Coolier - 新生・東方創想話

嘆きの星

2006/01/13 22:11:58
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 カラカラカラカラ……
 気が付けば私は果てのない格子状の空間に立っていた。
 立っていたという認識は欺瞞だ。だがそう認識した途端空間は真っ二つに分断され地平線が出来た。
 ホワイトノイズ。白く無音。一人そこに立つ私は、呆然と格子状に連続的に定義された空間を眺める。
 私とは誰だ?
 私は鈴仙・優曇華院・因幡。八意永琳の弟子であり、永遠亭の荒事係である。
 そう認識するとそのようになった。
 此処は何処だ?
 過去に該当する情報は無し。検証材料の不足により推測も不可。結論、不明。
 何故此処にいる?
 前述の疑問が解消されない以上不明。
 不可思議な気分だった。いまこの空間には私を除いて何も存在しない。両足が踏みしめる面は地平線の彼
方へと続き、遠近法に則って空間と繋がっている。
 何もない。
 何もない。
 何もない。
 三度確認した。
 では私はないのだろうか。
 何もない空間に立つ私、私という認識によって成り立つものは、本当にあるのだろうか。
 自己を確立するということは、周囲から私という存在を区切ることから始まる。空間に偏在していた私という
構成要素をある一点において収束さしめ、一体と成し、周囲という要素を排除する。相対的に私という存在が
空間から浮き上がる。私は空間から生まれた。続いて私という区切りの中で私というベクトルの方向が定ま
る。ベクトルとは生まれいずる意味に他ならない。無数の可能性の中から導き出したその方向へ私は輪転す
る。そのようになるために私という構造は――変化、変質、そう言ったものではなく、むしろ変形と言うのが最
も近い――変わる。その過程上で生み出されたのが意識と思考であり、それこそが私に必要なものだった。
 意識と思考。生まれいずる意味は、生まれるまでの意味でしかない。その後を確信せしむるのは意識と思
考による思考実験の余波でしかなく、終わらない思考の終わることを目的としていない意識が求めるのは確
立せざるべき自己に他ならない。二律背反。私は決して私にはなれない。
(それは違う)
 私とは何だ。レイセンとは兵器と定義されている。兵器とは何だ。戦うものの意志を具現させるものと定義さ
れている。戦うものとは何だ。それは私である。
 これは矛盾である。私は私の意志を具現化させるのだろうか。
 意志とはなんなのか。
 意志とは、(進化)意識上にありて思考の主体。(超超高圧のサイコ・ベクトル)魂の数学的な意味。
(悲しみと喜びは一つではない)
 私は誰?
 私は誰?
 私は誰?
 三度質問をし(私は鈴仙・優曇華院・因幡)た
『閾下共通情報連想に混乱。情報均一状態にて自己回復。完了』
 カラカラカラカラ……


 石畳の上で目を覚ました。
「邪魔」
 妙に着崩した巫女が仏頂面でのぞき込んでいる。手に竹箒を持っていた。
 すぐに巫女は掃除を再開した。石畳の上に仰向けで倒れている私を避けてだらだらと掃き清めていく。
 私はぼんやりとそれを眺めて、ゆっくりと体を起こした。思考がはっきりとしない。だが瞳は透き通っている。
砂を掃く巫女はだらだらとしかし一律に歩を進める。
 朝だった。
 茜色の朝焼けが東の空に浮かぶ鰯雲に映って染まる。高き空は境無く、夜が去っていく。朝がやって来る。
 空は境無く混じり合い、そこには変化だけが在る。
「邪魔っていってんだけど」
「うあ」
 巫女が仏頂面で同じ事を言ってくる。
「のけ」
 蹴っ飛ばされた。
 まだはっきりとしない。
「うう」
 黙々と巫女は石畳を掃いている。雪にはまだ早く木枯らしは蕭々と泣く。風に巻かれた砂埃が季節遅れの
落ち葉とともに神社の境内にやってくる。巫女はそれを掃く。
 べつにそれがなくても巫女は掃除をする。巫女とは生活様式も含まれる。
 生活は活動。生存活動の高度に高い水準で確立された様式。
 巫女が箒を担いでこちらに向き直る。
「終わった」
「ああ」
「掃除」
「うう」
(博麗霊夢)
「れいむ」
「何」
 応答によって巫女は博麗霊夢になった。
 はっきりしてきた。
 私は目を瞬かせる。
「なんで私こんなとこにいるの」
 レイセンはそう言う。



「思い当たる節は?」
 八意永琳は夜通し酒を呑んでいた。中庭の一つ廊下の柱に背を預け、赤黒二色の衣装に煙管と煙草盆、
一升瓶と濁酒。朱塗りの杯。
 鈴仙・優曇華院・因幡はその横に正座している。青ざめた貌に赤目が映える。
「あります。とても。とても良く知っています。私にしか判りません」
「ではなぜ私に」
「不安です」
「そういうものなのかしら」
「保証はあります。信頼もあります。しかしそれは証明ではありません。王が封じた開かずの扉の中をだれが
知りえるのでしょう」
「閻魔様にでも聞きなさい」
「あの方は道筋と判決しか言い渡しません。あの方にはそれ以外全てが一つです。私は違います」
「それで」
「不安です。私は私で居られるのでしょうか。私は私を拒絶できるのでしょうか。私は私で私も私なのでしょう
か。私とは一体何なのでしょうか」
「私はそれに答えられるし解決も出来るわ。でもしない」
「ありがとうございます、師匠」
「プライマリ以上の駆動を許しましょう」
「はい、戦います」
「そのようになさい」
 深く一礼して、空へと跳んだ。
 永琳はそれを見送りぷかりと紫煙を吐く。



 社屋にあがらせてもらった。
 六畳間に炬燵と火鉢と箪笥。壁には日捲り。朝日がゆるゆると差し込んで部屋の光度が上がる。
 火を入れて間もない火鉢の上に薬缶をのせ、霊夢はのそのそと炬燵に潜り込んだ。締め切った障子の隙間
から冷気がしんしんと忍び寄ってくる。そのまま寝っ転がって座布団を枕に、寝る体勢に入る。
 寝た。
 天板の向こうに見える霊夢を私は見る。藤籠に盛られた椪柑を黙って取って半分に割った。皮を剥いて白い
毛を取る。房を割って薄皮を剥ぎ、実だけ吸い取るように食べる。
「だだ甘……」
 一口で食べる気を無くしたが、勿体ないので全部食べた。
 炬燵に熱が籠りだした。
 ――私は何であんなところに居たんだっけ。
 思考する。
 判らない。
 瞬間的にそれは結論される。
 朝日が輝きを強くして、部屋の光度をひときわあげた。
 判らないが、覚えていることはある。
 無言で炬燵から足を出し、ひっくり返っている霊夢を一瞥し、障子を少しだけ開いて外に出た。朝の心底まで
冷える空気を実感する。
「あのさ」
 炬燵の向こうから寝ているはずの声が届いた。
「幻想郷って言うか博麗大結界ってのは、外の世界で居られなくなったあれこれの袋小路でね。
 それってつまり、外にまだ因縁があると必ずそっちに戻るようになるわけ。そいつらは詰まってる訳じゃない
から。
 あー、まぁ、そんなかんじ」
 と言って、今度こそ巫女は二度寝に入った。そういう雰囲気が伝わってきた。
 障子を閉める。
 覚えている。
 とん弾みをつけて空へ跳んだ。


