注:相変わらず百合です。ネタも安直かもしれません。それでも良い片はどうぞ。
「えっと、この本はAの書棚の」
場所は紅魔館の図書館。どこまでも広いそこを小悪魔はふよふよと漂っていた。手には数冊の本。違う棚に紛れ込んでいたのを元の場所に戻している最中だ。
「きゃっ」
突然の背後からの衝撃に小悪魔は手に持った書物を落とす。最優先でそれらを確保し背後を振り向く。
「おっと、悪いな。気づかなかった。怪我はないか?」
ぶつかってきたのはやはりというか霧雨魔理沙であった。予想通りの光景に思わず笑いが零れる。というのも魔理沙の衝突事故というのはしょっちゅうな事なので背中に対衝撃用の護符を張ることが紅魔館では既に義務づけられている程なのだ。
「ほら。拾い損ねてるぜ」
魔理沙から本を差し出され礼を言いながら受け取る。だが、そもそもの原因は魔理沙にあるのだから礼を言うのはおかしいのかもしれない。
「それより急がなくて良いんですか?」
前をろくに確認していなかったのだから急ぎの用があったのだろう。それを告げると魔理沙は慌てて箒に飛び乗る。
「悪いな。お詫びに今度何かしてやるから、考えといてくれよ?」
「はい。それではお気をつけて」
一礼をし、魔理沙を見送る。胸に感じる一抹の寂しさを隠しながら。
霧雨魔理沙という人間が此処に訪れるようになり数ヶ月が経つ。その事によって小悪魔とその主パチュリー・ノーレッジには良い意味で変化が起こっていた。引きこもりの代名詞でもあった主は外へ興味を示し、小悪魔もまた同じく。そして、それと同時に小悪魔にはある感情が芽生えていた。
「また、少ししか話できなかったな」
すぐに見えなくなった魔理沙の飛んでいった方向を見ながらぽつりと呟く。小悪魔は魔理沙に好意を抱いていた。それは本来ならあり得ないこと。使い魔として生まれ、使い魔として生きてきた彼女にはあり得ないはずの感情。小悪魔は恋をしていた。
だが、生来外に出ることの無かった小悪魔には、その感情を上手く表す術を知らない。そして図書館を魔理沙が訪れる際の少しの邂逅を楽しみとするようになっていた。
魔理沙は図書館に来てすぐパチュリーの元へと向かう。それは大抵パチュリーがいる辺りに重要な魔道書があったりするためであり、パチュリー自身が知識の宝庫であるためでもある。それ故に小悪魔が魔理沙と接することが出来る時間はわずか。場合によっては会話さえ出来ないこともある。
基本的に小悪魔はパチュリーと私的な時間を持たない。それは主従とはこうあるべしと言う信念を持っているからであるが、その為魔理沙と接することが出来ないのは残念としか言いようがない。
だが、それでも小悪魔は幸せだった。元々伝えるつもりもない恋心。それにパチュリーといる時の魔理沙はとても楽しそうだったから。まあ、本を勝手に持っていくのさえ止めて貰えればもっと良いのだが。
突如一陣の風が吹く。それで小悪魔は魔理沙が帰ることを知った。今度はぶつからないように通路の端に寄る。
「じゃあな、小悪魔!」
一陣の風となった魔理沙はそれでも小悪魔に対し、挨拶を忘れることはなかった。その事に対し喜びを感じる。
だけどもう少し速度は落として欲しいものだ。小悪魔は本が床に散らばる光景を見てそう思わずにはいられなかった。
「仕方が無いなぁ」
それでもこうして許してしまうのは恋のせいなのだろうか。外れてしまったカバーを本に戻しながら小悪魔は笑っていた。
どうしてだろう?パチュリーは本をめくりながらそう思っていた。霧雨魔理沙。普通の魔法使い。彼女は最近来る回数が多くなっていた。今までは、大体が週に数回。来るたびに本を奪って去っていた。日ごとに減っていく書棚を見てため息を零すことが日課になっていた程だ。
