Coolier - 新生・東方創想話

東方童話 『人魚姫』

2006/01/08 11:59:25
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むかしむかし、とある海に、人魚が住んでいました。
人魚とは、半分人間で半分魚な、そんな生き物です。
その人魚の王様には六人の娘が居て、みんな美しい娘でした。
その中でも末の娘は、より一層、美しい娘でした。

    妖夢「…いくら私が半分だけ人間だからって、人魚の役は無理があるんじゃない?」
     紫「えら呼吸も出来ないようじゃ、人魚失格よ。」
    妖夢「紫様……もといお父様、人間でも幽霊でも、えら呼吸は出来ません。」

そんな末の娘は、人魚姫と呼ばれて、大切に育てられました。
大切に育てられているうちに大きくなった人魚姫は、15歳になりました。
15歳になると、海の上に出て、外の世界を見てきても良いことになっていたのです。

    妖夢「紫様が境界弄ってくれてるって言っても、ずっと水の中は嫌だな。」

初めて見る海の上は、人魚姫にとってとても新鮮なものです。
しばらく辺りを見回していました。
と、そんなとき、人魚姫の目に、あるものが映りました。

    妖夢「ん、あれは……?」

人魚姫は、一隻の小さな船を発見しました。

    小町「お客さん、乗り心地はどうだい?」
   幽々子「御飯は出ないの?」
    小町「うちじゃ、そういうサービスはやってないんでねえ。」
   幽々子「え~。お腹空いた~。」

その船には船頭さんと、とある国の王子様が乗っていたのです。
どうやら王子様は、舟遊びの真っ最中のようです。
王子様はとても素敵で、気品溢れる姿をしていました。

    妖夢「……幽々子様。御飯食べれるのは屋形船です。」

人魚姫は、その姿をじっと眺めていました。
と、そのときです。

 ミスティア「ブレイク♪ブレイク♪欠陥船舶~♪」

何やら、妖しい歌が聞こえてきました。

    小町「誰だ!?あたいの船に欠陥など無い!」
 ミスティア「木製♪鉄製♪宇宙戦艦~♪」

歌は、時間が経つ度に、はっきりと聞こえてきます。

 ミスティア「魚雷の発射はお手の物♪絶対命中致します♪」
    小町「む、海が荒れてきたな。お客さん、気をつけておくれ。」    
 ミスティア「バミューダ海峡嵐を起こっせ~♪」
    小町「うわっとっと。風が出てきたな…。何で?」

さっきまでいい天気だったのに、何時の間にか空はどんよりと曇っていました。
さらに、歌声が大きくなるにつれて、海がどんどんと荒れていっています。
そして。

 ミスティア「Break Out!」
    小町「うわ~!嵐が起きた~!?」

嵐が起きました。
先程から歌っていたのは何と、歌をうたって船を沈める、とんでもない悪魔だったのです!

    小町「だあああああ!」
   幽々子「あ~れえ~……。」

風で船が転覆し、王子様と船頭さんは、海に投げ出されてしまいました。
そしてそのまま、荒れ狂う海へ、消えていってしまいました。

    妖夢「た、大変!」

人魚姫は急いで、海に潜りました。

    妖夢「幽々子様…!」

見ると王子様が、どんどんと沈んで行ってます。
どうやら、気を失っているようです。

    妖夢「幽々子様!今お助けします!」

人魚姫は王子様の所へ泳いで行きました。
そして王子様を担ぐと、急いで水面へと上がりました。

    小町「こら!あたいを無視するながぼはっ!」

船頭さんは溺れて死んでしまいました……。


 ・
 ・
 ・

人魚姫は、王子様を近くの海岸へ連れて行きました。
王子様は、まだ目を覚ましません。

    妖夢「…中々目を覚まさないなあ。」

王子様が心配な人魚姫は、ずっと王子様を解放しています

     紫『これ、可愛い末っ子や。ここは、人工呼吸をするところです。』
    妖夢「は!ゆ、紫様!一体何処から?」
     紫『そんなことはどうでもいいの。それより、人工呼吸、よ。』
    妖夢「はあ、人工呼吸ですか………じんこうこきゅう!!?」

