭の収入において大事なお客様なのよ?
あいつは金を払わないけど式が密かに払ってくれるし、今回は霊夢にとってもありがたい存在になるはず」
「……何でよ?」
「霊夢の写真、特に腋とか腋で擦ったのとかを撮れたら他の者に先駆けて高値で買うと約束してくれた」
「……あの年増ぁ」
つーか払える金があるのに払わないのは何故なんだ。
あの年増を叩き潰そうか、と霊夢は考えるがあまり良い手段ではない。
金を払わなくてもいいようになるわけではないのだから。
「鈴仙、責任者の所へ行く。この話を直接どうにかするには、それが一番いいわ」
だから霊夢は金を払わなければならない所を何とかする。
そこを何とか出来たら金を払う必要がなくなるから腋写真撮られる心配もなくなる、まさに一石二鳥。
「いや、責任者ここにいるんだけど」
「……責任者はあんたの師匠じゃないの?」
「薬品製造等に関してはそうだけど、販売に関しては基本的にイナバ薬局が全て管理してるわ。で、私は局長」
あと訪問販売部(部長:てゐ)雑用。
「永遠亭の財政を直接管理してるのは?」
「……師匠だけど」
「そしてその薬局の売り上げは?」
「運営費以外は一度永遠亭の収入になって、そこから給料とか支払われるけど」
「ならば目指すは永遠亭ね」
薄く笑みを浮かべながら霊夢は鳥居の方を見て、続ける。
「土産は犬肉」
「真剣にやめてくれ」
*
ところ変わって永遠亭。
霊夢の目的は勿論溜まり溜まったツケを何とかするための交渉。
鈴仙はと言うと、永遠亭に行く、といきなり言い始めた霊夢に大人しくついて来た。
変に止めてボコボコにされるよりここで何かされた方がマシだと判断しての事だ。
そしてその一室で、ちゃぶ台を挟んで霊夢と永琳は交渉を開始する。
「あのね、うちの財政もここの所正直良くないのよ」
いきなりシビアな話。
貧乏でも1人だから何とかなる霊夢と違って、多くの妖怪兎、普通の兎、何よりニートを抱える永遠亭にとって貧乏は死活問題だ。
「一応年間黒字は出したものの、出だしがよかっただけで半年は赤字だったの」
「黒字ならいいじゃない。私なんて年中赤字よ」
「……姫は生存権が確保されてないから生活保護費を上げろ上げろと五月蝿いし」
いつの間にかそんなシステムになってたらしい。
少しくらい働けばいいのにそれでもニート続けるあたり割と図太いのかもしれない。
兎も角、永遠亭の財政もあまり良い状態でないことはわかった。
それでも霊夢は。
ゴクッ、と。出された麦茶を一気に飲んだ後で手を合わせ、頼み込む。
「でも払えないものは払えないのよ。だから何とか」
「……だからその腋で払いなさいと」
「どれだけ腋腋迫られようともそれをする気はないわ」
霊夢は真剣な表情で、譲歩を迫る。
永琳も、そして2人から離れたところで様子を見守る鈴仙も、ただ無表情で黙り込む。
しかしそこには、譲れないと言う確かな意思が宿っていた。
それでも霊夢は負けるわけにはいかなかった。
生活かかってるから、人生かかってるから。あと腋。
「……いつになく真剣な顔ね。頭の中が楽園で素敵な巫女とは思えないわ」
「ちょっと待て! 何か今もの凄く聞き捨てならない言葉を聞いた気がするわよ?」
「あら、本当の事しか言ってないつもりだけど」
「くっ……」
抑える。
金を払えない霊夢に非がある以上、下手なのだ。
ここで無闇に大きく出れば何をされるかわかったもんではない。
しかしそれにしたって、せめて春と言って欲しい、と霊夢は思う。
「では、私からの解決方法の提示。はっきり言って腋写真をスキマ妖怪及びその他様々な奴に売る以外にないわ」
それは提示というよりは、もはや決まっていた事を述べるだけのもの。
逃れようがない、霊夢は懐にスペルカードを準備する。
――しょうがない、わよね。
今輝夜はどうやら逃げる妹紅を『アイラヴもこた~ん!』とか言いながら追いかける夢を見ている真っ最中らしいし、永琳さえ何とかすれば霊夢の敵は居ない。
