Coolier - 新生・東方創想話

涙色のスカーレット

2006/01/18 00:12:53
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「涙色のスカーレット」


※注意報
 オリジナルのスペルカードが出てきます。また既存のスペルカードにも独自解釈が入っていますので苦手な方はご注意を





 咲夜が亡くなって1週間が過ぎた
 精一杯生きて、生きれるだけ生きて、まさに大往生とよべる死に様だった
 でもその日からレミィが変わってしまった

「ねえ、パチュリー。お姉さまは大丈夫かしら?」
 私から取り上げた本を机の上に放り出して、妹様が尋ねてきた。その本まだ途中だし栞も挟んでない。そんな思考を隅に追いやって少しだけ笑みを浮かべた
 大丈夫、レミィは強いもの

 咲夜の亡くなる少し前に紅白もいなくなってしまった
 だけど、うそ臭いことに博麗神社にはいつの間にか紅白が、14代目を名乗る博麗霊夢がいる。何時来たのか、何処から来たのかも分からないけれど、当たり前のように其処にいた
 その姿も、その雰囲気も、ましてや霊力さえも私たちの知る紅白となんら変わりがないのに、其れでも私たちの知らない紅白がいる
 だけど魔理沙は何処にもいない
 もう一度貴女に会えたなら伝えたいことがいっぱいあるのに、私の気持ちさえ伝えられないまま貴女はいなくなってしまった。魔理沙、私は貴女のことが…

「パチュリーってば」
 体をがくがく揺さぶられて私の意識が戻ってきた
「聞いてるの?」
 ちょっと笑ったかと思ったらぼーっとしちゃうんだから、とちょっと怒った感じで妹様は右腕を掴んで揺さぶり続ける
「い、妹様。聞いていますから、ちょっと、やめ…」
 まずい、なんだか朦朧としてきた。目の前がちょっとずつ白く…
「そう、聞いてるならいいわ」
 妹様が離れて私はようやく解放された。もう少し続いたら危なかったかもしれない
 そう考えるとぞっと…しないのは、誰かがいないから?
「ねえ、お姉さまは大丈夫かしら」
 そう聞いてきた妹様のお顔は今にも泣き出しそうで、強く掴まれた腕の痛みなんてあまり感じなかった
 だからつい言ってしまったんだと思う
「大丈夫よフラン。レミィは強いもの」
 レミィがそう呼ぶように、妹様のことを「フラン」と呼んだことに私は気づかなかった
「本当ね?…でも」
 妹様のお顔が一度ぱあっと輝いて、また元に戻った
 レミィは咲夜が亡くなってしまってから今までの1週間、何も口にしていない。いくら吸血鬼だからといって何もとらないままではどうなるか分かったものじゃない
 妹様は、いえ、紅魔館の皆がそのもしも”を恐れ、不安に思っている。何もしなかったわけじゃない
 妹様も「お姉さまのために」といろいろしてきたことを私は知っている。それなのにレミィがほとんど反応らしい反応を返さなかったことも私は知っている
 それなのに私は何もできなかった。友人だからと気負いすぎて、拒絶されるのが恐くて
 だから、レミィは強いから一人で立ち直れるなんて思い込もうとしていたのかもしれない。私はレミィが弱いのを知っているのに-
「レミィのために紅茶を淹れにいきましょうか?」
 驚いたのか目を丸くして妹様は意外と失礼なことを言った
「パチュリーって紅茶を淹れられるの?」

 困った
 普通の紅茶の淹れ方なら知っているけれど、それが血の場合はどうしたらいいのかしら
 思い出しなさい。咲夜はどうやって淹れていた?…知るわけないじゃない。見たこともないんだから
「妹様は紅茶を飲めるかしら?」
「魔理沙の家でお茶を飲んだことはあるわよ」
 そういえばレミィも紅白の神社でお茶を飲んだことがあるって言っていたわね
 それなら大丈夫ね。きっと


「私が持つって言ったのに」
 これは妹様の台詞、というわけではなく私の台詞だ。らしくないとは思ったけれど一度出した言葉を引っ込めることはできないし戻しようもない
 隣には妹様が居て怪訝な顔をされたけれど気にしないことにした
「百面相なんかしてどうしたのー?」
 小首を傾げてそう聞いてくるけれど答えることなんてできないわね
「なんでもないわ。ほら、お盆を落とさないでね」
 ん、と両手でお盆を持ち直し
「早くお姉さまと一緒に紅茶を飲みましょう」
 そういって微笑んだ。その笑顔は私の中で渦巻く不安な気持ちを消し去ってくれた
 きっと大丈夫
「レミィ、入るわよ」
 戸を数度ノックしても中から答える声はない。けれどそれは予測できたこと
 だから-