突然聞こえてきた父の声に、人魚姫は二度くらいびっくりしました。
そして二度目のびっくりの後、顔をこれでもかと言うくらい真っ赤にしました。

    妖夢「ああああそそそそれはそそそそその…じ、人工呼吸といいますのはですね…その……。」
     紫『眠る幽々子の唇を無理矢理奪うなんて。妖夢ってば、意外と大胆ね。』
    妖夢「ゆ、紫さま!私はそんなこと!」
     紫『でもぉ。このままじゃ幽々子、もとい王子様、目を覚まさないかもね?』
    妖夢「う……。」
     紫『ひょっとしたら、死んじゃうんじゃないかしら?』
    妖夢「紫さま…。」
     紫『幽々子はもう死んでる、なんて言ったら、私泣いちゃうわ。しくしく。』
    妖夢「ああもう、どこからツッコんで良いものやら…。」

しかし、これだけ騒いでも王子様は目覚めないので、人魚姫は心配になってきました。

    妖夢「すぅぅう~……はぁぁぁ~………。よし!」

人魚姫は、覚悟を決めました。
大きく深呼吸をして、王子様に接近します。

     紫『どきどき…。』
     文『どきどき…。』
     紫『こら。貴方の出番はまだでしょう?』
     文『いいじゃないですか。減るもんじゃないですし。あ、いくみたいですよ!』
     紫『どれどれ?』

何故か野次馬が増えています。
しかし、人魚姫はそんなことには気付きません。
目を閉じて、顔をゆっくりと近づけて、そして…

    妖夢「ん~………。」


 ちゅっ!


     紫『きゃ~。』
     文『きゃ~。スキャンダルスキャンダル。』

人魚姫の唇が、王子様に触れました。

    妖夢「(ん………何か、硬い……?)」

しかし、何か違和感を感じました。
人魚姫は、閉じていた目を開きました。

    妖夢「わ~~~~~~~~!!う、腕~~~!?」

王子様の口から、腕が生えていたのです!
人魚姫はまたまたびっくりして、腰が抜けてしまいました。

     ?「ぷは~!あ~、やっと出られた~。」
    妖夢「うわわわわ!……え?」

何かが、王子様の口の中から出てきました。

     藍「おや、そこに見えるは人魚姫。」
    妖夢「え~、ええと、お、お姉様?」

出てきたのは、人魚姫の、一番上のお姉さんでした。

     藍「何でこんな所から出てきたか、聞きたい?」
    妖夢「あ~、何か、聞かなくても大体何があったかは分かります。」
     藍「うん。まあ話せば長くなるが、この王子様に食べられてしまったんだ。」
    妖夢「短いじゃないですか。」
     藍「で、漸く脱出に成功したわけで。」

お姉さんは王子様に食べられてしまい、
プリンセスなんとかのイリュージョン顔負けの脱出劇をやってのけたのでした。

     藍「あ、紫様…じゃなくてお父上。何でこんなとこに居る…弾幕結界ぃぃいいいい!?」

お姉さんは弾幕結界に放り込まれて、強制退場させられてしまいました。

   幽々子「う~ん……。」
    妖夢「あ…!」

と、流石に騒ぎが大きすぎたのでしょうか?
王子様が目を覚ましたようです。

     紫『おっといけないわ。ここで見つかっては裏ルート、バッドエンドへまっしぐらよ。』
    妖夢「既にバッドエンドな気が……。と、とにかく逃げなきゃ。」

人魚姫は急いで、海の中へ潜りました。

     紫「まったく。藍には、場の雰囲気を読み取る訓練をさせなくちゃ。」
     文「教育的指導は大切です。ガツンと調教してやってください!」
    妖夢「いや、あれは不可抗力と言うか助かったと言うか残念と言うか…。」
     
そんなこともあって人魚姫は、王子様のことが好きになってしまいました。
もう思考回路はショート寸前で今すぐ会いたいのですが、それは出来ません。
来る日も来る日も、人魚姫は王子様のことが忘れられません。
そこで人魚姫は、魔女のところへ行きました。
きっと、何かいい手があるだろうと、思ったからです。