鈴仙やてゐは多少手強いがどうとでも出来る相手だ。
明らかに戦闘の意思を見せた霊夢、しかし永琳は冷静に話し続ける。
「そしてその解決方法を実行するための方法。私のお茶には何も入っていない」
「……それがどうしたのよ?」
「あなたのお茶には不思議なお薬が入っている」
「…………」
めちゃくちゃ嫌な予感がして、霊夢が震え始めた。
否、もしかするとその薬とやらの効果なのか、身体も熱い。
「ちなみに、ウドンゲのお茶にも同じお薬が入っている」
「え、え、師匠? えっと、何の薬を……」
動揺し始めた鈴仙を無視し、永琳は続ける。
「そして私はこの部屋を出、施錠する。邪魔者は居ない」
「え……っと、私たちは、どう、なるの?」
「し、ししょおぉぉ。身体がウズウズするんですけど、何を入れ……」
「存分に楽しめ」
「「ちょっと待てぇええぇぇ!!!」」
霊夢と鈴仙の叫びを無視し、永琳は部屋を出た。
残された両者は見つめ合い、そして。
「うふ、うふふふふふ」
鈴仙の笑みが怖い。
*
その後、霊夢の腋写真が予定通り高値で売れたとか。
何か腋で擦られて気持ち良くて抜けたとか言う鈴仙のウサ耳も高値で売れたとか。
魔理沙が夜な夜な枕を涙で濡らす様になったとか、そんな感じの噂が幻想郷に広まるが。
どれも事実かどうかは定かではない。
また、先日それらに関し事実かどうかの調査を行った射命丸文が『ワキコワイワキコワイワキサイコー』と言い残したのを最後に消息を絶っている。
・腋
今日も博麗神社は平和だ。
いや、平和かどうかはよくわからないがとりあえず静かだ。
そしてそんな中、緑茶を啜る少女が2人。
1人は紅白、1人は白黒。
例によって博麗霊夢と霧雨魔理沙である。
ずずず、と茶を飲み干した後、魔理沙が口を開いた。
「なぁ、霊夢」
「何、魔理沙」
「これはどこぞのスキマ妖怪に聞いた話なんだけどな」
「……何を吹き込んだのあいつは」
ヒュウ、と風が吹く。
今日も参拝者は居ないが、故に静かで風情があるかもしれない。
吹く風が揺らす木々の音は耳に心地良い。
魔理沙は、長い間を置いて言った。
「腋で擦ると気持ち良いらしい」
―― 腋道で迷った時のタメになる対処法 ――
霊夢はまず迷った。
はて何を擦るのだろう、と。
当然といえば当然である。
例えば腋で大根を擦ったとて大根おろしに成る事はないだろうし、山芋を擦った所でとろろが出来る事もまずあるはずがない。
……そもそも大根や山芋を腋を擦ったところで気持ち良いとも思えなかった。
まず食物は省いていいだろう。
では何を擦るのか。
例えば妖怪退治用の御札を腋で擦ってから攻撃すればその妖怪は気持ち良く退治されるのだろうか。
……これも否だ。
そもそも腋で擦った所で何かしら効果が付加されるとも考えにくいし、むしろ御札に悪影響を与えるのではないだろうか。
たっぷり10分考えてしかし答えは出ず、霊夢は魔理沙に問うた。
「……何を腋で擦ったら気持ち良くなるのよ」
「うむ」
……長い沈黙。
魔理沙は冷や汗を流し、眉をひそめて唸りながら悩む。
言うべきか、言うまいかを。
そもそも紫からもたらされたその情報が正しいとも魔理沙には思えなかったし、実際にやった事がないから気持ち良いのかがわからない。
自分で試せるようなものでもない。
中々にデリケートな部分であるから個人差があるだろうし、むしろ痛がる者も居るかも知れない。
ここで言えば霊夢が「じゃあ試してみましょうかうふふふ」なんて言いながらノってくれるのではとも妄想してみるがその可能性は限りなく低く自分から攻めれば夢想封印大決定。
霧雨魔理沙、霊夢は欲しいがそれ以上に命が惜しいのだ。
だから魔理沙は言わない事にした。
「何でも、乙女の大事な所を腋で擦ると気持ち良いんだそうだ」
言わない事にしたのだが、魔理沙の深層意識が口を動かした。