がちゃり

 返事がなくても入るだけ
 当のレミィはベッドの上に
















 いない?
 がしゃっと何かが落ちる音が聞こえた
 お姉さま、と誰かのかすれた声が聞こえた
 頭の中で警鐘が鳴り響く
 ぱんっと7色に煌く翼が目の前に張り広げられた
「お姉さまあぁぁぁぁぁぁぁっ」
「待って、待ちなさいフラン」
 私の止める声も聞かずに妹様は部屋を飛び出していく
「来なさい」
 短いコマンドワードとともに宙に指で五芒星を描き、召喚の門を開く

どさっ
「ぁいたっ」
 門から落ちてきた黒いのは頭を押さえて蹲っている
「何をしているの?」
 黒いの、もとい小悪魔は両の手で頭を押さえたまま立ち上がって
「うぅ、いきなり喚ぶなんてひどいです。本を運んでる途中だったんですよ」
 目じりに涙をためてそう言ってきた
「今は本なんていいから力を貸しなさい」
「ええっ!?」
 パチュリー様がそんなことを言うなんて…明日は雨、いや雷雨ですっ。また魔理沙を蘇らせたいとか言い出すんじゃないですよね?あ、ひょっとしたら次のお相手が見つかったんですか?なんて失礼なことを言ってくる小悪魔は後でお仕置きするとして今は指示を下す
「妹様を追いなさい」
「妹様ですか?」
「復唱しなくていいわ。見つけたらすぐに私に連絡しなさい」
「えと…あ、はい!」
 なぜか少し怯えた表情を見せて小悪魔は飛び立っていった
 それを見届けてようやく息をついた。喘息の調子がいいからって無理はするものじゃないわね
 厚く閉まったカーテンを開けると咲夜の墓が見える。それは咲夜自身の願いとレミィたっての希望もあって、咲夜の墓はレミィの部屋から見下ろせる位置にある
 二人の運命の糸は縦横複雑に絡み合って互いになくてはならない存在。でもだからといって、咲夜がいなくなってしまったからといってレミィまでも居なくなってしまうのは許せない。貴女は---
 いやな予感がしてスペルカードを取り出した
「火の力を司る精霊よ」
 部屋が赤い光に満たされ、それがカードに凝縮されていく

火符『燃え盛る聖火-アグニシャイン-』

ごおぉぉぉぉん

 火弾は壁に着弾すると同時に爆発し壁を粉砕した
 火の粉の舞う中、私は外に飛び出した
「木の力を司る精霊よ」

どんっ

 着地の衝撃は予想以上だった。周囲の風を操って衝撃を緩和したにも関わらず鈍い痛みが左足を襲った
 折れたわけじゃない。だから構わない
「パチュリー様?いったいどうなされたんですか?」
 今の音を聞いてか美鈴が私の姿を見つけ駆け寄ってくる
「たいしたことないわ」
 左足をかばって立ち上がろうとしたけれどついよろけてしまう
「たいしたことあるじゃないですか」
 美鈴に抱きかかえられて、ふと上を見上げると
「本当。たいした高さですらないわね」
「あそこって…お嬢様のお部屋じゃないですか!?」
「平気よ。レミィは今居ないし、直せるから飽きられるか怒られるかくらいで済むわ」
「怒られるって…お給料減らされたらどうするんですか?」
「もらってないわ」
「うぅ、私にとっては死活問題なのに」
 なぜか滝のような涙を流す美鈴は気にしないことにして紅魔館の玄関ホールへと向かう
「門番」
「はいっ」
 その間わずか1秒未満。いい返事ね
「そうね、頼まれてくれるかしら?」
「じ…実験にはお付き合いできませんよ」
「今日は言わないわ」
 手短に用件だけを伝えて私は再び玄関ホールへと向かった
 どうか、この予感だけは当たりませんように---