だが、最近は今までにも増して来るようになっていた。だが、奇妙なことがある。本を持っていく回数が少ないのだ。最近ではほぼ毎日来るようになっているのに本を持っていくのは三回に一回程になっている。今までは来るたびに持っていっていたのでこれは異常だ。さらには本を返却すると言うことまでやり始めた。当初は気でも狂ったかと思い本気で医者を世話しようかと思った程であった。
そして本を奪っていかない時に何をしているかというと。
例えば今日、魔理沙は家で作ったサンドイッチが余ったと言ってお裾分けに来た。きのこを具材にに使ったサンドイッチはとてもおいしかった。
例えば昨日、魔理沙はパチュリーと他愛もない話をしていった。別れ際、迷惑か?と聞いてきたのでそんなことはないと言ったら嬉しそうだった。実際本を奪っていかなければ、迷惑などではない。他者と意見を交わすことはなかなかに自身のためになるからだ。まあ、それも魔理沙と出会ってから知ったことであったが。
とにかく、最近では本を目的に来ることが減っているようだった。その事を疑問に思ったが、何となく本人に聞くのも気が引ける。それを聞くことはその事を迷惑に思っているかもしれないと思わせてしまうかもしれないから。
なので、周りの人間に尋ねてみることにした。だが、尋ねても皆はぐらかして教えてくれない。それどころか、にこにこ楽しそうに見ているのだ。最近では魔理沙と話しているとどこからか視線を感じるようになった。さすがに気のせいだと思いたいが。
こうなったら直接本人に聞くしかない。そう思って先ほど別れ際魔理沙に尋ねてみた。すると「まだ、ちょっと決意が固まってないんだ。もう少し待ってくれ」と言われた。だが、一度気になるとすぐにでも答えを知りたくなる。こういう時に本に書いてあればいいのに。と、パチュリーは理不尽なことを思った。
「小悪魔~」
そこでパチュリーは一計を案じることにした。
「はい、何でしょうパチュリー様」
呼んですぐ小悪魔は現れた。パチュリーは先ほどから考えていた事に必要な本を取ってくるように頼む。
「催眠術の本を取ってきてちょうだい」
魔理沙は今日もまた図書館へと向かっていた。だが、今日は少し事情が違う。朝方玄関に手紙が投げ込まれていた。その内容に寄れば実験に協力して貰いたいから来て欲しいとのことだった。別段断る理由もないし、ヤバイ内容だったら聞いてから断ってもいい。そう言うわけで魔理沙はすぐ身支度を整えて紅魔館へ向かった。
最近では顔パスとなった門を抜け図書館を目指す。勿論スピードは最高速。必要性はないが、早いほうが気持ちいい。それだけのために事故が起ころうとも気にせず爆走する。それが霧雨魔理沙だった。
「よう、来たぜ」
魔理沙がパチュリーの元に到着したのはようやく準備が整った時だった。
「あら、もう来たのね」
「なに、早いほうが良いだろ?」
実際は準備が終えてから来て貰った方が都合が良かったので間一髪と言ったタイミングにパチュリーはほっと胸をなで下ろした。
「もう準備は出来てるし始めましょうか」
「ああ、何をやるんだ?」
「催眠術よ」
言って、パチュリーは紐の付いた球体を取り出す。
魔理沙は少し考えていたがあっさりと頷いた。
「ああ、良いぜ。始めようか」
これにはパチュリーは少し驚く。さすがに即答はないと思っていたからだ。場合によっては考えていること全て解ってしまうようなことを即座に了解するとは考えていなかった。自分なら断るだろうし。
その時のために交渉材料として魔道書、最終手段として自白剤まで用意していたため少し拍子抜けしてしまう。だが、手早く済むならそれに越したことはない。さっさと実験を開始することにした。