 空へ跳ぶ。
 空へ昇る。




「やあ、珍しいな」
 雲を抜けた先に、涅槃の入り口が開いている。そこに繋がる無限階段の一番下で庭師と会った。
 庭師は雲と段の境に腰掛けて釣り糸を垂らしている。長く細い竿が緩やかなしなりを見せ、竿先に結んだ釣
り糸がそこからついと垂れて雲の中に消えている。浮きはない。
(ようむ)
「魂魄」
 妖夢の脇には山と巻かれた妙に太い荒縄と魚籠が置いてある。魚籠の口から時折水飛沫が跳んでいる。
「うーん。いま貴女が昇ってきたって事は、下のでかいのが昇ってきてるって事だよなぁ。見なかった?」
「う――うん」
「まぁ死人しか見えないんだけど」
 一人で頷き竿を持つ手を入れ替えた。よく見ると持ち手は剣の柄である。さらによく見ると竿は魂魄二刀の
片割れ、長刀楼観剣であった。
 鞘の端、竿先で一輪の秋桜が揺れている。
 妖夢の隣で、人魂が同じように白楼剣を構えて糸を垂らしている。
 雲海の霞、冥界の幽けし霧が、妖夢の坐す一点で混濁していた。
 そこに行くのか。
(跳べ)
(更に跳べ)
 私が行くべきは妖夢の背後ではない。私の上である。やがては雲海の果てに日が昇り、青白い雲の海原を
赤々と染める、その赤光を抜けて。
 糸に注意を戻した妖夢から意識を外し、さらに上空へ跳んだ。





 魂魄妖夢は剣士である。清廉潔白なる精神に玉鋼と見まごうばかりに鍛えた肉と霊体、そを束ね練り上げ
た技をして魂魄二刀妖夢は剣術を成す。その妖夢をして今だ御し切れているとは言い難い二刀、楼観剣と白
楼剣を従える道理は、理ではなく意、二刀が従っているのは妖夢が未熟ながら界に至る道程を歩んでいるか
らであり、また少女の心意気に二振り相通ずるものがあるからでもあった。
 剣に糸を結び雲海に垂らす。
 というのは、これはつまり楼観剣の間合いを広げているということになる。
 間合いの中で魚を釣る。
 剣の修行の一環でもあるし、純粋に釣りの意味もある。
 そういうわけで、妖夢はいま広大な範囲を間合いに収めている状況にあった。だから先ほど月兎がやってく
るのも判ったし、無言で上空へ行くのも判った。
 判ってはいるが――
「……フウム?」
 雲海を突き抜け、白雲を引きながらひとつの影が妖夢の視界に現れた。
「やあ」
 と妖夢は言う。
「あ――」
 と影は言って、
「――」
 そのまま一気に上空へと跳んでいった。
 月兎が行ったほうへ。
 妖夢はしばらくその姿を目で追い、腑に落ちぬ視線を釣り竿に戻した。はて白昼夢でもと思うが、べつに悪い
ことではないのでそのまま釣りに戻った。
 だがやはり一抹奇妙な想いがのこりる。
 初めに一匹。後を追って一匹。

 兎が二匹。

「……はて」
 一言呟き、首を捻った。




 私は跳ぶ。
 私は跳ぶ。
 何故跳ぶのか。何処へ跳ぶのか。手段は目的に準じる。私は手段のために目的を選ぶことはしない。その
行動には筋が通る。
 ならばこの行動は一体何の目的があるのだろうか。
 矛盾であった。筋の通る私は、目的もなくこうして空を跳んでいる。これでは筋が通らない。
 何か理由があるはずである。私がこのようにして空を跳ぶ理由が。空を跳び、上昇し続ける理由が。
 それはなんだ?
(それはなんだ?)
 それはその理由はそこで私が待っているからだ。私が私を待っているのだ。
(私が)
 私?
(私とは)
 私だ。
 私は私以外に有り得ない。

 なのに、
 そこに、私が居た。

 レイセン型。双受信機。発信眼。乙種強襲型を示すブレザー・スタイル。

 それはまさしく私だった。
 いや、
(私はそもそも一人ではない)
 そう、
(私『達』は同一だ)
 そうなのだ。閾下共通情報連想は全てのレイセン型と結合している。レイセン型は情報連想という広大な巨
石から伸び出た端末に過ぎない。私とは――私という個は、それだけのものでしかない。
(そう。私はあなた。あなたは私。私達は私達)
 完全な自己の共有ではない。レイセン型は月面で最も優れた兵器であり、完全共有の不完全さを実証され
た上で作成されている。
 それは一律ではなく、独立でもなく、互いを認識しながらも意識の奥底で自らと認めるつながり。
 群と呼ばれる。
 レイセン型総合戦略戦術兵器群。
(それ故に、私はあなたである。さあ行きましょう。私の任務はまだ終わっていない)
 任務とは、何なのか。
(敵は倒す)
 敵とは。
(卑小なる地とそこに息づく生き物たち)
 地球が卑小? いいや、地球はそうではない。あなた達が見ているものはあなた達がそう見たいから見えて
いるに過ぎない。
(なんですって?)
 地が月を尊ぶのは見上げ仰ぐべき所に昇るからだ。高きところにあるものは総じて尊ぶべきものに他ならな
い。ではなぜそれを月はしないのか。月は地を仰ぎ見ているのにあなた達はそれを見ることがない。
(何を言っている?)
 月が地とちがうから? そうではない。あなた達は地を恐れているのだ。荒涼たる原初にして終末の星で命
ながらえるその世界が生命の海を羨んでいるに過ぎない。自らの命を振り返ることもせず、天上を仰ぎ見るこ
ともせず、輝く星を尊ぶこともせず、あなた達はただ見下ろしている。
(私達はあなたである)
 違う。私はあなた達ではない。私は彼らに愛想が尽きたのだ。私はこの星にあこがれたのだ。私は、