「あら、パチェがこんなところに居るなんて珍しいわね。散歩?」
 いやな予感ほど良くあたる、なんて聞いたことがあるけれど本当だったのかしら
 私の願いも空しくレミィはここに来た。紅魔館の出入り口である玄関ホールに
「散歩じゃないわ。貴女を待っていたのよ」
「なら帰りなさい。もう目的は達したのでしょう?」
「まだよ。こんな天気のいい日に日傘も持たずにどこに行くつもりなの」
「咲夜のところ」
 薄く笑みを浮かべてレミィは確かにそう答えた。咲夜のところ、と。それはつまり-
「残念だけど行かせることはできないわ」
「無理にでも押し通るわよ」
 レミィの周囲に赤い弾が無数に形成される
「なら止めてみせるわ」
 スペルカードを2枚取り出して
「私に勝つことはできない。パチェ、貴女では運命には抗えないわ」
 魔力を込めて
「今日は喘息の調子がいいの」
「やってみなさい。七曜の魔女、パチュリー・ノーレッジ」
 その言葉とともに赤い弾が打ち出された
「火と土の精霊よ」

火&土符『溶岩環-ラーヴァクロムレク-』

 赤色と黄色の魔力が吹き荒れ、私を中心にして環を描くように火柱が立ち上った。それはレミィの紅弾を飲み込むと火弾として反射する
 それを見届けるともう1枚符を取り出す。赤色の魔力が霧散し白色の魔力が立ち上る
「土と金の精霊よ」

土&金符『翠玉石-エメラルドメガリス-』

 ゆらりと空間がゆがみ周囲に十数の巨石が出現し、撃ち出される
 それと同時にレミィの手に紅い符が現れた

獄符『千本の針の山』

 一瞬にして出現した針の山は火弾もメガリスも貫き消し去った
「貴女の実力はこんなものなのかしら?」
 それなら心底がっかりだわ。とレミィが嘲笑を浮かべる
「いいえ、まだよ」
 間髪いれず2枚の符を取り出す
「水と木の精霊よ」

水&木符『湖の婦人-ウォータエルフ-』

 ざあっと、何処からともなく湧き出た水は人を模った形を成す
 再びレミィの手に紅い符が握られる。それは燃え尽きるとともに深紅の槍へと形を変えた

必殺『ハート
水霊が一振りの剣を生み出す
      ブレイク』

一閃

 己が敵を貫く深紅の槍は剣の一振りによって崩れ去る
 レミィから笑みがこぼれる
「ふふ、パチェもなかなかやるわね」
「そうね、甘く見てたら痛い目にあうかもしれないわよ」
「そんなことはしないわ。刃向かって来る敵は何時でも全力で叩き潰すもの」
 レミィの翼が張り広げられる
 水霊は再び剣を振りかぶる。その手に持つは聖剣の贋作。喩え贋作といえど、水と風の精霊の持つ剣ならばオリジナルにも等しき力を有す
 紅い符がレミィの手に握られる

紅符『スカーレットシュート』

 符の宣言。それと同時に、ぱんっという翼が空気を打ち付ける音ともにレミィが飛んだ。一切の躊躇もなくこちらに向かって
 レミィに向かって振り下ろされた剣は爪の一撃で、いとも脆く壊れた
 思考が…働かない
 私はただただ本能に従い身体を後ろに反らす

ひゅん

 眼の前を紅が走り抜けた
 上体を反らしたまでは良かったけれど、私はそのままお尻から床にへたり込んだ
「くす」
 気づいた時には、レミィの顔が目の前にあって-
「及第点、といったところね」
 その手には-
「でも私に勝とうなんてまだまだよ」
 無残にも引き裂かれた-
「もう一度はないわ」
 私の帽子が握られていた
「さあ、通してもらうわ…よ?」
 レミィは私に問うてきてはいない。その目は外に、真っ暗闇の外に釘付けだった
「間に合ったみたいね」
「どういうことなの!?」
 ほっと胸をなでおろす私に掴みかかってくる
「保険をかけておいたのよ。美鈴もいい働きをしてくれたわ」
「美鈴?門番風情が…何をした?何を頼んだ!?」
「そうね。敢えて言うなら夜をつれてきてもらったわ」
「夜。だと?」
「宵闇の妖怪よ。神社の近くで見たことあるでしょう?」
「あのくず妖怪か」
 じわりじわりとレミィの身体から殺気が漏れ出す
「?」
 ふと私を見たレミィが不思議そうな顔をした
「準備は出来たわ」
 周囲には魔力が満ち満ちている。今までの複合符の成果が今ここにある。そしてこの為の布石でしかない
「七曜の精霊たち」
 言葉に宿る魔力を感じ取ったのかレミィが飛び退る
 符ではなく本を開く
 この本は私のすべてが書き留められている。それは同時に本自体がひとつのスペルカードならぬスペルブックとなる
 本のページが次々とめくられる