まずは視覚。これは球体を目の前で揺らす。聴覚。特殊な音波を発生させる式を四方に設置。嗅覚。特殊なお香を炊く。においが逃げないように結界を設置。感覚と味覚は今回必要はないので特に何もしない。全ては本の通り。手元にある『催眠術百の方法』を見る。うん、大丈夫だ。これで準備は整った。
「それじゃあ、やるわよ?」
魔理沙は黙って目の前の球体に意識を集中した。
小悪魔は先ほどから部屋の前をうろうろしていた。パチュリーが先日用意させた催眠術の本。それを今日魔理沙に試すらしい。だが、今回は第三者の存在は実験に悪影響しか及ぼさないらしく、小悪魔は部外者となっていた。
魔理沙さんは大丈夫だろうか。小悪魔の頭の中は先ほどからその事でいっぱいだった。さすがに催眠術の実験で危険なことは起きないだろうが、それでも心配だ。パチュリー様はああ見えてうっかりしていることだし。
数十分が経った頃だろうか。いい加減歩くのも疲れたので部屋の前に座っていた時のことだった。
「ん……?」
小悪魔は体に妙な疼きを覚えた。その感覚はだんだんと大きくなり小悪魔を蝕んでいく。「ん、はぁ。あっ、くっ」
だんだんと息が荒くなっていき頭がぼんやりとしてくる。原因は恐らく主にある。小悪魔はパチュリーと魔力の繋がりがあるため上位者であるパチュリーの感覚が伝わってくることがあるのだ。もっとも普段はパチュリーがしっかりとつながりを保っているために感覚が繋がることはない。だから今回はパチュリーがそんなことも出来ないような事態に襲われていると言うことだ。
「ああっ、んっ。は、早くし、ないとっ。んっ!」
断続的に体が震える。意識が朦朧とし体が火照ってくる。
朦朧とする頭で扉を開けようとする。体に伸びようとする手を必死に押さえる。此処で飲み込まれては駄目だ。それだけを思い必死の思いで扉を開けた。
「ぱちゅ、リーさま?」
部屋を空けて目に飛び込んできた光景。それは主と思い人が愛し合っている姿だった。
「魔理沙、魔、理沙!」
「パチュリー愛してるぜ」
解らないどうしてこんな事になっているのか。ただ一つ解るのはこの体の疼きは目の前の光景が原因だと言うことだ。
「あっ」
一歩歩くと足に何かが当たった。ぼんやりと下を見る。『催眠術百の方法』その本のカバーが外れて本来のタイトルが現れていた。
『欲望を増幅させる百の方法』
既にその事は小悪魔の頭の中にはない。そんなことどうでも良かった。
「パチュリーさま、ん。ずるいですよぅ」
小悪魔は二人に近づく。
「子、悪魔?駄目、見ないで!」
パチュリーの哀願に構わず小悪魔は二人を見下ろせる位置まで来た。ああ、ずるいなぁ…パチュリーさまだけ魔理沙さんと仲良くして。
気が付いたら小悪魔は魔理沙の唇をむさぼっていた。体を今までにない波が襲う。
「魔理沙さん、私も仲間に入れてくださぁい」
今はただこの体の疼きを止めたかった。
「なかなか楽しそうな状況ね」
レミリアが本当に楽しそうに言う。
「いや、何がなんだかさっぱりなんだが」
すりすり。
今現在の状況を簡単に表すとしたらこうだろうか。魔理沙は左右にパチュリーと小悪魔を張り付かせた状況で困惑していた。気が付いたらこうだったのだ。説明を必要としているのはまさに自分ではないのだろうか。
「式場の準備をした方が良いのかしらね?」
「それでは、お嬢様早速手配して参ります」
「いや、ちょっと待ってくれよ。なあ?」
困惑する魔理沙を余所に、パチュリーと小悪魔はどこまでも幸せそうであったという。
「えっと、この本はAの書棚の」
場所は紅魔館の図書館。どこまでも広いそこを小悪魔はふよふよと漂っていた。手には数冊の本。違う棚に紛れ込んでいたのを元の場所に戻している最中だ。