人間とは中々複雑に出来ているらしい。
沈黙は長い。
5分、10分、15分と続くかに思えたが、実際のところはたった3分で霊夢が動いた。
「夢s「マスタースパーク」
読まれてた。
*
それより少し時間が経って。
幻想郷でも1、2を争うミニなスカートを穿いたウサ耳少女が石段を歩いて登っていた。
アツイ。ダルイ。シンドイ。メンドイ。
まさに至れり尽くせりの語尾イ攻勢。
額には汗が浮かび、綺麗な長い髪は湿る。
そしてこれまた幻想郷でも1、2を争う綺麗な太腿にも止め処なく汗が浮かんでいた。
しかしそれでも彼女、鈴仙・優曇華院・イナバは飛ばない。
飛べば下から見られるとか今やそんな事はどうでも良く。
……いや、どうでも良くはなかったのだが。
それでも某烏天狗にネタにされて以来鈴仙は開き直り、もう見るなら見やがれって感じになっていた。
その時に「あんたもミニスカでしょ、仲間だと思ってたのにー!」とか言いながら鈴仙がその某に掴みかかり大事になった(通称ミニスカ事変)がそれはまぁ、どうでもいい。
その後で仲直りした2人が同じ夜をくんずほぐれずで過ごしたらしいがそれもまぁ、どうでもいい。
いや、よくねーけど。
ちなみに鈴仙がそれ以来給料の3分の1を下着に使うようになったとか噂されているがそれが事実かどうかは定かではない。
いっそブルマ穿け。その方が色々といいから。
「ふぅ、とうちゃーく」
それと同時に、頭を抱えた。
少しでも遅くしよう遅くしようと飛ばずに石段を登ってきたのだが、終わりはあるものである。
いっそ、七不思議とか怪談みたいに一段増えてて登り切ったら妖怪でも出てくるようになってた方がまだマシだ畜生とか思うが鈴仙がその類の生き物なのでマシもクソもあったもんじゃなかった。
師匠・八意永琳より鈴仙が与えられたミッションは溜まりに溜まったツケの回収。
……そして注文された薬の配達。さすがに見殺しにするのは気が引けるらしい。
「ちわーす、三河y……じゃなかった、イナバ薬局訪問販売部の者でーす」
…………。
「ん?」
返事がない。
「霊夢さーん、いますかー。ご注文の薬を配達に来ましたよー」
仕事なので敬語。
ついでにどっかから夢想封印飛んで来そうなのでツケの事は伏せる。
「……居留守?」
いやいや待て待て、と思う。
霊夢が居留守などするはずがない。
なんたって今まで薬を配達に来た時はピューン、と飛んで来ている。
ツケの請求をすれば「私の物は私の物、幻想郷の物は私の物」なんて言いながら襲いかかって来たり、穏やかに笑いながら近づいて来たかと思えば財布をスられそうになったり、「いっつもありがとね」なんて言いながら茶を出してきたかと思えばその日の売り上げの入った袋を盗ろうとしたり、「れーいせん♪」なんて言いながら腰に抱きついて来たかと思えば下着を剥ぎ取ってそれを売ろうとしたりした奴なのだ。
果たしてそんな奴が居留守などするだろうか。
「……夜逃げ?」
有り得る。
もしかすると今頃どこぞの人間の里で拾われてたりするのだろうか。
満足に食って暮らそうとするなら案外一番いい選択かもしれない。
そんな事を考えながらも一応中を覘こうと思い、建物に近づき、賽銭箱の裏で白目剥いてる霊夢を発見した。
……例によってマスタースパークを喰らったせいであるが、それは鈴仙の知るところではない。
「えーと」
これは。
「……殺人事件、八意総合病院指定イナバ薬局局長兼訪問販売部雑用鈴仙・優曇華院・イナバは見た?」
疑問系。長い。
殺人事件とは言ってみたものの息は普通にあるし脈も割と正常。
胸の辺りが年齢の割にスレンダー過ぎて異常っちゃ異常だがまぁ、特に問題はない。
「ふむ」
頷き、鈴仙は鞄を漁る。
「応急処置しとくか」
とりあえず必要と判断した薬を取り出し、どう扱うかを考える事にした。
「まずこの睡眠薬を飲ませて完全に眠らせてこの座薬で……あぁ、落ち着くのよ鈴仙。