月火水木金土日符『神話再現-ミスリアピアー-』

 宣言と共に7枚の符が私の周囲を巡る
「レミィ。私は貴女を絶対に止めて見せるわ」
「運命に勝てるかしら?」
「勝負に勝つことだけが勝利ではないわ」
 1枚の符の力を解き放つ

月符『終わりの冬-フィムブルヴェト-』

 紅魔館が、世界が揺らぐ
 世界が世界を侵食していく
 灰銀色の大地が紅魔館の床を飲み込む
 暗雲渦巻く空が紅魔館の天井を喰らっていく
 ふわりふわりと昏い雪が舞い降りてくる
 これが神話再現-ミスリアピアー-。別名、侵食世界-ミスリアピアー-
「これは…なに!?」
 驚き、慌てふためき、レミィが周りを見回す
「甘く見てたら痛い目にあうかも。って言ったわよね」
 その言葉にレミィが薄く笑みを浮かべた
「そうね。確かに甘く見てたかもしれないわ」
 雪の舞い散る終わりの世界で、必ず貴女を止めてみせる
「やってみなさいパチェ。貴女が私を止めることが出来るか、試してあげるわ」
 あはは、とレミィの哄笑が響いた

火符『黒の煉獄-ムスペルヘイム-』

 宣言と共に、私たちを取り巻く世界が一変した
 空は太陽が出ているにも関わらず真っ暗で、大地は荒涼たる化石のような平野が果てしなく広がる
 突然世界は炎に包まれた。世界はいたるところで炎が燃え盛る煉獄へと化す
「くっ…」
 突如噴出した炎がレミィを焦がす
「こんなものっ!」
 方向性なく打ち出された妖力は地獄の炎を消し飛ばした
 でも1つ打ち払った程度では限りはない。炎は無数に大地から、空から噴き出す

 そんな世界でレミィは笑っていた
「ふふ、確かに良いわね。こんなに楽しいのは久しぶりだわ」
 1枚の符が握られる

冥符『紅色の冥界』

 さあっと吹くはずのない風が吹いた
 灰色の大地が一瞬にして深紅に染まる。紅い光は大地を、空を侵食していく
 紅い冥界は煉獄を飲み込み消えていく。後に残ったのはレミィと私と、冬の世界だった
「次よ」

水符『沸き立つ鍋-フヴェルゲルミル-』

 再び世界が塗り変えられた
 緑の映える森林に泉があるだけの世界
 其処から1本の水流が巻き起こった
「今度は水というわけね」
 水流は2本、3本と数を増していく
 泉の前にかざした手を動かし水流に意思を与える
 5本の水流がレミィを襲った

ひゅん

 漆黒の翼をはためかせてレミィが舞う
 自在に動く水流をものともせずレミィが宙を優雅に舞い踊る
「そんなもので私を捉えられると思っているのか?」
「あら、数が少なかったかしら」
 手の動きにあわせ、ざっと水流が巻き上がった。それは沸き立つ鍋の名にふさわしい11の支流
 その全てを意識下におき、私は手足のように操る
 水流のうねりは不規則で捉えにくい。それでもレミィは避け続ける
 レミィの振るう紅い爪は何本かの水流を引き裂く。だけど水はいくらでも溢れ出る
 ごぼりと水面が波打ったそのとき、微かに声が聞こえた。見つけた、と

神槍『スピアザグングニル』

 放たれた神の槍は防げない。彼の槍は狙ったものを必ず貫く。それは避けることも、弾くことも、受けることさえも許さぬ大神宣誓!
 私は慌てて泉との意識の共有を切る。それとほぼ時を同じく泉に槍が突き立った