「きゃっ」
突然の背後からの衝撃に小悪魔は手に持った書物を落とす。最優先でそれらを確保し背後を振り向く。
「おっと、悪いな。気づかなかった。怪我はないか?」
ぶつかってきたのはやはりというか霧雨魔理沙であった。予想通りの光景に思わず笑いが零れる。というのも魔理沙の衝突事故というのはしょっちゅうな事なので背中に対衝撃用の護符を張ることが紅魔館では既に義務づけられている程なのだ。
「ほら。拾い損ねてるぜ」
魔理沙から本を差し出され礼を言いながら受け取る。だが、そもそもの原因は魔理沙にあるのだから礼を言うのはおかしいのかもしれない。
「それより急がなくて良いんですか?」
前をろくに確認していなかったのだから急ぎの用があったのだろう。それを告げると魔理沙は慌てて箒に飛び乗る。
「悪いな。お詫びに今度何かしてやるから、考えといてくれよ?」
「はい。それではお気をつけて」
一礼をし、魔理沙を見送る。胸に感じる一抹の寂しさを隠しながら。
霧雨魔理沙という人間が此処に訪れるようになり数ヶ月が経つ。その事によって小悪魔とその主パチュリー・ノーレッジには良い意味で変化が起こっていた。引きこもりの代名詞でもあった主は外へ興味を示し、小悪魔もまた同じく。そして、それと同時に小悪魔にはある感情が芽生えていた。
「また、少ししか話できなかったな」
すぐに見えなくなった魔理沙の飛んでいった方向を見ながらぽつりと呟く。小悪魔は魔理沙に好意を抱いていた。それは本来ならあり得ないこと。使い魔として生まれ、使い魔として生きてきた彼女にはあり得ないはずの感情。小悪魔は恋をしていた。
だが、生来外に出ることの無かった小悪魔には、その感情を上手く表す術を知らない。そして図書館を魔理沙が訪れる際の少しの邂逅を楽しみとするようになっていた。
魔理沙は図書館に来てすぐパチュリーの元へと向かう。それは大抵パチュリーがいる辺りに重要な魔道書があったりするためであり、パチュリー自身が知識の宝庫であるためでもある。それ故に小悪魔が魔理沙と接することが出来る時間はわずか。場合によっては会話さえ出来ないこともある。
基本的に小悪魔はパチュリーと私的な時間を持たない。それは主従とはこうあるべしと言う信念を持っているからであるが、その為魔理沙と接することが出来ないのは残念としか言いようがない。
だが、それでも小悪魔は幸せだった。元々伝えるつもりもない恋心。それにパチュリーといる時の魔理沙はとても楽しそうだったから。まあ、本を勝手に持っていくのさえ止めて貰えればもっと良いのだが。
突如一陣の風が吹く。それで小悪魔は魔理沙が帰ることを知った。今度はぶつからないように通路の端に寄る。
「じゃあな、小悪魔!」
一陣の風となった魔理沙はそれでも小悪魔に対し、挨拶を忘れることはなかった。その事に対し喜びを感じる。
だけどもう少し速度は落として欲しいものだ。小悪魔は本が床に散らばる光景を見てそう思わずにはいられなかった。
「仕方が無いなぁ」
それでもこうして許してしまうのは恋のせいなのだろうか。外れてしまったカバーを本に戻しながら小悪魔は笑っていた。
どうしてだろう?パチュリーは本をめくりながらそう思っていた。霧雨魔理沙。普通の魔法使い。彼女は最近来る回数が多くなっていた。今までは、大体が週に数回。来るたびに本を奪って去っていた。日ごとに減っていく書棚を見てため息を零すことが日課になっていた程だ。
だが、最近は今までにも増して来るようになっていた。だが、奇妙なことがある。本を持っていく回数が少ないのだ。最近ではほぼ毎日来るようになっているのに本を持っていくのは三回に一回程になっている。今までは来るたびに持っていっていたのでこれは異常だ。さらには本を返却すると言うことまでやり始めた。当初は気でも狂ったかと思い本気で医者を世話しようかと思った程であった。