これじゃなくてこっちのウサ耳の生える座薬を差し込んで霊夢を兎角同盟の一員及びイナバ薬局の従業員にしてストライキに動員。
師匠とニートに迫って給料を上げさせ労働条件の改善を目指し……いや待てそんな事よりこっちの座薬を挿し込んで霊夢とその腋を私の思うがままにハァハァハァハァ。
あ、でもそうすると白黒とか愛と人形だけが友達さの奴とか永遠に赤い幼きロリペドとかに何されるか……でも霊夢の意思なら関係ないよねよしこの座薬に決定」
決まった。
さぁ一気に挿せ寝ている今の内だ、と鈴仙の中の悪魔が言う。
ダメよそんな事をしては、やるのなら優しく静かに相手の事後承諾を得て、と鈴仙の中の天使が言う。
要するに挿せっつー事だ。
応急処置じゃないとか言わないように。
これは誰が何と言おうと応急処置なのだ。
少なくとも鈴仙にとってはだが。
座薬を持ち、構える。
先に睡眠薬飲ませるのを忘れているのが中々致命的だ。
「いざ行かん、我が幻想の在りし郷へとっ!」
幻想郷から更なる幻想郷へのダイヴのため、鈴仙は紅白の巫女服に手をかけた。
そして。
「何で座薬しか選択肢がないのよおおおおおぉおおぉぉおお!!!!」
夢想封印喰らった。
*
「まぁ、要するに薬をお届けに来たのと、未払い分の請求に来たわけですよ」
「……それが何で私が倒れてただけで私を思うがままにって変な展開になるのか大いに疑問だわ」
「へ、変って!? ウサ耳生やしてから思うがままにしようとしなかっただけマシじゃない!」
「何がマシかこの欲情兎が! 第一あんたはあの烏天狗といい関係になったんじゃないの!?」
「あ、あいつとは一夜だけよ、私てゐか師匠か霊夢かしか見えてないから!」
「多いわ阿呆!」
息を荒くして、霊夢はスペルカードを構える。
「ちょ、ちょっと! そんな事をしてツケを踏み倒す気あんた!?」
「話を変えるなー!」
「ほら、落ち着いて、この座薬を挿したら落ち着けるから。師匠が依存性あるとか言ってたけど!」
「怪しいドラッグ渡すな! しかもそれですら座薬なの!? いい加減にしてよね!」
「な、何、座薬を馬鹿にするつもり!?」
「っていうか、あんたいつの間にそんな座薬に執着するようになったのよ!?」
「あーもういいからさっさと未払い分の金渡せこの貧乏巫女」
「ちょ、ごめん!」
謝りました。
何というかいきなり話をツケに持っていかれてこの展開ではさすがに悪い気がしてきたらしい。
それにしても座薬に執着してる理由を問いただして流されたのはよっぽどヤバイ理由だからなのだろうか。
それは誰にもわからない。
で、金の方だが。
「払うお金がないの。最近烏が飛んできてよく光物を放り込んでいくからちょっとはお賽銭来るんだけど」
「……それってお賽銭って言うの?」
「人間より烏の方が立派よね」
それでいいのかなぁ、なんて鈴仙は思うが、それでいいんだろうなぁ、と自己完結しておく事にする。
なんだか霊夢があまりに可哀相だったから。
「まぁいいや。あるなら払ってよ。あるだけ」
でも有り金は貰う。仕事だから。
強く射す陽の光に顔を顰めながら、霊夢は立ち上がった。
――これで、少しは回収出来るのね。
鈴仙はホロリと涙を流す。
思えば初回以外払ってもらった覚えがなく、ここまでの道のりは非常に長く険しく痛く僅かな快感にも満ちていた。
と、霊夢はふよふよと飛んで行ったかと思えば、何やら犬を連れて戻ってきた。
妖怪とかではない。極普通の野良犬だ。
そして外の世界の公園によく置いてあるらしいベンチとゴミ箱を用意し、ベンチに座った。
ゴミ箱に適当にゴミを放り込み、最後に紙に包んだ竹輪を入れて、漁って、取り出した。
それを食べ、ナニヤッテンダコイツと思い霊夢を見た鈴仙と視線を合わせ。
叫んだ。
「同情するなら金をくれ! 同情するなら金をくれ!」
「……」
「同情するなら金をくれ! 同情するなら金をくれ!」
犬が吼え始めた。