ざあぁっ

 基点を壊された世界は消えるしかない。泉は涸れ果て、周りの木々も朽ち木へと化した
「これで3つめ。後4つよ」
「そうね。次にいくわ」

木符『世界樹-ユグドラシル-』

 ちゃぷりと水音を立て世界が変わる
 仄暗い泥水を讃えた世界樹の聳え立つ世界へと変わっていく
「これは…泥?」
 不思議そうにレミィが足元の泥に触れる。だけどそれに触れた途端、その表情が一変する
「泥じゃないな。そこら中に生命の息吹を感じる。パチェこれは一体何なのかしら?」
「今はただの泥よ」
「ふざけるな!こんな泥がどこに存在する!?」
「私は何処にでもあったと考えているわ。おそらくこの幻想郷にもね」
 背後にそびえる世界樹に触れる。それは暖かくて、壮大で、全身の魔力が熱を帯び活性化していく
「この泥は世界の苗床。方向性の無い命が寄り集まったもの。これからすべてが創られていく。そう、私は考えているわ」
「ふん、根源ということか。しかしよくこんなものが生み出せるな」
「私は神話を再現しているに過ぎないわ」
「…そろそろ落ち着いたみたいだな。再開といくか」
「わざわざ待ってくれてありがとう」
 レミィの笑みに私も笑みを返す
「来なさい、パチェ」
 その言葉を受け、魔力を開放する。五行術ではない純粋な魔力塊を生み出し、弾幕として撃ち出す
 それは世界樹の加護を受けスペルカードに等しき力を持つ魔力弾と化す

ひゅん

 直線的に撃ち出した魔力弾なんかすぐにレミィは避ける
 だから二重、三重に魔力弾を重ねていく。それと同時にレミィも紅い弾幕を張る
 回避不可能の弾幕は張らない。それが弾幕ごっこのルールだけど、ルールに反するぎりぎりまで私もレミィも張る
 弾幕を張る合間にレミィは爪を振い魔力塊を引き裂いていく、私も魔力障壁を張り弾幕を防ぐ
 すでに弾幕は十重にも二十重にも張られ、視界はレミィの紅い妖弾とわたしの5色の魔力弾で埋め尽くされている。
 レミィの姿が見えない。けれどきっとレミィも同じ状態のはず。だけど嫌な予感がするのはどうして?
 背後に、予想すらできなかった背後に巨大な魔力を感じた
 …しまった!

紅符『スカーレットマイスタ』

 紅い光に包まれたレミィが世界樹を貫いた!!
 世界樹に開いた穴は広がり、皹を入れ、世界樹は鳴くような音を立ててへし折れた
「4つめね」
 レミィの許に蝙蝠が集まっていく
「次」

金符『争乱の鎖-ブリーシンガメン-』

 じゃらりと重々しい音を立て手元に金の鎖の輪が現れる
 世界が再び塗り替えられる。今度の舞台は街路。誰もいない荒廃した街
「今度は何が起こるのかしら?」
 鎖に魔力を込める
 何かが聞こえた。荒廃し、滅んだ街で何かが聞こえた
 もう一度聞こえたときそれは確信へと変わる
「人の声…?」
 まぎれもなく人の声だった。一人なんかじゃなく、大勢の喊声が聞こえる
「人間如きで何をするつもりだ?」
「普通の人間じゃなくてヴァンパイアハンターならどうかしら?」
 そんなもの、とレミィは笑みを浮かべる。そのときそれらが姿を現した
 数百は下るまいという吸血鬼狩りを生業とする人たちの群れ。彼らはそれぞれの得物を持ちレミィに肉薄する

ざっ

 振り払われた爪は人を引き裂き、あっという間に肉塊へとかえる
 数多に振るった爪は肉の切れる生々しい音をたて、人を真っ二つに裂く
「あははははは」
 むせ返るほどの血臭の中でレミィは笑っていた。その姿はヴァンパイアロードの名に相応しいものだった
 …そんな時がどれほど続くだろう
 人間たちは減っていなかった。否、何処にいたのかと思うほど人間たちは数を増していく
 レミィの背後に回っていた人間が銀製の剣を振るい切りかかる

ざしゅ

 人間が気づいたときには肘から先は無くなっていた
 前に向き直ったレミィは気づいただろうか。その人間が塵となって消えたことに-
 これは人間たちの、ヴァンパイアハンターたちの幻影に過ぎない。だけどこの世界がある限り、幻影は実体を持ち、敵に傷をつける
 群がる幻影たちの合間に蝙蝠の姿も見え隠れする。紅蝙蝠の出す強力な超音波にやられ発狂し、あるいは爪や牙に引き裂かれ幻影は消えていく