そして本を奪っていかない時に何をしているかというと。
例えば今日、魔理沙は家で作ったサンドイッチが余ったと言ってお裾分けに来た。きのこを具材にに使ったサンドイッチはとてもおいしかった。
例えば昨日、魔理沙はパチュリーと他愛もない話をしていった。別れ際、迷惑か?と聞いてきたのでそんなことはないと言ったら嬉しそうだった。実際本を奪っていかなければ、迷惑などではない。他者と意見を交わすことはなかなかに自身のためになるからだ。まあ、それも魔理沙と出会ってから知ったことであったが。
とにかく、最近では本を目的に来ることが減っているようだった。その事を疑問に思ったが、何となく本人に聞くのも気が引ける。それを聞くことはその事を迷惑に思っているかもしれないと思わせてしまうかもしれないから。
なので、周りの人間に尋ねてみることにした。だが、尋ねても皆はぐらかして教えてくれない。それどころか、にこにこ楽しそうに見ているのだ。最近では魔理沙と話しているとどこからか視線を感じるようになった。さすがに気のせいだと思いたいが。
こうなったら直接本人に聞くしかない。そう思って先ほど別れ際魔理沙に尋ねてみた。すると「まだ、ちょっと決意が固まってないんだ。もう少し待ってくれ」と言われた。だが、一度気になるとすぐにでも答えを知りたくなる。こういう時に本に書いてあればいいのに。と、パチュリーは理不尽なことを思った。
「小悪魔~」
そこでパチュリーは一計を案じることにした。
「はい、何でしょうパチュリー様」
呼んですぐ小悪魔は現れた。パチュリーは先ほどから考えていた事に必要な本を取ってくるように頼む。
「催眠術の本を取ってきてちょうだい」
魔理沙は今日もまた図書館へと向かっていた。だが、今日は少し事情が違う。朝方玄関に手紙が投げ込まれていた。その内容に寄れば実験に協力して貰いたいから来て欲しいとのことだった。別段断る理由もないし、ヤバイ内容だったら聞いてから断ってもいい。そう言うわけで魔理沙はすぐ身支度を整えて紅魔館へ向かった。
最近では顔パスとなった門を抜け図書館を目指す。勿論スピードは最高速。必要性はないが、早いほうが気持ちいい。それだけのために事故が起ころうとも気にせず爆走する。それが霧雨魔理沙だった。
「よう、来たぜ」
魔理沙がパチュリーの元に到着したのはようやく準備が整った時だった。
「あら、もう来たのね」
「なに、早いほうが良いだろ?」
実際は準備が終えてから来て貰った方が都合が良かったので間一髪と言ったタイミングにパチュリーはほっと胸をなで下ろした。
「もう準備は出来てるし始めましょうか」
「ああ、何をやるんだ?」
「催眠術よ」
言って、パチュリーは紐の付いた球体を取り出す。
魔理沙は少し考えていたがあっさりと頷いた。
「ああ、良いぜ。始めようか」
これにはパチュリーは少し驚く。さすがに即答はないと思っていたからだ。場合によっては考えていること全て解ってしまうようなことを即座に了解するとは考えていなかった。自分なら断るだろうし。
その時のために交渉材料として魔道書、最終手段として自白剤まで用意していたため少し拍子抜けしてしまう。だが、手早く済むならそれに越したことはない。さっさと実験を開始することにした。
まずは視覚。これは球体を目の前で揺らす。聴覚。特殊な音波を発生させる式を四方に設置。嗅覚。特殊なお香を炊く。においが逃げないように結界を設置。感覚と味覚は今回必要はないので特に何もしない。全ては本の通り。手元にある『催眠術百の方法』を見る。うん、大丈夫だ。これで準備は整った。