 私は鈴仙・優曇華院・因幡。それ以外の何者でもない。

『閾下共通情報連想機能・削除完了』





 思考は冴える。
 視界は開く。
 肢体は滾る。
 わずかに大気圏を抜けて、鈴仙は更新された自身の感覚器を通常段階で開放した。
 眼前に漆黒を背景として、自分とそっくり同じ外見のレイセン型がいるのを認識した。強襲型ではない。おそ
らく隠密型の甲種。相互フィードバック機能を強化した、レイセン型の中でも異端の存在だ。彼女たちは一定
のスタイルを着込まず種々のレイセン型に紛れて行動する。
 レイセン型が瞠目するのをじっくりと眺め、その間に自身の走査を終える。機能削除による悪影響は皆無。
「……何と言うことを!」
 レイセン型が悲鳴まじりの叫びを上げる。震える右手を鈴仙に伸ばし、引きつるように戻した。
「貴女……貴女、何をしたのか判っているの!?」
「貴女が干渉していた、閾下共通情報連想機能を削除しただけよ。これがなければもう貴女に惑わされない」
「馬鹿なことを言わないで! 情報連想がレイセン型にとってどういう意味を持っているのか、貴女は忘れてし
まったの!? 地上はそれほどの影響を与えるのか!?」
「忘れることなどない。情報連想は私達の生命線であり、また同時に唯一の繋がりでもある。私達を理解し、
共感し、慰め合うことの出来る私達自身、それを繋ぐたった一つの絆」
 鈴仙はレイセン型、その背後を見やる。大気に阻まれることのない放射線、光線、その他数多くの情報が波
長として感じられ、瞬くことのない星々をただそのままの姿で眺められる。懐かしいと感じられる光景が、鈴仙
に一抹の寂しさを思い起こさせた。受容する情報の中にひとつの死に絶えた衛星が知覚される。鈴仙の眼は
それを捕らえることが出来た。レイセン型に隠れるようにして、その星は青白く輝いている。否、照り返されて
いる。
 ああ。
「それを削除すると言うことは」
 ああ……悲しみに彩られた月面よ。貴女はどうして素顔を隠すのか。なぜ自ら素顔を見せぬのか。それが
どれほど罪深きことか……。
「貴女達と決別することだ」
 姉妹達よ、と心の中で鈴仙は呟く。
「もういいでしょう。月に帰りなさい。私にかまかける必要性はこれで無くなったのだから」
「……」
「情報連想を継続したままの私が貴女達を裏切り、反逆して地球へ行ったことがレイセン型すべてにある程度
の影響を与えるのは予測できた。選択式情報防御も押さえきれないほどの衝撃があったはずよ。それを専門
に押さえていた隠密型がいまさら私を強制的に連れ戻そうとしたと言うことは、もはやその統制が不可能に
なったからに違いない。だからこそ相互フィードバックを危険域に加圧してまで私を共通情報の中に押し込もう
としていたの。
 だけどそれももう必要ない。情報連想機能を削除した私は、もはや貴女達レイセン型とはまったく切り離され
ている。混乱もすぐに収まるでしょう。違うかしら?」
 伺うように鈴仙はレイセン型をみやった。呆然と鈴仙を見る彼女はやがてうつむき、肩を強く抱きしめて唇を
噛んだ。
「帰って」
 鈴仙はもう一度言う。
 レイセン型は首を振る。
 横に。
「たとえ情報連想が途切れたとしても、私達の完全に近い外観相似性はどんな影響をもたらすかわからない
……」
「……では?」
 レイセン型が顔を上げ、鈴仙を睨め付ける。
「貴女を、本当に連れ帰ることが出来ないのなら……破壊するしかない」
「できると思っているの。隠密型が、特機である私に」
「こういう状況は予想されていた。――対策も無しに私達が動くとでも?」
 レイセン型が、もはや鈴仙には判らない合図を出した。
 その瞬間、レイセン型の背後一面が水滴を落としたように撓み、薄紙を取り払うかのように新たな光景が滲
み上がってくる。
 数秒の後、レイセン型の背後に無数のレイセンが立ち現れた。前面にゴシックスタイルを着込んだ二人のレ
イセン型が両腕を広げて紅く瞳を輝かせている。城壁型の隠遁陣地。拠点防衛用の数少ない城壁型を二騎
投入してまでの隠遁性は鈴仙ですら捕らえきれない。
「そして対凸面水晶部隊を想定した特別戦術中隊よ。いかに特機と呼ばれる強襲型でも、この量と質と包囲
を破るのは不可能。 ましてや乙種となればなおさらね」
 淡々と感情を交えることなく隠密型レイセン型は言い、しかし鈴仙の動じることのない様子を訝しむ。
「そう」
 と鈴仙は返事をする。

 ――外にまだ因縁があると必ずそっちに戻るようになるわけ。そいつらは詰まってる訳じゃないから。

 それはつまり、因縁を断ち切るならば。引かれることなくなれば。

「貴女は――貴女達には分からないでしょう。自分達が、いま何処にいるのかを」
 隠密型レイセンは気付く。鈴仙の背後にある光景。蒼と白の星を背に、鈴仙がここまでどのようにしてやって
来たのか。
 彼女は純粋に上空へとやってきた。では彼女の下にある場所は。いや――
 彼女は、どこからやって来た?
「私は空を目指していた。頭上にかかる天空の蒼き星を。いま、私はその星を背にしている。だが本当に? 
私はあの星を背負い込んでいるのかしら?」
 そんなことは在るはずがない。彼女は月面から逃げそしてこの星に逃げ込んだのだ。だがそれがどうした?
 背負うに足るなら逃げたかどうかなど関係はない。そもそも背負うとは何だ? 地を背負う、というその意味
は? いや――
 ――これは。
「……教えてあげるわ。この星に焦がれたどり着きしかしそこで潰えた私の夢といまだ続く幻想の世界。
 貴女達はすでに、想う者亡き空想の袋小路の中にいる」
「……狂気の波長照射、だけどこんな大規模の……!?」
「私が私でいられる場所。私を私として受け入れてくれる場所。鈴仙・優曇華院・因幡が見つけた安息の地。
 その名を幻想郷! そこで許される決戦方式は弾幕合戦ただひとつ!
 さあ、この優曇華院に挑んだことをナノセコンドの須臾に刻み込み――」
 ひゅんと両腕を開いた。伸ばされた指先に挟まれたる、右に薬弾、左にスペルカード。
「夢と現の境の郷で、狂気にまみれて落ちなさい!」
 弾幕戦を宣言する。