ばさり

 翼を羽ばたかせレミィが空へ舞い上がった
「まったく、まんまと騙されたよ」
 …気づかれた
「パチェ、あなたは耐えられるかしら?」

呪詛『ブラド・ツェペシュの呪い』

ザザザザザッ

 石畳を突き破り、無数の木杭が突き出される!それは的確に幻影たちを刺し貫いていく
 ふと違和感を感じた

ザンッ

「…かっ」
 一本の杭が私の胸を貫通し縫いつける。まるで標本のように
「あ、あああああああああっ………」
 喉から絶叫がほとばしった
 痛い
 痛い
 痛い
 痛い
 痛い
 イタイ
 イタイ
 イタイ
 イタイ
 イタイ
 イタイ
 イタイ
 イタイ
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい
 いたい

















「もう終わったよ」
 その言葉に私ははっと意識を取り戻した
 あれは…幻痛?
「本当の幻覚とはこうやるものよ」
 全身が汗でびっしょりだった。恐怖を感じた。死を、垣間見た
「後2つよ。私を止めるんじゃなかったの?」
 そう、止めなきゃいけない
 ゆっくりと立ち上がる。大丈夫、痛いはずなんて無い
 残る2枚のうち、1枚の魔力を解き放つ

土符『終焉の地-ヴィーグリーズ-』

 世界が何も無い丘へと変わる。ただそれだけで何も起きる気配が無い
「どうしたの?魔力切れなんて終わりはつまらないよ」
「これは単なる布石よ。魔力が切れたなんてことはないから安心して」
「そう、じゃあ楽しみにしてるよ」
 既に仕掛けはすんだ。土符は日符のための布石。起爆剤を仕掛け、次で火をつける
 …まもなくこの世界は滅ぶ
「レミィ。私は貴女を絶対に止めて見せるわ」
 もう一度だけ声をかけて-
 残る1枚へと手を伸ばす
 自分を奮い立たせて-
 符の魔力を解放する

日符『神々の…-ラグナ…

ごおっ

 世界が炎に包まれた!
 これは---

禁忌『レーヴァテイン

 世界が壊れていく。私の魔力で編んだ世界が害なす魔杖の力を受けて壊れていく
 だけど、この世界には相応しい幕切れかもしれない
 スルトの振るう魔剣により世界は焼き尽くされ、新たな世界の苗床へと変わる。それがあの神話の幕引きだったはずだから
 そして神話を再現する世界はあっけなく壊れた

「お姉様ぁっ」
 涙で顔をぐしゃぐしゃにした妹様がレミィに抱きつく
「フラン…」
「やだやだやだ、お姉さまは何処にも行かないでっ。何処にも行っちゃやだっ!」
 妹様はレミィの胸元に顔をうずめ泣きじゃくる。その様子をレミィは困った様子で見ていたけれど-
「何処にも行かないわ。だから安心して。ね、フラン」
 頭を撫ではじめた。レミィも涙を流していた
「ありがとう、フラン。ありがとう…」
 咲夜が亡くなって、初めて見せたレミィの笑顔で涙だった
 居なくなってしまった咲夜。それを認識したときからレミィは怖かったのかもしれない
 自分の居場所は、自分の傍にいてくれる人はいるのかと
 紅魔館の誰もがレミィを崇めていると同時に畏怖を抱いている。そんな中で私と妹様だけが言うことができたはずなのに-
 いなくなっちゃいや。傍に、ここに居て、と
「ぱ、パチュリー様、大丈夫ですか?」
 小悪魔がおずおずと声をかけてきた
 性格にはびくびくと、といった方が正しいかしら
「あなたには大丈夫に見えるのかしら?」
「い、いえっ」
 問いにぶんぶんと首を振る小悪魔を見るのは楽しい
「お疲れ様でした」
「本当に疲れたわ。明日が恐いわね」
 無茶した分のぶり返しが本当に恐い。あはは、と力なく笑う小悪魔にむっときて頬をぐにっと引っ張ってみた
「ひゃ、ひゃにふるんれふか?」
「レミィも大丈夫そうだし、後は任せたわよ」
「ふぁしゅりーしゃま?」
「ずいぶんと魔力も使っちゃったし眠いの」
「ふぁいっ!」
 頬を引っ張られたまま子悪魔は元気に答えた
 前作を投稿してからも5ヶ月近く経っているので、改めて「はじめまして、紙魚ネコというものです」
 書き始めてから8ヶ月(内、休みがほぼ6ヶ月)ようやく日の目を見た紙魚ネコの本当の1作目です
 レミリア様の口調が一貫していないという気がするのはきっとそのせいです
 嘘です。つかみきれてないだけです
 ポ○モンなら得意なんです。本当に。以前にメール連載をしていましたから。53作書いて停止しましたが…
 まあそんなことはさておき、感想・ご意見・愚痴・質問があったら何なりと
 感想をくださると紙魚ネコという生物(なまもの)はとても喜びます