「同情するなら金をくれ! 同乗するなら金をくれ!」
霊夢と一緒に何かに乗ると金を払わなければならないのだろうか。
それとも霊夢に乗ったら金を払うのだろうか。いやらしい。
しかしそれは鈴仙にも、そして他の誰にも、多分霊夢にすらわかりはしない事だ。
とりあえず同情しつつも、鈴仙は霊夢に向かって言い放つ。
「あんたからツケを回収出来ないたびに師匠にお仕置きされる私に同情するなら金払え」
「ごめん、真剣に払えない。烏が運ぶ賽銭も食料にしないと飢え死にするし」
霊夢が立ち上がり、鈴仙の隣までやってくる。
ベンチの近くではさっきの犬が尻尾を振って竹輪を食っていた。
何故だか霊夢に懐いているようだ。
「……師匠から、今回は何が何でも回収しろと言われてるの」
「でもお金のないところからお金は出て来ないわよ?」
「ここにカメラがある」
「ふむ」
「何でも外の世界の物で、文ちゃんの持ってるカメラとは比べ物にならない高性能だそうよ」
「ほう」
っていうか文ちゃんって呼んだのは実はまだ深い関係が続いているんじゃ、と霊夢は思ったが言わないことにした。
何事も触れてはいけない事がきっとあるのだ。
「これはずばり、お金のないところからお金を出す素晴らしい道具なのです」
「なんとなんと」
「さて、これを今からどうするかと言いますと」
「どうするのよ?」
「あんたの写真を撮る。そして売り捌く。これでお金のないところからお金が出てくるのです」
「わぁー」
………………。
また風が吹いて木々を揺らす。
相変わらず耳に心地良い音だ。
しかし、今霊夢の心の中には強風が吹き荒れ、建物の屋根が吹っ飛び、生き別れになったゴキブリの親子の親の方がスキマに食われていた。
自分の中の事なのに霊夢はさすが足臭妖怪、ゴキブリ食えるのか、とか思う。
これ所謂現実逃避。
「って、ちょっと待ちなさいよおおおおおおぉぉぉっぉぉおお!!!!!」
「何の事だかよくわからないけど腋で擦ったシーンを撮った写真はより高く売れるらしい」
「何を擦るのよ!?」
「スキマ妖怪曰く、乙女の大事な部分か長いものだそうよ」
「またあいつか!」
「こらこら霊夢。あのスキマ妖怪は私たち永遠亭の収入において大事なお客様なのよ?
あいつは金を払わないけど式が密かに払ってくれるし、今回は霊夢にとってもありがたい存在になるはず」
「……何でよ?」
「霊夢の写真、特に腋とか腋で擦ったのとかを撮れたら他の者に先駆けて高値で買うと約束してくれた」
「……あの年増ぁ」
つーか払える金があるのに払わないのは何故なんだ。
あの年増を叩き潰そうか、と霊夢は考えるがあまり良い手段ではない。
金を払わなくてもいいようになるわけではないのだから。
「鈴仙、責任者の所へ行く。この話を直接どうにかするには、それが一番いいわ」
だから霊夢は金を払わなければならない所を何とかする。
そこを何とか出来たら金を払う必要がなくなるから腋写真撮られる心配もなくなる、まさに一石二鳥。
「いや、責任者ここにいるんだけど」
「……責任者はあんたの師匠じゃないの?」
「薬品製造等に関してはそうだけど、販売に関しては基本的にイナバ薬局が全て管理してるわ。で、私は局長」
あと訪問販売部(部長:てゐ)雑用。
「永遠亭の財政を直接管理してるのは?」
「……師匠だけど」
「そしてその薬局の売り上げは?」
「運営費以外は一度永遠亭の収入になって、そこから給料とか支払われるけど」
「ならば目指すは永遠亭ね」
薄く笑みを浮かべながら霊夢は鳥居の方を見て、続ける。
「土産は犬肉」
「真剣にやめてくれ」
*
ところ変わって永遠亭。
霊夢の目的は勿論溜まり溜まったツケを何とかするための交渉。
鈴仙はと言うと、永遠亭に行く、といきなり言い始めた霊夢に大人しくついて来た。
変に止めてボコボコにされるよりここで何かされた方がマシだと判断しての事だ。