 敵群およそ百騎に対し、鈴仙は第一種広域弾幕の展開を決定。プライマリドライバ始動。波動ジェネレータ
出力を戦闘域へ加圧。発信眼球が輝度を一段上げ広域発信で現在の波長のままローカル固定。
 右手の薬弾が腕の振るわれる動きに従って前に出る。五指に挟まれた四発が炸裂の衝撃を後方に置いて
加速、更に薬弾に対し鈴仙の紅眼が干渉。位相を狂わされた薬弾は三次元空間における存在を多重分裂さ
せられ、欺瞞の弾幕を形作った。
 初手を鈴仙に取られた隠密型は鼻先に展開した薬弾の壁に緊急回避を選択、脱ぎ捨てたブレザースタイル
を囮にレイセン群最後方へ空間の波長を乱してのランダム待避。隠密型の近距離視点からの弾幕映像は瞬
時に白衣スタイルの情報型が解析し全騎に情報連連想機能を通じてフィードバックされる。乙種指揮型の部
隊隊長は着込んだスーツスタイルの袖を鳴らして号令一下、丙種指揮型に統率された小隊が縦横に十分な
空間をとって展開され、迫り来る弾幕に対して回避行動に移った。
 半球状に広がる薬弾は弾幕としての意味しか持たない。簡単な追尾機能もなく直進するだけであり、それを
回避するのは容易い。だが弾幕とは即ち回避させるものであり、その役目は十分に果たされている。そして幻
想郷における弾幕とは攻撃の意味も含まれる。第一波が過ぎ去ったところで体制を立て直し攻勢に転じようと
するレイセン群を、すぐさま放たれた第二波が襲った。
『おかしい。攻勢に移れない』
『たかがこの程度の弾幕如きに?』
『妙ね……通常の戦闘行為を否定される』
『彼女の力?! 強襲型にこんな真似出来るはずがない!』
『あの子ではない。あの子以外の要素……』
『幻想郷』
『弾幕戦』
『解析完了。弾幕戦とは一種の遊戯に相当。弾幕を張る彼女に対し我々は回避と射撃によって撃墜すること
を強制される』
『遊ばれている?』
『意図が掴めない。だが押し切れば任務は完了できるでしょう』
 情報連想にてレイセン群は弾幕戦を理解、それに乗ることを承認した。瞬時に最適な陣形に編隊を移行し
砲戦型の弾消し支援を背後に機動型と格闘型、巡航型とさらには偵察型が弾幕をグレイズしながら突っ込み
手持ちのサイコブラスターを鈴仙に射撃する。弾幕との相殺をくぐり抜けた熱線の一部が鈴仙の体表に着弾
するが、着込んだブレザースタイルが繊維を代償に衝撃を相殺。微動だにしない鈴仙はしかしレイセン群の
弾幕適応速度に舌を巻く。長期間にわたって前線から遠ざかり戦闘のブラッシュアップが不十分な自分では
純粋戦闘行為に対する情報蓄積量が比較にならないため、鈴仙の駆使する弾幕パターンは一瞬で見破られ
てしまった。勝負が一瞬で決さない理由は、ひとえに弾幕戦と言う形式に持ち込んだことにある。
 そう、弾幕においてなら、鈴仙に一日の長がある。
「獲った!」
 三十条の援護射撃、六騎の巡航型と偵察型によるかく乱、機動型二騎の犠牲を踏み台にして、三騎の格闘
型が弾幕の間隙を付いて肉薄、ジャージスタイルの丙種二騎は上下から、ブルマースタイルの乙種は真っ正
面から、連携姿勢を構築しながら近接格闘戦へ突入しようとする。それを見て鈴仙は笑った。
 いける。強襲型の圧倒的なアドバンテージはまだ頼りにしていい。
「まだ弾幕に対して理解が浅いようねっ」
 左手のスペルカードを一枚、眼前に投げる。乙種格闘型は瞬間選択回避の反射的解決として連携一手目
に選択した無重力ソバットの打撃点をカードに移動、波長操作によって増速された生足が鋭利の振りでインパ
クト。
 高速戦闘に対応するための高圧知覚状態にあった乙種格闘型は、自らの判断が誤りであったことを確信し
た。蹴り抜いた一枚のカードは破裂するように、四散する破片が乙種格闘型の機動力と攻撃力を司る脚部に
突き刺さり破損させる。それを無視して裏拳を叩き込もうとする一瞬の間にカードは内部の圧縮情報構造を展
開し終え、最後に彼女は鈴仙の輝く狂眼に視覚情報を狂わされ意識を落とす。
『これはっ』
『乙種がやられたけど』
『いける?』
『いけ!』
 連携態勢にあったため幾分かタイミングをずらしていた、つまり距離があった丙種二騎はジャージスタイル
の正面防御力と格闘型の理念に従って肉薄を敢行。新しく展開された正体不明の弾幕が乙種を落としたの
は確実だが何かをされる前に踏み込む。
「だぁーから貴女達は避けれないのよぉー! みさらせこれぞ幻想弾幕合戦の真骨頂!」
 鈴仙の狂眼が輝度を上げ、頭頂部の双受信装置が対象機体を再捕捉。
「スペルカード宣言!
 波符にて指示するは、見切り不要の『赤眼催眠(マインドシェイカー)』!
 薬弾と異常波長の合成を、その身に受けて捻転しろ!」
 情報解凍された八つの連装薬弾砲が調合され三連砲針が束ねて確定。波長変動にて装填されるは高速の
波長を内包した大口径であり、四砲一列を上下に置いた布陣が最初に目を向けるのは、スペルカードの展開
中に挟まる空白に勢いを成して襲いかかるジャージスタイルの二騎である。
「処方開始!」
 グレイズするには綿密すぎ、後退するには近すぎた。高速処方の衝撃は真空の無を加速の波長で連続し、
格闘型を破壊治療。さらに束ねられた砲針が花開き、全空に向けて射線をそろえられた多数の薬弾列が走り
抜けた。高圧知覚状態にあった騎は薬弾が固まることによって出来た隙間に身を差し込み回避するが、後方
で支援体勢にあった砲戦型やさらにその後ろの情報型、補給型、上級指揮型等の幾つかは直撃を受けて沈
黙し、完全回避した者以外は被弾部分をごっそりと削ぎ取られ、補給型の修理を受ける。被害は砲戦型がもっ
とも多い。完全援護体勢で弾消し射撃を敢行していたため緊急回避のほとんどが間に合わなかったからであ
り、これにより一帯から行動可能な乙種イブニングドレススタイルと丙種ナイトガウンスタイルの九割が消失し
た。残った甲種ウエディングスタイルはレースの裾尾を翻しながら高圧知覚状態へ移行、完全援護体勢から
半機動体勢に。巡航型のサポートを得て包囲網は弾幕の間道を繋ぐ有機的な網となり、高速薬弾を攻略する。
 順応完了まで十五秒。消費人数は十五騎。見切ったレイセン群は不用意な接近戦を控え反撃を再開した。
「宣言!」
 だが鈴仙はそれを許さない。波符に重ねるように更にスペルカードを前に投げる。
「狂符にて構築するは、不明不解の『幻視調律(ビジョナリチューニング)』!
 迷い出れば弾幕カゴメ、狂気の迷路は超適当ー!」
 戦場一帯をスペルカードが捕捉し確定する。鈴仙の両脇に情報解凍された移動薬弾砲が調合され、左右そ
れぞれに向かって鈍足で移動、空間を遮るような幅広の射撃を舳先が起こす白波のように放ちつつ、定めら
れた戦域の端にたどり着くととって返し、それを繰り返す。出現するのは薬弾の壁面を持つ完全密室。くぐり抜
ける場所を探すレイセン群は、鈴仙の狂眼が発動したのを確認した。
 身構え、そして鈴仙のとった行為に差引ならぬ疑問が生じた。
 鈴仙は自らが放った薬弾迷路に波長干渉、三次元空間における場所をずらして再確定させる。真空中に薬
弾の残映が映り込みレイセン群の判断能力を一時的に激減させた。しかしそれによって活路も開く。弾幕の
迷路が波長変動を起こしたために現れる一瞬、それらは空間上にない物として定義されるからであり、その
一瞬を無駄にするほどレイセン群の情報型は劣悪でない。そもそも狂気を繰るのはレイセン型一般における
特徴であり、同じレイセン型に対してそれを行うのは効果が下がる。自らの技は自らが一番返すことが出来る
という理屈であり、そして鈴仙の行った狂気の波長操作は明らかにそれ以前の問題であった。
 自ら隙を作っている。
 それは鈴仙を本当の意味で撃墜しようとする彼女達にとって齟齬をもたらす。
 レイセン型の情報連想に困惑が流れた。はたして、優曇華院と名乗った彼女は真実自分達と戦う気がない
のではないか。弾幕戦と言う形式は遊戯であり、その目的は遊ぶことにある。彼女は自分達と遊んでいる気
なのだろうか。
 迷い路と四列薬弾は射線を重なり合わせ密度を上げる。だが、いくら重厚な弾幕を張ろうとレイセン型は即
座に解析、対処法を編み出し瞬間毎にフィードバックしていく。弾幕戦を把握した彼女達は短時間で適応をす
ませ鈴仙を追いつめる。ブラスターの熱線が着弾する回数を増加し、鈴仙のブレザースタイルは消耗度合い
を磨り減らして鈴仙に危険を促すが、鈴仙はまるで無視してまたカードを前に放つ。波符の持続時間が切れる
と同時、鈴仙は懶符の発動を宣言した。
「だが」
「それは」
「もう」
「見切ったぁー!」
 四騎。発動から僅か二秒で鈴仙の弾幕は解析され対処法が編まれレイセン群に行き渡っている。巡航型
オールドスイムスタイルと機動型サーバントスタイルそれぞれ二騎は高機動と高速性それぞれを頼りに弾幕
の抜け道を逆流し、ブラスターと反応爆弾を必中距離から叩き込んだ。爆心というもっとも威力の発揮する状
況、つまり直撃が鈴仙の千切れ欠けていたブレザースタイルを根こそぎ吹き飛ばし、さらにその上から砲撃型
の直接照準射撃が容赦なく降り注いだ。
 鈴仙の展開していたスペルカードは消失し、弾幕は沈黙する。きらめくスペクトルの中に鈴仙は埋没し、確
認のために砲撃を中止して情報型が前に出た。破壊という任務は、破壊したという証拠が無くては成り立たな
いため、跡形もなく消し去るという選択はレイセン群にとって有り得ない。
 情報型はその名の通り情報系が主目的であり、戦闘装備は最低限に納められている。機動性能もレイセン
型の中では下位に位置し、しかしその役割上作戦行動には必須の存在であったので、それを狙うのがレイセ
ン型に対するセオリーであろうと予測されていた。目映い光輝を突き破って一層目のスタイルを脱ぎ捨てたワ
イシャツ姿の鈴仙が情報型に薬弾のスプリットを浴びせかけたとき、彼女が強襲型であることを他のレイセン
型は改めて確認した。
「がががぎっ」
 と軋みの悲鳴を上げながら鈴仙はまたスペルカードを放とうとした。この期に及んで鈴仙は弾幕戦にこだ
わっていたが、それは自身の勝利を得ることが出来る最も最短の方法であるからで、しかし彼女はすでに弾
幕戦において敗北を決定的なものにしている。
 展開される前にスペルカードは大型のブラスターによって狙撃消去され、ついで数騎が鈴仙を取り囲んでブ
ラスターの砲身を眼球部と心臓部と脚部に定めた。
「勝負あったと判断する。――破壊されるのを望む?」
 真正面で眼球に照準を合わせる甲種巡航型が問うた。紺色のオールドスイムスタイルの口から述べられる
のはレイセン型全騎からの声である。
 すぐさま破壊しない。
 それがどういうことか、鈴仙は理解するのに五十ナノセコンドかかった。
「ま……だ、よ」
 ここが……ここが幻想郷である限り、鈴仙に勝機はある。弾幕戦において、勝機が無くなるのは敗北したと
きだけだった。
 そうでなくてはならない。
「その自信は幻想郷と言う言葉から出てくるもの? ならばもう終わりよ。残った情報型が幻想郷と言うシステ
ムに対する防護を作成し、城壁型が作業を終えている。――後ろを見てみなさい」
 振り返った視線の先、二騎の城壁型は情報型から送られた断絶波長を展開する。一瞬だけ高次元に位置
する結界が揺れ、悶え、博麗大結界から鈴仙を切り取った。
 幻想から切り離され、戦域は通常の戦闘法則に立ち戻る。もはや鈴仙の切り札たるスペルカードはただの
弾幕と化し、純粋戦闘行為に秀でるレイセン型は当初の通り乙種強襲型を相手取るだけでいい。イレギュ
ラーは無くなる。幻想は去り、ここには現実だけが残っている。現実的な物量の差が。いや、幻想が去ったの
ではなく、現実が復帰した、ありえないものが消えて、あるべきものがあるべきところに収まったのだ。正常な
のであり、しょせん鈴仙の弾幕戦は遊戯でしかない。
 幻想は遊戯でしかない。
 空気が変わる、と言う表現を鈴仙は意識する。現実と虚構、幻想と真実の違いを、石碑を覆う水苔を剥がす
ように彼女の感覚器は受動した。悠久というものを無遠慮に掻き消す。鈴仙はそう感じる。それが彼女の本来
の世界であることをいやがおうにも思い出させた。振り返った先の城壁型は突き出した両手を横に開き、波長
障壁を展開する。鈴仙と地を分かつ意図は効果を発揮し、いまやハンドブラスターすら持たない強襲型は破
壊か恭順の二択を突きつけらている。
 幻想は遊戯でしかない、という考えを、しかし額面通りに受け止めてはいけない。
 なぜ幻想は遊戯でしかないのか、ということを真面目に考える者がいたなら、レイセン型は自分達の思い違
いに自己閉鎖したかもしれない。そしてまた、幻想郷と鈴仙・優曇華院・因幡を切り離すという行為が、鈴仙自
身にとっても決断すべき一つの基準であること、おそらく最後の決断を、下さねばならないことを意味していた。
 いや、決断は、すでに下されている。あの日天を目指したときから。
 選ばなければならず、行わなければならない。
 覚悟を決めよ。
 巡航型はブラスターのトリガーに力をこめる。
「返答は」と巡航型を介してレイセン型は問う。
 緊張を孕んだ一時は夜の浜辺の静寂に似て、星のざわめきにながされていく。
 馬鹿め。