    妖夢「ごめんくださ~い。」

人魚姫が魔女の家のドアを開けると、中から魔女が出てきました。

 メディスン「私こそが真の人魚姫!」
    妖夢「………。」
 メディスン「ほら、にんぎょ(う)だけに、ね?」
    妖夢「お邪魔しました。」

人魚姫は一礼すると、ドアを閉めました。

 メディスン「あ、うそです。ちょっと言ってみたかっただけです。だから待って~。」

魔女は慌てて、人魚姫を引き止めました。

 メディスン「こほん。さて人魚姫、今日は何の用ですか?」
    妖夢「う~ん。貴方に相談するのも不安だけど、かくかくしかじかの理由で……。」

人魚姫は、事情を説明しました。

 メディスン「なるほど。それなら、うってつけの毒……薬があるわ。」
    妖夢「今、毒って言った?」
 メディスン「気のせいよ。はい、これ。」

魔女は、薬を人魚姫に渡しました。

 メディスン「さて、この毒はあなたを人間にしてくれます。」
    妖夢「うわ、毒って言い切った。」
 メディスン「しかし、それと引き換えに、喋れなくなってしまうのです。」
    妖夢「そんな……。」
 メディスン「ついでに、王子様と結婚出来なかったらスッパテンコーしてしまうオマケつき。」
    妖夢「え~!!」
 メディスン「と、言うのは冗談で。結婚できなかったら死んじゃう呪いが憑くだけだから、安心して。」
    妖夢「は~、よかっ……よくない!」
 メディスン「文句が多いわねぇ。あ、ところでスッパテンコーって何?」
    妖夢「それを私の口から言うのは……。うちのお姉様に聞いてみて。」

人魚姫は、悩みました。
声がなければ、王子様に話しかけることも出来ません。
愛の告白をすることも出来ません。
大好きな歌も、歌えません。
王子様に、ツッコミを入れることも出来ません。
みょんと鳴くことも出来ません。

    妖夢「いや、下二つには色々言いたいことが。」
 メディスン「誰に話してるの?あ、毒にやられたのね。」

声が無いと、王子様に求婚することも出来ません。
結婚するとなると、とても難しいことになります。
しかも、王子様と結婚出来なければ死んでしまうと言うのです。
でも、王子様に会いたい人魚姫は、ついに…。

    妖夢「お願い…します。凄く嫌だけど。」

返事をしてしまいました。

 メディスン「そうかいそうかい。」

魔女は、満足そうな返事をしました。

 メディスン「それじゃあ、その(毒)薬を、一気にぐいっ、て。」
    妖夢「………ぐいっ。」

人魚姫は勧められるままに、薬を飲みました。

 メディスン「感じで飲んじゃ駄目だから。」
    妖夢「へ?」
 メディスン「用法、用量を守って正しく服用してください。」
    妖夢「何で飲んだ後で言ウボァーーーー!!」

人魚姫は悶絶して転げまわった挙句、気を失ってしまいました。

 メディスン「って、言ってる傍からこれなんだから。」



 ・
 ・
 ・

    妖夢「(う……。)」

人魚姫は、意識を取り戻しました。

     ?「生きてますか?」
   ???「半死に、ってところね。」

声が、聞こえます。

    妖夢「(あ~、身体が重い…。毒のせいかな?)」

人魚姫は、目を開けました。
すると、

     文「あ、目を覚ましましたよ、王子様。」
   幽々子「あら本当。」
    妖夢「(あ、ゆゆ…じゃなくて、王子様…)」
     文「残念です。海辺に打ち上げられた死体、第一発見者の王子様。記事になると思ったのに。」
   幽々子「残念。今夜の晩御飯にしようと思ったのに。」
    妖夢「(私のこと食べる気だったんですか……)」

何やら物騒なことを言っているのは、王子様と、その側近の人です。

   幽々子「まあ、過ぎたことをくよくよしても仕方ないですわ。それより貴方、大丈夫?」
    妖夢「(あ、はい。この通り大丈夫です。)」
   幽々子「もしもし?大丈夫?」
    妖夢「(大丈夫ですって。)」
     文「何も言いませんよ?」
   幽々子「あら、外国の人?困ったわ~。」
    妖夢「(いや、だから大丈夫………あ!)」