「それじゃあ、やるわよ?」
魔理沙は黙って目の前の球体に意識を集中した。
小悪魔は先ほどから部屋の前をうろうろしていた。パチュリーが先日用意させた催眠術の本。それを今日魔理沙に試すらしい。だが、今回は第三者の存在は実験に悪影響しか及ぼさないらしく、小悪魔は部外者となっていた。
魔理沙さんは大丈夫だろうか。小悪魔の頭の中は先ほどからその事でいっぱいだった。さすがに催眠術の実験で危険なことは起きないだろうが、それでも心配だ。パチュリー様はああ見えてうっかりしていることだし。
数十分が経った頃だろうか。いい加減歩くのも疲れたので部屋の前に座っていた時のことだった。
「ん……?」
小悪魔は体に妙な疼きを覚えた。その感覚はだんだんと大きくなり小悪魔を蝕んでいく。「ん、はぁ。あっ、くっ」
だんだんと息が荒くなっていき頭がぼんやりとしてくる。原因は恐らく主にある。小悪魔はパチュリーと魔力の繋がりがあるため上位者であるパチュリーの感覚が伝わってくることがあるのだ。もっとも普段はパチュリーがしっかりとつながりを保っているために感覚が繋がることはない。だから今回はパチュリーがそんなことも出来ないような事態に襲われていると言うことだ。
「ああっ、んっ。は、早くし、ないとっ。んっ!」
断続的に体が震える。意識が朦朧とし体が火照ってくる。
朦朧とする頭で扉を開けようとする。体に伸びようとする手を必死に押さえる。此処で飲み込まれては駄目だ。それだけを思い必死の思いで扉を開けた。
「ぱちゅ、リーさま?」
部屋を空けて目に飛び込んできた光景。それは主と思い人が愛し合っている姿だった。
「魔理沙、魔、理沙!」
「パチュリー愛してるぜ」
解らないどうしてこんな事になっているのか。ただ一つ解るのはこの体の疼きは目の前の光景が原因だと言うことだ。
「あっ」
一歩歩くと足に何かが当たった。ぼんやりと下を見る。『催眠術百の方法』その本のカバーが外れて本来のタイトルが現れていた。
『欲望を増幅させる百の方法』
既にその事は小悪魔の頭の中にはない。そんなことどうでも良かった。
「パチュリーさま、ん。ずるいですよぅ」
小悪魔は二人に近づく。
「子、悪魔?駄目、見ないで!」
パチュリーの哀願に構わず小悪魔は二人を見下ろせる位置まで来た。ああ、ずるいなぁ…パチュリーさまだけ魔理沙さんと仲良くして。
気が付いたら小悪魔は魔理沙の唇をむさぼっていた。体を今までにない波が襲う。
「魔理沙さん、私も仲間に入れてくださぁい」
今はただこの体の疼きを止めたかった。
「なかなか楽しそうな状況ね」
レミリアが本当に楽しそうに言う。
「いや、何がなんだかさっぱりなんだが」
すりすり。
今現在の状況を簡単に表すとしたらこうだろうか。魔理沙は左右にパチュリーと小悪魔を張り付かせた状況で困惑していた。気が付いたらこうだったのだ。説明を必要としているのはまさに自分ではないのだろうか。
「式場の準備をした方が良いのかしらね?」
「それでは、お嬢様早速手配して参ります」
「いや、ちょっと待ってくれよ。なあ?」
困惑する魔理沙を余所に、パチュリーと小悪魔はどこまでも幸せそうであったという。
>良い片 良い方
>お香を炊く お香を焚く
>子、悪魔? 小、悪魔?
人に物を言える立場ではありませんが創想話でここまでの表現はありなのかどうか悩みました、文頭の警告にR15位の警告を追加しては如何でしょうか?
これはルール違反かも。
原因と結果だけを説明的に書かずに、逆に「過程をもの凄く抽象的な表現」で書いていった方が綺麗なえち描写(爆)になると思います。
でもこういう話し好きですよ。(汗)