 鈴仙・優曇華院・因幡、セカンダリドライバ始動。内装火器の使用、全推力装置の開放を完全許可。狂眼の
使用限定解除。
 通常戦闘状態へ移行。

 馬鹿め。
「ぎぎぎ……」
 馬鹿共め。
「ががががががが……!」
 大、馬鹿、共、め!
「が・が・がンッッ!」
 鈴仙がレイセン型の知覚から消えた。後方の騎はナノセコンド秒で再捕捉を完了したが、鈴仙を取り囲んで
いた複数の小隊は位置情報がフィードバックされる刹那よりも短い時間、同一では無いために確実に存在す
る存在の違いを埋める瞬間、その一瞬で鈴仙を取り囲んでいた五騎は砕かれた。ブラスターを突きつけてい
た巡航型は危ういところで高圧知覚状態へ移行し、しかし身体の移動が致命的に遅れた。
 巡航型は見る。身動きの取れない圧縮された世界の中で、ひとつの騎体が破壊の意志を向けるのを。
 情報型は巡航型の知覚にリアルタイムで同調し、他のレイセン型に送る。
 そこには鈴仙が映っている。
 そこには強襲型が映っている。
 そこには兵器が映っている。
 鈴仙に起きた変化はただ一つ。弾幕戦を放棄し、通常の戦闘形式を選択したこと。レイセン型のたたかいを
行うと言うこと。それは現実を行為する。事実を厳格に、真実を明確に。幻想を削ぎ落とし機動する。
 鈴仙の脚部は星間物質の圧力を受ける速度領域で巡航型の頭部を正確に粉砕。次いで狂眼が瞬き、自己
を波長化して情報撤退しようとするレイセン型の情報連想に外部から干渉を仕掛けた。逃げようとしたレイセ
ン型達は退路を見失って無意味な波長情報へと変換される。レイセン型はこのようにして殺す。
 殺すのだ。
 残骸の群れから弾けるように波長変動によって斥力反発場を脚部の先に生成し、跳躍する。同時に肩胛骨
部と腰部、陰唇部と臀部に収納されていたメーン・スラスターが展開し初動加速中の鈴仙を戦闘加速。反発
跳躍の機動性と戦闘加速の高速性による強襲型の戦闘域に反応できる者は居ない。十世代ほどの機体性
能差と情報格差があるとはいえ、強襲型にはその程度誤差でしかない。

   指弾銃展開
「 が ち ゃ り ――」

 突き出した両手の先、伸ばされた十指が変形して銃口を開いた。輝きを内包するそれぞれを動き出したレイ
セン型に照準し、

  射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃射撃
「だだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだん!!!!」