そしてその一室で、ちゃぶ台を挟んで霊夢と永琳は交渉を開始する。
「あのね、うちの財政もここの所正直良くないのよ」
いきなりシビアな話。
貧乏でも1人だから何とかなる霊夢と違って、多くの妖怪兎、普通の兎、何よりニートを抱える永遠亭にとって貧乏は死活問題だ。
「一応年間黒字は出したものの、出だしがよかっただけで半年は赤字だったの」
「黒字ならいいじゃない。私なんて年中赤字よ」
「……姫は生存権が確保されてないから生活保護費を上げろ上げろと五月蝿いし」
いつの間にかそんなシステムになってたらしい。
少しくらい働けばいいのにそれでもニート続けるあたり割と図太いのかもしれない。
兎も角、永遠亭の財政もあまり良い状態でないことはわかった。
それでも霊夢は。
ゴクッ、と。出された麦茶を一気に飲んだ後で手を合わせ、頼み込む。
「でも払えないものは払えないのよ。だから何とか」
「……だからその腋で払いなさいと」
「どれだけ腋腋迫られようともそれをする気はないわ」
霊夢は真剣な表情で、譲歩を迫る。
永琳も、そして2人から離れたところで様子を見守る鈴仙も、ただ無表情で黙り込む。
しかしそこには、譲れないと言う確かな意思が宿っていた。
それでも霊夢は負けるわけにはいかなかった。
生活かかってるから、人生かかってるから。あと腋。
「……いつになく真剣な顔ね。頭の中が楽園で素敵な巫女とは思えないわ」
「ちょっと待て! 何か今もの凄く聞き捨てならない言葉を聞いた気がするわよ?」
「あら、本当の事しか言ってないつもりだけど」
「くっ……」
抑える。
金を払えない霊夢に非がある以上、下手なのだ。
ここで無闇に大きく出れば何をされるかわかったもんではない。
しかしそれにしたって、せめて春と言って欲しい、と霊夢は思う。
「では、私からの解決方法の提示。はっきり言って腋写真をスキマ妖怪及びその他様々な奴に売る以外にないわ」
それは提示というよりは、もはや決まっていた事を述べるだけのもの。
逃れようがない、霊夢は懐にスペルカードを準備する。
――しょうがない、わよね。
今輝夜はどうやら逃げる妹紅を『アイラヴもこた~ん!』とか言いながら追いかける夢を見ている真っ最中らしいし、永琳さえ何とかすれば霊夢の敵は居ない。
鈴仙やてゐは多少手強いがどうとでも出来る相手だ。
明らかに戦闘の意思を見せた霊夢、しかし永琳は冷静に話し続ける。
「そしてその解決方法を実行するための方法。私のお茶には何も入っていない」
「……それがどうしたのよ?」
「あなたのお茶には不思議なお薬が入っている」
「…………」
めちゃくちゃ嫌な予感がして、霊夢が震え始めた。
否、もしかするとその薬とやらの効果なのか、身体も熱い。
「ちなみに、ウドンゲのお茶にも同じお薬が入っている」
「え、え、師匠? えっと、何の薬を……」
動揺し始めた鈴仙を無視し、永琳は続ける。
「そして私はこの部屋を出、施錠する。邪魔者は居ない」
「え……っと、私たちは、どう、なるの?」
「し、ししょおぉぉ。身体がウズウズするんですけど、何を入れ……」
「存分に楽しめ」
「「ちょっと待てぇええぇぇ!!!」」
霊夢と鈴仙の叫びを無視し、永琳は部屋を出た。
残された両者は見つめ合い、そして。
「うふ、うふふふふふ」
鈴仙の笑みが怖い。
*
その後、霊夢の腋写真が予定通り高値で売れたとか。
何か腋で擦られて気持ち良くて抜けたとか言う鈴仙のウサ耳も高値で売れたとか。
魔理沙が夜な夜な枕を涙で濡らす様になったとか、そんな感じの噂が幻想郷に広まるが。
どれも事実かどうかは定かではない。
また、先日それらに関し事実かどうかの調査を行った射命丸文が『ワキコワイワキコワイワキサイコー』と言い残したのを最後に消息を絶っている。
先生! それだけは反対するでありますっ!(w
この馬鹿者が!
どうやらギリギリで、アウトです。
本当にありがとうございました。