人魚姫は、魔女の言葉を思い出しました。
人間になることと引き換えに、声を失ってしまう、と。

     文「How do you do?」
    妖夢「(ええと、ふぁいんせんきゅー。って、聴こえないのよね…)」
     文「May I help you?」
    妖夢「(へ?あ~ええと……)」
     文「Do you speak English?」
    妖夢「(あ~……?)」
     文「Merupo?」
    妖夢「(ガッ!)」

側近の人は外国語を喋っていますが、人魚姫にはさっぱりわかりません。
ついカッとなってしまったのか、人魚姫は側近の人の頭を叩いてしまいました。

    妖夢「(あ、ついうっかり…)」
 文「うう…いきなり叩かれました…。酷いです反省するべきです。」
   幽々子「う~ん。それじゃあ、私がやってみるわ。」

今度は、王子様が人魚姫に話しかけます。     

   幽々子「だ~いじょ~ぶだぁ~?」
    妖夢「(なんか違う!)」
   幽々子「いあ、いあ、はすた~?」
    妖夢「(邪神でも呼ぶ気ですか、幽々子さま!)」
     
何と話しかけられても返事が出来ず、何とボケられようとツッコむことが出来ません。

   幽々子「むむ、ほんとに困ったわね~。」
     文「きっと、何かのショックで喋れなくなってしまったのですよ。ミステリーです。」
   幽々子「とりあえず、この娘は私が運ぶから、貴方は帰って鍋の準備をしておいて。」
     文「畏まりました。鳥は準備出来ないのであしからず。」

側近の人は、城へ帰って行きました。

    妖夢「(ちょっと待った!鍋の準備って……!)」
   幽々子「さて。行き倒れを放って置くほど、亡霊は冷たくないの。お城に行きましょう。」
    妖夢「(いや、鍋!鍋って何する気ですか!)」
   幽々子「よいしょ。」
    妖夢「!!」

王子様は、人魚姫を抱きかかえました。

   幽々子「妖夢をお姫様抱っこ出来るなんて、役得ってものよね~。」
    妖夢「(あ~、う~……。嬉しいやら恥ずかしいやら……)」

人魚姫は、王子様の居るお城へ連れて行かれました。

     文「あ、お帰りなさいませ。鍋の準備は出来てますよ。」

先に帰った、側近の人が出迎えに来ました。

     文「鍋の準備は出来てますよ。」
   幽々子「ご苦労さま。案内して頂戴。」

王子様と人魚姫は、鍋の準備がしてあると言う部屋へ行きました。

 ミスティア「ババンババンバンバン♪……って、温度上げすぎ!熱いってば~~~~!!」

鍋の具は悪魔でした。
   
     文「鳥鍋は嫌だって言ったのに。酷いです。」
   幽々子「まぁ、用意したものは食べなきゃね。ほら、食いねえ食いねえ。」
    妖夢「(はぁ、いただきます)」

王子様の折角の厚意を、無下にしたくはありませんでした。
人魚姫は、悪魔鍋を食べました。

    妖夢「(あ、普通に美味しい)」
   幽々子「これで契約成立ね。」
    妖夢「(……はい?)」
   幽々子「この悪魔鍋を食べたらあら不思議。私には絶対に逆らえなくなるのでした~。」
    妖夢「(何ですかそれ~~!!……って、よく考えたら普段と同じか)」

こうして人魚姫は、お城で暮らすことになりました。
大変美しい人魚姫は、声が出せずとも優しい性格だったので、王子様はとても気に入りました。
このまま人魚姫は王子様と結婚して、幸せになれる、と思われました。
しかし、ある日。