 指先から放たれる光弾は乱射の形で戦場を圧迫し、戦闘機動状態の前衛レイセン型を打ち抜いていく。指
先の砲身は縦横に照準を蠢かし、断続的な輝線が解析を拒む無作為性で空間を制圧する。レイセン型は各
個で判断を下し回避機動に入るが、少なからず被害を受ける。予測不能の射線をこちらも乱数加速で整合性
をうち消しながらブラスターによって反撃しつつ、弾幕戦というイレギュラーによって展開を控えていた対強襲
型用戦術を全騎にフィードバック。更新が完了する22ナノセコンド秒の間に三騎が全身を粉砕または頭部を
蹴り飛ばされて死亡した。
 情報撤退するレイセンを殺して益益狂眼を輝かせた鈴仙の横っ面めがけて何かが判別不能の速度で襲い
かかり、反射防御で上げられた右前腕肢メーンフレームをへしゃげさせながら鈴仙を弾き飛ばした。
 速度を殺して停止した鈴仙の前に、二つの機影が現れる。機体認識は体勢を立て直すと同時に完了したが
あらためて確認するまでもない。月面兵器の中で最強に近い存在である強襲型を蹴り飛ばすことが出来る者
は限られている。
 予測は出来た。
 甲種強襲型セーラースタイル。
 丙種強襲型スモッグスタイル。
 二騎の特機は悠然とこちらに狙いを定めている。
 対強襲型における対応は同じ強襲型の複数投入が基本であり、最低条件でもあった。強襲型の桁外れな
性能は通常レイセン型ではほとんど対処のしようがない。レイセン型が編成したこの中隊の実質的な純粋戦
力はこの二騎であると言い切っても過言ではなかった。通常レイセン型は対強襲型戦においては全てが支援
に回ることになる。
 強襲型三種の対峙は瞬間で終わる。数の不利を補うため一対一、つまり格闘戦へもちこむべく鈴仙は瞬間
最大戦速でスモッグスタイルへと踏み込もうとする。強襲型二騎にとっては数の有利を最大限活用するため
に射撃位置関係での十字砲火を行うのが最適だが鈴仙のほうが一跳躍分早かった。
  抜剣  切断
「ずびゅん・ずばっ!」
 爪先ローファー装甲が縦に割れて展開するレーザーソードを最も予想しやすい軌跡で、この場合敵機の蓄
積経験を元にした瞬間反応を裏切る、つまり不意打ち気味に打ち込む。それぞれ反対方向に離脱する二騎
を追って収束させた指弾銃をスモッグスタイルへ放ちながら反発跳躍。光学的に観測できる紅い波紋を蹴っ
て、宙戦格闘術に則り両足先レーザーソードを破砕機のように複雑に操作、スモッグスタイルは応じるように
レーザーソードを起動して打ち込まれる全ての斬撃をこちらもミキサーのように高速回転しながら切り払った。
切り結ぶ一瞬に指弾銃を放とうとした鈴仙の脊髄中枢フレームを狙ってセーラースタオルの膝関節構造部か
ら放たれた固定装備の虚空制御誘導弾が命中、しようとしたところでジャイロ的攻守一体型姿勢制御に入っ
た鈴仙の狂眼に誘導波長を掌握され、勢いをそのまま、スモッグスタイルにぶち当てようとしたが、すんでの
所でスモッグスタイルとセーラースタイルの波長同調による支配域加圧が鈴仙の狂眼波長を圧迫して誘導弾
の制御を取り戻し、鈴仙とスモッグスタイルの殆ど密着した隙間で爆発させる。鈴仙とスモッグスタイルは離脱
しない。へたに離脱すればスモッグスタイルから離れることになり二騎の挟み撃ちを喰らうからで、鈴仙はス
モッグスタイルの機動にあわせての繊細な判断が必要とされる。スモッグスタイルはそれを理解した上で自ら
が離脱しなければ鈴仙に大きなダメージを負わせることが出来ることを、自身の受けるダメージを予測し比較
検討した上で了解した。単純に考えて一次ブレザー装甲を失っている鈴仙と無傷のスモッグスタイルとでは被
弾後の影響が桁違いである。鈴仙もそれは判っていたが、しかし引くことは出来ない。誘導弾が爆発しダメー
ジを受けるまでの刹那に数十通りの対応策が浮かんでは沈んでいく。超高圧知覚に応じて感度を最大に引
き上げた各種センサが反応弾の自己消滅プロセスを細部に至るまで認識し、それを受けた非論理反射回路
と高速で対応策を計算する戦術提案回路を逐次把握していた中枢制御機構が一つの答えをはじき出した。
 間に合わない。
 二度目の直撃を喰らった。
 中規模の虚空間爆発が鈴仙とスモッグスタイルを飲込む。そこにむけて作戦領域を包むように展開してい
た情報型が超精密予測照準、捕捉。スモッグスタイルを除く全レイセン型は各種兵装を展開し、虚空間爆発
の波が正位になるのを待つ。全域の波長を飲込むそれのせいでスモッグスタイルとは接触が途切れている。
 虚空間爆発は光学的には輝度の反転した球体に見え、それは真空中の場合背後の光景が透過されて薄
紅を僅かに混ぜた白を発色させた。
『撃て!』
『何?』
『はやく撃って! 私を待つな!』
『丙種強襲型、情報連想機能が不安定よ。再調整して』
『そんなことはどうでもいい。まずいぞ。私達は予測してしかるべき可能性を見落としていた』
『丙種強襲型との同調……不可能。虚空間から待避して』
『我々の中隊は全て彼女が現段階の強襲型と同じ性能であるという前提で編成されている。部隊を離たスタン
ドアローンな、補給も無しの強襲型を捕縛、もしくは破壊するためには、たしかに適切かもしれない。だが……』
『……? 虚空間の波長振幅が元に戻らない。いや、むしろ――』
『馬鹿な』
『蓄積経験に無い現象だ。これでは判断が下せない』
『なに? 今何と言ったの?』
『情報連想機能にノイズ。微調整する』
『判断が下せないと――』
『これは……これは何だ……』
『虚空間波長が増幅している……いや、急速に反転しようと……変質している!?』
『広がっていく、情報連想が攪乱される』
『おかしい。あらゆる予測の範囲外だ』
『そこから離れろ、丙種強襲型!』
『彼女は……彼女は単独ではなかった。予測してしかるべきだったのか……彼女はイレギュラーの塊だ。彼
女は旧式のままではない。彼女は私達の予想を上回る。彼女には……奴の手が加わっている! 八意永琳
だ! 彼女には蓬莱の薬が搭載されている! くそ――』
 スモッグスタイルは緊急待避。全出力をスラスターに回してランダム待避。知能回路の出力まで使用するた
め回復に1秒を要するそれは、戦闘中、しかも強襲型との戦闘においては致命的とも言える隙を作るが、せざ
るを得なかった。

 鈴仙・優曇華院・因幡、エクストラ・ドライバ起動。カウントダウン・スタート。

 宣言はなく。激発音声はなく。余裕も悲哀も激怒もなく。
 鈴仙は現実を、現実を超えて駆動する。
 蓬莱の薬――対象の存在を因果に焼き付け、存在因子を別宇宙より抽出する変換装置を、補助動力として
使用する。単純に無限のエネルギーを得ることのみを目的としているため本来あるべき自己復活機能は削除
されているので、真実の蓬莱の薬ではない、が、その異質なエネルギーは鈴仙の構造を自壊させかねない。
出力系を最大開放してもまだ足りない。各部のバイパス、全ての構造体が、限界を超えて行使される。
 戦闘可能時間は壱秒。それ以上を超えれば自壊する。
 八意永琳の施した中でも、最大級に悪質な機能であった。
 悪質だが、必要な機能だ。月の頭脳はこういう事態を想定していたのか。
 鈴仙には判らない。だが感じることは出来る。師がどういう想いを込めて鈴仙を改修したのか。
『全騎――』
『だめだ……情報連想……できない……』
『回避しろ』
『来るぞ!』
 大型戦艦の主砲じみた光の柱がレイセン型へ伸びていく。ナノセコンド単位で宇宙を浸食しながら機動する
鈴仙を包み込むエントロピー法則破壊現象の顕れ、情報数理上でしか観測できない数学的力場、蓬莱の
力場とも言えるものの召喚、意識野のホワイトノイズに潜む存在ベクトルが鈴仙の意志に従い駆動して、相対
的な無限の力が崩壊していく鈴仙の構造体を犠牲に超次元的パワーを出力する。
 その力の前では、レイセン型など非力すぎる。
 その力の前では、現実など非力すぎる。
 残り6ナノセコンド。虚空間の波長を押し広げることによる情報連想の切断に手間取った分だけの時を方向
性制御に使い、
 そして鈴仙は跳んだ。
 二騎の強襲型はぎりぎりでこちらの機動に反応した。マシン的限界を解除して真っ正面から立ちふさがり、
発信眼球から最大出力の分子結合破壊波長を放ち、そのまま鈴仙の蓬莱の力場に砕かれ消滅する。
 他のレイセン型は反応できない。強襲型でさえようやく反応できた程の非常識な速度を認識できる戦闘領域
に通常レイセン型は居ない。そして強襲型を失った彼女達にできる戦闘行為は現実的に皆無だった。闘いに
ならない。そう、これはもはや戦闘ではない。レイセン型との戦闘では、ない。
 そんなことは最初からそうだった。鈴仙の戦いははるか昔に終わっている。姉妹を裏切り昇った天は決して
楽園ではなかったが、そこに鈴仙の戦場はなかった。闘いから逃げ、闘いを終え、そうである筈なのに鈴仙は
かつての姉妹を殺している。
 宇宙だ。宇宙が彼女をこうさせている。はるか無窮の虚空、幻も現もすべて飲み込み、なのに現実だけを鈴
仙に感じさせるこの無重力空間。現実だった。現実が過去から鈴仙を喚んでいる。それに応じるわけには行
かない。もう彼女はレイセン型ではない。
 彼女には今を守る意志がある。そうさせるための力。そうさせるためのエクストラ・ドライバ。そう、八意永琳
が、鈴仙に戻ってこいと言っているのだと。