 ぴーえす:後日、「涙色のスカーレット後日談『小悪魔絵日記』」をお届けします

 1月19日:ちょこ様よりご指摘いただいた誤字を修正
紙魚ネコ
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コメント



0.1310簡易評価
5.-30名前が無い程度の能力削除
色々と足りない
読みやすくしようとしてむしろ読みにくくなった印象
各個のつながりも思わず「ん?」という場面が見られた
ストーリー自体は悪くないと思うので、次回作に文章のレベルアップを期待する
9.-10森の仲間達削除
うう・・。人の事を言える立場では全く無いけれど。orz
なんというか、ストーリーを展開していく中で足りない文章が沢山あります。
だから、書いた後1度自分の文章を見直して、
たっぷり手間をかけて足りない文章を補完していく事をお勧めします。
自分の文の悪い所が分からなければ門板に行き、
専門のスレで自分のSSを見てもらうのも悪くはないですよ。
あなたにはストーリーの発想力も時間も十二分にあるのだから、
やる気を元手にどんどん伸びてください。

11.10名無しな程度の名前削除
結局パチェの決死の戦いも妹様が出てきたら、あっさりと片付いてしまうのでしょうか?
でも一番かわいそうなのは保険で連れて来られたルーミアかと……
保険が保険のままに終わってしまうのは、ちょっと悲しいです。
大筋がこれだけ良く出来ているのだから、一味二味加えるだけで素晴らしく伸びる作品だと思います。
13.無評価紙魚ネコ削除
>名前が無い程度の能力様
繋がりに関しては自分でもどうかなと思っていたので、言っていただけて有難いです。次回作はきちんとその点も反省し、書いていきます

>森の仲間達様
ご意見を有難うございます
今作は半年あきというのがあって完成だけを焦っていたというのがあり、そのため推敲の時間を削ってしまったのはまぎれもない事実でした
次からは今回以上にじっくりと見直し、補完をしていきます

>2人目の名無しな程度の名前様
妹様が出てきたから片がついた。というより「ここに居てほしい」という台詞がほしかったと、考えていただければ幸いです
尤も、その辺りが自分の力不足なのかもしれません
また美鈴とルーミアも確かに回収していませんでした。いえ、忘れていた、という方が正しいのかもしれません

次回作は『必ず』良いものを、と言い切れない自分が悔しいですが、皆さんのアドバイスを参考に少しでも良いものを作っていきます
またストーリーは良いというのは大変励みになりました
14.無評価紙魚ネコ削除
名前を間違えるという大失態
2人目の~ではなく、名無しな程度の名前様でした。真に申し訳ございません
18.40ちょこ削除
ストーリー自体はいいと思いますが…前の人たちがかかれたように言葉不足ですね。あとは逆に文章量多くて読みにくいかなぁ…
ただ、パチェとレミリアのバトル、そして独自のスペルカードのネーミング等も含めまして、私はいいと思いました。
P.S 誤字報告。
「普通の人間じゃなくてヴァンパイハンターならどうかしら?」
ではなく
「普通の人間じゃなくてヴァンパイアハンターならどうかしら?」
では…??
22.無評価紙魚ネコ削除
>ちょこ様
バトルシーンは一番気合が入っていた箇所なので、お褒めいただき有難うございます
誤字も早々修正させていただきます
25.100名前が無い程度の能力削除
書けば書くほどうまくなるさあ。
応援してるよん♪
26.無評価紙魚ネコ削除
>2人目の名前が無い程度の能力様
応援していただき有難うございます。ご期待に添えられるよう頑張りますので、温かい目で見ていってください