     文「王子様。婚約者の方がお見えになってますよ。」
    妖夢「(え……!)」
   幽々子「は~い。すぐ行くわね~。」

婚約者の人が来たと聞かされ、王子様は急いで迎えに行きました。
その一方で、人魚姫は、愕然としています。
王子様には、婚約者が居たのです。

    妖夢「(そんな……王子様に婚約者が……)」

居てもおかしくは無い、と思いますが、それでも、人魚姫はショックを隠せません。

     文「王子様を巡る三角関係。泥沼闘争の結末や以下に…!」
    妖夢「(それじゃあ、三流恋愛漫画です…)」

良からぬ事を思っている側近の人は放っておいて、人魚姫は、急いで王子様の後を追いかけました。
王子様の婚約者を、一目見ておこうと思ったからです。

   幽々子「この間送ってくれたお菓子、美味しかったわ~。」
     ?「喜んで頂けて何よりだわ。」

王子様と婚約者の談笑が、人魚姫の耳に入ってきます。

    妖夢「(一体、どんな……)」

婚約者がどんな人か気になったので、人魚姫は二人の所へ近づきます。
そして。

     紫「ああ、そうそう。今度は凄い果物を見つけたんだけど。」
    妖夢「(だあああああ!)」

人魚姫は盛大にずっこけました。
それだけでは飽き足らず、3メートル程ヘッドスライディングをしてしまいました。

    妖夢「(ゆ、紫様!あなた何やってるんですか!)」
     紫「あら王子様、この人は?」
    妖夢「(何言ってるんですか!あなた私の父親役でしょう!)」
   幽々子「実はこの間、浜辺に打ち上げられていたのを保護したの。」
     紫「なるほど。それでぶくぶく太らせて、鍋に…。」
   幽々子「あ、わかる~?」
     紫「それはもう。婚約者だもの。」
    妖夢「(やっぱり食べる気だったんですか幽々子さまぁあああ!)」

人魚姫は色々言いたいのですが、やっぱり声が出ません。
二人とコミニュケーションを取ることが出来ません。

   幽々子「何か、あなたの方を見てるわよ~?ひょっとしてお知り合い?」
     紫「はて、ちんぷんかんぷんですわ。」
    妖夢「(あなたさっき私に人工呼吸しろだとか何だとか言ったでしょう!)」
   幽々子「その割には、ジャ~ンジャ~ン『げえ!ゆかりん!』な顔してるけど。」
    妖夢「(あ~、まあ、面食らったことは否定しませんけど…)」
     紫「さて、そんなことはいいとして。今日は二人でラーメンでも食べに行きましょ。」
   幽々子「紫の奢りで?」
     紫「幽々子の奢り。だって婚約者だもの。」
   幽々子「それもそうね~。」
    妖夢「(いや、意味が…って言うか、王子様とその連れが、二人そろってラーメンですか……)」

王子様と婚約者は、そのまま二人で何処かへ行ってしまいました。
残された人魚姫は、途方に暮れてしまいました。

    妖夢「(は~……。もう、何がなんだか………)」

溜息一つだけで、独り言は出ません。
人魚姫は喋ることが出来ず、王子様には婚約者がいました。
しかし、王子様と結婚出来なければ、人魚姫は死んでしまいます。

    妖夢「(……でも、どうすれば……)」

と、その時です。

     藍「人魚姫や~。」
     橙「人魚姫~。」
    妖夢「(あ、あれは!)」
   ルナサ「まだ生きてたみたいね。」
   リリカ「そりゃ生きてるよ~。だって死んでたら私たちの出番無いし。」
  メルラン「死亡確定でも明るく生きる。素敵なことね~。」
    妖夢「(取ってつけたかのようなお姉様たち!何か酷いこと言ってるけど…)」

人魚姫のお姉さんたちが現れました。

   ルナサ「一体何をしに来たの?って言う顔してるから手短に説明してあげて。」
     藍「こほん。あ~、実は可愛い末の妹を助けようとして、みんなで魔女をシメに行ったんだ。」
 メディスン「酷いでしょう?よってたかって、私を苛めに来るんだから~。」
    妖夢「(って、居たの?)」

お姉さんたちに拉致された魔女も、一緒でした。

     藍「で、どうなんだ?元に戻す方法はあるのか?」
 メディスン「有るには有るけど……。」
   リリカ「だったらさっさとゲロっちまいな~。」
   ルナサ「リリカ、表現がお下品よ。」
 メディスン「でも、これは人魚姫にとって残酷なことだから、オブラートに包む様に、言うね。」
    妖夢「(何やらされるんだろう?)」
 メディスン「王子様殺れ。」
    妖夢「(ぜんっぜん包まれて無い!)」
   ルナサ「全然隠れて無いじゃない。」
  メルラン「ほら~、アレよ。毒が強すぎてオブラートが溶けたの。」