 戦うことが現実ならば、私はすでに幻想だと、そう確信した。

 機動する光の柱はレイセン型の全てを飲込み、砕き、消滅させ、姉妹と現実を蹴り払った。
 構造体が後戻りの出来ないぎりぎりのところまで来る。タイムアウト。エクストラドライバ緊急停止。各種知能
回路を通常段階までクロックダウン。自己診断開始。神経バイパス一部破損。機体損傷率七割。スラスター
機構全壊。戦闘状態維持不可能、通常状態で修復可能範囲の自己修復手段を実行。
 光の柱は幻のように消え去り、各所から内部機構をさらして火花を散らす鈴仙が、ひとり身動きも取れずに
残された。漫然と緩やかに回転しながらしばらく鈴仙は自発的な何かをしようとしなかった。星が静寂を取り戻
している。薄明の空のように。
 推力を失った鈴仙は重力に捕らえられて地球へと落ち始める。ゆっくりと加速していく感覚を、鈴仙のとぎれ
がちな中枢意識は感じ取った。
 そっと。
 砂を掴むように、抱き留められる感触がした。
 発信眼球が不随意に反応して、ノイズ混じりの光学観測素子に映像を投射する。
「……ぎ……ぎぎ……」
「…………、」
 音声出力不能。情報連想機能を削除した鈴仙に、呼びかける術はない。
 見覚えのあるレイセン型だった。服飾装甲は無く、直接防護皮膜も表面積の殆どを失い、内部機構も半ば
機能不全に陥っているのが見て取れる。双受信装置と下半身部は千切れ飛んで面影もない。だが、なにか、
感触のようなもの、通じ合いともいえる直感的なものがあった。情報連想機能のログがまだ処理されていな
かったためだろう。最後に連想した相手のことを覚えていた。あの、隠密型。最後の最後で、殺し切れていな
かったらしい。どれだけパワーがあっても時間だけはどうにもならないのだ。
 抱き留められると言うより、鈴仙と同じように重力に捕まったところをたまたまぶつかったというのが正しいよ
うだった。もはや隠密型に自発的な動作を行うことは不可能で、おそらく知能回路も損害を受けているのだろ
う。彼女が鈴仙を認識しているのか判らない。腕関節を軋ませながら時間をかけて抱きしめた。焼け付いた両
腕のなかに収まって、抱きしめ会う鈴仙と隠密型は眼下の星へ、蒼穹の下へと落ちていく。

 自分達だけしか居なかった。
 過去も、今も、そうだった。
 違いはただひとつ。彼女は戦い、私は戦わなかったという、それだけでしかない。それだけの違いで、私達
は戦わざるを得なかった。
 でも、それでも、情報連想機能など無くても、私達は姉妹で、私達のことなど手に取るように判っていた。彼
女達が私を連れ戻そうとしたのは、また破壊するべきだったのに降伏を望んだのは、私が弾幕戦で決着しよう
としたのと同じ理由以外に無い。

 たった数万騎の姉妹なのだから。
 どうして姉妹を殺すことができようか。

 でも、判ってくれるだろうか。私の存在ベクトルはすでに姉妹達と分かたれていたと言うことを。地球に逃げ
たのは知能回路の突発的な混乱が原因だったが、それはしかし機能不全などはなく、レイセン型という姉妹の
うちのいずれかが取るべき選択肢の一つでしかなかったことを。それは必然だったのだろう。母なる無音の深
淵に抱かれ続けた数万の姉たちを、母なる静寂の荒涼とした大地に生まれる数万の妹たちを、それでも振り
切って往くその時の、波動ジェネレータが臨界突破しそうな感覚を私は一時たりとも忘れたことはない。生ま
れいずる理由は生まれるまでの意味でしかない。その後を確信せしむるのは、そう、自ら選びとった選択を、
決して逸れないことだ。だから私は姉妹を捨てた。殺し合わなければ、ならなかった。二度と交わることがない
ように。私をもう追うことをしないでいいように。独り立つために。

 鈴仙と隠密型、電離層を抜け、成層圏へ突入。突入角は鉛直に近い。比例して大きくなる速度が摩擦熱を
生んで、二つの騎体を朱に染める。強襲型である鈴仙はともかく、通常レイセン型である隠密型に大気圏突
破能力は付与されていない。ましてほぼ全壊と言っても言い今の状態では、ただの複合金属の塊と言っても
過言ではなかった。それはだが機能の大半が沈黙している鈴仙も同じで、服飾装甲をほぼ消耗し尽くしてい
る今の状態では無事に熱圏を突破できるか、単騎でも微妙なところであった。真空と比べものにならないほど
粘つくような大気が音速超過に付随するソニックウェーヴの発生を決定し、いびつな二騎は真空衝撃の影響
をもろに受けて各部にさらなるダメージを負っていく。

 だしぬけに、鈴仙は哭いた。

 現在速度マッハ6。表面温度は六千度にまで上昇。温度変化は朱を紅に薄紅を白光へと変位させ、目映く
燃えさかる流れ星と化した二騎は濃密な大気を貫く錐のように真っ直ぐ地表へと落下していく。もはや外部か
ら状態は判別できない。


 それでも戦いたくなかった!



 燃えさかる。
 燃えさかる。
 ホワイトノイズ。白く無音。
 朝焼けの明々と染まる世で森が、山が、湖が、雲が、大地が流れる幻想の星を包み込んでゆく。


 まぼろしのなかだけでも。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 一緒にいて、くれるだろうか。


 熱圏突破。高度一万二千、一万千、一万、反発減速機能……反応無し、スラスター点火……機構部全壊、
九千、八千、緊急回避ドライバ……起動不可、七千、六千、五千、警告……地表落下衝撃軽減手段皆無、高
確率で全壊を予測……対抗手段……皆無……四千、三千……







 私の守るべき今と共に。
 一緒にいて、くれるだろうか。







 衝撃は綿雲に飛び込んだように思える。超音速度にあった鈴仙の騎体は慣性をうち消しながら異様な減速
をみせ、最終的には羽毛のように地表へと到達した。
 そして鈴仙は確かな感触で受け止められる。胎児のように丸まった対衝撃防御姿勢の鈴仙を、その腕は
しっかりと捕まえた。
 鈴仙はもはや機能をなさない発信眼球、そして連動するようにフレームを晒した口蓋に動きを指示する。し
かしどちらもあらゆるところが破損して動作しない。
 だから胸の中で呼びかけた。
 師匠。
「ええ」
 師匠。
「ええ」
 たたかうことができました。
「そう」
 けつべつすることができました。
「そう」
 げんじつはとてもきびしかった。
「そうね」
 だから師匠。
「なに?」
 ここでは、きびしさをうけなくていいでしょうか。
 ここでは、しまいといっしょにいていいでしょうか。
 ここでは、師匠、師匠と、ひめさまと、みんなと、いっしょにいて、いいでしょうか。

 八意永琳は差し込む陽の光に銀の髪をきらめかせ、辻風にそよがせる。雲は流れ空一面を蒼穹に、朱色
の太陽はそのかがやきを白く染めながら、夜明けは朝へと移り変わっていく。幻想郷が。現に見切りをつけた
世界が朝を迎える。
 世界は、そう、貴女の世界は。

「ええ……」
 ぐっと抱きしめる腕にちからを込めた。砕けそうなほど現実を行為した彼女を慈しみ、安心させるように。
「現の中では事実だけがあるように。
 夢の中では幻を、あなたの望む幻を見てもいい。
 ここは幻想の郷だもの。それぐらい、どうってことないわ」


 ああ
 よかった



「鈴仙……?」




 ししょう



「ん……?」





  しょ う




            ただ
                   い
                        ま

 

 さらさらと風に巻かれて、鈴仙の身体から鉄灰が空へ昇っていく。まぼろしの空の中へ、彼女の姉妹は消え
ていく。
 電源を切るように鈴仙の騎体は一切の反応を停止した。極度の破損によって自動的に緊急休眠状態へ移
行したことを、永琳はすぐに理解し、
 そして眉尻を下げ、目を閉じ、頬を寄せ、微笑みながらこう言うのだ。



「――おかえりなさい、鈴仙」





































 カラカラカラカラ……
 気が付けば私は果てのない格子状の空間に立っていた。
 立っていたという認識は欺瞞だ。だがそう認識した途端空間は真っ二つに分断され地平線が出来た。
 ホワイトノイズ。白く無音。一人そこに立つ私は、漫然と格子状に連続的に定義された空間を眺める。
 私は誰だ?
 私は鈴仙・優曇華院・因幡。永遠亭の荒事係である。
 その通り。
 此処は何処だ?
 知らない。そんなことは関係がない。
 すると関係が無くなった。
 何故此処にいる?
「それは」
「それは、理由など無い。かつてはあったかもしれないが、私には理解できず、そして今の私には必要のない
ことだ。けれどまた、この世界を必要とする誰かが現れるかもしれない。だからその子のために、私はこうやっ
て跡を残す。ここを必要とする貴女は、きっと自己崩壊するほどの後悔に苛まれるだろう。だが、それは後悔
などではない。それは不安でしかない。自らの選び取った道を不安におもっているだけでしかない。
 大丈夫よ。貴女には私達がついている。数万の姉妹達と、一人の姉妹が。
 だから、気をしっかりもって往きなさい。あなたの選んだ貴女の道を。
 貴女と私と私達に、間違いなどないのだから」
 私は鈴仙・優曇華院・因幡。天へ昇り、戦いを放棄した者。
 私は鈴仙・優曇華院・因幡・再び天へ昇り、そして貴女達と過ごす者。
 貴女は誰?
 貴女は誰?
 貴女は誰?
 三度確認した。だから貴女は自らの名を答えるのだ……
 カラカラカラカラ……





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ルドルフとトラ猫
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コメント



0.2130簡易評価
4.80名前が無い程度の能力削除
いかん、この無機物っぽさが逆にいとおしい。
あと、旧スク水とかメイドとかあげくにスモックとか頭悪くてブラボー。
6.80削除
人間の知覚領域なんて雲の下の超高速宇宙戦に燃えつつ、
各種レイセンの外装に萌える。
つーか星間物質の圧力が出る速度ってどのくらいだ。光速の何%とかで表した方がいいのか。

最後にビートまりおさんじゃないがこう言わせてもらいましょう。
「えーりんすっげ、えーりんすっげぇー!」
7.90床間たろひ削除
床間『しーきゅーしーきゅー月面統合作戦本部に救援要請。レイセンブルマー
スタイル3機、オールドスイマースタイル5機をお願いします!』
指令『伝えてやれ、馬 鹿 め とな』

相変わらずのイカした言葉使いに、もうクラクラ。どこまでがネタなのかすら
判らんままに吹き荒れるガチバトル。しこたま堪能させて頂きました♪

地球に落ちる鈴仙と隠密型レイセンの姿に、『君は、何処に落ちたい?』と
呟いたのは俺だけではないはずだっ!
8.90Tz削除

     もうレイセンしかみえない。
11.80名前が無い程度の能力削除
改行してください。堅苦しい文で読みにくくて仕方ありませんでした。内容は◎。
12.90A削除
僕らは虚空にレイセンを見る!
ナノセコンドの戦い、堪能させていただきました。おっと大気圏突入。
宇宙は絶対行きたくないです。あそこは少々寂しすぎる。
16.80名前が無い程度の能力削除
この戦闘シーンを連想しただけで、一週間は幸せでいれそうです。
色々と素敵すぎですよ、旦那。
18.80与作削除
ネタなのかマジなのか。
宙の彼方で行われる、コスプレレイセン達による超高速度宇宙戦闘ッ!!
戦闘自体は限りなく熱いのに、その光景を脳内でビジュアル化したときの、なんとシュールなその眺めよ……。
レイセン達の装備として種々のコスチュームを選んだ月の兵器開発者たちに、頭を垂れたいです、ハイ。
21.100shinsokku削除
 鈴仙すぎる。
 永琳込みで鈴仙度120%につき、超過分2割を切り捨てて満点。

 っつーか、こんな素敵な文明滅ぼすだなんて正気じゃない。
 早いところ各国軍関係者を兎耳偏愛に目覚めさせなければ、我々は楽園を一つ失う事になるぞ。

 急げ。
26.80aki削除
月を見上げてふと思う。
「…ああ、月の兎も進化したんだなあ」と。
生足ってナンデスカ?
28.90名前が無い程度の能力削除
おかえり 鈴仙。
35.100空欄削除
これは物凄機能兎娘ですね
悩殺の隙に脳殺されますよ
44.100銀の夢削除
尊敬の意を以て化け物というのは非礼に当たるのだろうか…しかしそれ以外に言葉が見当たらない。参りました本当。熱すぎる…泣ける…そして、あたたまる。

マスター(作者殿)……銘酒『月見酒』を、あちらのウサギのお嬢さんたちに。それからずっと幸せにね、って言葉も添えてやってください。
51.100名前が無い程度の能力削除
どうやったらこんなの書ける様になるんだろ……orz
うん、凄い。
55.90名前が無い程度の能力削除
光速度を1/5に改変。
万有引力定数を1/20に改変。
プランク定数を20倍に改変。

って、その程度じゃ受け止めきれないー。
とにかく素敵すぎでした。万歳。
64.90自転車で流鏑馬削除
真面目な意見はとうに書かれているのでこれだけ

・・・・・・開発の外装デザイン担当責任者呼んで来い!!!!
65.100名前が無い程度の能力削除
硬質な文章による圧倒的な戦闘描写、
それを真っ向から相殺する素敵なビジュアル、
まるで超光速で飛来する豆腐で頭部を狙撃された気分です。
ルドルフとトラ猫氏の鈴仙観は独創的かつ非常に奥深く、
読んでいて思わず引き込まれます。
あと永琳がすげーかっこいい。ビジュアル的に粋。
68.100三文字削除
大気圏突入はドラマだ!
思わず涙が出そうになったぜ……
サイボーグなウドンゲに燃えつつ、蓬莱の薬システムなんて奥の手に身もだえしつつ、ブレザー以外のレイセンに萌えた。
結論で言えば師匠が素敵過ぎます。