魔女が言うには、人魚姫が王子様を殺したら、人魚姫にかけられた呪いが解けると言うのです。

    妖夢「(で、でも……王子様を殺すなんて……)」

人魚姫は戸惑いました。
結婚出来ないのなら、大好きな王子様を殺さなければならないのです。
それが出来なければ、人魚姫は死んでしまいます。

     藍「で、ここに父上様がパクってきた銀のナイフがあるから、これを使いなさい。」
 メディスン「これで、こんな風に、ブスっ!」
   ルナサ「ぐふっ!」
   リリカ「ああ、姉さんが!」
 メディスン「と、殺れば、呪いは解けるよ。」
    妖夢「(はぁ、わかったけど……。けど…)」
   ルナサ「うぐぐ……。」
   リリカ「姉さん、死んじゃだめ~!」
  メルラン「姉さん、傷は深いわ。ほら、笑って笑って。」
     文「いちたすいちは~?」
   リリカ「に~。」


 パシャッ!


     文「仲良し三姉妹、長女殺される!犯人は次女か三女か……!良い記事になりそうです。」
   リリカ「写真見せて~。……姉さん、笑顔じゃないなぁ。」
  メルラン「困ったわね~。こういう写真は笑顔じゃないと~。」
   ルナサ「笑え…ない……わ……よ……。」

何だか大変な騒ぎになりましたが、人魚姫のお姉さんたちは、海に帰って行きました。
残されたのは人魚姫と、王子様を殺すためにお姉さんたちが持って来た、銀のナイフです。
人魚姫は、どうしたものか悩みました。

   幽々子「ふ~。美味しかったわね~。劇薬ラーメンえーりん風。」
     紫「あら、私の食べた、慧角ラーメンも中々いけたわよ。」
   幽々子「今度は、褌ラーメンこーりん風でも食べてみようかしら?」
     紫「じゃあ、私は座薬うどんにしようかしら。」

悩んでいるうちに、王子様と婚約者が帰ってきました。
王子様を殺してしまうにしても、婚約者が見ています。
ここで殺るわけにはいきません。

     紫「それじゃ、おやすみなさい。」
   幽々子「おやすみ~。」

婚約者は、自分の家か城かへ帰ったようです。
王子様もまた、自分の部屋へ戻って行きました。

    妖夢「………。」

部屋の中は、王子様一人しか居ません。
殺るなら、今しかありません。

    妖夢「(し、しかし……!)」

しかし、どうしても、王子様を殺すことが出来ません。
人魚姫の脳裏に、王子様と過ごした日々が、思い出されます。


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

   幽々子『えい、油断大敵おかずはいただきよ。』
    妖夢『(あ~!私の卵焼き~!)』
   幽々子『あ、そのイチゴ、要らないなら食べてあげるわね~』
    妖夢『(え?ああ!楽しみに取っておいたのに~!)』
   幽々子『ねえねえ。本棚からお金が出てきたんだけど。』
    妖夢『(私のへそくり~!)』
   幽々子『あ、これって妖夢の日記………。』

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


    妖夢「(……えい)」


 ぷす


    妖夢「(………あ………)」

人魚姫は、王子様を 刺 し て し ま い ま し た …… 。

    妖夢「(ど、ど、どどどどどどどうしようどうしよう!?)」

人魚姫は慌てました。
どうしようと言っても、周りには誰も居ません。
切羽詰って逃げようとでも思った、その時です。

   幽々子「ふ、ふふふ………。」
    妖夢「(へ……?ひゃあああああああああああ!!!?)」

刺し殺したはずの王子様が、生き返りました。

    妖夢「(お、お、お、お、おば、おば、おば………!)」
   幽々子「だ~れがおばさん、ですって?」
    妖夢「(違います!違います!おばかさんはチルノ~~!)」
   幽々子「まあそれはともかく、何で私が死ななかったか、不思議でしょう?」
    妖夢「(そ、それは……もう死んでますし……)」
   幽々子「忘れたのかしら?貴方が始めて城に来たとき、何を食べた?」
    妖夢「(歌う鳥鍋……でしたっけ?)」
   幽々子「そう、悪魔鍋。あれを食べた者は、私に逆らえなくなる。
       だから、私がおかずを食べても文句が言えない。当然、私を殺すなんてもってのほか。」
    妖夢「(あ~、文句言えないのは、魔女の毒のせいのような気が……)」
   幽々子「貴方は、そう。私が死ぬまで死ねないし、私が死ねと言うまで死ねないの。わかった?」

そう、人魚姫はもう、王子様に逆らえない身体になってしまっていたのです。
魔女の呪いもなんのその。
王子様が命令しない限り、人魚姫は死ねないのです。

    妖夢「(って~、そんなの有りなんですか~?)」
   幽々子「ありなの。細かい事何て、いちいち気にしてはいけないわ。」

結局人魚姫は、元に戻ることも出来ず、ず~~っとお城で暮らさなければならなくなりました。
でも、大好きな王子様と、一生暮らしていく事が出来ます。
その後、王子様は婚約者と結婚したみたいですが、離婚したとか。
人魚姫は後妻に迎えられて王子様と結婚し、魔女の死んでしまうと言う呪いも解け、
お城でずっと幸せにくらしたそうですが……。

    妖夢「(まぁ、いいか……細かいことなんて……)」
   幽々子「チャーシュー貰うわね。」
    妖夢「(あ~!チャーシュー麺からチャーシュー抜いたらだたのラーメンじゃないですか~!)」
   幽々子「あらまぁ、これって、妖夢のしたぎ……。」
    妖夢「(いや~~~~!!やめてくださ~~~い!!)」

そのままず~~~っと、喋ることが出来ず、気苦労の絶えない生活を強要されたとか何とか……。
  
   幽々子「○月×日晴れ。今日は気になったので、体重を計ってみた。私の体重は………。」
    妖夢「(やっぱりよくな~~~~い!!)」


 めでたし めでたし



 キャスト

人魚姫     ・・・魂魄 妖夢
王子様     ・・・西行寺 幽々子
魔女      ・・・メディスン・メランコリー
人魚の王様   ・・・八雲 紫
王子様の婚約者 ・・・八雲 紫
人魚姫の姉たち ・・・八雲 藍、橙、プリズムリバー三姉妹

船頭さん    ・・・小野塚 小町
悪魔      ・・・ミスティア・ローレライ
側近      ・・・射名丸 文
 新年あけてますのでおめでとうございます。今年もこんな調子で書いていくのかも知れませんPikoです。

 本来ハッピーエンドの所をバッドエンド、またはデッドエンドに持っていくのはいつもの事。ならば、バッドエンドorデッドエンドを、ハッピーエンドに出来ないか?そう思って、やってみたのですが……いやはや、無理が多いオチに。まだまだ、修行が足らんです。

 人魚は半分魚で半分人間、ということで、人魚姫は妖夢。そうなれば当然、王子様はゆゆさま。実は書き始めの頃はメディが人魚姫でした。理由は、お話の中に。でも相方とか色々難しくて没になりました。脇役陣では、ローレライがローレライやってます。こんな歌で沈められるのは本望……でもないですか。歌は、某NB工業社歌の2番が元ネタです。

 ………ゆかりんかわいいよゆかりん。 キャスト欄に名前が2回載るなんて、今まであったかしら……?


 妖夢でお姉様と言ったら、某所の壊れ妖夢が脳裏を掠めます。ハアハア
Piko
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コメント



0.1130簡易評価
4.60七死削除
おお、妖夢が主役はってる昔話って結構珍しいかも。 
記憶では金の斧、銀の斧以来かな?
おかげである意味原作以上に不憫な人魚姫になってしまった(ノД`)

相変わらずのPiko節、今年も健在みたいで何よりです。
本年もますますのご活躍をお祈り申し上げます。
11.70名前が無い程度の能力削除
12.無評価名前もない削除
随所の散りばめられたネタがピチューン。くぅ、みすちーにNBとは……
「思考回路はショート寸前~」の辺りでムーンライトレジェンド吹きました
13.90名前もない削除
点数入れ忘れ失礼_| ̄|○
22.90名前が無い程度の能力削除
いろんなネタがぎっしりだ|・ω・)b
25.70床間たろひ削除
あーもー妖夢、可愛いなぁw
Pikoさんの独特のリズムを持った昔話シリーズ、大好きです!

それにしても王子様……藍をも丸呑みですかっ!